(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139463
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】塗膜の劣化促進試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050414
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】荒川 信司
(72)【発明者】
【氏名】面田 真孝
(72)【発明者】
【氏名】赤司 健太郎
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050AA01
2G050AA02
2G050AA04
2G050BA03
2G050BA20
2G050CA03
2G050CA07
2G050EB07
2G050EB10
(57)【要約】
【課題】腐食性ダスト環境下での塗膜の劣化を十分に再現できる、塗膜の劣化促進試験方法を提供する。
【解決手段】金属板の表面に塗膜が配置された試験片3を、腐食成分を含有する腐食性ダスト4に埋設して、試験片3の塗膜を腐食性ダスト4と接触させる(埋設工程)。腐食性ダスト4に水9を噴霧して、腐食性ダスト4に水分を含ませる(噴霧工程)。試験片3および腐食性ダスト4の温度を上昇させて、腐食性ダスト4の水分を試験片3の塗膜が吸収することを促進する(湿潤工程)。試験片3および腐食性ダスト4を乾燥する(乾燥工程)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の表面に塗膜が配置された試験片を、腐食成分を含有する腐食性ダストに埋設して、前記塗膜を前記腐食性ダストと接触させる埋設工程と、
前記腐食性ダストに水を噴霧して、前記腐食性ダストに水分を含ませる噴霧工程と、
前記試験片および前記腐食性ダストの温度を上昇させて、前記腐食性ダストの水分を前記塗膜が吸収することを促進する湿潤工程と、
前記試験片および前記腐食性ダストを乾燥する乾燥工程と、
を備える、塗膜の劣化促進試験方法。
【請求項2】
前記腐食成分が、硫黄成分である、請求項1に記載の塗膜の劣化促進試験方法。
【請求項3】
前記噴霧工程で噴霧する水が、純水である、請求項1または2に記載の塗膜の劣化促進試験方法。
【請求項4】
前記噴霧工程では、前記腐食性ダストの含水率を飽和させる、請求項1または2に記載の塗膜の劣化促進試験方法。
【請求項5】
前記金属板が、鋼板である、請求項1または2に記載の塗膜の劣化促進試験方法。
【請求項6】
前記噴霧工程、前記湿潤工程および前記乾燥工程を、それぞれ、下記条件で実施する、請求項1または2に記載の塗膜の劣化促進試験方法。
前記噴霧工程:温度25~60℃、時間8~16h
前記湿潤工程:温度40~60℃、相対湿度90~100%、時間8~16h
前記乾燥工程:温度50~70℃、相対湿度45~55%、時間20~28h
【請求項7】
前記噴霧工程、前記湿潤工程および前記乾燥工程を、それぞれ、下記条件で実施する、請求項1または2に記載の塗膜の劣化促進試験方法。
前記噴霧工程:温度35℃、時間12h
前記湿潤工程:温度50℃、相対湿度95%、時間12h
前記乾燥工程:温度60℃、相対湿度50%、時間24h
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜の劣化促進試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所では、粗鋼を生産するために、鉱石、石炭、コークス等の原料を荷揚し、ベルトコンベアを用いて運搬する。このとき、ベルト(コンベアベルト)から原料がこぼれて、ベルトコンベアおよび/または架台の躯体上に、ダストとして堆積する場合がある。
このようなダスト(「腐食性ダスト」とも呼ぶ)は、硫黄成分などの腐食成分を含有するため、躯体を構成する鋼板などの金属板に対して、高い腐食性を示す。
【0003】
躯体上に堆積したダストは、降雨などにより水が供給されると、水分を含む。
この場合、ダストの腐食成分と、ダストの水分による濡れ時間の増加とに起因して、一般的な屋外環境下と比較して、最大で約10倍の速度で、躯体の腐食が進行する。
【0004】
躯体の腐食を防止するには、躯体を構成する部材としてステンレス鋼を用いることが有効であるが、コスト面で実用的でない。このため、例えば、低炭素鋼からなる鋼板の表面が塗膜で覆われた部材が用いられる。
塗膜の劣化進行は長い時間を要することから、塗膜の性能は、塗膜の劣化を人工的に速める塗膜劣化促進試験によって評価される(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の塗膜劣化促進試験は、一般的な屋外曝露環境下での塗膜の劣化を想定したものであるため、腐食性ダスト環境下での塗膜の劣化を十分に再現できない。
そこで、本発明は、腐食性ダスト環境下での塗膜の劣化を十分に再現できる、塗膜の劣化促進試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成を採用することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[7]を提供する。
[1]金属板の表面に塗膜が配置された試験片を、腐食成分を含有する腐食性ダストに埋設して、上記塗膜を上記腐食性ダストと接触させる埋設工程と、上記腐食性ダストに水を噴霧して、上記腐食性ダストに水分を含ませる噴霧工程と、上記試験片および上記腐食性ダストの温度を上昇させて、上記腐食性ダストの水分を上記塗膜が吸収することを促進する湿潤工程と、上記試験片および上記腐食性ダストを乾燥する乾燥工程と、を備える、塗膜の劣化促進試験方法。
[2]上記腐食成分が、硫黄成分である、上記[1]に記載の塗膜の劣化促進試験方法。
[3]上記噴霧工程で噴霧する水が、純水である、上記[1]または[2]に記載の塗膜の劣化促進試験方法。
[4]上記噴霧工程では、上記腐食性ダストの含水率を飽和させる、上記[1]~[3]のいずれかに記載の塗膜の劣化促進試験方法。
[5]上記金属板が、鋼板である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の塗膜の劣化促進試験方法。
[6]上記噴霧工程、上記湿潤工程および上記乾燥工程を、それぞれ、下記条件で実施する、上記[1]~[5]のいずれかに記載の塗膜の劣化促進試験方法。
上記噴霧工程:温度25~60℃、時間8~16h
上記湿潤工程:温度40~60℃、相対湿度90~100%、時間8~16h
上記乾燥工程:温度50~70℃、相対湿度45~55%、時間20~28h
[7]上記噴霧工程、上記湿潤工程および上記乾燥工程を、それぞれ、下記条件で実施する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の塗膜の劣化促進試験方法。
上記噴霧工程:温度35℃、時間12h
上記湿潤工程:温度50℃、相対湿度95%、時間12h
上記乾燥工程:温度60℃、相対湿度50%、時間24h
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、腐食性ダスト環境下での塗膜の劣化を十分に再現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】塗膜劣化促進試験に用いる試験機を模式的に示す断面図である。
【
図2】塗膜の拡散係数と温度との関係を示すグラフである。
【
図3】吸水乾燥挙動テストの結果を示すグラフである。
【
図4】基準使用および仕様1~3の試験片の相対寿命を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、塗膜劣化促進試験に用いる試験機7を模式的に示す断面図である。
まず、試験機7の内部に配置される、試験ボックス1およびダスト受け2を説明する。
試験ボックス1は、上面が開口した容器であり、その底面には、貫通孔である水抜き孔6が形成されている。
試験ボックス1の素材は、例えば、ポリプロピレン等の樹脂である。
図1に示す試験ボックス1は直方体状であるが、試験ボックス1の形状は、これに限定されない。
【0011】
ダスト受け2は、試験ボックス1と同様に、上面が開口した容器である。ただし、ダスト受け2の底面には、貫通孔が形成されていない。
ダスト受け2の素材、形状などは、試験ボックス1と同じであってもよい。
図1に示すダスト受け2は、試験ボックス1と同じ形状である。
【0012】
より詳細には、
図1に示すように、まず、試験機7の内部の底面上に、ダスト受け2を配置し、その上に、試験ボックス1を重ねる。次いで、試験ボックス1の底面上に、網5を載せる。網5の素材は、例えば、ポリプロピレン等の樹脂である。
網5の上に、ダスト4の一部を、床敷材として敷き詰める。次いで、床敷材(ダスト4)の上に、試験片3を配置する。その後、残りのダスト4を、試験ボックス1の内部に装入して、試験片3を覆う。こうして、試験ボックス1の内部に、試験片3が埋設した状態で、ダスト4が収容される。
【0013】
ダスト4は、硫黄成分などの腐食成分を含有する腐食性ダストであり、例えば、製鉄所において、粗鋼を生産するためにベルトコンベアを用いて運搬される、鉱石、石炭、コークス等の原料に由来する。
具体的には、これらの原料のうち、運搬の際にベルトから落下してベルトコンベア等の躯体(フレーム)上に堆積したものを、腐食性ダストとして用いればよい。
例えば、コークスに由来するダスト(コークスダスト)は、腐食成分として硫黄成分を含有する。
【0014】
試験片3は、ベルトコンベア等の躯体を構成する部材の一部を想定したものであり、金属板と、その表面(片面または両面)に配置された塗膜とを有する。
金属板としては、例えば、躯体に用いられる従来公知の鋼板が挙げられ、その具体例としては、SS材(一般構造用圧延鋼材)、SM材(溶接構造用圧延鋼材)などの低炭素鋼板が挙げられる。これらの低炭素鋼板と成分組成がほぼ同等であるSPCC材(冷間圧延鋼板)を用いてもよい。
塗膜となる塗料としては、例えば、変性エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料、有機系ジンクリッチペイント、無機系ジンクリッチペイント等の従来公知の塗料が適宜用いられ、市販品を用いてもよい。
塗膜は、2種以上の塗料を順次塗布して形成される複数層の塗膜であってもよい。
塗膜の厚さ(膜厚)は、例えば、100~400μmであるが、これに限定されない。
【0015】
ところで、試験ボックス1の底面には、貫通孔である水抜き孔6が形成されているため、試験ボックス1の内部に収容されたダスト4は、水抜き孔6から落下し得る。
しかし、試験ボックス1の底面上には、網5が配置されているため、網5によって、ダスト4の落下が防止される。このため、網5の網目は、ダスト4が通過しにくいサイズおよび形状を、適宜選択することが好ましい。
【0016】
試験機7の内部の上面側には、噴霧設備8が設けられている。噴霧設備8は、下方に向けて、水9を噴霧する。水9としては、塩水ではなく、純水を用いる。
試験機7は、噴霧設備8を駆動でき、かつ、内部の温度および湿度などの条件を適宜変更できればよく、例えば、JIS K 5600-7-9に準拠する試験機(CCT試験機など)を用いてもよい。
【0017】
このような構成において、塗膜劣化促進試験を実施するには、まず、上述したように、試験ボックス1に収容されたダスト4に、試験片3を埋設して、試験片3の塗膜とダスト4と接触させる(埋設工程)。
【0018】
この状態で、試験機7の噴霧設備8を駆動して、試験ボックス1に収容されたダスト4に水9を噴霧し、ダスト4に水分を含ませる(噴霧工程)。
噴霧工程では、ダスト4の含水率が飽和するまで、ダスト4に水分を含ませることが好ましい。なお、噴霧工程では、ダスト4だけでなく、試験片3の塗膜にも、水分を含ませてもよい。ダスト4などに吸収されなかった余分な水9は、試験ボックス1の底面に形成された水抜き孔6を通過して、ダスト受け2に落下する。
【0019】
更に、試験機7の内部(すなわち、試験片3およびダスト4)の温度を、室温(例えば25℃)よりも上昇させて、ダスト4の水分を試験片3の塗膜に吸収させ、この吸収を促進する(湿潤工程)。
噴霧工程と湿潤工程とは、同じ工程であってもよい。
その後、試験片3(特に塗膜)およびダスト4を乾燥する(乾燥工程)。
【0020】
ここで、噴霧工程、湿潤工程および乾燥工程を実施する理由について説明する。
【0021】
まず、降水量>0mm/hまたは相対湿度(RH)>80%の環境を「濡れ」環境と定義する。一方、濡れ環境を満たさない環境を「乾燥」環境と定義する。
試験片の塗膜は、濡れ環境では吸水し、乾燥環境では乾燥される。
【0022】
本発明者らは、塗膜を水に接触させた状態で恒温恒湿槽に入れ、濡れ環境および乾燥環境において、各温度での塗膜質量の経時的な変化を測定し、塗膜の含水率を求めた。更に、下記式に基づいて、塗膜の拡散係数D(単位:m2/s)を求めた。
(Mt/M∞)=(4/L)×(Dt/π)2
t:経過時間(単位:s)
Mt:経過時間tでの塗膜の含水率
M∞:塗膜の飽和含水率
L:塗膜の厚さ(単位:m)
D:拡散係数(単位:m/s2)
【0023】
図2は、塗膜の拡散係数と温度との関係を示すグラフである。
図2に示すように、塗膜が吸水する場合も、塗膜が乾燥される場合も、温度が上昇するに伴い、拡散係数が増加している。同じ温度どうしで比べると、拡散係数は、塗膜が乾燥される場合の方が、塗膜が吸水する場合よりも大きい傾向にある。
塗膜が吸水する場合、水分子は、高分子体からなる塗膜の高分子網を進展させながら、塗膜の内部に進入するため、拡散係数は相対的に小さいと考えられる。一方、塗膜が乾燥される場合は、進展された高分子網から水分子が排出されるため、拡散係数は相対的に大きいと考えられる。
このような拡散係数の差を踏まえると、吸水の挙動は、濡れ環境が連続する時間(連続濡れ時間)に大きく影響されることが分かる。
【0024】
実環境での連続濡れ時間は、24~48hが多い。そこで、実環境を再現する観点から、ダストに埋設した試験片を、下記条件を満たす濡れ環境に曝露し、その後、下記条件を満たす乾燥環境に曝露する試験(吸水乾燥挙動テスト)を実施した。
・濡れ環境:温度25℃、相対湿度95%、時間48h
・乾燥環境:温度30℃、相対湿度60%、時間120h
【0025】
図3は、吸水乾燥挙動テストの結果を示すグラフである。横軸が経過時間(単位:h)、縦軸が塗膜およびダストの水分飽和率を示す。水分飽和率は、飽和含水量に対する各経過時間での含水量の割合である。
吸水乾燥挙動テストにおいては、まず、濡れ環境の開始時点で、試験片が埋設されたダストに給水した。コークスを搬送するベルトコンベアの躯体に堆積するダストを想定して、ダストの層さを、35mmとした。
濡れ環境では、塗膜だけでなく、ダストも吸水する。このため、
図3に示すように、乾燥環境に移行してからも、ある経過時間までは、ダストの水分を塗膜が吸収するため、塗膜の吸水が進む(塗膜の水分飽和率が上昇する)ことが分かる。
【0026】
このような塗膜の拡散係数と温度との関係(
図2)および吸水乾燥挙動テストの結果(
図3)を踏まえて、本発明者らは、上述した噴霧工程、湿潤工程および乾燥工程を実施することを想到した。
これらの工程を実施することにより、実環境における塗膜およびダストの吸水乾燥挙動が再現されるので、実環境と高い相関を有しつつ、短時間で、腐食性ダスト環境下での塗膜の劣化を十分に再現できる。
【0027】
噴霧工程、湿潤工程および乾燥工程について、温度、湿度、時間などの条件は、塗膜の特性などに基づいて適宜設定されるが、それぞれ、下記条件で実施することが好ましい。これにより、腐食性ダスト環境下での塗膜の劣化をより十分に再現できる(後述する[実施例]を参照)。
【0028】
噴霧工程の温度は、25~60℃が好ましく、30~40℃がより好ましく、35℃が更に好ましい。噴霧工程の時間は、8~16hが好ましく、10~14hがより好ましく、12hが更に好ましい。
湿潤工程の温度は、40~60℃が好ましく、45~55℃がより好ましく、50℃が更に好ましい。湿潤工程の相対湿度は、90~100%が好ましく、93~98%がより好ましく、95%が更に好ましい。湿潤工程の時間は、8~16hが好ましく、10~14hがより好ましく、12hが更に好ましい。
乾燥工程の温度は、50~70℃が好ましく、55~65℃がより好ましく、60℃が更に好ましい。乾燥工程の相対湿度は、45~55%が好ましく、48~53%がより好ましく、50%が更に好ましい。乾燥工程の時間は、20~28hが好ましく、22~26hがより好ましく、24hが更に好ましい。
【実施例0029】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施例に限定されない。
【0030】
まず、ダストおよび試験片を準備した。
ダストとしては、硫黄成分を含有するコークスダストを用いた。
試験片の金属板としては、鋼板(冷延鋼板)であるブラスト処理を施したSPCC材を用いた。この鋼板に、下記表1に示す塗料を塗布して、塗膜を形成し、基準仕様および仕様1~3の試験片を得た。
試験片は、後述する試験に供する前に、加工して、人工欠陥を付与した。
【0031】
【0032】
図1に基づいて説明した試験機(JIS K 5600-7-9に準拠した試験機)を用いて、塗膜劣化促進試験を実施した。
すなわち、試験片をダストに埋設した状態で、噴霧設備から純水を噴霧した(噴霧工程)。次いで、試験機の内部の温度を上昇させて、ダストの水分を塗膜が吸収することを促進した(湿潤工程)。その後、試験片およびダストを乾燥した(乾燥工程)。
噴霧工程、湿潤工程および乾燥工程は、下記条件で実施した。
・噴霧工程:温度35℃、時間12h
・湿潤工程:温度50℃、相対湿度95%、時間12h
・乾燥工程:温度60℃、相対湿度50%、時間24h
噴霧工程の時間を短縮するため、ダストの厚さは10mmとした。噴霧工程では、純水の噴霧量を3±1mL/h/80cm
2とし、ダストの含水率が飽和するまで純水を噴霧した。
【0033】
上述した塗膜劣化促進試験とは別に、試験片をダスト(厚さ:35mm)に埋設した状態で、実際の屋外に曝露する現地曝露試験も実施した。
試験後、試験片における人工欠陥の膨れ面積を計測した。基準仕様の膨れ面積に対する膨れ面積の割合を相対寿命として求めた。
図4は、基準使用および仕様1~3の試験片の相対寿命を示すグラフである。
図4に示すように、基準仕様および仕様1~3の相対寿命の大小関係は、実施例と現地曝露試験とでほぼ一致していた。すなわち、実施例の塗膜劣化促進試験では、実環境と高い相関を有しつつ、短時間で、腐食性ダスト環境下での塗膜の劣化を十分に再現できた。