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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013949
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】カムクラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/08 20060101AFI20240125BHJP
   F16D 41/07 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F16D41/08 A
F16D41/07 A
F16D41/07 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116424
(22)【出願日】2022-07-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】嶌中 祐仁
(57)【要約】
【課題】カムの噛み込みの発生を防止して動作モードの切り替えを極めて軽い力で円滑に行うことが可能であり、小型化を実現可能なカムクラッチを提供すること。
【解決手段】外輪110及び内輪160に対する噛み合い方向が互いに異なる第1カム170a及び第2カム170bにそれぞれ接触するカム接触面を有する第1接触面部材130及び第2接触面部材140を備え、第1接触面部材130及び第2接触面部材140は、回転軸方向の異なる位置に設けられ外輪本体120に対してそれぞれ独立して周方向に移動可能に構成され、外輪本体120は、第1接触面部材130及び第2接触面部材140のそれぞれのロック方向の移動を規制する第1移動規制部122及び第2移動規制部123を有すること。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の回転軸上に相対回転可能に設けられている外輪及び内輪と、前記外輪と前記内輪との間において周方向に配列された複数のカムとを備えたカムクラッチであって、
前記複数のカムは、前記外輪及び前記内輪に対する噛み合い方向が互いに異なる第1カム及び第2カムを含み、
前記第1カム及び第2カムの少なくとも一方に作用して動作モードを切り替える動作モード切替機構を備え、
前記外輪または内輪は、外輪本体または内輪本体と、前記第1カム及び第2カムにそれぞれ接触するカム接触面を有する第1接触面部材及び第2接触面部材とを備え、
前記第1接触面部材及び第2接触面部材は、回転軸方向の異なる位置に設けられ前記外輪本体または内輪本体に対してそれぞれ独立して周方向に移動可能に構成され、
前記外輪本体または内輪本体は、前記第1接触面部材及び第2接触面部材のそれぞれのロック方向の移動を規制する第1移動規制部及び第2移動規制部を有することを特徴とするカムクラッチ。
【請求項2】
前記外輪または内輪は、前記第1接触面部材及び第2接触面部材を非ロック方向に付勢する付勢部材を有することを特徴とする請求項1に記載のカムクラッチ。
【請求項3】
前記付勢部材は、一端が前記第1接触面部材、他端が第2接触面部材と接触するバネ部材であることを特徴とする請求項2に記載のカムクラッチ。
【請求項4】
前記第1接触面部材及び第2接触面部材は、前記第1カム及び第2カムを介して対向する前記内輪または外輪との間で摩擦力により非ロック方向への移動力を得るよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のカムクラッチ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作モードを切り替え可能に構成されたカムクラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
回転力の伝達と遮断を制御するクラッチとして、正転方向及び逆転方向の両方向に駆動と空転が切り替え可能な2方向クラッチが知られている。
例えば、特許文献1には、付勢手段によって回転ロック方向が逆方向になるように付勢された第1スプラグ及び第2スプラグをともに保持する保持器を制御して、正転方向及び逆転方向の両方向の回転を許容する両方向フリーモード、正転方向に対してのみ回転を許容し逆転方向の回転を禁止する一方向ロックモードおよび逆転方向に対してのみ回転を許容し正転方向の回転を禁止する一方向ロックモードの3つの動作モードの切り替えが可能に構成されたクラッチが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-231828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、上述の2方向クラッチにおいては、動作モードの変更に際して保持器を制御することで第1スプラグ及び第2スプラグのすべてのものが強制的に傾倒されるものであるため、外輪及び内輪の正転方向及び逆転方向の両方向の相対的な回転を禁止する両方向ロックモードを実現することはできない。
【0005】
また、上述の2方向クラッチにおいては、第1スプラグおよび第2スプラグは外輪及び内輪に接触するように付勢されており、外輪または内輪にトルクが働くと、一方のスプラグが外輪及び内輪に直ちに噛み合いを開始するように傾倒するが、他方のスプラグは外輪及び内輪と摺動しながら接触を続け、噛み合い待機の状態を維持する。
トルクが除荷されることで一方のスプラグが噛み合い解除方向に傾倒して空転状態に移行されることになるが、このとき、一方のスプラグの噛み合いが解除されるまでの間に、他方のスプラグが噛み合い方向に傾倒して外輪及び内輪に対し噛み合いを開始し、すべてのカムが同時に噛み合う「噛み込み」が生ずるおそれがある。
【0006】
このような状態にあっては、すべてのスプラグが高い面圧をもって噛み合っているため、クラッチの動作モードを外輪及び内輪の正逆いずれか一方向または両方向の相対的な回転動作を禁止するロックモードから外輪及び内輪の両方向の相対的な回転動作を許容するフリーモードに切り替えるときに、スプラグの姿勢を変更するのに大きな力が必要となり、スプラグの外輪及び内輪に対する係合面や、外輪の軌道面及び内輪の軌道面を痛め、クラッチを短命化させてしまうおそれがあった。さらに、スプラグの姿勢を変更するための姿勢変更部材に、高い剛性が必要となる、という問題もある。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、カムの噛み込みの発生を防止して動作モードの切り替えを極めて軽い力で円滑に行うことが可能であり、小型化を実現可能なカムクラッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、同一の回転軸上に相対回転可能に設けられている外輪及び内輪と、前記外輪と前記内輪との間において周方向に配列された複数のカムとを備えたカムクラッチであって、前記複数のカムは、前記外輪及び前記内輪に対する噛み合い方向が互いに異なる第1カム及び第2カムを含み、前記第1カム及び第2カムの少なくとも一方に作用して動作モードを切り替える動作モード切替機構を備え、前記外輪または内輪は、外輪本体または内輪本体と、前記第1カム及び第2カムにそれぞれ接触するカム接触面を有する第1接触面部材及び第2接触面部材とを備え、前記第1接触面部材及び第2接触面部材は、回転軸方向の異なる位置に設けられ前記外輪本体または内輪本体に対してそれぞれ独立して周方向に移動可能に構成され、前記外輪本体または内輪本体は、前記第1接触面部材及び第2接触面部材のそれぞれのロック方向の移動を規制する第1移動規制部及び第2移動規制部を有することにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本請求項1に係る発明によれば、第1カム及び第2カムにそれぞれ接触するカム接触面を有する第1接触面部材及び第2接触面部材を備え、第1接触面部材及び第2接触面部材は、回転軸方向の異なる位置に設けられ外輪本体または内輪本体に対してそれぞれ独立して周方向に移動可能に構成され、外輪本体または内輪本体は第1接触面部材及び第2接触面部材のそれぞれのロック方向の移動を規制する第1移動規制部及び第2移動規制部を有することで、第1カム及び第2カムの両方が作動可能な両方向ロックモードの際に、回転負荷方向に応じて第1接触面部材または第2接触面部材が移動することで遊びを生じ、回転負荷状態が変化した際に第1カム及び第2カムのうち回転負荷のないカムは遊びの移動分は第1接触面部材または第2接触面部材と噛み合わない状態とすることができるため、外輪と内輪の間でトルクが発生していない状態では、第1カム及び第2カムが外輪及び内輪に同時に噛み合う噛み込みが生ずることが回避される。
このことで、両方向ロックモードから他のモードに変更する際に、極めて軽い力で円滑にカムを傾倒させることができ、動作モード切替機構に高い剛性や強い駆動力が不要となることで小型化が実現可能となる。
【0010】
本請求項2に係る発明によれば、非ロック方向に付勢する付勢部材によって第1接触面部材または第2接触面部材を確実に移動させて遊びを生じさせることができ、より確実に第1カム及び第2カムが同時に外輪及び内輪に噛み合う噛み込みが生ずることが回避される。
本請求項3に係る発明によれば、1つのバネによって第1接触面部材または第2接触面部材を確実に移動させることができ、構造が簡素化される。
本請求項4に係る発明によれば、第1接触面部材または第2接触面部材の移動が、両方向ロックモードにおけるカムの噛み合いのための外輪と内輪の相対的なわずかな回転による移動のみとなることで、移動を制限する部材を設ける必要がなく、外輪または内輪の攻勢をより簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態のカムクラッチの動作モード切替機構を省略した斜視図。
図2図1に示すカムクラッチの回転軸心を含む平面で切った断面斜視図。
図3図1に示すカムクラッチの外輪本体を省略した斜視図。
図4】本発明の第2実施形態のカムクラッチの概略図。
図5】本発明の第3実施形態のカムクラッチの概略図。
図6】本発明の第4実施形態のカムクラッチの概略図。
図7】本発明の第5実施形態のカムクラッチの概略図。
図8】本発明のカムクラッチの動作説明図。
図9】本発明のカムクラッチの動作説明図。
図10】本発明のカムクラッチの動作説明図。
図11】本発明のさらに他の実施形態のカムクラッチの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態のカムクラッチ100は、図1図3に示すように、同一軸上に相対回転可能に設けられた外輪110及び内輪160と、外輪110と内輪160との間の環状空間において周方向に間隔を空けて配列され外輪110と内輪160との間でトルクの伝達及び遮断を行う係合子としての複数の第1カム170a、第2カム170bを備えている。
外輪110は、外輪本体120と、第1カム170aに接触するカム接触面を有する第1接触面部材130と、第2カム170bに接触するカム接触面を有する第2接触面部材140とを備え、第1接触面部材130及び第2接触面部材140は、回転軸方向の異なる位置に設けられ外輪本体120に対してそれぞれ独立して周方向に移動可能に構成されている。
【0013】
外輪本体120は、第1接触面部材130及び第2接触面部材140のそれぞれのロック方向の移動を規制する第1移動規制部122及び第2移動規制部123を備えた移動規制溝121を有しており、第1接触面部材130の第1移動規制突出部131及び第2接触面部材140の第2移動規制突出部141が移動規制溝121内に突出することで、それぞれ周方向の移動範囲が規制される。
本実施形態では、移動規制溝121が円周方向3か所に設けられているが、2か所以下や4か所以上であってもよい。
第1接触面部材130及び第2接触面部材140は、第1付勢突出部132及び第2付勢突出部142を有しており、本実施形態では第1付勢突出部132と第2付勢突出部142とを引っ張るように設けられた付勢部材であるバネ150によって、第1接触面部材130及び第2接触面部材140を非ロック方向に付勢している。
第1付勢突出部132、第2付勢突出部142及びバネ150は、外輪本体120に設けられた付勢部材収容溝124内に収容されている。
本実施形態では、付勢部材収容溝124が円周方向1か所に設けられているが、2か所以上であってもよい。
【0014】
なお、図示はしていないが、周知のカムクラッチと同様に、複数のカムの各々を外輪110及び内輪160に接触するように噛み合い方向に付勢する付勢手段、外輪110と内輪160との間において同一軸上に外輪110または内輪160と共に回転可能に設けられ複数のカムの各々を保持するケージリング等が備えられている。
また、図示はしていないが、第1カム170a及び第2カム170bに作用して姿勢を変えることで動作モードを切り替える動作モード切替機構が備えられている。
【0015】
第1カム170a及び第2カム170bは、外輪110及び内輪160に対する噛み合い方向が互いに異なり、本実施形態においては、例えば互いに同一の外形形状を有するものであって、第1カム170aを表裏反転させたものを第2カム170bとして用いている。
第1カム170a及び第2カム170bは、それぞれ、周方向に等間隔で交互に並ぶよう配置されている。
第1カム170a及び第2カム170bの配列は、特に限定されるものではなく、第1カム170a及び第2カム170bは周方向に交互に並ぶよう配置されていなくてもよく、また、第1カム170a及び第2カム170bの数とが異なっていてもよい。
【0016】
第1カム170a及び第2カム170bは、径方向中央部にくびれ部を有し、略ひょうたん形形状をなすよう構成されている。
第1カム170aの噛み合い方向は、図1における反時計方向(以下、「逆転方向」という。)であって、第1カム170aは、外輪110が逆転方向に回転されることで、もしくは、内輪160が図1における時計方向(以下、「正転方向」という。)に回転されることで外輪110及び内輪160に対し噛み合うように構成されている。
第2カム170bの噛み合い方向は、正転方向であって、第2カム170bは、外輪110が正転方向に回転されることで、もしくは、内輪160が逆転方向に回転されることで外輪110及び内輪160に対し噛み合うように構成されている。
ている。
【0017】
本実施形態におけるカムクラッチは、図示しない動作モード切替機構によって、正転方向における外輪110及び内輪160の相対回転を禁止する正転方向ロックモード、逆転方向における外輪110及び内輪160の相対回転を禁止する逆転方向ロックモード、正転方向及び逆転方向の両方向における外輪110及び内輪160の相対回転を禁止する両方向ロックモード、及び、正転方向及び逆転方向の両方向における外輪110及び内輪160の相対回転を許容する両方向フリーモードの4つの動作モードが切り替え可能となっている。
【0018】
上記実施形態では、第1接触面部材130及び第2接触面部材140を非ロック方向に付勢する付勢部材として、第1付勢突出部132と第2付勢突出部142とを引っ張るバネ150が設けられているが、付勢部材はこれに限定されない。
例えば、図4に概略で示すように、第1接触面部材130及び第2接触面部材140を離れる方向に押圧するバネ150を設けてもよい。
また、図5に示すように、第1付勢突出部132と外輪本体120の間、および、第2付勢突出部142と外輪本体120の間にそれぞれ独立したバネ150を設けてもよい。
また、上記実施形態では、外輪110が、外輪本体120と第1接触面部材130及び第2接触面部材140を有し、第1カム170a及び第2カム170bは内輪160と、第1接触面部材130及び第2接触面部材140に接触するように構成されているが、図6に示すように、内輪160が、内輪本体161と第1接触面部材130及び第2接触面部材140を有し、第1カム170a及び第2カム170bは外輪110と第1接触面部材130及び第2接触面部材140に接触するように構成してもよい。
さらに、後述するように非ロック方向への付勢は、内輪160の移動方向に内輪160の移動量と同じだけ移動させるためのものであることから、図7に示すように、直接非ロック方向に付勢するバネ150に変えて、内輪160から押し付けバネ152を介して摩擦部151を第1接触面部材130及び第2接触面部材140に押し付けるように構成してもよい。
【0019】
以下、本発明に係るカムクラッチ100の動作について、従来のカムクラッチ500と比較しながら説明する。
まず、図8に示すように、両方向ロックモード(第1カム170a、570a及び第2カム170b、570bともに動作可能な状態)で、外輪110、510が固定され外輪110、510と内輪160、560とが無負荷(相対的な回転駆動力がゼロ)の状態(a)から、内輪160、560に逆転方向の駆動力がかかった場合、(b)に示すように、内輪160、560が僅かに逆転方向に移動して第2カム170b、570bが僅かに傾いて噛み込むことで駆動力に対抗するトルクを発生して内輪160、560の逆転方向への回転を阻止する。
この時、第1カム170a、570aは、いずれも、内輪160、560及び第1接触面部材130、外輪510に接触するよう図示しない付勢手段で付勢されているため、従来のカムクラッチ500では、第1カム570aが滑ることとなる。
これに対し、本発明に係るカムクラッチ100では、第1接触面部材130がバネ150の付勢力を借りて第1カム170aとすべることなく僅かに逆転方向に移動する。
【0020】
次に、図9に示すように、(b)の状態から、逆転方向の駆動力が解除されて再び外輪110、510と内輪160、560とが無負荷となった場合、第2カム170b、570bの傾きが元に戻り内輪160、560を正転方向に戻すように作用する。
この時、従来のカムクラッチ500では、直ちに第1カム570aが傾いて噛み込み始め、第2カム570bの傾きが完全に戻ることなく、内輪560が初期の位置に戻ることなく、(c)に示すように第1カム570aと第2カム570bが同じ噛み込み状態となる位置で静止する。
これに対し、本発明に係るカムクラッチ100では、(b)の状態で、第1接触面部材130が内輪160と同じだけ逆転方向に移動しているため、第1カム170aが傾いて噛み込むことなく、第1接触面部材130がバネ150を圧縮しながら正転方向に移動し、(c)に示すように第2カム170bの傾きが完全に戻った時点で、(c)に示すように第1カム170aも第2カム170bも噛み込みが発生していない初期状態(図8の(a))の状態に復帰する。
【0021】
次に、図10に示すように、(c)の状態から、内輪160、560に正転方向の駆動力がかかった場合、(d)に示すように、内輪160、560が僅かに正転方向に移動して第1カム170a、570aが僅かに傾いて噛み込むことで駆動力に対抗するトルクを発生して内輪160、560の正転方向への回転を阻止する。
この時、従来のカムクラッチ500では、第2カム570aの噛み込みが緩和するように傾きが戻ることとなる。
これに対し、本発明に係るカムクラッチ100では、第2接触面部材140がバネ150の付勢力を借りて第2カム170bとすべることなく僅かに正転方向に移動する。
【0022】
さらに、正転方向の駆動力が解除されて再び外輪110、510と内輪160、560とが無負荷となった場合、前述の図9の(b)から(c)に至る過程と同様に、第1カム170a、570aの傾きが元に戻り内輪160、560を逆転方向に戻すように作用する。
この時、従来のカムクラッチ500では、直ちに第2カム570bが傾いて噛み込み始め、第1カム570aの傾きが完全に戻ることなく、第1カム570aと第2カム570bが同じ噛み込み状態となる位置で静止する。
これに対し、本発明に係るカムクラッチ100では、図10の(d)の状態で、第2接触面部材140が内輪160と同じだけ正転方向に移動しているため、第2カム170bが傾いて噛み込むことなく、第2接触面部材140がバネ150を圧縮しながら逆転方向に移動し、第1カム170aの傾きが完全に戻った時点で、第1カム170aも第2カム170bも噛み込みが発生していない初期状態(図8の(a))の状態に復帰する。
【0023】
以上のことから、従来のカムクラッチ500では、両方向ロックモードで駆動力の阻止が一度でも発生すると、無負荷(相対的な回転駆動力がゼロ)の状態となっても第1カム570aと第2カム570bの両方が噛み込んでいる状態となるため、第1カム570a及び第2カム570bに作用して姿勢を変えることで動作モードを切り替える動作モード切替機構に大きな操作力が必要となる。
これに対し、本発明に係るカムクラッチ100では、無負荷(相対的な回転駆動力がゼロ)の状態では、第1カム170aも第2カム170bも噛み込んでいない状態とすることが可能なため、動作モードの切り替えを極めて軽い力で円滑に行うことが可能となる。
【0024】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
例えば、上記実施形態においては、付勢部材としてバネ150、摩擦部材151等を用いたが、図11に示すように、付勢部材を用いず、第1カム170a及び第2カム170bの接触力のみで第1接触面部材130及び第2接触面部材140の移動を行うようにしてもよい。
また、第1カム170a及び第2カム170bの形状は、第1実施形態のようないわゆるスプラグ形状でもよく、その他の概略図で示したような円筒をベースとする形状であってもよい。
また、第1接触面部材130及び第2接触面部材140は、それぞれ1つずつ、軸方向並列に配置したが、それぞれ複数配置してもよく、第1接触面部材130及び第2接触面部材140をカムとの接触部分が同一円周上に並ぶような入れ子形状とし、第1カム170a及び第2カム170bが同一円周上に配置されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
100、500 ・・・ カムクラッチ
110、510 ・・・ 外輪
120 ・・・ 外輪本体
121 ・・・ 移動規制溝
122 ・・・ 第1移動規制部
123 ・・・ 第2移動規制部
124 ・・・ 付勢部材収容溝
130 ・・・ 第1接触面部材
131 ・・・ 第1移動規制突出部
132 ・・・ 第1付勢突出部
140 ・・・ 第2接触面部材
141 ・・・ 第2移動規制突出部
142 ・・・ 第2付勢突出部
150 ・・・ バネ(付勢部材)
151 ・・・ 摩擦部(付勢部材)
152 ・・・ 押し付けバネ(付勢部材)
160、560 ・・・ 内輪
161 ・・・ 内輪本体
170a、570a・・・ 第1カム
170b、570b・・・ 第2カム

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11