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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139491
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/43 20180101AFI20241002BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20241002BHJP
   F21S 41/25 20180101ALI20241002BHJP
   F21S 41/20 20180101ALI20241002BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20241002BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20241002BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241002BHJP
【FI】
F21S41/43
F21S41/143
F21S41/25
F21S41/20
F21S41/663
F21W102:155
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050446
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】村松 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆芳
(57)【要約】
【課題】 出射する光をロービームとハイビームとで切り替え可能であり、ロービームの配光パターンへの熱の影響を抑制し得る車両用前照灯を提供する。
【解決手段】 車両用前照灯1は、ロービームの配光パターンを形成する第1の光L1を第1部位から出射する第1発光光学系LE1と、第1部位より下方に位置する第2部位から第1の光L1とによってハイビームの配光パターンPHを形成する第2の光L2を出射する第2発光光学系LE2と、投影レンズ35と、第1部位及び第2部位と投影レンズ35との間に配置され、上面50S1に第1の光L1の一部が照射される板状のシェード50と、を備え、シェード50は、ロービームの配光パターンPLのカットオフラインCLを形成する中央前端部51と、中央前端部51の左右方向の両端にそれぞれ接続する一対の外側前端部52とを含み、一対の外側前端部52のそれぞれにスリット53が形成される。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロービームの配光パターンを形成する第1の光を第1部位から前方に向けて出射する第1発光光学系と、
前記第1部位より下方に位置する第2部位から前記第1の光とによってハイビームの配光パターンを形成する第2の光を前方に向けて出射する第2発光光学系と、
前記第1部位及び前記第2部位より前方に配置され、前記第1の光及び前記第2の光が透過する投影レンズと、
前記第1部位及び前記第2部位と前記投影レンズとの間に配置され、上面に前記第1の光の一部が照射される板状のシェードと、
を備え、
前記シェードは、前記ロービームの配光パターンのカットオフラインを形成する中央前端部と、当該中央前端部の左右方向の両端にそれぞれ接続する一対の外側前端部とを含み、
一対の前記外側前端部の少なくとも一方にスリットが形成される
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記スリットは、一対の前記外側前端部の両方に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記スリットは、V字状である
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記スリットの幅方向の中心線は、後方に向かって前記中央前端部側と反対側に傾斜する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
前記中央前端部は、後方に凹状となる弧状に湾曲し、
前記スリットの後端の前後方向の位置は、前記中央前端部における最も後方に位置する部位より前方である
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項6】
前記中央前端部は、後方に凹状となる弧状に湾曲し、
前記スリットの後端の前後方向の位置は、前記中央前端部における最も後方に位置する部位と同じまたは当該部位より後方である
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項7】
前記スリットと重なるように前記シェードに重ね合わされる閉塞部材を更に備える
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用前照灯。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
出射する光をロービームとハイビームとで切り替え可能な車両用前照灯が知られており、下記特許文献1にはこのような車両用前照灯が開示されている。
【0003】
下記特許文献1に開示される車両用前照灯は、第1発光光学系と、第1発光光学系より下方に配置される第2発光光学系と、第1発光光学系及び第2発光光学系より前方に配置される投影レンズと、第1発光光学系及び第2発光光学系と投影レンズとの間に配置される板状のシェードと、を備える。第1発光光学系から出射する第1の光及び第2発光光学系から出射する第2の光は投影レンズを透過する。シェードの上面に第1の光の一部が照射され、第1の光によって形成される配光パターンにカットオフラインが形成され、当該配光パターンがロービームの配光パターンとなる。また、第1の光と第2の光との重ね合わせによってハイビームの配光パターンが形成される。このため、第2発光光学系の第2の光の出射と非出射とを切り替えることで、出射する光をロービームとハイビームとで切り替え可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2982902号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、ロービームの配光パターンにおけるカットオフラインの近傍は明るい。このため、シェードの前端部に照射される第1の光の強度が強くなる傾向にある。このため、第1の光によってシェードの前端部が加熱され、ロービームの配光パターンに影響が生じる場合がある。このため、ロービームの配光パターンへの熱の影響を抑制したいとの要請がある。
【0006】
そこで本発明は、出射する光をロービームとハイビームとで切り替え可能であり、ロービームの配光パターンへの熱の影響を抑制し得る車両用前照灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的の達成のため、本発明の車両用前照灯は、ロービームの配光パターンを形成する第1の光を第1部位から前方に向けて出射する第1発光光学系と、前記第1部位より下方に位置する第2部位から前記第1の光とによってハイビームの配光パターンを形成する第2の光を前方に向けて出射する第2発光光学系と、前記第1部位及び前記第2部位より前方に配置され、前記第1の光及び前記第2の光が透過する投影レンズと、前記第1部位及び前記第2部位と前記投影レンズとの間に配置され、上面に前記第1の光の一部が照射される板状のシェードと、を備え、前記シェードは、前記ロービームの配光パターンのカットオフラインを形成する中央前端部と、当該中央前端部の左右方向の両端にそれぞれ接続する一対の外側前端部とを含み、一対の前記外側前端部の少なくとも一方にスリットが形成されることを特徴とするものである。
【0008】
この車両用前照灯によれば、第2発光光学系の第2の光の出射と非出射とを切り替えることで、出射する光をロービームとハイビームとで切り替え可能である。また、この車両用前照灯では、シェードの中央前端部によってロービームの配光パターンのカットオフラインが形成されるため、当該カットオフラインは中央前端部に対応する形状となる。また、この車両用前照灯では、上記のように、中央前端部の左右方向の両端にそれぞれ接続する一対の外側前端部の少なくとも一方にスリットが形成される。このため、この車両用前照灯によれば、第1の光によってシェードの中央前端部が加熱されて膨張する場合であっても、この膨張をスリットが変形することによって吸収し得、中央前端部が上下方向に湾曲することを抑制し得る。従って、この車両用前照灯によれば、熱に起因するロービームの配光パターンの変形を抑制し得、ロービームの配光パターンへの熱の影響を抑制し得る。
【0009】
前記スリットは、一対の前記外側前端部の両方に形成されてもよい。
【0010】
このような構成にすることで、シェードにおける中央前端部の熱による膨張をより吸収し得、ロービームの配光パターンへの熱の影響をより抑制し得る。
【0011】
前記スリットは、V字状であってもよい。
【0012】
このような構成にすることで、例えば、スリットが幅及び深さが同じ矩形状である場合と比べて、スリットの面積を小さくでき、スリットを通って意図しない領域に照射される第1の光を少なくし得る。
【0013】
前記スリットの幅方向の中心線は、後方に向かって前記中央前端部側と反対側に傾斜してもよい。
【0014】
シェードの上面に照射される第1の光の光量は、左右方向において中央前端部に近いほど多くなる傾向にあり、中央前端部より後方の領域であっても同様の傾向がある。この車両用前照灯によれば、スリットの幅方向の中心線が後方に向かって中央前端部側と反対側に傾斜しない場合と比べて、スリットにおける後端側を左右方向において中央前端部から遠ざけることができ、スリットを通って意図しない領域に照射される第1の光を少なくし得る。
【0015】
前記中央前端部は、後方に凹状となる弧状に湾曲し、前記スリットの後端の前後方向の位置は、前記中央前端部における最も後方に位置する部位より前方であってもよい。
【0016】
この車両用前照灯によれば、スリットの後端の位置が中央前端部における最も後方に位置する部位とお同じまたは当該部位より後方である場合と比べて、車両の振動でシェードにおける中央前端部が振動することを抑制し得る。このため、この車両用前照灯によれば、車両の振動によってロービームのカットオフラインが変化することを抑制し得る。
【0017】
或いは、前記中央前端部は、後方に凹状となる弧状に湾曲し、前記スリットの後端の位置は、前記中央前端部における最も後方に位置する部位と同じまたは当該部位より後方に位置してもよい。
【0018】
この車両用前照灯によれば、スリットの後端の位置が中央前端部における最も後方に位置する部位より前方である場合と比べて、シェードにおける中央前端部の熱による膨張をより吸収し得、ロービームの配光パターンへの熱の影響をより抑制し得る。
【0019】
上記の車両用前照灯は、前記スリットと重なるように前記シェードに重ね合わされる閉塞部材を更に備えてもよい。
【0020】
この車両用前照灯によれば、閉塞部材を備えない場合と比べて、スリットを通って意図しない領域に照射される第1の光を少なくし得る。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明によれば、出射する光をロービームとハイビームとで切り替え可能であり、ロービームの配光パターンへの熱の影響を抑制し得る車両用前照灯を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態における車両用前照灯を示す側面図である。
図2】灯具ユニットを示す分解斜視図である。
図3】灯具ユニットを示す正面図である。
図4図3のIV-IV線における灯具ユニットの断面図である。
図5図3のV-V線における灯具ユニットの断面図である。
図6】シェード及び補強部材を示す斜視図である。
図7】シェードを示す平面図である。
図8】シェードに補強部材が重ねあわされた状態を示す正面図である。
図9図4の一部を拡大し、第1光源から出射する第1の光及び第2光源から出射する第2の光の光路例を示す図である。
図10】本実施形態におけるロービームの配光パターンを示す図である。
図11】本実施形態におけるハイビームの配光パターンを示す図である。
図12】第1変形例におけるシェードを図7と同様に示す図である。
図13】第2変形例におけるシェードを図7と同様に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る車両用前照灯の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができる。また、本発明は、以下に例示する実施形態における構成要素を適宜組み合わせてもよい。なお、以下で参照する図面では、理解を容易にするために、各部材の寸法を変えて示す場合がある。また、図面では、見易さのため、同様の構成要素については一部にのみ参照符号が付され、一部参照符号が省略される場合がある。
【0024】
図1は、本実施形態における車両用前照灯を示す側面図である。車両用前照灯は、一般的に車両の前方の左右方向のそれぞれに備えられるものである。本明細書において「右」とは車両の前進方向において右側を意味し、「左」とは車両の前進方向において左側を意味する。左右の車両用前照灯のそれぞれは、形状が左右方向に概ね対称であることを除いて、同じ構成とされる。このため、以下では、一方の車両用前照灯について説明する。
【0025】
本実施形態の車両用前照灯1は、筐体10と灯具ユニットLUとを主な構成として備える。なお、図1において、筐体10は鉛直断面にて示されている。筐体10は、ランプハウジング11及び光透過性を有するフロントカバー12を有する。ランプハウジング11の前方は開口しており、当該開口を塞ぐようにフロントカバー12がランプハウジング11に固定される。ランプハウジング11及びフロントカバー12によって形成される空間は灯室Rであり、この灯室R内に灯具ユニットLUが収容される。
【0026】
図2は、灯具ユニットLUを示す分解斜視図であり、灯具ユニットLUを前方斜め上方から見る分解斜視図である。図3は、灯具ユニットLUを示す正面図であり、灯具ユニットLUを前方から見る正面図である。図4は、図3のIV-IV線における灯具ユニットLUの断面図である。図1から図4に示すように、本実施形態の灯具ユニットLUは、ヒートシンク20と、光源部30と、投影レンズ35と、導光体40と、シェード50と、補強部材60と、ホルダ80と、を主な構成として備える。
【0027】
図1図2に示すように、本実施形態のヒートシンク20は、概ね鉛直及び左右方向に延在する金属製のベース板21を有し、当該ベース板21の後面側及び前面側には複数の放熱フィン22がベース板21と一体に設けられている。ベース板21の前面側には、前方に向かって突出する3つのボス23がベース板21と一体に設けられている。それぞれのボス23には、先端面からボス23に沿ってねじ孔24が設けられている。
【0028】
本実施形態の光源部30は、3つの第1光源31a,31b,31cと、第2光源32と、回路基板33とを有する。回路基板33は、ヒートシンク20におけるベース板21の前面に載置され、図示しないねじによってベース板21に固定される。第1光源31a,31b,31c及び第2光源32は、回路基板33に実装され、回路基板33から電力が供給されることで前方に向かって白色の光を出射する。本実施形態では、第1光源31a,31b,31c及び第2光源32は、LED(Light Emitting Diode)である。第1光源31aは第1光源31bの右側に間隔をあけて配置され、第1光源31cは第1光源31bの左側に間隔をあけて配置され、これら第1光源31a,31b,31cは左右方向に並んでいる。第1光源31a,31b,31cは、ロービーム用の光源であり、ロービームの配光パターンを形成する第1の光を前方に出射する。第2光源32は、第1光源31a,31b,31cより下方に配置され、第2光源32と第1光源31bとが概ね鉛直方向に並んでいる。第2光源32は、ハイビーム用の光源であり、第1の光とによってハイビームの配光パターンを形成する第2の光を前方に出射する。なお、第1光源31a,31b,31c及び第2光源32の種類、数は、特に制限されるものではない。
【0029】
投影レンズ35は、透過する光の発散角を変化させるレンズであり、第1光源31a,31b,31c及び第2光源32より前方に配置される。本実施形態では、投影レンズ35は、外形が左右方向に長尺な概ねオーバルトラック形状の両凸非球面レンズである。図4に示すように、投影レンズ35の光軸35Cは、前後方向に延在し、第1光源31bと第2光源32との間を通る。なお、図4は、光軸35Cに沿った灯具ユニットLUの鉛直断面図である。投影レンズ35の外周面には、外方に向かって突出し全周に亘って延在するフランジ部36が設けられている。投影レンズ35を構成する材料として、例えば樹脂、ガラス等が挙げられる。
【0030】
図5は、図3のV-V線における灯具ユニットLUの断面図であり、第1光源31a,31b,31cを通る灯具ユニットLUの水平断面図である。なお、図5では、ヒートシンク20の記載が省略されている。図2図4図5に示すように、導光体40は、第1光源31a,31b,31c及び第2光源32と投影レンズ35との間に配置され、第1光源31a,31b,31cから出射する第1の光及び第2光源32から出射する第2の光を導光して投影レンズ35に入射させる。
【0031】
本実施形態の導光体40は、後方側に3つの第1入射面41a,41b,41cと第2入射面42とを有し、前方側に出射面43を有する。第1入射面41aには第1光源31aからの第1の光が入射し、第1入射面41bには第1光源31bからの第1の光が入射し、第1入射面41cには第1光源31cからの第1の光が入射し、第2入射面42には第2光源32からの第2の光が入射する。また、導光体40の前端部における上部及び左右両側部には、外方に向かって突出し導光体40の前端における外縁に沿って延在する板状のフランジ部48が設けられている。
【0032】
導光体40は、第1入射面41a,41b,41cから入射する第1の光を直接または全反射させて出射面43に導き、第2入射面42から入射する第2の光を直接または全反射させて出射面43に導く。出射面43は、このようにして導かれる第1の光及び第2の光を投影レンズ35に向けて出射する。本実施形態では、出射面43は、後方に向かって凹状に湾曲している。図4に示すように、この出射面43と投影レンズ35との間には、後述するシェード50が配置される。出射面43におけるシェード50の後端より上方の領域が第1の光を出射する第1出射領域43aである。また、シェード50の後端より下方の領域が第2の光を出射する第2出射領域43bである。導光体40は、このようになるように第1の光及び第2の光を導光する。このため、第1光源31a,31b,31cと導光体40とによって、第1の光を前方に向けて出射する第1発光光学系LE1が形成されている。また、第2光源32と導光体40とによって、第2の光を前方に向けて出射する第2発光光学系LE2が形成されており、第1発光光学系LE1と第2発光光学系LE2とは導光体40を共有している。第1発光光学系LE1における第1の光を出射する第1部位は、出射面43における第1出射領域43aである。第2発光光学系LE2における第2の光を出射する第2部位は、出射面43における第2出射領域43bであり、当該第2出射領域43bは、第1部位である第1出射領域43aより下方に位置している。第1発光光学系LE1から出射する光の光軸LE1Cは前方に向かって下方に傾斜し、第2発光光学系LE2から出射する光の光軸LE2Cは前方に向かって上方に傾斜する。
【0033】
図6は、シェード50及び補強部材60を示す斜視図であり、シェード50及び補強部材60を前方斜め上方から見る斜視図である。図7は、シェード50を示す平面図であり、シェード50を上方から見る平面図である。なお、図7における上側が車両の前方側であり、下側が車両の後方側である。詳細については後述するが、シェード50には、補強部材60が重ね合わされる。
【0034】
図6図7に示すように、本実施形態のシェード50は、前後及び左右に延在する平板状の板状部材であり、左右方向に長尺である。シェード50の前縁は、中央前縁CE1と当該中央前縁CE1の左右方向の両端にそれぞれ接続する一対の外側前縁OE1とを含む。このため、シェード50の前端部は、中央前縁CE1の全体を含む中央前端部51と、中央前端部51の左右方向の両端にそれぞれ接続し外側前縁OE1の全体をそれぞれ含み、中央前端部51の左右方向の両端にそれぞれ接続する一対の外側前端部52とを含む。本実施形態では、中央前縁CE1は、後方に凹状となる弧状に湾曲し、一対の外側前縁OE1は、左右方向に延びる同一直線上に位置する。このため、中央前端部51は、後方に凹状となる弧状に湾曲し、一対の外側前端部52は、左右方向に延びる同一直線上に位置する。なお、理解を容易にするため、図7では、中央前端部51にはドットから成るハッチングが施され、外側前端部52には斜線から成るハッチングが施されている。
【0035】
シェード50の後縁は、中央後縁CE2と当該中央後縁CE2の左右方向の両端にそれぞれ接続する一対の外側後縁OE2とを含む。本実施形態では、中央後縁CE2は、後方に凹状となる弧状に湾曲し、一対の外側後縁OE2は、左右方向に延びる同一直線上に位置する。また、中央後縁CE2の両端は、中央前縁CE1の両端より左右方向の外側に位置している。
【0036】
本実施形態では、左右両側のそれぞれの外側前端部52にスリット53が形成されおり、当該スリット53は外側前端部52を超えて当該外側前端部52より後方まで延在する。スリット53はV字状であり、スリット53の幅方向の中心線53Lは、後方に向かって中央前端部51側と反対側に傾斜する。また、右側のスリット53と左側のスリット53とは概ね左右対称の形状である。また、スリット53の後端53pは、中央前端部51における最も後方に位置する部位51pより前方に位置する。また、中央前縁CE1の右側端CE1aに、右側のスリット53の縁が接続し、中央前縁CE1の左側端CE1bに、左側のスリット53の縁が接続する。つまり、中央前端部51と外側前端部52との間にスリット53とが介在している。
【0037】
なお、スリット53の形状は制限されるものではなく、例えば、矩形状であってもよく、U字状であってもよく、右側のスリット53と左側のスリット53とで形状や大きさが異なっていてもよい。また、中心線53Lは、前後方向と平行であってもよく、後方に向かって中央前端部51側に傾斜してもよい。また、右側のスリット53の縁は中央前縁CE1の右側端CE1aに接続しなくてもよく、左側のスリット53の縁は中央前縁CE1の左側端CE1bに接続しなくてもよい。
【0038】
本実施形態のシェード50の上面50S1は、第1段差部55a、及び第2段差部55bを有する。これら段差部55a,55bは、シェード50が屈曲することで形成されている。上面50S1のうちこれら段差部55a,55b以外の領域は概ね水平方向に延在する面である。
【0039】
本実施形態の第1段差部55aは、前後方向に直線状に延在する。第1段差部55aの前端は中央前縁CE1における最も後方に位置する部位に接続し、第1段差部55aの後端は中央後縁CE2における最も後方に位置する部位に接続する。第1段差部55aの高さは、第1段差部55aの延在方向において一定であるが、一定でなくてもよい。また、第1段差部55aは、前後方向と非平行な方向に延在していてもよい。
【0040】
本実施形態の第2段差部55bは、右側のスリット53より右側に位置し、前後方向に直線状に延在する。第2段差部55bの前端は右側の外側前縁OE1に接続し、第2段差部55bの後端は中央後縁CE2に接続する。第2段差部55bの高さは、第2段差部55bの延在方向において概ね一定である。
【0041】
本実施形態では、第1段差部55aは、左側から右側に向かって上方へ傾斜する傾斜面によって形成され、第2段差部55bは、概ね鉛直方向に延在する面によって形成される。そして、上面50S1における第1段差部55aと第2段差部55bとの間の領域は、他の領域より高い。
【0042】
また、第1段差部55aの高さは、第2段差部55bの高さと同じであり、第1段差部55aより左側の領域の高さと第2段差部55bより右側の高さとが同じであるが、これら高さは互いに異なっていてもよい。また、第1段差部55aは、概ね鉛直方向に延在する面によって形成されてもよく、第2段差部55bは、鉛直方向に対して傾斜する傾斜面によって形成されてもよい。
【0043】
シェード50における中央前縁CE1の右側端CE1aより右側の部位及び中央前縁CE1の左側端CE1bより左側の部位のそれぞれには、厚み方向に貫通する2つの貫通孔50h1,50h2,及び2つの嵌合用貫通孔50h3が設けられる。つまり、貫通孔50h1,50h2,及び2つの嵌合用貫通孔50h3は、中央前端部51の右側端より右側の部位及び中央前端部51の左側端より左側の部位にそれぞれ設けられている。本実施形態では、シェード50における第2段差部55bより右側の部位、及び左側のスリット53より左側の部位のそれぞれに、貫通孔50h1,50h2,及び嵌合用貫通孔50h3が設けられる。また、本実施形態では、左側のスリット53と第1段差部55aとの間における後方側には、別の嵌合用貫通孔50h4が設けられる。上記のように、第1段差部55aより左側の領域の高さと第2段差部55bより右側の高さとが同じである。このため、これら貫通孔50h1,50h2及び嵌合用貫通孔50h3,50h4は高さが同じ部位に設けられている。左側の貫通孔50h1,50h2は概ね円形であり、右側の貫通孔50h1,50h2は左右方向に長尺な概ねオーバルトラック形状である。嵌合用貫通孔50h3,50h4は、概ね円形である。また、本実施形態では、左側のスリット53と第1段差部55aとの間における後方側にも、嵌合用貫通孔50h3が設けられる。
【0044】
本実施形態では、シェード50の上面50S1には、第1段差部55aと第2段差部55bとの間に位置する突起56が設けられる。突起56は、上方に突出する半球状であり、シェード50が湾曲されることによって形成される。なお、突起56の位置は制限されるものではなく、上面50S1に突起56が設けられなくてもよい。
【0045】
シェード50を形成する部材として、例えば金属板やめっき処理が施された金属板が挙げられ、金属として、例えばステンレス鋼、炭素鋼が挙げられる。シェード50の厚さは、例えば0.05mmから1.0mmである。
【0046】
前述のように、シェード50には、補強部材60が重ね合わされる。図8は、シェード50に補強部材60が重ね合わされた状態を示す正面図であり、シェード50及び補強部材60を前方から見る正面図である。
【0047】
図6から図8に示すように、本実施形態の補強部材60は、前後及び左右に延在する板状部材である。補強部材60は、左右一対の取付部62と、接続部63とから成り、補強部材60の形状は、前縁を除いて概ねシェード50と同様の形状である。補強部材60の上面60S1とシェード50の下面50S2とが対向し、補強部材60は、下方側からシェード50に重ね合わされる。なお、図7には、補強部材60が二点鎖線で示されており、当該補強部材60の位置は僅かにずらされている。
【0048】
右側の取付部62は、シェード50における中央前縁CE1の右側端CE1aより右側の部位のみと重なり、本実施形態では、第1段差部55aより右側の部位のみと重なる。左側の取付部62は、シェード50における左側端CE1bより左側の部位のみと重なり、本実施形態では、左側のスリット53より左側の部位のみと重なる。それぞれの取付部62は、シェード50の貫通孔50h1,50h2とそれぞれ重なる貫通孔60h1,60h2が設けられる。また、それぞれの取付部62は、嵌合用貫通孔50h3に対応する位置に設けられる突起62tを有し、当該突起62tが嵌合用貫通孔50h3に圧入されることで、シェード50に固定される。
【0049】
なお、補強部材60のシェード50への固定方法は制限されるもではなく、例えば、レーザー溶接によって固定してもよい。また、補強部材60がシェード50に固定される部位の位置は、特に制限されるものではない。
【0050】
接続部63は、一方の取付部62から他方の取付部62まで延在し、少なくとも一部がシェード50と重なる。本実施形態では、接続部63の右側端部が右側の取付部62の左側の後部に接続し、接続部63の左側端部が左側の取付部62の右側の後部に接続する。接続部63は、嵌合用貫通孔50h4に対応する位置に設けられる突起63tを有し、当該突起63tが嵌合用貫通孔50h4に圧入されることで、シェード50に固定される。接続部63は、シェード50における第1段差部55aより左側の部位に沿っており、接続部63とシェード50における第1段差部55aと第2段差部55bとの間の部位との間には隙間GPが形成されている。
【0051】
図7に示すように、平面視において、シェード50の中央前縁CE1は、接続部63より前方に位置する。そして、シェード50は、中央前端部51を含み補強部材60と重ならない部位と、補強部材60と重なり当該補強部材60が固定される部位とを含む。本実施形態では、接続部63の前縁63Eは、後方に凹状となる弧状に湾曲しており、前縁63Eと中央前縁CE1との距離は、左右方向に亘って所定距離以上に保たれている。
【0052】
また、本実施形態では、平面視において、補強部材60はシェード50のスリット53と重なっていない。
【0053】
補強部材60を形成する部材として、シェード50と同様の部材が挙げられ、補強部材60の厚さは、例えば0.05mmから1.0mmである。本実施形態では、補強部材60はシェード50より厚いが、補強部材60の厚さは、シェード50の厚さ以下であってもよい。また、本実施形態では、補強部材60のヤング率はシェード50のヤング率より高いが、補強部材60のヤング率はシェード50のヤング率以下であってもよい。
【0054】
このように補強部材60が固定されたシェード50は、図4に示すように、導光体40における第1の光を出射する部位である出射面43の第1出射領域43a及び第2の光を出射する部位である出射面43の第2出射領域43bと投影レンズ35との間に配置される。本実施形態では、シェード50は、投影レンズ35の光軸35Cに沿って前方から見る場合、出射面43を横切る。また、投影レンズ35の光軸35Cは、シェード50の第1段差部55aまたはその近傍を通り、投影レンズ35の後方焦点は、シェード50の中央前縁CE1のまたはその近傍に位置している。
【0055】
図2図4図5に示すように、本実施形態のホルダ80は、支持部81と、保護部82とを有し、投影レンズ35、導光体40、及びシェード50を支持する。ホルダ80を構成する材料として、例えば、不透明のポリカーボネートなどの樹脂を挙げることができ、本実施形態では、支持部81と保護部82とが一体に形成される。
【0056】
支持部81は、前後方向に延在する筒状の部材であり、前端部には、内周面から突出するフランジ部83が設けられている。投影レンズ35のフランジ部36は、このフランジ部83に前方側から当接し、フランジ部36が例えば超音波融着やレーザー溶着によってフランジ部83に固定される。支持部81における後端から前方に向かう所定範囲の下方側は、切り欠かれており、この所定範囲における右側の下端部及び左側の下端部には、外方に向かって概ね水平に延在する支持板84が設けられている。また、支持部81の後端部には、外面から支持部81の延在方向と概ね垂直な方向に突出する接続壁87が設けられている。図3に示すように、支持板84の下面には、下方に突出する台座部85が設けられている。シェード50における中央前縁CE1より外側の部位は、台座部85の先端に下方側から当接し、補強部材60の取付部62と共に、台座部85に固定される。本実施形態では、シェード50の上記の部位と補強部材60の取付部62とが熱カシメによって固定される。具体的には、台座部85から下方に突出してシェード50の貫通孔50h1及び補強部材60の貫通孔60h1を貫通するピンの先端部を熱によって溶融することで、貫通孔60h1における台座部85側と反対側の開口を塞ぐ頭部86を形成する。このようにすることで、シェード50の上記の部位及び補強部材60の取付部62が台座部85と頭部86とによって挟まれて、台座部85に固定される。図7には、熱カシメによって台座部85に固定される部位50aが一点鎖線で示されている。なお、シェード50の固定方法は特に限定されるものではなく、例えばレーザー溶着によって固定してもよい。
【0057】
図2図4図5に示すように、保護部82は、支持部81の後方に位置し、導光体40の左右の両側方及び上方を囲う板状部材である。本実施形態では、保護部82は、導光体40における前方側の部位の左右の両側方及び上方を囲う。保護部82の前端は接続壁87に接続し、導光体40のフランジ部48は、接続壁87に後方側から当接し、フランジ部48が例えば超音波融着やレーザー溶着によって接続壁87に固定される。こうして、投影レンズ35、導光体40、及びシェード50がホルダ80によって支持される。
【0058】
図2から図4に示すように、保護部82の後端部には、外面から概ね鉛直方向に突出する3つの固定板88が設けられている。固定板88は、ヒートシンク20のボス23に対応しており、固定板88は貫通孔88hを有する。固定板88がボス23の先端に前方側から当接し、ねじ89が貫通孔88hに挿入されてねじ孔24に締結されることで、ホルダ80がヒートシンク20に固定される。こうして、投影レンズ35、導光体40、及びシェード50がホルダ80を介してヒートシンク20に固定される。
【0059】
次に、車両用前照灯1によるロービームの配光パターンの形成について説明する。図9は、図4の一部を拡大し、第1光源から出射する第1の光及び第2光源から出射する第2の光の光路例を示す図である。なお、図9に示す光の反射角や屈折角等は正確でない場合がある。
【0060】
ロービームの配光パターンを形成する場合、第1発光光学系LE1から第1の光L1を出射させる。具体的には、第1光源31a,31b,31cから第1の光L1を出射させる。第1光源31bからの第1の光L1は、第1入射面41bから導光体40に入射し、第1出射領域43aから前方に位置する投影レンズ35に向けて出射する。第1光源31a,31cからの第1の光L1についても同様である。第1出射領域43aから出射する第1の光L1の多くは、シェード50の上方を通り、投影レンズ35に直接入射する。第1出射領域43aから出射する第1の光L1の一部は、シェード50の上面50S1に照射される。上面50S1における第1の光L1が照射される領域は、シェード50の中央前縁CE1の全体に接しており、当該領域にはシェード50の中央前端部51の上面が含まれる。そして、シェード50の上面50S1のうちシェード50の中央前端部51の上面は、第1の光L1の一部を投影レンズ35に向けて反射する。このため、中央前端部51によって第1の光L1が形成する配光パターンにカットオフラインが形成され、当該配光パターンがロービームの配光パターンとなる。つまり、中央前端部51は、ロービームの配光パターンのカットオフラインを形成しており、ロービームの配光パターンのカットオフラインは中央前端部51に対応する形状である。本実施形態では、上面50S1における第1の光L1が照射される領域内には、突起56が位置する。突起56は、第1の光L1の他の一部を投影レンズ35に入射しないように反射して遮光する。このため、ロービームの配光パターンにおける所定の領域が暗くされるようにし得る。また、上記のように上面50S1における第1の光L1が照射される領域は、中央前縁CE1の全体に接しているため、上面50S1における中央前縁CE1と突起56との間の領域にも第1の光L1が照射されており、当該領域が明るくなる。このため、暗くされる所定の領域とカットオフラインとの間に隙間ができるようにし得る。このようにしてロービームの配光パターンが第1の光L1によって形成され、このロービームの配光パターンを有する光が投影レンズ35を透過し、フロントカバー12を介して車両用前照灯1から出射される。
【0061】
図10は、本実施形態におけるロービームの配光パターンを示す図である。図10において、Sは水平線を示し、Vは車両の左右方向の中心を通る鉛直線を示し、車両の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に投影されるロービームの配光パターンPLが太線で示される。導光体40及びシェード50は、投影レンズ35に入射する第1の光L1の配光パターンがこのようなロービームの配光パターンPLとなるような形状とされる。本実施形態のロービームの配光パターンPLは、車両が右側通行である国や地域におけるものである。また、ロービームの配光パターンPLのカットオフラインCLは、シェード50の中央前端部51の形状に対応しており、カットオフラインCLには、第1段差部55aに対応する段差部CLaが形成されている。段差部CLaは、水平線Sより下方かつ鉛直線V上またはその近傍に位置するエルボー点EPから右側に向かって上方に傾斜する線から成る。カットオフラインCLのうち、段差部CLaより右側及び左側の部位は、水平方向に延在する。本実施形態では、カットオフラインCLのうち、段差部CLaより右側の部位は、段差部CLaより左側の部位より低い。また、ロービームの配光パターンPLにおける領域AR1は、当該領域AR1の周囲より暗くされている。この領域AR1は、エルボー点EPより対向車線OL側に位置している。このため、領域AR1が自車両と対向車との間の路面に重なり得、路面で反射した光による対向車の運転手へのグレアを抑制し得る。なお、領域AR1の位置及び形状は、突起56の位置及び形状を調節することで変更できる。また、上面50S1に突起56が設けられないことで、領域AR1が暗くされないようにできる。
【0062】
次に、車両用前照灯1によるハイビームの配光パターンの形成について説明する。
【0063】
ハイビームの配光パターンを形成する場合、第1発光光学系LE1から第1の光L1を出射させ、第2発光光学系LE2から第2の光L2を出射させる。具体的には、第1光源31a,31b,31cから第1の光L1を出射させ、第2光源32から第2の光L2を出射させる。このため、上記のように、第1の光L1によってロービームの配光パターンPLが形成され、ロービームの配光パターンPLを有する光が車両用前照灯1から出射される。第2光源32から出射する第2の光L2は、図9に示すように、第2入射面42から導光体40に入射する。導光体40に入射した第2の光L2は、第2出射領域43bから前方に位置する投影レンズ35に向けて出射する。第2出射領域43bから出射する第2の光L2の多くは、シェード50の下方を通り、第2出射領域43bより前方に配置される投影レンズ35に直接入射する。第2出射領域43bから出射する第2の光L2の一部は、シェード50の下面50S2のうち外部に露出している部位と、補強部材60の下面60S2と、補強部材60の側面の一部とに照射される。下面50S2における外部に露出している部位は、この第2の光L2の一部を投影レンズ35に向けて反射する。下面50S2のこの部位における第2の光L2が照射される領域は、シェード50の中央前縁CE1の全体に接しており、当該領域にはシェード50の中央前端部51の下面が含まれる。そして、下面50S2のうち中央前端部51の下面は、第2の光L2の一部を投影レンズ35に向けて反射する。このため、中央前端部51によって第2の光L2が形成する配光パターンにカットオフラインが形成され、当該配光パターンが付加配光パターンとなる。付加配光パターンのカットオフラインは中央前端部51に対応する形状であり、当該付加配光パターンがロービームの配光パターンPLに付加され、ハイビームの配光パターンが形成される。このため、第2の光L2は、第1の光L1とによってハイビームの配光パターンを形成す光である。この付加配光パターンを有する光が投影レンズ35を透過し、フロントカバー12を介して車両用前照灯1から出射される。上記のように、付加配光パターンのカットオフラインは、ロービームの配光パターンPLのカットオフラインCLと同様に、中央前端部51によって形成される。このため、付加配光パターンのカットオフラインとロービームの配光パターンPLのカットオフラインCLとが概ね一致し、ハイビームの配光パターンは、付加配光パターンとロービームの配光パターンPLとが繋がったものとなる。本実施形態では、第1の光L1と第2の光L2との重ね合わせによってハイビームの配光パターンが形成される。しかし、第1の光L1と第2の光L2とは重なっていなくてもよい。この場合、例えば25m先の仮想スクリーン上において、付加配光パターンのカットオフラインとロービームの配光パターンPLのカットオフラインCLとの隙間を人の目で視認できない程度にすることで、付加配光パターンとロービームの配光パターンPLとが繋がったようにし得る。
【0064】
図11は、本実施形態におけるハイビームの配光パターンを示す図であり、ハイビームの配光パターンを図10と同様に示す図である。なお、図11において、ロービームの配光パターンPLにおけるカットオフラインCLが点線で示されている。ハイビームの配光パターンPHにおけるカットオフラインCLより下方の領域は第1の光L1によって形成され、カットオフラインCLより上方の領域は第2の光L2によって形成される。
【0065】
以上説明したように、本実施形態の車両用前照灯1は、第1発光光学系LE1と、第2発光光学系LE2と、投影レンズ35と、板状のシェード50と、を備える。第1発光光学系LE1は、ロービームの配光パターンPLを形成する第1の光L1を前方に向けて出射する。第2発光光学系LE2は、第1の光L1とによってハイビームの配光パターンPHを形成する第2の光L2を前方に向けて出射する。第2発光光学系LE2における第2の光L2を出射する第2部位は、第1発光光学系LE1における第1の光L1を出射する第1部位より下方に位置する。投影レンズ35は、第1部位及び第2部位より前方に配置され、第1の光L1及び第2の光L2が透過する。シェード50は、第1部位及び第2部位と投影レンズ35との間に配置され、上面50S1に第1の光L1の一部が照射される。シェード50は、ロービームの配光パターンPLのカットオフラインCLを形成する中央前端部51と、当該中央前端部51の左右方向の両端にそれぞれ接続する一対の外側前端部52とを含む。
【0066】
本実施形態の車両用前照灯1によれば、第2発光光学系LE2の第2の光L2の出射と非出射とを切り替えることで、出射する光をロービームとハイビームとで切り替え可能である。また、本実施形態の車両用前照灯1では、シェード50の中央前端部51によってロービームの配光パターンPLのカットオフラインCLが形成されるため、当該カットオフラインCLは中央前端部51に対応する形状となる。また、本実施形態の車両用前照灯1では、中央前端部51の左右方向の両端にそれぞれ接続する一対の外側前端部52のそれぞれにスリット53が形成される。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、第1の光L1によってシェード50の中央前端部51が加熱されて膨張する場合であっても、この膨張をスリット53が変形することによって吸収し得、中央前端部51が上下方向に湾曲することを抑制し得る。従って、本実施形態の車両用前照灯1によれば、熱に起因するロービームの配光パターンPLの変形を抑制し得、ロービームの配光パターンPLへの熱の影響を抑制し得る。
【0067】
また、本実施形態の車両用前照灯1によれば、スリット53が一対の外側前端部52のいずれかに形成される場合と比べて、シェード50における中央前端部51の熱による膨張をより吸収し得、ロービームの配光パターンPLへの熱の影響をより抑制し得る。なお、ロービームの配光パターンPLへの熱の影響を抑制する観点では、スリット53は一対の外側前端部52のいずれかに形成されてもよい。つまり、スリット53は、一対の外側前端部52の少なくとも一方に形成されればよい。
【0068】
本実施形態の車両用前照灯1では、スリット53は、V字状である。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、例えば、スリット53が幅及び深さが同じ矩形状である場合と比べて、スリット53の面積を小さくでき、スリット53を通って意図しない領域に照射される第1の光L1を少なくし得る。
【0069】
シェード50の上面に照射される第1の光L1の光量は、左右方向において中央前端部51に近いほど多くなる傾向にあり、中央前端部51より後方の領域であっても同様の傾向がある。本実施形態の車両用前照灯1では、スリット53の幅方向の中心線53Lは、後方に向かって中央前端部51側と反対側に傾斜している。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、スリット53の中心線53Lが後方に向かって中央前端部51側と反対側に傾斜しない場合と比べて、スリット53における後端53p側を左右方向において中央前端部51から遠ざけることができ、スリット53を通って意図しない領域に照射される第1の光L1を少なくし得る。
【0070】
本実施形態の車両用前照灯1では、中央前端部51は、後方に凹状となる弧状に湾曲し、スリット53の後端53pの前後方向の位置は、中央前端部51における最も後方に位置する部位51pより前方である。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、スリット53の後端53pの位置が中央前端部51における最も後方に位置する部位51pとお同じまたは当該部位51pより後方である場合と比べて、車両の振動でシェード50における中央前端部51が振動することを抑制し得る。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、車両の振動によってロービームのカットオフラインCLが変化することを抑制し得る。
【0071】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
例えば、上記実施形態では、中央前端部51が後方に凹状となる弧状に湾曲し、一対の外側前端部52が左右方向に延びる同一直線上に位置するシェード50を例に説明した。しかし、中央前端部51や外側前端部52は制限されるものではない。例えば、中央前端部51と、一対の外側前端部52とが、左右方向に延びる同一直線上に位置してもよい。また、外側前端部52は、外側に向かって前方や後方に傾いてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、中央前端部51における最も後方に位置する部位51pより後端53pが前方に位置するスリット53を例に説明した。しかし、スリット53の後端53pの位置は、部位51pと同じまたは部位51pより後方であってもよい。このような第1変形例を、図12を用いて説明する。なお、上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0074】
図12は、第1変形例に係るシェード50を図7と同様に示す図である。図12に示すように、本変形例のシェード50は、スリット53の後端53pが中央前端部51における最も後方に位置する部位51pより後方に位置する点において、上記実施形態のシェード50と主に異なる。
【0075】
本変形例の車両用前照灯1によれば、スリット53の後端53pの位置が中央前端部51における最も後方に位置する部位51pより前方である場合と比べて、シェード50における中央前端部51の熱による膨張をより吸収し得、ロービームの配光パターンPLへの熱の影響をより抑制し得る。
【0076】
また、上記実施形態では、シェード50に重ね合わされる補強部材60は、スリット53と重なっていなかった。しかし、補強部材60は、スリット53と重なってもよい。このような第2変形例を、図13を用いて説明する。なお、上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0077】
図13は、第2変形例におけるシェード50を図7と同様に示す図である。図13に示すように、本変形例では、右側のスリット53の縁は中央前縁CE1の右側端CE1aに接続せず、左側のスリット53の縁は、中央前縁CE1の左側端CE1bに接続しない。補強部材60の右側の取付部62は左側に広げられ、左側の取付部62は右側に広げられている。そして、右側の取付部62が右側のスリット53の全体と重なり、左側の取付部62が左側のスリット53の全体と重なる。つまり、本変形例の補強部材60は、スリット53と重なるようにシェード50に重ね合わされる閉塞部材である。また、本変形例の補強部材60は、上記実施形態の補強部材60と同様に、中央前端部51と重ならず、シェード50は、中央前端部51を含み補強部材60と重ならない部位と、補強部材60と重なり当該補強部材60が固定される部位とを含む。
【0078】
本変形例の車両用前照灯1によれば、スリット53と重なるようにシェード50に重ね合わされる閉塞部材を備えない場合と比べて、スリット53を通って意図しない領域に照射される第1の光L1を少なくし得る。なお、スリット53を通って意図しない領域に照射される第1の光L1を少なくする観点では、車両用前照灯1はスリット53と重なるようにシェード50に重ね合わされる閉塞部材を備えればよい。このため、例えば、補強部材60は、シェード50に固定されなくてもよく、スリット53の一部と重なってもよく、板状の部材でなくてもよい。なお、閉塞部材としての補強部材60は、上記実施形態の補強部材60と同様に、中央前縁CE1と重ならず、シェード50は、中央前端部51を含み補強部材60と重ならない部位と、補強部材60と重なり当該補強部材60が固定される部位とを含むことが好ましい。このような構成にすることで、ハイビームの配光パターンPHに左右方向に延びる線状の暗い領域が形成されることを抑制し得る。
【0079】
また、閉塞部材は、例えば、ホルダ80の一部であってもよく、ホルダ80の支持板84であってもよい。この場合、支持板84は、補強部材60を介してシェード50に重ね合わされ、スリット53と重なる。また、閉塞部材は、シェード50に貼り付けられる可撓性を有するシートであってもよい。この場合、シートの剛性は、シェード50より弱いことが好ましい。また、シートは光非透過性であることが好ましい。
【0080】
また、上記実施形態では、下方側からシェード50に重ね合わされる補強部材60を例に説明したが、補強部材60は、上方側からシェード50に重ね合わされてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、補強部材60を備える車両用前照灯1を例に説明したが、車両用前照灯1は補強部材60を備えなくてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、第1光源31a,31b,31cと導光体40とから成る第1発光光学系LE1と、第2光源32と導光体40とから成る第2発光光学系LE2とを例に説明した。しかし、第1発光光学系LE1及び第2発光光学系LE2は特に制限されるものではない。例えば、第1発光光学系LE1及び第2発光光学系LE2は、導光体40を共有せずに、互いに異なる導光体を有していてもよい。また、第1発光光学系LE1及び第2発光光学系LE2は、光源と当該光源からの光を反射するリフレクタとから構成されてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、上面50S1が第1段差部55a及び第2段差部55bを有するシェード50を例に説明した。しかし、シェード50の上面50S1が有する段差部の数は制限されるものではなく、シェード50の上面50S1は段差部を有さなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、出射する光をロービームとハイビームとで切り替え可能であり、ロービームの配光パターンへの熱の影響を抑制し得る車両用前照灯が提供され、自動車等の車両用前照灯などの分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0085】
1・・・車両用前照灯
35・・・投影レンズ
50・・・シェード
50S1・・・シェードの上面
51・・・中央前端部
52・・・外側前端部
53・・・スリット
CL・・・カットオフライン
L1・・・第1の光
L2・・・第2の光
LE1・・・第1発光光学系
LE2・・・第2発光光学系
PL・・・ロービームの配光パターン
PH・・・ハイビームの配光パターン

図1
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図13