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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139502
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】車載用非接触給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/90 20160101AFI20241002BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20241002BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H02J50/90
H02J50/10
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050469
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】三木 健司
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503FA06
5G503GB08
(57)【要約】
【課題】車両の走行中に携帯情報端末の車室への飛び出しを抑制することができる車載用非接触給電装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載され、二次電池を有する被給電物8に非接触で給電する車載用非接触給電装置1は、被給電物8が載置される載置面10aを有する載置部10と、載置面10aに沿って移動可能に取付けられ、載置部10に載置された被給電物8を支持するスライダ20と、載置部10の載置面10aと反対側に配置され、被給電物8に非接触で給電を行う非接触給電部30と、を備えている。車載用非接触給電装置1では、載置面10aが車両の進行方向に対して後傾している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、二次電池を有する被給電物に非接触で給電する車載用非接触給電装置であって、
前記被給電物が載置される載置面を有する載置部と、
前記載置面に沿って移動可能に取付けられ、前記載置部に載置された前記被給電物を支持するスライダと、
前記載置部の前記載置面と反対側に配置され、前記被給電物に非接触で給電を行う非接触給電部と、を備え、
前記載置面が前記車両の進行方向に対して後傾している車載用非接触給電装置。
【請求項2】
前記スライダは、鉛直方向視で前記車両の進行方向と平行に移動する請求項1に記載の車載用非接触給電装置。
【請求項3】
前記スライダは、前記被給電物の使用者の手指を挿入することが可能な凹部を有する請求項1に記載の車載用非接触給電装置。
【請求項4】
前記スライダの位置決めを行う位置決め機構を更に備え、
前記スライダは、前記位置決め機構により前記載置部に対して位置決めされる請求項1から3のいずれか一項に記載の車載用非接触給電装置。
【請求項5】
前記載置部の少なくとも一部を覆うカバーを更に備え、
前記カバーは前記載置部に対して前記車両の進行方向側に位置する前壁と、前記載置部の上側に位置する上壁と、を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の車載用非接触給電装置。
【請求項6】
前記前壁は、鉛直方向に平行に配置され、前記上壁は前記載置面に平行に配置されている請求項5に記載の車載用非接触給電装置。
【請求項7】
前記載置部の一部は、鉛直方向視で、前記上壁から露出している請求項5に記載の車載用非接触給電装置。
【請求項8】
前記上壁は、前記被給電物が前記載置面に載置された状態で前記被給電物との間に前記被給電物の使用者の手指を入れることが可能となるように前記被給電物から離間している請求項5に記載の車載用非接触給電装置。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載用非接触給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載され、被充電物を充電することができる車載充電装置が知られている。特許文献1に記載の車載充電装置は、一次コイルを内蔵する充電器を有している。該充電器は、車両のインストルメントパネルの中央に形成された凹部である収容部に設けられている。充電器は、被充電物である携帯情報端末(特許文献1では「携帯端末」)の非接触充電に用いられる。携帯情報端末は二次コイル及び充電池を内蔵している。携帯情報端末を充電するときには、充電器の一次コイルと携帯情報端末の二次コイルとを近接させるように携帯情報端末を収容部に載置して一次コイルに通電する。これにより、一次コイルと二次コイルとの間の電磁誘導により携帯情報端末の二次コイルに誘導起電力が発生し、携帯情報端末の充電池が充電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-121281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車載用充電装置において、携帯情報端末は、充電時に車両の進行方向に対して前傾した状態で収容部に載置されるだけであり、収容部に対して固定されていない。そのため、車両の急発進、急加速等により、携帯情報端末が収容部から車室に向かって飛び出すおそれがある。万一、運転中に携帯情報端末が収容部から飛び出した場合には、運転者の意識が一時的に飛び出した携帯情報端末に向かうため、わき見運転につながるおそれがある。
【0005】
そのため、車両の走行中に携帯情報端末の車室への飛び出しを抑制することができる車載用非接触給電装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る車載用非接触給電装置の一つの実施形態は、車両に搭載され、二次電池を有する被給電物に非接触で給電する車載用非接触給電装置であって、前記被給電物が載置される載置面を有する載置部と、前記載置面に沿って移動可能に取付けられ、前記載置部に載置された前記被給電物を支持するスライダと、前記載置部の前記載置面と反対側に配置され、前記被給電物に非接触で給電を行う非接触給電部と、を備え、前記載置面が前記車両の進行方向に対して後傾している。
【0007】
本実施形態によると、被給電物が載置される載置部が車両の進行方向に対して後傾しているので、車両の急発進、急加速等により、被給電物が載置部から車室に向かって飛び出すおそれがない。そのため、運転者は運転に集中でき、わき見運転につながるおそれもない。
【0008】
本開示に係る車載用非接触給電装置の他の一つの実施形態において、前記スライダは、鉛直方向視で前記車両の進行方向と平行に移動する。
【0009】
被給電物の大きさや種類により、効率よく充電できる箇所は異なっている。本実施形態の車載用非接触給電装置では、スライダを鉛直方向視で車両の進行方向と平行に移動させることができるので、被給電物の大きさや種類に関係なく、効率よく充電できる箇所で被給電物を支持することができる。
【0010】
本開示に係る車載用非接触給電装置の他の一つの実施形態において、前記スライダは、前記被給電物の使用者の手指を挿入することが可能な凹部を有する。
【0011】
本実施形態によると、凹部に手指を挿入してスライダを容易に移動させることができる。
【0012】
本開示に係る車載用非接触給電装置の他の一つの実施形態において、前記スライダの位置決めを行う位置決め機構を更に備え、前記スライダは、前記位置決め機構により前記載置部に対して位置決めされる。
【0013】
本実施形態によると、位置決め機構により、容易にスライダの位置を決めて固定することができる。
【0014】
本開示に係る車載用非接触給電装置の他の一つの実施形態において、前記載置部の少なくとも一部を覆うカバーを更に備え、前記カバーは前記載置部に対して前記車両の進行方向側に位置する前壁と、前記載置部の上側に位置する上壁と、を有する。
【0015】
走行中の車両が急ブレーキをかけた場合等により、載置部に載置された被給電物が慣性力で車両の進行方向の前方に飛び出すおそれがある。しかし、本実施形態の車載用非接触給電装置では、載置部に対して車両の進行方向側に位置する前壁と、載置部の上側に位置する上壁とを有するカバーを備えているので、もし被給電物が車両の進行方向側に飛び出した場合であっても、カバーによって飛び出しが妨げられる。これにより、被給電物が車両のフロントガラスに当たってフロントガラスが損傷したり、フロントガラスで跳ね返った被給電物が車両の運転席や助手席に着座している乗員に当たったりするおそれがない。
【0016】
本開示に係る車載用非接触給電装置の他の一つの実施形態において、前記前壁は、鉛直方向に平行に配置され、前記上壁は前記載置面に平行に配置されている。
【0017】
本実施形態によると、被給電物を載置部に載置する際に、上壁が載置の邪魔になることがない。
【0018】
本開示に係る車載用非接触給電装置の他の一つの実施形態において、前記載置部の一部は、鉛直方向視で、前記上壁から露出している。
【0019】
本実施形態によると、被給電物を載置部に載置する際に、上壁が載置の邪魔になることがない。
【0020】
本開示に係る車載用非接触給電装置の他の一つの実施形態において、前記上壁は、前記被給電物が前記載置面に載置された状態で前記被給電物との間に前記被給電物の使用者の手指を入れることが可能となるように前記被給電物から離間している。
【0021】
本実施形態によると、給電物を載置面に載置した状態で手指を挿入してスライダを移動させることができるので、効率よく充電できる箇所に被給電物を容易に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る車載用非接触給電装置を車両のダッシュボードに組込まれた状態を表す図である。
図2】車載用非接触給電装置の斜視図である。
図3】車載用非接触給電装置の分解斜視図である。
図4】車載用非接触給電装置の分解斜視図である。
図5】車載用非接触給電装置に外形の小さい携帯情報端末を載置した状態を表す断面図である。
図6】車載用非接触給電装置に外形の大きい携帯情報端末を載置した状態を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示に係る車載用非接触給電装置の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に記載される実施形態は、車載用非接触給電装置を説明するための例示であり、車載用非接触給電装置をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本開示に係る車載用非接触給電装置は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0024】
〔車載用非接触給電装置の構成〕
本実施形態に係る車載用非接触給電装置1は、図1に示されるように、車両2の車室内において、運転席と助手席との間のダッシュボード4に組込まれている。車載用非接触給電装置1のダッシュボード4へ組込み方法は、公知の方法を用いることができ、例えばダッシュボード4に車載用非接触給電装置1を直接固定してもよいし、後述するカバー50の一部がダッシュボード4と一体に形成されている状態で後述する中間製品1aをカバー50に組込んで固定する方法でもよく、その他の方法で固定されていてもよい。
【0025】
車載用非接触給電装置1は、図2から図4に示されるように、載置部10、スライダ20、非接触給電部30、位置決め機構40、及びカバー50により構成されている。以後、本実施形態において、車載用非接触給電装置1を車両2に固定した状態における車載用非接触給電装置1及び車両2のそれぞれにおいて、車両2の進行方向に平行で車両2の進行方向と同じ方向をY1方向、車両2の後退方向に平行で車両2の後退方向と同じ方向をY2方向と称し、Y1方向及びY2方向をまとめてY方向と称する。また、車載用非接触給電装置1を車両2に固定した状態における車載用非接触給電装置1及び車両2のそれぞれにおいて、相対的な前側をY1側、相対的な後側をY2側と称する。同様に、車載用非接触給電装置1を車両2に固定した状態における車載用非接触給電装置1及び車両2のそれぞれにおいて、車両2の進行方向に向かって左右方向に平行で車両2の右方向と同じ方向をX1方向、左右方向に平行で車両2の左方向と同じ方向をX2方向と称し、X1方向及びX2方向をまとめてX方向と称する。また、車載用非接触給電装置1を車両2に固定した状態における車載用非接触給電装置1及び車両2のそれぞれにおいて、相対的な右側をX1側、相対的な左側をX2側と称する。さらに、車載用非接触給電装置1を車両2に固定した状態における車載用非接触給電装置1及び車両2のそれぞれにおいて、車両2の鉛直方向(X方向及びY方向に垂直な方向)に平行で車両2の上方向と同じ方向をZ1方向、車両2の下方向と同じ方向をZ2方向と称し、Z1方向及びZ2方向をまとめてZ方向と称する。また、車載用非接触給電装置1を車両2に固定した状態における車載用非接触給電装置1及び車両2のそれぞれにおいて、相対的な上側をZ1側、相対的な下側をZ2側と称する。なお、図2は、母指(親指)と他の四指とで携帯情報端末8(被給電物の一例)を挟み込んで保持している状態を表している。
【0026】
〔載置部〕
載置部10は、樹脂若しくは樹脂及び金属による合成体からなり、Z方向視で矩形状の板状である。車載用非接触給電装置1が車両2に固定された状態で、載置部10において携帯情報端末8が載置される載置面10aは、載置面10aに平行はZ1方向から後方(Y2方向)に角度θだけ傾斜している。また、このとき、載置面10aは、載置面10aに垂直なY1方向から上方(Z1方向)に角度θだけ傾斜している。つまり、載置部10の載置面10aは、車両2の進行方向に対して後傾している。角度θは、例えば、40度から80度であり、50度から70度であることが好ましく、55度から65度であることが更に好ましい。以後、Z方向に対して角度θだけ傾斜(後傾)した、載置部10の載置面10aに平行かつX方向に垂直な方向をP方向、Y方向に対して角度θだけ傾斜した載置面10aに垂直な方向をQ方向と称する。P方向とQ方向とX方向とは互いに直交する方向である。また、P方向においてY方向のY1側、Y2側と同じ側をそれぞれP1側、P2側と称し、Q方向においてZ方向のZ1側、Z2側と同じ側をそれぞれQ1側、Q2側と称する。
【0027】
載置部10の載置面10aは、載置される携帯情報端末8との間の静止摩擦係数が大きくても小さくてもよい。載置面10aと携帯情報端末8との間の静止摩擦係数が大きければ、車両2の走行中の振動等により載置面10aに対して携帯情報端末8が動きにくいので、安定して充電を行うことができる。また、載置面10aと携帯情報端末8との間の静止摩擦係数が小さければ、携帯情報端末8を載置面10aに載置する際に、手前から載置面10aを滑らせて、携帯情報端末8を載置面10aに載置することができる。載置面10aと携帯情報端末8との間の静止摩擦係数が小さければ、載置面10aから携帯情報端末8を取出すことも容易になる。
【0028】
載置部10のX方向の両端部(両側部)におけるP1側には、後述するスライダ20のP方向に沿う移動を案内する一対のスライダガイド12が形成されている。スライダガイド12は、載置部10のX1側とX2側に位置する一対の側面10cのそれぞれに形成された一対のガイド端12aと、載置部10の載置面10aと反対側の面である裏面10bに形成された一対のガイド突起12bとからなる。なお、載置面10aと裏面10bとは互いに平行な面である。
【0029】
載置部10の側面10cでガイド端12aよりもP2側には、カバー50の一対の側壁56の内面56aのそれぞれに当接する一対の当接部13が形成され、当接部13よりも更にP2側には、カバー50に対して載置部10を保持させる一対の保持部14が形成される。すなわち、載置部10一対の側面10cには、P1側からP2側に向かってガイド端12a、当接部13、保持部14がこの順で互いに隣接して形成されている。一対のガイド端12a間のX方向の長さ、一対の当接部13間のX方向の長さ、及び一対の保持部14間のX方向の長さは、この順で長くなっている。一対の当接部13間のX方向の長さは、カバー50の一対の側壁56の内面56a間の長さに等しい。また、ガイド端12a、当接部13、保持部14のそれぞれのP方向に沿う長さは、当接部13、ガイド端12a、保持部14の順で長くなっている。なお、保持部14のP2側には、載置部10をカバー50に保持、固定するために、X1側とX2側に向かってそれぞれ突出した一対の嵌合爪14aが形成されている。
【0030】
載置部10の載置面10aにおけるP1側の端部には、P方向に沿って延出し、Q方向に沿って突出した一対のストッパ15が形成されている。ストッパ15は、スライダ20をP1側からP2側に向けて挿入して載置部10に取付けた後、スライダ20が載置部10のP1側から抜け落ちないようにするためのものである。
【0031】
一対のストッパ15の間には、有底の取付穴16が形成されている。取付穴16には、位置決め機構40が取付けられて保持される。位置決め機構40は、取付穴16に挿入される圧縮コイルばね42と、圧縮コイルばね42の両端部のうち取付穴16の底部に当接する端部とは反対側の端部に取付けられるボール44とからなる。ボール44は圧縮コイルばね42によりQ1方向に付勢されている。
【0032】
載置部10の裏面10bには、後述する非接触給電部30の外ケース37を固定する4本のボス17aと、外ケース37の内側に配置される基板31、第1シールドケース34、及び第2シールドケース36を固定する4本のボス17bとが立設している。また、裏面10bには、ボス17a,17bを囲み、外ケース37を位置決めする周壁18が形成されている。
【0033】
〔スライダ〕
スライダ20は、樹脂若しくは金属からなり、直方体形状を有する。スライダ20のX方向に沿う長さは、カバー50の側壁56の対向する内面56a,56aの間の長さに等しい。また、スライダ20のQ方向に沿う長さは、載置部10に載置可能な携帯情報端末8のうち最も厚い携帯情報端末8の厚さと同程度の長さである(図6参照)。スライダ20のうち載置部10の載置面10aに摺接する面である摺接面20a(図4参照)に対してQ方向で反対側に位置する面である上面20bには、携帯情報端末8の使用者の手指を挿入することが可能な凹部21が形成されている(図3及び図5参照)。使用者は、凹部21に手指を挿入することにより、載置面10a上でスライダ20を摺動させることができる。
【0034】
スライダ20のX方向の両端部(両側部)には、図4に示されるように、載置部10のスライダガイド12の一対のガイド端12aのそれぞれを摺動可能に挟持する一対の挟持部22が形成されている。挟持部22は、スライダ20の摺接面20aからQ2側に突出している部分を有する。挟持部22は、摺接面20aと第1被ガイド部22aと第2被ガイド部22bとを含んで構成されている。第1被ガイド部22aは、載置部10の側面10cのガイド端12aに当接する部分である。第2被ガイド部22bは、第1被ガイド部22aの端部からX方向に沿って内側に突出し、載置部10のスライダガイド12のガイド突起12bに当接し、ガイド突起12bによりP方向に沿うように案内される部分である。このように、第1被ガイド部22aと第2被ガイド部22bとは、P方向に沿って見たときに、L字形に形成されており、摺接面20aを含めた挟持部22はC字形に形成されている。そして、摺接面20aと第1被ガイド部22aと第2被ガイド部22bとにより、載置部10のガイド端12aを摺動可能に挟持する。
【0035】
第1被ガイド部22aのP方向に沿う長さはスライダ20のP方向に沿う長さの約半分であり、第2被ガイド部22bのP方向に沿う長さはスライダ20のP方向に沿う長さよりもやや短い程度である。すなわち、第1被ガイド部22aのP方向に沿う長さは、第2被ガイド部22bのP方向に沿う長さよりも短い。これにより、スライダ20を小型化できる。
【0036】
スライダ20の摺接面20aのうちP方向に沿う方向視で載置部10の一対のストッパ15に重複する部分には、P方向に沿って摺接面20aからQ1方向に引退した一対の窪み部24が形成されている。それぞれの窪み部24におけるP方向の中央近傍には、窪み部24の底部からQ2方向に突出した被ストッパ24aが形成されている。被ストッパ24aの頂面は、摺接面20aと面一になっている。
【0037】
X方向に沿う、スライダ20の一対の窪み部24の間には、位置決め機構40によりスライダ20が位置決めされる複数(本実施形態では4つ)の位置決め部26がP方向に沿って隣接して形成されている。それぞれの位置決め部26は、位置決め機構40のボール44が嵌まり込むような大きさの窪みになっている。
【0038】
スライダ20は、図5に示されるような載置部10に対して最もP2側に移動した状態と、図6に示されるような載置部10に対して最もP1側に移動した状態との間で、載置部10に対してP方向に沿って摺動する。スライダ20が図5に示される状態にあるときは、位置決め機構40のボール44は、スライダ20の複数の位置決め部26のうち最もP1側に形成された位置決め部26に嵌まり込んでいる。このとき、スライダ20の第1被ガイド部22aが載置部10のガイド端12aと当接部13とを連結する段差13a(図3参照)に当接しているので、スライダ20がそれ以上P2側に移動することはない。また、スライダ20が図6に示される状態にあるときは、位置決め機構40のボール44は、スライダ20の複数の位置決め部26のうち最もP2側に形成された位置決め部26に嵌まり込んでいる。このとき、スライダ20の一対の被ストッパ24aが載置部10の一対のストッパ15に当接しているので、スライダ20がそれ以上P1側に移動することはない。位置決め機構40のボール44は、圧縮コイルばね42によりQ1方向に付勢されて位置決め部26の底部を押圧しているので、位置決め機構40のボール44が位置決め部26に嵌まり込んでいる状態では、スライダ20は、載置部10に対して位置決めされて固定されており、P方向に沿って自由に移動できない。本実施形態のスライダ20は、図5に示される状態と図6に示される状態とを含んで、位置決め部26の数である4段階に不連続的に載置部10に対して位置決めが可能である。なお、位置決め部26の数は3個以下でも5個以上であってもよい。この場合、スライダ20は、3段階以下、若しくは5段階以上に位置決めが可能である。位置決め部26は、スライダ20をP方向に沿って連続的に任意の位置で載置部10に対して位置決め可能となる構成であってもよい。このような構成の例としては、載置部10の載置面10aとスライダ20の摺接面20aとの間の静止摩擦係数を大きくすることが挙げられる。
【0039】
〔非接触給電部〕
非接触給電部30は、載置部10の裏面10bに取付けられ、作動させることにより、載置面10aに載置された携帯情報端末8に内蔵された二次電池(不図示)に非接触で給電する。具体的には、非接触給電部30の一次コイル32に通電して磁界を発生させ、発生させた磁界により携帯情報端末8に内蔵された二次コイル(不図示)に誘導起電力を発生させる(電磁誘導)。この二次コイルの誘導起電力により携帯情報端末8の二次電池を充電する。
【0040】
非接触給電部30は、図3から図6に示されるように、基板31、一次コイル32、シート33、第1シールドケース34、コネクタ35、第2シールドケース36、及び外ケース37を有している。基板31には、非接触給電を制御する充電回路や制御回路等が実装されている。一次コイル32は、複数(本実施形態では3つ)配置されており、Q2側に2つの一次コイル32、Q1側に1つの一次コイル32が位置するように密着して積層されている。Q1側の1つの一次コイル32は、載置部10の裏面10bに当接している。3つの一次コイル32は基板31に電気的に接続されている。シート33は磁性体からなり、Q2側の2つの一次コイル32と第1シールドケース34との間に挿入されている。一次コイル32は、シート33に接着等の方法により固定されている。
【0041】
第1シールドケース34は、鉄等の電磁波遮蔽性能の高い材料からなる板材を折り曲げて形成されており、一次コイル32及びシート33の周囲に壁部を有している。シート33は、接着等の方法により,第1シールドケース34に固定されている。すなわち、一次コイル32、シート33、第1シールドケース34は一体化されている。
【0042】
基板31は、第1シールドケース34に対して一次コイル32と反対側に配置されている。一次コイル32には、コネクタ35を介して、車載用非接触給電装置1の外部から電力が供給される。
【0043】
基板31に対して第1シールドケース34と反対側には、第1シールドケース34と同様、鉄等の電磁波遮蔽性能の高い材料の板材からなる第2シールドケース36が配置されている。すなわち、基板31は、第1シールドケース34と第2シールドケース36の間に配置されている、このように、第1シールドケース34と第2シールドケース36とにより基板31を挟み込むことにより、基板31に実装された充電回路や制御回路等が外来ノイズの影響をうけるのを抑制し、また、不要輻射によって周辺機器へ影響を及ぼすことを抑制している(EMC対策)。第1シールドケース34、基板31、及び第2シールドケース36は、載置部10の裏面10bに形成された4本のボス17bにネジ36aにより共締めされる。これにより、基板31、一次コイル32、シート33、第1シールドケース34、コネクタ35、及び第2シールドケース36は、載置部10に固定される。
【0044】
外ケース37は樹脂又は金属からなり、第2シールドケース36よりも一回り大きい。外ケース37は、第2シールドケース36に外嵌されると共に載置部10の裏面10bに形成された周壁18に内嵌され、載置部10のボス17aにネジ37bにより締結される。これにより、外ケース37を含む非接触給電部30が載置部10に対して固定される。以下では、載置部10にスライダ20、非接触給電部30、及び位置決め機構40が取付けられた状態のものを中間製品1aという(図2から図4参照)。
【0045】
〔カバー〕
カバー50は、中間製品1aの周囲に配置され、載置部10がP方向に沿うような姿勢で、中間製品1aを内部に保持する。カバー50は、中間製品1aよりもY1側に配置された前壁52、中間製品1aに対してQ1側に配置された上壁54、及び中間製品1aのX1側とX2側とに配置された一対の側壁56を有する。
【0046】
車載用非接触給電装置1が車両2に固定された状態で、カバー50の前壁52はY方向に対して垂直になり、側壁56はX方向に対して垂直になっている。上壁54は中間製品1aの載置部10に対して平行、すなわち、P方向に対して平行になっていてもよいし、P方向に対して傾いていてもよい。前壁52は、中間製品1aのスライダ20のP1側の端部が近接している。上壁54は、中間製品1aの載置部10に携帯情報端末8を載置した状態でQ方向に手指が挿入可能な程度に離間している(図5及び図6参照)。
【0047】
カバー50の一対の側壁56の内面56aのそれぞれには、中間製品1aの載置部10を挿入して保持するための保持溝56bが形成されている。保持溝56bは、P方向に平行になっており、保持溝56bに載置部10の保持部14が挿入されることで載置面10aが後傾する角度θを維持する。また、一対の保持溝56bのP2側の端部近傍には、載置部10の保持部14の嵌合爪14aが嵌まり込む嵌合孔56cがそれぞれ形成されている。
【0048】
保持溝56bは、側壁56のP2側の端部からP方向に沿って側壁56のP方向の中程まで延出している。P2側からP1側に向かって、中間製品1aの載置部10の保持部14を保持溝56bに沿って挿入し、嵌合爪14aが嵌合孔56cに嵌まり込んだ状態で、中間製品1aのカバー50への取付けが完了する。取付けが完了した状態で、保持溝56bのP1側の端部は、載置部10の保持部14と当接部13とを連結する当接面14bに当接すると共に載置部10の嵌合爪14aが側壁56の嵌合孔56cに嵌まり込んでおり、それ以上P1側に移動しないように構成されている(図3参照)。また、載置部10の嵌合爪14aが側壁56の嵌合孔56cに嵌まり込んでいるので、中間製品1aは、P2方向に移動することもない。このとき、上述したように、側壁56の対向する内面56a,56a間の長さは、載置部10の両側面10cの当接部13間の長さ、及びスライダ20のX方向の長さに等しいので、当接部13とスライダ20は側壁56の内面56aに当接している。
【0049】
カバー50の側壁56は、Y2側からZ1側にかけて切欠かれた切欠き部56dを有する。具体的には、載置部10のP2側の端部を通ってY2側からY1側に向かってY方向に沿って切欠かれ、Y方向に切り欠かれたY1側の端部からQ方向に沿ってQ1側に切欠かれている。これにより、載置部10の載置面10aの一部が、Z方向視で、カバー50の上壁54から露出している。
【0050】
〔車載用非接触給電装置の使用方法〕
次に、本実施形態に係る車載用非接触給電装置1の使用方法について説明する。車載用非接触給電装置1が車両2のダッシュボード4に組込まれた状態で、使用者は、携帯情報端末8を載置部10の載置面10aに載置し、車載用非接触給電装置1を作動させる。携帯情報端末8を載置面10aに載置する際は、載置面10aの手前から携帯情報端末8をP1方向に滑らせるようにしてもよい。そして、携帯情報端末8とカバー50の上壁54との間の空間から、スライダ20の凹部21に手指を挿入してスライダ20を移動させて携帯情報端末8を載置面10aにおける二次電池の充電に最適な場所に移動させる。
【0051】
具体的には、車載用非接触給電装置1の非接触給電部30の一次コイル32において発生させた磁界を最も充電効率の良い位置で携帯情報端末8の二次コイルに鎖交させる。携帯情報端末8の二次コイルは、通常、載置部10の載置面10aに当接させる面の中央に位置する。そこで、携帯情報端末8の中央部を非接触給電部30の一次コイル32に合わせるように、スライダ20を移動させる。
【0052】
携帯情報端末8にもさまざまな大きさ(外形)があるので、例えば、外形の小さい携帯情報端末8では、図5に示されるように、スライダ20の凹部21に手指を挿入してスライダ20を最もP2側に移動させる。一方、外形の大きい携帯情報端末8では、図6に示されるように、スライダ20の凹部21に手指を挿入してスライダ20を最もP1側に移動させる。凹部21に手指を挿入することなく携帯情報端末8でスライダ20をP1側に押し込んでも、スライダ20をP1側に移動させることができる。
【0053】
本実施形態で、例えば、図6に示される状態から図5に示される状態にスライダ20を移動させるときには、スライダ20の凹部21に手指を挿入して、スライダ20をP2方向に移動させる。このとき、位置決め機構40のボール44は、スライダ20の最もP2側に位置する位置決め部26に嵌まり込んでいる。ボール44は、隣接する位置決め部26を区画する壁と圧縮コイルばね42の付勢力とにより、僅かな力ではスライダ20を移動させることはできない。スライダ20を移動させるためには、圧縮コイルばね42の付勢力に抗してボール44を一度Q2方向に引退させる必要がある。ボール44をQ2方向に引退させることができる程度の強さでスライダ20にP2方向の力を加えると、ボール44は隣接する位置決め部26を区画する壁に沿ってQ2方向に引退する。そして、ボール44が壁を乗り越えると、圧縮コイルばね42の付勢力によりボール44が再びQ1方向に飛び出して、隣接する位置決め部26に嵌まり込む。これにより、スライダ20は図6に示される状態から1段階だけP2方向に移動したことになる。これを繰り返すことにより、スライダ20は、載置部10に対して4段階で位置決めされ、最終的に図5に示される状態まで移動する。
【0054】
〔本実施形態の効果〕
本実施形態の車載用非接触給電装置1は、携帯情報端末8が載置される載置部10の載置面10aが車両2の進行方向に対して後傾しているので、車両2の急発進、急加速等により、携帯情報端末8が載置部10から車室に向かって飛び出すおそれがない。そのため、運転者は運転に集中でき、わき見運転につながるおそれもない。
【0055】
携帯情報端末8の大きさや種類により、載置部10の載置面10aに対して効率よく充電できる箇所は異なっている。本実施形態の車載用非接触給電装置1では、スライダ20をP方向に沿って移動させることができる。また、このとき、スライダ20が凹部21を有していると共に、携帯情報端末8が載置面10aに載置された状態で上壁54と携帯情報端末8との間が手指を入れることが可能となるように離間しているので、凹部21に手指を挿入してスライダ20を容易に移動させることができる。さらに、スライダ20は位置決め機構40により容易に位置を決めて固定することができる。これにより、スライダ20は、携帯情報端末8の大きさや種類に関係なく、効率よく充電できる箇所で携帯情報端末8を支持することができる。
【0056】
本実施形態の車載用非接触給電装置1によると、載置部10に対して車両2の進行方向側に位置する前壁52と、載置部10の上側に位置する上壁54と、載置部10の両側に位置する一対の側壁56と、を有するカバー50を備えているので、もし走行中の車両2が急ブレーキをかけたり急な方向転換をした場合等により、載置部10に対して携帯情報端末8が車両2の進行方向の前方や側方に飛び出した場合であっても、カバー50によって前方、上方、及び側方への飛び出しが妨げられる。これにより、携帯情報端末8が車両2のフロントガラス6に当たってフロントガラス6が損傷したり、フロントガラス6で跳ね返った携帯情報端末8が車両2の運転席や助手席に着座している乗員に当たったりするおそれがない。
【0057】
また、上壁54が載置部10に平行に配置されており、載置部10の一部が鉛直方向視で、上壁54から露出しているので、携帯情報端末8を載置部10に載置する際に、上壁54が載置の邪魔になることはない。
【0058】
〔その他の実施形態〕
(1)上記実施形態においては、スライダ20は、載置部10に取付けたが、これに限られるものではない。例えば、スライダ20をカバー50に対してP方向に沿って移動可能に取付けてもよい。
【0059】
(2)上記実施形態において、中間製品1aは、載置部10の保持部14をカバー50の保持溝56bに挿入して嵌合爪14aを嵌合孔56cに嵌め込むことにより固定したが、これに限られるものではない。カバー50と載置部10とは、接着等任意の方法で固定することができる。
【0060】
(3)上記実施形態において、車載用非接触給電装置1は、車両2のインストルメントパネルに組込まれてもよいし、センターコンソールに組込まれてもよいし、ダッシュボード4上に搭載されてもよい。車載用非接触給電装置1のダッシュボード4への固定方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、接着剤や粘着テープにより固定することができる。
【0061】
(4)上記実施形態において、載置面10aは、載置部10とインストルメントパネルやセンターコンソールの一部と共に一体的に形成される構造とすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本開示は、車載用非接触給電装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 :車載用非接触給電装置
2 :車両
8 :携帯情報端末(被給電物)
10 :載置部
10a :載置面
20 :スライダ
21 :凹部
30 :非接触給電部
40 :位置決め機構
50 :カバー
52 :前壁
54 :上壁


図1
図2
図3
図4
図5
図6