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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139506
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】履物用中敷
(51)【国際特許分類】
   A43B 17/00 20060101AFI20241002BHJP
   A43B 17/14 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
A43B17/00 E
A43B17/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050478
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】302063020
【氏名又は名称】山口 重や
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100210789
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】山口 重や
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050EA03
4F050HA05
4F050HA56
(57)【要約】
【課題】身体のバランスを崩すことなく歩き方の矯正ができる履物用中敷を提供することを目的とする。
【解決手段】履物2内に装着される履物用中敷1であって、前記履物用中敷1は中敷本体10と前記中敷本体10の踵側裏面10aに装着された弾性を有する基台20とからなり、前記基台20の内部には独立して弾性力を有し上下方向に延びる複数のゴムパイプ22が配置されており、前記履物用中敷1を履物2の内部に装着した際前記基台20が前記履物2の踵側中底70と前記中敷本体10との間に挟持されることを特徴としている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物内に装着される履物用中敷であって、前記履物用中敷は中敷本体と前記中敷本体の踵側裏面に装着された弾性を有する基台とからなり、前記基台の内部には独立して弾性力を有し上下方向に延びる複数の弾性体が配置されており、前記履物用中敷を履物の内部に装着した際前記基台が前記履物の踵側中底と前記中敷本体との間に挟持されることを特徴とする履物用中敷。
【請求項2】
前記弾性体は、ゴムパイプであることを特徴とする請求項1に記載の履物用中敷。
【請求項3】
前記ゴムパイプは、両端が閉塞されていることを特徴とする請求項2に記載の履物用中敷。
【請求項4】
複数の前記ゴムパイプは、両端が可撓性を有する基板と可撓性を有するカバーとにより挟持されていることを特徴とする請求項3に記載の履物用中敷。
【請求項5】
前記基台の内部の略中央には、空洞が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の履物用中敷。
【請求項6】
前記基台は、前記基台後部から前記基台前部にかけて高さが低くなることを特徴とする請求項1に記載の履物用中敷。
【請求項7】
前記履物の踵側中底に面する前記基台の面には粘着剤が塗布され、前記粘着剤の上にはさらに剥離紙が装着されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の履物用中敷。
【請求項8】
前記基台は前記中敷本体と別体であり、前記中敷本体の裏面に装着できることを特徴とする請求項7に記載の履物用中敷。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行能力が低下した高齢者や脚の不自由な人等の歩き方を正常な歩き方に矯正できる履物用中敷に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロコモティブシンドローム等により歩行能力が低下した高齢者や、脚の不自由な人等の歩き方を矯正するためのリハビリテーションが行われている。一般に、正常な歩行では、前方に振り出した足の踵の接地、足裏全体の接地、接地した足の踵の持ち上げ、爪先での蹴り出し、の一連の動作が両足で交互に行われる。しかし、歩行能力が低下した人は脚の筋力が弱っているため、接地した足の踵を十分に持ち上げることができず、床面や地面の僅かな段差に躓いて転倒する場合が多い。そのため、歩行時の踵を持ち上げる力を補助し、歩き方を矯正するための履物用中敷が開発されている。
【0003】
このような技術として、例えば、特許文献1に示されるような円錐バネ付き中敷が開発されている。特許文献1に示される円錐バネ付き中敷は、緩衝材と滑り止め穴及びバネ固定具の付いた上板と、バネ固定具と滑り止め突起がついた下板とが一端で接続され、上板のバネ固定具と下板のバネ固定具との間に円錐バネが挟まれたものであり、履物の踵部分に装着することにより歩行者の踵を持ち上げる力を補助することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-262706号公報(第2頁、図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示される円錐バネ付き中敷は、足裏全体ではなく、足の踵部分のみを押し上げることにより歩行者の踵を持ち上げる力を補助している点で有効である。しかしながら、特許文献1の円錐バネ付き中敷にあっては、上板の局所に荷重が掛かった場合でも、該荷重が解放されると上板は上方に反発することにより踵を持ち上げるため、例えば、左足側の上板の左側に荷重が掛かった状態から踵を持ち上げると、それに伴い上板は上方に反発し踵を持ち上げることから、歩行能力の低下した人は、身体が左側前方にバランスを崩す場合があるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、身体のバランスを崩すことなく歩き方の矯正ができる履物用中敷を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の履物用中敷は、
履物内に装着される履物用中敷であって、前記履物用中敷は中敷本体と前記中敷本体の踵側裏面に装着された弾性を有する基台とからなり、前記基台の内部には独立して弾性力を有し上下方向に延びる複数の弾性体が配置されており、前記履物用中敷を履物の内部に装着した際前記基台が前記履物の踵側中底と前記中敷本体との間に挟持されることを特徴としている。
この特徴によれば、基台の局所に踵からの荷重が掛かった場合は基台の該局所が変形し、踵を持ち上げることにより該荷重が解放される場合は、基台の該局所の形状の復元により生じる反発力で踵を持ち上げる力を補助するため、歩行者は身体のバランスを崩すことなく歩き方を矯正することができる。
【0008】
前記弾性体は、ゴムパイプであることを特徴としている。
この特徴によれば、弾性体に中空部を有するゴムパイプが用いられるため、履物用中敷の軽量化を図ることができる。また、ゴムパイプは容易に切断できるため、中敷本体の裏面の形状や履物内の深さに合わせて基台を容易に成形することができる。
【0009】
前記ゴムパイプは、両端が閉塞されていることを特徴としている。
この特徴によれば、ゴムパイプの両端が閉塞されていることから、基台に掛かっていた荷重が解放されることによりゴムパイプが形状の復元をする場合は、ゴムパイプ自体の反発力に加え、中空部内部の圧縮された空気の反発力が生じるため、より大きな反発力で歩行者の踵を持ち上げる力を補助することができる。
【0010】
複数の前記ゴムパイプは、両端が可撓性を有する基板と可撓性を有するカバーとにより挟持されていることを特徴としている。
この特徴によれば、複数のゴムパイプが、可撓性を有する基板と可撓性を有するカバーとにより挟持されているため、踵からの荷重が基台に掛かった際に、基台を柔軟に変形させることができる。
【0011】
前記基台の内部の略中央には、空洞が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、前記基台の内部の略中央に空洞が設けられていることにより荷重が掛かったゴムパイプが空洞側に撓みやすくなるため、主に踵の外側または踵の内側から基台の周縁に荷重が掛かった場合に基台が変形し易くなる。
【0012】
前記基台は、前記基台後部から前記基台前部にかけて高さが低くなることを特徴としている。
この特徴によれば、基台の高さが後部から前部にかけて低くなることにより、履物の中底から中敷本体の表面までの高さが履物の後部から前部にかけて滑らかに変化するため、歩行時の足裏への違和感を少なくして歩き方を矯正することができる。
【0013】
前記履物の踵側中底に面する前記基台の面には粘着剤が塗布され、前記粘着剤の上にはさらに剥離紙が装着されていることを特徴としている。
この特徴によれば、剥離紙を剥がし粘着剤を露出させた状態で基台の面を履物の踵側中底の面に貼着することにより履物用中敷を履物の踵側中底に固定できるため、歩行時に履物用中敷が履物内部でずれ動くことを防ぐことができると共に、接地している足を持ち上げる際に履物用中敷が履物の中底から浮き上がることを防ぐことができる。
【0014】
前記基台は前記中敷本体と別体であり、前記中敷本体の裏面に装着できることを特徴としている。
この特徴によれば、基台と中敷本体とが別体であるため、履物用中敷の使用者の踵の位置に合わせて、基台を中敷本体の裏面の所望の位置に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1における履物用中敷の裏面側を示す斜視図である。
図2】実施例1における履物用中敷を構成する中敷本体と、中敷本体に装着された基台と、を示す裏面側の斜視図であり、基台の一部を切り欠いて示している。
図3】(a)は実施例1における履物用中敷を構成する基台を示すA-A横断面図であり、(b)は履物用中敷を構成する中敷本体と、中敷本体に装着された基台とを示すB-B縦断面図である。
図4】は図3(b)の一部を拡大して示す拡大図である。
図5】(a)は履物用中敷の製造方法を説明するための斜視図であり、説明の便宜上基板の一部を切り欠くとともにドットによるハッチングを付している。(b)は履物用中敷の製造方法を説明するための斜視図であり、説明の便宜上カバーの一部を切り欠くとともにドットによるハッチングを付している。
図6】履物用中敷の製造方法を説明するための斜視図であり、説明の便宜上基板およびカバーにドットによるハッチングを付している。
図7】履物用中敷の製造方法を説明するための斜視図であり、説明の便宜上基板、カバーおよび粘着剤にドットによるハッチングを付している。
図8】実施例1における履物用中敷が装着された履物の内部を示す模式図である。
図9】(a),(b)は実施例1における歩行時の履物内部での履物用中敷を構成する基台の変形状態を示す模式図である。
図10】は実施例1における歩行時の履物内部での履物用中敷を構成する基台の変形状態を示す模式図である。
図11】(a)は実施例2における履物用中敷の裏面側を示す斜視図であり、(b)は実施例2における履物用中敷を構成する基台を示すC-C横断面図である。
図12】(a)は実施例3における履物用中敷の裏面側を示す斜視図であり、(b)は実施例3における履物用中敷を構成する基台を示すD-D縦断面図である。
図13】実施例3における履物用中敷が装着された履物の内部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る履物用中敷を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0017】
実施例1に係る履物用中敷につき、図1から図10を参照して説明する。以下、図1の紙面左側を履物用中敷の正面側(前方側)とし、図1の紙面上側を履物用中敷の裏面側(下方側)として説明する。
【0018】
本発明の履物用中敷は、主に歩行能力が低下した高齢者や脚の不自由な人の歩き方を矯正するリハビリテーションにおいて、履物の内部に装着されることにより、歩行時のバランスを崩すことなく歩行者の踵を持ち上げる力を補助し、歩き方を矯正するために用いられるものである。
【0019】
図1に示されるように、履物用中敷1は、中敷本体10と、中敷本体10の踵側の裏面10aに装着された弾性を有する基台20と、から主に構成されている。
【0020】
中敷本体10は、指先から踵までに対応した長さを有する平面視略小判型かつ平板状を成し、土踏まず、踵、を包み込むカップ型の形状をしている。また、中敷本体10には、ポリウレタン、ポリエステル、布、ウール、人工皮革、合成皮革等、各種の材質のものを用いることができるが、ポリウレタン製のものはクッション性が高いため、本実施例に好適である。本実施例では、中敷本体10に、ポリウレタン製のスニーカー用またはウォーキングシューズ用中敷を用いた。
【0021】
図2に示されるように、基台20は、基板21と、基板21の裏面21aに上下方向に配置されたゴムパイプ22と、全てのゴムパイプ22を覆うカバー23と、から主に構成されている。
【0022】
基板21は、直径約60mm,厚さ約2mmの平面視略円形の変性シリコーン製のシートである。変性シリコーンは、乾燥により固化するとゴム状となり可撓性を有する。そのため、変性シリコーンを基板21に用いることにより、踵からの荷重が基台20に掛かった際に、基台20を柔軟に変形させることができる。本実施例では、変性シリコーンに株式会社セメダイン製POSシールを用いた。
【0023】
ゴムパイプ22は、長さ約13mm,外径7mm,内径5mmの天然ゴム製のパイプである。天然ゴムはゴムの中でも反発弾性、圧縮永久歪に優れた素材であるため、歩行者の踵を持ち上げる力を補助する基台20を構成する材料として好適である。本実施例1ではゴムパイプ22に、松吉医科器械株式会社製飴ゴム管(スーパーテックス)を用いた。また、中空部22c(図4参照)を有するゴムパイプ22を用いることにより、履物用中敷1の軽量化を図ることができる。また、ゴムパイプ22は容易に切断できるため、ゴムパイプ22を基台20に用いることにより、中敷本体10の裏面10aの形状や履物内の深さに合わせて基台20を容易に成形することができる。
【0024】
ゴムパイプ22の外周面22dおよび内周面22eには、厚さ約0.5mmの変性シリコーンの被膜22fが形成されている(図4参照)。これにより、天然ゴム製のゴムパイプ22の反発力および耐候性を高めることができる。
【0025】
図3(a),(b),図4に示されるように、基板21とカバー23との間には、平面視略ハニカム状に、ゴムパイプ22が上下方向に延びるように配置されている。全てのゴムパイプ22は、隣接するゴムパイプ22と接触する状態で配置され、特に基台20の中央周辺では、1本のゴムパイプ22はその周囲の6本のゴムパイプ22と接触する状態で配置されている。また、基台20内部の周縁に位置するゴムパイプ22(基台20の中央に位置するゴムパイプ22を中心とした正12角形の各頂点に位置する12本のゴムパイプ22。なお、その中の6本のゴムパイプ22の断面は、1本おきに、隣接するゴムパイプ22と側壁23dの内周面23fとに押圧されて略楕円形となっている。)は、側壁23dの内周面23fに接触する状態で配置されている。また、図4に示されるように、全てのゴムパイプ22の上端面22bは、変成シリコーン(図示略)を用いて基板21の裏面21aに接着されている。
【0026】
図2に示されるように、カバー23は、直径約60mm,厚さ約2mmの平面視略円形の変性シリコーン製の下板23aと、下板23aの周縁から上方に延出した高さ約14mm,厚さ約2mmの変性シリコーン製の側壁23dとから構成されている。固化した変性シリコーンはゴム状となり可撓性を有するため、変性シリコーンをカバー23に用いることにより、踵からの荷重が基台20に掛かった際に、基台20を柔軟に変形させることができる。
【0027】
図4に示されるように、全てのゴムパイプ22の下端面22aは、カバー23を構成する下板23aにより覆われている。また、全てのゴムパイプ22の下端面22aは、変成シリコーン(図示略)を用いて下板23aの表面23bに接着されている。これにより、各ゴムパイプ22の中空部22cは、カバー23を構成する下板23aと基板21とにより閉塞される。
【0028】
図4に示されるように、カバー23の側壁23dの上端面23eは、変成シリコーン(図示略)を用いて基板21の裏面21aの周縁に接着されている。これにより、基台20の内部は密閉されるため、湿気、埃、砂等が基台20の内部に入ることを防ぎ、ゴムパイプ22の劣化を抑えることができる。
【0029】
図2図4に示されるように、基台20を構成するカバー23の下板23aの裏面23cには、粘着剤30が塗布され、さらにその上に剥離紙40が装着されている。剥離紙40を剥がし粘着剤30を露出させた状態で下板23aの裏面23cを履物2の中底70に貼着することにより、履物用中敷1が中底70に固定される(図8参照)。
【0030】
次に、履物用中敷の製造方法の一例について説明する。
【0031】
先ず、長尺の天然ゴム製のパイプ(以下、長尺パイプという。図示略。)を変性シリコーン溶液の中に所定時間浸漬した後取り出し、乾燥させる。これにより、長尺パイプの外周面、および、内周面に変性シリコーンの被膜が形成される。変性シリコーンは天然ゴムとの親和性がよいため、天然ゴム製のパイプに被膜を形成するのに好適である。なお、本実施例では変性シリコーン溶液の溶媒として、シンナー50%および灯油(ケロシン)50%を混合したものが用いられている。
【0032】
次に、変成シリコーンの被膜が形成された長尺パイプを所定の長さに切断し乾燥させる。本実施例では、約13mmの長さに切断している。これにより、ゴムパイプ22が形成される。
【0033】
次に、基板用型枠50の底面50aおよび壁面50bに離型剤(図示略)を塗布し、さらに、基板用型枠50の底面50aに所望の厚さの変性シリコーンを塗布し乾燥させる。これにより、基板21が形成される(図5(a)参照)。本実施例では、乾燥後の基板21の厚みが約2mmとなるように、基板用型枠50の底面50aに変性シリコーンを塗布している。次に、ゴムパイプ22の上端面22bに変性シリコーン(図示略)を塗布し、基板用型枠50内に形成された基板21の上(裏面21a)に平面視略ハニカム状に上下方向に配置し乾燥させる(図5(a)参照)。これにより、ゴムパイプ22の上端面22bと基板21の裏面21aとが接着される。
【0034】
一方、カバー用型枠60の底面60aおよび壁面60bに離型剤(図示略)を塗布し、さらに、カバー用型枠60の底面60aおよび壁面60bに所望の厚さの変性シリコーンを塗布し乾燥させる(図5(b)参照)。これにより、下板23aおよび側壁23dから構成されるカバー23が形成される。本実施例では、乾燥後のカバー23を構成する下板23aおよび側壁23dの夫々の厚みが約2mmとなるように、カバー用型枠60の底面60aおよび壁面60bに変性シリコーンを塗布している。
【0035】
次に、基板用型枠50内に形成された基板21の裏面21aの周縁、および、基板21の裏面21aに配置されたゴムパイプ22の下端面22aに変性シリコーン(図示略)を塗布する。次に、カバー用型枠60からカバー23を取り出し、カバー23を構成する側壁23dの上端面23eを基板用型枠50に嵌合させ、乾燥させる(図6参照)。これにより、基板21の裏面21aと側壁23dの上端面23e、および、ゴムパイプ22の下端面22aとカバー23を構成する下板23aの表面23b、が夫々接着されることにより基台20が形成される。
【0036】
次に、基板用型枠50から基台20を取り出し、基台20を構成する基板21の表面21b(図4参照)に変成シリコーン(図示略)を塗布し、中敷本体10の踵側の裏面10aに接着し、乾燥させる(図7参照)。次に、カバー23を構成する下板23aの裏面23cに粘着剤30を塗布し、剥離紙40を装着する(図7参照)。これにより、履物用中敷1が形成される。
【0037】
次に、履物用中敷の使用方法について説明する。ここでは、左足用の履物および履物用中敷を用いて説明する。また、履物としては、主にスニーカーやウォーキングシューズを想定している。
【0038】
図8に示されるように、履物用中敷1を履物2の内部に装着すると、基台20は中敷本体10と履物2の踵側の中底70との間に挟持される。これにより、歩行者の踵の下方に基台20が位置することになるため、歩行時の踵を持ち上げる力を効果的に補助することができる。
【0039】
また、カバー23を構成する下板23aの裏面23cに装着されている剥離紙40(図2参照)を剥がし、粘着剤50を露出させた状態で履物用中敷1を履物2の内部に装着することにより、基台20が履物2の踵側の中底70に貼着され固定される。これにより、歩行時に履物用中敷1が履物2の内部でずれ動くことを防ぐことができると共に、接地した足を持ち上げる際に履物用中敷1が履物2の中底70から浮き上がることを防ぐことができる。また、歩行者の踵の位置に合わせて、履物用中敷1を履物2の内部の好ましい位置に取り付けることができる。
【0040】
図9(a)に示されるように、履物2に足3を挿入し、履物2の踵2aの後部を接地すると、足3の踵3aの後部から中敷本体10を通して伝わった荷重により、基台20の後部が大きく変形する。
【0041】
次に、図9(b)に示されるように、履物2の踵2aの前部を接地すると、足3の踵3aの前部から中敷本体10を通して伝わった荷重により、基台20の前部が大きく変形する。このとき、足3の踵3aの後部が少し持ち上がることにより基台20の後部に掛かっていた荷重の一部が解放されるため、基台20の形状の復元により生じる反発力が足3の踵3aの後部に伝わる。
【0042】
次に、図10に示されるように、履物2の爪先2bを接地し、履物2の踵2aを全て持ち上げた状態では、基台20の前部から後部に掛かっていた全ての荷重が解放されるため、基台20の形状の復元により生じる反発力が足3の踵3aの前部から後部にかけて伝わる。
【0043】
すなわち、基台20は、その内部に独立して弾性力を有する複数のゴムパイプ22が上下方向に配置されているため、足3の踵3aを通して基台20に荷重が掛かった場合は該荷重が掛かった部分が変形し、足3の踵3aを持ち上げ始めると該荷重が解放され始め、該荷重が掛かっていた部分の形状が復元し始めることにより反発力が生じる。そのため、該反発力により踵3aを持ち上げる力を補助した場合、歩行者は身体のバランスを崩すことがない(例えば、足3の踵3aからの荷重が基台20の左側に偏って掛かっている場合、仮に、該荷重が解放されることにより基台20の全体が一律の反発力で踵3aを持ち上げるとすると、身体が左側前方にバランスを崩すことから、特に歩行能力の低下した人は場合によっては転倒するおそれがある)。
【0044】
これにより、基台20が設けられた履物用中敷1は、歩行者の身体のバランスを保ちながら足3の踵3aを持ち上げる力を補助することができる。
【0045】
また、基台20を構成するゴムパイプ22の両端は、基板21と、カバー23を構成する下板23aとにより閉塞されている。そのため、掛かっていた荷重が解放されることによりゴムパイプ22の形状が復元する場合、ゴムパイプ22自体の反発力に加え、ゴムパイプ22を構成する中空部22c内の圧縮された空気の反発力が生じることになる。すなわち、基台20は空気バネとしての役割を果たす。
【0046】
これにより、基台20が設けられた履物用中敷1は、両端が閉塞されていないゴムパイプ22を基台に用いた履物用中敷と比べて、より大きな反発力で歩行者の足3の踵3aを持ち上げる力を補助することができる。
【0047】
また、基台20を構成するゴムパイプ22の両端は閉塞されているため、ゴムパイプ22に荷重が掛かった場合、中空部22c内の圧縮された空気の反発力が生じる。そのため、荷重の増加によりゴムパイプ22が変形した場合でも、ゴムパイプ22は筒状の形状を保ちやすい。
【0048】
これにより、基台20に掛かる荷重の増加に対して、ゴムパイプ22は滑らかに反発力を増加させることができる(例えば、ゴムパイプ22の両端が閉塞されていない場合は、荷重の増加に対して途中までゴムパイプ22に反発力が増加するが、ゴムパイプ22の断面が楕円に変形した後や、ゴムパイプ22が長手方向で屈曲する中折れが生じた後等、ゴムパイプ22の筒状の形状が崩れた後は、ゴムパイプ22の反発力が一時的に急減する現象が生じる)。
【0049】
また、基台20を構成するゴムパイプ22の両端は閉塞されているため、中空部22c内の空気層はいわゆるダンパとしての作用を奏する。これにより、歩行時に歩行者の踵3aに急激な反発力を与えることなく緩やかな反発力で踵3aを持ち上げる力を補助することができる。
【0050】
また、基台20は、履物2の踵を接地した際に足3の踵3aに受ける衝撃を緩和するエアクッションとしての役割を兼ねている。これにより、踵3aに痛みを有する歩行者は、痛みが軽減された状態で歩き方を矯正することができる。
【実施例0051】
実施例2に係る履物用中敷につき、図11(a),(b)を参照して説明する。なお、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0052】
図11(a),(b)に示されるように、本実施例2の履物用中敷201は、主に、履物用中敷201を構成する基台220の内部の略中央にゴムパイプ222が配置されておらず空洞224が設けられている点、基台220に塗布された粘着剤230および貼付された剥離紙240が略円環状である点で、前記実施例1と異なる。
【0053】
基台220の内部の略中央に設けられた空洞224の体積は、ゴムパイプ222の約7本分の体積に相当する。空洞224の周囲には、平面視略ハニカム状にゴムパイプ222が上下方向に延びるように配置されている。夫々のゴムパイプ222は隣接するゴムパイプ222と接触する状態で配置されている。基台220内部の周縁に配置されたゴムパイプ222は側壁223dの内周面223fに接触する状態で配置されている。
【0054】
実施例2の履物用中敷201の使用者としては、主にO脚およびX脚の歩行者を想定している。O脚の歩行者が歩行する場合、荷重は踵の後部から踵の外側へと移動する。一方、X脚の歩行者が歩行する場合、荷重は踵の後部から踵の内側へと移動する。そのため、基台220内部の略中央にゴムパイプ222が配置されていなくても、歩行時に踵から掛かる荷重により基台220が変形することは可能である。
【0055】
また、踵の後部や外側および内側から夫々基台220に荷重が掛かった場合、基台220内部のゴムパイプ222の多くは、空洞224側に撓むように変形することができる。そのため、空洞224が設けられていない実施例1の基台20に比べて、本実施例2の基台220は、全体が変形しやすい。
【0056】
また、ゴムパイプ222が空洞224側に撓むように変形した場合であっても、ゴムパイプ222は両端が閉塞されていることから、中折れ等により筒状の形状が崩れることが殆どなく、ゴムパイプ222の反発力が一時的に急減する現象が生じにくい。そのため、基台220に掛かる荷重の増加に対して、ゴムパイプ222は滑らかに反発力を増加させることができる。
【0057】
また、基台220に掛かっていた荷重が解放され、空洞224側に撓んでいたゴムパイプ222が復元する場合、両端が閉塞されているゴムパイプ222はダンパとしての作用を奏する。そのため、基台220は、急激な反発力ではなく緩やかな反発力を踵に与えることができる。
【0058】
これにより、本実施例2の履物用中敷201は、特にO脚やX脚である歩行者の踵を持ち上げる力を効果的に補助することができる。
【実施例0059】
実施例3に係る履物用中敷につき、図12から図13を参照して説明する。なお、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0060】
図12(a),(b)に示されるように、本実施例3の履物用中敷301は、主に、基台320の高さが基台320の後部から前部にかけて次第に低くなっている点で、前記実施例1と異なる。
【0061】
カバー323を構成する側壁323dの高さは、基台320の後部が最も高く、前方に進むに従い低くなり、前部が最も低い。また、ゴムパイプ322の高さも、側壁323dと同様、基台320の後部が最も高く、前方に進むに従い低くなり、前部が最も低い。すなわち、基台320は略楔型の形状をしている。本実施例3では、基台320の前部の高さdは、約8mmである。
【0062】
また、基台320の内部の全てのゴムパイプ322は、下板323aに直交する状態で配置されている。
【0063】
図13に示されるように、履物2に履物用中敷301を装着した場合、中底70から中敷本体310の表面までの高さは、履物2の後部から前部にかけて滑らかに変化している。これにより、実施例3の履物用中敷301を履物2に装着して歩行した場合、足裏への違和感を少なくして歩き方を矯正することができる。
【0064】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0065】
例えば、本発明では、履物用中敷は歩行能力が低下した高齢者や脚の不自由な人等の歩き方を矯正するためのリハビリテーションに用いられるとしたが、これに限らず、ハイキングや登山で用いる等、健常者が歩行能力をさらに高めたい場合に用いられてもよい。
【0066】
また、前記実施例1~3では、履物用中敷を装着する履物としてスニーカーやウォーキングシューズを想定したが、これに限らず、カジュアルシューズ、革靴、ブーツ、サンダル等、様々な履物に装着してもよい。
【0067】
また、前記実施例1~3では、基台の平面視の形状は、略円形であるが、これに限らず、例えば、平面視で中敷本体の踵側裏面に相似する形状とする等、様々な形状をしていてもよい。
【0068】
また、前記実施例1~3では、ゴムパイプとして天然ゴム製のゴムパイプを用いたが、これに限らず、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等、様々な素材のゴムパイプを用いてもよい。また、複数の素材のゴムパイプを組み合わせて用いてもよい。
【0069】
また、前記実施例1,2では、基台に、長さ、外径、内径の各寸法が同じであるゴムパイプのみを用いたが、これに限らず、各寸法の異なるゴムパイプを組み合わせることにより基台の弾力性を調整してもよい。
【0070】
また、前記実施例1~3では、断面が略円形のゴムパイプを用いたが、これに限らず、楕円等、断面が様々な形状をしていてもよい。
【0071】
また、前記実施例1~3では、構造が簡単で軽量且つ安価である閉塞したゴムパイプを用いたが、これに限らず、円筒の両端が閉塞された中空円柱を用いてもよい。この場合、閉塞されたゴムパイプと比べて、エアクッションとしての機能が一層保たれやすい。
【0072】
また、前記実施例1~3では、基台の内部の全てのゴムパイプは、隣接するゴムパイプと接触する状態で配置されているが、これに限らず、一部のゴムパイプ同士を離間させて配置してもよいし、全てのゴムパイプ同士を離間させて配置してもよい。
【0073】
また、前記実施例1~3では、基台内部の周縁に位置するゴムパイプはカバーの側壁と接触する状態で配置されているが、これに限らず、周縁に位置するゴムパイプを側壁と離間させて配置してもよい。
【0074】
また、前記実施例1~3では、基台内部のゴムパイプは平面視略ハニカム状に配置されているが、これに限らず、例えば同心円状や渦巻状に配置する等、種々の配置をしてもよい。
【0075】
また、前記実施例1~3では、基台およびカバーに、変性シリコーン製のシートを用いたが、これに限らず、ポリエチレン、アクリル等の合成樹脂、ゴム、皮革、布等、可撓性を有するものであるならば種々の素材を用いてもよい。
【0076】
また、前記実施例1~3では、基板の裏面の周縁と、カバーを構成する側壁の上端面とを接着することにより基台の内部を密閉したが、これに限らず、カバーに側壁を設けず、カバーを構成する下板と基板とによりゴムパイプを挟持し、基台の内部を密閉しなくてもよい。
【0077】
また、前記実施例1では、履物用中敷を構成する基台の製造方法において、長尺パイプを変性シリコーン溶液に浸漬した後所定の長さに切断したが、これに限らず、先に長尺パイプを所定の長さに切断した後、変性シリコーン溶液に浸漬してもよい。
【0078】
また、前記実施例2では、基台中央部の空間には何も充填されていないが、これに限らず、例えばスポンジ等の軟質材を空間に充填してもよい。これにより、空間側にゴムパイプが撓むことを阻害することなく、基台の形状を維持し続けることができる。
【0079】
また、前記実施例3では、基台内部の全てのゴムパイプは下板に直交する状態で配置されたが、これに限らず、全てのゴムパイプは基板に直交する状態で配置されてもよい。
【0080】
また、前記実施例1~3では、基台を中敷本体に接着した履物用中敷について示したが、これに限らず、中敷本体と基台とを別体とし、履物用中敷の使用者に中敷本体の裏面の所望の位置に基台を装着させてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 履物用中敷
2 履物
2a 踵
2b 爪先
3 足
3a 踵
10 中敷本体
10a 裏面
20 基台
21 基板
21a 裏面
21b 表面
22 ゴムパイプ
22a 下端面
22b 上端面
22c 中空部
22d 外周面
22e 内周面
22f 被膜
23 カバー
23a 下板
23b 表面
23c 裏面
23d 側壁
23e 上端面
23f 内周面
30 粘着剤
40 剥離紙
50 基板用型枠
50a 底面
50b 壁面
60 カバー用型枠
60a 底面
60b 壁面
70 中底
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13