(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139511
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】検査装置、検査システム、検査方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20241002BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20241002BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
A61M25/00 500
G01N21/88 Z
G01B11/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050483
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】土屋 宏紀
【テーマコード(参考)】
2F065
2G051
4C267
【Fターム(参考)】
2F065AA12
2F065AA21
2F065FF04
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065QQ08
2F065QQ23
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ31
2F065TT03
2G051AA90
2G051AB01
2G051CA04
2G051DA06
4C267AA01
4C267BB12
4C267BB13
4C267BB44
4C267FF01
4C267HH30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】医療用カテーテルの品質維持に貢献する検査装置、検査システム、検査方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】検査装置100は、医療用カテーテル4を構成する複数のシャフト間の重ね代を撮影範囲に含む撮影画像を取得し、前記撮影画像における前記重ね代の範囲を特定し、前記重ね代の範囲に対する画像処理の結果に基づき、前記重ね代についての合否を判定する処理部3を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用カテーテルを構成する複数のシャフト間の重ね代を撮影範囲に含む撮影画像を取得し、
前記撮影画像における前記重ね代の範囲を特定し、
前記重ね代の範囲に対する画像処理の結果に基づき、前記重ね代についての合否を判定する
処理部を備える検査装置。
【請求項2】
前記処理部は、
前記重ね代の範囲の長さを算出し、
算出した長さが所定の範囲に含まれるか否かによって合否を判定する
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記処理部は、
前記撮影画像の前記重ね代の範囲に対する画像処理により、前記重ね代の部分における空気層又は異物の存否を判断し、
前記空気層又は異物の存否の結果に基づき合否を判定する
請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記撮影画像に対し、前記重ね代の範囲を特定するための閾値を記憶する記憶部を備え、
前記閾値は、前記重ね代の前記医療用カテーテルの基端側の境界、及び先端側の境界をそれぞれ検出するための画素値の変化量に対する閾値を含み、
前記処理部は、前記重ね代の基端側の境界及び先端側の境界を検出して前記重ね代の範囲を特定する
請求項1に記載の検査装置。
【請求項5】
前記記憶部は、前記基端側の境界に対する閾値と、前記先端側の境界に対する閾値とを、前記医療用カテーテルの種類別に記憶し、
前記処理部は、
前記医療用カテーテルの種類を特定し、
特定した種類に対応する閾値に基づき、前記重ね代の範囲を特定する
請求項4に記載の検査装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記閾値の設定を外部から受け付ける
請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記医療用カテーテルに付されたタグから前記医療用カテーテルの識別データを識別する識別部を更に備え、
前記処理部は、
前記識別部から識別データを取得して前記種類を特定する
請求項5又は6に記載の検査装置。
【請求項8】
前記撮影画像における前記重ね代の範囲の画像が入力された場合に、前記画像に写る重ね代についての合否を出力するように学習されている学習モデルを用い、合否を判定する
請求項1に記載の検査装置。
【請求項9】
前記医療用カテーテルの一端を保持し、前記医療用カテーテルを吊り下げつつ搬送する搬送機構と、
前記搬送機構にて前記医療用カテーテルを停止させた位置にて、前記医療用カテーテルの先端側を固定する固定部と、
停止した医療用カテーテルの端部を撮影する撮影部と、
を更に備え、
前記処理部は、前記撮影部によって撮影された撮影画像に対して前記医療用カテーテルの重ね代に対する合否を判定する
請求項1に記載の検査装置。
【請求項10】
医療用カテーテルの一端を保持し、前記医療用カテーテルを吊り下げつつ搬送する搬送機構、前記搬送機構にて前記医療用カテーテルを停止させた位置にて、前記医療用カテーテルの先端側を固定する固定部、及び、停止した医療用カテーテルの端部を撮影する撮影部を備える検査装置と、
前記検査装置から、前記医療用カテーテルを構成する複数のシャフト間の重ね代を撮影範囲に含む撮影画像を取得し、前記撮影画像に対する画像処理の結果に基づく、前記重ね代についての合否の判定結果を前記撮影画像と共に記憶する記憶部を備えるサーバ装置と、
前記サーバ装置で記憶される前記医療用カテーテルの撮影画像及び判定結果を前記サーバ装置から取得して表示する表示部を備えるクライアント装置と
を含む検査システム。
【請求項11】
コンピュータが、
医療用カテーテルを構成する複数のシャフト間の重ね代を撮影範囲に含む撮影画像を取得し、
前記撮影画像における前記重ね代の範囲を特定し、
前記重ね代の範囲に対する画像処理の結果に基づき、前記重ね代についての合否を判定する
検査方法。
【請求項12】
コンピュータに、
医療用カテーテルを構成する複数のシャフト間の重ね代を撮影範囲に含む撮影画像を取得し、
前記撮影画像における前記重ね代の範囲を特定し、
前記重ね代の範囲に対する画像処理の結果に基づき、前記重ね代についての合否を判定する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル製造工程における検査装置、検査システム、検査方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
血管及び脈管等の管腔器官に存在する病変部の診断用又は治療用に医療用カテーテル(以下、単にカテーテルともいう)が用いられている。医療用カテーテルは、患者の体内に挿入される柔軟なシャフトと、シャフトの基端に設けられる硬質なハブとを備える。医療用カテーテルは、シャフトとハブとを接合したり、先端にバルーンを取り付けたり、微細な構成物を組み立てる工程を経て製造される。
【0003】
特許文献1には、医療用カテーテルの製品としての品質を高めるために、接合時の金型に対するシャフトの移動を抑止する製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療用カテーテルの品質を高め、維持するためには、製造におけるいくつかの工程での測定や検査の実施が必要である。医療用カテーテルに対する自動検査の実現が求められる。
【0006】
本開示の一側面における目的は、医療用カテーテルの品質維持に貢献する検査装置、検査システム、検査方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示に係る検査装置は、医療用カテーテルを構成する複数のシャフト間の重ね代を撮影範囲に含む撮影画像を取得し、前記撮影画像における前記重ね代の範囲を特定し、前記重ね代の範囲に対する画像処理の結果に基づき、前記重ね代についての合否を判定する処理部を備える。
【0008】
(2)上記(1)の検査装置において、前記処理部は、前記重ね代の範囲の長さを算出し、算出した長さが所定の範囲に含まれるか否かによって合否を判定してもよい。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)の検査装置において、前記処理部は、前記撮影画像の前記重ね代の範囲に対する画像処理により、前記重ね代の部分における空気層又は異物の存否を判断し、前記空気層又は異物の存否の結果に基づき合否を判定してもよい。
【0010】
(4)上記(1)から(3)のうちのいずれか1項の検査装置は、前記撮影画像に対し、前記重ね代の範囲を特定するための閾値を記憶する記憶部を備え、前記閾値は、前記重ね代の前記医療用カテーテルの基端側の境界、及び先端側の境界をそれぞれ検出するための画素値の変化量に対する閾値を含み、前記処理部は、前記重ね代の基端側の境界及び先端側の境界を検出して前記重ね代の範囲を特定してもよい。
【0011】
(5)上記(4)の検査装置において、前記記憶部は、前記基端側の境界に対する閾値と、前記先端側の境界に対する閾値とを、前記医療用カテーテルの種類別に記憶し、前記処理部は、前記医療用カテーテルの種類を特定し、特定した種類に対応する閾値に基づき、前記重ね代の範囲を特定してもよい。
【0012】
(6)上記(5)の検査装置は、前記処理部は、前記閾値の設定を外部から受け付けてもよい。
【0013】
(7)上記(5)又は(6)の検査装置は、前記医療用カテーテルに付されたタグから前記医療用カテーテルの識別データを識別する識別部を更に備え、前記処理部は、前記識別部から識別データを取得して前記種類を特定してもよい。
【0014】
(8)上記(1)から(7)のうちのいずれか1項の検査装置は、前記撮影画像における前記重ね代の範囲の画像が入力された場合に、前記画像に写る重ね代についての合否を出力するように学習されている学習モデルを用い、合否を判定してもよい。
【0015】
(9)上記(1)から(8)の検査装置において、前記医療用カテーテルの一端を保持し、前記医療用カテーテルを吊り下げつつ搬送する搬送機構と、前記搬送機構にて前記医療用カテーテルを停止させた位置にて、前記医療用カテーテルの先端側を固定する固定部と、停止した医療用カテーテルの端部を撮影する撮影部と、を更に備え、前記処理部は、前記撮影部によって撮影された撮影画像に対して前記医療用カテーテルの重ね代に対する合否を判定する。
【0016】
(10)本開示に係る検査システムは、医療用カテーテルの一端を保持し、前記医療用カテーテルを吊り下げつつ搬送する搬送機構、前記搬送機構にて前記医療用カテーテルを停止させた位置にて、前記医療用カテーテルの先端側を固定する固定部、及び、停止した医療用カテーテルの端部を撮影する撮影部を備える検査装置と、前記検査装置から、前記医療用カテーテルを構成する複数のシャフト間の重ね代を撮影範囲に含む撮影画像を取得し、前記撮影画像に対する画像処理の結果に基づく、前記重ね代についての合否の判定結果を前記撮影画像と共に記憶する記憶部を備えるサーバ装置と、前記サーバ装置で記憶される前記医療用カテーテルの撮影画像及び判定結果を前記サーバ装置から取得して表示する表示部を備えるクライアント装置とを含む。
【0017】
(11)本開示に係る検査方法は、コンピュータが、医療用カテーテルを構成する複数のシャフト間の重ね代を撮影範囲に含む撮影画像を取得し、前記撮影画像における前記重ね代の範囲を特定し、前記重ね代の範囲に対する画像処理の結果に基づき、前記重ね代についての合否を判定する。
【0018】
(12)本開示に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、医療用カテーテルを構成する複数のシャフト間の重ね代を撮影範囲に含む撮影画像を取得し、前記撮影画像における前記重ね代の範囲を特定し、前記重ね代の範囲に対する画像処理の結果に基づき、前記重ね代についての合否を判定する処理を実行させる。
【0019】
本開示によれば、医療用カテーテルのシャフト間の重ね代の強度に関する自動検査が実現でき、医療用カテーテルの品質維持に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】検査装置の処理部の構成を示すブロック図である。
【
図5】処理部による検査手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】第2実施形態における検査システムの概要図である。
【
図11】第2実施形態の処理部の構成を示すブロック図である。
【
図12】サーバ装置及びクライアント装置の構成を示すブロック図である。
【
図13】第2実施形態における設定変更処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】設定用Webページの内容例を示す図である。
【
図15】処理部に記憶される設定データの内容例を示す図である。
【
図16】第2実施形態における処理部による検査手順の一例を示すフローチャートである。
【
図17】重ね代に関する合否の判定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図18】重ね代の合否に関する学習モデルの概要図である。
【
図19】重ね代の合否に関する学習モデルの他の概要図である。
【
図20】第3実施形態の変形例における合否の判定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の実施形態に係る検査装置、検査システム、検査方法及びコンピュータプログラムの具体例を、図面を参照しつつ以下に説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の検査装置100の概要図である。
図2は、搬送機構1の上部の模式拡大図であり、
図3は、搬送機構1の下部の模式拡大図である。検査装置100は、搬送機構1と、撮影部2と、処理部3とを含む。搬送機構1は、フレーム10に固定されたレール11に沿って検査装置100の検査対象のカテーテル4を吊り下げるように保持し、撮影部2の撮影範囲まで、略水平方向にカテーテル4を搬送する。撮影部2は、搬送機構1により搬送されたカテーテル4の自由端である先端側が固定部16にて固定されると、カテーテル4の先端を含む範囲を撮影し、撮影画像を出力する。処理部3は、搬送機構1の駆動と、撮影部2による撮影と、撮影画像に対する画像処理及び算出処理とを制御する。
【0023】
搬送機構1は、カテーテル4の全長よりも長い高さの直方体状に組み立てられたフレーム10に固定されたレール11を備える。レール11は、カテーテル4の全長よりも十分に高く設けられている。レール11は、
図2に示すように、断面C字型の形状を有し、C字の開放部が下方に向かうように設置されている。レール11は、断面C字型の形状で、C字の開放部が横向けになるように設置されてもよい。レール11の形状は、カテーテル4を吊り下げたまま、フレーム10が設置される床面に略平行に搬送する種々の構成を採用できる。
【0024】
搬送機構1は、レール11と略平行に、吊り下げられたカテーテル4の先端側の移動をガイドするガイド17を備える。ガイド17は、カテーテル4の全長の半分の高さ程度から床面寄りの高さに設けられている。ガイド17は、例えば
図1に示すように、カテーテル4の先端部を、十分な隙間を開けて挟み込んで保護するように設けられた壁として設けられているが、これに限られない。ガイド17は、壁状ではなく、レール11と略平行に設けられた柵状のものであってもよいし、断面U字状の形状を有したものであってもよい。
【0025】
搬送機構1は、ガイド17に沿ってフレーム10よりも手前の位置に、搬送中のカテーテル4を個々に識別する識別部18を含む。識別部18は、レール11から吊り下がりながら搬送されるカテーテル4に内蔵される、あるいは取り付けられるタグTに付された識別データを取得する。識別部18は例えば、タグTがRFID(Radio Frequency Identifier)タグである場合、RFIDリーダを採用する。識別部18は例えば、タグTが二次元コード、カテーテル4の表面に表れている数字、文字を含む場合、カメラを採用する。識別部18がカメラを採用する場合は、撮影部2の一部として構成されてもよい。識別部18は、取得した識別データを処理部3へ通知する。
【0026】
搬送機構1は、
図2の拡大図に示すように、レール11に嵌合し、レール11に沿って自由に動く保持体12を備える。保持体12は、レール11に嵌合する嵌合部121と、カテーテル4の基端側の拡径部41に係合してカテーテル4を保持する保持部122と、嵌合部121と保持部122との間を連結する連結部113とを有する。嵌合部121は、レール11の断面C字型の内側面に対して転がる車輪21Tを有している。保持部122には、ロープ又はワイヤー等の紐体13が固定されている。保持体12は、紐体13が駆動部(モータ)14によって巻き取られることでレール11に沿って進行する。
【0027】
嵌合部121は、レール11の断面C字の開放部から突出する形状の基体21Bを有する。基体21Bには、連結部123が連結する孔が設けられている。保持部122は、連結部123を介して嵌合部121に吊り下げられる短冊状の形状の基体22Bを有し、基体22Bの一面に、保持部22Hを有する。保持部22Hは、クリップ状に形成されており、基体22Bの長さ方向に平行な軸を有する管状の空間が形成される。保持部22Hの内側の管状の内径は、保持対象のカテーテル4の基端側シャフト外径よりも大きく、カテーテル4の基端のテーパ状の拡径部41よりも小さい。
【0028】
製造工程において、カテーテル4には、ロボット又は人手によりタグTが取り付けられる。タグTには、カテーテル4に付与される識別データが印字されているか、又は記憶されている。カテーテル4に付与されている識別データに対応付けて、カテーテル4を構成する部材の一部又は全部についての検査データや、ロット番号が、処理部3又は他のコンピュータで記憶されている。例えば、カテーテル4に含まれるバルーンの種別や、ステントの種別が、カテーテル4の識別データに対応付けられ記憶される。
【0029】
そしてカテーテル4は、ロボット又は人手により、保持部22Hが検査対象のカテーテルCの拡径部41を保持できるように、保持部22Hにクリップされ、検査装置100に向けて搬送される。
【0030】
搬送機構1は、
図3に示すように、吊り下げられたカテーテル4の先端を誘導するガイドレール15を有する。ガイドレール15は、略水平方向に配置された2本のレール151,152を含む。ガイドレール15は、カテーテル4の搬送方向において先へ進行するほどにレール151,152間の距離が縮まるように配置されており、最奥におけるレール151,152間の距離は、カテーテル4の先端が通過できる程度の隙間である。ガイドレール15の先には、カテーテル4の先端部を固定する固定部16が設けられている。
【0031】
固定部16は、略鉛直方向に立設されたパネル161と、パネル161の中線上の箇所に取り付けられた吸着部162とを備える。吸着部162は、カテーテル4の内部に使用される磁性体に対して磁場を発する磁石を用いる。この場合、パネル161は、非磁性体の樹脂製を採用する。パネル161は、半透明な素材を用いて裏面から光を投影してもよい。吸着部162は、磁石に限らず、静電気を用いて動きを止めてもよいし、他の機構を用いてもよい。
【0032】
搬送機構1は、
図1から
図3に示したような構成により、上部のレール11に沿って進行する保持体12を、固定部16の上部の所定位置で停止させたときに搬送対象のカテーテル4の先端部を、固定部16で吸着して止める。保持体12を更に進行させることで、カテーテル4の先端は固定部16から離脱し、カテーテル4は、次の工程へ向けて、レール11に沿って進行するか又は逆行する。
【0033】
撮影部2は、
図1及び
図3に示したように、搬送機構1の固定部16が設けられている箇所を撮影範囲にするように、フレーム10に固定されている。撮影部2は、固定部16のパネル161を撮影し、撮影画像の画像信号を処理部3へ出力する。処理部3は、
図1に示したように、搬送機構1のフレーム10に設置されている。処理部3は、撮影部2及び搬送機構1の駆動部14に接続されている。
【0034】
図4は、検査装置100の処理部3の構成を示すブロック図である。処理部3は、プロセッサ31と、メモリ32と、入出力I/F33とを含む。処理部3は、マイクロコンピュータ、プログラマブルロジックコントローラ等を用いる。
【0035】
プロセッサ31は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit )、MPU(Micro-Processing Unit )、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、又は、TPU(Tensor Processing Unit)等のいずれかを採用する。プロセッサ31は、図示しないRAM(Random Access Memory)等の非一時記憶媒体を用い、処理中に生成したデータを非一時記憶媒体に記憶しつつ、メモリ32に記憶されているコンピュータプログラムP3に基づき、後述の演算を実行する。
【0036】
メモリ32は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶媒体である。メモリ32は、プロセッサ31が読み出すコンピュータプログラムP3、設定データ等を記憶する。設定データは、撮影部2による撮影画像における画素数と、撮影部2のカメラからパネル161までの距離(深度)で写っている物体の大きさとの対応関係を含む。対応関係により、プロセッサ31は、撮影画像内の対象物の画素数単位の寸法から、実空間における寸法を算出できる。また設定データは、後述する処理で用いる各種閾値を含む。
【0037】
コンピュータプログラムP3は、装置外の非一時記憶媒体9に記憶されたコンピュータプログラムP9を、プロセッサ31が入出力I/F33を介して読み出して複製したものであってもよい。コンピュータプログラムP3は、遠隔のサーバ装置が配信するものを、処理部3が図示しない通信部を介して取得し、メモリ32に記憶したものであってもよい。
【0038】
入出力I/F33は、搬送機構1の駆動部14、識別部18、及び撮影部2が接続されるインタフェースである。入出力I/F33は例えば、通信インタフェースである。入出力I/F33には、撮影部2と、搬送機構1の駆動部14及び識別部18とが接続されている。プロセッサ31は、入出力I/F33を介し、撮影部2から出力される画像信号を取得する。プロセッサ31は、入出力I/F33を介して、搬送機構1の保持体12の移動を制御する制御信号を駆動部14へ出力する。プロセッサ31は、入出力I/F33を開始、識別部18から出力される識別データを取得する。入出力I/F33には、表示装置5が接続されている。処理部3は、検査結果を示す画面を作成し、入出力I/F33を介して表示装置5へ出力する。
【0039】
図5は、処理部3による検査手順の一例を示すフローチャートである。処理部3は、検査装置100の手前で、識別部18がカテーテル4のタグTから識別データを通知してきたことを契機として、以下の処理を開始する。
【0040】
処理部3のプロセッサ31は、識別部18から識別データを取得する(ステップS101)。
【0041】
処理部3のプロセッサ31は、保持体12を、レール11に沿った所定位置で停止させる(ステップS102)。ステップS102においてプロセッサ31は、保持体12のレール11上の位置が、固定部16の上部の所定位置に達した場合に、駆動部14に制御信号を出力して停止させる。
【0042】
プロセッサ31は、撮影部2による撮影を実行し、撮影画像を取得する(ステップS103)。ステップS103の時点で、カテーテル4の先端部は、吸着部162により吸着されて静止している。ステップS103において、プロセッサ31は、カテーテル4の先端部の静止を確認してから撮影を実行してもよい。
【0043】
ステップS103においてプロセッサ31は、撮影部2によってカテーテル4の中間シャフトから先端までの範囲(
図6参照)を撮影する。このときプロセッサ31は、撮影部2のカメラを動かして中間シャフトから先端シャフト、ステントマウント及び先端チップと順に撮影してもよい。撮影部2が複数のカメラを用いて撮影してもよいし、1台のカメラで撮影してもよい。
【0044】
プロセッサ31は、ステップS102,S103において、撮影部2から出力され続けているモニタ信号をキャプチャして撮影画像を取得し、キャプチャした撮影画像にカテーテル4の先端部分が映ったことを認識した場合に、停止させてもよい。
【0045】
プロセッサ31は、取得した撮影画像に写るカテーテル4の先端部分の認識処理を実行する(ステップS104)。プロセッサ31はステップS104において、中間シャフト及び先端シャフトの境界位置を認識する(
図6、
図7参照)。プロセッサ31は、ステップS104において、中間シャフトと先端シャフトとの重ね代の範囲を、撮影画像における画素値(色、輝度、明度、及び彩度の少なくともいずれか1つ)によって認識する。プロセッサ31は、ステップS301において、他の認識処理、例えば、先端チップの形状認識、太さの認識なども含めて処理を実行する。カテーテル4の内側のシャフト(例えば先端シャフト)の外面と、カテーテル4の外側のシャフト(例えば中間シャフト)の内面との間に、接着剤が十分に充填されている場合、撮影画像の重ね代が写っている範囲の明度は暗く、或いは明るくなって、接着剤が充填されていない範囲と区別可能である。プロセッサ31は、画像処理によって接着剤が十分に充填された重ね代の範囲(境界位置)を認識する。
【0046】
プロセッサ31は、認識処理の結果と、メモリ32に記憶されている設定データに基づき、先端部分の各所の寸法を算出する(ステップS105)。プロセッサ31は、ステップS105において、中間シャフトと先端シャフトの境界部分の重ね代の長さを算出する。重ね代が十分に取られている場合、すなわち、重ね代部分の接着剤が十分に充填されていれば、シャフトの接合部分の強度が十分である。逆に、重ね代の長さが十分でない場合、そのカテーテル4は、長さ方向の強度が不十分な虞がある。
【0047】
プロセッサ31は、ステップS104の認識処理の結果と、ステップS105によって算出した寸法とにより、ステップS101で取得した識別データに対応するカテーテル4の製品としての合否を判定する(ステップS106)。ステップS106においてプロセッサ31は、算出した寸法とメモリ32に記憶してある各寸法に対する閾値(範囲)とを比較し、例えば閾値以下である場合には合格と判定、範囲内にある場合には合格と判定する。例えば、ステップS105で算出した重ね代の寸法が、閾値±許容範囲の長さであれば、プロセッサ31は、合格と判定し、それ以外であれば不合格と判定する。プロセッサ31は、ステップS103で取得した撮影画像と判定結果とを、カテーテル4の識別データに対応付けてメモリ32に記憶する(ステップS107)。
【0048】
プロセッサ31は、判定結果と、ステップS103にて取得した撮影画像と、撮影画像上に示す、算出した寸法を表すグラフィックとを含む画面を表示装置5に表示させるための画面データを作成する(ステップS108)。プロセッサ31は、作成した画面データを表示装置5へ出力し(ステップS109)、1本のカテーテル4に対する検査処理を終了する。
【0049】
ステップS108及びステップS109の処理は、メモリ32に記憶したデータに基づいて事後的に実行されてもよい。
【0050】
図6は、検査対象のカテーテルの模式図である。カテーテル4は大きく分別すると、ハブ42、基部シャフト43、中間シャフト44、先端シャフト45、ステントマウント46、先端チップ47に分けられる。拡径部41はハブ42が有するテーパ部分と、基部シャフト43との間の中間部分である。
【0051】
基部シャフト43、中間シャフト44、及び先端シャフト45は相互に接合されている。中間シャフト44及び先端シャフト45は、
図6に示すように重ね代を有する。基部シャフト43には、複数の箇所に先端チップ47の先端からの長さの目安となるマーカ431,432が付されている。
【0052】
先端シャフト45の先に、ステントマウント46が取り付けられている。ステントマウント46は、バルーンに代替されていてよい。ステントマウント46よりも先端に、矢じり状の先端チップ47が設けられている。
【0053】
本開示の検査装置100による検査対象のカテーテル4の長さは、患者の体内に入り得る有効長であり、例えば2000ミリメートル(mm)で、許容範囲は±50mmである。重ね代は例えば、9mmであって、許容範囲は3mmである。
【0054】
図7及び
図8は、処理部3による画像処理の概要図である。
図7は、吸着部162の吸着により、パネル161の撮影部2側に静止したカテーテル4の先端部分を写したカメラ21による撮影画像の線図を示す。撮影画像には、カテーテル4の中間シャフト44から先が写っている。
図7には、中間シャフト44と先端シャフト45との間の重ね代の部分の拡大図を吹き出しとして示す。
図7の拡大図に示すように、中間シャフト44と先端シャフト45との間の重ね代の部分は、表面から見える色味や、反射の仕方が異なり、画像の画素値の変化に基づくエッジ処理によって、プロセッサ31は境界を認識できる。
【0055】
図8は、撮影画像を示す線図上に、プロセッサ31がステップS104で認識した各所の境界を太い破線で示している。プロセッサ31は、ステップS104で認識した中間シャフト44と先端シャフト45の境目を認識し、画像内における白抜きの矢符で示す重ね代に相当する画素数を決定する。
図8中でプロセッサ31は、例えば画素数を「25」と決定している。プロセッサ31は、決定した画素数から、メモリ32に記憶してある対応関係に基づいて、長さを算出する。
図8中に示す例でプロセッサ31は、対応関係は、1画素が1/3mm、であるから8mmと算出する。
【0056】
このように、搬送機構1、撮影部2及び処理部3を用いて、検査装置100は、カテーテル4の寸法を自動的に検査できる。カテーテル4の各所の認識結果及び算出した寸法をメモリ32に記憶し、場合によっては検査の都度に、出力する構成により、重ね代の許容範囲(例えば±3mm)を超えたカテーテル4を除外する処理を自動化でき、人手による検査の工程を省略しつつ品質の維持を保つことが可能となる。
【0057】
図9は、検査装置100から出力される画面の例を示す。
図9は、プロセッサ31が、有効長を算出して作成し、表示装置5へ出力した(S109)検査結果の画面を示す。検査結果の画面51は、対象のカテーテル4の撮影画像を円形状にトリミングした画像を含む。画面51は、カテーテル4の撮影画像上に、先端チップ47の認識結果を示す先端チップ47が写っている領域を囲む境界線を描いたグラフィック52と、カテーテル4の特定部位を示すマーク53とを含む。
図9の例において画面51は、特定部位の撮影画像の高さ方向の位置に相当する直線54を含む。画面51は、撮影画像の周囲に、算出した有効長を示すテキストを含む。このように、表示装置5に検査結果を順次出力することにより、検査装置100から離れた箇所に設けられた表示装置5から、カテーテル4の製造工程のオペレータが検査結果を確認できる。
【0058】
重ね代の合否について、処理部3は、第1実施形態では搬送機構1によってカテーテル4を搬送し、先端部分を自動的に撮影する撮影部2で撮影した撮影画像に基づいて判定するものとして説明した。しかしながら、撮影画像はその他、検査対象のカテーテル4を寝かせて先端部分を撮影した撮影画像であってもよいし、検査対象の複数のカテーテル4を並べて吊り下げて撮影した撮影画像、並べて寝かせて先端部分を撮影した撮影画像等であってもよい。
【0059】
検査装置100は、製造工程の中に組み込むことができる。検査装置100の処理部3は、検査対象のカテーテル4の各所の寸法が許容範囲を超えている場合、表示装置5にてエラー通知を行ない、対象のカテーテル4を販売対象から除外するように処理できる。また、メモリ32に記憶した検査対象のカテーテル4毎の寸法の測定結果のデータに基づき、寸法のばらつきがばらつき許容範囲を超えた場合には警報を発することも可能である。メモリに32に記憶した各寸法のデータ群を解析に用いてもよい。
【0060】
(第2実施形態)
第2実施形態では、処理部3は、カテーテル4の先端側を撮影した撮影画像に基づく寸法の算出に基づく合否の判定において、重ね代の部分の認識処理の調整を可能とする。
図10は、第2実施形態における検査システム200の概要図である。検査システム200は、検査装置100、サーバ装置6及びクライアント装置7を含む。検査装置100は、
図10に示すように、複数含まれていてもよい。第2実施形態において、検査装置100の処理部3の構成の一部と、表示装置5がクライアント装置7へ代替されることと、詳細な処理手順とを除く構成は、第1実施形態の検査装置100と同様であるから、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0061】
検査装置100は、処理部3が通信媒体を介してサーバ装置6と、ローカルネットワーク又は専用回線であるネットワークN1を介して通信可能に構成されている。検査装置100の処理部3は、撮影部2で撮影した撮影画像と、検査結果とを、サーバ装置6へ逐次送信する。サーバ装置6は、クライアント装置7と、ローカルネットワーク若しくは専用回線、又は公衆通信網であるネットワークN2を介して通信が可能である。サーバ装置6は、クライアント装置7で権限のあるオペレータから受け付ける操作に基づき、設定データを変更して処理部3へ送信し、処理部3が参照する閾値などを変更可能とする。
【0062】
図11は、第2実施形態の処理部3の構成を示すブロック図である。第2実施形態の処理部3は、上述したように、サーバ装置6との通信のための通信部34を備える。第2実施形態では、表示装置5は、通信部34を介したクライアント装置7に代替される。通信部34は、例えば無線LAN(Local Area Network)等の無線通信用の通信デバイスである。通信部34は、Bluetooth(登録商標)等の通信デバイスであってもよい。通信部34は、有線による通信デバイスであってもよい。
【0063】
図12は、サーバ装置6及びクライアント装置7の構成を示すブロック図である。サーバ装置6は、サーバコンピュータである。サーバ装置6は、検査装置100が設置されるカテーテル4の製造工場内で管理される装置であってもよいし、製造工場から離隔した場所で管理される装置であってもよい。サーバ装置6は、1台のサーバコンピュータであってもよいし、複数のサーバコンピュータに分散された構成であってもよい。
【0064】
サーバ装置6は、処理部60、記憶部61、第1通信部62及び第2通信部63を備える。処理部60は、CPU及び/又はGPUを用いたプロセッサを含む。処理部60は、内蔵するROM(Read Only Memory)及びRAM等のメモリを用い、構成部を制御して処理を実行する。処理部60は、記憶部61に記憶されている情報処理プログラムP6に基づき、検査装置100から得られるデータを記憶部61に記憶する処理、クライアント装置7とのデータの送受信処理とを含む後述の処理を実行する。
【0065】
記憶部61は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶媒体を用い、処理部60が参照するプログラム及びデータを記憶する。記憶部61は、情報処理プログラムP6を記憶する。記憶部61に記憶されている情報処理プログラムP6は、処理部60が記憶媒体8に記憶されている情報処理プログラムP8を読み出して複製したものであってもよい。情報処理プログラムP6は、図示しない他のサーバ装置から処理部60がダウンロードして記憶部61に記憶し、インストールしたものであってもよい。
【0066】
記憶部61は、製造するカテーテル4の種別を示す種別データ、種別毎のカテーテル4の識別データ(番号、記号、アルファベット等)、製造工程にて各所から送信されるデータ、及び検査装置100から得られるデータを含むデータベースを記憶する。データベースに記憶されるデータは適宜更新される。
【0067】
第1通信部62は、ネットワークN1を介した通信を実現する通信デバイスである。ネットワークN1は、無線通信媒体を利用する場合、アンテナ及びルータ等を含むローカルネットワーク又は専用回線であり、有線通信媒体を利用する場合、ルータ及び通信線を含むローカルネットワーク又は専用回線である。第1通信部62は、サーバ装置6と処理部3とのデータの送受信を行なうための通信デバイスである。
【0068】
第2通信部63は、ネットワークN2を介した通信を実現する通信デバイスである。ネットワークN2は、公衆通信網と、これに接続される端末機NT、基地局BS、アクセスポイントAP等を含む。ネットワークN2は、ネットワークN1と同一であってローカルネットワーク又は専用回線であってもよい。第2通信部63は、端末機NT、基地局BS、又はアクセスポイントAPに接続され、サーバ装置6とクライアント装置7との間のデータ送受信を実現する無線通信デバイス又は有線通信デバイスである。
【0069】
クライアント装置7は、デスクトップ型又はラップトップ型のパーソナルコンピュータであってもよいし、スマートフォンやタブレット端末であってもよい。クライアント装置7は、処理部70、記憶部71、通信部72、表示部73、及び操作部74を備える。
【0070】
処理部70は、CPU及び/又はGPUを用いたプロセッサを含む。処理部70は、内蔵するROM及びRAM等のメモリを用い、構成部を制御して処理を実行する。処理部70は、記憶部71に記憶されているWebブラウザプログラムに基づき、サーバ装置6によって提供されるWebページを介してオペレータからの操作を受け付ける。
【0071】
記憶部71は、ハードディスク、SSD、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶媒体を用い、処理部70が参照するプログラム及びデータを記憶する。記憶部71は上述のWebブラウザプログラムを記憶する。
【0072】
通信部72は、ネットワークN2を介した通信を実現する通信デバイスである。通信部72は、端末機NT、基地局BS、又はアクセスポイントAPに接続され、サーバ装置6とクライアント装置7との間のデータ送受信を実現する無線通信デバイス又は有線通信デバイスである。
【0073】
図13は、第2実施形態における設定変更処理の一例を示すフローチャートである。以下に示す処理は、クライアント装置7が、権限が付与されたオペレータによるWebブラウザプログラムにて表示されるログインページから認証に成功し、検査システム200に関する設定用Webページへの遷移要求がクライアント装置7から送信されると開始される。
【0074】
サーバ装置6は、設定用Webページのデータをクライアント装置7へ第2通信部63を介して送信する(ステップS601)。
【0075】
クライアント装置7の処理部70は、設定用Webページのデータを受信し(ステップS701)、設定用Webページを表示部73に表示する(ステップS702)。設定用Webページには、Webページのデータに含まれるクライアントスクリプトが含まれ、これによりバックグラウンドでWebページに含まれる各種コントロールに入力されたデータが、処理部70から逐次サーバ装置6へ送信され、逐次サーバ装置6から送信されるデータに基づき画面が再表示され、更新されるとよい。
【0076】
処理部70は、設定用Webページにて、設定対象のカテーテル4の種類の指定を受け付ける(ステップS703)。処理部70は、カテーテル4の種類を識別する種類データを決定し(ステップS704)、指定された種類のカテーテル4に対する設定用Webページを表示する(ステップS705)。指定された種類のカテーテル4に対する設定用Webページは、検査装置100にて過去に検査したカテーテル4を撮影部2にて撮影した撮影画像を含むとよい。
【0077】
処理部70は、指定された種類のカテーテル4の中間シャフトと先端シャフトとの重ね代の境界を検出するための輝度、明度、彩度、あるいはRGB別の画素値に対する閾値の設定を、中間シャフト側と、先端シャフト側とで受け付ける(ステップS706)。閾値は、例えば、変化量に対する閾値である。閾値の設定は、数値の入力によって受け付けてもよいし、撮影画像上に境界を示す直線状のグラフィック、重ね代の範囲に対応する矩形状のグラフィック等を重畳表示し、グラフィックの中間シャフト側及び先端シャフト側の境界がどのように検出されるかをプレビューしながら受け付けてもよい(
図14参照)。
【0078】
処理部70は、設定された重ね代の境界を検出するための閾値のデータを、カテーテル4の種類の種類データと対応付けてサーバ装置6へ送信する(ステップS707)。
【0079】
サーバ装置6は、第2通信部63により、Webページを介してクライアント装置7から閾値のデータと、カテーテル4の種類データとを受信する(ステップS602)。処理部60は、閾値のデータと、カテーテル4の種類データとを、記憶部61のデータベースに記憶又は更新する(ステップS603)。処理部60は、閾値のデータと、カテーテル4の種類データとを、検査装置100の処理部3へ第1通信部62から送信する(ステップS604)。
【0080】
処理部3は、通信部34にてサーバ装置6から閾値のデータと種類データとを受信する(ステップS121)。プロセッサ31は、受信した閾値のデータと種類データとをメモリ32に記憶し(ステップS122)、設定変更処理を終了する。
【0081】
図14は、設定用Webページ730の内容例を示す図である。設定用Webページ730は、
図14に示すように、種類を示す種類データの表示欄731と、その種類のカテーテル4の撮影画像732と、撮影画像上に重畳されるグラフィック733と、閾値の設定用のコントロール734とを含む。表示欄731は、品番を示すテキストを表示している。コントロール734は、中間シャフト側のスライドバーと、先端シャフト側のスライドバーとを含む2系統のスライドバーで構成されている。スライドバーは、画素値の閾値を調整可能である。
図14の例においては、重ね代のカテーテル4の基端側の境界(エッジ)を誤って認識し、重ね代を長く算出している。そこでオペレータは、設定用Webページ730内にて、グラフィック733の撮影画像732内における左端、即ち、カテーテル4の基端側(左側)の左端の位置が、撮影画像732内の最も濃く表されハッチング領域の左端に対応するように、左側のコントロール734のスライドバーを操作する。
【0082】
サーバ装置6は、スライドバーのスライダーに対応する閾値を逐次Webブラウザ経由で取得し、その閾値で撮影画像に対して境界を検出した結果をグラフィック733としてプレビューする。閾値は、
図13及び
図14に示すように、中間シャフト側と、先端シャフト側とで各々設定可能であるとよい。
【0083】
図15は、処理部3に記憶される設定データの内容例を示す図である。設定データは、
図15に示すように、カテーテル4の種類を示す種類データと対応付けて、中間シャフト側と、先端シャフト側とで区別して記憶されている。
図15の例では、例えば「L001」という種類データが付与されているカテーテル4に対し、中間シャフト側で画素値の変化量に対する閾値が「10」、先端シャフト側で画素値の変化量に対する閾値が「53」のように設定されている。
【0084】
図16は、第2実施形態における処理部3による検査手順の一例を示すフローチャートである。処理部3は、検査装置100の手前で、識別部18がカテーテル4のタグTから識別データを通知してきたことを契機として、以下の処理を開始する。
図16に示す処理手順のうち、第1実施形態の
図5に示した処理手順と共通する手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0085】
処理部3のプロセッサ31は、撮影部2にて撮影した撮影画像に対し、カテーテル4の先端部分の認識処理を実行する(S104)。プロセッサ31は、サーバ装置6経由で取得し記憶した設定データを用いて、先端部分の各所の寸法を算出(重ね代の長さを含む)し(S105)、合否を判定する(S106)。
【0086】
プロセッサ31は、ステップS103で取得した撮影画像と判定結果とを、カテーテル4の識別データに対応付けてサーバ装置6へ送信する(ステップS127)。ステップS127においてプロセッサ31は、カテーテル4を1つずつ検査する都度に送信してもよいし、複数のカテーテル4についてバッファしておき、まとめて送信するようにしてもよい。プロセッサ31は、撮影画像を撮影した日時を送信するデータに含めてもよい。
【0087】
サーバ装置6は、撮影画像、判定結果、及びカテーテル4の識別データを第1通信部62により受信する(ステップS621)。処理部60は、受信した撮影画像、及び判定結果を、カテーテル4の識別データと対応付けて記憶部61のデータベースに記憶する(ステップS622)。
【0088】
サーバ装置6は、受信した撮影画像、及び判定結果を含む画面を作成し(ステップS623)、画面の画面データをクライアント装置7へ送信する(ステップS624)。画面データの送信は、クライアント装置7にて表示中の検査中のWebページに対して実行される。
【0089】
クライアント装置7の処理部70は、画面データを受信し(ステップS721)、受信した画面データに基づく画面を表示部73に表示し(ステップS722)、処理を終了する。ステップS722で表示される画面は、第1実施形態で
図9に示した例と同様である。
【0090】
第2実施形態では、設定データをサーバ装置6及びクライアント装置7を介して受け付ける構成としたが、これに限られない。例えば、処理部3に入力インタフェースを設けて、表示装置5にて閾値の設定画面を出力し、数値の入力を受け付ける構成としてもよい。また、処理部3がフラッシュメモリ等を用いた可搬型の記憶媒体の着脱を受け付ける構成とし、プロセッサ31が記憶媒体から設定データを読み出して変更を受け付けるようにしてもよい。
【0091】
第2実施形態では、検査システム200を、処理部3と通信媒体を介して接続されるサーバ装置6、及び、記憶されるデータを表示するクライアント装置7を含めた構成とした。これにより、サーバ装置6にて検査装置100における検査結果のデータ(撮影画像及び認識結果)がデータベースに蓄積し、カテーテル4の製造工程における各部材のトレーサビリティを向上させる生産管理が可能となる。クライアント装置7から検査結果をリアルタイムに、又は事後的に確認できることで、製造工程におけるオペレータの負担を低減する効果も期待できる。
【0092】
(第3実施形態)
第3実施形態で処理部3は、重ね代の長さに基づく合否の判定のみならず、重ね代の接着剤部分に気泡に対応する空間があるか否かによって合否の判定を行なう。処理部3は、接着剤部分に異物が混入しているか否かを判定してもよい。第3実施形態では、より処理資源が豊富なサーバ装置6を含む検査システム200で、気泡に対応する空間があるか否かを判定する処理を行なうこととして以下に説明する。しかしながら、サーバ装置6を含まず、第1実施形態と同様に、処理部3単独でそれらの判断を行なう構成としてもよい。
【0093】
第3実施形態の検査システム200の構成は、後述する処理の詳細を除き、第2実施形態の検査システム200と同様である。なお、後述の画像処理のため、第3実施形態においては、撮影部2のカメラが、搬送機構1の下部に、カテーテル4の表面を異なる方向から撮影できる構成とすることが好ましい。撮影部2は、1台のカメラをカテーテル4の先端部の周りをぐるりと回転させても複数回撮影してもよいし、複数のカメラでカテーテル4の先端部を撮影してもよい。以下の説明においては、第3実施形態の検査システム200の構成のうち、第2実施形態の検査システム200と共通する構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0094】
図17は、重ね代に関する合否の判定処理の一例を示すフローチャートである。
図17の処理は、例えば
図5、
図16に示した検査手順における合否の判定処理(S105)の詳細として実行される。以下の処理は、撮影画像を取得したサーバ装置6にて実行してもよい。
【0095】
処理部3のプロセッサ31は、撮影画像に写るカテーテル4の識別データに基づき、対象のカテーテル4の種類を特定する(ステップS501)。プロセッサ31は、特定した種類に応じた撮影画像に対する画像処理(例えばパターン認識、色識別等)により、撮影画像における中間シャフトと先端シャフトとの間の境界部分を、その輪郭形状から特定する(ステップS502)。ステップS502においてプロセッサ31は、特定した種類のカテーテル4の内側のシャフトの色によってそのシャフトの範囲を特定可能である。
【0096】
プロセッサ31は、特定された境界部分に対するエッジ処理を含む画像処理により、空気層(気泡)の存否を判断する(ステップS503)。ステップS503においてプロセッサ31は、異物の存否を判断してもよいが、異物が混入している場合大抵は、空気層が入りこんでいるので、空気層の存否のみを判断してもよい。ステップS503においてプロセッサ31は、エッジ処理にて気泡を認識してもよいし、空気層のパターン認識を行なってもよい。プロセッサ31はステップS503において、空気層の存否の判断に伴って、認識された気泡の範囲を特定する。
【0097】
ステップS503においてプロセッサ31は予め、境界部分の画像を入力した場合に、空気層を認識するように学習してある画像認識の学習モデルを用いて判断してもよい。この際に利用する学習モデルは、ニューラルネットワークを用いて、入力画像に空気層が入っているか否かを予めタグ付けされた教師データによって、カテーテル4の種類別に学習されている。プロセッサ31は、ステップS501で特定した種類に応じて学習モデルを選択し、選択した学習モデルへ、境界部分の範囲の画像を入力し、学習モデルから出力される空気層の認識結果(画像内の空気層の範囲を示すボックス、空気層である確度)を取得する。プロセッサ31は、認識結果に基づいて空気層の存否を判断する。
【0098】
プロセッサ31は、空気層が存在していると判断された場合(S503:YES)、存在する空気層の範囲から、空気層が所定サイズ以上であるか否かを判断する(ステップS504)。所定サイズは、メモリ32に記憶される設定データに閾値として含まれており、例えば面積に対応する画素数である。ステップS504にて所定サイズ以上であると判断された場合(S504:YES)、プロセッサ31は、対象のカテーテル4の重ね代について不合格と判定し(ステップS505)、合否の判定処理を終了する。
【0099】
ステップS504にて所定サイズ未満であると判断された場合(S504:NO)、処理をステップS506へ進める。
【0100】
ステップS503で空気層が存在しないと判断された場合(S503:NO)、プロセッサ31は、重ね代の長さが所定の長さ以上であるか否かを判断する(ステップS506)。所定の長さは、メモリ32に記憶される設定データに閾値として含まれており、例えば画素数単位の長さ、もしくは実空間における長さである。所定の長さは複数段階記憶されていてもよい。プロセッサ31は、所定サイズ未満の空気層が存在する場合は、より長い所定の長さ以上であるか否かを判断し、空気層が存在しない場合は、比較的短い所定の長さ以上であるか否かを判断するとして区別してもよい。
【0101】
ステップS506にて所定の長さ以上であると判断された場合(S506:YES)、プロセッサ31は、対象のカテーテル4の重ね代について合格と判定し(ステップS507)、合否の判定処理を終了する。
【0102】
ステップS506にて所定の長さ未満であると判断された場合(S506:NO)、プロセッサ31は、対象のカテーテル4の重ね代について不合格と判定し(S505)、合否の判定処理を終了する。
【0103】
上述の処理で用いた空気層の検出のための設定データについても、第2実施形態の閾値と同様にして、オペレータが、検出できるか否かのプレビューを確認しつつクライアント装置7にて操作して入力できるとよい。
【0104】
(変形例)
プロセッサ31は、
図17のフローチャートで示した、重ね代の長さ及び空気層の有無について、まとめて学習モデルを用いて判断してもよい。
図18は、重ね代の合否に関する学習モデルM3の概要図である。学習モデルM3は、画像の入力層M31と、重ね代についての合否を出力する出力層M32と、入力された画像に対する畳み込み層等を含む中間層M33とを含む。学習モデルM3の中間層M33は、重ね代の範囲の画像が入力された場合に、その画像に写る重ね代についての合否を出力層M32から出力するように学習済みである。この学習モデルM3は、重ね代の長さ及び空気層の有無を含む複数の観点から予め検査技術者が判定した合否のタグが付された画像を教師データとして学習されている。学習用装置は、教師データのタグ付き画像を入力層M31に入力した場合に出力層M32から出力される合格の確度と、実際の結果(合格:1、不合格:0)との誤差を逆伝播して中間層M33のパラメータを更新して学習する。更にこの学習モデルは、カテーテル4の種類別に学習されている。
【0105】
図19は、重ね代の合否に関する学習モデルM3の他の概要図である。
図19の例では、入力層M31は、画像の代わりに数値パラメータを入力する。数値パラメータは、重ね代の長さ、空気層のサイズを含む。
図19に示すような学習モデルM3を用いることで、プロセッサ31は、空気層のサイズが所定サイズ以上であるか否か、重ね代の長さが所定の長さ以上であるか否か、といった判断ではなく、空気層のサイズに応じて重ね代の長さに対する判断を変える、といった複雑な判断を実行できる。
図19の学習モデルM3の中間層M33は、数値パラメータが入力された場合に、重ね代についての合否を出力層M32から出力するように学習済みである。この学習モデルM3は、予め検査技術者が判定した合否のタグが付された画像に対する画像処理に基づき算出された重ね代の長さ及び空気層のサイズと、その合否のタグを教師データとして学習されている。学習用装置は、教師データのタグ付き画像から、重ね代の長さ及び空気層のサイズを含む認識結果に基づく数値パラメータを算出する。学習用装置は、算出した数値パラメータを入力層M31に入力した場合に出力層M32から出力される合格の確度と、タグが示す実際の結果(合格:1、不合格:0)との誤差を逆伝播して中間層M33のパラメータを更新して学習する。更にこの学習モデルは、カテーテル4の種類別に学習されている。
【0106】
図20は、第3実施形態の変形例における合否の判定処理の一例を示すフローチャートである。
図20の処理は、
図17に示した処理手順同様に、
図5、
図16に示した検査手順における合否の判定処理(S105)の詳細として実行される。
図20に示す処理手順は、第3実施形態同様、サーバ装置6にて実行されてもよい。
図20のフローチャートに示す処理手順のうち、
図17のフローチャートと共通する手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0107】
プロセッサ31は、カテーテル4の種類を特定し(S501)、境界部分を特定すると(S502)、特定した種類に対応する学習モデルM3を選択する(ステップS521)。プロセッサ31は、選択した学習モデルM3の入力層M31に、ステップS502で特定した境界部分の画像(又は数値パラメータ)を入力する(ステップS522)。
【0108】
プロセッサ31は、画像(又は数値パラメータ)を入力することで学習モデルM3から出力される確度である確度を取得し(ステップS523)、確度が所定値以上であるか否かを判断する(ステップS524)。
【0109】
プロセッサ31は、学習モデルM3から出力される確度が所定値以上であると判断した場合(S524:YES)、対象のカテーテル4の重ね代の強度について合格と判定し(ステップS525)、合否の判定処理を終了する。
【0110】
プロセッサ31は、学習モデルM3から出力される確度が所定値未満であると判断した場合(S524:NO)、対象のカテーテル4の重ね代の強度について不合格と判定し(ステップS526)、合否の判定処理を終了する。
【0111】
第3実施形態に示したように、検査装置100の処理部3は、重ね代の強度の点において長さのみならず、空気層が入り込んでしまっているか否かに基づいてカテーテル4を自動検査することができる。カテーテル4の各所の認識結果、算出した寸法、及び空気層の存否をメモリ32又は記憶部61に記憶し、場合によっては検査の都度に出力する。この構成により、重ね代の許容範囲(例えば±3mm)を超えたか、又は空気層が混入したカテーテル4を除外する処理を自動化でき、人手による検査の工程を省略しつつ品質の維持を保つことが可能となる。検査システム200は、メモリ32又は記憶部61に記憶した検査対象のカテーテル4毎の検査結果のデータに基づき、寸法や空気層の混入について警報を発することも可能である。メモリに32又は記憶部61に記憶したデータ群を解析に用いてもよい。
【0112】
上述のように開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0113】
200 検査システム
100 検査装置
1 搬送機構
11 レール
12 保持体
14 駆動部
2 撮影部
3 処理部