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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013952
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B65H 9/00 20060101AFI20240125BHJP
   B41J 11/04 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B65H9/00 A
B41J11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116431
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507351883
【氏名又は名称】シチズン・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 彰
(72)【発明者】
【氏名】澤井 直久
【テーマコード(参考)】
2C058
3F102
【Fターム(参考)】
2C058AB15
2C058AC06
2C058AE04
2C058AF39
2C058AF43
2C058AF51
2C058DA10
3F102AA11
3F102AB01
3F102BA01
3F102BB04
3F102DA05
3F102EA03
3F102FA03
(57)【要約】
【課題】プリンタは、少ない部品点数の簡単な構造で、用紙の蛇行を矯正する。
【解決手段】プリンタ100は、給紙路81と、反転ローラ77cと、グリップローラ77dと、左右一対の案内部材51と、を備え、案内部材51は上流側の第1部分51bと下流側の第2部分51aとで形成され、第1部分51bは、反転ローラ77cに最も近い部分が用紙201の幅W1よりも広い間隔L2で、第2部分51aに最も近い部分が幅W1と略等しい間隔L1となるように、送り方向に向かって徐々に間隔が狭く形成され、第2部分51aは、幅W1と略等しい間隔L1で略平行に形成され、用紙201の送り方向の先端が下流側の部分51aに到達した状態で、反転ローラ77cを用紙201に接しない位置に退避させる第2カム53bと、反転ローラ77cが退避している状態で、可動案内部材52を移動させる第1カム53aと、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉紙が通る搬送路と、
前記搬送路に沿って前記枚葉紙を送る、前記搬送路の、前記枚葉紙の送り方向の上流領域に設けられた駆動ローラと、
前記搬送路の、前記送り方向の下流側に設けられ、前記搬送路を通った前記枚葉紙を拘束する下流側ローラと、
前記搬送路を通る前記枚葉紙の両側縁の外側に配置され、前記枚葉紙の両側縁の位置を規制して前記枚葉紙を案内する一対の案内部材と、を備え、
前記一対の案内部材はそれぞれ、前記送り方向の上流側に位置する第1部分と下流側に位置する第2部分とを有し、
前記一対の案内部材の間隔は、前記第1部分の、前記駆動ローラに最も近い部分が前記用紙の幅よりも広い間隔で、前記用紙の送り方向に向かって徐々に狭くなり、前記第1部分の、前記第2部分に最も近い部分が前記枚葉紙の幅に形成され、前記第2部分は前記枚葉紙の幅に形成され、
前記駆動ローラと前記第2部分との間の領域を、前記送り方向における上流側の第1領域と下流側の第2領域とに2等分したとき、前記第1部分のうち、前記駆動ローラに最も近い部分は前記第1領域に位置するように配置され、
前記搬送路は、前記第2部分によって規制されたことにより向きが矯正された前記枚葉紙の先端側部分と前記駆動ローラによって拘束された前記枚葉紙の後端側部分との間において山状に盛り上がった状態の前記枚葉紙の屈曲部分を収容し得る、前記枚葉紙の厚さ方向に拡がった空間を有する、プリンタ。
【請求項2】
前記枚葉紙の前記送り方向の先端が前記第2の部分に到達した状態で、前記駆動ローラを前記枚葉紙に接しない位置に退避させる退避部材と、
前記駆動ローラと前記案内部材との間に、前記枚葉紙の両側縁から離れた位置から前記両側縁に接する位置に移動可能に設けられた可動案内部材と、
前記駆動ローラが退避している状態で、前記可動案内部材を前記移動可能の範囲で移動させる移動部材と、を備えた請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記可動案内部材の前記移動可能の範囲のうち、前記枚葉紙の前記両側縁に接する側への移動の位置を規制するとともに、前記移動の位置を調整する調整機構を設けた、請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記退避部材と前記移動部材とが一体に形成されて、前記駆動ローラの、前記枚葉紙に接しない位置への退避と、前記可動案内部材の、前記両側縁にそれぞれ接する位置への移動とを連動させた、請求項2に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記可動案内部材の、前記枚葉紙の両側縁に接する位置は、前記第2部分の延長線上に配置される位置として設定されている、請求項1から4のうちいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記プリンタは、前記枚葉紙の両面にプリントを行うものであり、
前記案内部材が設けられた前記搬送路は、前記枚葉紙の一方の面にプリントを行う際に通過し、さらに、前記枚葉紙の前記一方の面のプリントを終えてから前記他方の面にプリントを行う際にも通過する経路である、請求項4に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記案内部材が設けられた前記搬送路は、
前記一方の面にプリントを行う際と前記他方の面にプリントを行う際に通過する経路と、
さらに、前記一方の面がプリントされた後と前記他方の面がプリントされた後に前記枚葉紙が通過するプリント下流路と、の2つである請求項6に記載のプリンタ。
【請求項8】
前記移動部材は、前記枚葉紙の送りが停止している状態で、前記可動案内部材を前記両側縁にそれぞれ接する位置に移動する、請求項1から3のうちいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項9】
前記移動部材は、前記枚葉紙の送りが停止している状態で、前記可動案内部材を前記両側縁から離れた位置から前記両端縁にそれぞれ接する位置に移動する操作を複数回行う、請求項8に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の長さに切断された用紙(枚葉紙(カット紙))に印刷を行うプリンタは、用紙を1枚ずつ、駆動ローラによって搬送路に送る。搬送路は、用紙が収容された用紙収容部から、用紙に印刷を行う印刷部を通過して、用紙を排出する排出口まで延びている。そして、用紙は、搬送路上に設けられた複数の駆動ローラに順次受け渡されることで、搬送路に沿って送られる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、用紙は、駆動ローラによって送られる間に、姿勢が変わったり、送り方向の向きが変わったりして、用紙が蛇行することがある。用紙が蛇行すると、用紙が本来通るべき搬送路の領域から用紙の一部が外れてしまい、用紙への印刷がずれたり、プリンタの内部で用紙が詰まったりする。
【0004】
このため、プリンタには、搬送路に沿って送られる用紙の少なくとも一方の側縁を、用紙の幅方向の外側から叩いて、用紙の蛇行を矯正する蛇行矯正機構を備えたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5987688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した蛇行矯正機構は、多数の部品で構成されているため、構造が複雑で、かつコストも高い、という問題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、少ない部品点数の簡単な構造で、用紙の詰まりを防止しつつ、用紙の蛇行を矯正することができるプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、枚葉紙が通る搬送路と、前記搬送路に沿って前記枚葉紙を送る、前記搬送路の、前記枚葉紙の送り方向の上流領域に設けられた駆動ローラと、前記搬送路の、前記送り方向の下流側に設けられ、前記搬送路を通った前記枚葉紙を拘束する下流側ローラと、前記搬送路を通る前記枚葉紙の両側縁の外側に配置され、前記枚葉紙の両側縁の位置を規制して前記枚葉紙を案内する一対の案内部材と、を備え、前記一対の案内部材はそれぞれ、前記送り方向の上流側に位置する第1部分と下流側に位置する第2部分とを有し、前記一対の案内部材の間隔は、前記第1部分の、前記駆動ローラに最も近い部分が前記用紙の幅よりも広い間隔で、前記用紙の送り方向に向かって徐々に狭くなり、前記第2部分に最も近い部分が前記枚葉紙の幅と略等しい間隔となるように、前記用紙の送り方向に向かって徐々に間隔が狭く形成され、前記下流側の第2部分は前記枚葉紙の幅に形成され、前記駆動ローラと前記第2部分との間の領域を、前記送り方向における上流側の第1領域と下流側の第2領域とに2等分したとき、前記第1部分のうち、前記駆動ローラに最も近い部分は前記第1領域に位置するように配置され、前記搬送路は、前記第2部分によって規制されたことにより向きが矯正された前記枚葉紙の先端側部分と前記駆動ローラによって拘束された前記枚葉紙の後端側部分との間において山状に盛り上がった状態の前記枚葉紙の屈曲部分を収容し得る、前記枚葉紙の厚さ方向に拡がった空間を有するプリンタである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るプリンタによれば、少ない部品点数の簡単な構造で、用紙の詰まりを防止しつつ、用紙の蛇行を矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】昇華型サーマルプリンタ(以下、プリンタという。)の外観を示す斜視図である。
図2】プリンタの幅方向Wの中心を通り、前後方向Lに沿った鉛直面による断面図である。
図3図2に示した搬送路を明瞭にするために、図2を簡略化して模式的に表現した模式図である。
図4】プリンタの前面上カバーを開き、ロール紙収容部を前後方向Lの前方に引き出した状態を示す斜視図である。
図5図4の状態における図2相当の断面図である。
図6】用紙の蛇行を矯正する以前の状態を示す斜視図である。
図7】用紙の蛇行を矯正する以前の状態を示す平面図である。
図8】用紙の蛇行を矯正する以前の状態を示す、図7の模式図である。
図9】用紙の蛇行を矯正している状態を示す図6相当の斜視図である。
図10】用紙の蛇行を矯正している状態を示す図7相当の平面図である。
図11】用紙の蛇行を矯正している状態を示す、図10の模式図である。
図12】ペーパーガイドが閉じた状態を示す要部斜視図である。
図13】ペーパーガイドが開いた状態を示す要部斜視図である。
図14】ペーパーガイドが閉じ、かつ反転ローラが用紙に接した状態を示す要部断面図である。
図15】ペーパーガイドが閉じ、かつ反転ローラが用紙から離れた状態を示す要部断面図である。
図16】ペーパーガイドが開いた状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るプリンタの実施形態は、図面を用いて以下に説明される。
【0012】
<構成>
図1は昇華型サーマルプリンタ100(以下、プリンタ100という。)の外観を示す斜視図、図2はプリンタ100の幅方向Wの中心を通り、前後方向Lに沿った鉛直面による断面図、図3図2に示した搬送路80を明瞭にするために、図2を簡略化して模式的に表現した模式図、図4はプリンタ100の前面上カバー13を開き、ロール紙収容部22を前後方向Lの前方に引き出した状態を示す斜視図、図5図4の状態における図2相当の断面図である。
【0013】
図示のプリンタ100は、本発明に係るプリンタの一実施形態である。プリンタ100は、ケース10と、枚葉紙収容部21と、ロール紙収容部22と、プリント部30と、カッター部40と、搬送手段70と、搬送路80と、蛇行矯正機構50と、を備えている。
【0014】
(ケース)
ケース10は、図1に示すように、ケース本体11と、上面カバー12と、前面上カバー13と、前面中カバー14と、前面下カバー15と、を備えている。ケース本体11は、主に、幅方向Wの両側面と前後方向Lの後面とを覆うように形成されている。
【0015】
上面カバー12は、ケース本体11の高さ方向Hの上面の開口を塞ぐように配置され、枚葉紙201(以下、単に用紙201ともいう。)、ロール紙202から巻き解かれた用紙203が溜められるスタッカー12aが形成されている。
【0016】
なお、スタッカー12aの底面12bは、図2に示すように、後方から前方に向けて低くなるように傾斜して形成され、前面上カバー13の上排出口13bから、後方に向けて排出された用紙201,203は、底面12bの傾斜により、前方側に溜められる。
【0017】
前面上カバー13はプリンタ100の前面の上部に配置され、前面下カバー15はプリンタ100の前面の下部に配置され、前面中カバー14はプリンタ100の前面の、前面上カバー13と前面下カバー15との間に配置されている。
【0018】
前面中カバー14には、着脱可能のごみ箱16が備えられている。ごみ箱16は、後述するカッター部40の下方に配置されて、カッター部40により切断されて用紙201,203から切り離された紙片を収容する部分である。ごみ箱16は、前面中カバー14に対して上方にスライドすることで、前面中カバー14から取り外すことができるように取り付けられている。なお、図4,5は、ごみ箱16が取り外された状態を示している。
【0019】
前面上カバー13と前面中カバー14は、図4,5に示すように、内部引き出しユニット60(引き出しユニットの一例)に設けられている。内部引き出しユニット60は、ケース本体11と上面カバー12とで囲まれた内部に配置されていて、前面中カバー14の下部に形成された指掛け部14aに指を掛けて前後方向Lの前方に引くことで、ケース本体11及び上面カバー12に対し前方に引き出し可能となっている。
【0020】
内部引き出しユニット60は、前面上カバー13及び前面中カバー14の他、ロール紙収容部22、プリント部30のインクリボン32及びプラテンローラ33、カッター部40、搬送手段70、搬送路80、並びに蛇行矯正機構50が一体に備えられている。
【0021】
前面上カバー13は図1に示した閉じた状態から、内部引き出しユニット60が図4,5に示すようにケース本体11及び上面カバー12で囲まれた内部から前方に引き出された状態で、図4,5の矢印で示す上後方に向けて回動可能に支持されている。前面上カバー13が上後方に回動して開いた状態となることにより、ロール紙収容部22の前方の一部及び上方の一部を開放する。これにより、ケース10の内部に形成されたロール紙収容部22を露出させ、ロール紙収容部22にロール紙202を出し入れすることができる。
【0022】
前面上カバー13の前面には、プリント済みの用紙201,203を前方に排出する前排出口13aが形成され、また、前面上カバー13の後面には、プリント済みの用紙201,203を後方の、上面カバー12に形成されたスタッカーに排出する上排出口13bが形成されている。
【0023】
前面下カバー15は、図2,5に示すように、トレイ状の枚葉紙収容部21の前面の部分として形成されている(前面下カバー15は、枚葉紙収容部21の一部である。)。
【0024】
(枚葉紙収容部)
枚葉紙収容部21は、図2に示すように、プリンタ100の最下部に設けられ、ロール紙収容部22の下方に配置されている。枚葉紙収容部21は、予め所定の大きさに切断された枚葉紙201を厚さ方向に重ねて収容している。
【0025】
枚葉紙収容部21は、前面下カバー15の上部に形成された指掛け部15aに指を掛けて前後方向Lの前方に引くことで、内部引き出しユニット60とは独立して、ケース本体11及び上面カバー12に対して前方に引き出し可能に設けられている。そして、枚葉紙収容部21は、ケース本体11及び上面カバー12に対して前方に引き出された状態で上方が開放され、この開放された上方から、内部に収容する枚葉紙201を出し入れすることができる。
【0026】
(ロール紙収容部)
ロール紙収容部22は、前述したように内部引き出しユニット60に形成されている。ロール紙収容部22は、長尺の用紙203がロール状に巻かれたロール紙202を収容する部分である。ロール紙収容部22は、図2,4,5に示すように、ロール紙202の軸がプリンタ100の幅方向Wに平行となる姿勢で、ロール紙202を収容する。
【0027】
ロール紙収容部22は、内部引き出しユニット60が図2に示すようにケース10の内部に収容された状態で、枚葉紙収容部21の上方に配置された状態となる。ロール紙202は、図2において、ロール紙202の下端から図示の右方向に用紙203が引き出さて巻き解かれることにより、反時計回りに回転する向きに配置される。
【0028】
(プリント部)
プリント部30は、ロール紙収容部22の後方に配置されている。プリント部30は、プリンタ100の制御部95の制御によって、搬送路80のうちロール紙収容部22の後方において略鉛直方向に立ち上がった部分(後述するプリント路82)を通過する用紙201,203にプリントを行う。
【0029】
プリント部30は、サーマルヘッド31と、インクリボン32と、プラテンローラ33と、を備えている。インクリボン32は、用紙201,203の搬送に同期して、繰り出し側ロール32aから巻き取り側ロール32bにリボンを送り、リボンに接したサーマルヘッド31の発熱によって、リボンに塗布された昇華染料を用紙201,203に拡散転写することで、用紙201,203にプリントを行う。
【0030】
インクリボン32は内部引き出しユニット60に設けられていて、内部引き出しユニット60を、図4,5に示すように、ケース本体11から前方に引き出して、ロール紙収容部22の上方を円弧状に通して、前方に引き出すことができ、インクリボン32の交換を容易にしている。
【0031】
プラテンローラ33は、用紙201,203を挟んでインクリボン32及びサーマルヘッド31の反対側に配置されている。プラテンローラ33は、用紙201,203を、リボンを挟んでサーマルヘッド31に押し付ける。
【0032】
(カッター部)
カッター部40は、ロール紙収容部22の前方で、前面上カバー13の内部に配置されている。カッター部40は、プリンタ100の制御部95の制御によって、搬送路80のうちロール紙収容部22の上方から前方に延びた部分(後述する排出路83)を通過する用紙201,203を、幅方向Wに沿って切断する。切断された用紙201の切断片は、カッター部40の下方に配置されたごみ箱16の内部に落下して溜められる。
【0033】
(搬送路)
搬送路80は、用紙201,203が搬送される通路である。搬送路80のうち、まず、枚葉紙201が搬送される部分を説明する。
【0034】
搬送路80の、枚葉紙201が搬送される部分は、図2,3において一点鎖線で示すように、給紙路81と、プリント路82と、排出路83と、前排出路84と、上排出路85と、プリント上流路86と、プリント下流路87と、を備えている。
【0035】
給紙路81は、枚葉紙収容部21の前端から上方に向かって延び、ロール紙収容部22の前方で、かつ前面中カバー14の後方に形成された空間において、後方及び下方に向かうように折り返して延び、ロール紙収容部22の下方で、かつ枚葉紙収容部21の上方を、ロール紙収容部22の後方に向かって延び、さらに、ロール紙収容部22の後方において、上方に立ち上がった位置まで形成されている。
【0036】
なお、給紙路81は、後述するように、搬送される枚葉紙201が、厚さ方向に山状に盛り上がった状態においても、その山状の盛り上がった状態の用紙201の屈曲部分Kを引っ掛けずに通過させるように、用紙201の厚さ方向に拡がった空間Sを有している。
【0037】
プリント路82は、給紙路81に続いて、ロール紙収容部22の後方において、ロール紙収容部22の後方に沿うように上方に立ち上がるように延び、さらに、ロール紙収容部22の上方において、ロール紙収容部22の上方の前部まで、前方に向かって延びている。前述したプリント部30は、プリント路82に配置されている。
【0038】
排出路83は、プリント路82に続いて、ロール紙収容部22の上方の前部から前後方向Lに沿って前方に延びている。前述したカッター部40は、排出路83に配置されている。排出路83は、カッター部40よりも前方の位置まで延びている。
【0039】
前排出路84は、排出路83に続いて、前排出口13aまで前方に延びている。上排出路85は、排出路83に続いて、上排出口13bまで上方及び後方に曲がって延びている。
【0040】
前排出路84と上排出路85との分岐部には、排出路切替部材71が設けられ、排出路83を前方に進んだ用紙201,203を上排出路85に進むように、又は前排出路84に進むように切り替える。
【0041】
プリント上流路86は、プリント路82に続いて、ロール紙収容部22の上方の前部から、ロール紙収容部22の外周と同心円状に、ロール紙収容部22の下方に向かって、給紙路81に突き当たる手前の位置まで延びている。プリント上流路86は、用紙201がプリント路82に送られてプリント部30でプリントされる前に引き込まれる経路であり、後述するプリント下流路87は、プリント路82に送られてプリント部30でプリントされた後の用紙201が送られる経路である。
【0042】
つまり、プリント上流路86は、用紙201のうちプリントされていない部分が通過し、プリント下流路87は、用紙201のうち既にプリントが行われた部分が通過する。
【0043】
プリント上流路86と排出路83との分岐部には、プリント排出切替フラップ72が設けられている。プリント排出切替フラップ72は、先端が上下に変位するように回動可能に設けられていて、制御部95の制御によって回動する。プリント排出切替フラップ72は、図2に示した状態では、先端が下側に配置された状態となっていて、このとき、プリント路82を前方に進んだ用紙201が排出路83に進むように切り替えられる。一方、プリント排出切替フラップ72の先端が上側に配置された状態では、プリント路82を前方に進んだ用紙201がプリント上流路86に進むように切り替えられる。
【0044】
プリント下流路87は、プリント路82の給紙路81側の端部に続いて、ロール紙収容部22の下方で、しかも、給紙路81よりも下方で、かつ枚葉紙収容部21の上方において、ロール紙収容部22の後方から前方に向かって延び、プリント下流路87の前側の先端は上方に立ち上がって、同じく上方に立ち上がった給紙路81に滑らかに合流するように形成されている。
【0045】
なお、用紙201は、プリント路82においてインクリボン32が接する面、すなわち、図2,3において、前後方向Lの後方を向いた面にプリントが行われる。プリント路82においてプリントされた面は、用紙201がプリント下流路87に搬送されたとき、高さ方向Hの下方を向いている。
【0046】
そして、この用紙201が、プリント下流路87を前方に搬送されて、上方に立ち上がる給紙路81に合流して給紙路81を搬送されるとき、プリントされた面は、ロール紙収容部22の下方においては、高さ方向Hの上方を向いている。
【0047】
さらに、この用紙201が、給紙路81を後方に搬送されて、上方に立ち上がるプリント路82を搬送されるとき、プリントされた面は、前後方向の前方を向いている。つまり、用紙201は、プリント下流路87から給紙路81に合流して給紙路81を搬送されることにより、表裏面が反転した状態となる。したがって、プリント下流路87から給紙路81に至る経路は、給紙路81を含めて、表面のプリントを終えた用紙201の表裏面を反転させる反転路を形成している。
【0048】
次に、搬送路80のうち、ロール紙202から巻き解かれた用紙203が搬送される部分を説明する。搬送路80の、ロール紙202から巻き解かれた用紙203が搬送される部分は、上述した枚葉紙201が搬送される部分に加えて、図2,3において一点鎖線で示すように、ロール紙給紙路89を備えている。
【0049】
ロール紙給紙路89は、ロール紙収容部22に収容されたロール紙202の略最下部から後方に向かって延び、ロール紙収容部22の後方において、上方に立ち上がった位置まで形成されている。
【0050】
給紙路81とロール紙給紙路89とが合流する部分には、給紙切替フラップ73が設けられている。給紙切替フラップ73は、先端が前後に変位するように回動可能に設けられている。給紙切替フラップ73は、図2に示した状態では、図示を略したばねによって、先端が前側に付勢された状態となっていて、給紙路81を搬送された用紙201はプリント路82に進み、また、プリント路82から搬送された用紙201は、プリント下流路87に進む。
【0051】
一方、ロール紙202から巻き解かれてロール紙給紙路89を搬送された用紙203がプリント路82に向かって進むと、用紙203が、ばねの付勢力に抗して給紙切替フラップ73の先端を後側に押圧してプリント路82に進む。
【0052】
ロール紙202から巻き解かれた用紙203がプリント路82のプリント部30でプリントされる際は、用紙203はロール紙202から切り離されないままであるため、給紙切替フラップ73は、ロール紙給紙路89を通過している用紙203の部分によって先端が変位可能の範囲の後側に押圧されたままとなる。
【0053】
(搬送手段)
搬送手段70は、枚葉紙繰り出しローラ77aと、給紙ローラ77bと、反転ローラ77cと、グリップローラ77dと、送りローラ77eと、第1排出ローラ77fと、第2排出ローラ77gと、ロール紙繰り出しローラ77hと、を備えている。これらの搬送ローラ77a~77hは、例えば単一のモータによって駆動されるが、2個以上のモータによって、個別に駆動されるものであってもよい。
【0054】
これらの各搬送ローラ77a~77hは、枚葉紙201及び用紙203のうち少なくとも一方の用紙に対して、表裏のいずれかの面に接し、制御部95の制御によって駆動されるモータによって回転されることで、用紙201,203を搬送路80に沿って搬送する。
【0055】
枚葉紙繰り出しローラ77aは、枚葉紙収容部21の前端の部付近の上方に配置されている。枚葉紙繰り出しローラ77aは、枚葉紙収容部21に収容された枚葉紙201のうち、最も上に重ねられた枚葉紙201に接し、回転により、その枚葉紙201を、給紙路81に繰り出す。なお、枚葉紙繰り出しローラ77aは、繰り出し方向とは反対向きに回転して、給紙路81に繰り出した枚葉紙201を、枚葉紙収容部21に引き戻すことができる。
【0056】
給紙ローラ77bは、給紙路81の、枚葉紙繰り出しローラ77aに近接して配置されている。給紙ローラ77bは、枚葉紙繰り出しローラ77aによって給紙路81に繰り出された枚葉紙201に接して、枚葉紙201を給紙路81に沿って上方に搬送する。なお、給紙ローラ77bも、上述した搬送方向とは反対向きに回転して、枚葉紙201を引き戻すことができる。
【0057】
以下に説明する反転ローラ77c、グリップローラ77d、送りローラ77e、第1排出ローラ77f、第2排出ローラ77g及びロール紙繰り出しローラ77hも、給紙ローラ77bと同様に、各搬送方向とは反対向きに回転して、枚葉紙201を引き戻すことができる。
【0058】
反転ローラ77cは、給紙路81の、給紙ローラ77bよりも上方の部分に配置されている。反転ローラ77cは、給紙ローラ77bによって給紙路81を進んだ枚葉紙201に接して、枚葉紙201を給紙路81に沿ってプリント路82に向けて搬送する。
【0059】
グリップローラ77dは、プリント路82の、給紙路81に近い側の部分であって、給紙切替フラップ73の先端よりも先の位置に配置されている。グリップローラ77dは、プリント路82に搬送された枚葉紙201に接して、枚葉紙201を、プリント部30を通って、排出路83又はプリント上流路86に向けて搬送する。このとき、給紙切替フラップ73は、前側に切り替えられていて、給紙路81を搬送された枚葉紙201がプリント路82に搬送されるのを許容している。
【0060】
送りローラ77eは、排出路83の、カッター部40よりもプリント路82に近い側の部分に配置されている。送りローラ77eは、排出路83に搬送された枚葉紙201に接して、枚葉紙201を、カッター部40を通って第1排出ローラ77fに搬送する。
【0061】
第1排出ローラ77fは、排出路83の、プリント路82から遠い側の端部付近であって、排出路切替部材71よりも手前の位置に配置されている。第1排出ローラ77fは、排出路83に搬送された枚葉紙201に接して、排出路切替部材71の位置に応じて、枚葉紙201を、前排出路84又は上排出路85に搬送する。
【0062】
第2排出ローラ77gは、上排出路85のうち、上排出口13bの近くに配置されている。第2排出ローラ77gは、上排出路85に搬送された枚葉紙201に接して、枚葉紙201を、上排出口13bから上面カバー12のスタッカー12aに枚葉紙201を排出する。
【0063】
ロール紙繰り出しローラ77hは、ロール紙給紙路89の、プリント路82に近い側の部分であって、給紙切替フラップ73の先端よりも手前の位置に配置されている。ロール紙繰り出しローラ77hは、ロール紙収容部22に収容されたロール紙202の最外周に巻かれた用紙203に接し、回転により、その用紙203をグリップローラ77dに向けて繰り出す。
【0064】
なお、ロール紙繰り出しローラ77hは、繰り出し方向とは反対向きに回転して、グリップローラ77dに向けて繰り出した用紙203を、ロール紙収容部22のロール紙202に巻き戻すことができる。
【0065】
(センサ)
プリンタ100は、図2,5に示すように、プリント路82の経路上であって、グリップローラ77dよりもプリント上流路86に近い側の位置に、グリップローラ77dによってプリント上流路86に送られるときの、用紙201の送り方向の先端201aの通過を検出する第1センサ96を備えている。
【0066】
また、プリンタ100は、プリント路82の経路上であって、グリップローラ77dよりもプリント下流路87に近い側の位置に、グリップローラ77dによってプリント上流路86に送られるときの、用紙201の送り方向の後端の通過を検出する第2センサ97を備えている。
【0067】
(蛇行矯正機構)
次に、蛇行矯正機構50について、図6~11を参照して説明する。図6,7,8は、用紙201の蛇行を矯正する以前の状態を示し、図6は斜視図、図7は平面図、図8図7の模式図である。また、図9,10,11は、用紙201の蛇行を矯正している状態を示し、図9図6相当の斜視図、図10図7相当の平面図、図11図8相当の模式図である。
【0068】
蛇行矯正機構50は、搬送路80を搬送される枚葉紙201が斜行したり、搬送方向に対して向きが変化したりする枚葉紙201の蛇行を矯正する。蛇行矯正機構50は、図6に示すように、給紙路81(搬送路の一例)と、反転ローラ77c(駆動ローラの一例)と、グリップローラ77d(下流側ローラの一例)と、左右一対の案内部材51と、左右一対の可動案内部材52と、左右一対のカム部材53と、を備えている。
【0069】
ここで、反転ローラ77cは、給紙路81の、枚葉紙201の送り方向における上流領域に設けられている。反転ローラ77cは、枚葉紙201に接することで用紙201を拘束し、枚葉紙201を送るグリップ位置と用紙201から離れて枚葉紙201の拘束を解除する退避位置との間で移動可能に構成されている。
【0070】
グリップローラ77dは、プリント路82に設けられている。プリント路82は、給紙路81の、枚葉紙201の送り方向における下流側に設けられているため、グリップローラ77dは、給紙路81の、枚葉紙201の送り方向における下流側に設けられている。グリップローラ77dは、反転ローラ77cと同様に、給紙路81を通った枚葉紙201に接して枚葉紙201を拘束するグリップ位置と、枚葉紙201から離れて枚葉紙201の拘束を解除する退避位置との間で移動可能に構成されている。
【0071】
なお、給紙路81に沿った反転ローラ77cとグリップローラ77dとの間隔は、枚葉紙201の長さよりも短い。したがって、反転ローラ77cによって給紙路81に沿って送り方向に送られた枚葉紙201の先端201aがグリップローラ77dに到達したとき、枚葉紙201の後端は反転ローラ77cに接し得る位置にある。
【0072】
幅方向Wに分布して設けられた左右一対の案内部材51は、図7に示すように、給紙路81の両側縁にそれぞれ固定されて設けられている。各案内部材51は、給紙路81を通る枚葉紙201の両側縁の外側に位置して、給紙路81の面から、枚葉紙201の厚さ方向に垂直に立ち上がった壁面を有して形成されている。これにより、案内部材51は、給紙路81を通る枚葉紙201の側縁が立ち上がった壁面に接することで、枚葉紙201の両側縁の位置を規制して用紙201を案内する。
【0073】
案内部材51は、それぞれ、図7において矢印で示す用紙201の送り方向の上流側に位置する第1部分51bと下流側に位置する第2部分51aとを有して形成されている。
【0074】
左右一対の第1部分51bは、図8の模式図に示すように、反転ローラ77cに最も近い上流側部分51cが用紙201の幅W1よりも広い間隔L2(L2は、一例として207[mm])で形成され、第2部分51aに最も近い下流側部分51dが枚葉紙201の幅W1と略等しい間隔L1となるように、枚葉紙201の送り方向(矢印で示す)に向かって徐々に間隔が狭く形成され、第1領域a1から第2領域a2まで延びている。なお、この例では、第1部分51bと第2部分51aとが一体に形成されている。本実施形態における一対の第1部分51bは、間隔が直線的に徐々に狭くなるように形成されているが、直線的に徐々に狭く形成されたものに限定されるものではない。
【0075】
一方、第2部分51aは、枚葉紙201の幅W1と略等しい間隔L1(L1は、一例として203[mm])で、送り方向に沿って平行に形成され、第1部分51bの、最も間隔が狭い下流側部分と接続している。
【0076】
なお、反転ローラ77c(反転ローラ77cの回転中心)と第2部分51a(送り方向に沿った中央部分)との間の領域を、送り方向における上流側の第1領域a1と下流側の第2領域a2とに2等分したとき、すなわち、反転ローラ77cに近い第1領域a1と第2部分51aに近い第2領域a2とに2等分したとき、第1部分51bのうち、反転ローラ77cに最も近い上流側部分51cは第1領域a1に位置し、第2部分51aに最も近い下流側部分51dが第2領域a2に位置するように配置されている。
【0077】
このように、第1部分51bのうち、枚葉紙201の幅W1よりも広い間隔L2の反転ローラ77cに最も近い部分が、第1領域a1に位置することにより、反転ローラ77cによって送られる枚葉紙201がほぼ確実に第1部分51b内に送られる。そして、枚葉紙201は、第1部分51bによって、枚葉紙201の幅W1と略等しい間隔L1である第2部分51aまで案内されて搬送される。
【0078】
図8に示した例では、第1部分51bに、第2部分51aに最も違い下流側部分51dが、第2領域a2まで延びている。
【0079】
幅方向Wに分布して設けられた左右一対の可動案内部材52は、図7に示すように、案内部材51よりも、枚葉紙201の送り方向の上流側で、かつ反転ローラ77cの下流側において、給紙路81の両側縁にそれぞれ設けられている。可動案内部材52も、図7に示すように、給紙路81の両側にそれぞれ設けられている。
【0080】
なお、左右一対の可動案内部材52と反転ローラ77cとの搬送方向における位置を入れ替えて、反転ローラ77を可動案内部材52の下流側、可動案内部材52を反転ローラ77の上流側に配置してもよい。これらの位置を入れ替えても、入れ替えない場合と同様な構成や動作を適用することができる。
【0081】
一対の可動案内部材52は、送り方向に沿って平行に形成されている。また、一対の可動案内部材52は、共通する単一の軸52aにそれぞれ、軸方向に摺動可能に設けられている。この軸52aは、後述する左右一対のカム部材53の中心に固定されている。軸52aの両端は、左右のフレーム側板56に、回転自在に持されている。
【0082】
可動案内部材52は、給紙路81を通る用紙201の両側縁の外側に位置して、給紙路81の面から、枚葉紙201の厚さ方向に垂直に立ち上がった壁面を有して形成されている。各可動案内部材52は、給紙路81を通る枚葉紙201の側縁から離れた位置と枚葉紙201の両側縁に接する位置との間で、軸52aに沿って、幅方向Wに移動可能に設けられている。
【0083】
具体的には、一対の可動案内部材52は、枚葉紙201の幅W1よりも広い間隔L2と、枚葉紙201の幅W1と略等しい間隔L1との間で、移動可能に設けられていて、枚葉紙201の幅W1と略等しい間隔L1のとき、枚葉紙201の両側縁に接する位置となる。
【0084】
なお、一対の可動案内部材52が枚葉紙201の両側縁に接する位置は、各可動案内部材52が、案内部材51の下流側の部分51aの、前後方向Lに沿った延長線上に配置される位置として設定されている。また、一対の可動案内部材52が枚葉紙201の幅W1よりも広い間隔L2のときの位置は、可動案内部材52が、案内部材51の上流側の部分51bの上流側端部の、前後方向Lに沿った延長線上に配置される位置として設定されている。
【0085】
一対の可動案内部材52の移動可能の範囲のうち、枚葉紙201の両側縁に接する側への移動の位置を規制するとともに、その移動の位置を調整する調整機構をさらに設けてもよい。この調整機構は、例えば、一対の可動案内部材52のそれぞれの内面に当接する一対の当接部と、枚葉紙201の幅方向W(搬送方向に直交する方向)に、任意の1つの位置又は複数の位置のうちのいずれかの位置に固定される固定部と、を有し、一対の可動案内部材52の間に配置される板状の規制部材(調整プレートなど)と、この規制部材を固定する固定手段(固定ねじなど)とにより構成することができる。固定部は、例えば、枚葉紙201の幅方向Wに延びる長孔であり、この長孔内に固定手段である固定ねじが挿入される。
【0086】
これにより、一対の可動案内部材52が枚葉紙201の両側縁に移動して接したときに、案内部材51の第2部分51aにおける送り方向の下流側の端部に対し、枚葉紙201がずれない位置で正規の姿勢に矯正されるように、一対の可動案内部材52が枚葉紙201の両側縁側に移動して停止する位置を調整することができる。
【0087】
規制部材は、1つの部材ではなく、一対の可動案内部材52の一方用の規制部材と、一対の可動案内部材52の他方用の規制部材とに分離して設けてもよい。
【0088】
さらに、一対の可動案内部材52が枚葉紙201の幅W1よりも広い間隔L2のときの位置は、可動案内部材52が、案内部材51の上流側の部分51bの上流側端部の、前後方向Lに沿った延長線上に配置される位置よりも広い位置であってもよい。
【0089】
一対のカム部材53はそれぞれ、可動案内部材52の幅方向Wの外側において、軸52aに固定されている。カム部材53は軸52aと一体に、軸回りに回転可能となっている。各カム部材53は、第1カム53aと第2カム53bとが一体に形成されたものである。第1カム53aは、カム部材53の外周面に形成されている。第1カム53aのカム面は、可動案内部材52と一体に設けられた従動部材55に接している。カム部材53が回転することにより、第1カム53aが、ばね57によって幅方向Wの内側に向けて付勢されている従動部材55を幅方向Wの外側に変位させることで、可動案内部材52を幅方向Wに移動させる。
【0090】
したがって、第1カム53aは、可動案内部材52を、用紙201の幅W1よりも広い間隔L2の位置と枚葉紙201の幅W1と略等しい間隔L1の位置との間で幅方向Wに移動させる移動部材の一例である。
【0091】
第2カム53bは、カム部材53の内周面に形成されている。第2カム53bは、反転ローラ77cの軸77c1を支持しているリンク板54に接している。リンク板54は、左右のフレーム側板56に支持された軸77c2回りに回転可能に支持されている。軸52aを中心にカム部材53が回転することにより、第2カム53bが、リンク板54をカム部材53の半径方向の外側に変位させる。これにより、リンク板54は、軸77c2回りに回動し、軸77c1に支持された反転ローラ77cを、枚葉紙201に接した位置から退避位置に移動させる。
【0092】
したがって、第2カム53bは、用紙201の送り方向の先端201aが案内部材51の下流側の部分51aに到達した状態で、用紙201に接したグリップ位置の反転ローラ77cを、枚葉紙201から離れた退避位置に退避させる退避部材の一例である。
【0093】
このように、カム部材53は、可動案内部材52と反転ローラ77cとを連動させる。具体的には、カム部材53が、第1の回転位置にあるときは、反転ローラ77cが枚葉紙201に接した位置にあり、かつ可動案内部材52は、間隔L2で用紙201の両側縁から離れた位置となる。一方、カム部材が回転して第2の回転位置にあるときは、反転ローラ77cが枚葉紙201に接しない退避位置にあり、かつ可動案内部材52は、間隔L1で枚葉紙201の両側縁に接した位置となる。
【0094】
なお、カム部材53が、第1の回転位置から第2の回転位置に向かって回転し始めるとすぐに、反転ローラ77cは枚葉紙201から離れた状態となるため、カム部材53が第2の回転位置に到達する前に、反転ローラ77cは退避位置に到達した状態となる。
【0095】
一方、カム部材53が、第1の回転位置から第2の回転位置に向かって回転し始めて反転ローラ77cが退避位置に到達していても、可動案内部材52は、間隔L2から少し狭まった程度となるに過ぎず、カム部材53が第2の回転位置に到達した状態で初めて間隔L1となって、枚葉紙201の両側縁に接した位置となる。
【0096】
つまり、カム部材53が第1の回転位置から第2の回転位置に向かって回転すると、先に、反転ローラ77cが用紙201から離れて枚葉紙の後端201b側の拘束を解除し、その後に回転が進むことで、可動案内部材52が枚葉紙201の両側縁に接する。
【0097】
カム部材53は、プリンタ100の制御部95による制御によって、第1の回転位置と第2の回転位置との間で回転される。
【0098】
(プリント時の反転ローラ退避制御)
次に、制御部95による、反転ローラ77cの退避位置への移動(退避)の制御について説明する。
【0099】
後述するように、プリンタ100のプリント部30による枚葉紙201へのプリント工程は、制御部95の制御によって、枚葉紙201を、一旦、プリント路82を通してプリント上流路86に送る。このとき、枚葉紙201はプリント路82を通るが、枚葉紙201にプリントは行わない。その後、枚葉紙201の送り方向を反対にして、グリップローラ77dの回転によって、枚葉紙201をプリント路82に通しながら、プリント部30を制御することによって、枚葉紙201にプリントを行う。
【0100】
このプリントの工程では、プリント路82上でプリントが行われた枚葉紙201の部分、つまり、枚葉紙201の送り方向の先端側の部分は、プリント路82からプリント下流路87に送られる。
【0101】
ここで、プリント路82上で枚葉紙201を送るグリップローラ77dと、プリント下流路87が合流する給紙路81に設けられた反転ローラ77cとの間の、プリント下流路87に沿った長さは、枚葉紙201の送り方向の長さよりも短く設定されている。他の各搬送ローラ77a~77h間の間隔も同様である。
【0102】
このように、枚葉紙201を送る搬送手段70は、搬送手段70を構成する各搬送ローラ77a~77hによって搬送路80に沿って送られる枚葉紙201の受け渡しを行うために、搬送路80に沿って相前後する2つの搬送手段70間のピッチは、受け渡される枚葉紙201の長さよりも短い。
【0103】
このため、グリップローラ77dによってプリント下流路87に送られている枚葉紙201の、送り方向の先端201a側が、反転ローラ77cに到達するとき、枚葉紙201の後端201b側の領域が、まだプリント部30を通過中となる場合が起こり得る。
【0104】
このように、プリント工程が進行中の枚葉紙201の先端201aが、反転ローラ77cが接触したとき、グリップローラ77dの回転速度と反転ローラ77cの回転速度とに少しでも差があるときは、枚葉紙201の送り速度が瞬間的に変化する。この場合、送り速度の変化の影響を受けて、プリント部30によってプリント中の枚葉紙201の部分には、プリントの微妙な位置ずれ(プリントむら)が発生し得る。
【0105】
そこで、プリンタ100は、グリップローラ77dによって送りつつプリント部30によってプリントが行われている枚葉紙201の先端201aが接することとなる反転ローラ77cを、制御部95の制御によって、枚葉紙201に接しない退避位置に移動させる。
【0106】
つまり、プリンタ(実施形態においてプリンタ100)は、
用紙(枚葉紙201)にプリントを行うプリント部(プリント部30)と、
前記用紙を、前記プリント部を通過させる第1駆動ローラ(グリップローラ77d)と、
前記プリント部及び前記第1駆動ローラよりも、前記用紙の送り方向の下流側に設けられた第2駆動ローラ(反転ローラ77c)と、を備え、
前記第2駆動ローラは、前記プリント部によるプリント中の前記用紙に接触しない退避位置に移動可能とされている。
【0107】
このように、プリンタ100は、反転ローラ77cが、プリント中の枚葉紙201に接触しないことにより、枚葉紙201にプリントむらが生じるのを防止することができる。
【0108】
また、上記プリンタは、
前記プリント部でプリントされた用紙が通過する搬送路(プリント下流路87)の送り方向の下流側に、前記用紙の表裏面を反転して前記プリント部に前記用紙を送る給紙路(給紙路81)を有し、
前記第2駆動ローラは、前記給紙路を送られたプリント済みの前記用紙を、前記給紙経路に送る反転ローラ(反転ローラ77c)である。
【0109】
また、上記プリンタは、
前記第2駆動ローラが、用紙トレイ(枚葉紙収容部21)から繰り出された前記用紙を送る給紙ローラに近接して設けられ、かつ、前記給紙ローラによって送られた前記用紙を前記給紙路に送る駆動ローラ(給紙ローラ77b)であり、
前記給紙ローラと前記第2駆動ローラとは、単一のモータで駆動される。
【0110】
単一のモータで、給紙ローラ77bと反転ローラ77cとを駆動するプリンタ100は、給紙ローラ77bの回転方向と反転ローラ77cの回転方向とは、常に同一方向の回転となる。
【0111】
ここで、例えば、枚葉紙収容部21から、枚葉紙201が2枚重なった状態で、給紙路81に送られた場合(重送された場合)、給紙ローラ77bの回転方向を反対向きに制御することにより、重送された2枚の枚葉紙201のうちの1枚の枚葉紙201だけを、枚葉紙収容部21に引き戻すことができる。
【0112】
しかし、給紙ローラ77bとともに反転ローラ77cも、給紙ローラ77bとともに回転した場合、重送された2枚の枚葉紙201が、共に枚葉紙収容部21に引き戻されてしまい、重送状態を解消することができない。
【0113】
ここで、給紙ローラ77bと反転ローラ77cとを別のモータでそれぞれ駆動する構成のプリンタでは、給紙ローラ77bだけを反対向きに回転させることができるが、給紙ローラ77bと反転ローラ77cとを単一のモータで駆動するプリンタでは、給紙ローラだけを反対向きに回転させることができない。
【0114】
しかし、プリンタ100は、反転ローラ77cを、枚葉紙201に接しない退避位置に移動することができるため、給紙ローラ77bと反転ローラ77cとを単一のモータで駆動する構成であっても、反転ローラ77cを退避位置に移動させた状態で、給紙ローラ77b及び反転ローラ77cの回転を反対向きにすることで、反転ローラ77cの回転は用紙201に伝わらず、給紙ローラ77bの回転だけを枚葉紙201に伝えることができる。
【0115】
したがって、プリンタ100は、給紙ローラ77bと反転ローラ77cとを単一のモータで駆動する構成であっても、反転ローラ77cを退避位置に移動させた状態で、給紙ローラ77bの回転を反対向きにすることで、給紙ローラ77bの回転により、重送された2枚の枚葉紙201のうちの1枚の枚葉紙201だけを、枚葉紙収容部21に引き戻すことができ、重送状態を解消することができる。
【0116】
(ペーパーガイド開閉機構)
次に、搬送路80を覆うペーパーガイド90の開閉機構について、図12~16を参照して説明する。図12はペーパーガイド90が閉じた状態、図13はペーパーガイド90が開いた状態、をそれぞれ示す要部斜視図である。
【0117】
また、図14はペーパーガイド90が閉じ、かつ反転ローラ77cが枚葉紙201に接した状態、図15はペーパーガイド90が閉じ、かつ反転ローラ77cが枚葉紙201から離れた状態、図16はペーパーガイド90が開いた状態、をそれぞれ示す要部断面図である。
【0118】
ペーパーガイド90は、搬送路80を、枚葉紙201の厚さ方向に仕切って搬送路80を覆う仕切り板であり、本実施形態のプリンタ100においては、図1,3に示すように、プリント下流路87から給紙路81に跨る反転ローラ77cを含む湾曲した領域である反転部の、外周側を仕切るように配置されている。
【0119】
ペーパーガイド90は、図12に示すように、搬送路80(プリント下流路87から給紙路81に跨る反転ローラ77cを含む湾曲した領域である反転部)を覆う閉じた状態と、図13に示すように、この反転部を露出させる開いた状態と、に切り替えるように開閉自在に構成されている。なお、ペーパーガイド90の開閉は、使用者が手動で行う。
【0120】
ペーパーガイド90は、カバー板91と、カバー板91の両側部にそれぞれ、カバー板91と一体に設けられた側板92と、を備えている。カバー板91は、円柱の周面の一部のように形成され、図14,15に示すように、反転部を外周側から覆う。各側板92は、カバー板91に対して、円柱の周面の外側に向かって立ち上がって形成されている。
【0121】
各側板92は、リンク板54の回転中心である軸77c2に支持されている。これにより、ペーパーガイド90は、リンク板54と同様に、軸77c2を中心に回動可能とされ、この回動により、上述した閉じた状態(図12,14,15)と開いた状態(図13,16)とに切り替えられる。
【0122】
また、各側板92は、リンク板54と同様、軸77c2回りに回転可能に支持されている。そして、各側板92には、反転ローラ77cを支持する軸77c1を通す長孔92aが形成されている。軸77c1は、図14~16に示すように、カバー板91の外面側に配置されて、各側板92に形成された長孔92aを通されている。
【0123】
長孔92aは、各側板92に対して、リンク板54が軸77c2回りに相対的に回転するのを許容するため、リンク板54が軸77c2回りに相対的に回転することで、軸77c1が動く範囲に沿って延びて形成されている。
【0124】
ここで、各側板92に対するリンク板54の相対的な回転を許容する範囲は、ペーパーガイド90が閉じた状態(図12)において、反転ローラ77cが枚葉紙201に接した位置(図14)と枚葉紙201から離れた退避位置(図15)との間で移動するときの、軸77c1の動く範囲(軸77c2を中心とする円弧状)に対応して設定されている。
【0125】
つまり、反転ローラ77cは、ペーパーガイド90が閉じた状態のままで、枚葉紙201に接した位置と退避位置との間で、移動することができる。
【0126】
カバー板91には、軸77c2の軸方向に沿って、2つの開口91aが形成されている。この開口91aは、カバー板91の外面側に配置された軸77c1に支持された反転ローラ77cを、カバー板91の内面側の搬送路80(給紙路81)に露出させるために、反転ローラ77cを通過させる孔である。
【0127】
なお、反転ローラ77cの退避位置においては、カバー板91の内面から反転ローラ77cは搬送路80側に突出していないため、プリント時の反転ローラ77cの退避制御によって、プリント中の枚葉紙201の先端が、反転ローラ77cに引っ掛かることなく、カバー板91の内面に沿って滑らかに送られる。
【0128】
また、反転ローラ77cは、軸77c1に沿った長い単一物として構成されたものではなく、軸方向に分布して2つの物として配置されている。そして、カバー板91に形成された開口91aは、軸方向に長い単一の開口ではなく、反転ローラ77cに対応して、2つの開口に分けて形成されている。
【0129】
<作用>
以上のように構成されたプリンタ100について、枚葉紙201にプリントする動作を例示して説明する。
【0130】
まず、枚葉紙繰り出しローラ77a(図2参照。以下、同じ。)が回転することで、枚葉紙収容部21に収容された枚葉紙201のうち最も上層に積まれている1枚の枚葉紙201が給紙路81に繰り出され、さらに、給紙ローラ77bの回転及びその先の反転ローラ77cの回転により、給紙路81を搬送される。
【0131】
このとき、カム部材53は、第1の回転位置にある。したがって、反転ローラ77cは枚葉紙201に接して枚葉紙201を拘束した位置にあり、かつ可動案内部材52は、間隔L2で枚葉紙201の両側縁から離れた位置となる。
【0132】
給紙路81を送られた枚葉紙201は、姿勢が送り方向に対して傾いた斜行状態になっていたり、反転ローラ77cに接するときの摩擦力の不均一などにより進行方向が変化して蛇行したりする場合がある。このような場合であっても、枚葉紙201の先端201aは、枚葉紙201の幅W1よりも広い間隔L2に形成されている第1部分51bの範囲内で送られる。
【0133】
第1部分51bは、送り方向に進むにしたがって幅が狭くなっているため、枚葉紙201が斜行したり蛇行したりしている場合は、枚葉紙201の先端201aが、幅の最も狭い第2部分51aとの接続部に到達するまでに、枚葉紙201の左右いずれかの側縁が、第1部分51bに接し始める。
【0134】
第1部分51bに接した枚葉紙201の先端201a側の部分は、第1部分51bの傾斜(第2部分51aに向かって徐々に間隔が狭くなるように形成された、送り方向に対する傾き)に沿って送られる。つまり、斜めに傾いた姿勢で送られていた枚葉紙201の先端201aは、斜めに傾いたままの姿勢で、送り方向に沿って真っすぐ進むべきところ、第1部分51bに沿うように送りの向きが矯正されることで、先端201a側の部分の移動する向きが、枚葉紙201の後端201b側の送りの方向とずれた向きとなる。
【0135】
つまり、1枚の枚葉紙201における先端201a側の部分は第1部分51bによって移動する向きが規制され、後端201b側の部分は反転ローラ77cによって拘束されて斜行したまま送り方向に移動する。この結果、枚葉紙201は、先端201a側の部分と後端201b側の部分との移動する向きが異なるものとなるため、先端201a側の部分と後端201b側の部分と間の中間部分には、幅方向Wにおいて不均一な応力が生じる。
【0136】
そして、1枚の枚葉紙201としては、この不均一な応力によって平坦な状態を維持することができなくなり、不均一な応力を解消するように、枚葉紙201は厚さ方向に屈曲して、幅方向Wの一方の側(後端201bの向きに対して先端201aの向きが、幅方向において内側となる側)が厚さ方向に山状に盛り上がった状態となる。
【0137】
枚葉紙201がさらに送られて、先端201aが、枚葉紙201の幅W1と等しい間隔L1で送り方向に沿って平行な第2部分51aに達すると、先端201aの両側縁がそれぞれ第2部分51aに接して、図8に示すように、枚葉紙201の先端201a側の部分は、両側縁が送り方向に沿って平行な、本来の正規の姿勢に矯正される。
【0138】
一方、枚葉紙201の後端201b側の部分は反転ローラ77cによって拘束されて斜行したままの状態が維持されることで、先端201a側の部分と後端201b側の部分との間の中間部分は、厚さ方向に山状に大きく盛り上がった状態の屈曲部分Kを形成する。
【0139】
なお、枚葉紙201が山状に盛り上がった状態とは、枚葉紙201が送り方向に真っすぐに延びて平坦な状態から、厚さ方向にわずかでも凸状に変形した状態である。
【0140】
また、山状とは、枚葉紙201の厚さ方向に凸状に変形していれば、山のような形状として視認されるか否かに拘わらず、また、屈曲部分Kの高さ(変形量)の大小や屈曲している範囲の広狭に拘わらない。
【0141】
ここで、給紙路81は、厚さ方向に山状に盛り上がった状態の枚葉紙201の屈曲部分Kを収容し得る、枚葉紙201の厚さ方向に拡がった空間Sを有している。仮にこのような空間Sが無ければ、搬送中の給紙路81内では枚葉紙201に屈曲部分Kが形成されず、枚葉紙201の他の箇所に塑性変形が生じる。例えば、斜めに傾いた姿勢で送られていた枚葉紙201が案内部材51によって案内される際に、枚葉紙201の送り方向の先端側の角部が、案内部材51を構成する内壁に当接した状態で反転ローラ77cによって送り出される。
【0142】
これにより、枚葉紙201には、送り方向の先端側の角部の付近に、この内壁に沿って折目が付いた状態で曲がるなどの変形が生じる。枚葉紙201は、このような状態では給紙路81内で詰まりやすくなり、詰まらずに印刷できたとしても、折目が付いた状態となる。
【0143】
なお、給紙路81が有する空間Sは、枚葉紙201の屈曲部分Kが案内部材51の高さの範囲内(案内部材51の壁面の高さ以下)であっても、本発明における「枚葉紙の厚さ方向に拡がった空間」に該当する。
【0144】
そして、枚葉紙201が送られて、先端201aが送り方向の下流側に設けられたグリップローラ77d(下流側ローラ)に到達する前に、制御部95の制御により、グリップローラ77dは退避位置に移動して、枚葉紙201に接触しない状態となる。
【0145】
グリップローラ77dが退避位置に移動した状態で、制御部95の制御により、反転ローラ77cが枚葉紙201をさらに送る。そして、枚葉紙201の先端201aが、グリップ位置に復帰した場合のグリップローラ77dに接する位置まで到達したとき、反転ローラ77cによる枚葉紙201の送りを停止する。
【0146】
そして、この状態から、制御部95の制御により、カム部材53が、第1の回転位置から第2の回転位置に向かって回転し始める。カム部材53が回転し始めて第1の回転位置から移動するとすぐに、反転ローラ77cは枚葉紙201から離れて退避位置に移動した状態となる。この結果、枚葉紙201の後端201b側の部分は、反転ローラ77cによる拘束が解かれて自在に動くことができるフリーの状態となる。
【0147】
これにより、枚葉紙201は、図11に示すように、中間部分において山状に盛り上がった状態の屈曲部分Kの復元力(屈曲部分Kが平坦な状態に復元しようとする力)によって、第2部分51aにより規制されて正規の姿勢に矯正された先端201a側の部分を基準として、フリーの状態となった後端201b側の部分が、先端201a側の部分の姿勢に倣い、両側縁が送り方向に平行な正規の姿勢に正される。
【0148】
このように、本実施形態のプリンタ100は、案内部材51の作用と反転ローラ77cが退避位置に移動しただけの動きによって、1枚の枚葉紙201の全体の姿勢を、両側縁が送り方向に平行となる正規の姿勢に矯正することができる。
【0149】
プリンタ100は、制御部95の制御により、カム部材53が第2の回転位置に向かってさらに回転が進む。これにより、左右一対の可動案内部材52の間隔が狭くなるように変位し、カム部材53が第2の回転位置に達したとき、可動案内部材52が、枚葉紙201の両側縁に接して、枚葉紙201の姿勢を、さらに確実に、正規の姿勢(両側縁が送り方向に沿った平行な姿勢)に矯正することができる。
【0150】
すなわち、プリンタ100は、上述したように、枚葉紙201の先端201aが、グリップローラ77dがグリップ位置に復帰した場合に接する位置まで到達したとき、制御部95の制御により、第1の回転位置(図6,7)にあるカム部材53を第2の回転位置(図9、10)まで回転する。
【0151】
カム部材53が第2の回転位置に向かって回転し始めることにより、図9,10に示すように、第2カム53bがリンク板54をカム部材53の半径方向の外側に押圧して、リンク板54が軸77c2回りに回転し、リンク板54に支持された軸77c1を、前方に回動させる。これにより、軸77c1に設けられた反転ローラ77cが反転従動ローラ77c3とで挟んでいた枚葉紙201から離れた退避位置に移動する。
【0152】
そして、カム部材53がさらに回転して第2の回転位置に到達することにより、第1カム53aのカム面が幅方向Wの内側に変位して、第1カム53aのカム面に接して、ばねによって幅方向Wの内側に付勢されている従動部材55は、幅方向Wの内側に変位する。これにより、従動部材55と一体の可動案内部材52も幅方向Wの内側に変位して、一対の可動案内部材52は間隔L1に狭められる。
【0153】
これにより、一対の可動案内部材52は、グリップローラ77d及び反転ローラ77cによって拘束されていない状態の枚葉紙201の後端201b側の側縁をそれぞれ幅方向Wの内側に押す。
【0154】
ここで、一対の可動案内部材52の間隔L2は、枚葉紙201の幅W1と略等しく、また、各可動案内部材52は、案内部材51の下流側の部分51aの、前後方向Lの延長線上に配置されている。
【0155】
したがって、仮に、上述した案内部材51の作用及び反転ローラ77cの退避動作によって正規の姿勢に矯正しきれていない状態の枚葉紙201であっても、可動案内部材52が枚葉紙201も後端201b側の部分を幅方向Wの内側に押すことにより、枚葉紙201の後端201b側の両側縁がそれぞれ可動案内部材52に接して両側縁の位置が矯正される。
【0156】
このように、本実施形態のプリンタ100は、案内部材51だけでは枚葉紙201を正規の姿勢に矯正することができなかった場合であっても、可動案内部材52によって、枚葉紙201を正規の姿勢に、確実に矯正することができる。
【0157】
枚葉紙201が正規の姿勢に矯正された後、制御部95は、グリップローラ77dを、退避位置から枚葉紙201に接するグリップ位置に戻す。これにより、枚葉紙201は、全体の姿勢が正規の姿勢に矯正された状態でグリップローラ77dによって拘束される。
【0158】
そして、制御部95の制御によって、グリップローラ77dが回転することで、枚葉紙201は、正規の姿勢を保って、給紙路81からプリント路82に送られる。
【0159】
なお、枚葉紙201がプリント路82に送られた後、制御部95の制御により、カム部材53が第2の回転位置から第1の回転位置に戻されて、可動案内部材52は、広い間隔L2に戻され、反転ローラ77cは枚葉紙201をグリップし得る位置に戻される。
【0160】
プリント路82を進んだ枚葉紙201は、プリント排出切替フラップ72の切り替えによりプリント上流路86に導かれる。
【0161】
枚葉紙201の先端がプリント上流路86の突き当たりまで進むと、グリップローラ77dが反転し(回転の向きが反対になり)、枚葉紙201は、プリント路82を送られながらプリント部30で、枚葉紙201の表(おもて)面にプリントされつつ、プリント下流路87に進む。
【0162】
プリント路82からプリント下流路87に進んで表面へのプリントが終了した枚葉紙201は、先端が給紙路81に進んで反転ローラ77cに接し、反転ローラ77cの回転により、再び給紙路81を搬送される。
【0163】
プリント下流路87から給紙路81に送られた枚葉紙201は、表裏面が裏返しに反転した状態となる。そして、裏返された枚葉紙201が給紙路81を搬送される際に、枚葉紙201は蛇行矯正機構50によって蛇行が再び矯正されて枚葉紙201は正規の姿勢に正される。
【0164】
このように、姿勢が正された状態の枚葉紙201は、プリント路82からプリント上流路86に導かれる。
【0165】
なお、プリンタ100は、表面のプリントを終えた枚葉紙201の表裏面を反転させる経路でもある給紙路81に加えて、表面がプリントされた枚葉紙201が通過するプリント下流路87にも、上述した蛇行矯正機構50の案内部材51を備えてもよい。この場合、プリント下流路87が搬送路に対応し、グリップローラ77dが駆動ローラに対応し、反転ローラ77cが下流側ローラに対応するため、左右一対の案内部材51は、プリント下流路87のうち、反転ローラ77cに近い部分に設けられる。なお、プリント上流路86や、排出路83にも、案内部材51を設けてもよい。
【0166】
蛇行が矯正された枚葉紙201は、プリント上流路86からプリント路82に戻されながら、プリント部30で、枚葉紙201の裏面にプリントされつつ、プリント下流路87に進む。
【0167】
プリント路82からプリント下流路87に進んで裏面へのプリントが終了した枚葉紙201は、グリップローラ77dの回転方向が反対向きとなってプリント路82を通り、プリント排出切替フラップ72が切り替えられて、排出路83に搬送される。排出路83に送られた枚葉紙201は、グリップローラ77dから送りローラ77eに受け渡される。
【0168】
排出路83では、枚葉紙201は、送りローラ77eの回転により、カッター部40を通って前方に進む。カッター部40は、枚葉紙201の送り方向の後端の不要部分を切断する。切断された枚葉紙201の不要部分はごみ箱16(図2参照)に落下し、ごみ箱16の内部に溜められる。
【0169】
後端の不要部分が切断された枚葉紙201は、送りローラ77eの回転により、前方に進み、第1排出ローラ77fに受け渡される。枚葉紙201は、第1排出ローラ77fの回転により搬送されるが、排出路切替部材71が分岐部において下側に切り替えられている状態においては、枚葉紙201は上排出路85に導かれ、上排出口13bの近くに配置された第2排出ローラ77gの回転により、枚葉紙201は上排出口13bからスタッカー12aに排出される。
【0170】
一方、排出路切替部材71が分岐部において上側に切り替えられている状態においては、枚葉紙201は前排出路84に導かれ、枚葉紙201は前排出口13aからプリンタ100の外部に排出される。
【0171】
(表裏面へのプリントの位置合わせの制御)
ここで、上述した枚葉紙201の表面と裏面とにプリントする際の、制御部95によって駆動されるグリップローラ77dによる枚葉紙201の送りの制御について、説明する。
【0172】
プリンタ100は、上述したように、枚葉紙201の表面にプリントするときも、裏面にプリントするときも、枚葉紙201をプリント路82からプリント下流路87への送り方向に送りながらプリント部30によりプリントを行う。
【0173】
ここで、枚葉紙201は、表面から裏面に反転したときに、枚葉紙201の長さ方向の端部も逆転する。つまり、枚葉紙201の長さ方向の一方の端部を、例えばA端とし、他方の端部を、例えばB端とした場合、枚葉紙201の表面へのプリントの際に、枚葉紙201はA端を先端として送られるが、枚葉紙201の表裏の反転の際に枚葉紙201の送り方向の先端がA端とB端とで逆転するため、枚葉紙201の裏面へのプリントの際に、枚葉紙201はB端を先端として送られる。
【0174】
このため、枚葉紙201の表面へのプリントと裏面へのプリントとで、いずれも、枚葉紙201の送り方向の先端を基準としてプリントを行い又はいずれも、枚葉紙201の送り方向の後端を基準としてプリントを行うと、枚葉紙201の表面へのプリントは、例えばA端を基準とした位置にプリントが行われ、枚葉紙201の裏面へのプリントは、例えばB端を基準とした位置にプリントが行われることになる。
【0175】
そして、枚葉紙201の長さ(A端とB端との間の長さ)に対して、プリントされるプリント内容(画像等)の長さが大幅に短い場合、プリント内容が、枚葉紙201の表面では、A端に偏り、枚葉紙201の裏面ではB端に偏る。つまり、枚葉紙201の表面と裏面とで、プリント内容の偏る端部の側が異なることになる。そして、プリント内容が存在しない余白領域を切断しようとしても、枚葉紙201の表面と裏面とで、余白領域が一致しないため、切断することができない。
【0176】
本実施形態のプリンタ100は、このような課題を解決するため、枚葉紙201の表面にプリントを行う場合と裏面にプリントを送る場合とに拘わらず、枚葉紙の送りの基準位置を、枚葉紙201自体の一定の位置として、枚葉紙201の送りを制御するようにしたものである。
【0177】
つまり、プリンタ100は、枚葉紙201の表面でも裏面でも、プリント内容がA端に偏るように又はプリント内容がB端に偏るように、枚葉紙201の送りの基準を枚葉紙201自体の一定の位置として制御部95が送りを制御するものである。
【0178】
具体的には、プリンタ100は、図2に示すように、第1センサ96と、第2センサ97とを備えている。第1センサ96と第2センサ97はいずれも、例えば、枚葉紙201の通過による光量変化によって枚葉紙の通過を検出する光センサである。
【0179】
第1センサ96は、プリント路82における、プリント部30よりも下流側(プリント上流路86に近い側)の位置に設けられている。第1センサ96は、枚葉紙201がプリント路82からプリント上流路86に送られるときの、送り方向の枚葉紙201の先端を検出する。
【0180】
第2センサ97は、プリント路82における上流側(給紙路81に近い側)であってグリップローラ77dよりも上流側の位置に設けられている。第2センサ97は、枚葉紙201がプリント路82からプリント下流路87に送られるときの、送り方向の枚葉紙201の先端を検出する。
【0181】
そして、制御部25は、枚葉紙201の表面にプリントを行うときは、第1センサ96による検出結果に基づいて、プリントの開始位置を設定し、枚葉紙201の裏面にプリントを行うときは、第2センサ97による検出結果に基づいて、プリントの開始位置を設定する。
【0182】
ここで、枚葉紙201の表面にプリントするとき、まず、グリップローラ77dにより、枚葉紙201を、プリント路82からプリント上流路86に送る。このとき、第1センサ96が、枚葉紙201の送り方向の先端(例えばA端)を検出する。
【0183】
制御部95は、第1センサ96が枚葉紙のA端を検出したときを送りの基準として、予め設定された第1の長さ(例えば長さM1とする。)だけグリップローラ77dで枚葉紙201をプリント上流路86に送る。
【0184】
予め設定された第1の長さは、例えばグリップローラ77dを回転させるモータをステップモータとしたとき、制御部95がステップモータを駆動する所定の第1のステップ数として設定される。第1の長さは、表面にプリントされるプリント内容の長さ(例えば、長さM0とする。)よりも長い寸法(M1>M0)として設定される。
【0185】
その後、制御部95は、グリップローラ77dの回転方向を反対向きに制御して、枚葉紙201を、プリント路82からプリント下流路87に送りながら、プリント部30を制御して枚葉紙201の表面にプリントを開始する。このとき、枚葉紙201の送り方向の先端はB端となっているが、枚葉紙201の表面へのプリントは、枚葉紙201のA端を基準として行われる。
【0186】
つまり、枚葉紙201の表面には、A端から所定の第1の長さの位置から、A端に向かって、プリント内容がプリントされ始めて、プリント内容の長さ分だけプリントされる。したがて、枚葉紙201は、A端から、第1の長さからプリント内容の長さを差し引いた長さ(=M1-M0)の位置までの範囲が余白となる。
【0187】
表面へのプリントが終了した枚葉紙201は、B端を送り方向の先端として、プリント下流路87から、反転ローラ77cによって給紙路81に送られて表裏面が反転する。B端を送り方向の先端として給紙路81を送られて裏返された枚葉紙201は、グリップローラ77dにより、プリント路82に導かれ、さらにプリント上流路86に送られる。
【0188】
そして、枚葉紙201の送り方向の後端であるA端が、第2センサ97を通り過ぎたとき、第2センサ97は、枚葉紙201の後端(A端)を検出する。制御部95は、第2センサ97が枚葉紙201のA端を検出したときを送りの基準として、予め設定された第2の長さ(例えば、長さM2とする。)だけグリップローラ77dで枚葉紙201をプリント上流路86に送る。
【0189】
予め設定された第2の長さは、例えばグリップローラ77dを回転させるモータをステップモータとしたとき、制御部95がステップモータを駆動する所定の第2のステップ数として設定される。
【0190】
なお、第2の長さは、表面にプリントするときの第1の長さから、プリント内容の長さを差し引いた長さに設定されている(M2=M1-M0)。
【0191】
その後、制御部95は、グリップローラ77dの回転方向を反対向きに制御して、枚葉紙201を、プリント路82からプリント下流路87に送りながら、プリント部30を制御して枚葉紙201の表面にプリントを開始する。このとき、枚葉紙201の送り方向の先端はA端となっているが、枚葉紙201の裏面へのプリントは、枚葉紙201のA端を基準として行われる。
【0192】
つまり、枚葉紙201の裏面には、A端から所定の第2の長さ(M2)の位置までが余白となり、その第2の位置からB端に向かってプリント内容がプリントされ始めて、A端から第2の長さの位置から、プリント内容の長さ分だけプリントされる。
【0193】
これにより、プリンタ100は、枚葉紙201の表面も裏面も、枚葉紙201自体の一方の端部(A端)から第2の長さ(M2)の範囲が余白となり、その余白に続いてプリント内容の長さ(M0)の位置までの範囲にプリント内容をプリントすることができる。
【0194】
したがって、枚葉紙201の表面も裏面も、A端からの長さ(M2+M0)の位置から、B端までの範囲を、共通する余白領域とすることができ、この余白領域をカッター部40で切断しても、表裏面のプリント内容に影響を与えることが無い。
【0195】
このように、プリンタ100は、枚葉紙201を送る搬送手段であるグリップローラ77dと、グリップローラ77dにより枚葉紙201を一方向に送りながら枚葉紙201にプリントを行うプリント部30と、プリント部30で枚葉紙201の表面にプリントを行うときと枚葉紙201の裏面にプリントを行うときとにおいて、枚葉紙201の送りの基準位置を、枚葉紙201の表裏面の別に拘わらず枚葉紙201自体の特定の位置として、枚葉紙201の送りを制御する制御部95と、を備えた。
【0196】
そして、プリンタ100は、枚葉紙201の、送り方向における一方の端部を、送りの基準位置としている。
【0197】
さらに、プリンタ100は、搬送手段であるグリップローラ77dの、枚葉紙201の送り方向の上流側と下流側とにそれぞれ、枚葉紙201の一方の端部を検出する第1センサ96と第2センサ97とを備え、制御部95は、枚葉紙201の表面にプリントを行うときと裏面にプリントを行うときとで、上流側の第1センサ96による検出結果と下流側の第2センサ97による検出結果とを切り替えて使用することで、送りの基準位置を特定の位置としている。
【0198】
<効果>
以上のように、本実施形態のプリンタ100は、蛇行矯正機構50により、枚葉紙201の姿勢や向きを適正にして、枚葉紙201の蛇行を矯正することができる。
【0199】
また、本実施形態のプリンタ100は、左右一対のカム部材53が軸52aに固定されているため、軸52aの回転によって、左右のカム部材53を連動して回転させることができる。これにより左右一対の可動案内部材52もそれぞれ連動して幅方向Wに変位することができる。
【0200】
したがって、本実施形態のプリンタ100は、軸52aを回転させるモータを1つだけ備えた構成とすることができ、各可動案内部材52にそれぞれモータを設けて各可動案内部材52を動かすものに比べて、部品点数を少なくした簡単な構造で、枚葉紙201の蛇行を矯正することができる。
【0201】
また、本実施形態のプリンタ100は、反転ローラ77cを枚葉紙201に接しない位置に退避させる退避部材としての第2カム53bと、可動案内部材52を移動可能の範囲で移動させる第1カム53aとが、カム部材53として一体的に形成されているため、反転ローラ77cの移動(退避位置へに退避)と、可動案内部材52の移動(枚葉紙201の両側縁にそれぞれ接する位置への移動)とを、連動させることができる。
【0202】
本実施形態のプリンタ100は、反転ローラ77cの枚葉紙201からの退避と、可動案内部材52による枚葉紙201の両側縁を幅方向Wの内側への押圧と、の動作を1回だけ行うものとして説明したが、カム部材53の、第1の回転位置と第2の回転位置との間での正回転と逆回転とを複数回繰り返して、枚葉紙201の両側縁を幅方向Wの内側へ複数回押す動作としてもよい。
【0203】
また、カム部材53を第1の回転位置から第2の回転位置に回転させる動作を、短い時間内に行うことで、可動案内部材52が、枚葉紙201の両側縁を幅方向Wの内側へ叩くように衝撃を与えることができ、枚葉紙201の蛇行を矯正する効果を高めることができる。
【0204】
また、本実施形態のプリンタ100は、ペーパーガイド90を開いた状態(図13,16)とすることなく閉じた状態(図12)のままで、プリント中に反転ローラ77cを退避位置に移動させる(図15)ことができる。
【0205】
さらに、プリンタ100は、反転部で枚葉紙201の詰まり(ジャム)が発生したときに、ペーパーガイド90を開いた状態(図13,15)にすることで、反転ローラ77cもペーパーガイド90と一体に、反転部から離れた状態とすることができる。
【0206】
したがって、プリンタ100は、ペーパーガイド90を開いた状態としてときに、反転ローラ77cが反転路に残った状態となる構成のプリンタに比べて、反転部へのアクセス性を向上させることができ、反転部に詰まった枚葉紙201の除去を容易にすることができる。
【0207】
また、カバー板91に形成された、反転ローラ77cを通す開口91aは、軸方向に沿って2個に分布している。この構成は、2個の開口91aの間に、開口ではないカバー板91の板面が残された状態となっている。一方、軸方向に長い単一の開口で形成されている構成では、開口の縁が、軸方向に長く延びていて、カバー板91の板面が残されていない状態となる。
【0208】
このように、反転ローラ77cを通す開口91aが、軸方向に長い単一の開口で形成されている構成の場合は、単一の開口91a内には、開口91aの長い幅の範囲に亘って、枚葉紙201を支える部分が存在しない。例えば、枚葉紙201は、開口91a側に変形し易く癖付けがされていると、枚葉紙201の先端201aが、開口91a内に入り込むように凸状に変形し易くなる。
【0209】
したがって、プリンタ100は、カバー板91の板面が残された構成の場合は、軸方向に長い単一の開口で形成された構成に比べて、2つの狭い幅の開口91a間の残された板面の部分が枚葉紙201を支えるため、枚葉紙201は、開口91a側に変形しやすく癖付けがされていても、狭い幅の開口91aに入り込む程の変形は生じ難い。したがって、カバー板91の板面が残された構成の場合は、反転ローラ77cが退避位置に移動した状態でプリント中の枚葉紙201の先端201aが反転部を通過する際に、開口の縁に、枚葉紙201の先端201aが引っ掛かるのを低減することができる。
【0210】
本実施形態のプリンタ100は、案内部材(案内部材51)と可動案内部材(可動案内部材52)とを用いて枚葉紙201の斜行を矯正する例を示したが、本発明に係るプリンタは、可動案内部材を備えたものに限定されない。すなわち、プリンタ100は、その用途によって、案内部材(案内部材51)による枚葉紙201の斜行の矯正だけで十分な場合は、可動案内部材(可動案内部材51)を設けなくてもよい。
【0211】
本実施形態のプリンタ100は、昇華型のサーマルプリンタであるが、本発明に係るプリンタは昇華型のサーマルプリンタに限定されるものではなく、昇華型のサーマルプリンタ以外の他の印刷形式のプリンタであってもよい。
【0212】
つまり、本発明に係るプリンタは、昇華型以外のサーマルプリンタであってもよいし、サーマルプリンタ以外の、例えばインクジェット式のプリンタであってもよいし、その他の印刷形式のプリンタであってもよい。
【0213】
本実施形態のプリンタ100は、枚葉紙201の表裏の両面にプリントを行うものとして説明したが、本発明に係るプリンタは、枚葉紙に一方の面にのみプリントを行うプリンタであってもよい。
【0214】
本実施形態のプリンタ100は、予め所定の長さに切断された枚葉紙201の他に、長尺のロール紙202にもプリントを行うことができるプリンタであるが、本発明に係るプリンタは、枚葉紙にのみプリントを行うプリンタ、すなわち、ロール紙を収容できないプリンタであってもよい。
【符号の説明】
【0215】
51 案内部材
51b 第1部分
51a 第2部分
52 可動案内部材
53a 第1カム53a
53b 第2カム
77c 反転ローラ
77d グリップローラ
81 給紙路
100 昇華型サーマルプリンタ
201 枚葉紙(用紙)
W0 用紙の幅
L1,L2 間隔
図1
図2
図3
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図5
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図16