(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139520
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】内視鏡用高周波処置具
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050492
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小口 拓真
(72)【発明者】
【氏名】清水 一朗
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK06
4C160KK17
4C160MM32
4C160NN09
(57)【要約】
【課題】ループ状の導電性ワイヤの遠位端部と生体組織との間の隙間を低減して、ループ状の導電性ワイヤに囲まれた生体組織全体が容易に焼灼切断できる内視鏡用高周波処置具を提供する。
【解決手段】シース10と、シース10内に配置されている線状物20と、第1ワイヤ部31の近位端部と第2ワイヤ部32の近位端部が線状物20の遠位端部に固定されている導電性ワイヤ30とを有している内視鏡用高周波処置具1であって、長手軸方向xにおいて、内側突出部30Pの長さは外側突出部30Dの長さDの1/2以上である内視鏡用高周波処置具1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端と遠位端とを有し長手軸方向に延在しているシースと、
前記シース内に配置されている線状物と、
第1ワイヤ部と第2ワイヤ部とを有しており前記シース内に収容可能に前記長手軸方向に延在している導電性ワイヤであって、前記第1ワイヤ部の近位端部と前記第2ワイヤ部の近位端部が前記線状物の遠位端部に固定されている導電性ワイヤと、を有している内視鏡用高周波処置具であって、
前記導電性ワイヤは、前記第1ワイヤ部と前記第2ワイヤ部とからなるループ部を形成しており、
前記内視鏡用高周波処置具は、前記ループ部の遠位端から遠位側に延在している外側突出部と、前記ループ部の遠位端から近位側に延在している内側突出部とを有しており、
前記長手軸方向において、前記内側突出部の長さは前記外側突出部の長さの1/2以上である内視鏡用高周波処置具。
【請求項2】
前記導電性ワイヤが前記シースから露出している状態において、前記ループ部は第1屈曲部を有しており、前記長手軸方向において、前記第1屈曲部の近位端と前記ループ部の遠位端との間の長さをLとしたとき、前記内側突出部は前記ループ部の遠位端から長さ2Lの地点までの区間の少なくとも一部に位置している請求項1に記載の内視鏡用高周波処置具。
【請求項3】
前記第1屈曲部において、前記第1ワイヤ部と前記第2ワイヤ部とは互いに直接固定されていない請求項2に記載の内視鏡用高周波処置具。
【請求項4】
前記導電性ワイヤが前記外側突出部と前記内側突出部を形成している請求項1又は2に記載の内視鏡用高周波処置具。
【請求項5】
前記導電性ワイヤの遠位端部に連結されている導電性チップをさらに有しており、前記導電性チップが前記外側突出部と前記内側突出部を形成している請求項1又は2に記載の内視鏡用高周波処置具。
【請求項6】
前記導電性チップは開口部を有しており、前記開口部内に前記導電性ワイヤの一部が位置することにより前記導電性チップと前記導電性ワイヤが連結されている請求項5に記載の内視鏡用高周波処置具。
【請求項7】
前記導電性ワイヤが前記シースから露出している状態において、
前記内視鏡用高周波処置具は、前記長手軸方向に垂直な方向であって前記ループ部の幅方向であるループ幅方向と、前記長手軸方向及び前記ループ幅方向に垂直な方向であって前記導電性ワイヤの幅方向であるワイヤ幅方向とを有しており、
前記内視鏡用高周波処置具を前記ループ幅方向から見たとき、前記内側突出部の少なくとも一部が、前記導電性ワイヤの前記ワイヤ幅方向の外側に配置されている請求項1又は2に記載の内視鏡用高周波処置具。
【請求項8】
前記内視鏡用高周波処置具を前記ループ幅方向から見たとき、前記内側突出部の少なくとも一部が、前記導電性ワイヤの前記ワイヤ幅方向の第1端側の外側又は第2端側の外側に配置されている請求項7に記載の内視鏡用高周波処置具。
【請求項9】
前記内視鏡用高周波処置具を前記ループ幅方向から見たとき、前記内側突出部の少なくとも一部が、前記導電性ワイヤの前記ワイヤ幅方向の第1端側の外側及び第2端側の外側に配置されている請求項7に記載の内視鏡用高周波処置具。
【請求項10】
前記内側突出部は、ループ状に形成された部分を有している請求項1又は2に記載の内視鏡用高周波処置具。
【請求項11】
前記内側突出部は、直線状に形成された部分を有している請求項1又は2に記載の内視鏡用高周波処置具。
【請求項12】
前記導電性ワイヤが前記シースから露出している状態において、前記ループ部は第1屈曲部を有しており、前記第1ワイヤ部は前記第1屈曲部よりも近位側に配された第2屈曲部を有しており、前記第2ワイヤ部は前記第1屈曲部よりも近位側に配された第3屈曲部を有しており、前記第2曲部と前記第3屈曲部は互いに面して配置されている請求項1又は2に記載の内視鏡用高周波処置具。
【請求項13】
前記導電性ワイヤは、遠位端部において前記第1ワイヤ部と前記第2ワイヤ部が一体形成されている請求項1又は2に記載の内視鏡用高周波処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡を経由して生体内に導入される高周波処置具に関するものである。より詳しくは、内視鏡用高周波処置具であって、ワイヤ状の切断部を備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体内に挿入し、先端に対物レンズや照明レンズを備え、体腔内を観察しつつ手元側から先端側に通じる処置具挿通チャンネルを経由して体腔内で処置を行う処置具を導入する内視鏡がある。このような内視鏡を用いた処置として内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection:ESD)や、内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic Mucosal Resection:EMR)が知られている。
【0003】
内視鏡を通じて用いる処置具には、ナイフやスネアがある。ナイフは、体腔表面を切開するためのものである。スネアは、ループ状のワイヤを備え、体腔表面の隆起部をループで囲い、ループ径を小さくして隆起部の根元を絞ることで、隆起部を切除するためのものである。スネアのループ状のワイヤは、ループ径を小さくして隆起部の根元を絞扼するため、ワイヤはシースから出し入れ可能であり、弾性変形可能に構成されている必要がある。いずれの処置具も、手元側から電力を供給し、電流を発生させて体腔表面を切除、焼灼する高周波処置具として用いられる。
【0004】
スネアを備えた内視鏡用高周波処置具として、特許文献1には、ループ先端側を直径が小さくなった「8」の字状に形成した内視鏡用採取具が、特許文献2には、弾性ワイヤの先端曲げ戻し部をC字状に形成した内視鏡用スネアが、特許文献3には、自然状態において所定の大きさのループを形成する弾性ワイヤを後端位置において結束することなく交差させた内視鏡用ワイヤループ型処置具が、特許文献4には、スネアループが先端部分においてコイル状に1.5~2巻きの範囲で巻かれている内視鏡用スネアが開示されている。また、特許文献5には、スネアの先端部にナイフ部を設けた内視鏡用高周波処置具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1-97446号公報
【特許文献2】特開平11-76251号公報
【特許文献3】特開2002-253559号公報
【特許文献4】特開2002-263112号公報
【特許文献5】国際公開第2018/189949号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~4では、シース内に出し入れ可能に構成されているワイヤを繰り返し出し入れしている間に、ワイヤの復元性が不十分になりループサイズの縮小が生じてしまう欠点があったところ、ループの先端部や根本部を工夫することによりへたりにくいループを形成できる処置具とすることを目指していた。また、特許文献5では、ナイフ部を安定的に固定することができる内視鏡用高周波処置具を提供とすることを目的としていた。
【0007】
しかし、これら従来の処置具では、ワイヤに高周波電流を流して生体組織を焼灼切断するために、ループ状のワイヤの径を小さくして生体組織を囲んだ際、ループ状のワイヤの遠位端部と生体組織との間に隙間が生じ、ワイヤの遠位端部に位置した部分の生体組織が十分に焼灼切断できないという不具合があった。
【0008】
上記の事情に鑑み本発明は、導電性ワイヤのループ径を小さくした際に、導電性ワイヤの遠位端部と生体組織との間に形成される隙間の影響を低減して、ループ状の導電性ワイヤに囲まれた生体組織全体が容易に焼灼切断できる内視鏡用高周波処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し得た本発明の内視鏡用高周波処置具の一実施形態は、以下の通りである。
[1]近位端と遠位端とを有し長手軸方向に延在しているシースと、前記シース内に配置されている線状物と、第1ワイヤ部と第2ワイヤ部とを有しており前記シース内に収容可能に前記長手軸方向に延在している導電性ワイヤであって、前記第1ワイヤ部の近位端部と前記第2ワイヤ部の近位端部が前記線状物の遠位端部に固定されている導電性ワイヤと、を有している内視鏡用高周波処置具であって、前記導電性ワイヤは、前記第1ワイヤ部と前記第2ワイヤ部とからなるループ部を形成しており、前記内視鏡用高周波処置具は、前記ループ部の遠位端から遠位側に延在している外側突出部と、前記ループ部の遠位端から近位側に延在している内側突出部とを有しており、前記長手軸方向において、前記内側突出部の長さは前記外側突出部の長さの1/2以上である内視鏡用高周波処置具。
【0010】
長手軸方向に上記所定長さの内側突出部が設けられていることにより、導電性ワイヤの第1ワイヤ部と第2ワイヤ部とからなるループ部に囲まれるように焼灼する生体組織を配置した後ループ部の内側に形成される領域を縮小して通電した際、ループ部の遠位端部と生体組織の間に隙間が形成されても、当該部分の生体組織に内側突出部が接触できる。このため、内側突出部に通電することにより、ループ部の遠位端部に位置する部分の生体組織を内側突出部により焼灼することができ、ループ部に囲まれた生体組織全体を容易に焼灼切断することができる。また、内視鏡用高周波処置具がループ部の遠位端から遠位側に延在している外側突出部を有しているため、外側突出部に通電することにより、生体組織を切削するナイフとして外側突出部を使用することができる。
【0011】
本発明の実施形態に係る内視鏡用高周波処置具は、以下の[2]~[13]であることが好ましい。
[2]前記導電性ワイヤが前記シースから露出している状態において、前記ループ部は第1屈曲部を有しており、前記長手軸方向において、前記第1屈曲部の近位端と前記ループ部の遠位端との間の長さをLとしたとき、前記内側突出部は前記ループ部の遠位端から長さ2Lの地点までの区間の少なくとも一部に位置している[1]に記載の内視鏡用高周波処置具。
[3]前記第1屈曲部において、前記第1ワイヤ部と前記第2ワイヤ部とは互いに直接固定されていない[2]に記載の内視鏡用高周波処置具。
[4]前記導電性ワイヤが前記外側突出部と前記内側突出部を形成している[1]~[3]のいずれかに記載の内視鏡用高周波処置具。
[5]前記導電性ワイヤの遠位端部に連結されている導電性チップをさらに有しており、前記導電性チップが前記外側突出部と前記内側突出部を形成している[1]~[3]のいずれかに記載の内視鏡用高周波処置具。
[6]前記導電性チップは開口部を有しており、前記開口部内に前記導電性ワイヤの一部が位置することにより前記導電性チップと前記導電性ワイヤが連結されている[5]に記載の内視鏡用高周波処置具。
[7]前記導電性ワイヤが前記シースから露出している状態において、前記内視鏡用高周波処置具は、前記長手軸方向に垂直な方向であって前記ループ部の幅方向であるループ幅方向と、前記長手軸方向及び前記ループ幅方向に垂直な方向であって前記導電性ワイヤの幅方向であるワイヤ幅方向とを有しており、前記内視鏡用高周波処置具を前記ループ幅方向から見たとき、前記内側突出部の少なくとも一部が、前記導電性ワイヤの前記ワイヤ幅方向の外側に配置されている[1]~[6]のいずれかに記載の内視鏡用高周波処置具。
[8]前記内視鏡用高周波処置具を前記ループ幅方向から見たとき、前記内側突出部の少なくとも一部が、前記導電性ワイヤの前記ワイヤ幅方向の第1端側の外側又は第2端側の外側に配置されている[7]に記載の内視鏡用高周波処置具。
[9]前記内視鏡用高周波処置具を前記ループ幅方向から見たとき、前記内側突出部の少なくとも一部が、前記導電性ワイヤの前記ワイヤ幅方向の第1端側の外側及び第2端側の外側に配置されている[7]に記載の内視鏡用高周波処置具。
[10]前記内側突出部は、ループ状に形成された部分を有している[1]~[9]のいずれかに記載の内視鏡用高周波処置具。
[11]前記内側突出部は、直線状に形成された部分を有している[1]~[10]のいずれかに記載の内視鏡用高周波処置具。
[12]記導電性ワイヤが前記シースから露出している状態において、前記ループ部は第1屈曲部を有しており、前記第1ワイヤ部は前記第1屈曲部よりも近位側に配された第2屈曲部を有しており、前記第2ワイヤ部は前記第1屈曲部よりも近位側に配された第3屈曲部を有しており、前記第2屈曲部と前記第3屈曲部は互いに面して配置されている[1]~[11]のいずれかに記載の内視鏡用高周波処置具。
[13]前記導電性ワイヤは、遠位端部において前記第1ワイヤ部と前記第2ワイヤ部が一体形成されている[1]~[12]のいずれかに記載の内視鏡用高周波処置具。
【発明の効果】
【0012】
上記内視鏡用高周波処置具によれば、ループ部に囲まれるように焼灼する生体組織を配置した後ループ部の内側に形成される領域を縮小して通電した際、ループ部の遠位端部と生体組織の間の隙間が形成されても、当該部分の生体組織に内側突出部が接触できる。このため、内側突出部に通電することにより、ループ部の遠位端部に位置する部分の生体組織を内側突出部により焼灼することができる。その結果、ループ部の遠位端部に位置する部分の生体組織の焼灼が不十分になることなく、ループ部に囲まれた生体組織全体を容易に焼灼切断することが可能となり、内視鏡用高周波処置具を用いた処置の安全性及び効率が向上できる。また、内視鏡用高周波処置具がループ部の遠位端から遠位側に延在している外側突出部を有しているため、外側突出部に通電することにより、生体組織を切削するナイフとして外側突出部を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る内視鏡用高周波処置具の平面図を表す。
【
図2】
図1に示した内視鏡用高周波処置具の遠位部の平面図を表す。
【
図4】
図3に示した内視鏡用高周波処置具の遠位端部をループ幅方向から見たときの平面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態に基づき本発明を説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる
場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0015】
図1~
図5を参照しつつ本発明の実施形態に係る内視鏡用高周波処置具について説明する。ただし、本発明は図面に示された実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係る内視鏡用高周波処置具の平面図を表す。
図2は
図1に示した内視鏡用高周波処置具の遠位部の平面図を表し、
図3は
図2に示した平面図の変形例を表す。
図4は
図3に示した内視鏡用高周波処置具の遠位部の遠位端部をループ幅方向から見たときの平面図を表し、
図5は
図4に示した平面図の変形例を表す。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る内視鏡用高周波処置具1は、近位端と遠位端とを有し長手軸方向xに延在しているシース10を有している。近位端とは長手軸方向xにおける近位側の端であり、近位側とは内視鏡用高周波処置具1の延在方向すなわち長手軸方向xにおいて使用者の手元側の方向を指す。遠位端とは長手軸方向xにおける遠位側の端であり、遠位側とは近位側の反対方向すなわち処置対象側の方向を指す。本明細書においては、シース10以外の部材や内視鏡用高周波処置具1もシース10と同じ長手軸方向xを有するとして説明する。ただし、これはシース10と他の部材の長手軸が必ずしも平行であることを意味するのではなく、
図1~
図5に示すように、図面における方向の定義である。
【0017】
図1に示すように、内視鏡用高周波処置具1は、さらにシース10内に配置されている線状物20と、第1ワイヤ部31と第2ワイヤ部32とを有しておりシース10内に収容可能に長手軸方向xに延在している導電性ワイヤ30であって、第1ワイヤ部31の近位端部と第2ワイヤ部32の近位端部が線状物20の遠位端部に固定されている導電性ワイヤ30とを有しており、導電性ワイヤ30は第1ワイヤ部31と第2ワイヤ部32とからなるループ部30Lを形成しており、内視鏡用高周波処置具1は、ループ部30Lの遠位端30Ldから遠位側に延在している外側突出部30Pと、ループ部30Lの遠位端30Ldから近位側に延在している内側突出部30Dとを有している。
【0018】
第1ワイヤ部31の近位端部と第2ワイヤ部32の近位端部は線状物20と直接固定されていてもよいし、導電性接続具21を介して間接的に接続されていてもよい。第1ワイヤ部31及び第2ワイヤ部32の近位端部とは、長手軸方向xにおいて、例えば近位端を含み近位端から30mm以内の部分であることが好ましく、より好ましくは20mm以内の部分である。また、第1ワイヤ部31及び第2ワイヤ部32の遠位端部とは、長手軸方向xにおいて、例えば遠位端を含み遠位端から30mm以内の部分であることが好ましく、より好ましくは20mm以内の部分である。
【0019】
ループ部30Lとは第1ワイヤ部31と第2ワイヤ部32によりループ状に形成されている部分であり、ループ部30Lは閉じた空間を形成している。この空間に処置対象の生体組織を配置して導電性ワイヤ30に高周波電流を流すことにより、生体組織を焼灼することができる。ループ部30Lの遠位端30Ldとは該閉じた空間を画定する部分の遠位端であるともいえ、ループ部30Lの近位端30Lpとは該閉じた空間を画定する部分の近位端であるともいえる。
【0020】
図1~
図3に示すように、長手軸方向xにおいて、内側突出部30Pの長さは外側突出部30Dの長さDの1/2以上である。内視鏡用高周波処置具1がこのような内側突出部30Pを有していれば、導電性ワイヤ30の第1ワイヤ部31と第2ワイヤ部32に囲まれるように、即ちループ部30Lに囲まれるように焼灼する生体組織を配置した後、導電性ワイヤ30をシース10内に引き込むことによりループ部30Lの内側に形成される領域を縮小させて導電性ワイヤ30を生体組織に接触させる際、生体組織との間に隙間が形成されやすいループ部30Lの遠位端部において内側突出部30Pが生体組織と接触できる。このため、導電性ワイヤ30と内側突出部30Pに高周波電流を流すことにより、ループ部30Lの遠位端部に位置する部分の生体組織を内側突出部30Pにより焼灼することができ、ループ部30Lに囲まれた生体組織全体を容易に焼灼切断することができる。
【0021】
シース10は、内部に線状物20や導電性ワイヤ30を収容可能な長尺の中空部材である。シース10の内表面は、シース10の内部に収容される導電性接続具21、導電性ワイヤ30、外側突出部30Dの少なくとも1つ、又は全部と接触し、導電性接続具21、導電性ワイヤ30、外側突出部30Dを固定できる程度の表面特性と強度を有する。さらに、シース10は、内視鏡の処置具挿通チャンネル内を挿通可能な外表面の滑り性と、体腔の屈曲に追随できる可撓性と、処置対象部位まで確実に到達できる剛性とをバランス良く兼ね備えていることが好ましい。
【0022】
シース10としては、例えば、金属や合成樹脂から構成されたコイル体、短筒状の関節駒を長軸方向に複数連結して回動可能にした筒体、合成樹脂から構成された筒体、又はこれらの組み合わせが用いられる。シース10を構成する合成樹脂としては、例えば、ナイロン等のポリアミド樹脂;ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の芳香族ポリエーテルケトン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素樹脂等を用いることができる。
【0023】
シース10の長手軸方向xの長さは、併用する内視鏡の長さに従って適宜設定することができるが、一般的には1650mm~2300mmであることが多い。シース10の外径は1.8mm~3.5mm、シース10の内径は1.2mm~3.0mmであることが好ましい。シース10の可撓性や剛性は、シース10の材料だけではなく厚みによっても制御することができる。シース10の厚みは用いる材料によって適宜選択できるが、シース10がフッ素樹脂から構成されている場合は0.2mm以上であることが好ましい。シース10の外径及び内径は、長手軸方向xにおいて一定であってもよく、部分的にテーパー部を設けることで複数の箇所で径が変化していてもよい。
【0024】
線状物20は、シース10内に配置されている長尺物である。線状物20は、内視鏡用高周波処置具1の近位側に設けられた操作部と導電性ワイヤ30とを接続し、近位側からの操作により導電性ワイヤ30をシース10内から露出させたりシース10内に収容したり、また近位側からの回転操作を導電性ワイヤ30に伝えるために用いられる。導電性ワイヤ30がシース10から露出するのに伴い、線状物20もシース10から露出してもよい。長手軸方向xにおいて、線状物20の長さは内視鏡の処置具挿通チャンネルより長いことが必要である。
【0025】
線状物20は、弾性変形可能な材料から構成されることが好ましい。線状物20の弾性は、内視鏡の処置具挿通チャンネルの変形に追随するシース10に沿って変形できる程度の弾性であれば足りる。線状物20を構成する材料としては、弾性変形可能な材料であれば特に限定されないが、例えば、Ni-Ti系合金等の超弾性合金や、SUS303、SUS304等のステンレス鋼等の金属、ナイロン等ポリアミド樹脂等の合成樹脂、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0026】
線状物20は、1つの部材で形成されていてもよく、複数の部材が長手軸方向xに接合されて形成されていてもよい。複数の部材が長手軸方向xに接合されて線状物20を形成する場合は、複数の部材を金属管でかしめる結合、溶接、溶着、接着等の通常の接合方法で接合すればよい。
【0027】
線状物20は、単線であっても、単線を撚り合わせた撚り線であってもよい。単線であれば製造が容易である。撚り線であれば、線状物20の柔軟性を向上でき、操作部からの回転等の操作を導電性ワイヤ30側に確実に伝えることができる。
【0028】
導電性ワイヤ30は、第1ワイヤ部31と第2ワイヤ部32とを有しており、シース10内に収容可能に長手軸方向xに延在している。第1ワイヤ部31の近位端部と第2ワイヤ部32の近位端部は線状物20の遠位端部に固定されている。
【0029】
導電性ワイヤ30と線状物20とは、通常の接合方法で接続することができ、直接接続してもよいし、別の部材を介して接続してもよい。接合方法としては、例えば、金属管でかしめる結合、溶接、溶着、接着等の方法がある。弾性変形可能な導電性ワイヤ30の両端、すなわち第1ワイヤ部31と第2ワイヤ部32の近位端を線状物に接続する場合は、金属管を介して接続することが好ましい。
【0030】
図1~
図3に示すように、導電性接続具21を導電性ワイヤ30と線状物20との接続部とすることもできる。導電性接続部21は、接続に用いる接続部材であってもよく、導電性ワイヤ30の近位端側の接続部付近に設けられる導電性材料であってもよい。導電性接続具21は、SUS303、SUS304等のステンレス鋼等の金属材料から構成されることが好ましい。導電性接続具21の形状は、円筒状、楕円筒状、角柱状、錐状やこれらを組み合わせた形状としたり、一部が屈曲したり拡幅したりしている形状等にすることができる。長手軸方向xにおける導電性接続具21の長さは2.0mm~10.0mmであることが好ましい。
【0031】
導電性ワイヤ30は、シース10から露出したりシース10内に収容されたりすることが可能なように設けられており、少なくともその一部がシース10の遠位側から露出した状態でスネアとして用いられる。導電性ワイヤ30は第1ワイヤ部31と第2ワイヤ部32を有しており、第1ワイヤ部31と第2ワイヤ部32によりループ部30Lが形成されている。電性ワイヤ30がシース10から露出した状態において、ループ部30Lにより形成される空間の面積は大きく保たれる。ループ部30Lの内側に結紮する生体組織を配置した後、導電性ワイヤ30をシース10内に引き込んでループ部30Lの径を縮小する、即ちループ部30Lにより形成される空間の面積を小さくすることにより、ループ部30Lによって生体組織を絞扼する。この状態で高周波電流をループ部30Lと内側突出部30Pに流すことにより、生体組織を焼灼切断することができる。
【0032】
ループ部30Lを形成している状態において、第1ワイヤ部31と第2ワイヤ部32は長手軸方向xに対して線対称に形成されていてもよく、非対称に形成されていてもよい。
【0033】
導電性ワイヤ30は、導電性を有する材料から構成され、弾性変形可能であることが好ましい。導電性ワイヤ30の弾性は、シース10の遠位側から露出したときのループ部30Lの形状が、一旦シース10内に収容された後再度露出する操作を繰り返し行った場合にも復元される程度であることが好ましい。また、適宜屈曲部を設けるため、導電性ワイヤ30は曲げ加工が容易である材料から構成されていることが好ましい。導電性ワイヤ30を構成する材料としては、Ni-Ti合金等の超弾性合金や、SUS303、SUS304等のステンレス鋼等の金属が挙げられる。
【0034】
導電性ワイヤ30の長さや径は、スネアの用途に応じて適宜選択できる。導電性ワイヤ30の長さは、60mm~200mmであることが好ましい。そのうち、線状物20との接続部の長さは、2mm~10mmであることが好ましい。導電性ワイヤ30の径は0.2mm~1.0mmであることが好ましい。
【0035】
ループ部30Lの形状は、任意の形状であってよく、例えば、円形、楕円形、紡錘形、多角形、又はこれらを組み合わせた形状であってもよい。また、後述するように、ループ部30Lには1つ又は複数の屈曲部が設けられていてもよい。
【0036】
導電性ワイヤ30は、遠位端部において第1ワイヤ部31と第2ワイヤ部32が一体形成されていることが好ましい。これにより、導電性ワイヤ30の構成を簡素化することができる。或いは、導電性ワイヤ30は、第1ワイヤ部31と第2ワイヤ部32が別部材であってもよい。これにより、第1ワイヤ部31と第2ワイヤ部32を異なる材料から構成してスネアの形状を複雑にするなど、スネアの設計の自由度を増すことができる。
【0037】
ループ部30Lの遠位端30Ldから遠位側に延在している外側突出部30Dは、高周波ナイフとして用いることができる。
図2に示すように、導電性ワイヤ30が外側突出部30Dと内側突出部30Pを形成していてもよい。導電性ワイヤ30はループ部30Lと外側突出部30Dと内側突出部30Pを連続的に形成しており、ループ部30Lと外側突出部30Dと内側突出部30Pが一体の構成であることが好ましい。このような構成であれば、導電性ワイヤ30を変形させることによりループ部30Lと外側突出部30Dと内側突出部30Pを有する内視鏡用高周波処置具1とすることができるため、外側突出部30Dや内側突出部30Pを別部材として設ける構成に比べて内視鏡用高周波処置具1の構成をシンプルにすることができる。また、ループ部30Lと外側突出部30Dと内側突出部30Pが一体の構成であることにより、外側突出部30Dや内側突出部30Pがループ部30Lから脱落することを防止できる。
【0038】
導電性ワイヤ30により外側突出部30Dと内側突出部30Pを形成する方法は特に限定されないが、例えば
図2に示すように導電性ワイヤ30を捻ったり、折り曲げたりすることにより外側突出部30Dと内側突出部30Pを一体に形成する方法が挙げられる。
【0039】
或いは、
図3に示すように、内視鏡用高周波処置具1が導電性ワイヤ30の遠位端部に連結されている導電性チップ40をさらに有しており、導電性チップ40が外側突出部30Dと内側突出部30Pを形成していてもよい。導電性チップ40は、ループ部30Lの遠位端部に連結されていることが好ましい。導電性チップ40を構成する材料は、導電性を有する材料であれば特に限定されないが、SUS303、SUS304等のステンレス鋼等の金属材料から構成されることが好ましい。導電性チップ40の形状はナイフの用途に応じて適宜選択でき、例えば、球状、楕円球状、紡錘形状、柱状、錘状、又はこれらを組み合わせた形状としたり、
図3~
図5に示すように先端側に拡径部を設けたり、或いは先端側を屈曲させたりすることができる。長手軸方向xにおいて、導電性チップ40のうちループ部30Lの遠位端30Ldから遠位側に延在している部分、即ち外側突出部30Dはナイフとして機能させることができる。外側突出部30Dの長さDは、用途に応じて適宜選択できるが、例えば2.0mm~5.0mmであることが好ましい。図面に示すように、導電性チップ40は、内視鏡用高周波処置具1の遠位端部に配置されていることが好ましい。
【0040】
導電性チップ40と導電性ワイヤ30との連結は、直接接続であっても別の部材を介しての間接的な接続であってもよく、例えば、金属管でかしめる結合、溶接、溶着、接着等の通常の接合方法で接合してよい。或いは、導電性チップ40が開口部を有しており、該開口部内に導電性ワイヤ30の一部が位置することにより導電性チップ40と導電性ワイヤ30が連結されていてもよい。これにより、導電性チップ40と導電性ワイヤ30の連結が解除されにくくなる。より好ましくは、導電性チップ40に開口部が設けられ、該開口部内に導電性ワイヤ30の一部が位置することにより導電性チップ40と導電性ワイヤ30が連結される。この方法は、導電性ワイヤ30の遠位端部において第1ワイヤ部31と第2ワイヤ部32が一体形成されている場合に好適に適用できる。開口部は、導電性チップ40に後述するループ幅方向wLに貫通する孔を設けることで形成されることが好ましい。また或いは、導電性チップ40のループ幅方向wLと垂直な面に窪みを設け、当該窪みに導電性ワイヤ30を嵌めるように固定してもよい。導電性チップ40は導電性ワイヤ30に対して回転可能であってもよく、導電性ワイヤ30の長手軸方向xに沿って移動可能でもよく、導電性ワイヤ30に完全に固定されていてもよい。
【0041】
図3に示すように、導電性チップ40がループ部30Lの遠位端30Ldから遠位側とループ部30Lの遠位端30Ldから近位側の両方に延在することにより、外側突出部30Dと内側突出部30Pを形成していることが好ましい。即ち、導電性チップ40が外側突出部30Dと内側突出部30Pを連続的に形成していることが好ましい。上記のように導電性チップ40に開口部を設けて導電性ワイヤ30と連結する場合であっても、導電性チップ40はループ部30Lの遠位端30Ldの遠位側と近位側で別部材であるのではなく一体に形成されていることが好ましい。これにより、導電性ワイヤ30によりスネアとして機能するループ部30Lが形成でき、導電性チップ40によりナイフとして機能する外側突出部30Dとスネアの絞扼性能を向上する内側突出部30Pが形成できるため、内側突出部30Pを別部材として設ける構成に比べて内視鏡用高周波処置具1の構成をシンプルにすることができる。また、内側突出部30Lのループ部30Lからの脱落防止も容易になる。
【0042】
図2及び
図3に示すように、平面視において、内側突出部30Pは第1ワイヤ部31と第2ワイヤ部32により形成されるループ部30Lが画定する領域に突出するように設けられていることが好ましい。内側突出部30Pが第1ワイヤ部31と第2ワイヤ部32により形成されるループ部30Lが画定する領域に突出していることにより、第1ワイヤ部31と第2ワイヤ部32に囲まれるようにループ部30Lの中に焼灼する生体組織を配置した後、導電性ワイヤ30をシース10内に引き込むことにより第1ワイヤ部31と第2ワイヤ部32との間、即ちループ部30Lの内側に形成される領域を縮小させた際、ループ部30Lの遠位端部において内側突出部30Pが生体組織に接触できる。これにより、内側突出部30Pがなければ生体組織との間に隙間が形成されやすいループ部30Lの遠位端部においても、導電性ワイヤ30と内側突出部30Pに高周波電流を流すことにより、ループ部30Lの遠位側に配置された生体組織も内側突出部30Pにより焼灼することができ、処置対象の生体組織全体を容易に焼灼切断することが可能となる。導電性ワイヤ30と内側突出部30Pに高周波電流を流したとき、導電性ワイヤ30と内側突出部30Pとは等電位を有することが好ましい。
【0043】
図1~
図3に示すように、長手軸方向xにおいて、内側突出部30Pの長さは、外側突出部30Dの長さDの1/2以上である。内側突出部30Pの長さは、外側突出部30Dの長さDの3/4以上が好ましく、1倍以上がより好ましい。内側突出部30Pが所定以上の長さを有していることにより、ループ部30Lの遠位端部においてループ部30Lの内側に配置された生体組織を内側突出部30Pにより焼灼できる。内側突出部30Pの長さは、外側突出部30Dの長さDの5倍以下が好ましく、3倍以下がより好ましく、2.5倍以下が更に好ましく、2倍以下が特に好ましい。内側突出部30Pの長さが所定以下であることにより、ループ部30Lによる生体組織の焼灼が内側突出部30Pにより阻害されることなく行える。
【0044】
図3に示すように、導電性ワイヤ30がシース10から露出している状態において、ループ部30Lは第1屈曲部36を有していることが好ましい。第1屈曲部36は、ループ部30Lの遠位端部に設けられていることが好ましい。このような構成により、処置対象部の大きさや形状、処置方法に応じてスネアとしてのループ部30Lの形状を適切に設計することや、外側突出部30Dを確実に突出させることが容易となる。このとき、長手軸方向xにおいて、第1屈曲部36の近位端とループ部30Lの遠位端30Ldとの間の長さをLとしたとき、内側突出部30Pはループ部30Lの遠位端30Ldから長さ2Lの地点までの区間の少なくとも一部に位置していることが好ましい。内側突出部30Pが上記範囲に位置していれば、導電性ワイヤ30をシース10内に引き込むことにより第1ワイヤ部31と第2ワイヤ部32との間、即ちループ部30Lの内側に形成される領域を縮小させた際、第1ワイヤ31と第2ワイヤ32が互いに接近している第1屈曲部36の近傍に位置する内側突出部30Pがループ部30Lの遠位端部において生体組織に接触できる。これにより、導電性ワイヤ30と内側突出部30Pに高周波電流を流すことにより、ループ部30Lの遠位端部に配置された生体組織を焼灼することがより容易となる。また、内側突出部30Pをループ部30Lの最遠位側に配置することができるため、ループ部30L及び内側突出部30Pと生体組織との間の隙間をより容易に減少することが可能となる。第1屈曲部36の近位端とは、第1屈曲部36における第1ワイヤ31の屈曲部の位置と第2ワイヤ32の屈曲部の位置が長手軸方向xにおいて異なっている場合、より近位側に位置している屈曲部のことである。
【0045】
導電性ワイヤ30がシース10から露出している状態において、第1屈曲部36は、ループ30Lの径方向の内方に向かって凸となるように形成されていることが好ましい。これにより、導電性ワイヤ30がシース10から露出している状態において、第1屈曲部36よりも近位側の第1ワイヤ部31と第2ワイヤ部32との間の距離を長くすることができ、ループ30Lの径を大きくできる。
【0046】
第1屈曲部36において、第1ワイヤ31の屈曲部と第2ワイヤ32の屈曲部は互いに面して配置されていてもよい。これにより、ループ部30Lをシース10内に収容する際に、導電性ワイヤ30のねじれを低減することができる。また、第1屈曲部36において、第1ワイヤ31の屈曲部と第2ワイヤ32の屈曲部は長手軸方向xに対して線対称に形成されていてもよく、非対称に形成されていてもよい。さらに、第1屈曲部36において、第1ワイヤ31の屈曲部と第2ワイヤ32の屈曲部は、長手軸方向xの同じ位置に配置されていてもよい。或いは、第1ワイヤ31の屈曲部と第2ワイヤ32の屈曲部は、長手軸方向xの異なる位置に配置されていてもよい。
【0047】
屈曲部は、例えば、導電性ワイヤ30を折り曲げたり、2つ以上のワイヤを角度を付けて接合したりすることにより形成できる。屈曲部は、1つのみ設けられていてもよく、複数設けられていてもよい。また、屈曲部は、折れ線状に形成されていてもよく、曲線状に形成されていてもよい。
【0048】
第1屈曲部36において、第1ワイヤ31と第2ワイヤ32は互いに直接固定されていないことが好ましい。内側突出部30Pが第1屈曲部36の内側に配置されることにより、第1屈曲部36において第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が内側突出部30Pと当接し、これにより第1ワイヤ31と第2ワイヤ32が間接的に接している場合があるが、第1ワイヤ31と第2ワイヤ32は、溶接やはんだ付け等の固定手段やループ部30Lの遠位端部をねじる等の構成により互いに直接固定されていないことが好ましい。第1屈曲部36において第1ワイヤ31と第2ワイヤ32とが互いに直接固定されていないことにより、ループ部30Lの遠位端部の柔軟性が向上し、導電性ワイヤ30をシース10内に引き込んで収容することが容易となる。これにより、導電性ワイヤ30のシース10内への収容の容易さを確保しつつ、焼灼切断効果の向上した内視鏡用高周波処置具1とすることができる。
【0049】
図4及び
図5に示すように、内視鏡用高周波処置具1は、長手軸方向xに垂直な方向であってループ部30Lの幅方向であるループ幅方向w
Lと、長手軸方向xとループ幅方向w
Lに垂直な方向であって導電性ワイヤ30の幅方向であるワイヤ幅方向w
wとを有しており、内視鏡用高周波処置具1をループ幅方向w
Lから見たとき、内側突出部30Pの少なくとも一部が導電性ワイヤ30のワイヤ幅方向w
wの外側に配置されていることが好ましい。内側突出部30Pの少なくとも一部が導電性ワイヤ30のワイヤ幅方向w
wの外側に配置されていることにより、導電性ワイヤ30をシース10内に引き込んで収容する際に内側突出部30Pが障害となりにくく、内視鏡用高周波処置具1の遠位端を含む全体をシース10内により容易に収容することが可能となる。
【0050】
内側突出部30Pは、ループ幅方向wLから見たとき、ループ部30Lと接している部分以外の部分全体が導電性ワイヤ30のワイヤ幅方向wwの外側に配置されていてもよい。このとき、内側突出部30Pのワイヤ幅方向wwの外側に配置されている部分は、ループ部30Lとワイヤ幅方向wwにおいて当接していてもよいし離隔していてもよい。内側突出部30Pのループ部30Lと接している部分以外の部分全体が導電性ワイヤ30のワイヤ幅方向wwの外側に配置されていれば、導電性ワイヤ30をシース10内に引き込んで収容する際に内側突出部30Pがより障害となりにくくなる。或いは、内側突出部30Pは、ループ幅方向wLから見たとき、一部が導電性ワイヤ30のワイヤ幅方向wwの内側に配置されていてもよい。内側突出部30Pの一部が導電性ワイヤ30のワイヤ幅方向wwの内側に配置されていれば、ループ部30Lの内側に生体組織を配置した後導電性ワイヤ30をシース10内に引き込んでループ部30Lの内側の領域を縮小させた際、ループ部30Lの遠位端部において内側突出部30Pが生体組織に接触しやすくなる。
【0051】
このとき、
図4に示すように、内視鏡用高周波処置具1をループ幅方向w
Lから見たとき、内側突出部30Pの少なくとも一部は、ワイヤ幅方向w
wの第1端側の外側又は第2端側の外側に配置されていてもよい。ワイヤ幅方向w
wのどちらか一方に内側突出部30Pが配置されていれば、上記効果を奏することができる。
【0052】
或いは、
図5に示すように、内視鏡用高周波処置具1をループ幅方向w
Lから見たとき、内側突出部30Pの少なくとも一部は、ワイヤ幅方向w
wの第1端側の外側及び第2端側の外側の両方に配置されていてもよい。これにより、内側突出部30Pを生体組織に接触させることがより容易になる。
【0053】
図2に示すように、内側突出部30Pはループ状に形成された部分を有していることが好ましい。内側突出部30Pのループ状に形成された部分が生体組織と接触し易くなり、内側突出部30Pによる生体組織の焼灼切断がより容易に行える。
【0054】
或いは、
図3に示すように、内側突出部30Pは直線状に形成された部分を有していることが好ましい。内側突出部30Pが直線状に形成された部分を有していることで、内側突出部30Pの生体組織との接触長さを長くすることができ内側突出部30Pによる生体組織の焼灼切断を効果的に行うことが可能となる。図面では内側突出部30Pが第1屈曲部36よりも近位側まで延在するように形成されている例を示しているが、内側突出部30Pは、その近位端を含む部分が第1屈曲部36に挟まれるように設けられてもよい。内側突出部30Pの近位端を含む部分が第1屈曲部36に挟まれるように設けられていても、第1屈曲部36における第1ワイヤ31と第2ワイヤ32は溶接やはんだ付け等の固定手段により直接には固定されていないため、ループ部30Lの遠位端部の柔軟性が確保され、ループ部30Lのシース10内への収容が容易な内視鏡用高周波処置具1とすることができる。また、この構成により、ループ部30Lの遠位端部における焼灼の効率をより容易に向上することができる。
【0055】
図3に示すように、第1ワイヤ部31は第1屈曲部36よりも近位側に配された第2屈曲部37を有しており、第2ワイヤ部32は第1屈曲部36よりも近位側に配された第3屈曲部38を有していることが好ましい。第2屈曲部37と第3屈曲部38が設けられることにより、ループ部30Lをシース10内に収容する際の導電性ワイヤ30のねじれを低減できる。また、長手軸方向xにおいて第2屈曲部37と第3屈曲部38が設けられる位置は所期のループ部30Lの形状に応じて適宜設定できるが、第2屈曲部37と第3屈曲部38は互いに面して配置されていることが好ましく、これによりループ部30Lをシース10内に収容する際の導電性ワイヤ30のねじれをより低減することが可能となる。また、第2屈曲部37と第3屈曲部38は、長手軸方向xに対して線対称に形成されていてもよく、非対称に形成されていてもよい。さらに、第2屈曲部37と第3屈曲部38は、長手軸方向xの同じ位置に配置されていてもよい。或いは、第2屈曲部37と第3屈曲部38は、長手軸方向xの異なる位置に配置されていてもよい。
【0056】
第2屈曲部37と第3屈曲部38は、導電性ワイヤ30の近位端部に設けられていることが好ましい。これにより、導電性ワイヤ30をシース10から露出させた際のループ部30Lの径を大きくすることができる。
【0057】
また、導電性ワイヤ30がシース10から露出している状態において、第2屈曲部37と第3屈曲部38は、ループ30Lの径方向の内方に向かって凸となるように形成されていることが好ましい。これにより、ループ30Lを形成した際に第2屈曲部37よりも遠位側の第1ワイヤ部31と第3屈曲部38よりも遠位側の第2ワイヤ部32との間の距離を長くすることができ、ループ30Lの径を大きくできる。
【0058】
図1に示すように、シース10及び線状物20の近位側はハンドル60にそれぞれ接続されていることが好ましい。ハンドル60の操作により、導電性ワイヤ30のシース10からの突出、引き込み、及び回転操作を行える。ハンドル60は、シース10が固定されている第1固定部と、線状物20が固定されている第2固定部とを有することが好ましい。第1固定部に対して第2固定部を押すことにより、シース10の遠位端から外側突出部30Dを露出させたり導電性ワイヤ30を露出させてループ部30Lにより形成される領域を大きくしたりして、内視鏡用高周波処置具1をナイフやスネアとして使用することができる。逆に、第1固定部に対して第2固定部を引くことにより、シース10内に外側突出部30Dやループ部30Lを収容することができる。ハンドル60は高周波電源に接続されていることが好ましく、線状物20を介して導電性ワイヤ30や導電性チップ40に電力を供給できる。
【0059】
内視鏡用高周波処置具1は、内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿通され、体内に導入される。処置具挿通チャンネル内や、体内の処置対象部以外を損傷しないため、非通電時であってもループ部30L及び外側突出部30Dはシース10内に収容されていることが好ましい。
【0060】
内視鏡用高周波処置具1をナイフとして使用する際は、外側突出部30Dのみがシース10から露出するようにハンドル60を操作することができる。内視鏡用高周波処置具1においては、内側突出部30Pはループ部30Lの遠位端30Ldよりも近位側に設けられていることから、内側突出部30Pに妨げられることなく外側突出部30Dをナイフとして使用できる。
【符号の説明】
【0061】
1:内視鏡用高周波処置具
10:シース
20:線状物
21:導電性接続具
30:導電性ワイヤ
30L:ループ部
30Ld:ループ部の遠位端
30Lp:ループ部の近位端
30D:外側突出部
30P:内側突出部
31:第1ワイヤ部
32:第2ワイヤ部
36:第1屈曲部
37:第2屈曲部
38:第3屈曲部
40:導電性チップ
60:ハンドル
L:長手軸方向における外側突出部の長さ
wL:ループ幅方向
ww:ワイヤ幅方向
x:長手軸方向