(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139526
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】リンク機構及びロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 17/00 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
B25J17/00 H
B25J17/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050501
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】杉戸 竜士
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS09
3C707CY36
3C707HT02
3C707HT04
3C707HT11
3C707HT12
3C707HT36
(57)【要約】
【課題】リンクに発生するトルクを補償可能であり且つ小型化可能なリンク機構及びロボットを提供する。
【解決手段】実施形態に係るリンク機構は、基部と、第1リンクと、第1部材と、第1補償部と、を備える。第1リンクは、基部に対して、鉛直方向と交差する第1方向まわりに回転可能に取り付けられる。第1部材は、第1リンクに回転可能に連結された第1部分と、水平面と交差する第2方向に沿って可動な第2部分と、を含む。第1部材は、第1リンクの回転方向と反対の方向に回転可能である。第1方向及び第2方向に平行な面と交差する第3方向における第1部材の少なくとも一部の位置が、第3方向における第1リンクの一部の位置と同じである。第1補償部は、第2部分に連結される。第1補償部は、第2部分に対して第2方向に力を加えることで、第1部材に第1リンクの回転方向と反対方向のトルクを加える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部に対して、鉛直方向と交差する第1方向まわりに回転可能に取り付けられた第1リンクと、
前記第1リンクに回転可能に連結された第1部分と、水平面と交差する第2方向に沿って可動な第2部分と、を含み、前記第1リンクの回転方向と反対の方向に回転可能であり、前記第1方向及び前記第2方向に平行な面と交差する第3方向における少なくとも一部の位置が、前記第3方向における前記第1リンクの一部の位置と同じである、第1部材と、
前記第2部分に連結され、前記第2部分に対して前記第2方向に力を加えることで、前記第1部材に前記第1リンクの回転方向と反対方向のトルクを加える第1補償部と、
を備えたリンク機構。
【請求項2】
前記第2部分の前記第3方向における位置は、前記基部の前記第3方向における位置と同じである、請求項1記載のリンク機構。
【請求項3】
前記第1リンクと連結された第2リンクをさらに備えた、請求項1記載のリンク機構。
【請求項4】
前記第1リンクと前記第2リンクとを連結し、前記第2リンクの回転に応じて回転する第1回転軸と、
前記基部に対して回転可能な第2回転軸と、
前記第2回転軸の回転を前記第1回転軸に伝達させる伝達部材と、
前記第2リンクの回転時に、前記第2リンクの回転方向と反対方向のトルクを前記第2回転軸に加える第2補償部と、
をさらに備えた、請求項3記載のリンク機構。
【請求項5】
前記基部に対して前記第2回転軸で回転可能な第2部材をさらに備え、
前記第2回転軸は、前記第2部材の回転に応じて回転し、
前記第2補償部は、前記第2部材の一部に対して前記第2方向に力を加える、請求項4記載のリンク機構。
【請求項6】
前記第1リンクに取り付けられたエンドエフェクタをさらに備えた、請求項1記載のリンク機構。
【請求項7】
前記第1補償部は、前記第1リンクよりも重い重量物を含む、請求項1記載のリンク機構。
【請求項8】
前記第1補償部は、アクチュエータを含む、請求項1記載のリンク機構。
【請求項9】
前記第1補償部は、前記第2部分に連結された弾性部材を含み、
前記弾性部材は、前記第2部分に対して前記第2方向に弾性力を加える、請求項1記載のリンク機構。
【請求項10】
前記第2部分の前記第3方向における位置は、前記第1リンクの一端の前記第3方向における位置と、前記第1リンクの他端の前記第3方向における位置と、の間にある、請求項1記載のリンク機構。
【請求項11】
前記第1部分の前記第3方向における位置は、前記第1リンクの一端の前記第3方向における位置と、前記第1リンクの他端の前記第3方向における位置と、の間にある、請求項1記載のリンク機構。
【請求項12】
前記基部は、前記第2方向まわりに前記第1リンクを回転可能である、請求項1記載のリンク機構。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1つに記載のリンク機構と、
マニピュレータと、を備え、
前記マニピュレータが前記第1リンクを含むロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、リンク機構及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
水平面と交差する方向に回転可能なリンク機構がある。リンクが鉛直方向に対して傾斜している場合、リンクには、自重によるトルクが発生する。リンクの重さによるトルクを補償可能なリンク機構もある。このリンク機構について、小型化できる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、リンクに発生するトルクを補償可能であり且つ小型化可能なリンク機構及びロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るリンク機構は、基部と、第1リンクと、第1部材と、第1補償部と、を備える。前記第1リンクは、前記基部に対して、鉛直方向と交差する第1方向まわりに回転可能に取り付けられる。前記第1部材は、前記第1リンクに回転可能に連結された第1部分と、水平面と交差する第2方向に沿って可動な第2部分と、を含む。前記第1部材は、前記第1リンクの回転方向と反対の方向に回転可能である。前記第1方向及び前記第2方向に平行な面と交差する第3方向における前記第1部材の少なくとも一部の位置が、前記第3方向における前記第1リンクの一部の位置と同じである。前記第1補償部は、前記第2部分に連結される。前記第1補償部は、前記第2部分に対して前記第2方向に力を加えることで、前記第1部材に前記第1リンクの回転方向と反対方向のトルクを加える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るリンク機構を示す側面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るリンク機構の一部を示す側面図である。
【
図3】
図3は、参考例に係るリンク機構を示す側面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るリンク機構の一部を示す側面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の第1変形例に係るリンク機構を示す側面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の第2変形例に係るリンク機構を示す側面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の第3変形例に係るリンク機構を示す側面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の第4変形例に係るリンク機構を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の第4変形例に係るリンク機構を示す側面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態の第4変形例に係るリンク機構を示す側面図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態の第4変形例に係るリンク機構の一部を示す側面図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態の第5変形例に係るリンク機構を示す側面図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態の第6変形例に係るリンク機構を示す側面図である。
【
図14】
図14は、第1実施形態の第6変形例に係るリンク機構を示す側面図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態に係るリンク機構を示す側面図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態に係るリンク機構の一部を示す側面図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態の第1変形例に係るリンク機構の一部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るリンク機構を示す側面図である。
図1に示すように、第1実施形態に係るリンク機構100は、基部1、第1リンク11、第1サブリンク21、及び第1補償部31を備える。
【0009】
基部1は、床面に対して固定される。第1リンク11は、回転軸1aを介して基部1に連結される。回転軸1aの軸方向は、鉛直方向と交差する。第1リンク11は、基部1に対して、回転軸1aの軸方向まわりに回転可能である。
【0010】
ここでは、各実施形態の説明のために、X方向、Y方向、及びZ方向を用いる。回転軸1aの軸方向をX方向(第1方向)とする。水平面と交差する一方向をZ方向(第2方向)とする。X-Z面と交差する一方向をY方向(第3方向)とする。図示した例では、X方向及びY方向は、水平面に平行であり、互いに直交する。Z方向は、鉛直方向に平行である。
【0011】
リンク機構100は、エンドエフェクタ40をさらに備えても良い。エンドエフェクタ40は、第1リンク11の連結部11aに取り付けられる。連結部11aの位置は、回転軸1aの位置とは異なる。図示した例では、連結部11aは、第1リンク11の一端に位置する。
【0012】
第1サブリンク21は、第1リンク11の下方に位置し、第1部分21a及び第2部分21bを含む。図示した例では、第1部分21a及び第2部分21bは、それぞれ、第1サブリンク21の両端に位置する。第1部分21aは、回転軸11bを介して第1リンク11に連結される。回転軸11bの軸方向は、回転軸1aの軸方向と平行である。回転軸1aは、連結部11aと回転軸11bとの間に位置する。第2部分21bは、Z方向に可動である。
【0013】
例えば、第1サブリンク21の長さは、第1リンク11の長さよりも短い。第1サブリンク21は、第1リンク11の回転方向とは反対の方向に回転可能である。第2部分21bがZ方向に移動すると、第1サブリンク21の全体がZ方向に移動するとともに、第1サブリンク21が回転軸11bを中心として回転する。
【0014】
第1補償部31は、第1リンク11で発生するトルクを補償するために設けられる。リンク機構100では、第1補償部31は、重り31a(重量物)及びガイド31bを含む。重り31aは、第1リンク11で発生するトルクを補償するために、第2部分21bに対してZ方向に力を加える。重り31aは、カウンターウェイトとして機能する。例えば、重り31aは、第1リンク11又はエンドエフェクタ40よりも重い。より好ましくは、重り31aは、第1リンク11の重さとエンドエフェクタ40の重さの和よりも重い。
【0015】
第1リンク11で発生するトルクを補償できれば、重り31aの具体的な構成は任意である。重り31aのサイズを小さくするためには、重り31aに、比重の大きな材料を使用することが好ましい。例えば、重り31aは、ステンレスから構成される。重り31aを用いることで、ばねなどの弾性部材のみを用いる場合と比べて、第2部分21bにより大きな力を加えることができる。
【0016】
ガイド31bは、Z方向に互いに離れた一対のプーリ31b1と、それらのプーリ31b1に掛けられたベルト31b2と、を含む。プーリ31b1は、X方向まわりに回転可能である。ベルト31b2は、無終端であり、プーリ31b1同士の間ではZ方向に延びている。重り31aは、プーリ31b1同士の間において、ベルト31b2に対して固定される。重り31aの移動は、ベルト31b2が延びるZ方向にガイドされる。重り31aの移動をZ方向にさらに規制するためのガイド部材がさらに設けられても良い。
【0017】
リンク機構100は、回転軸1aを中心として第1リンク11を回転させるための駆動部51を備える。例えば、駆動部51は、一対のプーリ31b1の一方を、X方向まわりに回転させる。プーリ31b1の回転に応じて、ベルト31b2がZ方向に動く。ベルト31b2の動きに応じて、重り31a及び第2部分21bがZ方向に移動する。第2部分21bがZ方向に移動すると、第1サブリンク21がX方向まわりに回転しながら、第1部分21a及び回転軸11bも移動する。回転軸11bの移動に応じて、第1リンク11が、回転軸1aのまわりを、第1サブリンク21と反対方向に回転する。
【0018】
又は、駆動部51は、回転軸1aを回転させても良い。回転軸1aの回転に応じて、第1リンク11が回転する。第1リンク11の回転に応じて、第1サブリンク21も回転軸11bのまわりを回転し、第2部分21b及び重り31aがZ方向に移動する。
【0019】
また、リンク機構100では、第1サブリンク21の少なくとも一部のY方向における位置は、第1リンク11の一部のY方向における位置と同じである。より具体的な一例として、第2部分21bのY方向における位置P1は、第1リンク11の一端(連結部11a)のY方向における位置P2と、第1リンク11の他端(回転軸11b)のY方向における位置P3と、の間にある。位置P1は、回転軸1aのY方向における位置と同じである。また、重り31aのY方向における位置も、回転軸1aのY方向における位置と同じである。
【0020】
図2は、第1実施形態に係るリンク機構の一部を示す側面図である。
図2に示すように、第1リンク11及びエンドエフェクタ40の重さにより、回転軸1aの周りでは、回転方向RD1の向きにトルクT
1が発生する。一方、重り31aの重さによって、第2部分21bには、下方に向けて力F
2が加えられる。力F
2が第2部分21bに加わると、回転軸11bには、Y方向に力F
1が加わる。力F
1によって、回転軸1aの周りにおいて、回転方向RD2の向きにトルクT
2が発生する。回転方向RD2は、回転方向RD1と反対である。すなわち、第1リンク11の重さ及びエンドエフェクタ40の重さによって発生するトルクT
1の少なくとも一部が、第1補償部31によって発生するトルクT
2により補償される。
【0021】
図3は、参考例に係るリンク機構を示す側面図である。
図3に示すリンク機構100rは、基部1、第1リンク11、カウンターウェイト30、及びエンドエフェクタ40を備える。カウンターウェイト30及びエンドエフェクタ40は、第1リンク11の両端にそれぞれ設けられる。カウンターウェイト30は、回転軸1aの周りにおいて、第1リンク11及びエンドエフェクタ40の重さによるトルクと反対方向のトルクを発生させる。
【0022】
第1実施形態の利点を説明する。
第1リンク11の重さ及びエンドエフェクタ40の重さによるトルクは、補償されることが好ましい。トルクの少なくとも一部が補償されることで、駆動部51の出力を小さくできる。これにより、駆動部51の小型化、リンク機構100の安全性向上などが可能となる。
【0023】
参考例に係るリンク機構100rによれば、カウンターウェイト30により、第1リンク11の重さ及びエンドエフェクタ40の重さによるトルクを補償できる。しかし、リンク機構100rでは、カウンターウェイト30が、基部1に対してエンドエフェクタ40と反対側に大きく突き出る。このため、リンク機構100rの設置には、大きなスペースが必要となる。また、リンク機構100rにおいて、カウンターウェイト30を重くすることで、カウンターウェイト30の突き出し量を小さくできる。しかし、重量の大きいカウンターウェイト30が、第1リンク11とともに動くため、危険となりうる。
【0024】
第1実施形態に係るリンク機構100では、第1リンク11に第1サブリンク21が連結され、第1補償部31は第1サブリンク21に取り付けられる。第1補償部31は、第1リンク11の重さ及びエンドエフェクタ40の重さによるトルクを補償するように、第1サブリンク21の第2部分21bに対して力を加える。第1補償部31により、第1リンク11の重さ及びエンドエフェクタ40の重さによるトルクの少なくとも一部を補償できる。
【0025】
また、第1補償部31は、第1サブリンク21に取り付けられ、第2部分21bに対してZ方向に力を加える。そして、第1サブリンク21の少なくとも一部のX方向における位置は、第1リンク11の一部のX方向における位置と同じである。このため、第1サブリンク21及び第1補償部31は、基部1に対してエンドエフェクタ40と反対側に大きく突き出ることは無い。例えば、カウンターウェイト30と重り31aが同じ重さである場合に、リンク機構100における第1サブリンク21の突き出し量は、リンク機構100rにおけるカウンターウェイト30の突き出し量よりも小さい。
【0026】
第1実施形態によれば、リンク機構100rに比べて、リンク機構100を小型化できる。例えば、リンク機構100のY方向におけるサイズを、リンク機構100rのY方向におけるサイズよりも小さくできる。また、第1実施形態によれば、リンク機構100rに比べて、より安全なリンク機構100を実現できる。
【0027】
以下で、リンク機構100のより好ましい具体例について説明する。
【0028】
図4は、第1実施形態に係るリンク機構の一部を示す側面図である。
図4に示すように、回転軸1aから連結部11aまでの長さを「L
1」とする。回転軸1aから回転軸11bまでの長さ、及び第1サブリンク21の長さを「L
2」とする。長さL
2は、長さL
1よりも短い。連結部11aに加わる重さを「m
1」とする。m
1は、エンドエフェクタ40の重さを含む。第1リンク11の水平面に対する角度及び第1サブリンク21の水平面に対する角度を「θ」とする。重力加速度を「g」とする。
【0029】
この場合、連結部11aには、下方に向けて力m1gが働く。力m1gによって第1リンク11に生じるトルクT1は、以下の数式1で表される。
T1=m1gL1cosθ (1)
【0030】
一方、重り31aによって第2部分21bに加わる力F2と、回転軸11bに加わる力F1と、の関係は、以下の数式2で表される。
F2=(1/2)×F1tanθ (2)
【0031】
第1リンク11が水平面に対して傾斜している(θ≠0である)場合、数式2は、以下の数式3に変形できる。
F1=2F2(cosθ/sinθ) (3)
【0032】
力F1による第1リンク11の回転軸11bへのトルクT2は、以下の数式4で表される。
T2=F1L2/sinθ (4)
【0033】
トルクT2は、トルクT1と等しいことが最も好ましい。トルクT1とトルクT2が等しい場合、重さm1によるトルクT1が、重り31aに起因するトルクT2によって完全に補償される。以下の数式5が満たされる場合、トルクT1とトルクT2が等しい。
m1gL1cosθ=F1L2sinθ (5)
【0034】
数式5は、以下の数式6~8に順次変形できる。
m1gL1cosθ=2L2F2(cosθ/sinθ)×sinθ (6)
m1gL1=2L2F2 (7)
F2=m1gL1/2L2 (8)
【0035】
重り31aによる重さを「M1」とする。力F2は、M1gで表される。重さM1が以下の数式9を満たす場合、重さm1によるトルクT1が完全に補償される。
M1=m1L1/2L2 (9)
【0036】
数式9によれば、長さL2が短い場合でも、重り31aを重くすることで、トルクT1が完全に補償される。換言すると、重り31aを重くすることで、エンドエフェクタ40と反対側における第1リンク11及び第1サブリンク21の突き出しを小さくでき、リンク機構100を小型化できる。
【0037】
また、数式9には、角度θが含まれていない。第1リンク11の水平面に対する傾きと第1サブリンク21の水平面に対する傾きを等しくすることで、角度θに拘わらず、重り31aにより、トルクT1が完全に補償される。角度θに応じて、駆動部51の出力を調整する必要がない。このため、リンク機構100をより容易に制御できる。
【0038】
以降では、第1実施形態に係るリンク機構100と同様の利点を有する変形例を説明する。各変形例に係るリンク機構の構成は、リンク機構100の構成を基本とし、リンク機構の一部が、リンク機構100に対して、追加または変更されている。各変形例の説明において、第1実施形態に係るリンク機構100と共通する構造の説明については、適宜省略する。
【0039】
(第1変形例)
図5は、第1実施形態の第1変形例に係るリンク機構を示す側面図である。
図5に示すリンク機構110は、回転軸1b及び駆動部50をさらに備える点でリンク機構100と異なる。駆動部50は、Z方向に沿う回転軸1bを回転させる。回転軸1bの回転に応じて、基部1、第1リンク11、第1サブリンク21等がZ方向まわりに回転する。ここでは、Z方向周りの回転を「旋回」と言う。リンク機構110は、回転軸1bにより旋回可能である。連結部11a又はエンドエフェクタ40は、回転軸1aと回転軸1bにより、2自由度を有する。
【0040】
リンク機構110の旋回時、Z方向まわりに慣性力が発生する。回転軸1bから離れた位置での重さがより重いほど、慣性力はより大きくなる。慣性力が大きくなると、回転軸1bを停止させるために必要な駆動部50の出力も大きくなる。このため、駆動部50が大型化する。又は、リンク機構110の安全性が低下しうる。
【0041】
図3に示すリンク機構100rに回転軸1b及び駆動部50を設ける場合、カウンターウェイト30が基部1から離れているため、旋回時により大きな慣性力が発生する。これに対して、リンク機構110では、
図5に示すように、重り31aのY方向における位置P1は、第1リンク11の一端のY方向における位置P2と、第1リンク11の他端のY方向における位置P3と、の間にある。重り31aは、基部1に近接して設けられる。例えば、重り31aのY方向における位置は、基部1のY方向における位置と同じである。このため、リンク機構110における重り31aと基部1との間の距離は、リンク機構100rにおけるカウンターウェイト30と基部1との間の距離よりも短い。
【0042】
重り31aと基部1との距離が短いため、リンク機構110では、旋回時の慣性力を低減できる。第1変形例によれば、旋回によって連結部11aの自由度を増やした場合でも、旋回時の慣性力を低減できる。これにより、駆動部50を小型化でき、リンク機構110の安全性を向上させることが可能である。
【0043】
(第2変形例)
図6は、第1実施形態の第2変形例に係るリンク機構を示す側面図である。
図6に示した第2変形例に係るリンク機構120は、リンク機構100と比べて、第1補償部31の構造が異なる。リンク機構120では、第1補償部31は、重り31a及び駆動部31cを含む。駆動部31cは、第2部分21bに連結され、第2部分21bをZ方向に動かす。駆動部31cは、重り31aを介して第2部分21bと連結されても良い。駆動部31cは、例えば、電動リニアアクチュエータである。
【0044】
駆動部31cが第2部分21bをZ方向に沿って移動させることで、第1リンク11を回転させることも可能である。すなわち、駆動部31cは、リンク機構100における駆動部51としての機能も備える。
【0045】
物体を把持可能なエンドエフェクタ40が設けられても良い。エンドエフェクタ40が物体を把持した状態では、物体の重さの分、第1リンク11に発生するトルクが増大する。物体の把持に応じて駆動部31cが第2部分21bに力を加えることで、物体の重さによって第1リンク11に発生するトルクを補償できる。
【0046】
ここで、把持した物体の重さを「m
2」とする。この場合、
図4に示した第2部分21bに加えられる力F
2が、以下の数式10を満たす場合、第1リンク11に発生するトルクT
1を完全に補償できる。
F
2=(m
1+m
2)gL
1/2L
2 (10)
【0047】
数式9と数式10の比較から、数式10で表される力F2は、「m2gL1/2L2」増加していることがわかる。重り31aの重さが数式9を満たす場合、駆動部31cが、第2部分21bに対して「m2gL1/2L2」の力を加えることで、第1リンク11に発生するトルクT1を完全に補償できる。
【0048】
また、「m2gL1/2L2」には、角度θが含まれていない。すなわち、重さm2によるトルクを補償するために必要な駆動部31cの出力は、角度θに依存しない。第2変形例によれば、角度θに応じた駆動部31cの複雑な制御が不要であり、重さm2によるトルクを容易に補償できる。
【0049】
(第3変形例)
図7は、第1実施形態の第3変形例に係るリンク機構を示す側面図である。
図7に示した第3変形例に係るリンク機構130では、リンク機構120と比べて、第1補償部31が、弾性部材31dをさらに含む。弾性部材31dの一端は、基部1に対して固定される。弾性部材31dの他端は、基部1に対して固定される。弾性部材31dは、基部1と第2部分21bとの間に連結される。弾性部材31dは、重り31aを介して第2部分21bと連結されても良い。図示した例では、弾性部材31dは、定荷重ばねである。弾性部材31dは、十分な長さの板ばねであり、基部1に固定されたドラムに巻き付けられている。
【0050】
弾性部材31dは、自然長よりも長い状態にある。弾性部材31dは、第2部分21bに対してZ方向に沿った弾性力を加える。図示した例では、第1補償部31は、第2部分21bを下方に向けて引っ張る。弾性部材31dの弾性力は、第1サブリンク21及び回転軸11bを介して第1リンク11へ伝わり、第1リンク11にトルクを発生させる。弾性部材31dによるトルクは、第1リンク11及びエンドエフェクタ40の重さによって回転軸1aの周りで発生するトルクの一部を補償する。
【0051】
弾性部材31dによって第2部分21bに力が加えられることで、第1補償部31によって補償できるトルクを大きくできる。又は、駆動部31cの出力を小さくし、駆動部31cを小型化できる。弾性部材31dは、定荷重ばねであることが好ましい。弾性部材31dが定荷重ばねであると、弾性部材31dによる弾性力が、第2部分21bのZ方向における位置に拘わらず一定となる。弾性部材31dによる弾性力が第2部分21bのZ方向における位置に応じて変化する場合と比べて、第1リンク11の重さ及びエンドエフェクタ40の重さによるトルクを補償するために必要な駆動部31cの出力の計算が容易になる。補償するためのトルクが小さくて良い場合は、重り31aを省略することも可能である。
【0052】
(第4変形例)
図8は、第1実施形態の第4変形例に係るリンク機構を示す斜視図である。
図9及び
図10は、第1実施形態の第4変形例に係るリンク機構を示す側面図である。
第4変形例に係るリンク機構140は、
図8~
図10に示すように、リンク機構100と比べて、第2リンク12、第2サブリンク22(第2部材)、および第2補償部32をさらに含む。
【0053】
第1リンク11は、連結部11aに代えて、回転軸11cを含む。回転軸11cの軸方向は、回転軸1aの軸方向と平行である。第2リンク12は、第1リンク11の回転軸11cに連結されている。第2リンク12は、第1リンク11に対して、回転軸11cを中心として回転可能である。例えば、第2リンク12の水平面に対する角度は、第1リンク11の水平面に対する角度と異なりうる。回転軸11cは、第2リンク12の回転に応じて回転する。
【0054】
エンドエフェクタ40は、第2リンク12の連結部12aに連結されている。連結部12aは、回転軸11cから離れた位置に設けられる。例えば、回転軸11c及び連結部12aは、それぞれ第2リンク12の両端に位置する。
【0055】
第1補償部31は、第1リンク11、第2リンク12、及びエンドエフェクタ40の重さによって第1リンク11に発生するトルクを補償する。
図9に示すように、第1補償部31は、重り31a、プーリ31b1、ベルト31b2、駆動部31c、及び弾性部材31dを含む。すなわち、リンク機構140における第1補償部31の構造は、重り31aが設けられていない点を除き、リンク機構130における第1補償部31の構造と実質的に同じである。
【0056】
第2補償部32は、第2リンク12及びエンドエフェクタ40の重さによって第2リンク12に発生するトルクを補償する。
図10に示すように、第2補償部32は、ガイド32b、駆動部32c、弾性部材32d、及び伝達部材32eを含む。
【0057】
ガイド32bは、Z方向に離れた一対のプーリ32b1と、それらのプーリ32b1に掛けられたベルト32b2と、を含む。プーリ32b1は、X方向まわりに回転可能である。ベルト32b2は、無終端であり、プーリ32b1同士の間ではZ方向に延びている。
【0058】
第2サブリンク22は、第2補償部32により発生する力を回転軸11cに伝えるために設けられる。第2サブリンク22は、第1リンク11よりも下方に位置し、直列に連結されたリンク22a及びリンク22bを含む。リンク22bの回転時、リンク22aは、リンク22bとは反対方向に回転可能である。図示した例では、リンク22aの長さは、リンク22bの長さと同じである。また、リンク22aの水平面に対する角度は、リンク22bの水平面に対する角度と同じである。
【0059】
リンク22aの一端は、回転軸1cで基部1と連結されている。回転軸1cの軸方向は、回転軸11cの軸方向と平行である。リンク22aは、回転軸1cにより、基部1に対してX軸方向まわりに回転可能である。また、回転軸1cは、リンク22aの回転に応じて回転する。
【0060】
回転軸1c及び回転軸11cには、伝達部材32eが掛けられる。伝達部材32eにより、回転軸1cの回転の力は、回転軸11cに伝達される。例えば、回転軸1cと回転軸11cは、同じ回転速度で回転する。伝達部材32eは、無終端ベルトである。伝達部材32eは、無終端チェーン等であっても良い。
【0061】
リンク22bの一端は、リンク22aの他端に回転可能に連結される。リンク22bの他端には、駆動部32cが取り付けられる。駆動部32cは、リンク22bの他端に対してZ方向に力を加える。駆動部31c及び駆動部32cは、例えば、電動のリニアガイドである。
【0062】
また、リンク22bの他端は、プーリ32b1同士の間においてベルト32b2に固定される。これにより、リンク22bの他端の移動がZ方向にガイドされる。弾性部材32dは、ベルト32b2に弾性力を加える。弾性力は、後述するトルクT4が増大するように、駆動部32cによる力と同じ方向に加えられる。
【0063】
図11は、第1実施形態の第4変形例に係るリンク機構の一部を示す側面図である。
第2リンク12の重さ及びエンドエフェクタ40の重さによって、回転軸11cには、回転方向RD3に向けたトルクが加えられる。駆動部32cは、リンク22bの他端に対して上方に力F
4を加える。リンク22bを介して、リンク22aの他端には、水平方向に向けた力F
3が加えられる。力F
3によって、リンク22aに対して、回転方向RD4にトルクT
4が発生する。リンク22aに発生したトルクT
4は、回転軸1c及び伝達部材32eを介して、回転軸11cに伝達される。
【0064】
回転方向RD4は、回転方向RD3と反対方向である。このため、第2リンク12の重さ及びエンドエフェクタ40の重さによるトルクT3の少なくとも一部は、駆動部32cの動作に起因するトルクT4によって補償される。また、駆動部32cの動作により、第2リンク12を回転させることも可能である。
【0065】
第4変形例によれば、第1リンク11に発生するトルクだけでなく、第2リンク12に発生するトルクも補償できる。これにより、第2リンク12の回転に必要な出力をより小さくでき、リンク機構140の安全性を高めることができる。
【0066】
(第5変形例)
図12は、第1実施形態の第5変形例に係るリンク機構を示す側面図である。
図12に示したリンク機構150は、平行リンク10をさらに備える点で、リンク機構100と異なる。平行リンク10は、第1リンク11と平行に延びている。
【0067】
平行リンク10は、回転軸1dを介して基部1に連結される。回転軸1dの軸方向は、回転軸1aの軸方向に平行である。平行リンク10は、基部1に対して、回転軸1dの軸方向まわりに回転可能である。また、平行リンク10は、第1リンク11と同期して回転可能である。
【0068】
エンドエフェクタ40は、平行リンク10の連結部10a及び第1リンク11の連結部11aに回転可能に連結される。図示した例では、回転軸1d及び連結部10aは、平行リンク10の両端にそれぞれ位置する。エンドエフェクタ40は、ガイド40a及び荷台40bを含む。ガイド40aは、Y方向に沿って延びている。荷台40bは、ガイド40aに沿ってY方向に摺動可能である。荷台40bの上には、物体を載置可能である。
【0069】
平行リンク10及び第1リンク11には、平行リンク10、第1リンク11、及びエンドエフェクタ40の重さm1によるトルクT1が発生する。第1リンク11には、リンク機構100と同様に、第1サブリンク21を介して第1補償部31が取り付けられる。第1補償部31によって第1リンク11に発生するトルクT2が、トルクT1の少なくとも一部を補償する。
【0070】
リンク機構150のように、第1リンク11と平行な別のリンクが設けられる場合でも、第1補償部31を設けることで、第1リンク11に発生するトルクを補償できる。また、トルクT
1の補償に必要な第2部分21bへの力F
2は、以下の数式11によって表される。数式11において、長さL
1、長さL
2、角度θなどの定義は、
図4に示す例と同じである。
F
2=m
1gL
1/2L
2 (11)
【0071】
重り31aによる重さM1が以下の数式12を満たす場合、重さm1よるトルクT1が完全に補償される。このため、重さM1は数式12を満たすことが好ましい。
M1=m1L1/2L2 (12)
【0072】
(第6変形例)
図13及び
図14は、第1実施形態の第6変形例に係るリンク機構を示す側面図である。
図13に示した第6変形例に係るリンク機構160は、リンク機構100と比べて、中間リンク20をさらに備える。中間リンク20は、第1リンク11と第1サブリンク21との間に連結される。
【0073】
中間リンク20は、基部1に対して回転可能に、回転軸1eに連結される。回転軸1eの軸方向は、回転軸1aの軸方向と平行である。また、回転軸1eは、基部1に対してZ方向に摺動可能である。中間リンク20の両端は、それぞれ、第1リンク11の回転軸11b及び第1サブリンク21の第1部分21aに回転可能に連結される。回転軸1eは、回転軸11bと第1部分21aとの間に位置する。
【0074】
図14に示すように、回転軸1aから連結部11aまでの長さを「L
1」とする。回転軸1aから回転軸11bまでの長さ、第1サブリンク21の長さを「L
2」とする。中間リンク20の長さを2L
2とする。回転軸1eは、回転軸11bと第1部分21aとの間の中心に位置する。連結部11aに加わる重さを「m
1」とする。第1リンク11、中間リンク20、及び第1サブリンク21のそれぞれの水平面に対する角度を「θ」とする。この場合、重り31aによる第2部分21bへの力F
2が、以下の数式13を満たす場合、連結部11aに加わる力m
1gが、完全に補償される。
F
2=m
1gL
1/4L
2 (13)
【0075】
数式13を数式8と比較すると、力m1gの完全な補償に必要な力F2が、半分になっていることが分かる。第6変形例によれば、中間リンク20を設け、回転軸1aから重り31aまでのリンクの長さを増やすことで、完全な補償に必要な力F2を小さくできる。例えば、重り31aを小さくできる。又は、長さL2を短くし、リンク機構160をより小型化できる。
【0076】
(第2実施形態)
図15は、第2実施形態に係るリンク機構を示す側面図である。
第2実施形態に係るリンク機構200は、基部1と、第1リンク11と、第1サブリンク21(第1部材)と、第1補償部31と、エンドエフェクタ40と、を備える。
【0077】
第1リンク11は、回転軸1aを介して基部1に連結される。リンク機構200では、回転軸1aは、第1リンク11の一端に位置する。エンドエフェクタ40は、第1リンク11他端の連結部11aに取り付けられる。第1サブリンク21は、第1リンク11の一部及び回転軸1aよりも上方に位置する。第1サブリンク21の第1部分21aは、回転軸11bを介して第1リンク11に連結される。回転軸11bは、回転軸1aと連結部11aとの間に位置する。
【0078】
第1補償部31は、重り31a及びガイド31bを含む。ガイド31bは、プーリ31b1及びベルト31b2を含む。第2部分21bは、連結部材21cを介して、ベルト31b2に固定されている。重り31aも、ベルト31b2に固定される。第2部分21bと重り31aは、プーリ31b1に対して互いに反対側に位置する。重り31aによりベルト31b2の一部が下方に引っ張られると、ベルト31b2に加えられた力は、プーリ31b1を介して、第2部分21bを上方に向けて引っ張る。
【0079】
駆動部51は、一対のプーリ31b1の一方を回転させる。プーリ31b1の回転に応じて、ベルト31b2がZ方向に動く。第2部分21bがベルト31b2の動きに応じて、Z方向に移動する。第2部分21bがZ方向に移動すると、第1サブリンク21が回転しながら、第1部分21a及び回転軸11bも移動する。回転軸11bの移動に応じて、第1リンク11が回転する。
【0080】
リンク機構200においても、第2サブリンク22の少なくとも一部のY方向における位置は、第1リンク11の一部のY方向における位置と同じである。例えば、第1部分21aのY方向における位置P4は、第1リンク11の連結部11aのY方向における位置P5と、回転軸1aのY方向における位置P6と、の間にある。このため、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、リンク機構200を小型化できる。
【0081】
図16は、第2実施形態に係るリンク機構の一部を示す側面図である。
図16に示すように、回転軸1aから連結部11aまでの長さを「L
1」とする。回転軸1aから回転軸11bまでの長さ、及び第1サブリンク21の長さを「L
2」とする。連結部11aに加わる重さを「m
1」とする。m
1は、エンドエフェクタ40の重さを含む。第1リンク11の水平面に対する角度及び第1サブリンク21の水平面に対する角度を「θ」とする。
【0082】
この場合、重さm1よって第1リンク11に発生するトルクT1は、前述の数式1で表される。
T1=m1gL1cosθ (1)
【0083】
重り31aによって第2部分21bに加わる力F2と、回転軸11bに加わる力F1と、の関係は、前述の数式3で表される。
F1=2F2(cosθ/sinθ) (3)
【0084】
力F1による第1リンク11へのトルクT2は、前述の数式4で表される。
T2=F1L2/sinθ (4)
【0085】
前述の数式8及び9が満たされる場合、トルクT1とトルクT2が等しくなり、重さm1によるトルクが完全に補償される。
F2=m1gL1/2L2 (8)
M1=m1L1/2L2 (9)
【0086】
第2実施形態に係るリンク機構200によれば、第1実施形態に係るリンク機構100と同様に、第1リンク11の重さ及び40の重さによるトルクを補償できる。
【0087】
また、第2実施形態によれば、基部1に対してエンドエフェクタ40と反対側への第1リンク11及び第1サブリンク21の突き出し量を小さくできる。例えば
図15に示すように、基部1に対して、エンドエフェクタ40と反対側へ、いずれのリンクも突き出ていない構成を実現することも可能である。第2実施形態によれば、第1実施形態と比べて、基部1に対してエンドエフェクタ40と反対側の空間における安全性を、より高めることができる。
【0088】
(第1変形例)
図17は、第2実施形態の第1変形例に係るリンク機構の一部を示す側面図である。
図17に示した第1変形例に係るリンク機構210は、第1補償部31の構造について、リンク機構200と差異を有する。リンク機構210における第1補償部31は、ガイド31bに代えて、ガイド31e、プーリ31f、及びロープ31gを含む。
【0089】
ガイド31eは、Z方向に延びる一対のバー31e1と、摺動部材31e2と、を含む。バー31e1は、Y方向において互いに離れている。摺動部材31e2は、第2部分21bに取り付けられ、バー31e1同士の間をZ方向に摺動可能である。ガイド31eにより、第2部分21bの移動がZ方向にガイドされる。
【0090】
プーリ31fは、第2部分21b及び重り31aよりも上方に位置する。ロープ31gは、プーリ31fに掛けられている。重り31aは、ロープ31gの一端に取り付けられる。第2部分21bは、ロープ31gの他端に取り付けられる。重り31aによりロープ31gが下方に引っ張られると、第2部分21bには上方に向けた力が加えられる。
【0091】
駆動部51は、プーリ31fを回転させる。又は、駆動部51は、回転軸1aを回転させても良い。駆動部51によるプーリ31f又は回転軸1aの回転により、第1リンク11が回転する。
【0092】
第1変形例に係るリンク機構200によれば、リンク機構200と同様に、第1リンク11の重さ及び40の重さによるトルクを補償できる。また、前述の数式8及び9が満たされる場合、重さm1によるトルクが完全に補償される。
【0093】
以上で説明した各実施形態は、適宜組み合わせ可能である。例えば、リンク機構120~160、200、又は210は、リンク機構110のように旋回可能であっても良い。リンク機構200又は210の第1補償部31が、リンク機構130のように、駆動部31c又は弾性部材31dを含んでも良い。
【0094】
(実施例)
図18及び
図19は、実施例を示す側面図である。
上述した各実施形態に係るリンク機構は、
図18に示すように、踏切の遮断器300に適用できる。
図18に示す例では、リンク機構100が用いられている。第1リンク11は、踏切内への進入を妨げる遮断棒として用いられている。
【0095】
一般に遮断棒は長く、第1リンク11が水平に倒された場合に、第1リンク11の重さにより大きなトルクが発生する。各実施形態に係るリンク機構であれば、第1リンク11に発生する大きなトルクを効果的に補償できる。例えば、第1リンク11の重さにより発生するトルクを、第1リンク11の角度に依らず完全に補償できる。
【0096】
屈曲可能な遮断棒を備える遮断器には、リンク機構140がより好適である。リンク機構140であれば、互いに異なる角度で傾斜するそれぞれの遮断棒のトルクを、第1補償部31及び第2補償部32により補償できる。
【0097】
各実施形態に係るリンク機構は、
図19に示すように、産業用のロボット310に適用できる。
図19に示す例では、垂直多関節ロボットにリンク機構110が用いられている。リンク機構110は、第1リンク11に加えて、第2リンク12及び第3リンク13をさらに備える。第1リンク11~第3リンク13は、マニピュレータとして機能する。エンドエフェクタ40は、物体を把持可能な把持機構を備える。
【0098】
各実施形態に係るリンク機構によれば、
図3に示すリンク機構100rに比べて、旋回時の慣性力を低減できる。このため、各実施形態に係るリンク機構は、旋回可能なロボットに好適である。
【0099】
図19に示すリンク機構110は、リンク機構140のように、第2リンク12で発生するトルクを補償するための第2補償部32をさらに備えても良い。第3リンク13で発生するトルクを補償するためのさらに別の補償部を備えても良い。
【0100】
ロボット310に実施形態を適用する場合、第1実施形態がより好ましい。第1実施形態に係るリンク機構では、主に、基部1の下側に第1補償部31を設けるスペースが必要となる。第2実施形態に係るリンク機構では、主に、基部1の上側に第1補償部31を設けるスペースが必要となる。ロボット310については、一般的に、基部1の上側にスペースを設けるよりも、基部1の下側にスペースを設ける方が容易である。
【0101】
エンドエフェクタ40は、
図19に示す例に限らない。エンドエフェクタ40は、多肢機構による把持以外に、吸着又はジャミングにより物体を把持可能であっても良い。エンドエフェクタ40は、把持のほか、溶接、検査、塗装、加工(切削、研磨等)、又は樹脂成型などを実行可能であっても良い。
【0102】
本発明の実施形態は、以下の構成を含む。
(構成1)
基部と、
前記基部に対して、鉛直方向と交差する第1方向まわりに回転可能に取り付けられた第1リンクと、
前記第1リンクに回転可能に連結された第1部分と、水平面と交差する第2方向に沿って可動な第2部分と、を含み、前記第1リンクの回転方向と反対の方向に回転可能であり、前記第1方向及び前記第2方向に平行な面と交差する第3方向における少なくとも一部の位置が、前記第3方向における前記第1リンクの一部の位置と同じである、第1部材と、
前記第2部分に連結され、前記第2部分に対して前記第2方向に力を加えることで、前記第1部材に前記第1リンクの回転方向と反対方向のトルクを加える第1補償部と、
を備えたリンク機構。
(構成2)
前記第2部分の前記第3方向における位置は、前記基部の前記第3方向における位置と同じである、構成1記載のリンク機構。
(構成3)
前記第1リンクと連結された第2リンクをさらに備えた、構成1又は2に記載のリンク機構。
(構成4)
前記第1リンクと前記第2リンクとを連結し、前記第2リンクの回転に応じて回転する第1回転軸と、
前記基部に対して回転可能な第2回転軸と、
前記第2回転軸の回転を前記第1回転軸に伝達させる伝達部材と、
前記第2リンクの回転時に、前記第2リンクの回転方向と反対方向のトルクを前記第2回転軸に加える第2補償部と、
をさらに備えた、構成3記載のリンク機構。
(構成5)
前記基部に対して前記第2回転軸で回転可能な第2部材をさらに備え、
前記第2回転軸は、前記第2部材の回転に応じて回転し、
前記第2補償部は、前記第2部材の一部に対して前記第2方向に力を加える、構成4記載のリンク機構。
(構成6)
前記第1リンクに取り付けられたエンドエフェクタをさらに備えた、構成1又は2に記載のリンク機構。
(構成7)
前記第1補償部は、前記第1リンクよりも重い重量物を含む、構成1~6のいずれか1つに記載のリンク機構。
(構成8)
前記第1補償部は、アクチュエータを含む、構成1~7のいずれか1つに記載のリンク機構。
(構成9)
前記第1補償部は、前記第2部分に連結された弾性部材を含み、
前記弾性部材は、前記第2部分に対して前記第2方向に弾性力を加える、構成1~8のいずれか1つに記載のリンク機構。
(構成10)
前記第2部分の前記第3方向における位置は、前記第1リンクの一端の前記第3方向における位置と、前記第1リンクの他端の前記第3方向における位置と、の間にある、構成1~9のいずれか1つに記載のリンク機構。
(構成11)
前記第1部分の前記第3方向における位置は、前記第1リンクの一端の前記第3方向における位置と、前記第1リンクの他端の前記第3方向における位置と、の間にある、構成1~9のいずれか1つに記載のリンク機構。
(構成12)
前記基部は、前記第2方向まわりに前記第1リンクを回転可能である、構成1~11のいずれか1つに記載のリンク機構。
(構成13)
構成1~12のいずれか1つに記載のリンク機構と、
マニピュレータと、を備え、
前記マニピュレータが前記第1リンクを含むロボット。
【0103】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0104】
1:基部、 1a~1e:回転軸、 10:平行リンク、 10a:連結部、 11:第1リンク、 11a:連結部、 11b,11c:回転軸、 12:第2リンク、 12a:連結部、 13:第3リンク、 20:中間リンク、 21:第1サブリンク、 21a:第1部分、 21b:第2部分、 21c:連結部材、 22:第2サブリンク、 22a,22b:リンク、 30:カウンターウェイト、 31:第1補償部、 31a:重り、 31b:ガイド、 31b1:プーリ、 31b2:ベルト、 31c:駆動部、 31d:弾性部材、 31e:ガイド、 31e1:バー、 31e2:摺動部材、 31f:プーリ、 31g:ロープ、 32:第2補償部、 32b:ガイド、 32b1:プーリ、 32b2:ベルト、 32c:駆動部、 32d:弾性部材、 32e:伝達部材、 40:エンドエフェクタ、 40a:ガイド、 40b:荷台、 50,51:駆動部、 100,100r,110~160,200,210:リンク機構、 300:遮断器、 310:ロボット