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特開2024-139528教習装置、教習方法および教習プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139528
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】教習装置、教習方法および教習プログラム
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/00 20060101AFI20241002BHJP
   G10G 3/04 20060101ALI20241002BHJP
   G10G 1/00 20060101ALI20241002BHJP
   G09B 15/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
G10H1/00 Z
G10G3/04
G10G1/00
G09B15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050505
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】小幡 哲史
(72)【発明者】
【氏名】上原 美咲
(72)【発明者】
【氏名】前澤 陽
(72)【発明者】
【氏名】森尻 有貴
【テーマコード(参考)】
5D182
5D478
【Fターム(参考)】
5D182AA12
5D182AA24
5D182AB10
5D182AD02
5D182AD03
5D182AD10
5D478FF01
5D478FF03
5D478FF04
5D478FF12
5D478FF24
(57)【要約】
【課題】演奏の実用的な教習を行うことが可能な教習装置、教習方法および教習プログラムを提供する。
【解決手段】教習装置10は、参照データ取得部11、演奏データ取得部12、検出部13、推定部14および指導部15を含む。参照データ取得部11は、参照音の時系列を示す参照データを取得する。演奏データ取得部12は、使用者の演奏により表現された音の時系列を示す演奏データを取得する。検出部13は、参照データと演奏データとを比較することにより、演奏のミスを検出する。推定部14は、演奏の履歴に基づいてミスの原因を推定する。指導部15は、ミスの発生頻度および原因に基づいて指導内容を決定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照音の時系列を示す参照データを取得する参照データ取得部と、
使用者の演奏により表現された音の時系列を示す演奏データを取得する演奏データ取得部と、
前記参照データと前記演奏データとを比較することにより、演奏のミスを検出する検出部と、
演奏の履歴に基づいて前記ミスの原因を推定する推定部と、
前記ミスの発生頻度および前記原因に基づいて指導内容を決定する指導部とを備える、教習装置。
【請求項2】
前記指導部により決定された指導内容を提示する提示部をさらに備える、請求項1記載の教習装置。
【請求項3】
前記ミスの発生頻度または前記ミスの重要度に基づいて、前記提示部により提示される指導内容を選択する選択部をさらに備える、請求項2記載の教習装置。
【請求項4】
前記提示部に提示された指導内容を保持する保持部をさらに備え、
前記指導部は、次の演習において、前記保持部に保持された指導内容とは異なる指導内容を決定する、請求項2または3記載の教習装置。
【請求項5】
前記推定部は、ミスの種類および発生頻度と、原因とが対応付けられたテーブルに基づいて前記ミスの原因を推定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の教習装置。
【請求項6】
参照音の時系列を示す参照データを取得し、
使用者の演奏により表現された音の時系列を示す演奏データを取得し、
前記参照データと前記演奏データとを比較することにより、演奏のミスを検出し、
演奏の履歴に基づいて前記ミスの原因を推定し、
前記ミスの発生頻度および前記原因に基づいて指導内容を決定し、
コンピュータにより実行される、教習方法。
【請求項7】
決定された指導内容を提示する、請求項6記載の教習方法。
【請求項8】
前記ミスの発生頻度または前記ミスの重要度に基づいて、提示される指導内容を選択する、請求項7記載の教習方法。
【請求項9】
提示された指導内容を保持し、
指導内容を決定することは、次の演習において、保持された指導内容とは異なる指導内容を決定することを含む、請求項7または8記載の教習方法。
【請求項10】
前記ミスの原因を推定することは、ミスの種類および発生頻度と、原因とが対応付けられたテーブルに基づいて前記ミスの原因を推定することを含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の教習方法。
【請求項11】
コンピュータに教習方法を実行させるプログラムであって、
参照音の時系列を示す参照データを取得する処理と、
使用者の演奏により表現された音の時系列を示す演奏データを取得する処理と、
前記参照データと前記演奏データとを比較することにより、演奏のミスを検出する処理と、
演奏の履歴に基づいて前記ミスの原因を推定する処理と、
前記ミスの発生頻度および前記原因に基づいて指導内容を決定する処理とを、
前記コンピュータに実行させる、教習プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演奏を教習する教習装置、教習方法および教習プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
楽器の演奏を使用者に教習する教習装置が知られている(例えば、特許文献1~7)。例えば、特許文献1には、ネットワークを介して接続された生徒端末がおよび教師端末を含む音楽教習システムが記載されている。生徒端末において、生徒がカリキュラムに応じた演奏の練習を行うことにより、練習成果を示す演奏データが教師端末に送信される。
【0003】
教師端末において、演奏データと同時に送信された個人情報データと、カリキュラムとに基づいて、生徒に対する個別のアドバイスファイルが作成される。作成されたアドバイスファイルは、生徒端末に送信される。生徒端末において、アドバイスファイルが開かれることにより、アドバイスファイルに含まれるコメント等が生徒端末の表示器に表示される。これにより、生徒の演奏にミスがあった場合でも、改善が促される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3371791号公報
【特許文献2】特許第3582315号公報
【特許文献3】特許第3582320号公報
【特許文献4】特許第3582427号公報
【特許文献5】特許第3624773号公報
【特許文献6】特許第3767612号公報
【特許文献7】特許第3842403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
楽器の演奏において、ミスは種々の要因により発生する。したがって、同一の演奏のミスが発生した場合でも、その要因は同じであるとは限らない。しかしながら、上記の特許文献1~7のシステムにおいては、同一の演奏のミスについては、同一のコメント等の評価結果が提示される。そのため、演奏の実用的な教習を行うことは困難である。
【0006】
本発明の目的は、演奏の実用的な教習を行うことが可能な教習装置、教習方法および教習プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に従う教習装置は、参照音の時系列を示す参照データを取得する参照データ取得部と、使用者の演奏により表現された音の時系列を示す演奏データを取得する演奏データ取得部と、参照データと演奏データとを比較することにより、演奏のミスを検出する検出部と、演奏の履歴に基づいてミスの原因を推定する推定部と、ミスの発生頻度および原因に基づいて指導内容を決定する指導部とを備える。
【0008】
本発明の他の局面に従う教習方法は、コンピュータにより実行され、参照音の時系列を示す参照データを取得し、使用者の演奏により表現された音の時系列を示す演奏データを取得し、参照データと演奏データとを比較することにより、演奏のミスを検出し、演奏の履歴に基づいてミスの原因を推定し、ミスの発生頻度および原因に基づいて指導内容を決定する。
【0009】
本発明のさらに他の局面に従う教習プログラムは、コンピュータに教習方法を実行させるプログラムであって、参照音の時系列を示す参照データを取得する処理と、使用者の演奏により表現された音の時系列を示す演奏データを取得する処理と、参照データと演奏データとを比較することにより、演奏のミスを検出する処理と、演奏の履歴に基づいてミスの原因を推定する処理と、ミスの発生頻度および原因に基づいて指導内容を決定する処理とを、コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、演奏の実用的な教習を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態に係る教習装置を含む教習システムの構成を示すブロック図である。
図2】教習装置の構成を示すブロック図である。
図3】検出部により分類された演奏のミスの一例を示すテーブルである。
図4】検出部により分類された演奏のミスの一例を示すテーブルである。
図5】図のミスの原因に付与されたコードの詳細を示すテーブルである。
図6図4の指導内容に付与された番号の詳細を示すテーブルである。
図7】表示部に表示される指導内容の一例を示す図である。
図8図2の教習装置による教習処理の一例を示すフローチャートである。
図9】第1の変形例に係る教習装置の構成を示すブロック図である。
図10】第2の変形例に係る教習装置の構成を示すブロック図である。
図11】第3の変形例に係る教習装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)教習システムの構成
以下、本発明の実施の形態に係る教習装置について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る教習装置を含む教習システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、教習システム100は、RAM(ランダムアクセスメモリ)110、ROM(リードオンリメモリ)120、CPU(中央演算処理装置)130、記憶部140、操作部150および表示部160を備える。
【0013】
教習システム100は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末またはスマートフォン等のコンピュータにより実現される。あるいは、教習システム100は、電子ピアノ等の演奏機能を備えた電子楽器により実現されてもよい。教習システム100は、イーサネット等の通信路により接続された複数のコンピュータの共同動作により実現されてもよい。
【0014】
RAM110、ROM120、CPU130、記憶部140、操作部150および表示部160は、バス170に接続される。RAM110、ROM120およびCPU130により教習装置10が構成される。RAM110は、例えば揮発性メモリからなり、CPU130の作業領域として用いられる。ROM120は、例えば不揮発性メモリからなり、教習プログラムを記憶する。CPU130は、ROM120に記憶された教習プログラムをRAM110上で実行することにより教習処理を行う。教習処理の詳細については後述する。
【0015】
教習プログラムは、ROM120ではなく記憶部140に記憶されてもよい。あるいは、教習プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶された形態で提供され、ROM120または記憶部140にインストールされてもよい。あるいは、教習システム100がインターネット等のネットワークに接続されている場合には、当該ネットワーク上のサーバ(クラウドサーバを含む。)から配信された教習プログラムがROM120または記憶部140にインストールされてもよい。
【0016】
記憶部140は、ハードディスク、光学ディスク、磁気ディスクまたはメモリカード等の記憶媒体を含む。記憶部140には、対応情報および指導情報が予め記憶されている。対応情報は、使用者により演奏された練習曲において、発生した演奏のミスおよびその頻度と、ミスの原因との対応関係を示す。指導情報は、対応情報における演奏の各ミスを解消するための指導内容を示す。対応情報および指導情報は、例えばROM120に予め記憶されていてもよい。また、対応情報および指導情報は、テーブル形式を有してもよい。
【0017】
なお、本例における練習曲の演奏とは、後述する参照データにより示される練習曲の全体を通し演奏することを意味する。練習曲の演奏に用いられる楽器は特に限定されず、鍵盤楽器、弦楽器または打楽器等であってもよい。使用者は、通常、定期的に練習曲を通し演奏する以外にも、ミスが多発する部分等、練習曲の一部分のみの集中的な演奏の練習を行う。したがって、使用者が練習曲の通し演奏を行うごとに、使用者の演奏技術が向上し、ミスの原因およびミスの発生頻度が変化することとなる。
【0018】
操作部150は、マウス等のポインティングデバイスまたはキーボードを含み、教習処理における種々の指定または設定を行うために使用者により操作される。表示部160は、例えば液晶ディスプレイを含み、教習処理により提示された指導内容等を表示する。操作部150および表示部160は、タッチパネルディスプレイにより構成されてもよい。
【0019】
(2)教習装置の構成
図2は、教習装置10の構成を示すブロック図である。図2に示すように、教習装置10は、機能部として、参照データ取得部11、演奏データ取得部12、検出部13、推定部14、指導部15および提示部16を含む。図1のCPU130が教習プログラムをRAM110上で実行することにより、教習装置10の機能部が実現される。教習装置10の機能部の少なくとも一部は、電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0020】
参照データ取得部11は、使用者により演奏される練習曲の参照音の時系列を示す参照データを取得する。参照データは、練習曲の楽譜を示す楽譜データであってもよい。本例では、参照データ取得部11は、記憶部140に記憶された複数の楽譜データのうち、指定された楽譜データを参照データとして取得する。使用者は、操作部150を操作することにより、所望の楽譜データを指定することができる。
【0021】
演奏データ取得部12は、使用者が練習曲を演奏するごとに、練習曲における音の時系列を示す演奏データを取得する。本例では、演奏データは使用者により演奏された練習曲のMIDI(Musical Instrument Digital Interface)データであるが、実施の形態はこれに限定されない。演奏データは、使用者の演奏により表現された音の時系列を示すデータであればよい。したがって、演奏データは、使用者により演奏された練習曲の音響信号(オーディオ信号)であってもよい。あるいは、演奏データは、カメラ入力から得られた使用者の運指系列または姿勢であってもよい。
【0022】
検出部13は、参照データ取得部11により取得された参照データと、演奏データ取得部12により取得された演奏データとを比較することにより、練習曲における時間軸上の各時点の演奏のミスを検出する。また、同じ音が繰り返し発生される等の一部のミスは、参照データに依拠せずに検出されてもよい。検出部13は、楽譜の認識誤りまたは運動能力の不足等のミスの由来に応じて、検出されたミスを複数の種類に分類する。ミスの分類は、同一の演奏曲についての演奏データが演奏データ取得部12により取得されるごとに更新される。
【0023】
推定部14は、使用者による演奏の履歴に基づいてミスの原因を推定する。具体的には、分類されたミスの種類およびその発生頻度と、記憶部140に記憶された対応情報とに基づいて、ミスの原因が推定される。ミスの発生頻度は、1回の演奏において発生した同一の種類のミスの発生頻度と、複数回の演奏において発生した同一の種類のミスの発生頻度とを含む。推定されるミスの原因は、同一の演奏曲についての演奏データが演奏データ取得部12により取得されるごとに更新される。
【0024】
指導部15は、ミスの発生頻度および推定部14により推定されたミスの原因と、記憶部140に記憶された指導情報とに基づいて、当該ミスを解消するための指導内容を決定する。指導部15は、演奏データが演奏データ取得部12により取得されるごとに指導内容を決定してもよい。一方で、使用者は、操作部150を操作することにより、自己の演奏技術の上達度合いに応じて、指導内容を決定する頻度(例えば演奏の回数)を指導部15に設定することができる。回数が設定されている場合、指導部15は、設定された回数の演奏データが演奏データ取得部12により取得されるごとに指導内容を決定する。
【0025】
提示部16は、指導部15により決定された指導内容を表示部160に表示させることにより、指導内容を使用者に提示する。
【0026】
(3)教習装置の動作
図3および図4は、検出部13により分類された演奏のミスの一例を示すテーブルである。図3および図4に示すように、演奏のミスは、「類1」~「類4」に分類される。「類1」、「類2」および「類3」は、演奏におけるピッチミス、音の検出ミスおよびタイミングミスにそれぞれ由来する。「類4」は、演奏における音の挿入ミスにそれぞれ由来する。また、「類2」は、「類2-1」および「類2-2」に細分され、「類4」は「類4-1」~「類4-4」に細分される。「類1」~「類3」および「類4」の一部に分類されるミスは、参照音の時系列を示す参照データ(例えば楽譜データ)に基づいて検出される。
【0027】
図3および図4のテーブルには、分類されたミスの原因に付与されたコードが当該ミスに対応するように記載されている。ミスの原因は、分類されたミスの種類およびその頻度と、対応情報とに基づいて推定部14により推定される。また、図3および図4のテーブルには、ミスの原因に対応する指導内容に付与された番号が記載されている。指導内容は、ミスの発生頻度および推定部14により推定された原因に基づいて指導部15により決定される。
【0028】
図5は、図4のミスの原因に付与されたコードの詳細を示すテーブルである。図5に示すように、本例では、ミスの原因の内容に応じて、複数のミスの原因に「コードa」、「コードb1」、「コードb2」、「コードc」、「コードd」および「コードe」が付与される。図6は、図4の指導内容に付与された番号の詳細を示すテーブルである。図6に示すように、本例では、複数の指導内容に「番号1」、「番号2」、「番号3-1」、「番号3-2」、「番号3-3」、「番号4」および「コードNA」が付与される。
【0029】
指導部15により決定された指導内容が提示部16により表示部160に表示される。図7は、表示部160に表示される指導内容の一例を示す図である。図7の上段、中段および下段には、1回目、2回目および3回目の演奏(通し演奏)に対する指導内容がそれぞれ示される。1回目、2回目および3回目の演奏は、演奏データ取得部12によりそれぞれ1回目、2回目および3回目に取得された演奏データが示す練習曲における音の時系列を意味する。
【0030】
図7の例では、指導部15により決定された指導内容が、練習曲の楽譜におけるミスの発生部分から引き出された吹き出し内に示される。各演奏の間の期間に、使用者は、必要に応じて練習曲の練習を適宜行う。そのため、演奏の回数を重ねるごとに、使用者の演奏技術が向上し、ミスの原因およびミスの頻度が変化する。したがって、演奏の回数を重ねるごとに、同一のミスが発生した場合でも、提示される指導内容が変化する。一般に、演奏の回数を重ねるごとに、より高度な動作を促す指導内容が提示される。
【0031】
(4)教習処理
図8は、図2の教習装置10による教習処理の一例を示すフローチャートである。図8の教習処理は、図1のCPU130が教習プログラムをRAM110上で実行することにより行われる。以下、図2の教習装置10および図8のフローチャートを用いて本実施の形態における教習処理の一例を説明する。
【0032】
まず、参照データ取得部11は、楽譜データが指定されたか否かを判定する(ステップS1)。使用者は、操作部150を操作することにより、記憶部140に記憶された楽譜データのうち、演習する練習曲の楽譜データを指定することができる。楽譜データが指定されない場合、参照データ取得部11は、楽譜データが指定されるまで待機する。楽譜データが指定された場合、参照データ取得部11は、指定された楽譜データを記憶部140から取得する(ステップS2)。
【0033】
次に、演奏データ取得部12は、演習データが入力された否かを判定する(ステップS3)。使用者は、所定の機材を用いて練習曲を演奏することにより、演奏データを生成し、教習装置10に入力することができる。演習データが入力されない場合、演奏データ取得部12は、演習データが入力されるまで待機する。演習データが入力された場合、演奏データ取得部12は、入力された演習データを取得する(ステップS4)。
【0034】
続いて、検出部13は、ステップS2で取得された楽譜データと、ステップS4で取得された演奏データとに基づいて、練習曲における演奏のミスを検出し、検出されたミスを分類する(ステップS5)。その後、推定部14は、ステップS5で分類されたミスの種類およびその頻度と、記憶部140等に記憶された対応情報とに基づいて、ミスの原因を推定する(ステップS6)。
【0035】
次に、指導部15は、ミスの発生頻度およびステップS6で推定されたミスの原因と、記憶部140等に記憶された指導情報とに基づいて、当該ミスを解消するための指導内容を決定する(ステップS7)。続いて、提示部16は、ステップS7で決定された指導内容を表示部160に表示させることにより、指導内容を使用者に提示し(ステップS8)、ステップS3に戻る。
【0036】
使用者により練習曲の演奏が行われ、演習データが教習装置10に入力されるごとに、ステップS3~S8が繰り返される。これにより、新たに取得された演習データに基づいて、ステップS5でミスの分類が更新される。また、ステップS6で推定されるミスの原因が更新される。その結果、ステップS8自己の演奏技術の上達度合いに応じた指導内容が提示される。
【0037】
図8の例では、使用者により練習曲の演奏が行われ、演習データが教習装置10に入力されるごとに、ステップS7で指導内容が決定され、ステップS8で指導内容が提示されるが、実施の形態はこれに限定されない。指導内容を決定する頻度として、例えば演奏の回数が設定されている場合には、設定された回数の演奏データが教習装置10に入力されるごとに、ステップS7で指導内容が決定され、ステップS8で指導内容が提示されてもよい。
【0038】
(5)実施の形態の効果
以上説明したように、本実施の形態に係る教習装置10は、参照音の時系列を示す参照データを取得する参照データ取得部11と、使用者の演奏により表現された音の時系列を示す演奏データを取得する演奏データ取得部12と、参照データと演奏データとを比較することにより、演奏のミスを検出する検出部13と、演奏の履歴に基づいてミスの原因を推定する推定部14と、ミスの発生頻度および原因に基づいて指導内容を決定する指導部15とを備える。
【0039】
この構成によれば、演奏において同一のミスが発生した場合でも、演奏の上達段階により変化するミスの種々の原因に対応した指導内容を決定することができる。これにより、演奏の実用的な教習を行うことができる。
【0040】
教習装置10は、指導部15により決定された指導内容を提示する提示部16をさらに備えてもよい。この場合、使用者は、自己の演奏に対する指導内容を容易に理解することができる。
【0041】
推定部14は、ミスの種類および発生頻度と、原因とが対応付けられたテーブルに基づいてミスの原因を推定してもよい。この場合、ミスの原因を容易に推定することができる。
【0042】
(6)変形例
(a)第1の変形例
図9は、第1の変形例に係る教習装置10の構成を示すブロック図である。図9に示すように、本例に係る教習装置10は、機能部として選択部17をさらに含む。選択部17は、図1のCPU130が教習プログラムをRAM110上で実行することにより実現されてもよいし、電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0043】
選択部17は、指導部15により決定された指導内容のうち、ミスの発生頻度またはミスの重要度に基づいて、使用者に優先的に提示すべき指導内容を選択する。また、使用者は、操作部150を操作することにより、選択されるべき指導内容の件数を選択部17に設定することができる。件数が設定されている場合、選択部17は、設定された件数の指導内容を選択する。提示部16は、選択部17により選択された指導内容を表示部160に表示させることにより、指導内容を使用者に提示する。
【0044】
したがって、本例における教習処理では、選択部17がステップS7で決定された指導内容のうち、ミスの発生頻度またはミスの重要度に基づいて、使用者に優先的に提示すべき指導内容を選択する処理がステップS7の後に追加される。また、ステップS8において、選択部17により選択された指導内容が表示部160に表示されることにより、指導内容が使用者に提示される。
【0045】
このように、本例に係る教習装置10においては、多数の指導内容が指導部15により決定された場合でも、ミスの発生頻度またはミスの重要度に基づいて優先的に提示される指導内容が選択部17により選択される。これにより、使用者の負担を過度に大きくすることなく演奏の教習を行うことができる。
【0046】
(b)第2の変形例
図10は、第2の変形例に係る教習装置10の構成を示すブロック図である。図10に示すように、本例に係る教習装置10は、機能部として保持部18をさらに含む。保持部18は、図1のCPU130が教習プログラムをRAM110上で実行することにより実現されてもよいし、電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。また、保持部18は、図9の第1の変形例に係る教習装置10に設けられてもよい。
【0047】
保持部18は、提示部16により提示された指導内容を保持する。保持部18により保持される指導内容は、同一の演奏曲についての演奏データが演奏データ取得部12により取得されるごとに更新される。指導部15は、演奏データ取得部12により取得された任意の演奏データに対する演奏ミスへの指導内容を決定した場合、次に取得された演奏データに対する演奏ミスに対しては保持部18に保持された指導内容とは異なる指導内容を決定する。
【0048】
したがって、本例における教習処理では、保持部18がステップS8で提示された指導内容を保持する処理がステップS8の後に追加される。その後、処理はステップS3に戻る。ステップS3で新たな演習データが教習装置10に入力された場合、次のステップS7では、前回決定された指導内容とは異なる指導内容が決定される。また、ステップS8で、保持される指導内容が更新される。
【0049】
このように、本例に係る教習装置10においては、一度提示された指導内容が繰り返し提示されることがない。そのため、使用者が複合的な原因により演奏をミスしている場合でも、単一の指導内容が決定されることが容易に防止される。これにより、演奏のより実用的な教習を行うことができる。
【0050】
(c)第3の変形例
図11は、第3の変形例に係る教習装置10の構成を示すブロック図である。図11に示すように、本例に係る教習システム100は、サーバコンピュータ1と、クライアントコンピュータ2とにより構成される。サーバコンピュータ1は、多数の使用者によりアクセス可能に設けられる。クライアントコンピュータ2は、例えば使用者が所有するスマートデバイスであってもよい。したがって、教習システム100は、共通のサーバコンピュータ1と、複数のクライアントコンピュータ2とにより構成されてもよい。
【0051】
サーバコンピュータ1およびクライアントコンピュータ2の各々は、図1のRAM110、ROM120、CPU130、記憶部140、操作部150および表示部160を含む。また、教習装置10の機能部のうち、検出部13、推定部14および指導部15はサーバコンピュータ1に設けられ、参照データ取得部11、演奏データ取得部12および提示部16はクライアントコンピュータ2に設けられる。図9の第1の変形例における選択部17または図10の第2の変形例における保持部18がクライアントコンピュータ2にさらに設けられてもよい。
【0052】
本例に係る教習装置10においては、各使用者は、自身が所有するクライアントコンピュータ2に演奏データを入力することにより、サーバコンピュータ1において、演奏データに対する指導内容が決定される。また、決定された指導内容が、対応するクライアントコンピュータ2の表示部160に表示される。このように、各使用者は、より容易に教習装置10を利用することができる。
【0053】
(7)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、参照データ取得部11は参照データとして楽譜データを取得するが、実施の形態はこれに限定されない。参照データ取得部11は、使用者により複数回取得された演奏データに基づいて、練習曲の参照音の時系列を示す参照データを生成してもよい。
【0054】
(b)上記実施の形態において、推定部14は対応情報に基づいて演奏のミスの原因を推定するが、実施の形態はこれに限定されない。演奏データ、ミスの種類およびミスの発生頻度と、ミスの原因との関係を学習した学習モデルに基づいて演奏のミスの原因を推定してもよい。
【0055】
同様に、指導部15は指導情報に基づいて指導内容を決定するが、実施の形態はこれに限定されない。指導部15は、ミスの発生頻度およびミスの原因と指導内容との関係を学習した学習モデルに基づいて指導内容を決定してもよい。
【0056】
(c)上記実施の形態において、教習装置10は提示部16を含むが実施の形態はこれに限定されない。使用者が指導部15により決定された指導内容を利用可能である限り、教習装置10は提示部16を含まなくてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…サーバコンピュータ,2…クライアントコンピュータ,10…教習装置,11…参照データ取得部,12…演奏データ取得部,13…検出部,14…推定部,15…指導部,16…提示部,17…選択部,18…保持部,100…教習システム,110…RAM,120…ROM,130…CPU,140…記憶部,150…操作部,160…表示部,170…バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11