(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139540
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/22 20060101AFI20241002BHJP
H02K 1/34 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H02K1/22 A
H02K1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050525
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中 祥司郎
(72)【発明者】
【氏名】平野 正樹
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA02
5H601BB11
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD11
5H601DD31
5H601DD46
5H601GA02
5H601GA24
5H601GA36
5H601GC05
5H601GC12
5H601KK08
5H601KK12
5H601KK18
5H601KK21
5H601KK22
5H601KK25
(57)【要約】
【課題】電動機(20)において、ロータの軸方向の振動を低減する。
【解決手段】電動機(20)は、回転軸心まわりに回転自在に構成されたロータ(31)、及び、当該ロータ(31)と径方向に対向して配置されたステータ(21)を備える。ロータ(31)の軸方向に関する振動を低減する質量体ダンパーを備え、質量体ダンパーは、質量体(61,66)と、当該質量体(61,66)をロータ(31)の軸方向に振動可能に支持する支持部(62,68)とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸心まわりに回転自在に構成されたロータ(31)、及び、当該ロータ(31)と径方向に対向して配置されたステータ(21)を備える電動機(20)において、
前記ロータ(31)の軸方向に関する振動を低減する質量体ダンパーを備え、
前記質量体ダンパーは、質量体(61,66)と、当該質量体(61,66)を前記ロータ(31)の軸方向に振動可能に支持する支持部(62,68)とを備える電動機(20)。
【請求項2】
請求項1において、
前記ロータ(31)は、磁性体を含んだロータコア(32)を備え、
前記ステータ(21)は、磁性体を含んだステータコア(22)を備え、
前記ロータコア(32)の軸方向中心と、前記ステータコア(22)の軸方向中心とは、軸方向にずれている電動機(20)。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記ロータ(31)は、軸方向に積層された複数のコア部材(32a,32b,32c)を含み、
前記質量体(61,66)は、前記コア部材(32a,32b,32c)の一部からなる電動機(20)。
【請求項4】
請求項3において、
前記質量体(61,66)は、前記ロータ(31)の径方向又は周方向に延びる支持部(62,68)により支持され、
前記支持部(62,68)が伸びる方向を第1方向としたとき、
前記第1方向の単位長さあたりの前記質量体(61,66)の質量は、前記第1方向の単位長さあたりの前記支持部(62,68)の質量よりも大きい電動機(20)。
【請求項5】
請求項3において
前記質量体(61,66)は、前記ロータ(31)の径方向又は周方向に互いにずれることができるように積層された複数の前記コア部材(32a,32b,32c)を含む電動機(20)。
【請求項6】
請求項1において、
前記ロータ(31)は、軸方向に積層された複数のコア部材(32a,32b,32c)を含み、
前記質量体(61,66)は、前記コア部材(32a,32b,32c)とは別体として設けられている電動機(20)。
【請求項7】
請求項1において、
前記質量体(61,66)と、前記支持部(62,68)とは、軸方向に並ぶ配置である電動機(20)。
【請求項8】
請求項7において
前記ロータ(31)は、磁性体を含んだロータコア(32)を備え、
前記支持部(62,68)は、前記ロータコア(32)よりも柔軟な素材からなり且つ前記ロータコア(32)の軸方向外側に配置され、
前記質量体(61,66)は、軸方向において、前記支持部(62,68)に対して前記ロータコア(32)と反対側に配置されている電動機(20)。
【請求項9】
請求項1において、
前記ロータ(31)は、軸方向の端部に端板(60,60a)を備え、
前記質量体(61,66)は、前記端板(60,60a)の一部からなること電動機(20)。
【請求項10】
請求項1において、
前記ロータ(31)は、軸方向の端部に端板(60,60a)を備え、
前記支持部(62,68)は、前記端板(60,60a)の一部からなることを特徴とする電動機(20)。
【請求項11】
請求項1の電動機(20)を備える圧縮機(10)。
【請求項12】
請求項11の圧縮機(10)を備える冷凍装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置等の様々な分野において、電動機が用いられている。電動機は振動源となりうるので、振動を低減するための技術が研究されている。例えば特許文献1の電動機では、ロータの端面がステータの端面よりも上方に突出するように配置されている。この電動機では、ロータの軸方向の中心の高さ位置がステータの軸方向の中心の高さ位置よりも上方へずれているため、ロータはマグネットプルフォースの作用によって下方へ付勢される。これにより、電動機の下方に設けられる圧縮機構の上下振動が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動機に使用する磁石としては磁力の強いネオジム磁石が有用である。しかし、ネオジム磁石はレアアースを含むので、レアアース市況の影響による高コスト化等のリスクがある。そこで、ネオジム磁石からフェライト磁石に代えることに需要がある。
【0005】
しかし、フェライト磁石の磁力はネオジム磁石に比べて弱く、上記のプルフォースによる上下振動抑制の効果は必ずしも十分ではない。ロータコアの位置を更にずらすことでプルフォースを大きくすることは可能であるが、電動機としての性能低下、軸のたわみによる振れが発生することによる騒音及び振動の増大等が起こりうる。
【0006】
本開示の目的は、電動機において、ロータの軸方向の振動を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、電動機(20)を対象とする。電動機(20)は、回転軸心まわりに回転自在に構成されたロータ(31)、及び、当該ロータ(31)と径方向に対向して配置されたステータ(21)を備える。ロータ(31)の軸方向に関する振動を低減する質量体ダンパーを備え、質量体ダンパーは、質量体(61,66)と、当該質量体(61,66)をロータ(31)の軸方向に振動可能に支持する支持部(62,68)とを備える。
【0008】
第1の態様では、質量体ダンパーを備えることにより、軸方向の振動を低減することができる。
【0009】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、ロータ(31)は、磁性体を含んだロータコア(32)を備え、ステータ(21)は、磁性体を含んだステータコア(22)を備え、ロータコア(32)の軸方向中心と、前記ステータコア(22)の軸方向中心とは、軸方向にずれている。
【0010】
第2の態様では、ロータコア(32)とステータコア(22)との軸方向のずれにより、ロータ(31)に対してずれを縮小する方向に付勢する力(プルフォース)を働かせることができる。
【0011】
本開示の第3の態様は、第1又は第2の態様において、ロータ(31)は、軸方向に積層された複数のコア部材(32a,32b,32c)を含み、質量体(61,66)は、コア部材(32a,32b,32c)の一部からなるものである。
【0012】
第3の態様では、コア部材(32a,32b,32c)を利用して質量体ダンパーが構成される。
【0013】
本開示の第4の態様は、第3の態様において、質量体(61,66)は、ロータ(31)の径方向又は周方向に延びる支持部(62,68)により支持され、支持部(62,68)が伸びる方向を第1方向としたとき、第1方向の単位長さあたりの質量体(61,66)の質量は、第1方向の単位長さあたりの支持部(62,68)の質量よりも大きい。
【0014】
第4の態様では、単位長さあたりの質量が異なることにより、支持部(62,68)とそれに支持された質量体(61,66)とが効果的に質量体ダンパーとして機能する。
【0015】
本開示の第5の態様は、第3の態様において、質量体(61,66)は、ロータ(31)の径方向又は周方向に互いにずれることができるように積層された複数のコア部材(32a,32b,32c)を含む。
【0016】
第5の態様では、質量体(61,66)が振動するとき、コア部材(32a,32b,32c)同士がずれて擦れ合うことにより摩擦熱を発生させる。この結果、振動の運動エネルギーが熱エネルギーに変換され、効果的に振動が減衰する。
【0017】
本開示の第6の態様は、第1の態様において、ロータ(31)は、軸方向に積層された複数のコア部材(32a,32b,32c)を含み、質量体(61,66)は、コア部材(32a,32b,32c)とは別体として設けられている。
【0018】
第6の態様では、コア部材(32a,32b,32c)とは別に質量体(61,66)を構成できる。
【0019】
本開示の第7の態様は、第1の態様において、質量体(61,66)と、支持部(62,68)とは、軸方向に並ぶ配置となったものである。
【0020】
第7の態様では、軸方向に質量体(61,66)と、支持部(62,68)とが並んだ質量体ダンパーを構成することができる。
【0021】
本開示の第8の態様は、第7の態様において、ロータ(31)は、磁性体を含んだロータコア(32)を備え、支持部(62,68)は、ロータコア(32)よりも柔軟な素材からなり且つロータコア(32)の軸方向外側に配置され、質量体(61,66)は、軸方向において、支持部(62,68)に対してロータコア(32)と反対側に配置されたものである。
【0022】
第8の態様では、支持部(62,68)の柔軟性を利用して質量体ダンパーを構成できる。
【0023】
本開示の第9の態様は、第1の態様において、ロータ(31)は、軸方向の端部に端板(60,60a)を備え、質量体(61,66)は、端板(60,60a)の一部からなるものである。
【0024】
本開示の第10の態様は、第1の態様において、ロータ(31)は、軸方向の端部に端板(60,60a)を備え、支持部(62,68)は、端板(60,60a)の一部からなるものである。
【0025】
第9及び第10の態様では、質量体ダンパーを構成する質量体(61,66)及び/又は支持部(62,68)として、端板(60,60a)の一部を利用できる。
【0026】
本開示の第11の態様は、第1の態様の電動機(20)を備える圧縮機(10)である。
【0027】
第11の態様では、本開示の電動機(20)を備える圧縮機(10)を実現できる。
【0028】
本開示の第12の態様は、第10の態様の圧縮機(10)を備える冷凍装置(1)。
【0029】
第12の態様では、本開示の圧縮機(10)を備える冷凍装置(1)を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、実施形態に係る冷凍装置の概略の構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る圧縮機における軸方向に平行な断面に相当する縦断面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の電動機におけるロータの縦断面図である。
【
図5】
図5は、
図5は、ロータを構成するコア部材の軸方向に垂直な断面に相当する横断面図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態におけるロータの他の構成例を示す縦断面図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態におけるロータの他の構成例を示す縦断面図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態におけるロータの他の構成例を示す縦断面図である。
【
図10】
図10は、支持部及び質量体部における単位長さあたりの質量に関して示す図である。
【
図11】
図11は、質量体を構成するコア部材同士が擦れ合うことについて示す縦断面図である。
【
図12】
図12は、支持部及び質量体部を有するコア部材の他の例を示す横断面図である。
【
図13】
図13は、支持部及び質量体部を有するコア部材の他の例を示す横断面図である。
【
図14】
図14は、支持部による質量体部の保持方法を例示する平面図である。
【
図15】
図15は、支持部による質量体部の保持方法を例示する側面図である。
【
図16】
図16は、第2の実施形態の電動機におけるロータの構成例を示す縦断面図である。
【
図17】
図17は、第2の実施形態におけるロータの他の構成例を示す縦断面図である。
【
図18】
図18は、第2の実施形態におけるロータの他の構成例を示す縦断面図である。
【
図19】
図19は、第2の実施形態におけるロータの他の構成例を示す縦断面図である。
【
図20】
図20は、第3の実施形態の電動機におけるロータの構成例を示す縦断面図である。
【
図21】
図21は、第3の実施形態におけるロータの他の構成例を示す縦断面図である。
【
図22】
図22は、第3の実施形態におけるロータの他の構成例を示す縦断面図である。
【
図23】
図23は、従来の回転電気機械の一例の縦断面を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら複数の構成例を挙げて詳細に説明する。尚、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表す場合がある。
【0032】
本開示の圧縮機(10)は、冷凍装置(1)に設けられる。
【0033】
(1)冷凍装置の概要
図1に示す冷凍装置(1)は、本開示の圧縮機(10)を備える。冷凍装置(1)は、冷媒が充填された冷媒回路(R)を有する。冷媒回路(R)は、圧縮機(10)、放熱器(2)、
減圧機構(3)、および蒸発器(4)を有する。減圧機構(3)は、膨張弁である。冷媒回
路(R)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。
【0034】
冷凍サイクルでは、圧縮機(10)によって圧縮された冷媒が、放熱器(2)において空
気に放熱する。放熱した冷媒は、減圧機構(3)によって減圧され、蒸発器(4)において蒸発する。蒸発した冷媒は、圧縮機(10)に吸入される。
【0035】
冷凍装置(1)は、空気調和装置である。空気調和装置は、冷房専用機、暖房専用機であっても良い。また、冷房と暖房とを切り換える空気調和装置であってもよい。この場合、空気調和装置は、冷媒の循環方向を切り換える切換機構(例えば四方切換弁)を有する。冷凍装置(1)は、給湯器、チラーユニット、庫内の空気を冷却する冷却装置などであってもよい。
【0036】
冷却装置は、冷蔵庫、冷凍庫、コンテナなどの内部の空気を冷却する。膨張機構は、電子膨張弁、感温式膨張弁、膨張機、又はキャピラリーチューブで構成される。
【0037】
(2)圧縮機
図2に示すように、本実施形態の圧縮機(10)は、ロータリ式圧縮機である。圧縮機(10)は、ケーシング(11)、電動機(20)、回転軸(40)、及び圧縮機構(50)を有する。また、回転軸(40)は鉛直方向に延びるように配置されている。
【0038】
以下の説明において、「上下」の方向は回転軸(40)の軸方向であり、「左右」は軸方向に直交する方向である。左右方向は、電動機(20)(又はケーシング(11))の径方向でもある(
図2の矢印参照)。
【0039】
ケーシング(11)は、金属材料で構成される。ケーシング(11)は、胴体(12)、底部(13)及び頂部(14)を有する。胴体(12)は、上下方向に延びる筒状の部材である。胴体(12)の筒軸方向は鉛直である。底部(13)は、胴体(12)の下端を閉塞し、頂部(14)は、胴体(12)の上端を閉塞する。
【0040】
ケーシング(11)は、電動機(20)、回転軸(40)、及び圧縮機構(50)を収容する。上から順に、電動機(20)、回転軸(40)及び圧縮機構(50)がケーシング(11)内に配置される。
【0041】
(2-2)電動機
図2及び
図3に示すように、電動機(20)は、ステータ(21)及びロータ(31)を有する。電動機(20)は、インバータ装置によって回転数が制御される。言い換えると、圧縮機(10)は、回転数が可変なインバータ式である。電動機(20)は、回転電気機械(20)の一例である。
【0042】
ステータ(21)は、胴体(12)の内周面に固定される。ステータ(21)は、ステータコア(22)を有する。ステータコア(22)は、ロータ(31)の径方向外側に配置される。ステータコア(22)は、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されることで形成される。ステータコア(22)は、環状のバックヨーク(24)及びティース(25)を有する。バックヨーク(24)の外周面には、6つのコアカット(26)が形成される。コアカット(26)は、ステータコア(22)の軸方向に延びる溝である。ティース(25)は、バックヨーク(24)の内周面から径方向内方に延びる。本実施形態では、6つのティース(25)が、周方向に等ピッチ(具体的には60°ピッチ)で配置される。ステータ(21)は、コイル(23)を有する。コイル(23)は、ティース(25)に巻回される(
図2参照)。
【0043】
図3に示すように、ロータ(31)は、ロータコア(32)、複数の永久磁石(33)を有する。ロータコア(32)は、回転軸(O)を中心に回転する。ロータコア(32)は、ステータ(21)の内側に配置される。以下の説明において、回転軸(O)が延びる方向を単に軸方向と呼ぶ場合がある。また、周方向は、軸方向から見て、回転軸(O)を中心とする円周方向である。更に、径方向は、軸方向に垂直な方向である。
【0044】
複数の永久磁石(33)は、ロータコア(32)の内部に配置される。本実施形態の永久磁石(33)は、フェライト磁石である。永久磁石(33)は、ロータコア(32)に形成されるスロット(34)の内部に配置される。スロット(34)は、ロータコア(32)を軸方向に貫通するように形成される。複数のスロット(34)は、軸方向から見て、回転軸(O)の中
心から径方向外方に向かって放射状に延びるように形成される。具体的には、上から見てV字状に形成された6つのスロット(34)が、ロータ(31)の周方向に等間隔に配置される。尚、
図3において、ロータ(31)は概略を示しており、詳しくは後に説明する。
【0045】
永久磁石(33)は、6つのスロット(34)のそれぞれに設けられる。即ち、本実施形態のロータ(31)は6つの永久磁石(33)を有する。6つの永久磁石(33)は、ロータコア(32)の周方向に並ぶと共に、ロータコア(32)を軸方向に貫通するように設けられる。軸方向に直交する各永久磁石(33)の断面形状はいずれも同一である。尚、永久磁石(33)について、それぞれ直線部と2つの弧状部とに分割しても良い。その場合、永久磁石の数としては18個となる。
【0046】
軸方向から見て、永久磁石(33)は、スロット(34)内に嵌るようにV字状に構成される。具体的に、永久磁石(33)は、軸方向から見て、V字形状の第1磁石部(33a)と、
第1磁石部(33a)の端部からそれぞれ径方向外方に延びる第2磁石部(33b)及び第3磁石部(33c)とを有する。軸方向から見て、第2磁石部(33b)及び第3磁石部(33c)は
、ロータ(31)の外周端近傍まで直線状に延びる。第2磁石部(33b)と第3磁石部(33c)とはロータ(31)の周方向に隣り合っている。
【0047】
(2-3)回転軸
図2に示すように、回転軸(40)はロータ(31)の回転軸(O)中心に固定される。回転軸(40)は、電動機(20)から下方に向かって延びる。回転軸(40)は、電動機(20)によって回転駆動される。回転軸(40)は、下方に設けられる軸受け(41)によって回転可能に支持される。
【0048】
(2-4)圧縮機構
圧縮機構(50)は、シリンダ(51)と、シリンダ(51)の内部に設けられるピストン(52)とを有する。シリンダ(51)の内周面とピストン(52)の外周面との間にシリンダ室(53)が形成される。シリンダ室(53)では、回転軸(40)によって駆動されるピストン(52)により冷媒を圧縮する。
【0049】
(2-5)吸入管および吐出管
圧縮機(10)は、吸入管(15)および吐出管(16)を有する。吸入管(15)は、胴体(12)を径方向に貫通し、シリンダ室(53)と連通する。冷媒回路(1a)の低圧冷媒は、吸入管(15)を介してシリンダ室(53)に吸い込まれる。吐出管(16)は、頂部(14)を軸方向に貫通し、ケーシング(11)の内部空間と連通する。圧縮機構(50)で圧縮された冷媒は、電動機(20)のコアカット(26)などを流れた後、吐出管(16)より冷媒回路(1a)へ送られる。
【0050】
(3)低磁力の永久磁石を有する電動機の課題
電動機の製造コスト等の観点から、比較的低価格のフェライト磁石を電動機に適用することに利点がある。しかし、フェライト磁石の磁力は比較的低いため、電動機が所定の性能を発揮するためには、ロータコアに設けられるフェライト磁石の表面積を大きくする必要がある。例えば、ロータの軸方向の厚さを大きくすることで、フェライト磁石の表面積を大きくすることができる。
【0051】
ここで、本実施形態のようなロータリ式圧縮機において、電動機の駆動により回転軸が上下に振動することで発生する圧縮機構からの異常音を抑えることが求められる。このことに対し、回転軸を下方へ付勢すれば、下部の軸受けに対してスラスト力が比較的強く働いて回転軸の上下振動が抑えられる。このような、回転軸を下方へ付勢する方法としては、ロータとステータとの間に働くプルフォースの利用が考えられる。即ち、ロータコアをステータコアよりも軸方向上側に突出するように配置することで、ロータコアを下方へ引っ張るプルフォースが働く。
【0052】
具体的に説明すると、
図23に示すように、ロータコア及びステータコアの軸方向の長さが同一である場合、ロータコアの軸方向の中心の高さ位置(以下、マグネットセンタ(MC)という)をステータコアのマグネットセンタよりも上方向にずらすことで、ステータコアとロータコアとの間の空間であるエアギャップにおいて、ステータコアとロータコアとに軸方向の電磁力が発生する。これをプルフォースという。このプルフォースは、ロータコアが下方へ付勢されるように働くため(
図23中の矢印参照)、電動機に接続される回転軸は、下方に配置される軸受けに押さえつけられる。その結果、回転軸の上下振動が抑制される。
【0053】
しかし、
図24に示すように、永久磁石の表面積を大きくするためにロータコアの軸方向の長さを大きくした場合、ロータコアの下端はステータコアの下端よりも下方に突出していると、ステータコアの下端部分とロータコアの下端部分との間ではロータコアを上方へ付勢するプルフォースが働く。すると、ロータコアとステータコアとのマグネットセンタの位置が互いにずれていたとしても、ステータコアの上端部分とロータコアの上端部分との間で働くプルフォース(ロータを下方へ付勢する力)は、ステータコアの下端部分とロータコアの下端部分との間で働くプルフォース(ロータを上方へ付勢する力)により低減されてしまうため(
図24中の矢印参照)、回転軸の上下振動の抑制効果が低減する。
【0054】
このことに対して、ステータコアのマグネットセンタに対してロータコアのマグネットセンタを上方へ大きくずらすことで、ロータを下向きに付勢するプルフォースを十分得ることができる。しかし、ステータコアがロータコアに対向していない面積も大きくなると、ステータコアとロータコアとの間の磁束密度が低下し、電動機の性能(特にトルク性能)が低減するおそれがある。また、ステータコアとロータコアとのマグネットセンタと大きく離した場合、電動機全体の軸方向の長さが長くなって電動機が大型化してしまう。
【0055】
以上に対し、電動機(20)に質量体ダンパーを設けることにより、回転軸の上下振動を抑制することができる。これについて以下に説明する。
【0056】
《第1の実施形態》
第1の実施形態について説明する。本実施形態の電動機(20)では、ロータ(31)に質量体ダンパーが備えられる。
【0057】
(構成例1)
図4は、回転軸(0)を含む断面による本実施形態のロータ(31)の断面図であり、
図3におけるA-A線に対応する。ロータ(31)におけるロータコアは、積層された第1のコア部材(32a)及び第2のコア部材(32b)を含み、その両端には端板(60)が配置されている。ロータコア(32)のスロットには永久磁石(33)が挿入されている。
【0058】
第1のコア部材(32a)及び第2のコア部材(32b)と、後述する第3のコア部材(32c)とについて、回転軸に垂直な断面図を
図5に示す。但し、周方向について、スロット(34)を1つ含む範囲だけを示している。それぞれのA-A線は、
図3におけるA-A線に対応する。
【0059】
コア部材(32a,32b,32c)は、軟磁性材料が好ましく、例えば電磁鋼板、アモルファス合金、ナノ結晶材料、圧粉磁心等を用いることができる。
【0060】
第3のコア部材(32c)は、U字状のスロット(34)を備えている。これに対し、第1のコア部材(32a)は、スロット(34)の内側部分において切り込み(69)が入れられ、回転軸(0)側(
図5において下方)から径方向外側に延びる支持部(62)と、支持部(62)のみにより支持される質量体部(61)とが設けられている。また、第2のコア部材(32b)は、スロット(34)の内側部分が概ね切り抜かれて、空隙(63)が設けられている。
【0061】
図4に示すように、本実施形態のロータコア(32)は主に第1のコア部材(32a)が積層され、両端に小数(少なくとも1枚ずつ)の第2のコア部材(32b)が配置された構成である。
【0062】
第1のコア部材(32a)において、質量体部(61)は細長い形状の支持部(62)によって支持されている。従って、ロータ(31)が軸方向(
図5では紙面に垂直な方向)に振動すると、主に支持部(62)の弾性変形により、ロータ(31)全体の振動とは別に質量体部(61)が軸方向に振動する。この結果、質量体部(61)及び支持部(62)が質量体ダンパーとして機能し、ロータ(31)の振動を抑制する。積層された第1のコア部材(32a)同士が固定されていなければ、それぞれの支持部(62)及び質量体部(61)が個別に振動し、質量体ダンパーとして機能する。
【0063】
このように、第1のコア部材(32a)が支持部(62)及び質量体部(61)を有することにより質量体ダンパーが構成され、ロータ(31)の軸方向の振動を抑制することができる。尚、空隙(63)を含む第2のコア部材(32b)が両端に配置されていることにより、質量体部(61)が軸方向に振動するための空間を確保している。
【0064】
(他の構成例)
ロータコア(32)に質量体ダンパー機能を備えるための構成は、
図4には限らない。
図4を構成例1として、以下に他の構成例を説明する。
【0065】
(構成例2)
図6は、構成例2のロータ(31)を示す。構成例2では、積層されたコア部材(32a,32b,32c)からなるロータコア(32)において、スロット(34)のみを有する第3のコア部材(32c)が中央に配置されている。その両側に、少なくとも1枚ずつの第2のコア部材(32b)に挟まれた第1のコア部材(32a)が積層されている(第2のコア部材(32b)の符号は1箇所のみ記載している)。従って、質量体ダンパーとしての機能を備えない第3のコア部材(32c)の両側に、質量体ダンパーとしての機能を備える第1のコア部材(32a)が配置されている。
【0066】
第1のコア部材(32a)において、質量体部(61)を構成するための切り込み(69)部分は、第1のコア部材(32a)の他の部分よりも透磁率が低い。このことから、電動機(20)の回転のためには、切り込み(69)及び空隙(63)を備えない第3のコア部材(32c)の方が寄与する。そこで、構成例2のように、第3のコア部材(32c)を含む構成とすると、電動機(20)の回転の性能を確保すると共に、質量体ダンパーによる軸方向の振動抑制効果を得るために効果的である。
【0067】
特に、
図24に示すようにロータ(31)がステータ(21)よりも長い構成の場合、ステータ(21)の上下に突出した部分のロータコア(32)は回転トルクに対する寄与が小さい。従って、この部分を利用して質量体ダンパーを構成することが好ましい。これにより電動機(20)の回転トルクに対する影響を抑制しながら、軸方向の振動を抑制できる。尚、電動機(20)の回転トルクに対する影響を抑制する観点からは、ステータ(21)よりも突出した部分のみに第1のコア部材(32a)を配置することが好ましい。しかし、振動を抑制する効果を高める観点からは、上下方向についてステータ(21)から突出しない範囲にも第1のコア部材(32a)が配置される構成とすることができる。
【0068】
(構成例3)
図7は、構成例3のロータ(31)を示す。構成例3では、積層されたコア部材(32a,32b)からなるロータコア(32)において、支持部(62)及び質量体部(61)を備える第1のコア部材(32a)が中央に配置されている。その両側に、空隙(63)を有する第3のコア部材(32c)が配置されている。更に、積層された第3のコア部材(32c)の空隙(63)により構成される空間に、第1のコア部材(32a)の質量体部(61)に積層するように独立質量体部(64)が設けられている。質量体部(61)及び独立質量体部(64)により、質量体(66)が構成されている。
【0069】
独立質量体部(64)について、
図9に示す。独立質量体部(64)は、質量体部(61)と同じ形状であり、第2のコア部材(32a)の空隙(63)に収まる。支持部(62)に相当する構成は無いので、独立質量体部(64)と第2のコア部材(32a)とは接続されていない。独立質量体部(64)は質量体部(61)上に複数が積層され、合わせて質量体(66)を構成する。
【0070】
この構成では、質量体(66)が第1のコア部材(32a)の支持部(62)により支持され、質量体ダンパーを構成する。これにより軸方向の振動を抑制することができる。
【0071】
ここで、中央に第1のコア部材(32a)が複数積層され、互いに固定されていないのであれば、両端の第1のコア部材(32a)に対して独立質量体部(64)が積層された状態となる。1つの質量体部(61)よりも、質量体(66)全体の質量の方が大きいので、同じ上下振動に対する支持部(62)の弾性変形は大きくなる。これにより、振動抑制の効果を大きくすることができる。
【0072】
また、積層される第1のコア部材(32a)について、互いに固定することもできる。この場合、複数の支持部(62)が全体として質量体(66)を支持することになる。この場合、単一の支持部(62)により質量体を支持する場合に比べて、同じ上限振動に対する弾性変形は小さくなる。しかし、独立質量体部(64)を含む大きな質量を支持するために、耐久性の観点からこのようにしても良い。
【0073】
(構成例4)
図8は、構成例4のロータ(31)を示す。構成例4では、中央にスロット(34)のみを有する第3のコア部材(32c)が配置され、その両側に、構成例3と類似した第1のコア部材(32a)及び独立質量体部(64)からなる構造が配置されている。つまり、第2のコア部材(32b)に挟まれた第1のコア部材(32a)が配置され、第1のコア部材(32a)の質量体部(61)上に独立質量体部(64)が積層されて質量体(66)となっている。
【0074】
この場合も、支持部(62)により支持された質量体(66)により、上下振動を抑制する効果が発揮される。また、構成例2において説明したのと同様に、中央付近にはスロット(34)のみを有する第3のコア部材(32c)が配置されるので、電動機(20)の回転トルクに対する影響は抑制されている。
【0075】
また、この構成でも、ロータ(31)におけるステータ(21)の上下に突出した部分を利用して質量体ダンパーを構成することで、回転トルクへの影響を抑制しながら振動抑制の効果を実現できる。
【0076】
尚、
図8において、2つの独立質量体部(64)は異なる厚さに図示している。これに関して、2つの独立質量体部(64)の形状、積層数、材料等は同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0077】
(質量体ダンパーについて)
図10に、支持部(62)及び質量体(66)を含む質量体ダンパーを模式的に示す。
図10の上下方向が軸方向であり、支持部(62)は回転軸(0)側から延びて先端側に質量体(66)が設けられている。
【0078】
支持部(62)が延びる方向を第1方向としたとき、第1方向の単位長さあたりの質量体(66)の質量(単位領域66aの質量)は、第1方向の単位長さあたりの支持部(62)の質量(単位領域62aの質量)よりも大きいことが好ましい。
【0079】
このように構成すると、ロータ(31)の上下振動により質量体(66)が振動しやすく、質量体ダンパーとしての機能が確実になる。
【0080】
図10の例では、支持部(62)及び質量体(66)の幅は共にWであって同じであるが、質量体(66)の厚さは支持部(62)の厚さTよりも大きい。これにより、質量体(66)の方が単位長さあたりの質量が大きくなっている。また、第1のコア部材(32a)の場合、支持部(62)と質量体部(61)とは同じ厚さであるが、質量体部(61)の方が幅は顕著に大きい。これにより、単位長さあたりの質量の違いが生じている。
【0081】
尚、支持部について、厚さT(軸方向の寸法)は、幅Wよりも小さいことが好ましい。これにより、支持部は周方向よりも軸方向に変形しやすくなり、軸方向の振動に対する質量体ダンパーが機能しやすくなる。
【0082】
また、
図11に、軸方向の断面として質量体(66)の構成例を示す。ここでは、第1のコア部材(32a)が3枚積層され、その両端の質量体部(61)に対し、独立質量体部(64)が2枚ずつ積層されている。ここで、第1のコア部材(32a)同士は固定されていない。従って、質量体(66)が振動するとき、第1のコア部材(32a)(支持部(62)及び質量体部(61))は互いにずれて擦れ合う。この摩擦により、振動の運動エネルギーの一部は熱エネルギーに変換され、このことによっても振動が減衰する。
【0083】
(質量体部を備えるコア部材の構成)
図12及び
図13に、コア部材の他の構成を例示する。いずれも、質量体部(61)及び支持部を備える点で第1のコア部材(32a)の変形例と言える。また、それぞれの質量体部(61)及び支持部を削除したものとして、第2のコア部材(32a)の変形例を考えることもできる。
【0084】
図12のコア部材(65a)は、
図5に示す第1のコア部材(32a)と類似するが、質量体部(61)が径方向外側において露出している点で相違する。つまり、第1のコア部材(32a)の場合、径方向外側に円弧状に細くコア部材(32a)が残されており、質量体部(61)はその内側に収まっている。これに対し、
図12のコア部材(65a)では、円弧状に残された部分は無いので、質量体部(61)の径方向外側の端部が円弧形状となって露出している。
【0085】
また、
図12のコア部材(65b)では、支持部(62)が径方向に対して斜めになっている。
【0086】
図13には、スロット(34)及び質量体部(61)の形状及び配置について例示する。
【0087】
コア部材(65c)では、2つの長方形状のスロット(34)が設けられ、その径方向外側に支持部(62)及び質量体部(61)が構成されている。2つのスロット(34)は、径方向外側に開く鈍角を成すように配置されている。
【0088】
コア部材(65d)では、1つの長方形状のスロットが径方向に直行する向きに設けられ、その径方向外側に支持部(62)及び質量体部(61)が構成されている。
【0089】
コア部材(65e)では、径方向について、これまでの例とはスロット(34)と質量体部(61)とが逆の配置である。つまり、1つの長方形状のスロットが径方向に直行する向きに設けられ、その径方向内側に支持部(62)及び質量体部(61)が構成されている。
【0090】
図12及び
図13に示す以上のような構成においても、質量体部(61)及び支持部(62)により質量体ダンパーを構成し、上下振動を抑制できる。また、
図13に示すコア部剤(65c,65d,65e)については、長方形のネオジム磁石を想定した場合にも適用でき、磁石の種類を問わない利点がある。
【0091】
図14には、支持部(62)及び質量体部(61)の配置について模式的に示す。
図14は、
図5等と同様に横断面図であり、縦方向が径方向且つ下方が回転軸(0)側であるものとする。
【0092】
Aの場合、支持部(62)の先端に、支持部(62)の伸びる方向に対して線対称の質量体部(61)が設けられている。また、質量体部(61)は、支持部(62)の両側に延びる部分を有する。これらの点で、Aは、
図5の第1のコア部材(32a)の場合に対応する。この構成は、限られた面積内で質量体部(61)の大きさを確保するために適している。
【0093】
Bの場合、支持部(62)の先端に、支持部(62)の伸びる方向に対して線対称の質量体部(61)が設けられている点ではAと同様である。但し、Bの質量体部(61)は、支持部(62)の両側に延びる部分を備えない。
【0094】
Cの場合、支持部(62)の先端に、支持部(62)の伸びる方向に対して非対称に質量体部(61)が設けられている。
【0095】
Dの場合、支持部(62)は質量体部(61)の横を回り込む形状であり、回転軸(0)とは反対側から質量体部(61)を支持している。
【0096】
このように、支持部(62)及び質量体部(61)は様々な形状を取ることができる。
【0097】
図15は、支持部(62)により独立質量体部(64)を支持する方法について示す。
図15は、
図4と同様に断面図である。また、
図14では縦方向が軸方向であり、右側が回転軸(0)側であるものとする。
【0098】
Eは、少なくとも1つの独立質量体部(64)の一方に積層されるように支持部(70)が設けられている。尚、ここでいう支持部(70)は、軸方向から見たときに独立質量体部(64)と同じ形状を有しても良い。これは、
図5の第1のコア部材(32a)における支持部(62)と質量体部(61)とを合わせた形状に相当する。また、支持部(70)は、独立質量体部(64)と同じ形状を備えず、独立質量体部(64)よりも狭い幅を有していても良い。
【0099】
Fの場合、支持部(70)の両側に独立質量体部(64)が積層されている。
【0100】
Gの場合、支持部(70)の先端に、独立質量体部(64)が取り付けられ、支持部(70)と独立質量体部(64)とは積層されていない。
【0101】
Hの場合、支持部(70)は径方向に対して斜めに延び、回転軸(0)から遠い側において独立質量体部(64)の上面に接続されている。
【0102】
支持部(70)により質量体(ここでは独立質量体部(64))を支持する方法として、このような例を挙げることができる。
【0103】
《第2の実施形態》
第2の実施形態について、
図16~
図19を参照して説明する。本実施形態の電動機(20)では、端板(60)を支持部として利用した質量体ダンパーが備えられる。第1の実施形態との相違はロータ(31)の構成であるから、以下ではロータ(31)について構成例を参照して説明する。
【0104】
(構成例5)
図16は、構成例5を説明する図であり、回転軸(0)を含む断面による本実施形態のロータ(31)の断面図である。コア部材(32b,32c)が積層され、その両端に端板(60,60a)が設けられ、スロットに永久磁石(33)が挿入されている点では、第1の実施形態のロータ(31)と同様である。コア部材(32b,32c)としては、スロット(34)のみを有する第3のコア部材(32c)が積層され、その一方の端に、空隙(63)を有する第2のコア部材(32b)が少なくとも1枚配置された構成である。
【0105】
第2のコア部材(32b)が配置された側(図の上方)の端板(60a)には、軸方向の外側(コア部材(32b)と反対側)に固定された質量体(66)を備える。当該質量体(66)は、1例としては、
図9に示す構成であっても良い。また、端板(60a)には、例えば第1のコア部材(32a)における切り込み(69)と同様の切り込みにより、支持部(62)及び質量体部(61)と同様の形状が設けられている(スロット(34)は設けられていない)。質量体(66)は、質量体部(61)に該当する部分に固定されている。
【0106】
これにより、端板(60a)及び質量体(66)により質量体ダンパーが構成される。質量体(66)の反対側には空隙(63)を有する第2のコア部材(32b)が配置されているので、質量体(66)は軸方向に振動することができる。
【0107】
このように構成された質量体ダンパーによっても、ロータ(31)が軸方向に振動した際、その振動を抑制することができる。
【0108】
尚、端板(60a)及び質量体(66)については様々な形態を取ることでき、
図12~
図15により説明したものと同様であってもよい。
【0109】
(構成例6)
図17は、構成例6を説明する図である。構成例6では、端板(60a)及びその軸方向外側に固定された質量体(66)からなる質量体ダンパーが、ロータ(31)の両端に設けられている。このために、積層された第3のコア部材(32c)の両側に空隙(63)を有する第2のコア部材(32b)が配置され、且つ、端板(60a)はいずれも切り込みを有するものとなっている。
【0110】
以上の構成により、ロータ(31)の上下に質量体ダンパーを備えることができ、軸方向の振動を抑制できる。
【0111】
(構成例7)
図18は、構成例7を説明する図である。構成例7では、端板(60a)及び質量体(66)を用いた質量体ダンパーが、端板(60a)よりも軸方向内側に設けられている。
【0112】
つまり、構成例5と同様に、第3のコア部材(32c)が積層され、その一端に第2のコア部材(32b)が配置されている。第2のコア部材(32b)の側には、切り込みを有する端板(60a)が設けられ、当該端板(60a)に質量体(66)が固定されている。但し、請求項5とは異なり、質量体(66)は軸方向内側に設けられ、第2のコア部材(32b)の空隙(63)に収容されている。端板(60a)及び質量体(66)の構成については、構成例5と同様であって良い。
【0113】
このように構成された質量体ダンパーによっても、ロータ(31)が軸方向に振動した際、その振動を抑制することができる。また、この構成では、第1の実施形態の構成例2において説明したように、ロータコア(32)において回転トルクに寄与しない(又は寄与が小さい)両端部分を利用して質量体ダンパーを構成することができる。
【0114】
(構成例8)
図18は、構成例8を説明する図である。構成例8では、構成例7と同様の質量体ダンパーを、ロータコア(32)の両端に設けている。つまり、積層された第3のコア部材(32c)の両側に第2のコア部材(32b)が配置され、更に外側には切り込みを有する端板(60a)が配置されている。両端の端板(60a)に対して、その軸方向内側に質量体(66)が固定されて、それぞれ質量体ダンパーが構成されている。
【0115】
以上の構成により、ロータ(31)の上下に質量体ダンパーを備えることができ、軸方向の振動を抑制できる。
【0116】
尚、第2の実施形態において、質量体(66)を設けることを説明したが、これは必須ではない。端板(60a)に第1のコア部材(32a)と同様の支持部(62)及び質量体部(61)を形成することで、当該支持部(62)及び質量体部(61)により質量体ダンパーを構成し、これにより上下振動を抑制できる。但し、質量体の質量を大きくするためには、質量体(66)を設けることが有用である。
【0117】
《第3の実施形態》
第3の実施形態について、
図20~
図22を参照して説明する。本実施形態の電動機(20)では、端板(60)の外側に、柔軟な素材からなる支持部(68)を介して質量体(66)が設けられ、質量体ダンパーが構成されている。第1の実施形態との相違はロータ(31)の構成であるから、以下ではロータ(31)について構成例を参照して説明する。
【0118】
(構成例9)
図20は、構成例9を説明する図であり、回転軸(0)を含む断面による本実施形態のロータ(31)の断面図である。本実施形態では、ロータコア(32)はスロット(34)のみを有する第3のコア部材(32c)が積層された構成である。スロット(34)には永久磁石(33)が挿入され、両端には端板(60)が配置されている。
【0119】
端板(60)上には、ロータコア(32)の外周側において、支持部(68)を介して質量体(66)が設けられている。従って、支持部(68)と質量体(66)とは軸方向に並ぶ配置である。また、支持部(68)は、ロータコア(32)を構成するコア部材(32a)及び端板(60)よりも柔軟な材料からなる。柔軟な材料とは、ヤング率が低い材料であり、例えば樹脂、ゴム等である。質量体(66)については、コア部材(32a,32b,32c)と同じ電磁鋼板等の材料からなっていても持て良いし、ステンレス、真鍮等の他の材料でも良い。
【0120】
このような支持部(68)及び質量体(66)によっても、質量体ダンパーを構成することができ、これによりロータ(31)の上限振動を抑制することができる。
【0121】
(構成例10)
図21は、構成例10を説明する図である。構成例10は、端板(60)の全体に亘って支持部(68)及び質量体(66)が設けられて質量体ダンパーを構成している他は、構成例9と同様である。
【0122】
上下振動を抑制する効果は、支持部(68)及び質量体(66)の材料、形状、大きさ、質量等によって異なる。従って、所望の性能によって、構成例9、10、又は更に異なる支持部(68)及び質量体(66)の配置を選択することができる。
【0123】
(構成例11)
図22は、構成例11を説明する図である。構成例11では、支持部(68)は端板(60)と質量体(66)との間に介在すると共に、質量体(66)の全面を覆っている。この場合にも、支持部(68)及び質量体(66)により質量体ダンパーが構成され、上下振動を抑制することができる。
【0124】
(質量体の材料について)
第1のコア部材(32a)の一部である質量体部(61)は、当然ながら第1のコア部材(32a)と同じ材料からなり、例えば電磁鋼板、アモルファス合金、ナノ結晶材料、圧粉磁心等からなる。同様に、第2の実施形態において端板(60a)の一部を質量体として利用する場合、端板(60a)の材料であるステンレス鋼等からなる。
【0125】
第1のコア部材(32a)又は端板(60a)に対して別体の質量体(66)については、第1のコア部材(32a)又は端板(60a)と同じ材料を用いても良いが、他の材料でも良い。例えば、真鍮、高マンガン鋼等の金属材料、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、LCP(液晶ポリマー)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の樹脂材料を用いても良い。
【0126】
板状の材料を積層して質量体(66)とする際、及び、質量体(66)を支持部に固定する際、には、様々な工程方法を用いることができる。金属材料については、カシメ加工、接着、溶接、リベット又はボルトによる締結、樹脂モールドによる固定等が可能である。樹脂材料については、接着又はモールドが好ましい。
【0127】
以上、実施形態及び構成例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0128】
以上説明したように、本は、電動機について有用である。
【符号の説明】
【0129】
1 冷凍装置
10 圧縮機
20 電動機
21 ステータ
22 ステータコア
31 ロータ
32 ロータコア
32a,32b,32c コア部材
60,60a 端板
61,66 質量体
62,68 支持部