特開 2024-139541 ジョークラッシャ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024139541

(43)【公開日】2024-10-09

(54)【発明の名称】ジョークラッシャ

(51)【国際特許分類】

   B02C 1/02 20060101AFI20241002BHJP

   B02C 1/04 20060101ALI20241002BHJP

   E02F 3/36 20060101ALI20241002BHJP

【ＦＩ】

B02C1/02 B

B02C1/04

E02F3/36 A

【審査請求】未請求

【請求項の数】6

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023050526

(22)【出願日】2023-03-27

(71)【出願人】

【識別番号】593003949

【氏名又は名称】ウエダ産業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100157428

【弁理士】

【氏名又は名称】大池 聞平

(72)【発明者】

【氏名】植田 敏治

(72)【発明者】

【氏名】吉川 忠男

【テーマコード（参考）】

2D012

4D063

【Ｆターム（参考）】

2D012DA02

4D063AA09

4D063GA07

4D063GB02

4D063GD11

(57)【要約】

【課題】アップスラストタイプのジョークラッシャについて、ジョー動歯の動きを考慮して、ジョー固定歯とジョー動歯により形成される噛み角を拡大したジョークラッシャを実現する。
【解決手段】ジョークラッシャは、ジョー固定歯２０と、ジョー固定歯２０に対面するように配置されたジョー動歯３０とを備え、ジョー動歯３０の下部がアップスラストタイプの反力受け機構によって支持されており、ジョー固定歯２０とジョー動歯３０により形成される破砕室２５を側方から見た場合に、破砕室２５の入口が最も広がった状態で、所定寸法の球体Ｂを挟む時に、球体Ｂとジョー固定歯２０との接点における球体Ｂの第１接線Ｔ１と、球体Ｂとジョー動歯３０との接点における球体Ｂの第２接線Ｔ２とのなす角度θ１は、３９°以上４５°以下である。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

ジョー固定歯と、前記ジョー固定歯に対面するように配置されたジョー動歯とを備え、
前記ジョー動歯の下部がアップスラストタイプの反力受け機構によって支持されたジョークラッシャであって、
前記ジョー固定歯と前記ジョー動歯により形成される破砕室の側方から見た場合に、前記破砕室の入口が最も広がった状態で、所定寸法の球体を挟む時に、前記球体と前記ジョー固定歯との接点における前記球体の第１接線と、前記球体と前記ジョー動歯との接点における前記球体の第２接線とのなす角度は、３９°以上４５°以下である、ジョークラッシャ。

【請求項2】

当該ジョークラッシャは、バケットを有するバケット型のジョークラッシャであって、
前記バケットの一対の側板にそれぞれ固定された一対の固定軸受と、
前記ジョー動歯が取り付けられ、且つ、前記一対の固定軸受に回転自在に支持されて自らの回転に伴って前記ジョー動歯を揺動させる偏心主軸とを備え、
前記側板には、前記偏心主軸を挿通させる挿通孔と、前記偏心主軸を前記挿通孔へ導入するための切り欠きと、前記切り欠きを塞ぐように前記側板に取り付けられる封鎖部とが設けられている、請求項１に記載のジョークラッシャ。

【請求項3】

当該ジョークラッシャは、バケットを有するバケット型のジョークラッシャであって、
前記バケットの一対の側板にそれぞれ固定された一対の固定軸受と、
前記ジョー動歯が取り付けられ、且つ、前記一対の固定軸受に回転自在に支持されて自らの回転に伴って前記ジョー動歯を揺動させる偏心主軸とを備え、
前記固定軸受のハウジングは、軸受本体を収容する筒状部と、前記筒状部の外周面から前記偏心主軸の径方向外側に延出するフランジと、前記フランジの先端側から前記偏心主軸の軸方向に突出する円弧状凸部とを有し、
前記側板には、前記円弧状凸部が嵌合する円弧状凹部が形成された保持部材が設けられている、請求項１に記載のジョークラッシャ。

【請求項4】

前記偏心主軸における中央部側を内側、各端部側を外側とした場合に、
前記固定軸受は、外側ほど外径が窄まる外周面を有するアダプタースリーブと、外側ほど内径が窄まる内周面を有する軸受本体と、前記アダプタースリーブを外側に移動させるためのナットとを有し、
前記偏心主軸から前記固定軸受を取り外す際に、前記アダプタースリーブを内側に叩き出すことが可能に構成されている、請求項３に記載のジョークラッシャ。

【請求項5】

前記ジョー動歯の背面側に固定されて、トッグルプレートの一端部を受けるシート面を有する可動側トッグルシートと、
前記トッグルプレートの他端部を受けるシート面を有する固定側トッグルシートをさらに備え、
前記ジョー動歯の背面側には、前記可動側トッグルシートが複数設けられ、
前記複数の可動側トッグルシートは、各シート面から、前記固定側トッグルシートのシート面までの距離が互いに異なる、請求項１に記載のジョークラッシャ。

【請求項6】

前記バケットの入口側には、被破砕物の入口幅が前記ジョー動歯の幅よりも大きいホッパー部が設けられている、請求項１に記載のジョークラッシャ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、ジョー固定歯とジョー動歯を備えたジョークラッシャ等に関する。

【背景技術】

【0002】

従来から、石材などの破砕に使用されるジョークラッシャが知られている。

【0003】

特許文献１には、バケット型ジョークラッシャが記載されている。このジョークラッシャは、ジョー固定歯と、ジョー動歯と、荷重受け部を介してジョー動歯の下部を支持するトッグルプレートとを備えている。トッグルプレートは、ジョー動歯に直交する面よりも偏心主軸側へ上り勾配に取り付けられている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特許第５３００２３０号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

ところで、反力受け機構がアップスラストタイプのジョークラッシャについて、従来のものは、ジョー固定歯とジョー動歯により形成される噛み角が、それほど広くはない。そのため、比較的大きな被破砕物（以下「大型被破砕物」という。）を破砕する場合は、ジョークラッシャ以外の機械で大型被破砕物を一次破砕した後にジョークラッシャで二次破砕するという２段階の破砕を行うか、或いは、大形のジョークラッシャを準備することが必要であった。それに対し、本願発明者は、アップスラストタイプでは、ジョー動歯が、上方から下方に向かって被破砕物をジョー固定歯に押し付けるようにして動くため、上述の噛み角を従来より拡大できると考えた。

【0006】

本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、アップスラストタイプのジョークラッシャについて、ジョー動歯の動きを考慮して、ジョー固定歯とジョー動歯により形成される噛み角を拡大したジョークラッシャを実現することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0007】

上述の課題を解決するべく、第１の発明は、ジョー固定歯と、ジョー固定歯に対面するように配置されたジョー動歯とを備え、ジョー動歯の下部がアップスラストタイプの反力受け機構によって支持されたジョークラッシャであって、ジョー固定歯とジョー動歯により形成される破砕室の側方から見た場合に、破砕室の入口が最も広がった状態で、所定寸法の球体を挟む時に、球体とジョー固定歯との接点における球体の第１接線と、球体とジョー動歯との接点における球体の第２接線とのなす角度は、３９°以上４５°以下である、ジョークラッシャである。

【0008】

第２の発明は、第１の発明において、ジョークラッシャは、バケットを有するバケット型のジョークラッシャであって、バケットの一対の側板にそれぞれ固定された一対の固定軸受と、ジョー動歯が取り付けられ、且つ、一対の固定軸受に回転自在に支持されて自らの回転に伴ってジョー動歯を揺動させる偏心主軸とを備え、側板には、偏心主軸を挿通させる挿通孔と、偏心主軸を挿通孔へ導入するための切り欠きと、切り欠きを塞ぐように側板に取り付けられる封鎖部とが設けられている。

【0009】

第３の発明は、第１の発明において、ジョークラッシャは、バケットを有するバケット型のジョークラッシャであって、バケットの一対の側板にそれぞれ固定された一対の固定軸受と、ジョー動歯が取り付けられ、且つ、一対の固定軸受に回転自在に支持されて自らの回転に伴ってジョー動歯を揺動させる偏心主軸とを備え、固定軸受のハウジングは、軸受本体を収容する筒状部と、筒状部の外周面から偏心主軸の径方向外側に延出するフランジと、フランジの先端側から偏心主軸の軸方向に突出する円弧状凸部とを有し、側板には、円弧状凸部が嵌合する円弧状凹部が形成された保持部材が設けられている。

【0010】

第４の発明は、第３の発明において、偏心主軸における中央部側を内側、各端部側を外側とした場合に、固定軸受は、外側ほど外径が窄まる外周面を有するアダプタースリーブと、外側ほど内径が窄まる内周面を有する軸受本体と、アダプタースリーブを外側に移動させるためのナットとを有し、偏心主軸から固定軸受を取り外す際に、アダプタースリーブを内側に叩き出すことが可能に構成されている。

【0011】

第５の発明は、第１の発明において、ジョー動歯の背面側に固定されて、トッグルプレートの一端部を受けるシート面を有する可動側トッグルシートと、トッグルプレートの他端部を受けるシート面を有する固定側トッグルシートをさらに備え、ジョー動歯の背面側には、可動側トッグルシートが複数設けられ、複数の可動側トッグルシートは、各シート面から、固定側トッグルシートのシート面までの距離が互いに異なる。

【0012】

第６の発明は、第１の発明において、バケットの入口側には、被破砕物の入口幅がジョー動歯の幅よりも大きいホッパー部が設けられている。

【発明の効果】

【0013】

本発明では、ジョー固定歯とジョー動歯により形成される破砕室の側方から見た場合に、破砕室の入口が最も広がった状態で、所定寸法の球体を挟む時の第１接線と第２接線とのなす角度が、３９°以上４５°以下である。

【0014】

ここで、ジョー動歯の下部がダウンスラストタイプの反力受け機構によって支持されたジョークラッシャの場合、両顎（ジョー固定歯とジョー動歯）のなす噛み角について「普通２４°内外」と記載された文献があり、実際の装置も２４°内外となっている。この文献では、両顎のなす噛み角の説明に、ジョー固定歯の内面もジョー動歯の内面も略平坦面のジョークラッシャの図が用いられている。ダウンスラストタイプの場合、被破砕物に対して効果的に破砕力を作用させることができる噛み角は、２４°内外である。

【0015】

それに対し、本願発明者は、ジョー動歯が被破砕物を持ち上げながら破砕するダウンスラストタイプとは異なり、アップスラストタイプでは、ジョー動歯が、被破砕物を引き込みながら上方から下方に向かって被破砕物をジョー固定歯に押し付けるようにして動いて、被破砕物を破砕する。そのため、ジョー固定歯とジョー動歯のなす噛み角の設定に、石と鋼板との摩擦係数に相当する角度を考慮することができると考えた。石と鋼板との摩擦係数μは０．３～０．４であり、この摩擦係数μに相当する角度は１７°（ｔａｎ^－１（０．３））～２１°（ｔａｎ^－１（０．４））である。

【0016】

ここで、ジョー固定歯の内面及びジョー動歯の内面は、上記文献の図のように略平坦面な場合だけでなく、曲面となっている場合もある。何れの場合も考慮した噛み角は、破砕室の入口が最も広がった状態で、所定寸法の球体を挟む時に、球体とジョー固定歯との接点における球体の第１接線と、球体とジョー動歯との接点における球体の第２接線とのなす角度と言える。

【0017】

そして、本願発明者は、石と鋼板との摩擦係数μを考慮した噛み角として、ダウンスラストタイプで用いられる噛み角２４°に１７°～２１°を加えた４１°～４５°を導き出し、さらに下限側の角度範囲については３９°以上までは適切な範囲と考える一方、上限側の角度範囲は仮に広げた場合は被破砕物が上側に飛び出る虞があることから４５°以下が適切な範囲と考えた。このような考えに基づいて、本願発明者は、噛み角が３９°以上４５°以下のジョークラッシャを考案するに至った。本発明によれば、ジョー固定歯とジョー動歯により形成される噛み角を拡大したジョークラッシャを実現することができる。

【図面の簡単な説明】

【0018】

【図1】図１は、実施形態に係るジョークラッシャについて、破砕室の側方から見た図である。

【図2】図２は、実施形態に係るジョークラッシャについて、破砕室の上方から見た図である。

【図3】図３は、実施形態に係るジョークラッシャのバケットについて、ジョー動歯側から見た図（後述する設置状態で上方から見た図）である。

【図4】図４は、実施形態に係るジョークラッシャの偏心主軸の拡大図である。

【図5】図５は、実施形態に係るジョークラッシャについて、バケットに対する偏心主軸の取付方法における偏心主軸の移動工程を説明するための図である。

【図6】図６は、実施形態に係るジョークラッシャについて、バケットに対する偏心主軸の取付方法における固定軸受の取付工程を説明するための図である。

【図7】図７は、実施形態の変形例に係るジョークラッシャについて、破砕室の側方から見た図である。

【発明を実施するための形態】

【0019】

以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。

【0020】

［ジョークラッシャの構造について］
本実施形態は、油圧ショベルなどの重機のアームの先端に取り付けて使用されるバケット型のジョークラッシャ５である。ジョークラッシャ５は、図１及び図２に示すように、ジョー固定歯２０と、ジョー動歯３０と、偏心主軸４０と、反力受け機構５０とを備えている。ジョー固定歯２０及びジョー動歯３０は鋼製である。ジョー動歯３０は、ジョー固定歯２０に対面し、且つ、ジョー固定歯２０に対し斜めに配置されている。ジョー固定歯２０とジョー動歯３０は、略Ｖ字状を呈する。ジョークラッシャ５では、ジョー固定歯２０とジョー動歯３０により、被破砕物の入口と出口が形成される。なお、本明細書において、上下方向は、被破砕物の入口が上側を向き、被破砕物の出口が下側を向く状態での方向を意味する。

【0021】

ジョー固定歯２０は、略矩形の板状に形成されている。ジョー固定歯２０の表面（内面）には、複数の山谷からなる波状歯２１が形成されている。ジョー固定歯２０は、バケット１０の底１１（図１では側面）の内面に固定されている。

【0022】

ジョー動歯３０は略矩形の板状に形成されている。ジョー動歯３０の表面（内面）には、ジョー固定歯２０の波状歯２１に噛み合う波状歯３１が形成されている。波状歯３１は、波状歯２１と同じ形状で同じ大きさの山谷からなる。ジョー動歯３０の表側の形状及び寸法は、ジョー固定歯２０と同じにすることができる。

【0023】

ジョー動歯３０の上部は、図２に示すように、一対の偏心軸受４１を介して偏心主軸４０に軸支されている。偏心主軸４０は、ジョー動歯３０が取り付けられている。偏心主軸４０は、一対の固定軸受４２に回転自在に支持されて、自らの回転に伴ってジョー動歯３０を揺動させる。偏心主軸４０は、一対の固定軸受４２によって回転自在に支持された一対の外側軸部４０ａと、一対の外側軸部４０ａ間に設けられた内側軸部４０ｂとにより構成されている。内側軸部４０ｂは、外側軸部４０ａ対し偏心して設けられ、外側軸部４０ａよりも大径である。なお、一対の固定軸受４２は、バケット１０の左右に設けられた一対の側板１４、１４にそれぞれ固定されている。

【0024】

偏心主軸４０の一端側の外側軸部４０ａは、一方の側板１４の外側に配置されたモータ（例えば油圧モータ）６０に連結されている。偏心主軸４０は、ベルト駆動ではなく、モータ６０により直接駆動される。偏心主軸４０の他端側の外側軸部４０ａには、他方の側板１４の外側に配置されたフライホイール７０が取り付けられている。また、偏心主軸４０の中間部の内側軸部４０ｂには、偏心に伴うバランス調整のためのカウンタウェイト６５が取り付けられている。

【0025】

ジョー動歯３０の下部は、図１に示すように、トッグルプレート５１などを有するアップスラストタイプの反力受け機構５０により所定範囲において可動に支持されている。本実施形態では、トッグルプレート５１が、ジョー動歯３０に固定された上側トッグルシート５２に対して、斜め下方から上方に向けて当接するように設けられている。そのため、偏心主軸４０の回転により上下に往復動するジョー動歯３０は、被破砕物を挟む際に、被破砕物を引き込みながら上方から下方に向かってジョー固定歯２０に被破砕物を押し付けられるように動作することになる。なお、図１においては、太線の矢印は偏心主軸４０の正回転方向を表すが、偏心主軸４０が逆回転でもよい。偏心主軸４０が逆回転であっても被破砕物を引き込みながら破砕する。

【0026】

具体的に、反力受け機構５０は、図１に示すように、トッグルプレート５１と、上側トッグルシート５２と、下側トッグルシート５３と、弾性部材５６と、テンションロッド５８とを備えている。弾性部材５６にはバネが用いられている。

【0027】

トッグルプレート５１は平板状に形成されている。トッグルプレート５１は、第１端部５１ａ及び第２端部５１ｂが、ともに丸みを帯びた曲面（又は凸部）により形成されている。また、各トッグルシート５２，５３は、トッグルプレート５１の第１端部５１ａ，第２端部５１ｂを受けるために、窪んだ曲面のシート面５２ａ，５３ａを有する。トッグルプレート５１は、各端部５１ａ，５１ｂが各トッグルシート５２，５３のシート面５２ａ，５３ａにそれぞれ当接し、ジョー動歯３０の動きに応じて傾きが変化する。なお、上側トッグルシート５２は、シート面５２ａと反対側が、ジョー動歯３０の背面側に固定されている。下側トッグルシート５３は、シート面５３ａと反対側が、バケット１０に固定されている。上側トッグルシート５２は可動側トッグルシートに相当し、下側トッグルシート５３は固定側トッグルシートに相当する。

【0028】

ここで、ジョー動歯３０は、上側トッグルシート５２を介してトッグルプレート５１に支持されている。トッグルプレート５１は、第１端部５１ａが第２端部５１ｂよりも上側に位置するように、ジョー動歯３０の背面に向かって上り勾配に取りつけられている。

【0029】

バネ５６は、第１及び第２押付け部材５７ａ，５７ｂにより挟まれている。第１押付け部材５７ａは、下側トッグルシート５３を介して又は直接的にバケット１０に固定されている。第２押付け部材５７ｂは、バネ５６を挿通するテンションロッド５８の一端側に固定されている。テンションロッド５８の他端側は、ジョー動歯３０の下部に回転自在に連結されている。バネ５６及びテンションロッド５８は、トッグルプレート５１と上側トッグルシート５２との間、および、トッグルプレート５１と下側トッグルシート５３との間が常に密着保持できるようにすると共に、ジョー固定歯２０とジョー動歯３０の出口の隙間調整やジョー動歯３０の往復動により、トッグルプレート５１やテンションロッド５８の傾斜が増減しても、自動的に追従できるように構成されている。

【0030】

なお、下側トッグルシート５３において、シート面５３ａの裏側に積層された調整板５４の取付枚数を増減させることにより、ジョー動歯３０の下端とジョー固定歯２０の下端による出口の間隙の大きさを調節することができ、これにより被破砕物の破砕寸法が調整される。

【0031】

また、バケット１０について説明すると、バケット１０の入口側には、図３に示すように、被破砕物の入口幅Ｗ１がジョー動歯３０の幅Ｗ２よりも大きいホッパー部１２が設けられている。そのため、被破砕物のすくい量を多くすることができる。

【0032】

＜ジョー固定歯とジョー動歯の詳細構造について＞
本実施形態では、被破砕物に対して効果的に破砕力を作用させることができるように、ジョー固定歯２０及びジョー動歯３０が形成されている。

【0033】

具体的に、ジョー固定歯２０とジョー動歯３０により形成される破砕室２５の側方から見た場合（以下「側面視」と言う。）に、偏心主軸４０における一回転中に破砕室２５の入口（上側開口）が最も広がった状態で、ジョー固定歯２０とジョー動歯３０により、所定寸法の球体Ｂを挟む時に、球体Ｂとジョー固定歯２０の内面（波状歯２１の先端により構成される面）との接点Ｓ１における球体Ｂの第１接線Ｔ１と、球体Ｂとジョー動歯３０の内面（波状歯３１の先端により構成される面）との接点Ｓ２における球体Ｂの第２接線Ｔ２とのなす角度（以下「噛み角」と言う）θ１は、３９°以上４５°以下（好ましくは３９°以上４３°以下、さらに好ましくは４０°以上４２°以下）である。噛み角θ１は、偏心主軸４０の一回転中の最大値であり、例えば４１°とすることができる。なお、破砕室２５の入口が最も広がった状態では、調整板５４が上限の取付枚数まで取り付けられた状態（被破砕物の出口が最狭いセッティング状態）であるものとする。

【0034】

ジョークラッシャ５は、想定する被破砕物の大きさに応じて、球体Ｂの直径がφ４００～φ１０００の範囲における所定値（例えばφ４００、φ５００、φ６００、φ７００、φ８００、φ９００、φ１０００）の場合に、噛み角θ１が３９°以上４５°以下（好ましくは３９°以上４３°以下、さらに好ましくは４０°以上４２°以下）を満たすように、ジョー固定歯２０及びジョー動歯３０などを構成することができる。

【0035】

また、上記の側面視において破砕室２５の入口が最も広がった状態で、ジョー固定歯２０とジョー動歯３０により球体Ｂを挟む時に、球体Ｂの中心Ｃは、ジョー固定歯２０の上端とジョー動歯３０の上端とを結ぶ直線Ｌ付近にある。本実施形態では、球体Ｂの中心Ｃが、直線Ｌの少し上に位置している。なお、直線Ｌ付近とは、直線Ｌから中心Ｃまでの距離が例えば２ｃｍ以下である。

【0036】

ジョー固定歯２０の内面は、上記の側面視において、上端部２０ａ及び下端部２０ｂを除く主要部分２０ｃが、ジョー固定歯２０の背面２０ｄに略平行となっている。ジョー固定歯２０の内面では、上記の側面視において、上端部２０ａが、上側ほどジョー動歯３０から遠ざかるように広がり、下端部２０ｂが、下側ほどジョー動歯３０から遠ざかるように広がっている。

【0037】

ジョー動歯３０の内面は、上記の側面視において、上端部３０ａ及び下端部３０ｂを除く主要部分３０ｃが、ジョー動歯３０の背面３０ｄに略平行となっている。ジョー動歯３０の内面では、上記の側面視において、上端部３０ａが、上側ほどジョー固定歯２０から遠ざかるように広がり、下端部３０ｂが、下側ほどジョー固定歯２０から遠ざかるように広がっている。

【0038】

本実施形態では、球体Ｂは、ジョー固定歯２０の内面の上端部２０ａと、ジョー動歯３０の内面の上端部３０ａとに当接し、偏心主軸４０における一回転中に破砕室２５の入口が最も広がった状態で、上端部２０ａと上端部３０ａのなす角度が噛み角θ１となっている。

【0039】

なお、本実施形態では、ジョー固定歯２０の内面のうち上端部２０ａ及び下端部２０ｂを除く主要部分２０ｃと、ジョー動歯３０の内面のうち上端部３０ａ及び下端部３０ｂを除く主要部分３０ｃとのなす角度θ２は、最大噛み角θ１よりも小さく、最大噛み角θ１と角度θ２の差が６°以上１０°以下となるように設定されている。また、ジョー固定歯２０の内面の上端部２０ａとジョー動歯３０の内面の上端部３０ａとは、上記の側面視において、直線状であるが、例えば内側に膨らむ曲線状としてもよい。

【0040】

＜各軸受の詳細構造について＞
一対の偏心軸受４１には、図４に示すように、円筒状のアダプタースリーブ４３が用いられ、一対の固定軸受４２の各々には、円筒状のアダプタースリーブ４４が用いられている。各アダプタースリーブ４３，４４には軸方向に延びる切割り部が形成されている（図示省略）。なお、偏心主軸４０における中央部側を「内側」、各端部側を「外側」と言う（図４参照）。

【0041】

具体的に、各偏心軸受４１は、アダプタースリーブ４３に加え、軸受本体３５と、軸受本体３５を収容するハウジング３６と、アダプタースリーブ４３を外側に移動させるためのナットとを備えている。軸受本体３５は、軸受内輪４５と、軸受内輪４５とともに軌道輪を構成する軸受外輪４７と、軸受内輪４５と軸受外輪４７との間に配置された複数の転動体（符号省略）とを備えている。

【0042】

各固定軸受４２は、アダプタースリーブ４４に加え、軸受本体３７と、軸受本体３７を収容する筒状部３８ａなどを有するハウジング３８と、アダプタースリーブ４４を外側に移動させるためのナット３９とを備えている。軸受本体３７は、軸受内輪４６と、軸受内輪４６とともに軌道輪を構成する軸受外輪４８と、軸受内輪４６と軸受外輪４８との間に配置された複数の転動体（符号省略）とを備えている。ハウジング３８は、軸受本体３７を収容する筒状部３８ａと、筒状部３８ａの外周面から偏心主軸４０の径方向外側に延出するフランジ３８ｂと、フランジ３８ｂの先端側から偏心主軸４０の軸方向に突出する円弧状凸部３８ｃとを有する。円弧状凸部３８ｃは、偏心主軸４０の軸方向において内側に突出している。円弧状凸部３８ｃは、偏心主軸４０の軸方向に見た場合に円弧状に延びている。

【0043】

なお、各側板１４には、円弧状凸部３８ｃが嵌合する円弧状凹部１５ａが形成された保持部材１５が設けられている。円弧状凹部１５ａは、偏心主軸４０の軸方向に見た場合に円弧状に延びている（図５参照）。

【0044】

偏心軸受４１のアダプタースリーブ４３の外周面、及び、固定軸受４２のアダプタースリーブ４４の外周面は、ともに偏心主軸４０の軸方向において外側ほど外径が窄まるテーパー面となっている。偏心軸受４１の軸受内輪４５の内周面、及び、固定軸受４２の軸受内輪４６の内周面も、ともに偏心主軸４０の軸方向において外側ほど内径が窄まるテーパー面となっている。これにより、偏心軸受４１に対し、偏心軸受４１及び固定軸受４２の着脱が容易化になり、偏心軸受４１の交換作業を容易化することができる。

【0045】

［バケットに対する偏心主軸の取付方法について］
次に、図５及び図６を参照しながら、バケット１０に対する偏心主軸４０の取付方法について説明を行う。なお、この取付方法を実施する際、バケット１０は、図１に示す部材１１が底面となるように設置される。図５は、この設置状態におけるバケット１０の側板１４の要部を外側から見た正面図である。

【0046】

ここで、図５に示すように、バケット１０における一対の側板１４の各々には、偏心主軸４０を挿通させる挿通孔１６と、偏心主軸４０を挿通孔１６へ導入するための切り欠き１７と、切り欠き１７を塞ぐように側板１４に取り付けられて挿通孔１６のうち切り欠き１７の接続箇所を封鎖する封鎖部１８とが設けられている。側板１４における挿通孔１６の縁部には、保持部材１５が取り付けられている。保持部材１５は、逆Ｃ字状に形成され、欠損部分が切り欠き１７との接続箇所になっている。図５の設置状態において、切り欠き１７は、横方向に延びている。

【0047】

偏心主軸４０の取付方法では、まず偏心主軸４０の移動工程が行われる。移動工程では、一対の偏心軸受４１が組み付けられた状態の偏心主軸４０が、クレーンによって吊り下げられ、図５（ｂ）に示すように、偏心主軸４０の外側軸部４０ａが、切り欠き１７を取って挿通孔１６内に導入される。そして、側板１４に封鎖部１８が取り付けられ、切り欠き１７が塞がれ、挿通孔１６は円形の穴となる。

【0048】

続いて、固定軸受４２の取付工程が行われる。取付工程では、図６（ａ）に示すように、偏心主軸４０の外側軸部４０ａにアダプタースリーブ４４が取り付けられる。次に、図６（ｂ）に示すように、固定軸受４２のハウジング３８が、偏心主軸４０の軸方向の外側から保持部材１５の内側に通され、円弧状凸部３８ｃが円弧状凹部１５ａに嵌め込まれる。そして、ボルト３２によって、保持部材１５に対しハウジング３８が固定される。本実施形態では、円弧状凸部３８ｃが円弧状凹部１５ａに嵌め込まれため、ハウジング３８の変形を抑制することができる。

【0049】

次に、取付工程では、図６（ｃ）に示すように、偏心主軸４０の軸方向の外側から、ハウジング３８の筒状部３８ａの内周面とアダプタースリーブ４４の外周面との間に、軸受本体３７が組み込まれる。そして、図６（ｄ）に示すように、アダプタースリーブ４４の外周面の雄ネジに対し螺合する雌ネジが内周面に形成されたナット３９を、座金を介して組み付け、ナット３９を回転させることによってアダプタースリーブ４４を外側に引っ張り出す。これにより、外側軸部４０ａ、アダプタースリーブ４４、及び、軸受本体３７の軸受内輪４６が強固に一体化された状態になり、固定軸受４２の取付と共に、偏心主軸４０の取付が完了する。

【0050】

なお、図示は省略するが、メンテナンスのために偏心主軸４０を取り外す際は、ナット３９を取り外した後に、アダプタースリーブ４４の外側端面を内側に叩くことで、アダプタースリーブ４４を容易に取り外すことができる。

【0051】

［ジョークラッシャの動作、及び、実施形態の効果］
油圧ショベルに取り付けて使用する時のジョークラッシャ５の動作について説明を行う。バケット１０の入口を被破砕物に向けて、バケット１０により被破砕物をすくい込み、バケット１０を上向きに動かすことで、ジョークラッシャ５の破砕室２５に被破砕物が導入される。そして、細砕済みの被破砕物を集積する集積場所に油圧ショベルを移動させ、油圧モータ６０が駆動させる。そうすると、図１において半時計回りに偏心主軸４０が回転してジョー動歯３０が作動し、被破砕物が破砕されてバケット１０の下端の排出口から排出される。

【0052】

本実施形態では、最大噛み角θ１が、３９°以上４５°以下であり、従来のジョークラッシャに比べて大きい。そのため、大型被破砕物を破砕する場合に、従来のジョークラッシャ（噛み角２４°内外）では、ジョー固定歯及びジョー動歯の長さを大きくする必要があるが、本実施形態では、ジョー固定歯２０及びジョー動歯３０に当接する状態からジョー動歯３０が作動する時に、大型被破砕物に効果的に破砕力を作用させることができ、大型被破砕物を問題なく破砕することができる。なお、本願発明者は、最大噛み角４１°のジョークラッシャによって、直径６００～７００ｍｍ程度の大型石材を問題なく破砕できることを確認している。

【0053】

［実施形態の変形例］
本変形例では、ジョークラッシャ５は、図７に示すように、複数の可動側トッグルシート５２を備え、長さが互いに異なる複数のトッグルプレート５１の中で、トッグルプレート５１を交換可能となっている。なお、トッグルプレート５１の長さは、図７に示すトッグルプレート５１の長手方向の寸法を意味する。図７（ａ）は短いトッグルプレート５１を使用している状態を表し、図７（ｂ）は長いトッグルプレート５１を使用している状態を表す。

【0054】

具体的に、ジョー動歯３０の背面側の下部には、２つの可動側トッグルシート５２が上下に並ぶように設けられている。そして、２つの可動側トッグルシート５２は、各シート面５２ａから、固定側トッグルシート５３のシート面５３ａまでの距離が互いに異なる。２つのうち上側の可動側トッグルシート５２のシート面５２ａから固定側トッグルシート５３のシート面５３ａまでの距離と、下側の可動側トッグルシート５２のシート面５２ａから固定側トッグルシート５３のシート面５３ａまでの距離よりも長くなっている。

【0055】

本変形例によれば、噛み角の調節範囲が大きいジョークラッシャ５を実現することができる。また、長さが互いに異なる複数のトッグルプレート５１の中で、トッグルプレート５１を交換可能とする場合に、トッグルプレート５１を適切な角度で使用することができる。なお、本変形例において、破砕室２５の入口が最も広がった状態では、調整板５４が上限の取付枚数まで取り付けられた状態で、且つ、最も長いトッグルプレート５１が取り付けられた状態であるものとする。なお、長さが互いに異なる複数のトッグルプレート５１の中で、トッグルプレート５１を交換可能とする場合、トッグルプレート５１の長さの差が小さいならば、可動側トッグルシート５２は１つであってもよい。つまり上述の実施形態においても、トッグルプレート５１を交換可能とすることができる。

【産業上の利用可能性】

【0056】

本発明は、ジョー固定歯とジョー動歯を備えたジョークラッシャ等に適用可能である。

【符号の説明】

【0057】

５ ジョークラッシャ
１０ バケット
１２ ホッパー部
１４ 側板
１５ 保持部材
１５ａ 円弧状凹部
１６ 挿通部
１７ 切り欠き
１８ 閉鎖部
２０ ジョー固定歯
２０ａ ジョー固定歯の内面の上端部
２１ 波状歯
２５ 破砕室
３０ ジョー動歯
３０ａ ジョー動歯の内面の上端部
３１ 波状歯
３８ ハウジング
３８ｂ フランジ
３８ｃ 円弧状凸部
４０ 偏心主軸
４１ 偏心軸受
４２ 固定軸受
４３ 偏心軸受のアダプタースリーブ
４４ 固定軸受のアダプタースリーブ
４５ 偏心軸受の軸受内輪
４６ 固定軸受の軸受内輪
５０ 反力受け機構
５１ トッグルプレート
５２ 上側トッグルシート（可動側トッグルシート）
５３ 下側トッグルシート（固定側トッグルシート）
６０ モータ
６５ カウンタウェイト
７０ フライホイール
Ｂ 球体
Ｓ１ 接点
Ｓ２ 接点
Ｔ１ 第１接線
Ｔ２ 第２接線

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】