(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139542
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 1/34 20060101AFI20241002BHJP
E06B 1/12 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
E06B1/34 Z
E06B1/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050527
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖山 龍生
(72)【発明者】
【氏名】石原 誠
【テーマコード(参考)】
2E011
【Fターム(参考)】
2E011AC04
2E011AD03
(57)【要約】
【課題】形材の溝に対して塞ぎ材の装着が容易な建具を提供する。
【解決手段】建具10は、枠体12の一部を構成し見込み面に長尺方向の溝42が形成された縦枠18と、該溝42に嵌り込んで塞ぐ塞ぎ材46とを備える。縦枠18は溝42の開口部42bにおける見込み方向両側から互いに接近する方向に突出する係合突起42cを有する。塞ぎ材46は弾性材であり、見込み面に長尺方向に形成された折れ筋46eと、係合突起42cに対して溝奥側から係合する係合部46gとを有する。塞ぎ材46の露呈側面は縦枠18の見込み面と同一面を形成している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体または障子の一部を構成し見込み面に長尺方向の溝が形成された形材と、該溝に嵌り込んで塞ぐ塞ぎ材とを備える建具であって、
前記形材は前記溝の開口部における見込み方向両側から互いに接近する方向に突出する係合突起を有し、
前記塞ぎ材は弾性材であり、
前記開口部を塞ぐ蓋部と、
前記蓋部の見込み面に長尺方向に形成された折れ筋と、
前記係合突起に対して溝奥側から係合する係合部と、
を有する
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
前記塞ぎ材の露呈側面は前記形材の前記見込み面と同一または溝奥側にある
ことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記塞ぎ材は前記溝の溝奥側見込み面に対して当接する
ことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項4】
前記塞ぎ材は一対の前記係合部の部分からそれぞれ突出して溝奥側でつながる一対の辺部を有し、
一対の前記辺部と前記蓋部とにより中空部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項5】
一対の前記辺部は前記中空部側に向かって凸となるように湾曲している
ことを特徴とする請求項4に記載の建具。
【請求項6】
一対の前記辺部は前記係合部の部分からそれぞれ斜めに突出して溝奥側で円弧状につながる
ことを特徴とする請求項4または5に記載の建具。
【請求項7】
前記形材は前記枠体の縦枠を構成しており、
前記溝は内周側見込み面に形成されて一部に機能部品が設置され、
前記塞ぎ材は、前記溝における前記機能部品の設置個所以外に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項8】
前記枠体は引違い窓を支持するものであり、前記溝は内周側見込み面に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項9】
前記溝には見込み方向両側の溝壁から互いに接近する方向に突出する補助突起が形成されており、
一対の前記係合部はそれぞれ前記係合部と前記補助突起との間にある
ことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体または障子の一部を構成し見込み面に長尺方向の溝が形成された形材と、該溝に嵌り込んで塞ぐ塞ぎ材とを備える建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建具の枠体を構成する枠材または障子の框材の見込み面には錠受け部品を設けるための溝が長尺方向に沿って形成されている場合がある。溝は錠受け部品が設けられる箇所以外は塞ぎ材で塞ぐことが望ましい。特許文献1には同様の溝を化粧材で塞ぐことが開示されている。この化粧材はアルミニウム等の金属製の押し出し形成によるものとなっており、スナップ式で枠材に係合する。化粧材には化粧シートが接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、金属材による塞ぎ材を枠材に対してスナップ式に係合させる構造では、係合部を薄くするとガタつきが生じ、係合部を厚くすると挿入が困難となる。また、金属材をネジ留めすることは作業性および意匠性に劣る。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、形材の溝に対する塞ぎ材の装着が容易な建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる建具は、枠体または障子の一部を構成し見込み面に長尺方向の溝が形成された形材と、該溝に嵌り込んで塞ぐ塞ぎ材とを備える建具であって、前記形材は前記溝の開口部における見込み方向両側から互いに接近する方向に突出する係合突起を有し、前記塞ぎ材は弾性材であり、前記開口部を塞ぐ蓋部と、前記蓋部の見込み面に長尺方向に形成された折れ筋と、前記係合突起に対して溝奥側から係合する係合部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる建具の塞ぎ材は、樹脂弾性材でありしかも蓋部の見込み面に折れ筋が形成されていることから、溝に押し込む際に屈曲しやすく装着が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態にかかる建具の横断面図である。
【
図2】本発明の実施形態にかかる建具の縦断面図である。
【
図3】建具における縦枠および内障子の縦框の拡大横断面図である。
【
図4】建具における縦枠、錠受け部品および塞ぎ材の分解斜視図である。
【
図6】塞ぎ材を溝に嵌め込む様子を示した横断面図である。
【
図7】縦枠と第1の変形例にかかる塞ぎ材との横断面図である。
【
図8】縦枠と第2の変形例にかかる塞ぎ材との横断面図である。
【
図9】塞ぎ材が適用された第1変形例にかかる建具の一部拡大横断面図である。
【
図10】塞ぎ材が適用された第2変形例にかかる建具の一部拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明にかかる建具の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
図1は、本発明の実施形態にかかる建具10の横断面図である。
図2は、本発明の実施形態にかかる建具10の縦断面図である。建具10は、枠体12に対して内障子14および外障子16を左右方向に沿ってスライド可能に配設した引き違い窓と称されるものである。枠体12は、左右の縦枠(形材)18、下枠20及び上枠22を四周枠組みすることによって矩形状に構成したものである。
【0011】
枠体12の室内側に配設される内障子14は、四周框組みした縦框24、召合せ框26、下框28及び上框30の内部に矩形状を成すパネル材32を配置することによって構成したものである。枠体12の室外側に配設される外障子16は、四周框組みした縦框34、召合せ框36、下框38及び上框40の内部にパネル材32を配置することによって構成したものである。パネル材32は、例えば単板ガラスや複層ガラスなどである。
【0012】
内障子14及び外障子16は、左右に沿った寸法がほぼ同一で、召合せ框26,36を互いに見込み方向に並設した場合に枠体12を閉じることのできる寸法に形成してある。本実施の形態では、枠体12を閉じた場合に、室外側から見て左側に内障子14が配置され、右側に外障子16が配置される建具を例示している。枠体12を構成する枠材および内障子14及び外障子16の四周に設けられる框材は、アルミニウム等を含む金属(合金を含む)又は樹脂の押出形材であり、長手に沿った全長がほぼ一様の断面を有するように構成してある。
【0013】
図3は、建具10における縦枠18および内障子14の縦框24の拡大横断面図である。
図4は、建具10における縦枠18、錠受け部品(機能部品)44および塞ぎ材46の分解斜視図である。
【0014】
縦枠18は見込み方向にやや長く、かつ見込み方向に対称形状であり逆向きの使用が可能である。縦枠18は室内外の見付け壁18aと、外周側見込み壁18bと、中間見込み壁18cとを有しており、これらは矩形の中空部18dを形成している。縦枠18の内周側における見込み方向両端には溝形成部41が設けられている。2つの溝形成部41の間には相対的な凹部18eが形成されている。
【0015】
溝形成部41は対向する溝壁42aを有しており、その間には内周側に開口する溝42が形成されている。溝42とその周辺部に関する説明では外周側を溝奥側とも呼び、内周側を開口側とも呼ぶ。また、必要に応じて室内側の溝42を溝42Aとも呼び、室外側の溝42を溝42Bとも呼ぶ。本実施例で溝42は細い錠受け部品44(
図4参照)が設置可能な程度の深さおよび見込み幅であり、若干見込み方向に長い形状となっている。対向する一対の溝壁42a間の距離は、縦枠18の見込み幅の1/4程度となっている。溝42の深さは中空部18dの見付け幅よりやや浅い程度となっている。
【0016】
溝42Aを形成する一対の溝壁42aのうち室内側のもの、および溝42Bを形成する一対の溝壁42aのうち室外側のものは見付け壁18aから連続して内周側に突出している。中間見込み壁18cは各溝42の底面を形成する。溝壁42aは、開口部42bにおける見込み方向両側から互いに接近する方向に突出する係合突起42cと、開口部42bよりやや溝奥側から互いに接近する方向に突出する補助突起42dとを有する。係合突起42cは小さい突起であり、先端部溝奥側が円弧形状をなしている。係合突起42cは小さいが、縦枠18の内周側見込み面を形成している。補助突起42dは略矩形であり、溝壁42aの見付け方向中間より若干開口側にある。補助突起42dは小さい突起であるが、係合突起42cよりは若干長い。
【0017】
図1、
図3に示すように、縦框24は、見込み方向両端の見付け壁24aと、これらの間に設けられる2つの見込み壁24b,24cとを有している。各見付け壁24aは内周側の見込み壁24bよりも突出してパネル材32を保持している。各見付け壁24aは外周側の見込み壁24cよりも突出しており、各端部には対向側に開口するポケット24dが設けられている。一対のポケット24dの間には室内側の溝形成部41が嵌り込むようになっている。このようにポケット24dの間に溝形成部41が嵌り込む構造は耐風圧性に優れる。各ポケット24dにはシール48が装着されている。各シール48には溝壁42aに対して弾性的に当接する角部48aが設けられている。縦框24には見付け壁24cとポケット24dとの間に錠部品50が設けられている。錠部品50は錠受け部品44と同じ高さに設けられ、所定の操作により錠部品50の一部が錠受け部品44に係合することにより内障子14が閉位置でロックされる。
【0018】
図4に示すように縦枠18の上端および下端では溝壁42aが切り欠かれており、この部分には下枠20および上枠22がネジ52によって接続される。溝42Bには長尺方向の全長に亘って該溝42Bを塞ぐ塞ぎ材46が嵌り込む。溝42Aには所定高さに錠受け部品44がネジ52によって固定される。溝42Aにおける錠受け部品44の設置個所以外、つまり錠受け部品44の上下には該溝42Bを塞ぐ塞ぎ材46が嵌り込む。
【0019】
図5は、縦枠18と塞ぎ材46との分解横断面図である。塞ぎ材46はラバーやシリコーンゴムなどの樹脂弾性材であり、長手に沿った全長が一様の断面を有する。塞ぎ材46は、長尺な素材から適切な長さに切って用いられる。塞ぎ材46は溝42に嵌め込む際に適度に曲げやすい弾性と、嵌め込んだ後に安定して溝42を塞ぐことのできる適度な強度とを有する。
【0020】
図3、
図5を参照しながら塞ぎ材46について説明をする。塞ぎ材46は溝奥側に向かって凸の略三角形状であり、本実施例では概ね各辺の長さが等しい正三角形状となっている。塞ぎ材46は、開口側の見込み壁を形成する蓋部46aと、該蓋部46aの両端から斜めに突出して溝奥側の頂部46bで円弧状につながる一対の斜辺部(辺部)46cとを有し、蓋部46aと一対の斜辺部46cとにより中空部46dが形成されている。各斜辺部46cは中空部46d側に向かって凸で、その反対側には凹となるように緩やかに湾曲している。蓋部46aと斜辺部46cとの肉厚はほぼ等しく、中空部46dは略三角形状になっている。蓋部46aは平板状であるが溝奥側面の中央には折れ筋46eが形成されている。折れ筋46eは長尺方向に延在する浅い溝である。
【0021】
蓋部46aの見込み方向両端の開口側には小さい窪み46fが形成されており、該窪み46fより溝奥側は相対的に凸となる係合部46gが形成されている。また、換言すると一対の斜辺部46cは一対の係合部46gの部分からそれぞれ斜めに突出している。一対の窪み46fの間の蓋部46aの見込み寸法は、一対の係合突起42cの間の開口部42bの見込み寸法より僅かに大きい。窪み46fと係合突起42cとの見付け寸法はほぼ等しい。係合部46gと係合突起42cとは突出方向が逆向きであり、その突出長さはほぼ等しい。
【0022】
図6は、塞ぎ材46を溝42に嵌め込む様子を示した横断面図である。塞ぎ材46は頂部46bを開口部42bから溝奥側に向かって入れて、開口側から手や工具などによって押し込むことによって溝42に嵌り込む。実際の施工では、塞ぎ材46の一端から溝42に嵌め込み、さらに他端に向かって嵌め込んでいくとよい。
【0023】
塞ぎ材46の嵌め込みでは、まず各斜辺部46cにおける係合部46gの近傍が係合突起42cの先端に当たり、その後押し込み量に応じて塞ぎ材46が弾性変形する。斜辺部46cは中空部46d側に向かって凸の湾曲形状であることから係合突起42cからの力を受けやすくなっており、それぞれ係合突起42cによって相対的に押されて互いに近接する。本実施の形態の塞ぎ材46では、係合突起42cに最初に当接する箇所が見込み方向および見付け方向に対して略45度の角度であって力を受けやすく、その後一対の係合部46gが接近するように滑らかに案内される。一対の斜辺部46cは頂部46bを基準として互いのなす角度が小さくなるように弾性変位するが、頂部46bは円弧状であることから全体の円弧径が多少小さくなるように相似形状に無理なく変形し、局所的な過大圧縮または過大な伸びがない。また、斜辺部46cは中空部46d側に向かって凸の湾曲形状であることから頂部46bの円弧角度を大きく確保することができる。斜辺部46cの円弧角度は、弾性変形前の状態で例えば120度程度である。さらに、斜辺部46cは湾曲形状であることからその分だけ長くなり弾性変形しやすい。
【0024】
塞ぎ材46は主に蓋部46aの部分を押すことにより溝42内に挿入される。そうすると、一対の係合部46gが互いに接近するように弾性変位することで、蓋部46aは溝奥側に向かって凸のL字形状に弾性屈曲する。このとき、蓋部46aは中央には折れ筋46eが形成されていることから屈曲しやすく溝42に嵌め込みやすい。また、塞ぎ材46は中空構造であって弾性変形しやすい。
【0025】
係合部46gが係合突起42cを通り抜けるまで押し込むと、蓋部46a、頂部46bおよび斜辺部46cに作用する外力がなくなり蓋部46は元の形状に復元し、溝42内に正しく配置される。この復元は塞ぎ材46の弾性力によって行われ、作業者は目視および手に伝わる感触などによって押し込み終了のタイミングを認識することができる。なお、折れ筋46eは蓋部46aの溝奥側面に形成されていて外部から視認されることなく好適であるが、設計条件やデザイン条件によっては開口側面に設けてもよい。
【0026】
図3に戻る。溝42内に配置された塞ぎ材46に対して、係合突起42cが窪み46fに嵌り込む。係合突起42cの先端は蓋部46aの見込み方向両端面に対して弾性的に僅かに噛み込むように当接して止水作用と、主に重力による下方へのズレ防止作用が得られる。蓋部46aは両側の係合突起42cと同一の見込み面を形成して意匠上で好適であるとともに、内周側に突出しないことから外れ止め部品や引き寄せ片など他の部品との干渉がない。なお、蓋部46aは実質的に溝42の開口部42bを塞いでいればよく、実用上では係合突起42cの先端に当接される範囲内で若干溝奥側に配置されてもよい。
【0027】
一対の係合部46gはそれぞれ係合突起42cと補助突起42dとの間に配置され、係合突起42cに対して溝奥側から係合して塞ぎ材46の抜け止め機能を有する。係合部46gは溝壁42aおよび係合突起42cに対して弾性的に接していていると止水作用がさらに向上する。斜辺部46cは補助突起42dの角に対して軽く接している。これにより、塞ぎ材46が過度に溝奥側に嵌り込むことを防止することができる。
【0028】
斜辺部46cと補助突起42dとの間には、塞ぎ材46の変位を実質的に規制することができる程度の僅かな隙間があってもよい。溝42の底面を形成する中間見込み壁18cと、頂部46bとの間には狭い隙間が形成されている。塞ぎ材46を押し込むと、斜辺部46cは補助突起42dの角に対して斜めに当接していることから弾性変形しながら滑りが生じ得る。そのため、塞ぎ材46は多少溝奥方向に変位し得るが頂部46bがストッパとして中間見込み壁18cに当接してそれ以上の変位を制限する。また、塞ぎ材46に対する押し込み力が解除されると、一対の斜辺部46cは弾性力によって互いに離間する方向に広がり、塞ぎ材46は元の位置、元の形状に復元する。また、補助突起42dは係合突起42cよりも突出量が大きく、係合部46gは補助突起42dを越えて変位することがない。
【0029】
塞ぎ材46は溝奥側に凸の略三角形状であり、頂部46bは溝42内の十分深い箇所まで入っている。そのため、仮に塞ぎ材46に対して偏荷重が作用し、
図3における時計方向または半時計方向の回転力を受けて一時的に回転することがあっても、斜辺部46cが補助突起42dの見付け面に当接して回転規制され、偏荷重の解除後には元の位置、元の形状に復元する。
【0030】
ここまで室外から見て左側の縦枠18と該縦枠18に設けられる塞ぎ材46について
図3~
図6を参照しながら説明したが、右側(
図1参照)については回転対称となっていることから詳細な説明を省略する。
【0031】
このように構成される建具10の塞ぎ材46は、樹脂弾性材でありしかも蓋部46aの見込み面に折れ筋46eが形成されていることから、溝42に押し込む際に屈曲しやすく装着が容易である。塞ぎ材46は樹脂弾性材であって、開口部42bまたはその周辺部に弾性的に当接することで溝42に対する防塵作用、ガタつき防止作用、およびズレ防止作用が得られ、さらにある程度の防水作用も得られる。塞ぎ材46の溝42への装着は基本的にネジや接着剤などの他の固定手段が不要であり作業性がよい。塞ぎ材46は係合突起42cに対して溝奥側から係合する係合部46gを有しており溝42からの抜け止め作用がある。係合部46gは塞ぎ材46の一部であって樹脂弾性材であり、金属材と比較してスナップ式の係合に適する。塞ぎ材46は樹脂であって金属材と比べて良好な表面質感が得られ、基本的には化粧シートで覆う必要がない。
【0032】
本実施の形態の変形例について説明する。以下の各変形例では上記の実施例における同様の構成要素については同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0033】
図7は、第1の変形例にかかる塞ぎ材46Aが溝42に嵌め込まれた状態を示す横断面図である。塞ぎ材46Aは、一対の斜辺部46cがやや長く形成されており、頂部46bが溝42の底に相当する溝奥側の中間見込み壁18cに当接している。このような構成によれば塞ぎ材46Aが溝42内で一層安定する。
【0034】
図8は、第2の変形例にかかる塞ぎ材46Bが溝42に嵌め込まれた状態を示す横断面図である。塞ぎ材46Bには上記の塞ぎ材46における頂部46bおよび斜辺部46cに相当する部分がなく、一対の係合部46hが係合突起42cに係合している。係合部46hは上記の係合部46gに相当する位置にあるが見付け方向にやや厚く、係合突起42cおよび補助突起42dの両見込み面に当接して安定している。このような塞ぎ材46Bは、係合部46gが補助突起42dの見込み面に当接することから外周側への変位が相応に抑制されるとともに、塞ぎ材46,46Aよりも断面積が小さいため材料コストを削減することができる。係合突起46hは溝壁42aを望む側が傾斜面で、溝奥側に向かって幅がやや狭くなる形状となっており、溝42へ挿入しやすい。
【0035】
図9は、塞ぎ材46が適用された第1変形例にかかる建具10Aの一部拡大横断面図である。全体図を省略するが、建具10Aは4枚の引き違い障子とそれらを支持する枠体とを有するものであり、
図9では中央の2枚の障子54,56の突合わせ部を示している。
図9で左側の障子54の突合せ框58には付き合わせ面にアタッチメント59が取り付けられている。アタッチメント59には上記の縦枠18と同様の一対の溝壁42aがあり、その間には溝42が形成されている。図示を省略するが突合せ框58の溝42には錠受け部品44(
図4参照)が設けられ、それ以外の箇所に塞ぎ材46が設けられる。
【0036】
図9で右側の障子56の突合せ框60は上記の縦框24(
図3参照)とほぼ同様の構成であって、見付け壁24a、見込み壁24b,24c、ポケット24dが設けられており、一対のポケット24dの間には室内側の溝形成部41が嵌り込むようになっている。各ポケット24dにはシール48が装着されている。突合せ框60には見付け壁24cとポケット24dとの間に錠部品50が設けられている。なお、突合せ框58からアタッチメント59および塞ぎ材46を取り外した状態と、突合せ框60からシール48および錠部品50を取り外した状態とは実質的に同構造となっている。
【0037】
このように、塞ぎ材46は枠材だけでなく框材に適用することも可能である。上記のように枠材に形成された溝42は外周側が溝奥側で内周側が開口側であったが、框材に形成された溝42は内周側が溝奥側で外周側が開口側となる。
【0038】
図10は、塞ぎ材46が適用された第2変形例にかかる建具10Bの一部拡大横断面図である。建具10Bは玄関ドア62を枠体64で支持するものであり、縦枠66の見込み面には内周側に開口する溝42が形成されている。縦枠66の外周側見込み壁は溝42の底壁66aを形成している。底壁66aには縦枠66を躯体68に締結するためのネジ70(アンカーねじなど)が打込まれている。ネジ70の頭部70aは溝42内では露呈するが、該溝42は塞ぎ材46によって塞がれるため外部からは視認されることがない。また、塞ぎ材46の蓋部46aと縦枠66の内周側見込み面66bとは同一面を形成し、枠周の面を平滑にすることがでる。上記の通り塞ぎ材46の頂部46bは溝42の底面とやや離れているため頭部70aと干渉しない。
【0039】
塞ぎ材46を装着する溝42は下枠20、上枠22、下框28,38、または上框30,40に形成されていてもよい。上枠22や上框30,40に溝42を形成する場合には、該溝42の一部に枠材と框材との抜け止め部品(機能部品)を設け、それ以外の箇所に塞ぎ材46を装着してもよい。
【0040】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0041】
本発明にかかる建具は、枠体または障子の一部を構成し見込み面に長尺方向の溝が形成された形材と、該溝に嵌り込んで塞ぐ塞ぎ材とを備える建具であって、前記形材は前記溝の開口部における見込み方向両側から互いに接近する方向に突出する係合突起を有し、前記塞ぎ材は弾性材であり、前記開口部を塞ぐ蓋部と、前記蓋部の見込み面に長尺方向に形成された折れ筋と、前記係合突起に対して溝奥側から係合する係合部と、を有することを特徴とする。
【0042】
このような建具の塞ぎ材は、樹脂弾性材でありしかも蓋部の見込み面に折れ筋が形成されていることから、溝に押し込む際に屈曲しやすく装着が容易である。
【0043】
本発明にかかる建具は、前記塞ぎ材の露呈側面は前記形材の前記見込み面と同一または溝奥側にあると、意匠上で好適であるとともに、内周側に突出しないことから他の部品との干渉がない。
【0044】
本発明にかかる建具は、前記塞ぎ材は前記溝の溝奥側見込み面に対して当接してもよい。これにより塞ぎ材が一層安定する。
【0045】
本発明にかかる建具は、前記塞ぎ材は一対の前記係合部の部分からそれぞれ突出して溝奥側でつながる一対の辺部を有し、一対の前記辺部と前記蓋部とにより中空部が形成されていてもよい。このような中空部があると塞ぎ材は溝への装着時に変形しやすく作業が容易となる。
【0046】
本発明にかかる建具は、一対の前記辺部は前記中空部側に向かって凸となるように湾曲していてもよい。これにより、塞ぎ材の溝への装着作業が一層容易となる。
【0047】
本発明にかかる建具は、一対の前記辺部は前記係合部の部分からそれぞれ斜めに突出して溝奥側で円弧状につながっていてもよい。これにより辺部同士がつながる頂部が無理なく変形する。
【0048】
本発明にかかる建具は、前記形材は前記枠体の縦枠を構成しており、前記溝は内周側見込み面に形成されて一部に機能部品が設置され、前記塞ぎ材は、前記溝における前記機能部品の設置個所以外に設けられていてもよい。
【0049】
本発明にかかる建具は、前記枠体は引違い窓を支持するものであり、前記溝は内周側見込み面に形成されていてもよい。
【0050】
本発明にかかる建具は、前記溝には見込み方向両側の溝壁から互いに接近する方向に突出する補助突起が形成されており、一対の前記係合部はそれぞれ前記係合部と前記補助突起との間にあってもよい。このような補助突起は、塞ぎ材が溝奥方向へずれることを防止する。
【符号の説明】
【0051】
10,10A 建具、12 枠体、14 内障子、16 外障子、18 縦枠(形材)、24 縦框、41 溝形成部、42,42A,42B 溝、42a 溝壁、42b 開口部、42c 係合突起、42d 補助突起、44 錠受け部品(機能部品)、46,46A,46B 塞ぎ材、46a 蓋部、46b 頂部、46c 斜辺部、46d 中空部、46e 折れ筋、46g,46h 係合部、50 錠部品