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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139546
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】屋根構造体
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/343 20060101AFI20241002BHJP
   E04B 7/00 20060101ALI20241002BHJP
   E04H 6/02 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
E04B1/343 V
E04B7/00 Z
E04H6/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050533
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠 翔旭
(72)【発明者】
【氏名】小谷 将平
(72)【発明者】
【氏名】堀江 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】隠岐 光
(72)【発明者】
【氏名】小平 知弘
(57)【要約】
【課題】強度を向上することができる屋根構造体を提供する。
【解決手段】屋根構造体は、複数の屋根材を連接した屋根構造体であって、前記屋根材の連接方向に延在し、前記屋根材の長手方向の一端部がねじ止めされる前枠と、前記屋根材の連接方向に延在し、前記屋根材の長手方向の他端部がねじ止めされる後枠と、前記屋根材の下方に配置され、前記前枠及び前記後枠を支持する梁と、を備え、前記屋根材は、前記前枠及び前記後枠に対してねじ止めされる部分以外の部分に、長手方向に延在するホロー部を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の屋根材を連接した屋根構造体であって、
前記屋根材の連接方向に延在し、前記屋根材の長手方向の一端部がねじ止めされる前枠と、
前記屋根材の連接方向に延在し、前記屋根材の長手方向の他端部がねじ止めされる後枠と、
前記屋根材の下方に配置され、前記前枠及び前記後枠を支持する梁と、
を備え、
前記屋根材は、前記前枠及び前記後枠に対してねじ止めされる部分以外の部分に、長手方向に延在するホロー部を有する
ことを特徴とする屋根構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の屋根構造体であって、
前記ホロー部は、前記屋根材の幅方向に並んで一対設けられ、
前記屋根材は、前記前枠に対してねじ止めされる第1固定部と、前記後枠に対してねじ止めされる第2固定部とが、いずれも前記一対のホロー部の間にある
ことを特徴とする屋根構造体。
【請求項3】
請求項2に記載の屋根構造体であって、
前記前枠は、前記屋根材の前記一端部が上から載置されてねじ止めされる第1支持面を有し、
前記後枠は、前記屋根材の前記他端部が上から載置されてねじ止めされる第2支持面を有し、
前記屋根材は、前記第1支持面及び前記第2支持面に載置され、前記第1固定部及び前記第2固定部が設けられた平板部を有し、
前記ホロー部は、前記平板部から上方に膨出するように形成されている
ことを特徴とする屋根構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーポートやテラス屋根等として用いることができる屋根構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車用車庫等に設置される屋根構造体として、複数の屋根材を連接し、これを梁の下面側に固定した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-250929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成は、屋根材がソリッドな板材で形成されている。このため、この構成では、積雪や強風に対する屋根材の強度が十分でない場合がある。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、強度を向上することができる屋根構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る屋根構造体は、複数の屋根材を連接した屋根構造体であって、前記屋根材の連接方向に延在し、前記屋根材の長手方向の一端部がねじ止めされる前枠と、前記屋根材の連接方向に延在し、前記屋根材の長手方向の他端部がねじ止めされる後枠と、前記屋根材の下方に配置され、前記前枠及び前記後枠を支持する梁と、を備え、前記屋根材は、前記前枠及び前記後枠に対してねじ止めされる部分以外の部分に、長手方向に延在するホロー部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る屋根構造体の側面図である。
図2】屋根構造体の正面図である。
図3】屋根の側面断面図である。
図4】屋根材の取付構造を示す要部拡大正面図である。
図5】屋根材の正面断面図である。
図6】屋根材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る屋根構造体についての好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1及び図2に示すように、本実施形態の屋根構造体10は、カーポートやテラス屋根等として用いられる屋外構造物である。屋根構造体10は、屋根12と、一対の柱14,15と、一対の梁16,17と、フェンス18とを備える。
【0011】
以下、図2に示すように屋根構造体10を柱14,15側とは反対側から見た方向を正面とし、正面から見て手前側を前、奥側を後、上方を上、下方を下、左方を左、右方を右、と呼んで説明する。これらの各方向の呼び方は説明の便宜上のものであり、各方向は屋根構造体10の用途、設置状況、又は利用者の視点位置等によって当然に変化し得る。
【0012】
図1図3に示すように、屋根12は、複数の屋根材20と、屋根材20の周囲を囲む屋根枠22とを備える。屋根12は、前から後に向かって次第に下に傾斜した水勾配を有する。水勾配の前後は逆でもよいし、少なくとも屋根枠22は水平に設置されてもよい。
【0013】
各屋根材20は、隣接する幅方向(左右方向)の縁部同士が互いに連結部24で連結され、これにより左右方向に連接されている(図4も参照)。各屋根材20は、長手方向(前後方向)の端部20a,20bがそれぞれ屋根枠22にねじ止めされる。屋根材20の詳細な構成は後述する。
【0014】
屋根枠22は、前枠26と、後枠27と、左右の側枠28,29とを有する。各枠26~29は、例えばアルミニウム等の金属で形成された押出形材である。
【0015】
前枠26及び後枠27は、屋根材20の連接方向(左右方向)に沿って延在する枠材であり、互いに平行している。後枠27は前枠26よりも低位置にあり、これにより屋根12の水勾配を形成している。本実施形態の場合、前枠26及び後枠27は同一の断面形状を有し、前後対称に設置されている。前枠26は、各屋根材20の前側の端部(一端部)20aを支持する支持面(第1支持面)26aを有する(図3参照)。屋根材20は支持面26aに上から載置され、支持面26aにねじ30で固定される。同様に後枠27は、各屋根材20の後側の端部(他端部)20bが上から載置され、ねじ30で固定される支持面(第2支持面)27aを有する。
【0016】
側枠28,29は、後下がりで前後方向に沿って延在した枠材であり、左右方向で互いに平行している。側枠28,29は、前枠26の左右端部と後枠27の左右端部との間を連結している。さらに側枠28,29は、左右の端に配置された屋根材20の側部を支持している。
【0017】
柱14,15は、例えばステンレスやアルミニウム等で形成された角筒状の支柱部材であり、下端部が地面Gに固定される。一方の柱14は、上端部で後枠27及び一方の梁16を支持している。他方の柱15は、上端部で後枠27及び他方の梁17を支持している。
【0018】
梁16,17は、例えばステンレスやアルミニウム等で形成された角筒状の部材であり、前上がりで前後方向に沿って延在している。梁16,17は、前端部の上面に前枠26の下面がねじ32で固定され、後端部の上面に後枠27の下面がねじ32を用いて固定される(図3参照)。柱14,15の上端部には、例えば上向きに開口した溝状部が設けられ、この溝状部に梁16,17が挿入され、互いに締結される。図3中の参照符号34は、梁16(17)の前端小口を覆うキャップである。梁16,17の前端下面には補助柱36を設置し、屋根12の支持強度を高めることもできる(図1参照)。補助柱36は省略されてもよい。図2及び図3では補助柱36の図示を省略している。
【0019】
フェンス18は、屋根構造体10の後面に設置される目隠しである。フェンス18は、格子38と、複数本の柱39及び柱14,15とで構成されている。
【0020】
格子38は、例えば横向きに延在する帯状の板材38aを上下に複数枚並べて面格子を形成したものである。板材38aは、例えば木製、樹脂製、又は金属製である。格子38は、縦格子やメッシュ構造等で構成してもよい。柱39は、例えばステンレスやアルミニウム等で形成された角筒状の部材であり、下端部が地面Gに固定される。柱39は、屋根構造体10の構造部材である柱14,15と互い違いになるように3本設けられている。
【0021】
格子38は、左右方向に並んだ各柱14,15,39を跨ぐように左右方向に延在し、各柱14,15,39の正面側に支持されている。柱14,15,39と格子38とは、例えば柱14,15,39の側面と格子38の後面との間を連結する断面L字状の取付桟40で連結されている。柱39は省略し、柱14,15のみで格子38を支持してもよい。フェンス18は柱14,15を用いず、柱39のみで自律的に設置されてもよい。フェンス18は省略されてもよい。
【0022】
次に、屋根材20の具体的な構成例を説明する。
【0023】
屋根材20は、例えばアルミニウム等の金属又はポリカーボネート等の樹脂の押出形材である。図4図6に示すように、屋根材20は、平板部42と、一対のホロー部43,44と、一対の連結片45,46とを有する。
【0024】
平板部42は、屋根材20の下面20cを形成する平板であり、屋根材20の幅方向及び長手方向に亘っている。平板部42は、前側の端部20aに固定部(第1固定部)48を有し、後側の端部20bに固定部(第2固定部)49を有する。固定部48,49はねじ30が挿通される貫通孔である。平板部42は、枠26,27の支持面26a,27aに上から載置され、固定部48,49を通したねじ30を用いて枠26,27に締結される。固定部48,49は、屋根材20の幅方向で中心又は略中心に形成されている。なお、図4及び図5は、屋根材20の前枠26に対する固定部48及びその周辺部を示したものであるが、後枠27に対する固定構造はこれと同一又は同様である。そこで、図4及び図5では後枠27及び固定部49等の参照符号は、前枠26及び固定部48等の参照符号にかっこ書きで併記している。
【0025】
ホロー部43,44は、平板部42から上方に膨出するように形成され、屋根材20の長手方向に沿って延在している。ホロー部43,44は、屋根材20の幅方向での中心を跨ぐように左右に並んでいる。ホロー部43,44は、矩形の角筒形状に形成され、内側に矩形の中空空間を形成したものである。ホロー部43,44の形状は矩形の角筒形状以外でもよく、例えば三角形状や段部を設けた形状等でもよい。ホロー部43,44は、屋根材20を形成する部材によって屋根材20の押出成形時に一体成形されたものである。つまりホロー部43,44は、その外周壁部43a,44aに繋ぎ目を持たない筒形状を成している。このためホロー部43,44は、繋ぎ目からの漏水や繋ぎ目による強度低下を抑えることができる。
【0026】
ホロー部43,44は、枠26,27にねじ30で固定される部分(固定部48,49)以外の部分に設けられている。換言すれば、屋根材20は、ホロー部43,44間の谷間に位置する平板部42に支持面26a,27aにねじ止めされる固定部48,49を設けている。
【0027】
連結片45,46は、左右に連接される屋根材20,20同士を連結する連結部24を構成する。連結片45は、例えば略逆L字状に屈曲したヒレ部と、その下に設けられた小さい屈曲片とで形成されている。連結片46は、例えば略L字状に屈曲したヒレ部と、その下に設けられた大きな屈曲片とで形成されている。連結片45は、隣接する屋根材20の連結片46を上から覆うように設置され、相互間がねじ50で締結される(図4参照)。左右両端に設置される屋根材20は、例えば側枠28,29に対して連結片46を介して連結される。屋根材20は、図5に示すように連結片45,46を有する構成以外にも、図4中の左側の屋根材20のように左右にいずれも連結片46を有する構成とされる場合もある。連結片45,46の形状や連結構造は上記に限定されるものではない。
【0028】
以上のように、本実施形態の屋根構造体10において、屋根材20は、前枠26及び後枠27に対してねじ30で固定される部分(固定部48,49)以外の部分に、長手方向に延在するホロー部43,44を有する。このため屋根材20は、ホロー部を持たないソリッドな板材で形成された構成に比べ、積雪や強風に対する強度が向上する。そして屋根材20の強度が向上しばたつき等も抑制されることで、屋根構造体10全体の強度も向上する。
【0029】
本実施形態の屋根材20は、幅方向に並んで一対設けられたホロー部43,44の間に、前枠26に対してねじ止めされる固定部48と、後枠27に対してねじ止めされる固定部49とを配置している。このため、屋根材20の枠26,27への固定は、それぞれ1か所のねじ止めのみで可能となって施工コストを低減できる。また屋根材20はホロー部43,44の谷間で枠26,27に固定されることで、支持バランスや強度バランスも向上する。
【0030】
この際、屋根材20は、ホロー部43,44の谷間となる位置に平板部42を設け、この平板部42に固定部48,49を設けている。このため、屋根材20は、平面で形成された平板部42を支持面26a,27aに載置した状態で両者を強固に締結できる。また、屋根材20は、ホロー部43,44と屋根材20の底面を形成する平板部42の上面とで形成される溝状部を雨水等の排水経路として利用できるため、大雨時の側枠28,29側への水の溢れ出し等も抑制できる。
【0031】
ここで、仮に屋根材20の強度を単に向上させるために、屋根材全体を1つの単純なホロー形状に構成した場合を考えてみる。この構成では、ねじ止め位置がホロー部とラップすることを避けられず、屋根枠22に対する固定方法に影響があるだけでなく、ホロー部での漏水等の問題もある。また雨水等の流れがホロー部の上面、つまり屋根の上部になるため、側枠28,29から横に水が溢れたり、側枠28,29との連結部に流れたりして排水に影響も出る。この点、本実施形態の屋根構造体10は、ホロー部43,44を2つ並べた構成としたことで、これらの問題の発生を防止できる。勿論、ホロー部43,44は3つ以上でもよいし、屋根材20の全体をホロー形状としないのであればホロー部43,44の一方のみを設けた構成としてもよい。
【0032】
本実施形態では、屋根材20の幅方向中央を跨ぐ位置に一対のホロー部43,44を設け、その谷間の平板部42に枠26,27に対する固定部48,49を設けている。このため、当該屋根材20は、屋根枠22に対するねじ止め構造は、従来から一般的に用いられているホロー部43,44を持たないソリッドな既存の屋根材と同様に構成でき、施工性も良好となる。さらに屋根材20は、前後の端部20a,20bの形状を対称に形成できるため、その固定対象となる部材(枠26,27)の共通化も可能となる。その結果、屋根構造体10は、上記したソリッドな既存の屋根材の生産設備を有効に利用できるため、製品コストを抑制できる。換言すれば、仮に一対のホロー部43,44を跨ぐように固定部48,49をそれぞれ一対ずつ設けた構成とした場合、枠26,27にもこれに対応する穴加工が必要となり、生産設備への影響やこれによるコスト上昇の問題を生じ得る。
【0033】
本発明の一態様に係る屋根構造体は、複数の屋根材を連接した屋根構造体であって、前記屋根材の連接方向に延在し、前記屋根材の長手方向の一端部がねじ止めされる前枠と、前記屋根材の連接方向に延在し、前記屋根材の長手方向の他端部がねじ止めされる後枠と、前記屋根材の下方に配置され、前記前枠及び前記後枠を支持する梁と、を備え、前記屋根材は、前記前枠及び前記後枠に対してねじ止めされる部分以外の部分に、長手方向に延在するホロー部を有する。このような構成によれば、ホロー部によって屋根材の強度が向上するため、ホロー部を持たないソリッドな板材で形成された構成に比べ、積雪荷重や強風に対する強度を高めることができる。
【0034】
前記ホロー部は、前記屋根材の幅方向に並んで一対設けられ、前記屋根材は、前記前枠に対してねじ止めされる第1固定部と、前記後枠に対してねじ止めされる第2固定部とが、いずれも前記一対のホロー部の間にある構成としてもよい。このように、ねじ止め位置を避けた位置に2つのホロー部を設け、一方で第1固定部及び第2固定部を2つのホロー部の間に設けることで、前枠及び後枠に対するねじ止め位置をそれぞれ1か所に抑えつつ、バランスよい屋根材の固定が可能となる。
【0035】
前記前枠は、前記屋根材の前記一端部が上から載置されてねじ止めされる第1支持面を有し、前記後枠は、前記屋根材の前記他端部が上から載置されてねじ止めされる第2支持面を有し、前記屋根材は、前記第1支持面及び前記第2支持面に載置され、前記第1固定部及び前記第2固定部が設けられた平板部を有し、前記ホロー部は、前記平板部から上方に膨出するように形成された構成としてもよい。そうするとホロー部と屋根材の底面を形成する平板部の上面とで形成される溝状部を雨水等の排水経路として有効に利用でき、大雨時の周囲への水の溢れ出し等も抑制できる。
【0036】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
10 屋根構造体、12 屋根、14,15,39 柱、16,17 梁、18 フェンス、20 屋根材、22 屋根枠、26 前枠、26a,27a 支持面、27 後枠、42 平板部、43,44 ホロー部、48,49 固定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6