(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139549
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/48 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
H02K3/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050540
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】池田 賢二
(72)【発明者】
【氏名】榎本 裕治
(72)【発明者】
【氏名】床井 博洋
(72)【発明者】
【氏名】村木 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】酒井 亨
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA05
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604DA02
5H604QB13
(57)【要約】
【課題】ステータコアの凹部と凸部による接続部の接触領域に生じるマイクロレベルの溝の改善により、嵌合部の接触面積を拡大して導通信頼性を向上した回転電機を提供する。
【解決手段】凸部35を一端に有する第1コイルセグメント30と、凹部46を一端に有する第2コイルセグメント40を有するステータコイルを備え、凸部35の突起側面35bは第1コイルセグメント30の金属面とし、凹部46の内側壁面46bの金属面の上には、第1コイルセグメント30の金属よりも硬度が低い金属メッキ層50を形成する。コイルセグメント30、40の接合時には、突起側面35bの金属面が、硬度が低い金属メッキ層50と接触するので、突起38a、溝38bと金属メッキ層50との間の隙間が塞がれ、接触抵抗が低減する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に固定されるロータと、
金属製の複数のコイルセグメントを接続して形成されるステータコイルと、前記ステータコイルの一部を収納するスロットが複数形成されたステータコアと、を有するステータを備えた回転電機において、
前記コイルセグメントは、
前記ステータコアの前記回転軸方向の一方側又は他方側から前記スロット内に挿入されるものであって、
前記スロットに収納される直線部と、
前記ステータコアの端面から突出して前記ステータコアの軸方向に対して交差する方向に延在するようにして前記スロットの外部に配置される傾斜部と、を有し、
前記コイルセグメントとして、凸部を一端に有する第1のコイルセグメントと凹部を一端に有する第2のコイルセグメントを有し、
前記凸部又は前記凹部は、少なくとも凹凸による嵌合面の一方側に第一金属層を含み、他方側に前記第一金属層よりも硬度の低い第二金属層を有することを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
前記第1及び第2のコイルセグメントは同一金属によって形成され、前記第2のコイルセグメントの前記凹部の挿入方向と平行な内側壁面に、前記第1のコイルセグメントよりも硬度の低い金属によるメッキ層を形成することにより前記第二金属層を形成したことを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機において、
前記第1及び第2のコイルセグメントは同一金属によって形成され、前記第1のコイルセグメントの前記凸部の挿入方向と平行な突起側面に、前記第2のコイルセグメントの前記凹部の挿入方向と平行な内側壁面よりも硬度の高い金属によるメッキ層を形成することにより前記第二金属層を形成したことを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の回転電機において、
前記第1のコイルセグメントの前記凸部の挿入方向と平行な突起側面の挿入方向の長さは、前記凹部の挿入方向と平行な内側壁面の挿入方向の長さよりも短く形成されることを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項4に記載の回転電機において、
前記第1のコイルセグメントの前記凸部は、挿入方向と平行な2つの突起側面と、前記挿入方向と直交方向に延在して2つの前記突起側面を接続する先端面と、前記突起側面と交差するように形成される2つの段差面を含んで構成され、
前記第2のコイルセグメントの前記凹部は、挿入方向と平行な2つの内側壁面と、前記挿入方向と直交方向に延在して2つの前記内側壁面を接続する底面と、前記内側壁面の前記底面と離れた側に形成される2つの突当面を含んで構成され、
第1のコイルセグメントの前記段差面と前記突起側面のなす角度が90度未満になるように形成され、
第2のコイルセグメントの前記内側壁面と前記突当面のなす角度が90度未満になるように形成されることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項5に記載の回転電機において、
前記第1及び第2のコイルセグメントは、金属製の導体部と、前記導体部の外側を被覆する不導体による被膜部とを有し、
前記第1のコイルセグメントの前記先端面及び前記突起側面は前記被膜部によって覆われない部位に形成され、前記第2のコイルセグメントの前記内側壁面と前記突当面は前記被膜部によって覆われない部位に形成されることを特徴とする回転電機。
【請求項7】
回転軸に固定されるロータと、
金属製の複数のコイルセグメントを接続して形成されるステータコイルと、前記ステータコイルの一部を収納するスロットが複数形成されたステータコアと、を有するステータを備えた回転電機において、
前記コイルセグメントは、
前記ステータコアの前記回転軸方向の一方側又は他方側から前記スロット内に挿入されるものであって、
前記スロットに収納される直線部と、
前記ステータコアの端面から突出して前記ステータコアの軸方向に対して交差する方向に延在するようにして前記スロットの外部に配置される傾斜部と、を有し、
前記コイルセグメントとして、凸部を一端に有する第1のコイルセグメントと、凹部を一端に有する第2のコイルセグメントを有し、
前記第1のコイルセグメントの前記凸部の挿入方向と平行な突起側面の挿入方向の長さは、前記凹部の挿入方向と平行な内側壁面の長さよりも短く形成されることを特徴とする回転電機。
【請求項8】
請求項7に記載の回転電機において、
前記第1のコイルセグメントの前記凸部は、挿入方向と平行な2つの突起側面と、前記挿入方向と直交方向に延在して2つの前記突起側面を接続する先端面と、前記突起側面と交差するように形成される2つの段差面を含んで構成され、
前記第2のコイルセグメントの前記凹部は、挿入方向と平行な2つの内側壁面と、前記挿入方向と直交方向に延在して2つの前記内側壁面を接続する底面と、前記内側壁面の前記底面と離れた側に形成される2つの突当面を含んで構成され、
第1のコイルセグメントの前記段差面と前記突起側面のなす角度が90度未満になるように形成され、
第2のコイルセグメントの前記内側壁面と前記突当面のなす角度が90度未満になるように形成されることを特徴とする回転電機。
【請求項9】
請求項8に記載の回転電機において、
前記スロットの径方向に複数のコイルを整列させるために不導体材料に形成されたボビンを配置し、
前記第1のコイルセグメントと前記第2のコイルセグメントを前記ボビン内に挿入し、
前記第1のコイルセグメントの前記凸部と、前記第2のコイルセグメントの前記凹部は前記回転軸方向と平行方向への圧入によって嵌合させ、嵌合位置が前記ボビンの内部に位置するように形成したことを特徴とする回転電機。
【請求項10】
請求項9に記載の回転電機において、
前記凸部は、少なくとも前記凹部との嵌合面に第一金属層を含み、前記凹部は少なくとも前記凸部との嵌合面に前記第一金属層よりも硬度の低い第二金属層を有することを特徴とする回転電機。
【請求項11】
請求項10に記載の回転電機において、
前記第1及び第2のコイルセグメントは同一金属によって形成され、前記第2のコイルセグメントの前記内側壁面に、前記第1のコイルセグメントの前記突起側面よりも硬度の低い金属によるメッキ層が形成されることを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転電機に関し、特に、ステータコアのスロット内で導体となるコイルセグメントの端部を連結する方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械の動力源や、自動車駆動用として用いられる回転電機は、高効率化が求められる。モータを高効率化するためには、モータの損失を低減することが重要であり、モータの損失の2大要因であるコイル銅損と鉄心鉄損の低減設計を検討していく設計手法が一般的である。一般的なモータでは鉄心部分には電磁鋼板が採用されており、その厚みやSiの含有量などによって損失レベルが異なるものが利用されている。軟磁性材料には、電磁鋼板よりも透磁率が高く、鉄損が低い鉄基アモルファス金属や、ファインメット、高磁束密度が期待できるナノ結晶材料などの高機能材料が存在する。
【0003】
回転電機は小型化の要求がある一方で、電気絶縁性の向上が求められる。特にステータ(固定子)の小型化には、巻線占積率を高めて高出力密度化を図る構造が有効である。例えば、導線として一般的な丸線に対して、断面が扁平形状の平角線を用いたコイルセグメントで構成する固定子構造が知られている。また、平角線を用いたステータを構成する際に、分割されたコイルセグメントの端部を接続するセグメント方式があり、このセグメント方式として大きく分けてコイルエンド接続方式とスロット内接続方式が知られている。
【0004】
コイルエンド接続方式は、コイルセグメントを概略U字形状であり、一対の直線部と、2つの直線部の一方側の端部間を接続する傾斜部を形成し、その2つの直線部がそれぞれステータコアのスロット内に収納されることによって、ロータ(回転子)に回転トルクを発生させるための磁界を発生させる。傾斜部は、ステータコアの軸方向の一方側の端部から外側に配置され、ステータコアのスロットから外側に突き出る構造となる。コイルセグメントの各直線部は、スロットのスロットを貫通して他方側(反対側)の端部から突出するように配置され、ステータコアの反対側の外部で曲げ加工されて、別コイルセグメントの直線部の曲げ加工された箇所と、コイルエンド間で溶接されて連続的に接続されたコイル構造となる。
【0005】
スロット内接続方式は、コイルセグメントが概略U字形状であり、一対の直線部と、と、2つの直線部の一方側の端部間を接続する傾斜部を有している。ステータコイルは、多数のコイルセグメントを直列に接続して形成されるものである。直列接続される電気的に隣接する2つコイルセグメントは、概略U字形状の一方の端部同士が接続される。各コイルセグメントの2つの直線部は、それぞれステータコアのスロット内に収納される。ここで直線部の長さは、ステータコアのスロット部の回転軸線方向の長さより短く形成される。傾斜部は、ステータコアの軸方向の端部から外側に突き出る構造となる。ここまでの構成はコイルエンド接続方式とほぼ同じである。しかし、スロット内接続方式では、2つのコイルセグメントの直線部がステータコアの軸方向の両端からスロット内に挿入されてスロットの内部で圧着等によって接続される構造となっている。この接続方式は、概略U字形状のコイルセグメントを量産して使用できる上に、直線部同士の接続にコイルエンドにおける曲げ加工と溶接が不要となるため、コイルエンド接続方式に比べて高生産化、小型化に有利である。尚、スロット内で接続される直線部の端部の形状は、直線部の端部同士の接続工法によって異なる場合がある。
【0006】
このようなスロット内接続方式を用いた回転電機のステータに関する技術として特許文献1が開示されている。
図11は従来の回転電機101を示す断面斜視図である。回転電機101は、内転型のラジアルギャップ型回転電機で、電力により磁力を発生させるステータ110と、ステータ110から発生する磁力により回転するロータ5と、ロータ5と共に回転するシャフト4と、ステータ110とロータ5を覆うハウジング2と、を備えて構成される。ハウジング2には、設置台等に固定するための取り付け部3が設けられる。ステータ110は、積層鋼板によって構成されるステータコア11と、ステータコア11のスロット内に配置されるステータコイル120を含んで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の回転電機のステータでは、ステータコア11のスロット内にて、対向する2つの導体セグメント(
図12で後述するコイルセグメント130、140)の脚部の先端(直線部の端部)に、部分的に長手方向に突出するように形成される突起部(凸部)か、先端面に溝部が形成された溝部(凹部)のいずれかが形成されている。
図12は従来の回転電機101のステータコイル120のうち、端部に凸部135が形成されたコイルセグメント130と、端部に凹部146が形成されたコイルセグメント140の接続構造を示す部分側面図である。ここでは多数の第1コイルセグメント130と多数の第2コイルセグメント140が交互に接続されることによって、図示しない1相分のステータコイル120を構成する。第1コイルセグメント130の2つの端部には凸部135が形成され、第2コイルセグメント140の2つの端部には凹部146が形成され、これら凸部135と凹部146が嵌合されるようにして接合される。凸部135と凹部146の導通経路は、例えば、凸部135の先端面135aと凹部146の底部146cの接触箇所や、凸部135の突起側面135bと凹部146の軸方向に対して平行な内側壁面146bで接触して確保される事例が多い。凸部135は概略四角柱で、これに対向する凹部146が概略四角柱状の同等の空間を備えている。凸部135と凹部146の加工された表面には、金型などで打抜き加工される際にマイクロレベルの溝が生じる。
【0009】
凸部135と凹部146の嵌合部分の接合状態を示す部分拡大図が、
図12の下側の図である。凸部135の表面にはマイクロレベルの突起138aや窪み138bが存在し、凹部146の表面にはマイクロレベルの突起149aや窪み149bが存在する。マイクロレベルで観察すると、突起138aと突起149aが接触点(例えば矢印149cの部位)となって導通経路となる。このように従来の嵌合部分では、マイクロレベルの突起138a、149aが主に接触することになるため、全体的に見た際の接触面積の更なる改善の余地が残されていた。
【0010】
特許文献1では、凸部135の突出側面と凹部146の内側面のいずれに、メッキ層が形成されるが、これらは同種のメッキであるため、メッキ層間の接触部分でもマイクロレベルの凹凸による接触状態にある。尚、
図12の部分拡大図では、接触面の凸凹状態を理解のために突起138a、149aと窪み138b、149bを誇張して図示しているが、実際には凹凸状態は目視ではわからない程度の小さいものである。このように、特許文献1の凸部135側のメッキ層と凹部146側のメッキ層は同種の金属によるものであるため、メッキ同士に塑性変形が起こりにくく、マイクロレベルの溝を埋める機能が不十分であることがわかった。
【0011】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、コイルセグメントの凹部と凸部の嵌合部分に存在するマイクロレベルの溝の改善により、コイルセグメント間の嵌合領域の接触面積を拡大させて導通信頼性を向上させた回転電機を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、ステータコアのスロット内での接続される2つの平角線状のコイルセグメントの嵌合部の物理的な嵌合状態を改善させた回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、回転軸に固定されるロータと、金属製の複数のコイルセグメントを接続して形成されるステータコイルと、ステータコイルの一部を収納するスロットが複数形成されたステータコアと、を有するステータを備えた回転電機において、突起部(凸部)を一端に有する第1コイルセグメントと、溝部(凹部)を一端に有する第2コイルセグメントと、突起部が溝部に嵌合される嵌合部を有するステータコイルを備え、突起部は、少なくとも溝部との嵌合面が第一金属にて形成され、溝部には少なくとも突起部との嵌合面に第一金属より硬度が低い第二金属層が形成されるようにした。即ち、コイルセグメントは、ステータコアの回転軸方向の一方側又は他方側からスロット内に挿入されるものであって、スロットに収納される直線部と、ステータコアの端面(エンド面)から突出してステータコアの軸方向に対して交差する方向に延在するようにしてスロットの外部に配置される傾斜部を有する。また、コイルセグメントとして、凸部を一端に有する第1のコイルセグメントと凹部を一端に有する第2のコイルセグメントを用意し、これら凸部又は凹部の嵌合面の一方側が第一金属層になり、他方側に第一金属層よりも硬度の低い第二金属層となるように、硬度の異なる金属層による接合となるように構成した。例えば、第1及び第2のコイルセグメントは同一金属材料によって形成し、第2のコイルセグメントの凹部の挿入方向と平行な内側溝面に、第1のコイルセグメントよりも硬度の低い金属によるメッキ層(第2金属層)を形成する。また、第1のコイルセグメントの凸部の挿入方向と平行な突起側面に、第2のコイルセグメントの凹部の挿入方向と平行な内側溝面よりも硬度の高い金属によるメッキ層(第2金属層)を形成しても良い。
【0013】
本発明の他の特徴によれば、回転電機の第1のコイルセグメントの凸部の挿入方向と平行な突起側面の挿入方向の長さL1が、凹部の挿入方向と平行な内側溝面の挿入方向の長さL2よりもわずかに短くなるように形成する。第1のコイルセグメントの凸部は、挿入方向と平行な2つの突起側面と、挿入方向と直交方向に延在して2つの突起側面を接続する先端面と、突起側面と交差するように形成され、先端面と離れた側に形成される2つの段差面を含んで構成される。また、第2のコイルセグメントの凹部は、挿入方向と平行な2つの内側壁面と、挿入方向と直交方向に延在して2つの内側壁面を接続する底面と、内側壁面の底面と離れた側に形成される2つの突当面を含んで構成される。そして、第1のコイルセグメントの段差面と突起側面のなす角度が90度以下になるように形成され、第2のコイルセグメントの内側壁面と突当面のなす角度が90度以下になるように形成される。
【0014】
本発明のさらに他の特徴によれば、第1及び第2のコイルセグメントは、金属製の導体部と、導体部の外側を被覆する不導体による被膜部とを有し、第1のコイルセグメントの先端面及び突起側面は被膜部によって覆われない部位に形成され、第2のコイルセグメントの内側壁面と突当面は被膜部によって覆われない部位に形成される。また、スロットの径方向に複数のコイルを整列させるために不導体材料に形成されたボビンを配置し、第1のコイルセグメントと第2のコイルセグメントをボビン内に挿入して、第1のコイルセグメントの凸部と、第2のコイルセグメントの凹部は回転軸方向と平行方向への圧入によって嵌合され、その嵌合位置がボビンの内部空間内に位置するようにした。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ステータコアのスロット内での2つの平角線状のコイルセグメントの接続部の導通信頼性を向上できる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施例に係る回転電機1のロータ5とステータ10の斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施例に係るステータ10の斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施例に係るステータコイル20の組み立て方法を説明するための展開図であって、第1コイルセグメント30と第2コイルセグメント40をステータコア11に差し込む状態を示す。
【
図4】(A)は本発明の第1の実施例に係るステータコイル20の組み立て後の状態を示す断面斜視図であり、(B)はボビン15の斜視図と、ボビン15内のステータコイル20の嵌合部の部分透視図である。
【
図5】本発明の第1の実施例に係る第1コイルセグメント30の凸部35と、第2コイルセグメント40の凹部46の形状を示す側面図である(嵌合前)。
【
図6】本発明の第1の実施例に係る第1コイルセグメント30の凸部35と、第2コイルセグメント40の凹部46の形状を示す側面図である(嵌合後)。
【
図7】本発明の第2の実施例に係る第1コイルセグメント30の凸部35と、第2コイルセグメント40の凹部46を示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は嵌合前の側面図であり、(C)は嵌合後の側面図である。
【
図8】本発明の第3の実施例に係る第1コイルセグメント30の凸部35と、第2コイルセグメント40の凹部46を示す側面図である。
【
図9】本発明の第4の実施例に係る第1コイルセグメント80の凸部85と、第2コイルセグメント90の凹部96の形状を示す側面図であって、(A)は嵌合前の状態であり、(B)は嵌合後の状態である。
【
図10】本発明の第5の実施例に係るステータコイルの嵌合部の接続位置を例示するための図である。
【
図11】従来の回転電機101を示す断面斜視図である。
【
図12】
図11のステータコイル120の第1コイルセグメント130の凸部135と、第2コイルセグメント140の凹部146の嵌合時の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施例の回転電機を説明する。以下の実施例は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【実施例0018】
図1は本発明の第1の実施例に係る回転電機1のロータ5とステータ10の斜視図である。回転電機1は、シャフト4に固定されたロータ5が、略円筒形のステータ10の内部で回転する。径方向に見てステータ10の外周面と、ロータ5の外周面は非接触であり、一定の空隙9を有する。回転電機1のロータ5は従来の回転電機101(
図11参照)と同じものを用いることができる。ロータ5は、磁極を形成する複数の永久磁石(図では見えない)を含んで形成される。ステータ10は、ステータコア11と、ステータコア11に形成されたスロット14(後述する
図3参照)に配置されるステータコイル20(図では見えない)を有して構成される。ステータコア11の回転軸線A1方向の両方の端部には、フランジ17a、17bが設けられる。
【0019】
図2は、第1の実施例に係るステータ10の概略斜視図である。ステータコア11は、打ち抜きされた薄い電磁鋼板を回転軸線A1方向に積層して形成されるものであって、外周側に円筒部12が形成され、円筒部12から径方向内側に向けて突出するティース13が複数形成される。隣接するティース13間の空間がスロット14となる。複数のスロット14の各々には、分布巻きされたステータコイル20が差し込まれる。ステータコイル20は、電気的に導電度の高い銅や、アルミニウムなどが適しており、この表面にはエナメル被膜や、無機材被膜などの絶縁塗料が塗られているものが使用される。ステータコイル20の長手方向と直交する断面の形状は円形又は長方形が好ましく、本実施例では長方形に形成された軟銅によるエナメル線が用いられる。スロット14には、内周側から外周側にかけて6本のエナメル線が平行に並ぶように配置される。ステータコイル20はセグメント方式が採用され、スロット14の内部で接続される。
【0020】
図3は、本発明の第1の実施例に係るステータコイル20の組み立て方法を説明するための展開図である。ここでは第1コイルセグメント30と第2コイルセグメント40をステータコアの複数のスロットのいずれかに差し込む前の状態を示す概略斜視図である。本実施例のステータコイル20の各相は、連続する1本のエナメル線で形成されるのではなく、分割されたエナメル線を複数連結させることによって、電気的に接続されたコイルが形成される。この分割されたコイル部分を、本明細書では「コイルセグメント」と称し、複数のコイルセグメントを物理的、且つ、電気的に接続したものを「(一相分の)コイル」又は「ステータコイル」と称する。回転電機1のステータコイル20は、つながったひとつの波巻コイルを複数形成する。
【0021】
ステータコア11の回転軸A1方向の一方側(
図3では前側)から、複数の第1コイルセグメント30が矢印26の方向に向けてスロット14に挿入される。これに対向するように、回転軸A1方向の他方側(
図3では後側)から複数の第2コイルセグメント40が矢印28の方向に向けてスロット14に挿入される。第1コイルセグメント30と第2コイルセグメント40の端部は、スロット14の内部空間内にて接続される。
【0022】
第1コイルセグメント30は、スロット14内に収納される直線部31、32と、ステータコア11の前側端面から突出してステータコア11の軸方向に対して交差する方向に延在するようにしてスロット部から露出する傾斜部33、34を有して、概略U字状に形成される。直線部31、32の端部であって、傾斜部33、34と接続されていない解放端の端部には、凸部35、36がそれぞれ形成される。
【0023】
第2コイルセグメント40は、スロット14内に収納される直線部41、42と、ステータコア11の後側端面から突出してステータコア11の軸方向に対して交差する方向に延在するようにしてスロット部から露出する傾斜部43、44を有して、概略U字状に形成される。直線部41、42の端部であって、傾斜部43、44と接続されていない解放端の端部には、凹部45、46がそれぞれ形成される。第2コイルセグメント40の基本的な形状は、第1コイルセグメント30と同じような形状である。但し、第1コイルセグメント30の傾斜部33、34、第2コイルセグメント40の傾斜部43、44の形状は、直線部31、32、41、42が収容されるスロット14の位置に応じて長さや傾斜する角度が異なる。本実施例では、2~3種類の形状の第1コイルセグメント30と、2~3種類の形状の第2コイルセグメント40が複数準備される。
【0024】
第1コイルセグメント30の2つ端部であって、直線部31の端部には凸部35が形成される。凸部35は、先端面35aから所定の長さ分だけ2つの側面を直方体状に取り除いた部位を形成することによって形成された突起部である。直線部32の端部にも同様に凸部36が形成される。凸部35と凸部36の形状は同一である。
【0025】
第2コイルセグメント40の2つ端部であって、直線部41の端部には凹部45が形成される。凹部45は、先端面45aの中心を含む領域を所定の長さ分だけ長手方向に窪むように切り抜いた溝部である。直線部42の端部にも同様に凹部46が形成される。凹部45と凹部46の形状は同一である。
【0026】
組み立て時において、第1コイルセグメント30の端部(凸部35)は、第2コイルセグメント40の端部(凹部46)と嵌合され、端部(凸部36)は、第2コイルセグメント40の端部(凹部45)と嵌合される。この嵌合は、凸部36をスロット14内に向けて直線部32の長手方向後方側に移動させ、凹部45をスロット14内に向けて直線部32の長手方向前方側に移動させる。すると凸部36が凹部45に差し込まれるようにして嵌合される。同様にして、凸部35をスロット14内に向けて直線部32の長手方向後方側に移動させ、凹部46をスロット14内に向けて直線部32の長手方向前方側に移動させる。すると凸部35が凹部46に差し込まれるようにして嵌合される。この嵌合位置は、ステータコア11の回転軸線方向(前後方向)のほぼ中央に配置される。
【0027】
ステータコイル20のコイルセグメントの接合には、溶接やカシメ、ハンダ付けなどを用いることが多い。但し、本実施例では、溶接やカシメ、ハンダなどを行わずに、嵌合だけで接続が完了するように構成される。この嵌合を良好に行うために、第1コイルセグメント30の端部(凸部35、36)と第2コイルセグメント40の端部(凹部45、46)が、
図4以降にて後述するような形状にて製造される。さらに、本実施例では、
図3の右側丸枠内に示すように、スロット14内にボビン15を設けて、ボビン15内に第1コイルセグメント30の直線部31、32を挿入し、ボビン15の内部で接続するようにした。
【0028】
図3の右側丸枠内では、ティース13間に形成されるスロット14に設けられるボビン15の一部と、第1コイルセグメント30の2本分だけを図示している。実際にはボビン15(詳細は後述の
図4参照)には径方向に6本分の第1コイルセグメント30が配置される。丸枠内の図において、第1コイルセグメント30の断面形状は、長方形に形成され、断面の長辺方向が周方向に配置され、断面の短辺方向が径方向に配置される。合成樹脂製のボビン15は、複数の第1コイルセグメント30の直線部31、32を収容し、これらがスロット14内でがたつかないように保持する。第1コイルセグメント30に使用されるエナメル線は、銅線30aと、その外側表面部分にエナメル被膜30bを有する。エナメル被膜(被覆部)30bは、電気を通さない。また、ボビン15は不導体及び非磁性体の材料、例えば、合成樹脂にて製造される。尚、ボビン15は必ず設けなければならない訳ではない。例えばノーメックスシート等を用いて複数の第1コイルセグメント30をスロット14内で規則正しく保持させる構造や、その他の公知のコイル保持構造を採用しても良い。
【0029】
図3では図示していないが、第2コイルセグメント40が収容される部分においても、右側丸枠内に示す断面形状と同様の配置であって、第2コイルセグメント40は直線部41、42の長手方向に直交する断面形状が長方形に形成される。また、直線部41、42が径方向に向けて複数本(ここでは6本)配置される。
【0030】
ステータ10の組み立て工程では、複数の第1コイルセグメント30をステータコア11の前側から差し込み、複数の第2コイルセグメント40を後ろ側から差し込んだら、複数の第2コイルセグメント40の頂点43aを第2の治具(図示せず)の円筒面に当接させ、複数の第1コイルセグメント30の頂点33aを第1の治具(図示せず)の円筒面に当接させ、第1の治具と第2の治具を回転軸線A1方向に近づけるように移動させることで、第1コイルセグメント30の凸部35、36を第2コイルセグメント40の凹部46、45に押し込むようにして嵌合させる。このような組み立て方法を可能とするために、第1コイルセグメント30の傾斜部33、34の山状の形状、特に傾斜や長さが最適となるように形成される。同様に第2コイルセグメント40の傾斜部43、44の山状の形状、特に傾斜や長さが最適となるように形成される。このような組み立て方法の実行後に形成されるステータ10の断面斜視図が
図4である。
【0031】
図4(A)は本発明の第1の実施例に係るステータコイル20の組み立て後の状態を示す断面斜視図であり、(B)はボビン15の斜視図と、ボビン15内のステータコイル20の嵌合部の部分透視図である。
図4(A)に示すように、第1コイルセグメント30と第2コイルセグメント40はステータコア11の回転軸線方向のほぼ中央付近の接合部で接続される。接合部より前方側のボビン15の内部には、径方向内側(回転軸線A1に近い方)から径方向外側にかけて、第1コイルセグメント30の直線部32、直線部31…が交互に、合計6本整列され、同様に、接合部より後方側のボビン15の内部には、径方向内側から径方向外側にかけて、第2コイルセグメント40の直線部42、直線部41…が交互に、合計6本整列される。
【0032】
図4(B)はボビン15の形状を示す単体図である。ここでは、収容される6本の銅線のうち符号31で示す1本だけ示し、その他の部分の銅線は図示していない。ボビン15は、コイルによって発生される磁界に影響しないように、非磁性体の材質であることが重要であり、ここでは合成樹脂の一体構造によって形成される。ボビン15は、第1コイルセグメント30と第2コイルセグメント40の断面形状に対応して長方形の断面を6区画分形成したもので、各区画は、ボビン15の一方側(前方側)から他方側(後方側)に貫通する管路となる。第1コイルセグメント30と第2コイルセグメント40は、ボビン15の管路の中央部分、即ち図中の矢印18b付近にて接合される。尚、第1コイルセグメント30の直線部31(又は32)と第2コイルセグメント40の直線部42(又は41)の接合箇所は、符号18b付近で示すボビン15の長手方向中央部分だけに限られずに、他の位置、例えば、矢印18aから18cの範囲内の任意の位置に設定できる。また、接合位置の設定に合わせて、第1コイルセグメント30と第2コイルセグメント40の直線部の長さを適宜設定すれば良い。
【0033】
図4(B)の右側の拡大図は、符号18bで示す接合箇所付近の透視図である。この拡大図によって、ボビン15内における凸部35と凹部46の位置関係がわかるであろう。ここでは凸部35の突起側面35bと、凹部46の内側壁面46bが回転軸線方向(前後方向)及び、径方向に延在する面となるように配置される。このように嵌合される主な面(突起側面35bとの内側壁面46b)が、回転電機1の回転方向(周方向)と直交するように配置されることによって、ロータ5の加速、減速時に加わる力によって第1コイルセグメント30の直線部31(又は32)と、第2コイルセグメント40の直線部42(又は41)を密着させる力が加わるので、凸部35と凹部46(又は凸部36と凹部45)が外れてしまうことを効果的に回避できる。
【0034】
図5は、本発明の第1の実施例に係る第1コイルセグメント30の直線部31の一端に形成された凸部35と、第2コイルセグメント40の直線部42の一端に形成された凹部46の形状を示す側面図である。ここでは、第1コイルセグメント30と第2コイルセグメント40の接合(嵌合)前の状態を示している。第1コイルセグメント30の直線部31の端部では、加工前のエナメル線から点線部分39a、39bで示す直方体部分を切り落とすことによって、残りの部分により凸部35が形成される。この切り落とす製造方法は、プレス加工、研削等の公知の手法を用いることができる。このような加工の結果、直線部31の端部には、挿入方向と平行方向に延在する2つの突起側面35bと、挿入方向と直交方向に延在して2つの突起側面35bの辺部を接続する先端面35aと、2つの段差面35cが形成される。2つの段差面35cは、突起側面35bの先端面35aから離れた側に形成される面であり、突起側面35bの他方の辺部と直角に交差するように形成される。
【0035】
第1コイルセグメント30は厚さT、幅Wの角棒状のエナメル線を切断してその長手方向の長さが決定されるため、先端面35aは切断面の一部であり、エナメル層が存在しない。また、平行する2つの突起側面35bと、2つの段差面35cは、削り取られた部位であるためエナメル層は存在しない。本実施例で、第1コイルセグメント30の先端面35aの幅はW2であり、突起側面35bの前後方向の長さはL1である。また、2つの段差面は、長手方向(挿入方向)にみて同一位置にあり、それらの幅はW1、W3である。本実施例では、強度的な面も考慮して、W1=W3とし、更にW2≧W1、W3とした例である。
【0036】
第2コイルセグメント40側の直線部42では、点線49に示す先端部分から直線部42の長手方向の内側(挿入方向と反対方向)に窪むように、直方体状に繰りぬいた空間47を形成することによって凹部(溝部)46が形成される。この凹部46の形成方法は、プレス加工、切削等の公知の手法を用いることができる。このような加工の結果、直線部42の端部には、挿入方向と平行な2つの内側壁面46bと、凸部35挿入方向と直交方向に延在して2つの凸部35内側壁面46bを接続する底面46cと、内側壁面46bの底面と離れた辺と直交するように形成される2つの突当面46aを含んで形成される。
【0037】
第2コイルセグメント40は厚さT、幅Wの角棒状のエナメル線を切断してその長手方向の長さが決定されるため、突当面46aは切断面の一部であり、表面にはエナメル層が存在しない。また、平行する2つの内側壁面46bの間の空間47は切り抜かれる部位になるため、内側壁面46bと底面46cの表面には、エナメル層は存在しない。第2コイルセグメント40の突当面46aの幅はW4、W6であり、内側壁面46bの前後方向の長さはL2である。また、2つの段差面の幅はW4、W6であり、ここでは、W4=W6となるようにし、更にW5≧W4、W6となるように形成する。
【0038】
2つの内側壁面46bの表面全体には、第1コイルセグメント30の表面(第一金属層)の硬度よりも、低い硬度を有する第二金属層が形成される。ここでは第二金属層として、メッキ技術を用いて金属メッキ層50を形成する。底面46cの表面(第一金属層)を金属メッキ層50にて形成するか否かは任意である。金属メッキ層50のメッキ加工時に内側壁面46b、突当面46a、底面46cのそれぞれにメッキ層を形成した方が製造上有利ならばこれらすべてに金属メッキ層50を形成しても良いし、内側壁面46bと底面46cだけに金属メッキ層50を形成するようにしても良い。
【0039】
図5の下側に引き出した図は、内側壁面46bのC部分の拡大図である。第2コイルセグメント40の内側壁面46bの金属部分は、第1コイルセグメント30と同じ第1の金属(例えば、無酸素銅など純度の高い金属)によって形成される。その表面は、矢印49に示すように金型などで打抜き加工される際に生じるマイクロレベルの凹凸が生じている(尚、
図5では凹凸49を極端に大きく図示しているが、実際には目視できない程の小さなものである)。この内側壁面46bの表面に金属メッキ層50を形成する。金属メッキ層50の製法は公知の手法、例えば、電解メッキや無電解メッキを用いることができる。金属メッキ層50の硬度はメッキの素材や製法によって調整可能であるが、第1コイルセグメント30の一端に有する凸部35の金属やメッキの硬度よりも小さくすると好ましい。金属メッキ層50の素材は、例えば、金、銀、ニッケル、錫、亜鉛であり、硬度、導通性および価格の観点で錫メッキが好ましい。
【0040】
図6は、第1コイルセグメント30と第2コイルセグメント40の接合後の状態を示す側面図である。第2コイルセグメント40の内側壁面46bには、金属メッキ層50が形成される。金属メッキ層50は、第1コイルセグメント30の凸部35の金属部分、特に凸部35の突起側面35bの部材よりも硬度が低い材質とする。
図5に示す第1コイルセグメント30と第2コイルセグメント40の状態から、これらを互いに近づけるようにして凸部35を凹部46内に嵌め込むようにして嵌合する。すると、この嵌合の際に、金属メッキ層50が塑性変形することにより、凸部35の突起側面35bの表面に存在するマイクロレベルの突起38aや溝38bに入り込み、突起側面35bと金属メッキ層50との間の空隙を埋める作用を奏する。金属メッキ層50は凹部46側にあらかじめ形成されているので、内側壁面46bと金属メッキ層50は強固に接触しており、これらの間、特に、内側壁面46bの表面に存在するマイクロレベルの突起49aや溝49bと金属メッキ層50との間には空隙は存在しない。このように塑性変形した金属メッキ層50は、突起側面35bの表面と凹部46の内側壁面46b間の物理的、電気的な接触を大幅に改善する。
【0041】
本実施例では、第1コイルセグメント30と第2コイルセグメント40間の電気的な接触抵抗に大きく影響する領域(突起側面35bと内側壁面46b)の接触面積を拡大できるので、ステータコイルの実質的な導通経路を拡大して接触抵抗を低減させることができる。また、第1コイルセグメント30と第2コイルセグメント40の接触面積の拡大により、凸部35と凹部46の嵌合領域の物理的な嵌合力を高めることもできる。
【0042】
[効果]
本実施例の回転電機は、第1コイルセグメント30の端部に設けられた凸部35と、第2コイルセグメント40の端部に設けられた凹部46とをステータコア11のスロット14内で嵌合させ、この凸部35と凹部46とが嵌合した嵌合部において、金属メッキ層50の表面が部分的に塑性変形するため、凸部35と凹部46に複数の接触点を生成して、第1コイルセグメント30と第2コイルセグメント40の接触面積を拡大できる。この結果、第1コイルセグメント30と第2コイルセグメント40の導通性を高めて信頼性を向上できる上に、両社の実質的な接触度合いを改善できるため、凸部35と凹部46の機械的な嵌合力を向上できる。
【0043】
以上、
図5、
図6においては、第1コイルセグメント30の凸部35と、第2コイルセグメント40の凹部46の形状、及び、それらの嵌合状態を説明した。ここでは説明していないが、第1コイルセグメント30の凸部36の形状と、第2コイルセグメント40の凹部45の形状は、凸部35と凹部46の形状とそれぞれ同一であり、嵌合状態も同一となる。また、凸部36側には金属メッキ層が形成されずに、凹部45の少なくとも内側壁面に金属メッキ層50が形成される。このように、本実施例に係る第1コイルセグメント30と第2コイルセグメント40の嵌合部は、接触部位の凹部45、46側に金属メッキ層50が形成されるので、これらを電気的及び機械的に良好に嵌合させることができる。従来の回転電機で用いられた、導電性粒子を有するペースト状の結合剤を凸部と凹部に塗布し、熱硬化させて接続強度を高めた回転電機に比べると、本発明のステータ10では、ステータコイル20の分解が容易なので、回転電機が廃棄される場合における分別性を高め、材料の再利用性が容易でありリサイクル性に優れる。さらに、本実施例のステータコイル20の製造時に、ペースト状の結合剤を使用しないことと、ペースト使用時の硬化工程のような熱を加えることが不要となるので、製造が容易なだけでなく、環境負荷の低減に寄与することができ、環境に優しい回転電機を実現できる。
【0044】
以上説明した第1の実施例は、図示した形状だけに限られずに種々の変形が可能である。例えば、
図3~
図6では、凸部35が第1コイルセグメント30の両端に設けられ、凹部46が第2コイルセグメント40の両端に設けられる実施例を示した。しかし、これに限定されず、第1コイルセグメント30の一端に凸部35を形成して他端に凹部を形成し、同様に第2コイルセグメント40の一端に凹部45を形成して他端に凸部を形成しても良い。
【0045】
第1の実施例では、第1コイルセグメント30と第2コイルセグメント40をステータコア11の複数のスロット14のいずれかに差し込んだ後に嵌合させて、ステータコイル20を分布巻きする実施例を示した。しかし、これに限定されず、第1コイルセグメント30と第2コイルセグメント40をステータコア11の複数のスロット14の隣合う2つのスロット14に差し込み嵌合させてステータコイル20を集中巻きするようにしても良い。
以上、本発明の第2の実施例では、凸部35の長さL1′を凹部46の長さL2よりもわずかに短くしたので、第1コイルセグメント30と第2コイルセグメント40の確実な接触領域を、それぞれ4面ずつ確保できる。即ち、第1コイルセグメント30でみると、2つの突起側面35bと2つの段差面35cが接触領域となり、第2コイルセグメント40では、2つの突当面46aと2つの内側壁面46bが接触領域になる。第2の実施例では、電気的及び物理的な接触領域を十分確保することが可能となるので、導通経路の拡大によるステータコイル20の抵抗値を下げて導通性を向上させた回転電機1を実現できる。