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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139560
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20241002BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B41J2/14 301
B41J2/01 307
B41J2/01 123
B41J2/01 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050558
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】萩原 寛之
(72)【発明者】
【氏名】勝家 隼
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056FA10
2C056FA13
2C056HA07
2C056HA22
2C056HA42
2C056HA44
2C057AG44
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】拡張性の高い液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体を噴射する複数のヘッドチップを備えた液体噴射ヘッドHであって、前記複数のヘッドチップは、1又は複数の第1ヘッドチップと、前記第1ヘッドチップよりも噴射能力の高い1又は複数の第2ヘッドチップとを含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する複数のヘッドチップを備えた液体噴射ヘッドであって、
前記複数のヘッドチップは、1又は複数の第1ヘッドチップと、前記第1ヘッドチップよりも噴射能力の高い1又は複数の第2ヘッドチップとを含む、
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記複数のヘッドチップは、前記第1ヘッドチップを含み前記第1ヘッドチップと同じ噴射能力を有する複数のヘッドチップで構成された第1チップ群と、前記第2ヘッドチップを含み前記第2ヘッドチップと同じ噴射能力を有する複数のヘッドチップで構成された第2チップ群と、を含み、
前記第1チップ群の複数のヘッドチップは、第1方向に並んで配置され、且つ、隣り合うヘッドチップ同士は前記第1方向に直交する第2方向に見て互いの一部が重なるように配置され、
前記第2チップ群の複数のヘッドチップは、前記第1方向に並んで配置され、且つ、隣り合うヘッドチップ同士は前記第2方向に見て互いの一部が重なるように配置され、
前記第1チップ群と前記第2チップ群とは、前記第2方向にずれて配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載の液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置であって、
1又は複数の前記液体噴射ヘッドによって構成され、前記第1方向を長手方向とする第1ラインヘッドと、
媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
を備え、
前記第1ラインヘッドの前記液体噴射ヘッドにおいて、前記第1チップ群は、前記第2チップ群に対して前記搬送方向に関して下流側に配置され、
前記第1ラインヘッドの前記液体噴射ヘッドにおける前記第1チップ群は、色材を含むインクを噴射し、
前記第1ラインヘッドの前記液体噴射ヘッドにおける前記第2チップ群は、前処理液を噴射する、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
1又は複数の前記液体噴射ヘッドによって構成され、前記第1方向を長手方向とする第2ラインヘッドを備え、
前記第1ラインヘッドは、前記第2ラインヘッドに対して前記搬送方向に関して上流側に配置され、
前記第2ラインヘッドの前記液体噴射ヘッドにおいて、前記第1チップ群は、前記第2チップ群に対して前記搬送方向に関して上流側に配置され、
前記第2ラインヘッドの前記液体噴射ヘッドにおける前記第1チップ群は、色材を含むインクを噴射し、
前記第2ラインヘッドの前記液体噴射ヘッドにおける前記第2チップ群は、後処理液を噴射する、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記搬送方向に関して前記第1ラインヘッドと前記第2ラインヘッドとの間に配置された第3ラインヘッドを備え、
前記第3ラインヘッドを構成する1又は複数の液体噴射ヘッドは、前記第1ヘッドチップと同じ噴射能力を有する複数のヘッドチップで構成され、
前記第3ラインヘッドの前記液体噴射ヘッドにおける前記複数のヘッドチップは、色材を含むインク液体を噴射する、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
主走査方向に往復移動されながら液体を噴射する液体噴射ヘッドであって、
前記複数のヘッドチップは、前記主走査方向に並んで配置され、
前記複数の第2ヘッドチップは、前記主走査方向の一端に配置された第2ヘッドチップAと、前記主走査方向の他端に配置された第2ヘッドチップBと、を含み、
前記1又は複数の第1ヘッドチップは、前記第2ヘッドチップAと前記第2ヘッドチップBとの間に配置され、
前記1又は複数の第1ヘッドチップは、色材を含むインクを噴射し、
前記第2ヘッドチップAは、前処理液を噴射し、
前記第2ヘッドチップBは、後処理液を噴射する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
請求項1に記載の液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置であって、
前記液体噴射ヘッドである第1液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドである第2液体噴射ヘッドと、
前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドを保持するとともに、主走査方向に往復移動するキャリッジと、
を備え、
前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドは、前記主走査方向に並んで配置され、
前記第1液体噴射ヘッドの前記複数のヘッドチップは、前記主走査方向に並んで配置され、
前記第2液体噴射ヘッドの前記複数のヘッドチップは、前記主走査方向に並んで配置され、
前記第1液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第1ヘッドチップは、前記主走査方向に関して、前記第1液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第2ヘッドチップと、前記第2液体噴射ヘッドとの間に配置され、
前記第2液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第1ヘッドチップは、前記主走査方向に関して、前記第2液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第2ヘッドチップと、前記第1液体噴射ヘッドとの間に配置され、
前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドの前記複数の第1ヘッドチップは、色材を含むインクを噴射し、
前記第2液体噴射ヘッドの前記第2ヘッドチップは、前処理液を噴射し、
前記第1液体噴射ヘッドの前記第2ヘッドチップは、後処理液を噴射する、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項8】
主走査方向に往復移動されながら液体を噴射する液体噴射ヘッドであって、
前記複数のヘッドチップは、前記主走査方向に直交する媒体の搬送方向に並んで配置され、
前記複数の第2ヘッドチップは、前記搬送方向に関して一端に配置された第2ヘッドチップAと、前記搬送方向に関して他端に配置された第2ヘッドチップBと、を含み、
前記1又は複数の第1ヘッドチップは、前記第2ヘッドチップAと前記第2ヘッドチップBとの間に配置され、
前記1又は複数の第1ヘッドチップは、色材を含むインクを噴射し、
前記第2ヘッドチップAは、前処理液を噴射し、
前記第2ヘッドチップBは、後処理液を噴射する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
請求項1に記載の液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置であって、
前記液体噴射ヘッドである第1液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドである第2液体噴射ヘッドと、
前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドを保持するとともに、主走査方向に往復移動するキャリッジと、
を備え、
前記第1液体噴射ヘッドにおいて、前記1又は複数の第2ヘッドチップは、前記1又は複数の第1ヘッドチップに対して媒体の搬送方向に関して上流側に配置され、
前記第2液体噴射ヘッドにおいて、前記1又は複数の第2ヘッドチップは、前記1又は複数の第1ヘッドチップに対して前記搬送方向に関して下流側に配置され、
前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドは、前記第1液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第1ヘッドチップと、前記第2液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第1ヘッドチップとが前記搬送方向に同じ位置となるように配置され、
前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドの前記複数の第1ヘッドチップは、色材を含むインクを噴射し、
前記第1液体噴射ヘッドの前記第2ヘッドチップは、前処理液を噴射し、
前記第2液体噴射ヘッドの前記第2ヘッドチップは、後処理液を噴射する、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項10】
前記複数のヘッドチップの夫々は、液体を噴射する複数のノズルが第1方向に並んだノズル列を有し、
前記1又は複数の第1ヘッドチップは、前記第1方向に直交する第2方向に関して同じ位置に配置され、且つ、前記第1方向に関して異なる位置に配置された、第1ヘッドチップA及び第1ヘッドチップBを含み、
前記1又は複数の第2ヘッドチップは、前記第2方向に関して同じ位置に配置され、且つ、前記第1方向に関して異なる位置に配置された、第2ヘッドチップA及び第2ヘッドチップBを含み、
前記第1ヘッドチップA及び前記第1ヘッドチップBと、前記第2ヘッドチップA及び前記第2ヘッドチップBとは、前記第2方向に関して異なる位置に配置され、
前記第2方向に見て、
前記第1ヘッドチップAの前記ノズル列の一端部は、前記第2ヘッドチップAの前記ノズル列と部分的に重なり、
前記第1ヘッドチップAの前記ノズル列の他端部は、前記第2ヘッドチップBの前記ノズル列の一端部と部分的に重なり、
前記第2ヘッドチップAの前記ノズル列の他端部は、前記第1ヘッドチップBの前記ノズル列と部分的に重なり、
前記第1ヘッドチップA、前記第1ヘッドチップB、前記第2ヘッドチップA及び前記第2ヘッドチップBには、共通の供給流路を介して同じ種類の色材を含むインクが供給される、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項11】
前記第1ヘッドチップと前記第2ヘッドチップとは、互換性がある、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項12】
前記液体噴射ヘッドは、前記第1ヘッドチップを収容している第1収容空間と、前記第2ヘッドチップを収容している第2収容空間と、を有し、
前記第1ヘッドチップは、前記第2収容空間に収容可能であり、
前記第2ヘッドチップは、前記第1収容空間に収容可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項13】
前記第1ヘッドチップ及び前記第2ヘッドチップに同じ駆動波形を供給することで同じ種類の液体を噴射させた場合に、前記第2ヘッドチップのノズルから噴射される液体の重量は、前記第1ヘッドチップのノズルから噴射される液体の重量よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項14】
1記録周期において、前記第2ヘッドチップの1つのノズルから液体を噴射させて媒体に1ドットを形成する際の最大噴射重量は、前記第1ヘッドチップの1つのノズルから噴射させて前記媒体に1ドットを形成する際の最大噴射重量よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項15】
請求項1に記載の液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置であって、
前記液体噴射ヘッドである第1液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドである第2液体噴射ヘッドと、
前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドを保持するとともに、主走査方向に往復移動するキャリッジと、
を備え、
前記第1液体噴射ヘッドと前記第2液体噴射ヘッドとは、媒体の搬送方向に関して同じ位置に配置され、且つ、前記主走査方向に並んでおり、
前記第1液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第1ヘッドチップは、前記搬送方向に関して、第1位置にあり、
前記第1液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第2ヘッドチップは、前記搬送方向に関して、前記第1位置とは異なる第2位置にあり、
前記第2液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第1ヘッドチップは、前記搬送方向に関して、前記第2位置にあり、
前記第2液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第2ヘッドチップは、前記搬送方向に関して、前記第1位置にあり、
前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドの前記複数の第1ヘッドチップは、第1液体を噴射し、
前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドの前記複数の第2ヘッドチップは、第2液体を噴射する、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に液体としてインクを噴射するインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドは、液体を噴射するノズルと、ノズルに連通する流路内の液体に圧力変化を生じさせる圧力発生手段と、を具備するヘッドチップを具備する。
【0003】
ヘッドチップは、単体でノズルの並設されたノズル列の多列化や長尺化などを行うのは、ヘッドチップの歩留まりが低下すると共に製造コストが高価になってしまうため困難である。このため、共通する部材に2以上の複数のヘッドチップを固定した液体噴射ヘッドが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-133604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液体噴射ヘッドを構成する複数のヘッドチップは、共通構造を有するため、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置の拡張性に限界があり、拡張性の高い液体噴射ヘッド及び液体噴射装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射する複数のヘッドチップを備えた液体噴射ヘッドであって、前記複数のヘッドチップは、1又は複数の第1ヘッドチップと、前記第1ヘッドチップよりも噴射能力の高い1又は複数の第2ヘッドチップとを含む、ことを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0007】
本発明の他の態様は、上記記載の液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置であって、1又は複数の前記液体噴射ヘッドによって構成され、前記第1方向を長手方向とする第1ラインヘッドと、媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、を備え、前記第1ラインヘッドの前記液体噴射ヘッドにおいて、前記第1チップ群は、前記第2チップ群に対して前記搬送方向に関して下流側に配置され、前記第1ラインヘッドの前記液体噴射ヘッドにおける前記第1チップ群は、色材を含むインクを噴射し、前記第1ラインヘッドの前記液体噴射ヘッドにおける前記第2チップ群は、前処理液を噴射する、ことを特徴とする液体噴射装置にある。
【0008】
また、本発明の他の態様は、上記態様に記載の液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置であって、前記液体噴射ヘッドである第1液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドである第2液体噴射ヘッドと、前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドを保持するとともに、主走査方向に往復移動するキャリッジと、を備え、前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドは、前記主走査方向に並んで配置され、前記第1液体噴射ヘッドの前記複数のヘッドチップは、前記主走査方向に並んで配置され、前記第2液体噴射ヘッドの前記複数のヘッドチップは、前記主走査方向に並んで配置され、前記第1液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第1ヘッドチップは、前記主走査方向に関して、前記第1液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第2ヘッドチップと、前記第2液体噴射ヘッドとの間に配置され、前記第2液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第1ヘッドチップは、前記主走査方向に関して、前記第2液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第2ヘッドチップと、前記第1液体噴射ヘッドとの間に配置され、前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドの前記複数の第1ヘッドチップは、色材を含むインクを噴射し、前記第2液体噴射ヘッドの前記第2ヘッドチップは、前処理液を噴射し、前記第1液体噴射ヘッドの前記第2ヘッドチップは、後処理液を噴射する、ことを特徴とする液体噴射装置にある。
【0009】
また、本発明の他の態様は、上記態様に記載の液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置であって、前記液体噴射ヘッドである第1液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドである第2液体噴射ヘッドと、前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドを保持するとともに、主走査方向に往復移動するキャリッジと、を備え、前記第1液体噴射ヘッドにおいて、前記1又は複数の第2ヘッドチップは、前記1又は複数の第1ヘッドチップに対して媒体の搬送方向に関して上流側に配置され、前記第2液体噴射ヘッドにおいて、前記1又は複数の第2ヘッドチップは、前記1又は複数の第1ヘッドチップに対して前記搬送方向に関して下流側に配置され、前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドは、前記第1液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第1ヘッドチップと、前記第2液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第1ヘッドチップとが前記搬送方向に同じ位置となるように配置され、前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドの前記複数の第1ヘッドチップは、色材を含む液体を噴射し、前記第1液体噴射ヘッドの前記第2ヘッドチップは、前処理液を噴射し、前記第2液体噴射ヘッドの前記第2ヘッドチップは、後処理液を噴射する、ことを特徴とする液体噴射装置にある。
【0010】
また、本発明の他の態様は、上記態様に記載の液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置であって、前記液体噴射ヘッドである第1液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドである第2液体噴射ヘッドと、前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドを保持するとともに、主走査方向に往復移動するキャリッジと、を備え、前記第1液体噴射ヘッドと前記第2液体噴射ヘッドとは、媒体の搬送方向に関して同じ位置に配置され、且つ、前記主走査方向に並んでおり、前記第1液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第1ヘッドチップは、前記搬送方向に関して、第1位置にあり、前記第1液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第2ヘッドチップは、前記搬送方向に関して、前記第1位置とは異なる第2位置にあり、前記第2液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第1ヘッドチップは、前記搬送方向に関して、前記第2位置にあり、前記第2液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第2ヘッドチップは、前記搬送方向に関して、前記第1位置にあり、前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドの前記複数の第1ヘッドチップは、第1液体を噴射し、前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドの前記複数の第2ヘッドチップは、第2液体を噴射する、ことを特徴とする液体噴射装置にある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る液体噴射装置の概略構成を示す図。
図2】実施形態1に係る液体噴射ヘッドの分解斜視図。
図3】実施形態1に係る液体噴射ヘッドの要部断面図。
図4】実施形態1に係る液体噴射装置の流路構成を示す模式図。
図5】実施形態1に係るヘッドチップの分解斜視図。
図6】実施形態1に係る流路形成基板の平面図。
図7】実施形態1に係るヘッドチップの断面図。
図8】実施形態1に係る駆動信号を示す図。
図9】実施形態1に係る液体噴射ヘッドの模式図。
図10】実施形態1の変形例1に係る液体噴射ヘッドの模式図。
図11】実施形態1の変形例2に係る液体噴射ヘッドの模式図。
図12】実施形態1の変形例3に係る液体噴射ヘッドの分解斜視図。
図13】実施形態1の変形例3に係る液体噴射ヘッドの平面図。
図14】実施形態1の変形例3に係る液体噴射ヘッドの断面図。
図15】実施形態1の変形例3に係る液体噴射ヘッドの模式図。
図16】実施形態1の変形例4に係る液体噴射ヘッドの模式図。
図17】実施形態1の変形例5に係る液体噴射ヘッドの模式図。
図18】実施形態1の変形例5に係る液体噴射装置の流路構成を示す模式図。
図19】実施形態1の変形例5の比較例を示す液体噴射ヘッドの模式図。
図20】実施形態1の変形例6の液体噴射ヘッドの模式図。
図21】実施形態2に係る液体噴射装置の概略構成を示す図。
図22】実施形態2に係るヘッドモジュールの模式図。
図23】実施形態2の液体噴射ヘッドの分解斜視図。
図24】実施形態2の液体噴射ヘッドの模式図。
図25】実施形態2の液体噴射ヘッドの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。各図において同じ符号を付したものは、同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。また、各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向をX方向、Y方向、及びZ方向とする。各図の矢印が向かう方向を正(+)方向、矢印の反対方向を負(-)方向として説明する。また、正方向及び負方向を限定しない3つの空間軸の方向については、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向として説明する。
【0013】
(実施形態1)
図1は、本発明の液体噴射装置1の概略構成を示す図である。
図1に示す液体噴射装置1は、液体噴射ヘッドHを備え、媒体SをX軸方向に搬送すると共に、液体噴射ヘッドHをY軸方向に往復移動させながら、液体噴射ヘッドHから媒体Sに向かって+Z方向に「液体」の一種であるインクを噴射することで印刷を行う、所謂、シリアル式プリンターである。なお、媒体Sとしては、記録用紙の他、樹脂フィルムや布等の任意の材質を用いることができる。また、液体噴射ヘッドHが往復移動する方向は、Y軸方向に限定されず、X軸方向及びY軸方向の双方に対して傾斜した方向であってもよい。
【0014】
このような液体噴射装置1は、液体噴射ヘッドHと、液体貯留部3と、制御部である制御ユニット4と、媒体Sを送り出す搬送機構5と、移動機構6と、を具備する。
【0015】
液体噴射ヘッドHは、インクを貯留する液体貯留部3から供給されるインクをインク滴として+Z方向に噴射する。
【0016】
液体貯留部3は、液体噴射ヘッドHから噴射される複数種類、例えば、複数色のインクを個別に貯留する。液体貯留部3としては、例えば、液体噴射装置1に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、インクを補充可能なインクタンクなどが挙げられる。なお、液体貯留部3には、例えば、色や成分等が異なる複数種類のインクが貯留されている。また、液体貯留部3は、メインタンクとサブタンクとで分かれていてもよい。サブタンクが液体噴射ヘッドHに接続され、液体噴射ヘッドHからインク滴を噴射することで消費したインクをメインタンクからサブタンクに補充する構成であってもよい。
【0017】
制御ユニット4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の制御装置と、半導体メモリー等の記憶装置と、を備えている。また、制御ユニット4は、商用電源などの外部電源から供給される電力を液体噴射装置1の各要素に供給する電源装置も備える。制御ユニット4は、不図示の外部配線を介して液体噴射ヘッドHと電気的に接続される。制御ユニット4は、記憶装置に記憶されたプログラムを制御装置が実行することで液体噴射装置1の各要素、すなわち、液体噴射ヘッドH、搬送機構5、移動機構6等を統括的に制御する。
【0018】
搬送機構5は、媒体SをX軸方向に搬送するものであり、搬送ローラー5aを有する。すなわち搬送機構5は、搬送ローラー5aが回転することで媒体SをX軸方向に搬送する。搬送ローラー5aは、図示しない搬送モーターの駆動により回転する。制御ユニット4は、媒体搬送モーターの駆動を制御することで、媒体Sの搬送を制御する。なお、媒体Sを搬送する搬送機構5は、搬送ローラー5aを備えるものに限られず、例えば、ベルトやドラムによって媒体Sを搬送するものであってもよい。
【0019】
移動機構6は、液体噴射ヘッドHをY軸方向に往復させるための機構であり、支持部材7と搬送ベルト8とを具備する。支持部材7は、液体噴射ヘッドHを支持する所謂、キャリッジであり、搬送ベルト8に固定される。搬送ベルト8は、Y軸方向に沿って架設された無端ベルトである。搬送ベルト8は、図示しない搬送モーターの駆動によって回転する。制御ユニット4は、搬送モーターの駆動を制御することで搬送ベルト8を回転させて、液体噴射ヘッドHを支持部材7と共にY軸方向で往復移動させる。なお、支持部材7は、液体噴射ヘッドHと共に液体貯留部3を搭載する構成であってもよい。
【0020】
液体噴射ヘッドHは、制御ユニット4による制御のもとで、液体貯留部3から供給されたインクを複数のノズル21のそれぞれからインク滴として+Z方向に噴射する噴射動作を実行する。この液体噴射ヘッドHによる噴射動作が、搬送機構5による媒体Sの搬送や移動機構6による液体噴射ヘッドHの往復移動と並行して行われることにより、媒体Sの表面にインクによる画像が形成される、いわゆる印刷が行われる。
【0021】
本実施形態において、Y軸方向は「主走査方向」の一例であり、X軸方向は「副走査方向」又は「搬送方向」の一例である。
【0022】
図2は、本実施形態の液体噴射ヘッドHの分解斜視図である。図3は、液体噴射ヘッドHの要部断面図である。図9は、液体噴射ヘッドHを+Z方向に見た模式図である。なお、液体噴射ヘッドHの各方向について、液体噴射装置1に搭載された際の方向、すなわち、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に基づいて説明する。
【0023】
図示するように、液体噴射ヘッドHは、複数のヘッドチップHcと、流路400を有する流路部材200と、中継基板210と、カバーヘッド220と、を具備する。
【0024】
流路部材200は、第1流路401が設けられた第1流路部材201と、第2流路402が設けられた第2流路部材202と、第1流路401と第2流路402とを液密な状態で接続するシール部材203と、を具備する。第1流路部材201と、シール部材203と、第2流路部材202とは、この順に+Z方向に積層されている。
【0025】
第1流路部材201は、本実施形態では、3つの部材がZ軸方向に積層されて構成されている。第1流路部材201は、液体であるインクが貯留された液体貯留部3に接続される接続部204を有する。本実施形態では、接続部204は、第1流路部材201の-Z方向の面に、-Z方向に筒状に突出して設けられる。この接続部204には、液体貯留部3が直接、接続されるものでもよく、チューブ等の供給管などを介して接続されてもよい。この接続部204の内部には、液体貯留部3からのインクが供給される第1流路401が設けられている。第1流路401は、Z軸方向に延びる流路や、積層された部材の積層界面に沿って延びる流路等で構成されている。また、第1流路401の途中には、他の域よりも内径が広く拡幅された液体溜まり部401aが設けられており、液体溜まり部401a内には、インクに含まれるゴミや気泡などの異物を捕捉するフィルター401bが設けられている。また、本実施形態では、1つの第1流路部材201は、4個の接続部204と、4個の独立した第1流路401と、を具備する。各第1流路401は、液体溜まり部401aの下流側で2つに分岐されている。
【0026】
第2流路部材202は、第1流路401の接続部204とは反対側で分岐された端部のそれぞれに連通する第2流路402を有する。つまり、第2流路402は、本実施形態では、8個設けられている。第1流路401と第2流路402とは、シール部材203を介して液密に接続されている。シール部材203は、液体噴射ヘッドHに用いられるインク等の液体に対して耐液体性を有し、且つ弾性変形可能な材料、例えば、ゴムやエラストマー等を用いることができる。このようなシール部材203には、Z軸方向に貫通する接続流路403が設けられており、第1流路401と第2流路402とは、接続流路403を介して連通する。つまり、流路部材200の流路400は、第1流路401と第2流路402と接続流路403とを具備する。
【0027】
また、第2流路部材202の+Z方向を向く面に、複数のヘッドチップHcが保持されている。具体的には、第2流路部材202は、+Z方向を向く面に開口する凹形状を有する収容部208を有し、この収容部208内にヘッドチップHcが収容される。本実施形態の液体噴射ヘッドHには、複数、本実施形態では、一例として4個のヘッドチップHcが保持されている。また、本実施形態では、4個のヘッドチップHcは、X軸方向に関して同じ位置となるように、Y軸方向に並設されている。本実施形態では、Y軸方向に並設された4個のヘッドチップHcを+Y方向に向かって順番にヘッドチップHc1、ヘッドチップHc2、ヘッドチップHc3、ヘッドチップHc4と称する。以降、ヘッドチップHc1~Hc4を区別しない場合には、ヘッドチップHcと称する。
【0028】
なお、本実施形態では、全てのヘッドチップHcに共通して1個の収容部208を設ける構成を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、収容部208は、ヘッドチップHc毎に独立して設けるようにしてもよく、2個以上の複数個のヘッドチップHcの群毎に独立して設けるようにしてもよい。
【0029】
このようなヘッドチップHcの各導入口44に第2流路402が連通する。
【0030】
また、第2流路部材202には、各ヘッドチップHcの配線部材110を挿通するための配線挿通孔205が設けられている。本実施形態では、各ヘッドチップHcに対して1個の配線挿通孔205が設けられている。つまり、本実施形態では、8個のヘッドチップHcに対して合計8個の配線挿通孔205が設けられている。ヘッドチップHcの配線部材110は、配線挿通孔205を介して第2流路部材202の-Z方向を向く面側に導出される。
【0031】
また、Z軸方向において、第2流路部材202とシール部材203との間には、複数のヘッドチップHcの配線部材110が共通して接続される中継基板210が設けられている。中継基板210は、柔軟性のない硬質のリジット基板からなり、不図示の配線や電子部品等が実装されたものである。本実施形態では、電子部品として、液体噴射ヘッドHの外部に設けられる不図示の外部配線が接続されるコネクター211を図示している。そして、ヘッドチップHcを制御するための印刷信号等は、外部配線からコネクター211を介して中継基板210に入力され、中継基板210から各ヘッドチップHcに供給される。なお、流路部材200のコネクター211に対向する側壁には、コネクター211に接続される外部配線を挿通するための外部配線用開口部206が設けられている。外部配線は、外部配線用開口部206を介して流路部材200の内部に設けられた中継基板210のコネクター211に接続される。
【0032】
中継基板210には、ヘッドチップHcの配線部材110を-Z方向を向く面側に導出するための配線挿通孔212が設けられている。配線挿通孔212は、各ヘッドチップHcに対して1個、合計4個設けられている。
【0033】
また、中継基板210には、Z軸方向に貫通して設けられた突起部挿通孔213が設けられている。第2流路部材202の-Z方向を向く面には、内部に第2流路402が設けられた突起部207が-Z方向に向かって突出して設けられており、突起部207は、突起部挿通孔213を介して中継基板210の-Z方向側に挿通されて、接続流路403と接続される。
【0034】
また、流路部材200の+Z方向を向く面には、カバーヘッド220が固定されている。カバーヘッド220によってヘッドチップHcを収容する収容部208の空間が画定される。カバーヘッド220は、本実施形態では、4個のヘッドチップHcを覆う大きさを有する。カバーヘッド220には、ヘッドチップHcのノズル21を+Z方向に向かって露出する露出開口部221がヘッドチップHc毎に独立して設けられている。露出開口部221から露出されたノズル21からインクが+Z方向に向かって噴射される。
【0035】
本実施形態の収容部208が、ヘッドチップHcを収容する「収容空間」に相当する。
【0036】
ここで、ヘッドチップHcの一例について図5図7を参照して説明する。なお、図5は、本実施形態のヘッドチップHcの分解斜視図である。図6は、流路形成基板10を+Z方向に見た平面図である。図7は、図6のA-A′線に準じたヘッドチップHcの断面図である。なお、ヘッドチップHcの各方向について、液体噴射ヘッドHに搭載された際の方向、すなわち、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に基づいて説明する。
【0037】
図示するように、本実施形態のヘッドチップHcは、複数のノズル21が形成された1つのノズルプレート20と、流路形成基板10と、連通板15と、保護基板30と、ケース部材40と、圧電アクチュエーター300と、配線部材110と、を具備する。
【0038】
流路形成基板10は、例えば、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板からなる。流路形成基板10には、複数の圧力室12がX軸方向に沿って並んで配置されている。複数の圧力室12は、Y軸方向に関して同じ位置となるように、X軸方向に沿った直線上に配置されている。X軸方向で互いに隣り合う2つの圧力室12は、不図示の隔壁によって区画されている。また、本実施形態では、圧力室12がX軸方向に沿って並設された圧力室列が、Y軸方向に2列設けられている。もちろん、圧力室12の配置は特にこれに限定されず、例えば、複数の圧力室12は、X軸方向に沿って千鳥状に配置されていてもよい。
【0039】
流路形成基板10の+Z方向を向く面には、連通板15とノズルプレート20とが順次積層されている。流路形成基板10の-Z方向を向く面には、振動板50と圧電アクチュエーター300とが順次積層されている。
【0040】
連通板15は、流路形成基板10の+Z方向を向く面に接合された板状部材からなる。連通板15には、圧力室12とノズル21とを連通するノズル連通路16が設けられている。また、連通板15には、複数の圧力室12が共通して連通する共通液室となるマニホールド100の一部を構成する第1マニホールド部17と第2マニホールド部18とが設けられている。第1マニホールド部17は、連通板15をZ軸方向に貫通して設けられている。また、第2マニホールド部18は、連通板15をZ軸方向に貫通することなく、+Z方向を向く面に開口して設けられている。さらに、連通板15には、圧力室12のY軸方向の一端部に連通する供給連通路19が圧力室12の各々に独立して設けられている。供給連通路19は、第2マニホールド部18と圧力室12とを連通して、マニホールド100内のインクを圧力室12に供給する。このような連通板15としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、ステンレス基板等の金属基板などを用いることができる。
【0041】
ノズルプレート20は、連通板15の流路形成基板10とは反対側、すなわち、+Z方向を向く面に接合されている。ノズルプレート20には、各圧力室12にノズル連通路16を介して連通するノズル21が複数形成されている。本実施形態では、複数のノズル21は、X軸方向に沿って一列となるように並んで配置されている。また、本実施形態では、ノズル21がX軸方向に沿って並設されたノズル列が、Y軸方向に離れて2列設けられている。このようなノズルプレート20としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、ステンレス基板等の金属基板、ポリイミド樹脂のような有機物などを用いることができる。
【0042】
振動板50は、本実施形態では、流路形成基板10側に設けられた酸化シリコンからなる弾性膜51と、弾性膜51の-Z方向を向く面上に設けられた酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜52と、を有する。なお、振動板50は、弾性膜51のみで構成されていてもよく、絶縁体膜52のみで構成されていてもよく、弾性膜51と絶縁体膜52とに加えて他の膜を有する構成であってもよい。
【0043】
圧電アクチュエーター300は、振動板50上に-Z方向に向かって順次積層された第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを具備する。このような圧電アクチュエーター300は、圧電素子とも言い、第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを含む部分を言う。また、第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加した際に、圧電体層70に圧電歪みが生じる部分を活性部310と称する。これに対して、圧電体層70に圧電歪みが生じない部分を非活性部と称する。すなわち、活性部310は、圧電体層70が第1電極60と第2電極80とで挟まれた部分を言う。本実施形態では、圧力室12毎に活性部310が形成されている。つまり、圧電アクチュエーター300には複数の活性部310が形成されていることになる。この複数の活性部310が、圧力室12内のインクに圧力変化を生じさせる「駆動素子」となっている。そして、一般的には、活性部310の何れか一方の電極を活性部310毎に独立する個別電極とし、他方の電極を複数の活性部310に共通する共通電極として構成する。本実施形態では、第1電極60が個別電極を構成し、第2電極80が共通電極を構成している。もちろん、第1電極60が共通電極を構成し、第2電極80が個別電極を構成してもよい。
【0044】
ここで第1電極60は、図6及び図7に示すように、圧力室12毎に切り分けられて活性部310毎に独立する個別電極を構成する。圧電体層70は、図6及び図7に示すように、Y軸方向の幅が所定の幅で、X軸方向に亘って連続して設けられている。また、圧電体層70には、図6に示すように、第1電極60と重ならない位置に複数の凹部71が形成されているが、凹部71を設けなくてもよい。このような圧電体層70は、例えば、一般式ABOで示されるペロブスカイト構造の複合酸化物からなる圧電材料を用いて構成されている。第2電極80は、図6及び図7に示すように、圧電体層70の第1電極60とは反対側である-Z方向側に連続して設けられており、複数の活性部310に共通する共通電極を構成する。第2電極80は、Y軸方向が所定の幅となるように、X軸方向に亘って連続して設けられている。
【0045】
また、第1電極60からは、引き出し配線である個別リード電極91が引き出されている。第2電極80からは引き出し配線である共通リード電極92が引き出されている。これら個別リード電極91及び共通リード電極92の圧電アクチュエーター300に接続された端部とは反対側の端部には、可撓性を有するフレキシブル基板からなる配線部材110が接続されている。配線部材110は、活性部310の夫々を駆動させるための駆動信号COMを各活性部310に供給するか否かを選択する複数のスイッチング素子を有する駆動信号選択回路111が実装されている。つまり、本実施形態における配線部材110は、COF(Chip On Film)である。なお、配線部材110には、駆動信号選択回路111を設けなくてもよい。つまり、配線部材110は、FFC(Flexible Flat Cable)、FPC(Flexible Printed Circuits)等であってもよい。
【0046】
流路形成基板10の-Z方向を向く面には、図5及び図7に示すように、流路形成基板10と略同じ大きさを有する保護基板30が接合されている。保護基板30は、圧電アクチュエーター300を保護する空間である収容部31を有する。収容部31は、X軸方向に並んで配置される圧電アクチュエーター300の列毎に独立して設けられたものであり、Y軸方向に2つ並んで形成されている。また、保護基板30には、Y軸方向に並んで配置される2つの収容部31の間にZ軸方向に貫通する貫通孔32が設けられている。圧電アクチュエーター300の電極から引き出された個別リード電極91及び共通リード電極92の端部は、この貫通孔32内に露出するように延在し、個別リード電極91及び共通リード電極92と配線部材110とは、貫通孔32内で電気的に接続されている。このような保護基板30としては、例えば、流路形成基板10と同様にシリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板からなる。
【0047】
また、図7に示すように、保護基板30上には、複数の圧力室12に連通するマニホールド100を流路形成基板10と共に画定するケース部材40が固定されている。ケース部材40は、平面視において上述した連通板15と略同一形状を有し、保護基板30に接合されると共に、上述した連通板15にも接合されている。このようなケース部材40は、保護基板30側に流路形成基板10及び保護基板30が収容される深さの凹部41を有する。また、ケース部材40には、連通板15の第1マニホールド部17に連通する第3マニホールド部42が設けられている。そして、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18と、ケース部材40に設けられた第3マニホールド部42と、によって本実施形態のマニホールド100が構成されている。マニホールド100は、圧力室12の列毎に、つまり、合計2個設けられている。各マニホールド100は、圧力室12が並んで配置されるX軸方向に亘って連続して設けられており、各圧力室12とマニホールド100とを連通する供給連通路19は、X軸方向に並んで配置されている。また、ケース部材40には、マニホールド100に連通して各マニホールド100にインクを供給するための導入口44が設けられている。また、ケース部材40には、保護基板30の貫通孔32に連通して配線部材110が挿通される接続口43が設けられており、配線部材110は、接続口43を介して液体噴射ヘッドHの-Z方向を向く面側に導出される。ケース部材40としては、金属材料、樹脂材料などを用いることができる。
【0048】
また、連通板15の第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が開口する+Z方向側の面には、コンプライアンス基板45が設けられている。このコンプライアンス基板45が、第1マニホールド部17と第2マニホールド部18の+Z方向側の開口を封止している。このようなコンプライアンス基板45は、本実施形態では、可撓性を有する薄膜からなる封止膜46と、金属等の硬質の材料からなる固定基板47と、を具備する。固定基板47のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部48となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜46のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部49となっている。固定基板47の+Z方向を向く面がカバーヘッド220の-Z方向を向く面に固定されることで、ヘッドチップHcは、カバーヘッド220に固定されている。
【0049】
このようなヘッドチップHcでは、インクを導入口44から取り込み、マニホールド100からノズル21に至るまで流路内部をインクで満たす。その後、駆動信号選択回路111からの信号に従い、圧力室12に対応する各活性部310に電圧を印加することにより、圧電アクチュエーター300と共に振動板50をたわみ変形させる。これにより、圧力室12内のインクの圧力が高まり所定のノズル21からインク滴が噴射される。
【0050】
このようなヘッドチップHcからインク滴を噴射させるための制御ユニット4が生成する駆動信号COMについて、図8を参照して説明する。なお、図8は、駆動信号COMを示す図である。
【0051】
図8に示すように、駆動信号COMは、クロック信号により規定される単位周期T毎に繰り返し生成される。単位周期Tは、噴射周期T(別称、吐出周期Tとも言う)であって、記録周期Tとも言う。この単位周期Tは、媒体Sに印刷する画像等の1画素分に対応する。本実施形態では、単位周期Tにおいて駆動波形DPが生成される。
【0052】
そして、印刷中において媒体Sの記録領域に1行分(1ラスター分)のドットパターンを形成するとき、各ノズル21に対応する活性部310には駆動信号選択回路111の制御のもと駆動波形DPが選択的に供給される。なお、本実施形態では、駆動信号COMは、複数の活性部310の共通電極である第2電極80を基準電位(vbs)として、個別電極である第1電極60に供給される。すなわち、駆動信号COMによって第1電極60に印加される電圧は、基準電位(vbs)を基準としての電位として表される。
【0053】
具体的には、駆動波形DPは、中間電位Vmが印加された状態から第1電位Vまで印加して圧力室12の容積を基準容積から膨張させる第1膨張要素X1と、第1膨張要素X1によって膨張した圧力室12の容積を一定時間維持する第1膨張維持要素X2とを有する。また駆動波形DPは、第1膨張維持要素X2の後、第1電位Vから第2電位Vまで印加して圧力室12の容積を収縮させる第1収縮要素X3と、第1収縮要素X3によって収縮した圧力室12の容積を一定時間維持する第1収縮維持要素X4と、第2電位Vの収縮状態から中間電位Vmの基準容積まで圧力室12を復帰させる第1膨張復帰要素X5と、を具備する。
【0054】
このような駆動波形DPが活性部310に供給されると、第1膨張要素X1によって圧電アクチュエーター300が圧力室12の容積を膨張させる方向に変形して、ノズル21内のメニスカスが圧力室12側に引き込まれると共に、圧力室12にはマニホールド100側からインクが供給される。そして、圧力室12の膨張状態は、第1膨張維持要素X2で維持される。その後、第1収縮要素X3が供給されて圧力室12は膨張容積から第2電位Vに対応する収縮容積まで急激に収縮され、圧力室12内のインクが加圧されてノズル21からインク滴が噴射される。圧力室12の収縮状態は、第1収縮維持要素X4で維持され、この間にインク滴の噴射によって減少した圧力室12内のインク圧力は、その固有振動によって再び上昇する。この上昇タイミングに合わせて第1膨張復帰要素X5が供給されて、圧力室12が基準容積まで復帰し、圧力室12内の圧力変動が吸収される。
【0055】
なお、本実施形態では、駆動信号COMは、1単位周期Tで1つの駆動波形DPを有するものとしたが、特にこれに限定されず、駆動信号COMは、1単位周期Tに2以上の複数の駆動波形DPを有するものであってもよい。また、1単位周期Tに複数の駆動波形DPを有する場合、同じ波形形状を有する駆動波形DPであってもよく、異なる波形形状を有する駆動波形DP、すなわち、噴射するインク滴の重量が異なる駆動波形DPであってもよく、それらが混在するものであってもよい。1単位周期T内に複数の駆動波形DPを有する場合、駆動波形DPの何れか1つ又は複数を選択して活性部310を駆動することで、1単位周期Tの間にノズル21から噴射される1つ又は複数のインク滴によって媒体Sに1画素分(別称、1ドットとも言う)が形成される。
【0056】
ここで、ヘッドチップHc1~Hc4はそれぞれ互換性を有する。
【0057】
ここで、「互換性を有する」とは、一方のヘッドチップHcと他方のヘッドチップHcとを入れ替えても両者が液体を噴射するように機能することを言う。例えば、一方のヘッドチップHcと他方のヘッドチップHcとが互換性を有するとは、一方のヘッドチップHcが収容される収容空間に、他方のヘッドチップHcが収容可能であると共に、他方のヘッドチップHcが収容される収容空間に一方のヘッドチップが収容可能なことを含む。収容空間は、流路部材200の収容部208とカバーヘッド220との間の空間のことである。本実施形態では、収容空間は、4個のヘッドチップHcに連続して設けられているが、ヘッドチップHcを個別に収容する収容空間の場合であっても同様である。また、2つのヘッドチップHcが互換性を有するとは、互いに収容空間に収容可能であれば、2つのヘッドチップHcの外形寸法が完全に一致しなくてもよい。
【0058】
また、2つのヘッドチップHcが互換性を有するとは、ノズル21の数、ノズル列22の列数、ノズル21のピッチ等が同じことを含む。
【0059】
また、一方のヘッドチップHcと他方のヘッドチップHcとが互換性を有するとは、ヘッドチップHcの流路の接続部分が同じことを含む。つまり、上述したヘッドチップHcにおける導入口44の位置や数、流路の接続方法、例えば、接着剤による接着、ゴム等のシール部材による接続などが同じことを含む。また、一方のヘッドチップHcと他方のヘッドチップHcとが互換性を有するとは、電気的な接続部分が同じことを含む。つまり、上述したヘッドチップHcにおける配線部材110の長さ、中継基板210に接続される端子の数、端子の並設方向の長さ、端子の大きさ及びピッチ、端子の並び順などが同じことを含む。
【0060】
また、本実施形態では、図4に示すように、ヘッドチップHc1、Hc3のノズル列22Aのそれぞれに連通する流路に同じインクが供給される。また、ヘッドチップHc1、Hc3のノズル列22Bのそれぞれに連通する流路に同じインクが供給される。また、ヘッドチップHc2、Hc4のノズル列22Aのそれぞれに連通する流路に同じインクが供給され、ヘッドチップHc2、Hc4のノズル列22Bのそれぞれに連通する流路に同じインクが供給される。これら4種類のインクは、色材を含むインク、例えば、ブラックインク(Bk)、マゼンタインク(M)、シアンインク(C)、イエローインク(Y)の4色のインクである。つまり、ヘッドチップHc1、Hc2の4列のノズル列22のそれぞれから4色のインクを噴射できると共に、ヘッドチップHc3、Hc4の4列のノズル列22から4色のインクを噴射できる。このため、ヘッドチップHc1、Hc2のみで4色のインクによるカラー印刷が可能であると共に、ヘッドチップHc3、Hc4のみで4色のインクによるカラー印刷が可能である。なお、図4は、液体噴射装置1の流路構成を示す模式図である。
【0061】
図9に示すように、このような液体噴射ヘッドHの4個のヘッドチップのうち、ヘッドチップHc3、Hc4の噴射能力は、ヘッドチップHc1、Hc2の噴射能力よりも高い。
【0062】
ここでヘッドチップHcの「噴射能力」とは、1つのノズル21で1画素分の1ドットを形成する際の最大噴射重量である。なお、「1ドットを形成する」とは、駆動波形DPにおいて、噴射周期Tにおいて形成される媒体S上に1画素を形成する際の総重量のことを言う。例えば、噴射周期Tにおいて1滴で1ドットを形成するものや、噴射周期Tにおいて2滴以上の複数滴で1ドットを形成するものなどがある。なお、1ドットを形成する複数滴は、液滴が飛翔中に合体するものも含む。ちなみに、ヘッドチップHcは、複数のノズル21を有するため、「噴射能力」を規定するには、複数のノズル21の平均値であればよい。また、「最大噴射重量」とは、ヘッドチップHcの圧力室12の固有振動周期Tc、圧電アクチュエーター300の能力、ノズル21の内径等の構造に基づいて最適化された駆動波形において1噴射周期Tで最大の1ドットを形成する際のインク重量のことである。このため、ヘッドチップHc1、Hc2の最大噴射重量を噴射させる駆動波形と、ヘッドチップHc3、Hc4の最大噴射重量を噴射させる駆動波形と、は同じ場合も異なる場合もある。例えば、噴射能力の高いヘッドチップHcと低いヘッドチップHcとで、上述した駆動信号COMの第1電位Vと第2電位Vとの電位差や第1収縮要素X3の傾きなどを異ならせることが好ましい。
【0063】
また、ヘッドチップHcの「噴射能力」とは、同じ駆動波形DPを入力した際に、1噴射周期Tにおいて、ノズル21から噴射される液滴の噴射重量で規定することもできる。この噴射重量は、複数のノズル21から噴射される液滴の総重量のことである。本明細書における「噴射能力」の規定は、以降においても同様である。
【0064】
また、「第2ヘッドチップの噴射能力が、第1ヘッドチップの噴射能力よりも高い」とは、上記何れかの規定において、「第2ヘッドチップ」の噴射重量が、「第1ヘッドチップ」の噴射重量の10%以上大きいことを言う。つまり、「第1ヘッドチップ」の噴射重量W1と「第2ヘッドチップ」の噴射重量W2とが、W2>W1×1.1の関係を満たす。
【0065】
噴射重量は、各ヘッドチップHcの複数のノズル21からトレイにインク滴を噴射させて、トレイに噴射されたインク滴の総重量を測定し、測定結果をノズル数で割ることで算出できる。ちなみに、インク滴を2以上の噴射周期Tで噴射させた場合には、測定した総重量を噴射させた噴射周期の回数でも割ればよい。
【0066】
また、噴射重量は、CCDカメラ等によって飛翔中のインク滴を撮像し、液滴サイズから重量を算出するようにしてもよい。また、噴射重量は、媒体Sに形成されるドットの大きさを計測して算出するようにしてもよい。
【0067】
ちなみに噴射周期Tは、シリアル型の場合には、液体噴射ヘッドHの主走査方向の移動速度、ライン型の場合には媒体Sの搬送速度に応じて調整されるものであるため、「第1ヘッドチップ」と「第2ヘッドチップ」とで噴射周期Tが異なることはない。つまり、「第1ヘッドチップ」と「第2ヘッドチップ」との噴射周期Tは、液体噴射ヘッドHの主走査方向の移動速度又は媒体Sの搬送速度に応じて最適化された同じ値となっている。
【0068】
このような噴射能力は、ヘッドチップHc毎に、同じ駆動波形DPを印加した際に噴射重量が変わる要素、例えば、ノズル21の内径等の流路形状などを変更することで変化する。例えば、ノズル21の内径が大きいほど噴射重量が大きく、噴射能力が高くなり、ノズル21の内径が小さいほど噴射重量が小さく、噴射能力が低くなる。そして、噴射能力が高いほど、比較的広い面積を液体によって覆い尽くす、所謂、ベタ印刷を行い易く生産性を向上できる。また、噴射能力が低いほど、高精細に画像を印刷することができる。
【0069】
また、噴射重量は、圧電アクチュエーター300の変位量の差異によって変化する。ここで、圧電アクチュエーター300の変形量とは、圧電アクチュエーターを同じ電圧で駆動した際の変位量のことであり、変位量が大きければ、ノズル21から液滴を噴射させた際の噴射重量が大きくなり、変位量が小さければ噴射重量が小さくなる。このため、変位量が小さな圧電アクチュエーター300を有するヘッドチップHcを「第1ヘッドチップ」として用いて、変位量が大きな圧電アクチュエーター300を有するヘッドチップHcを「第2ヘッドチップ」として用いればよい。ちなみに、圧電アクチュエーター300の変位量は、圧電アクチュエーター300や振動板50を構成する各層の組成や厚さなどの構造によって変化する。
【0070】
また、ヘッドチップHc1とヘッドチップHc2とは略同じ噴射能力を有し、ヘッドチップHc3とヘッドチップHc4とは、略同じ噴射能力を有する。なお、2つのヘッドチップHcの噴射能力が略同じとは、2つのヘッドチップHcから噴射される噴射重量の差が、10%よりも小さいことを言う。つまり、一方のヘッドチップHcから噴射されるインク滴の噴射重量W1と、他方のヘッドチップHcから噴射されるインク滴の噴射重量W2とが、W1×0.9<W2<W1×1.1の関係を満たす。また、噴射能力が略同じ2つのヘッドチップHcの噴射重量は、できるだけ同じ、つまり、噴射重量の差がゼロに近い方が好ましい。このため、噴射重量の差は5%以内、つまり、W1×0.95≦W2≦W1×1.05の関係も満たすことが好ましく、さらに好ましくは、噴射重量の差は1%以内、つまり、W1×0.01≦W2≦W1×1.01の関係を満たすことが好適である。本明細書における「噴射能力が略同じ」の規定は、以降においても同様である。
【0071】
そして、高い噴射能力を有するヘッドチップHc3、Hc4によって画像の印刷を実行することで、広い面積を短時間で塗りつぶすことができるため、比較的短い時間で印刷を行うことができ、生産性を向上できる。
【0072】
また、噴射能力が低いヘッドチップHc1、Hc2によって画像の印刷を実行することで、媒体S上に小さなインク滴を噴射することができ、媒体S上に形成される画像の画質を向上できる。
【0073】
もちろん、1つの媒体Sに形成される画像において、比較的広い面積を塗りつぶす部分には、ヘッドチップHc3、Hc4からインク滴を噴射させ、高い画質が要求される部分には、ヘッドチップHc1、Hc2からインク滴を噴射させることで、高生産性と高画質化とを両立した印刷を行うことができる。
【0074】
このように1つの液体噴射ヘッドHに噴射能力の異なるヘッドチップHcを設けることで、噴射能力が異なるヘッドチップHcをそれぞれ有する液体噴射ヘッドHを別々に設ける場合に比べて、液体噴射ヘッドHの数を減らすことができ、液体噴射ヘッドHの小型化及び液体噴射装置1の小型化を図れる。ちなみに、1つの液体噴射ヘッドHに同じ噴射能力のヘッドチップHcのみを設ける場合、高生産な印刷が可能な液体噴射ヘッドHと、高画質な印刷が可能な液体噴射ヘッドHとの2個の液体噴射ヘッドHを設けなくてはならない。本実施形態では、1つの液体噴射ヘッドHに噴射能力の異なるヘッドチップHcを混在させることで、液体噴射ヘッドHの数を減らして液体噴射ヘッドH全体の小型化を図れると共に、高生産性と高画質化との両立を図ることができ、液体噴射ヘッドHの拡張性及び液体噴射装置1の拡張性を向上できる。
【0075】
なお、本実施形態では、ヘッドチップHc1~Hc4は、この順に+X方向に配置されるものとしたが、ヘッドチップHc1~Hc4の並び順は、特にこれに限定されるものではない。
【0076】
上述したように、ヘッドチップHc1~Hc4は、互換性を有するため、ヘッドチップHc1~Hc4の並び順は、目的・用途に応じて容易に変更して最適化できる。
【0077】
本実施形態では、ヘッドチップHc1、Hc2が「第1ヘッドチップ」に相当し、ヘッドチップHc3、Hc4が「第2ヘッドチップ」に相当する。また、本実施形態では、Y軸方向が「主走査方向」に相当し、+X方向が「搬送方向」に相当する。また、本実施形態では、収容部208とカバーヘッド220とで画定された空間が「収容空間」に相当し、「第1収容空間」及び「第2収容空間」に相当する。
【0078】
(変形例1)
図10は、実施形態1の変形例1の液体噴射ヘッドHを+Z方向に見た模式図である。本変形例の液体噴射ヘッドHは、ヘッドチップHc1~Hc4の噴射能力が実施形態1と相違する。
【0079】
図示するように、本変形例の液体噴射ヘッドHは、実施形態1と同様に、4個のヘッドチップHcが、X軸方向に関して同じ位置となるY軸方向に並設されている。各ヘッドチップHcは、上述した実施形態1と同様に2列のノズル列22を有する。-Y方向のノズル列22をノズル列22Aと称し、+Y方向のノズル列22をノズル列22Bと称する。以降、ノズル列22A、22Bを区別しない場合には、ノズル列22と称する。
【0080】
本変形例では、4個のヘッドチップHcを+Y方向に向かって順番にヘッドチップHc1、ヘッドチップHc2、ヘッドチップHc3及びヘッドチップHc4と称する。以降、ヘッドチップHc1~Hc4を区別しない場合には、ヘッドチップHcと称する。また、ヘッドチップHc1~Hc4は、互換性を有する。
【0081】
ヘッドチップHc1、Hc4は、ヘッドチップHc2、Hc3よりも高い噴射能力を有する。つまり、-Y方向の一端に比較的高い噴射能力を有するヘッドチップHc1が配置され、+Y方向に比較的高い噴射能力を有するヘッドチップHc4が配置される。また、ヘッドチップHc2、Hc3は、Y軸方向に関してヘッドチップHc1とヘッドチップHc4との間に配置されている。
【0082】
このような液体噴射ヘッドHでは、ヘッドチップHc4から前処理液を噴射させ、ヘッドチップHc2、Hc3から色材を含むインク、例えば、4色のインクを噴射させ、ヘッドチップHc1から後処理液を噴射させることで印刷が行われる。つまり、液体噴射ヘッドHを+Y方向に移動させながら印刷を行う際に、ヘッドチップHc4によって媒体Sに前処理液を塗布した後、前処理液の上にヘッドチップHc2、Hc3から色材を含むインク、本変形例では、4色のインクを噴射させて媒体Sに画像を印刷し、その後、画像の上にヘッドチップHc1によって後処理液を塗布する。このように高い噴射能力を有するヘッドチップHc4、Hc1に、前処理液及び後処理液を塗布させることで、比較的広い面積を処理液によって覆い尽くす、所謂、ベタ印刷を行い易く、生産性を向上できる。また、噴射能力が低いヘッドチップHc2、Hc3に色材を含むインクを噴射させることで、印刷される画像の画質を向上できる。つまり、1つの液体噴射ヘッドHに噴射能力の異なるヘッドチップHcを混在させることで、液体噴射ヘッドHの小型化を図れると共に、高生産性と高画質化との両立を図ることができ、液体噴射ヘッドHの拡張性及び液体噴射装置1の拡張性を向上できる。
【0083】
また本変形例では、液体噴射ヘッドHを、+Y方向に移動させながら印刷を行う1パス印刷において、前処理液、色材を含むインク及び後処理液を噴射の順番を守りつつ印刷を行うことができる。したがって、液体噴射ヘッドHを何度もY軸方向に移動させる必要がなく、印刷時間を短縮できる。
【0084】
なお、前処理液としては、例えば、色材である顔料等の色材を凝集させる反応液やホワイトインク等が挙げられる。また、後処理液としては、オーバーコート液などが挙げられる。
【0085】
また、本変形例では、ヘッドチップHc1、Hc4が「第2ヘッドチップ」に相当し、ヘッドチップHc2、Hc3が「第1ヘッドチップ」に相当する。また、本変形例では、ヘッドチップHc4が「第2ヘッドチップA」に相当し、ヘッドチップHc1が「第2ヘッドチップB」に相当する。また、本実施形態では、Y軸方向が「主走査方向」に相当し、+X方向が「搬送方向」に相当する。
【0086】
(変形例2)
図11は、実施形態1の変形例2の液体噴射装置1が有する2個の液体噴射ヘッドHを+Z方向に見た模式図である。本変形例は、液体噴射装置1が2個の液体噴射ヘッドHを有する点で変形例1と相違する。
【0087】
つまり、本変形例では、支持部材7(図1参照)が2個の液体噴射ヘッドHを保持する。2個の液体噴射ヘッドHは、X軸方向に関して同じ位置となるように、Y軸方向に並設されている。ここで、2個の液体噴射ヘッドHがX軸方向に同じ位置に設けられているとは、2個の液体噴射ヘッドHのそれぞれのヘッドチップHcのノズル21がX軸方向に同じ位置に設けられていることを言う。
【0088】
本変形例では、2個の液体噴射ヘッドHのうち、-Y方向に設けられた液体噴射ヘッドHを液体噴射ヘッドH1と称し、+Y方向に設けられた液体噴射ヘッドHを液体噴射ヘッドH2と称する。以降、液体噴射ヘッドH1、H2を区別しない場合には、液体噴射ヘッドHと称する。
【0089】
また、各液体噴射ヘッドHは、実施形態1と同様に、4個のヘッドチップHcが、X軸方向に関して同じ位置となるY軸方向に並設されている。各ヘッドチップHcには、上述した実施形態1と同様にノズル列22が2列設けられている。ノズル列22A、22B同士をX軸方向に半ピッチずらして配置するようにしてもよい。つまり、ノズル21が、X軸方向に沿って千鳥状に配置されていてもよい。
【0090】
液体噴射ヘッドH1の4個のヘッドチップHcを、+X方向に順番にヘッドチップHc1~Hc4と称する。また、液体噴射ヘッドH2の4個のヘッドチップHcを、+X方向に順番にヘッドチップHc5~Hc8と称する。以降、ヘッドチップHc1~Hc8を区別しない場合には、ヘッドチップHcと称する。なお、ヘッドチップHc1~Hc8は、互換性を有する。
【0091】
液体噴射ヘッドH1において、ヘッドチップHc1、Hc2は、ヘッドチップHc3、Hc4よりも高い噴射能力を有する。また、液体噴射ヘッドH2において、ヘッドチップHc7、Hc8は、ヘッドチップHc5、Hc6よりも高い噴射能力を有する。なお、ヘッドチップHc1、Hc2、Hc7、Hc8は、略同じ噴射能力を有し、ヘッドチップHc3~Hc6は、略同じ噴射能力を有する。
【0092】
すなわち、液体噴射ヘッドH1のヘッドチップHc3、Hc4は、+Y方向に関して、液体噴射ヘッドH1のヘッドチップHc1、Hc2と、液体噴射ヘッドH2との間に配置される。
【0093】
また、液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc5、Hc6は、+Y方向に関して、液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc7、Hc8と、液体噴射ヘッドH1との間に配置される。
【0094】
そして、印刷時には、ヘッドチップHc7、Hc8からは、前処理液が噴射される。また、ヘッドチップHc3~Hc6からはそれぞれ異なる色材を含むインク、例えば、4色のインクが噴射される。ヘッドチップHc1、Hc2からは、後処理液が噴射される。そして、つまり、液体噴射ヘッドH1、H2を+Y方向に移動させながら印刷を行うことで、ヘッドチップHc7、Hc8によって媒体Sに前処理液を印刷した後、前処理液の上にヘッドチップHc3~Hc6から4色のインクを噴射させて媒体Sに画像を印刷し、その後、画像の上にヘッドチップHc1、Hc2によって後処理液を印刷する。このように高い噴射能力を有するヘッドチップHc1、Hc2、Hc7、Hc8に、塗布面積が比較的広い前処理液及び後処理液を塗布させることで、生産性を向上できる。また、小さなドットを媒体S上に形成可能な噴射能力が低いヘッドチップHc3~Hc6に色材を含むインクを噴射させることで、画質を向上できる。
【0095】
また、液体噴射ヘッドHに噴射能力の異なるヘッドチップHcを混在させることで、液体噴射ヘッドHの数を低減できる。例えば、同じ噴射能力を有するヘッドチップHcのみを液体噴射ヘッドHに搭載する場合、前処理液を噴射する噴射能力の高いヘッドチップHcを搭載した液体噴射ヘッドH、色材を含むインクを噴射する噴射能力の低いヘッドチップHcのみを搭載した液体噴射ヘッドH、後処理液を噴射する噴射能力の高いヘッドチップHcを搭載した液体噴射ヘッドHの3個の液体噴射ヘッドHが必要になる。これに対して、本変形例のように、1つの液体噴射ヘッドHに噴射能力の異なるヘッドチップHcを混在して搭載することで、2個の液体噴射ヘッドHで、前処理液、色材を含むインク及び後処理液を噴射させて印刷できると共に、高生産性と高画質化との両立を図ることができる。したがって、液体噴射ヘッドHの数を減少させて、液体噴射装置1の小型化を図れる。
【0096】
また、本変形例では、2個の液体噴射ヘッドHを、+Y方向に移動させながら印刷を行う1パス印刷において、前処理液、色材を含むインク及び後処理液を噴射の順番を守りつつ印刷を行うことができる。したがって、液体噴射ヘッドHを何度もY軸方向に移動させる必要がなく、印刷時間を短縮できる。
【0097】
なお、本変形例では、ヘッドチップHc1、Hc2、Hc7、Hc8が「第2ヘッドチップ」に相当し、ヘッドチップHc3~Hc6が「第1ヘッドチップ」に相当する。また、本変形例では、液体噴射ヘッドH1が「第1液体噴射ヘッド」に相当し、液体噴射ヘッドH2が「第2液体噴射ヘッド」に相当する。また、本実施形態では、Y軸方向が「主走査方向」に相当し、+X方向が「搬送方向」に相当する。
【0098】
(変形例3)
図12は、実施形態1の変形例3の液体噴射ヘッドHを-Z方向から見た分解斜視図である。図13は、液体噴射ヘッドHを-Z方向に見た平面図である。図14は、図13のB-B′線断面図である。図15は、液体噴射ヘッドHを+Z方向に見た模式図である。
【0099】
本変形例は、ヘッドチップHcがY軸方向に沿って千鳥状に配置されている点で実施形態1と相違する。図示するように、液体噴射ヘッドHは、複数のヘッドチップHcと、流路部材200と、カバーヘッド220と、を具備する。
【0100】
流路部材200は、内部に不図示の流路400が設けられている。流路400は、各ヘッドチップHcのノズル列毎に独立して設けられている。また、流路部材200の+Z方向を向く面には、ヘッドチップHcを個別に収容する収容部208が設けられている。収容部208は、+Z方向の面に開口する凹形状を有する。なお、収容部208は、本変形例では、ヘッドチップHc毎に独立して設けられているが、上述した実施形態1と同様に複数のヘッドチップHcに亘って連続して設けられていてもよい。また、カバーヘッド220は、流路部材200の+Z方向の面に設けられて、収容部208の開口の一部を塞ぐものであり、上述した実施形態1と同様の部材である。
【0101】
ヘッドチップHcは、Y軸方向に並設された2列のノズル列22を有する。-Y方向のノズル列22をノズル列22Aと称し、+Y方向のノズル列22をノズル列22Bと称する。以降、ノズル列22A、ノズル列22Bを区別しない場合には、ノズル列22と称する。
【0102】
このようなヘッドチップHcがX軸方向に沿って4個設けられている。4個のヘッドチップHcは、+X方向に沿って千鳥状に配置されている。ここで、複数のヘッドチップHcが+X方向に沿って千鳥状に配置されているとは、+X方向に並設されたヘッドチップHcを交互にY軸方向にずらして配置することである。すなわち、+X方向に並設されたヘッドチップHcの列が、+Y方向に2列並設され、2列のヘッドチップHcの列を+X方向に半ピッチずらして配置することである。このように複数のヘッドチップHcを+X方向に沿って千鳥状に配置することで、2つのヘッドチップHcのノズル列22をX軸方向で部分的に重複させて、+X方向に亘って連続したノズル21の列を形成できる。
【0103】
また、液体噴射ヘッドHは、図13に示すように、-Z方向に見て、第1部分P1(ハッチングで示す部分)と、第2部分P2と、第3部分P3と、を備える。液体噴射ヘッドHを+Z方向に平面視した際に、液体噴射ヘッドHを内包する最小面積の長方形をRとしたとき、長方形Rの長辺E1は液体噴射ヘッドHの外周の+X方向に沿う辺に重なり、長方形Rの短辺E2は液体噴射ヘッドHの外周の+Y方向に沿う辺に重なる。このような仮想的な長方形Rの長辺E1に平行な中心線をLCとする。
【0104】
第1部分P1は、中心線LCが通過する矩形状の部分である。第2部分P2は、第1部分P1から-X方向に突出する矩形状の部分である。第3部分P3は、第1部分P1から+X方向に突出する矩形状の部分である。つまり、第2部分P2と第1部分P1と第3部分P3とは、この順に+X方向に向かって配列する。
【0105】
第2部分P2と第3部分P3とは、Y軸に関して中心線LCを挟んで反対の方向に位置する。そして、例えば、X軸方向に2つの液体噴射ヘッドHを並べる場合、2つの液体噴射ヘッドHのうち一方の液体噴射ヘッドHの第2部分P2と他方の液体噴射ヘッドHの第3部分P3とが、Y軸方向で対向するように、複数の液体噴射ヘッドHがX軸方向に沿って配列される。このように、一方の液体噴射ヘッドHの第2部分P2と、他方の液体噴射ヘッドHの第3部分P3とがY軸方向で対向するように配置することで、X軸方向に沿って互いに隣り合う液体噴射ヘッドHのノズル21をX軸方向で部分的に重複させて、X軸方向に亘って連続したノズル21の列を形成できる。なお、第2部分P2と第3部分P3とは、Y軸方向の幅が、中心線LCを通らない幅を有する。このため、複数の液体噴射ヘッドHをX軸方向に沿って配列する際に、複数の液体噴射ヘッドHが占有するY軸方向の幅をさらに狭くできる。ちなみに、液体噴射装置1に1個の液体噴射ヘッドHのみを用いる場合には、液体噴射ヘッドHを-Z方向に見て矩形状としてもよいが、1個用の液体噴射ヘッドHと2個以上をX軸方向に並べる液体噴射ヘッドHとで作り分ける必要がある。このため、使用する数に制限がない本変形例の液体噴射ヘッドHを用いることで、液体噴射ヘッドHを専用に作り分ける必要がなく、部品を共通化してコストを低減できる。
【0106】
本変形例では、X軸方向に並設された4個のヘッドチップHcを、+X方向に向かって順番にヘッドチップHc1、ヘッドチップHc2、ヘッドチップHc3、ヘッドチップHc4と称する。以降、ヘッドチップHc1~Hc4を区別しない場合には、ヘッドチップHcと称する。
【0107】
これらヘッドチップHc1~Hc4は、互換性を有する。つまり、何れか1つのヘッドチップHcを収容する収容部208とカバーヘッド220とで画定する収容空間に、他のヘッドチップHcを収容可能である。
【0108】
ヘッドチップHc1、Hc4は、ヘッドチップHc2、Hc3よりも高い噴射能力を有する。また、ヘッドチップHc1とヘッドチップHc4とは略同じ噴射能力を有し、ヘッドチップHc2とヘッドチップHc3とは、略同じ噴射能力を有する。
【0109】
すなわち、液体噴射ヘッドHは、+X方向に関して一端、すなわち、-X方向の端に配置されたヘッドチップHc1と、他端、すなわち、+X方向の端に配置されたヘッドチップHc4と、を有し、ヘッドチップHc2、Hc3は、+X方向に関して、ヘッドチップHc1とヘッドチップHc4との間に配置されている。
【0110】
そして、印刷時には、ヘッドチップHc1からは前処理液が噴射される。また、ヘッドチップHc2、Hc3からは色材を含むインク、例えば、4色のインクが噴射される。また、ヘッドチップHc4からは後処理液が噴射される。そして、媒体Sを+X方向に移動させながら、液体噴射ヘッドHをY軸方向に往復移動させて印刷が行われる際に、ヘッドチップHc1によって媒体Sに前処理液を印刷した後、ヘッドチップHc2、Hc3から4色のインクを噴射させて媒体Sに画像を印刷し、その後、画像の上にヘッドチップHc4によって後処理液を印刷できる。つまり、媒体Sの搬送方向である+X方向の上流側と下流側との両方に高い噴射能力を有するヘッドチップHcを配置することで、媒体Sを+X方向に搬送する方向において、前処理液、色材を含むインク及び後処理液を噴射の順番を守りつつ印刷を行うことができる。したがって、媒体SをX軸方向に往復移動させる必要がなく、印刷時間を短縮できる。
【0111】
また、前処理液又は後処理液を噴射するヘッドチップHc1、Hc4の夫々は、1種類のインクに対応するノズル列22の数(本変形例では1列)よりも多い2列のノズル列22を有するため、広い面積を処理液によって覆い尽くす、所謂、ベタ印刷を行い易い。
【0112】
なお、本変形例では、X軸方向で隣り合う2つのヘッドチップHcのノズル列22をX軸方向で部分的に重複させるようにしたが、特にこれに限定されず、X軸方向で隣り合う2つのヘッドチップHcのノズル列22がX軸方向で重複しないようにヘッドチップHcが配置されていてもよい。ただし、本変形例のように、X軸方向で隣り合う2つのヘッドチップHcのノズル列22をX軸方向で部分的に重複させたヘッドチップHcを有する液体噴射ヘッドHとすることで、X軸方向に亘って連続したノズル列を必要とする他の液体噴射ヘッドHと部品を共通化でき、コストを低減できる。
【0113】
また、本変形例では、ヘッドチップHc1、Hc4が「第2ヘッドチップ」に相当し、ヘッドチップHc2、Hc3が「第1ヘッドチップ」に相当する。また、本変形例では、ヘッドチップHc1が「第2ヘッドチップA」に相当し、ヘッドチップHc4が「第2ヘッドチップB」に相当する。また、本実施形態では、Y軸方向が「主走査方向」に相当し、+X方向が「搬送方向」に相当する。また、ヘッドチップHc1、Hc4が収容された収容部208とカバーヘッド220とで画定された収容空間が「第2収容空間」に相当し、ヘッドチップHc2、Hc3が収容された収容部208とカバーヘッド220とで画定された収容空間が「第1収容空間」に相当する。
【0114】
(変形例4)
図16は、実施形態1の変形例4の液体噴射装置1が有する2個の液体噴射ヘッドHを+Z方向に見た模式図である。本変形例は、液体噴射装置1が液体噴射ヘッドHを2個有する点で、変形例3と相違する。
【0115】
図16に示すように、支持部材7(図1参照)が2個の液体噴射ヘッドHを保持する。2個の液体噴射ヘッドHは、Y軸方向に並設されている。本変形例では、2個の液体噴射ヘッドHのうち、-Y方向に配置された液体噴射ヘッドHを液体噴射ヘッドH1と称し、+Y方向に配置された液体噴射ヘッドHを液体噴射ヘッドH2と称する。以降、液体噴射ヘッドH1、H2を区別しない場合には、液体噴射ヘッドHと称する。各液体噴射ヘッドHは、上述した変形例3と同様であるため重複する説明は省略する。
【0116】
本変形例では、液体噴射ヘッドH1の4個のヘッドチップHcを、+X方向に順番にヘッドチップHc1、ヘッドチップHc2、ヘッドチップHc3及びヘッドチップHc4と称する。また、液体噴射ヘッドH2の4個のヘッドチップHcを、+X方向に順番にヘッドチップHc5、ヘッドチップHc6、ヘッドチップHc7、ヘッドチップHc8と称する。以降、ヘッドチップHc1~Hc8を区別しない場合には、ヘッドチップHcと称する。
【0117】
そして液体噴射ヘッドH1と液体噴射ヘッドH2とは、ヘッドチップHc1とヘッドチップHc7とが、X軸方向で同じ位置となるように配置されている。また、ヘッドチップHc2とヘッドチップHc8とが、X軸方向で同じ位置となるように配置されている。ここで、2つのヘッドチップHcがX軸方向で同じ位置に設けられているとは、2つのヘッドチップHcのノズル21の位置がX軸方向で略同じ位置にあることを言う。
【0118】
また、ヘッドチップHc1~Hc8は互換性を有する。
【0119】
また、液体噴射ヘッドH1において、ヘッドチップHc3、Hc4は、ヘッドチップHc1、Hc2よりも高い噴射能力を有する。また、液体噴射ヘッドH2において、ヘッドチップHc5、Hc6は、ヘッドチップHc7、Hc8よりも高い噴射能力を有する。また、ヘッドチップHc3~Hc6は、略同じ噴射能力を有し、ヘッドチップHc1、Hc2、Hc7、Hc8は、略同じ噴射能力を有する。
【0120】
そして、印刷時には、ヘッドチップHc5、Hc6からは、前処理液が噴射される。また、ヘッドチップHc1、Hc2、Hc7、Hc8からは異なる色材を含むインクが噴射される。また、ヘッドチップHc3、Hc4からは、後処理液が噴射される。なお、本変形例では、ヘッドチップHc1、Hc2のそれぞれからは2色のインクが噴射される。つまり、ヘッドチップHc1、Hc2の各ノズル列22Aからは同じインクが噴射される。また、ヘッドチップHc1、Hc2の各ノズル列22Bからは同じインクが噴射される。同様に、ヘッドチップHc7、Hc8のそれぞれからは、2色のインクが噴射される。ヘッドチップHc7、Hc8から噴射される2色のインクは、ヘッドチップHc1、Hc2から噴射されるインクとは異なる色のインクである。これにより、4個のヘッドチップHcによって4色のインクを噴射させてカラー印刷を行うことができる。また、2個の液体噴射ヘッドHをY軸方向に移動させて印刷させる際に、X軸方向において2つのヘッドチップHcのノズル列22の長さ分の印刷を行うことができる。
【0121】
このような構成では、液体噴射ヘッドH1、H2を+Y方向に移動させながら印刷を行う。つまり、ヘッドチップHc5、Hc6によって媒体Sに前処理液を印刷した後、前処理液の上にヘッドチップHc1、Hc2、Hc7、Hc8から4色のインクを噴射させて媒体Sに画像を印刷し、その後、画像の上にヘッドチップHc3、Hc4によって後処理液を印刷する。このように高い噴射能力を有するヘッドチップHc3~Hc6に、塗布面積が比較的広い前処理液及び後処理液を塗布させることで、生産性を向上できる。また、噴射能力が低いヘッドチップHc1、Hc2、Hc7、Hc8に色材を含むインクを噴射させることで、画質を向上できる。
【0122】
また、液体噴射ヘッドHに噴射能力の異なるヘッドチップHcを混在させることで、液体噴射ヘッドHの数を低減できる。例えば、同じ噴射能力を有するヘッドチップHcのみを液体噴射ヘッドHに搭載する場合、前処理液を噴射する噴射能力の高いヘッドチップHcを搭載した液体噴射ヘッドH、色材を含むインクを噴射する噴射能力の低いヘッドチップHcのみを搭載した液体噴射ヘッドH、後処理液を噴射する噴射能力の高いヘッドチップHcを搭載した液体噴射ヘッドHの3個の液体噴射ヘッドHが必要になる。これに対して、本変形例のように、1つの液体噴射ヘッドHに噴射能力の異なるヘッドチップHcを混在して搭載することで、2個の液体噴射ヘッドHで、前処理液、色材を含むインク及び後処理液を噴射させて印刷できると共に、高生産性と高画質化との両立を図ることができる。したがって、液体噴射ヘッドHの数を減少させて、液体噴射装置1の小型化を図れる。
【0123】
また、本変形例では、2個の液体噴射ヘッドHを、+Y方向に移動させながら印刷を行う1パス印刷において、前処理液、色材を含むインク及び後処理液を噴射の順番を守りつつ印刷を行うことができる。したがって、液体噴射ヘッドHを何度もY軸方向に移動させる必要がなく、印刷時間を短縮できる。
【0124】
なお、本変形例では、ヘッドチップHc1、Hc2、Hc7、Hc8が「第1ヘッドチップ」に相当し、ヘッドチップHc3~Hc6が「第2ヘッドチップ」に相当する。また、本変形例では、液体噴射ヘッドH1が「第1液体噴射ヘッド」に相当し、液体噴射ヘッドH2が「第2液体噴射ヘッド」に相当する。また、本実施形態では、Y軸方向が「主走査方向」に相当し、+X方向が「搬送方向」に相当する。
【0125】
(変形例5)
図17は、実施形態1の変形例5の液体噴射装置1が有する2個の液体噴射ヘッドHを+Z方向に見た模式図である。本変形例は、液体噴射ヘッドHの配置と、噴射能力が異なるヘッドチップHcの配置とが、変形例4と相違し、ヘッドチップHcが1列のノズル列22のみを有する点で変形例4と相違する。
【0126】
図示するように、本変形例では、不図示の支持部材7が2個の液体噴射ヘッドHを保持する。2個の液体噴射ヘッドHは、X軸方向に関して同じ位置となるように、Y軸方向に並設されている。ここで、2個の液体噴射ヘッドHがX軸方向に同じ位置に設けられているとは、2個の液体噴射ヘッドHのそれぞれのヘッドチップHcのノズル21がX軸方向に同じ位置に設けられていることを言う。
【0127】
本変形例では、2個の液体噴射ヘッドHのうち、-Y方向の液体噴射ヘッドHを液体噴射ヘッドH1と称し、+Y方向の液体噴射ヘッドHを液体噴射ヘッドH2と称する。以降、液体噴射ヘッドH1、H2を区別しない場合には、液体噴射ヘッドHと称する。
【0128】
液体噴射ヘッドHには、それぞれ4個のヘッドチップHcが設けられている構成は、上述した変形例4と同じであるため重複する説明は省略する。
【0129】
液体噴射ヘッドH1の4個のヘッドチップHcを、+X方向に順番にヘッドチップHc1、ヘッドチップHc2、ヘッドチップHc3及びヘッドチップHc4と称する。また、液体噴射ヘッドH2の4個のヘッドチップHcを、+X方向に順番にヘッドチップHc5、ヘッドチップHc6、ヘッドチップHc7及びヘッドチップHc8と称する。以降、ヘッドチップHc1~Hc8を区別しない場合には、ヘッドチップHcと称する。
【0130】
液体噴射ヘッドH1において、ヘッドチップHc2、Hc4は、ヘッドチップHc1、Hc3よりも高い噴射能力を有する。また、液体噴射ヘッドH2において、ヘッドチップHc5、Hc7は、ヘッドチップHc6、Hc8よりも高い噴射能力を有する。なお、ヘッドチップHc2、Hc4、Hc5、Hc7は、略同じ噴射能力を有し、ヘッドチップHc1、Hc3、Hc6、Hc8は、略同じ噴射能力を有する。
【0131】
また、各ヘッドチップHcは、1列のノズル列22を有する。液体噴射ヘッドH1のヘッドチップHc1~Hc4および液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc5~Hc8のそれぞれのノズル列22からは同じインクが噴射される。なお、各ヘッドチップHcは、2列のノズル列22を有していてもよい。
【0132】
このような液体噴射ヘッドHを有する液体噴射装置1の流路構成について図18を参照して説明する。図18は、変形例5の液体噴射装置1の流路構成を説明する模式図である。なお、図18では、液体噴射ヘッドH1に供給するインクの流路構成について示しているが、液体噴射ヘッドH2についても同様の構成である。
【0133】
図示するように、液体噴射ヘッドHの流路部材200には、流路400が設けられている。流路400は、一端が液体貯留部3に接続され、他端が途中で4個に分岐されて4個のヘッドチップHcに接続される。また、流路400の分岐前の部分には、フィルター401bが設けられている。
【0134】
液体貯留部3からのインクは、チューブ等の供給管3aを介して液体噴射ヘッドHに供給される。なお、供給管3aの途中には、インクを液体噴射ヘッドHに圧送する圧送手段であるポンプ3bが設けられている。なお、圧送手段は、ポンプ3bに限定されず、液体貯留部3を外部から押圧する押圧手段や、液体噴射ヘッドHと液体貯留部3との鉛直方向の相対位置を調整して発生する水頭圧差を用いるようにしてもよい。
【0135】
このように1つのインクが複数に分岐されて複数のヘッドチップHcに供給される構成において、液体噴射ヘッドHが+Y方向に移動しながらインクを噴射する場合、ヘッドチップHc5、Hc7から先にインク滴の噴射が行われた後、ヘッドチップHc6、Hc8からインク滴の噴射が行われることで、媒体SのY軸方向に関して同じ位置にインクが着弾する。このとき、ヘッドチップHc5、Hc7からインク滴を噴射することで発生する流路内の負圧が、共通の流路400を介してヘッドチップHc6、Hc8に作用する。同様に、ヘッドチップHc1、Hc3から先にインク滴の噴射が行われた後、ヘッドチップHc2、Hc4からインク滴の噴射が行われることで、媒体SのY軸方向に関して同じ位置にインクが着弾する。このとき、ヘッドチップHc1、Hc3からインク滴を噴射することで発生する流路内の負圧が、共通の流路400を介してヘッドチップHc2、Hc4に作用する。この結果、ヘッドチップHc6、Hc8およびヘッドチップHc2、Hc4から噴射されるインク滴の噴射重量が減少し、媒体S上に形成されるドットサイズが小さくなるが、本変形例のようなヘッドチップHcの配置とすることで、境界部分による濃度むらを抑制できる。
【0136】
ここで、1つの液体噴射ヘッドH′に噴射特性が略同じヘッドチップを設けた場合の一例を図19に示す。なお、図19は、比較例の液体噴射ヘッドHAを+Z方向に見た模式図である。
【0137】
図19に示すように、-Y方向に配置された液体噴射ヘッドH1′は、4個のヘッドチップHcを有し、+Y方向に配置された液体噴射ヘッドH2′は、4個のヘッドチップHcを有する。
【0138】
液体噴射ヘッドH1′のヘッドチップHcを、+X方向に順番にヘッドチップHc1A、ヘッドチップHc2A、ヘッドチップHc3A、ヘッドチップHc4Aと称する。また、液体噴射ヘッドH2′のヘッドチップHcを+X方向に順番にヘッドチップHc5A、ヘッドチップHc6A、ヘッドチップHc7A、ヘッドチップHc8Aと称する。
【0139】
液体噴射ヘッドH2′のヘッドチップHcは、液体噴射ヘッドH1′のヘッドチップHcよりも噴射特性が高い。
【0140】
このような構成で図18に示す流路構成と同じ構成でインクを供給して、噴射重量が大きいインク、すなわち、液体噴射ヘッドH2′で印刷を行う場合、ヘッドチップHc5A、Hc7Aから先にインクが噴射された後、ヘッドチップHc6A、Hc8Aからインクが噴射することで、媒体SのY軸方向に関して同じ位置にインクが着弾する。このとき、ヘッドチップHc5A、Hc7Aからインク滴を噴射することで発生する流路内の大きな負圧が、共通の流路400を介してヘッドチップHc6A、Hc8Aに作用する。この結果、ヘッドチップHc6A、Hc8Aから噴射されるインク滴の噴射重量が、ヘッドチップHc5A、Hc7Aから噴射されるインク滴の噴射重量よりも極端に減少する。このため、媒体SにおいてヘッドチップHc5A、Hc7Aが印刷した部分と、ヘッドチップHc6AHc8Aが印刷した部分との境界部分で濃度ムラが発生し易い。
【0141】
これに対して、本変形例では、液体噴射ヘッドH1のヘッドチップHc2、Hc4と、液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc5、Hc7と、によって噴射重量が大きいインクによる印刷が行われる。このとき、ヘッドチップHc2、Hc4は、比較的噴射重量が小さいヘッドチップHc1、Hc3からインク滴が噴射された後にインク滴を噴射するため、負圧の影響が比較的小さく、噴射重量の減少を抑制できる。そのため、媒体SにおいてヘッドチップHc2、Hc4が印刷した部分と、ヘッドチップHc5、Hc7が印刷した部分との境界部分において濃度ムラを抑制できる。
【0142】
また、本変形例では、液体噴射ヘッドH1のヘッドチップHc1、Hc3と、液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc6、Hc8と、によって噴射重量が小さいインクによる印刷が行われる。このとき、ヘッドチップHc6、Hc8は、噴射重量が大きいヘッドチップHc5、Hc7からインク滴が噴射された後にインク滴を噴射するため、負圧の影響を受けるが、ヘッドチップHc6、Hc8から噴射されるインク滴の噴射重量は比較的小さい。そのため、媒体SにおいてヘッドチップHc1、Hc3が印刷した部分と、ヘッドチップHc6、Hc8が印刷した部分との境界部分Sにおいて濃度ムラを抑制できる。
【0143】
本変形例では、X軸方向が「第1方向」に相当し、Y軸方向が「第2方向」に相当する。また、本変形例では、ヘッドチップHc1、Hc3、又は、Hc6、Hc8が「第1ヘッドチップ」に相当し、ヘッドチップHc2、Hc4、又は、Hc5、Hc7が「第2ヘッドチップ」に相当する。また、本変形例では、ヘッドチップHc1又はヘッドチップHc8が「第1ヘッドチップB」に相当し、ヘッドチップHc3又はヘッドチップHc6が「第1ヘッドチップA」に相当する。また、本変形例では、ヘッドチップHc2又はヘッドチップHc7が「第2ヘッドチップA」に相当し、ヘッドチップHc4又はヘッドチップHc5が「第2ヘッドチップB」に相当する。
【0144】
このような本変形例では、液体噴射ヘッドH1が「第1液体噴射ヘッド」に相当し、液体噴射ヘッドH2が「第2液体噴射ヘッド」に相当する。また、本実施形態では、Y軸方向が「主走査方向」に相当し、+X方向が「搬送方向」に相当する。
また、液体噴射ヘッドH1のヘッドチップHc1、Hc3のX軸方向に関する各位置が「第1位置」に相当し、ヘッドチップHc2、Hc4のX軸方向に関する各位置が「第2位置」に相当する。つまり、「第1位置」及び「第2位置」は、それぞれ単一の位置であってもよく、2個以上の複数の位置であってもよい。
【0145】
また、液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc5は、X軸方向に関してヘッドチップHc1の「第1位置」にあり、ヘッドチップHc7は、X軸方向に関してヘッドチップHc3の「第1位置」にあり、ヘッドチップHc6は、X軸方向に関してヘッドチップHc2の「第2位置」にあり、ヘッドチップHc8は、X軸方向に関してヘッドチップHc4の「第2位置」にある。
【0146】
そして、ヘッドチップHc1、Hc3、Hc6、Hc8が噴射する液体が「第1液体」に相当し、ヘッドチップHc2、Hc4、Hc5、Hc7が噴射する液体が「第2液体」に相当する。「第1液体」と「第2液体」とは異なる液体であってもよく、同じ液体であってもよい。
以上説明したように、本変形例では、ヘッドチップHc1、Hc3、Hc6、Hc8によって小さなドットを媒体S上に形成することができ、画質を向上できる。また、ヘッドチップHc2、Hc4、Hc5、Hc7によって大きなドットを媒体S上に形成することができ、広い面積を短時間で塗りつぶすことができるため、比較的短い時間で印刷を行うことができ、生産性を向上できる。
【0147】
もちろん、1つの媒体Sに形成される画像において、比較的広い面積を塗りつぶす部分には、ヘッドチップHc2、Hc4、Hc5、Hc7からインク滴を噴射させ、高い画質が要求される部分には、ヘッドチップHc1、Hc3、Hc6、Hc8からインク滴を噴射させることで、高生産性と高画質化とを両立した印刷を行うことができる。
【0148】
また、本変形例では、ヘッドチップHc1、Hc3、Hc6、Hc8のX軸方向で隣り合う2つのヘッドチップHcノズル列22をX軸方向で部分的に重複させて、X軸方向に亘って連続したノズル21の列を形成することができる。このため、液体噴射ヘッドHをY軸方向に往復移動させる回数を低減して、比較的短い時間で印刷を実行することができる。ヘッドチップHc2、Hc4、Hc5、Hc7においても同様である。
【0149】
また、1つの液体噴射ヘッドHに噴射能力の異なるヘッドチップHcを設けることで、液体噴射ヘッドH1、H2の何れか一方の液体噴射ヘッドHが故障したとしても、Y軸方向の往復移動が増えるものの、生産性の高い印刷と高画質な印刷との両方の印刷が行える。
【0150】
(変形例6)
図20は、実施形態1の変形例6の液体噴射装置1が有する2個の液体噴射ヘッドHを+Z方向に見た模式図である。本変形例は、噴射能力が異なるヘッドチップHcの配置が、変形例5と相違する。
【0151】
液体噴射ヘッドH1において、ヘッドチップHc3、Hc4は、ヘッドチップHc1、Hc2よりも高い噴射能力を有する。また、液体噴射ヘッドH2において、ヘッドチップHc5、Hc6は、ヘッドチップHc7、Hc8よりも高い噴射能力を有する。なお、ヘッドチップHc3、Hc4、Hc5、Hc6は、略同じ噴射能力を有し、ヘッドチップHc1、Hc2、Hc7、Hc8は、略同じ噴射能力を有する。
【0152】
また、各ヘッドチップHcは、1列のノズル列22を有する。液体噴射ヘッドH1のヘッドチップHc1~Hc4および液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc5~Hc8のそれぞれのノズル列22からは同じインクが噴射される。なお、ヘッドチップHc1、Hc2、Hc7、Hc8から噴射されるインクと、ヘッドチップHc3、Hc4、Hc5、Hc6から噴射されるインクとは、異なるインクであってもよい。なお、各ヘッドチップHcは、2列のノズル列を有していてもよい。
【0153】
このような本変形例では、「第1液体噴射ヘッド」の一例である液体噴射ヘッドH1のヘッドチップHc1、Hc2のX軸方向に関する各位置が「第1位置」に相当し、ヘッドチップHc3、Hc4のX軸方向に関する各位置が「第2位置」に相当する。つまり、「第1位置」及び「第2位置」は、それぞれ単一の位置であってもよく、2個以上の複数の位置であってもよい。
【0154】
また、「第2液体噴射ヘッド」の一例である液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc5は、X軸方向に関してヘッドチップHc1の「第1位置」にあり、ヘッドチップHc6は、X軸方向に関してヘッドチップHc2の「第1位置」にあり、ヘッドチップHc7は、X軸方向に関してヘッドチップHc3の「第2位置」にあり、ヘッドチップHc8は、X軸方向に関してヘッドチップHc4の「第2位置」にある。
【0155】
そして、ヘッドチップHc1、Hc2、Hc7、Hc8が噴射する液体が「第1液体」に相当し、ヘッドチップHc3~Hc6が噴射する液体が「第2液体」に相当する。「第1液体」と「第2液体」とは異なる液体であってもよく、同じ液体であってもよい。
【0156】
そして、ヘッドチップHc1、Hc2、Hc7、Hc8によって小さなドットを媒体S上に形成することができ、画質を向上できる。また、ヘッドチップHc3、Hc4、Hc5、Hc6によって大きなドットを媒体S上に形成することができ、広い面積を短時間で塗りつぶすことができるため、比較的短い時間で印刷を行うことができ、生産性を向上できる。
【0157】
もちろん、1つの媒体Sに形成される画像において、比較的広い面積を塗りつぶす部分には、ヘッドチップHc3、Hc4、Hc5、Hc6からインク滴を噴射させ、高い画質が要求される部分には、ヘッドチップHc1、Hc2、Hc7、Hc8からインク滴を噴射させることで、高生産性と高画質化とを両立した印刷を行うことができる。
【0158】
また、本変形例では、ヘッドチップHc1、Hc2、Hc7、Hc8のX軸方向で隣り合う2つのヘッドチップHcノズル列22をX軸方向で部分的に重複させて、X軸方向に亘って連続したノズル21の列を形成することができる。このため、液体噴射ヘッドHをY軸方向に往復移動させる回数を低減して、比較的短い時間で印刷を実行することができる。ヘッドチップHc3~Hc6においても同様である。
【0159】
また、1つの液体噴射ヘッドHに噴射能力の異なるヘッドチップHcを設けることで、液体噴射ヘッドH1、H2の何れか一方の液体噴射ヘッドHが故障したとしても、Y軸方向の往復移動が増えるものの、生産性の高い印刷と高画質な印刷との両方の印刷が行える。
【0160】
(実施形態2)
図21は、本発明の実施形態2に係る液体噴射装置1の概略構成を示す図である。図22は、ヘッドモジュールHmを+Z方向に見た模式図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0161】
図21に示す液体噴射装置1は、複数の液体噴射ヘッドHを備えるヘッドモジュールHmを複数備え、媒体SをX軸方向に搬送すると共に、液体噴射ヘッドHから媒体Sに向かって+Z方向に「液体」の一種であるインクを噴射することで印刷を行う、所謂、ライン式プリンターである。
【0162】
ヘッドモジュールHmは、Z軸方向に見てY軸方向を長手方向、X軸方向を短手方向とする形状を有し、複数の液体噴射ヘッドHと、これら複数の液体噴射ヘッドHを支持する支持体2と、を具備する。本実施形態では、1つのヘッドモジュールHmは、3個の液体噴射ヘッドHを具備する。3個の液体噴射ヘッドHは、X軸方向に関して同じ位置となるように、Y軸方向に並設されている。
【0163】
このようなヘッドモジュールHmが、本実施形態では、3個設けられている。3個のヘッドモジュールHmは、Y軸方向に関して同じ位置となるように、X軸方向に3個並設されている。本実施形態では、3個のヘッドモジュールHmを、+X方向に順番にヘッドモジュールHm1、ヘッドモジュールHm2、ヘッドモジュールHm3と称する。以降、ヘッドモジュールHm1~Hm3を区別しない場合に、ヘッドモジュールHmと称する。
【0164】
また、各ヘッドモジュールHmは、Y軸方向に関する媒体Sの全範囲に亘って複数のノズル21が分布するように配置されており、支持体2が液体噴射装置1の不図示の筐体に固定される。このためヘッドモジュールHmは、印刷時に関してY軸方向に移動しない。ただし、ヘッドモジュールHmは、液体噴射ヘッドHのメンテナンス時に関してY軸方向やX軸方向に移動してもよい。
【0165】
各ヘッドモジュールHmは、3個の液体噴射ヘッドHを具備する。本実施形態では、ヘッドモジュールHm1の3個の液体噴射ヘッドHを液体噴射ヘッドH1と称し、3個の液体噴射ヘッドH1を+Y方向に向かって順番に液体噴射ヘッドH1A、液体噴射ヘッドH1B、液体噴射ヘッドH1Cと称する。
【0166】
また、ヘッドモジュールHm2の3個の液体噴射ヘッドHを液体噴射ヘッドH2と称し、+Y方向に向かって順番に液体噴射ヘッドH2A、液体噴射ヘッドH2B、液体噴射ヘッドH2Cと称する。
【0167】
さらに、ヘッドモジュールHm3の3個の液体噴射ヘッドHを液体噴射ヘッドH3と称し、+Y方向に向かって順番に液体噴射ヘッドH3A、液体噴射ヘッドH3B、液体噴射ヘッドH3Cと称する。以降、液体噴射ヘッドH1~H3を区別しない場合は、液体噴射ヘッドHと称する。
【0168】
また、液体噴射装置1は、上述した実施形態1と同様の液体貯留部3と、制御ユニット4と、搬送機構5と、を具備する。これら液体貯留部3、制御ユニット4、搬送機構5については上述した実施形態1と同様であるため重複する説明は省略する。
【0169】
液体噴射ヘッドHの一例について、さらに図23図25を参照して説明する。なお、図23は、液体噴射ヘッドHを-Z方向に見た分解斜視図である。図24は、液体噴射ヘッドHを+Z方向に見た模式図である。図25は、図24のC-C′線断面図である。
【0170】
図23に示すように、液体噴射ヘッドHは、複数のヘッドチップHcと、複数のヘッドチップHcが共通して固定される流路部材200と、カバーヘッド220と、を具備する。
【0171】
また、液体噴射ヘッドHは、4個のヘッドチップHcを具備する。また、ヘッドチップHcは、本実施形態では、ノズル21が並設されたノズル列22を1つ有する。なお、ヘッドチップHcの基本的な構成は上述した実施形態1と同様であるため、重複する説明は省略する。もちろん、ヘッドチップHcは、2列のノズル列22を有してもよい。
【0172】
このようなヘッドチップHcは、流路部材200に固定される。流路部材200の図示しない内部には上述した実施形態と同様の流路400が設けられている。流路400は、途中で分岐することで、X軸方向に関して同じ位置に設けられたヘッドチップHcに共通して連通する。つまり、1個の液体噴射ヘッドHのX軸方向に関して異なる位置に設けられたヘッドチップHcには、異なるインクが供給される。
【0173】
また、流路部材200には、ヘッドチップHcを収容するための収容部208が設けられている。収容部208は、各ヘッドチップHcを個別に収容可能なものであってもよく、複数のヘッドチップHcを共通して収容するものであってもよい。また、流路部材200の収容部208が開口する+Z方向を向く面には、カバーヘッド220が設けられている。カバーヘッド220についても上述した実施形態1と同様であるため重複する説明は省略する。
【0174】
このような流路部材200に、ヘッドチップHcは、ノズル21の並設方向が、X軸方向及びY軸方向の双方に対して傾斜したXa方向となるように保持されている。また、ヘッドチップHcは、Y軸方向に沿って千鳥状に4個並んで配置されている。すなわち、4のヘッドチップHcは、X軸方向に同じ位置となるようにY軸方向に並設された2つのヘッドチップHcで構成される列が、X軸方向に2列並んで配置されている。本実施形態では、4個のヘッドチップHcを+Y方向に向かって順番にヘッドチップHc1、ヘッドチップHc2、ヘッドチップHc3及びヘッドチップHc4と称する。なお、ヘッドチップHc1~Hc4を区別しない場合には、ヘッドチップHcと称する。
【0175】
また、ヘッドチップHc1のノズル列22とヘッドチップHc3のノズル列22とは、X軸方向に見て一部が重なるように配置されている。また、ヘッドチップHc2のノズル列22と、ヘッドチップHc4のノズル列22とは、X軸方向に見て一部が重なるように配置されている。このため、2つのヘッドチップHcのノズル列22をX軸方向に見て部分的に重複させて、Y軸方向に亘って連続したノズル21の列を形成できる。
【0176】
なお、ヘッドチップHc1とヘッドチップHc2との各ノズル21は、Y軸方向に関して同じ位置に配置され、ヘッドチップHc3とヘッドチップHc4との各ノズル21は、Y軸方向に関して同じ位置に配置されている。
【0177】
また、液体噴射ヘッドHは、Z軸方向に見て、外形を画定するY軸方向の両側の辺の一部がXa方向に沿った形状を有する。このため、図25に示すように液体噴射ヘッドHをY軸方向に並べた際に、一方の液体噴射ヘッドHのヘッドチップHc4のノズル列22と、他方の液体噴射ヘッドHのヘッドチップHc2のノズル列22とをX軸方向に見て部分的に重複させて、Y軸方向に亘って連続したノズル21の列を形成できる。同様に、一方の液体噴射ヘッドHのヘッドチップHc3のノズル列22と、他方の液体噴射ヘッドHのヘッドチップHc1のノズル列22とをX軸方向に見て部分的に重複させて、Y軸方向に亘って連続したノズル21の列を形成できる。
【0178】
そして、ヘッドモジュールHm1の液体噴射ヘッドH1のヘッドチップHc2、Hc4は、ヘッドチップHc1、Hc3よりも高い噴射能力を有する。また、ヘッドチップHc2とヘッドチップHc3とは、略同じ噴射能力を有し、ヘッドチップHc2とヘッドチップHc4とは略同じ噴射能力を有する。
【0179】
ヘッドモジュールHm2の液体噴射ヘッドH2の4個のヘッドチップHcは、略同じ噴射能力を有する。また、液体噴射ヘッドH2の4個のヘッドチップHcは、液体噴射ヘッドH1のヘッドチップHc1、Hc3と略同じ噴射能力を有する。
【0180】
ヘッドモジュールHm3の液体噴射ヘッドH3のヘッドチップHc1、Hc3は、ヘッドチップHc2、Hc4よりも高い噴射能力を有する。また、ヘッドチップHc1とヘッドチップHc3とは、略同じ噴射能力を有し、ヘッドチップHc2とヘッドチップHc4とは略同じ噴射能力を有する。さらに、液体噴射ヘッドH3のヘッドチップHc2及びヘッドチップHc4は、液体噴射ヘッドH2の4個のヘッドチップHcと略同じ噴射能力を有する。
【0181】
このような3個のヘッドモジュールHmを用いて媒体Sを+X方向に搬送して印刷を行う場合、ヘッドモジュールHm1の液体噴射ヘッドH1のヘッドチップHc2、Hc4から前処理液を噴射する。次いで、前処理液の上に、液体噴射ヘッドH1のヘッドチップHc1、Hc3と、ヘッドモジュールHm2の液体噴射ヘッドH2と、ヘッドモジュールHm3の液体噴射ヘッドH3のヘッドチップHc2、Hc4と、のそれぞれから色材を含む4種類のインクを噴射させて画像を印刷する。その後、画像の上にヘッドモジュールHm3の液体噴射ヘッドH3のヘッドチップHc1、Hc3から後処理液を噴射させる。これにより、前処理液、色材を含むインク、後処理液を噴射する順番を守りつつ、生産性を向上して画質を向上できる。
【0182】
ちなみに、上記の液体噴射ヘッドHに噴射能力が同じヘッドチップHcのみを設ける場合、高生産性と高画質化との両立を図るためには、前処理液を噴射する液体噴射ヘッドと、色材を含むインクを噴射する2個の液体噴射ヘッドと、後処理液を噴射する液体噴射ヘッドと、の合計4個の液体噴射ヘッドをX軸方向に設ける必要がある。つまり、4個のヘッドモジュールHmが必要になる。これに比べて、本変形例では、1つの液体噴射ヘッドHに噴射能力の異なるヘッドチップHcを設けることで、3個の液体噴射ヘッドHで媒体Sの搬送方向に沿って噴射する液体の順番を守りつつ前処理液、色材を含むインク、後処理液を順番に噴射させることができる。したがって、高生産性と高画質化との両立を図りつつ液体噴射ヘッドHの数を減らすことができ、液体噴射ヘッドHが占有する空間を低減して液体噴射装置1の小型化を図れる。
【0183】
また、本実施形態のライン型の液体噴射装置1には、上述した実施形態1及び変形例1~6の液体噴射ヘッドHを用いることも可能である。
【0184】
本実施形態の液体噴射ヘッドH1のヘッドチップHc1、Hc3が「第1ヘッドチップ」に相当し、液体噴射ヘッドH1のヘッドチップHc2、Hc4が「第2ヘッドチップ」に相当する。また、液体噴射ヘッドH1のヘッドチップHc1、Hc3が「第1チップ群」に相当し、液体噴射ヘッドH1のヘッドチップHc2、Hc4が「第2チップ群」に相当する。
【0185】
また、本実施形態の液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHcが「第1ヘッドチップと同じ噴射能力を有するヘッドチップ」に相当する。
【0186】
また、本実施形態の液体噴射ヘッドH3のヘッドチップHc2、Hc4が「第1ヘッドチップ」に相当し、液体噴射ヘッドH3のヘッドチップHc1、Hc3が「第2ヘッドチップ」に相当する。また、液体噴射ヘッドH3のヘッドチップHc2、Hc4が「第1チップ群」に相当し、液体噴射ヘッドH3のヘッドチップHc1、Hc3が「第2チップ群」に相当する。
【0187】
また、本実施形態のY軸方向が「第1方向」に相当し、X軸方向が「第2方向」に相当する。また、本実施形態の搬送機構5が「搬送部」に相当し、+Y方向が「搬送方向」に相当する。
【0188】
また、本実施形態のヘッドモジュールHm1が「第1ラインヘッド」に相当し、ヘッドモジュールHm3が「第2ラインヘッド」に相当し、ヘッドモジュールHm2が「第3ラインヘッド」に相当する。
【0189】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されない。
【0190】
例えば、上述した各実施形態及び各変形例では、1つの液体噴射ヘッドHが「第1ヘッドチップ」及び「第2ヘッドチップ」をそれぞれ複数有するものとしたが、特にこれに限定されず、「第1ヘッドチップ」及び「第2ヘッドチップ」はそれぞれ少なくとも1個有すればよい。
【0191】
また、上述した各実施形態及び各変形例では、圧力室12に圧力変化を生じさせる「駆動素子」として、薄膜型の圧電アクチュエーター300を用いて説明したが、特にこれに限定されない。「駆動素子」は、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電アクチュエーターを使用できる。また、「駆動素子」は、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電アクチュエーターを使用できる。また、「駆動素子」は、圧力室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズルから液滴を噴射するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を噴射させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用できる。ちなみに、発熱素子を用いた場合の噴射重量は、上述した流路構造以外に、例えば、発熱素子の発熱量の大小などによっても変化する。ここで、発熱素子の発熱量とは、発熱素子である抵抗体の抵抗値の大小である。例えば、抵抗体の抵抗値が大きければ、同じ電圧で駆動した際の発熱量が大きくなるため、噴射重量が大きくなり、抵抗体の抵抗値が小さければ、発熱量が小さくなり、噴射重量が小さくなる。このため、発熱量が小さな発熱素子を有するヘッドチップを「第1ヘッドチップ」として用いて、発熱量が大きな発熱素子を有するヘッドチップを「第2ヘッドチップ」として用いればよい。
【0192】
(付記)
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0193】
好適な態様である態様1に係る液体噴射ヘッドは、液体を噴射する複数のヘッドチップを備えた液体噴射ヘッドであって、前記複数のヘッドチップは、1又は複数の第1ヘッドチップと、前記第1ヘッドチップよりも噴射能力の高い1又は複数の第2ヘッドチップとを含む。これにより、噴射能力の異なるヘッドチップのみをそれぞれが有する液体噴射ヘッドを別々に装置内に設ける場合に比べて、液体噴射ヘッドを小型化できると共に、生産性の高い印刷と、画質を向上した印刷の両方を行うことができ、拡張性を向上できる。
【0194】
態様1の具体例である態様2において、前記複数のヘッドチップは、前記第1ヘッドチップを含み前記第1ヘッドチップと同じ噴射能力を有する複数のヘッドチップで構成された第1チップ群と、前記第2ヘッドチップを含み前記第2ヘッドチップと同じ噴射能力を有する複数のヘッドチップで構成された第2チップ群と、を含み、前記第1チップ群の複数のヘッドチップは、第1方向に並んで配置され、且つ、隣り合うヘッドチップ同士は前記第1方向に直交する第2方向に見て互いの一部が重なるように配置され、前記第2チップ群の複数のヘッドチップは、前記第1方向に並んで配置され、且つ、隣り合うヘッドチップ同士は前記第2方向に見て互いの一部が重なるように配置され、前記第1チップ群と前記第2チップ群とは、前記第2方向にずれて配置されている。これによれば、第1ヘッドチップと第2ヘッドチップとで同じ液体を使用する場合には、1つの液体噴射ヘッドにおいて高生産性と高画質化とを両立できる。また、第1ヘッドチップ及び第2ヘッドチップの何れか一方から処理液を噴射させ、他方から色材を含むインクを噴射させることで、液体噴射ヘッドの数を減少させて小型化を図れると共に、高生産性と高画質化とを両立できる。
【0195】
好適な態様である態様3に係る液体噴射装置は、態様2に記載の液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置であって、1又は複数の前記液体噴射ヘッドによって構成され、前記第1方向を長手方向とする第1ラインヘッドと、媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、を備え、前記第1ラインヘッドの前記液体噴射ヘッドにおいて、前記第1チップ群は、前記第2チップ群に対して前記搬送方向に関して下流側に配置され、前記第1ラインヘッドの前記液体噴射ヘッドにおける前記第1チップ群は、色材を含むインクを噴射し、前記第1ラインヘッドの前記液体噴射ヘッドにおける前記第2チップ群は、前処理液を噴射する。これによれば、液体噴射ヘッドの数を減少させて小型化を図れると共に、高生産性と高画質化とを両立できる。
【0196】
態様3の具体例である態様4において、1又は複数の前記液体噴射ヘッドによって構成され、前記第1方向を長手方向とする第2ラインヘッドを備え、前記第1ラインヘッドは、前記第2ラインヘッドに対して前記搬送方向に関して上流側に配置され、前記第2ラインヘッドの前記液体噴射ヘッドにおいて、前記第1チップ群は、前記第2チップ群に対して前記搬送方向に関して上流側に配置され、前記第2ラインヘッドの前記液体噴射ヘッドにおける前記第1チップ群は、色材を含むインクを噴射し、前記第2ラインヘッドの前記液体噴射ヘッドにおける前記第2チップ群は、後処理液を噴射する。これによれば、液体噴射ヘッドの数を減少させて小型化を図れると共に、高生産性と高画質化とを両立できる。
【0197】
態様4の具体例である態様5において、前記搬送方向に関して前記第1ラインヘッドと前記第2ラインヘッドとの間に配置された第3ラインヘッドを備え、前記第3ラインヘッドを構成する1又は複数の液体噴射ヘッドは、前記第1ヘッドチップと同じ噴射能力を有する複数のヘッドチップで構成され、前記第3ラインヘッドの前記液体噴射ヘッドにおける前記複数のヘッドチップは、色材を含むインクを噴射する。これによれば、第3ラインヘッドは、色材を含むインクのみを噴射するため、第2ヘッドチップが不要となり、無駄な構成を抑制して十分な機能を発揮することができる。
【0198】
態様1の具体例である態様6において、主走査方向に往復移動されながら液体を噴射する液体噴射ヘッドであって、前記複数のヘッドチップは、前記主走査方向に並んで配置され、前記複数の第2ヘッドチップは、前記主走査方向の一端に配置された第2ヘッドチップAと、前記主走査方向の他端に配置された第2ヘッドチップBと、を含み、前記1又は複数の第1ヘッドチップは、前記第2ヘッドチップAと前記第2ヘッドチップBとの間に配置され、前記1又は複数の第1ヘッドチップは、色材を含むインクを噴射し、前記第2ヘッドチップAは、前処理液を噴射し、前記第2ヘッドチップBは、後処理液を噴射する。これによれば、1つの液体噴射ヘッドで、処理液と色材を含むインクとを噴射することができ、液体噴射ヘッドの数を減少させて小型化を図れると共に、高生産性と高画質化とを両立できる。
【0199】
態様1の具体例である態様7に係る液体噴射装置は、前記液体噴射ヘッドである第1液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドである第2液体噴射ヘッドと、前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドを保持するとともに、主走査方向に往復移動するキャリッジと、を備え、前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドは、前記主走査方向に並んで配置され、前記第1液体噴射ヘッドの前記複数のヘッドチップは、前記主走査方向に並んで配置され、前記第2液体噴射ヘッドの前記複数のヘッドチップは、前記主走査方向に並んで配置され、前記第1液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第1ヘッドチップは、前記主走査方向に関して、前記第1液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第2ヘッドチップと、前記第2液体噴射ヘッドとの間に配置され、前記第2液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第1ヘッドチップは、前記主走査方向に関して、前記第2液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第2ヘッドチップと、前記第1液体噴射ヘッドとの間に配置され、前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドの前記複数の第1ヘッドチップは、色材を含むインクを噴射し、前記第2液体噴射ヘッドの前記第2ヘッドチップは、前処理液を噴射し、前記第1液体噴射ヘッドの前記第2ヘッドチップは、後処理液を噴射する。これによれば、液体噴射ヘッドを主走査方向に移動するだけで前処理液、色材を含むインク、後処理液を噴射することができ、液体噴射ヘッドの数を減らせる。また、液体噴射ヘッドの主走査方向の移動で前処理液、色材を含むインク、後処理液を噴射の順番を守りつつ噴射することができ、液体噴射ヘッドを主走査方向に往復移動する回数を減らして印刷時間を短縮できる。
【0200】
態様1の具体例である態様8において、主走査方向に往復移動されながら液体を噴射する液体噴射ヘッドであって、前記複数のヘッドチップは、前記主走査方向に直交する媒体の搬送方向に並んで配置され、前記複数の第2ヘッドチップは、前記搬送方向に関して一端に配置された第2ヘッドチップAと、前記搬送方向に関して他端に配置された第2ヘッドチップBと、を含み、前記1又は複数の第1ヘッドチップは、前記第2ヘッドチップAと前記第2ヘッドチップBとの間に配置され、前記1又は複数の第1ヘッドチップは、色材を含むインクを噴射し、前記第2ヘッドチップAは、前処理液を噴射し、前記第2ヘッドチップBは、後処理液を噴射する。これによれば、液体噴射ヘッドを主走査方向に移動するだけで前処理液、色材を含むインク、後処理液を噴射することができ、液体噴射ヘッドの数を減らせる。また、液体噴射ヘッドの主走査方向の移動で前処理液、色材を含むインク、後処理液を噴射の順番を守りつつ噴射することができ、液体噴射ヘッドを主走査方向に往復移動する回数を減らして印刷時間を短縮できる。
【0201】
好適な態様である態様9の液体噴射装置は、態様1に記載の液体噴射ヘッドを具備し、前記液体噴射ヘッドである第1液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドである第2液体噴射ヘッドと、前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドを保持するとともに、主走査方向に往復移動するキャリッジと、を備え、前記第1液体噴射ヘッドにおいて、前記1又は複数の第2ヘッドチップは、前記1又は複数の第1ヘッドチップに対して媒体の搬送方向に関して上流側に配置され、前記第2液体噴射ヘッドにおいて、前記1又は複数の第2ヘッドチップは、前記1又は複数の第1ヘッドチップに対して前記搬送方向に関して下流側に配置され、前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドは、前記第1液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第1ヘッドチップと、前記第2液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第1ヘッドチップとが前記搬送方向に同じ位置となるように配置され、前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドの前記複数の第1ヘッドチップは、色材を含むインクを噴射し、前記第1液体噴射ヘッドの前記第2ヘッドチップは、前処理液を噴射し、前記第2液体噴射ヘッドの前記第2ヘッドチップは、後処理液を噴射する。これによれば、液体噴射ヘッドを主走査方向に移動するだけで前処理液、色材を含むインク、後処理液を噴射することができ、液体噴射ヘッドの数を減らせる。また、液体噴射ヘッドの主走査方向の移動で前処理液、色材を含むインク、後処理液を噴射の順番を守りつつ噴射することができ、液体噴射ヘッドを主走査方向に往復移動する回数を減らして印刷時間を短縮できる。
【0202】
態様1の具体例である態様10において、前記複数のヘッドチップの夫々は、液体を噴射する複数のノズルが第1方向に並んだノズル列を有し、前記1又は複数の第1ヘッドチップは、前記第1方向に直交する第2方向に関して同じ位置に配置され、且つ、前記第1方向に関して異なる位置に配置された、第1ヘッドチップA及び第1ヘッドチップBを含み、前記1又は複数の第2ヘッドチップは、前記第2方向に関して同じ位置に配置され、且つ、前記第1方向に関して異なる位置に配置された、第2ヘッドチップA及び第2ヘッドチップBを含み、前記第1ヘッドチップA及び前記第1ヘッドチップBと、前記第2ヘッドチップA及び前記第2ヘッドチップBとは、前記第2方向に関して異なる位置に配置され、前記第2方向に見て、前記第1ヘッドチップAの前記ノズル列の一端部は、前記第2ヘッドチップAの前記ノズル列と部分的に重なり、前記第1ヘッドチップAの前記ノズル列の他端部は、前記第2ヘッドチップBの前記ノズル列の一端部と部分的に重なり、前記第2ヘッドチップAの前記ノズル列の他端部は、前記第1ヘッドチップBの前記ノズル列と部分的に重なり、前記第1ヘッドチップA、前記第1ヘッドチップB、前記第2ヘッドチップA及び前記第2ヘッドチップBには、共通の供給流路を介して同じ種類の色材を含むインクが供給される。
【0203】
態様1の具体例である態様11において、前記第1ヘッドチップと前記第2ヘッドチップとは、互換性がある。これによれば、第1ヘッドチップと第2ヘッドチップとを入れ替えることができると共に、専用のヘッドチップを複数種類用意する必要がなくコストを低減することができる。
【0204】
態様1の具体例である態様12において、前記液体噴射ヘッドは、前記第1ヘッドチップを収容している第1収容空間と、前記第2ヘッドチップを収容している第2収容空間と、を有し、前記第1ヘッドチップは、前記第2収容空間に収容可能であり、前記第2ヘッドチップは、前記第1収容空間に収容可能である。
【0205】
態様1の具体例である態様13において、前記第1ヘッドチップ及び前記第2ヘッドチップに同じ駆動波形を供給することで同じ種類の液体を噴射させた場合に、前記第2ヘッドチップのノズルから噴射される液体の重量は、前記第1ヘッドチップのノズルから噴射される液体の重量よりも大きい。
【0206】
態様1の具体例である態様14において、1記録周期において、前記第2ヘッドチップの1つのノズルから液体を噴射させて媒体に1ドットを形成する際の最大噴射重量は、前記第1ヘッドチップの1つのノズルから噴射させて前記媒体に1ドットを形成する際の最大噴射重量よりも大きい。
【0207】
好適な態様である態様15の液体噴射装置は、請求項1に記載の液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置であって、前記液体噴射ヘッドである第1液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドである第2液体噴射ヘッドと、前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドを保持するとともに、主走査方向に往復移動するキャリッジと、を備え、前記第1液体噴射ヘッドと前記第2液体噴射ヘッドとは、媒体の搬送方向に関して同じ位置に配置され、且つ、前記主走査方向に並んでおり、前記第1液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第1ヘッドチップは、前記搬送方向に関して、第1位置にあり、前記第1液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第2ヘッドチップは、前記搬送方向に関して、前記第1位置とは異なる第2位置にあり、前記第2液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第1ヘッドチップは、前記搬送方向に関して、前記第2位置にあり、前記第2液体噴射ヘッドの前記1又は複数の第2ヘッドチップは、前記搬送方向に関して、前記第1位置にあり、前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドの前記複数の第1ヘッドチップは、第1液体を噴射し、前記第1液体噴射ヘッド及び前記第2液体噴射ヘッドの前記複数の第2ヘッドチップは、第2液体を噴射する。これによれば、2つの液体噴射ヘッドを使用する場合には、バンド幅を広げた状態で高生産及び高画質な印刷が可能になる。また、一方の液体噴射ヘッドが壊れても高生産及び高画質な印刷を実行できる。
【符号の説明】
【0208】
H、H1、H1A~H1C、H2、H2A~H2C、H3、H3A~H3C…液体噴射ヘッド、Hc、Hc1~Hc8…ヘッドチップ、Hm、Hm1~Hm3…ヘッドモジュール、S…媒体、T…単位周期(記録周期)、DP…駆動波形、1…液体噴射装置、2…支持体、3…液体貯留部、3a…供給管、3b…ポンプ、4…制御ユニット、5…搬送機構、5a…搬送ローラー、6…移動機構、7…支持部材、8…搬送ベルト、10…流路形成基板、12…圧力室、15…連通板、16…ノズル連通路、17…第1マニホールド部、18…第2マニホールド部、19…供給連通路、20…ノズルプレート、21…ノズル、22、22A、22B…ノズル列、30…保護基板、31…収容部、32…貫通孔、40…ケース部材、41…凹部。
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