(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139562
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびその利用
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20241002BHJP
C08L 25/10 20060101ALI20241002BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20241002BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20241002BHJP
C08L 57/00 20060101ALI20241002BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L25/10
C08L23/04
C08L45/00
C08L57/00
B32B27/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050561
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】浦上 正信
(72)【発明者】
【氏名】松谷 晃男
(72)【発明者】
【氏名】大城 伸明
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK03A
4F100AK04A
4F100AK04J
4F100AK06A
4F100AK07A
4F100AK07J
4F100AK09A
4F100AK09J
4F100AK12A
4F100AK12J
4F100AK42B
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4F100AL09A
4F100AT00C
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4F100CB03A
4F100GB32
4F100YY00A
4J002AF02Z
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4J002FD170
4J002FD200
4J002FD320
4J002GJ01
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】接着性に優れる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】特異なミクロ相構造を有するα-オレフィン系重合体(A)100重量部と、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)3~30重量部と、低密度ポリエチレン系樹脂(C)3~30重量部と、粘着付与樹脂(D)3~30重量部と、を含む樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特異なミクロ相構造を有するα-オレフィン系重合体(A)100重量部と、
水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)3~30重量部と、
低密度ポリエチレン系樹脂(C)3~30重量部と、
粘着付与樹脂(D)3~30重量部と、を含む樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、
熱可塑性樹脂からなる離型性フィルム層と、を有する積層フィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレンテレフタレートである、請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
第1の基材と、
請求項1に記載の樹脂組成物と、
第2の基材と、がこの順で積層してなる、積層体。
【請求項5】
自動車用インストルメントパネルである、請求項4に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物およびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
複数種類の樹脂からなる樹脂組成物を、ホットメルト接着剤として使用する技術が知られている。例えば、特許文献1には、エチレン系重合体、A-B-A型ブロック共重合体(Aはポリスチレンブロック、Bはアルキレン共重合体ブロック)、ならびに炭化水素樹脂系粘着付与樹脂またはテルペン樹脂系粘着付与樹脂からなる樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来の樹脂組成物からなるホットメルト接着剤は、接着性の観点から十分なものでなく、さらなる改善の余地があった。
【0005】
本発明の一態様は、前記問題点に鑑みなされたものであり、接着性に優れる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、以下である。
〔1〕特異なミクロ相構造を有するα-オレフィン系重合体(A)100重量部と、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)3~30重量部と、低密度ポリエチレン系樹脂(C)3~30重量部と、粘着付与樹脂(D)3~30重量部と、を含む樹脂組成物。
〔2〕〔1〕に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、熱可塑性樹脂からなる離型性フィルム層と、を有する積層フィルム。
〔3〕前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレンテレフタレートである、〔2〕に記載の積層フィルム。
〔4〕第1の基材と、〔1〕に記載の樹脂組成物と、第2の基材と、がこの順で積層してなる、積層体。
〔5〕自動車用インストルメントパネルである、〔4〕に記載の積層体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、接着性に優れる樹脂組成物を提供することできる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0009】
また、本明細書において特記しない限り、構造単位として、X1単量体に由来する構造単位と、X2単量体に由来する構造単位と、・・・およびXn単量体(nは2以上の整数)とを含む共重合体を、「X1/X2/・・・/Xn共重合体」とも称する。X1/X2/・・・/Xn共重合体としては、明示されている場合を除き、重合様式は特に限定されず、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよい。
【0010】
〔1.樹脂組成物〕
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、特異なミクロ相構造を有するα-オレフィン系重合体(A)100重量部と、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)3~30重量部と、低密度ポリエチレン系樹脂(C)3~30重量部と、粘着付与樹脂(D)3~30重量部と、を含む。本明細書において、「本発明の一実施形態に係る樹脂組成物」を、「本樹脂組成物」と称する場合がある。
【0011】
本樹脂組成物は、上記構成を有するために、接着性に優れる。また、本樹脂組成物は、接着性に優れるため、ホットメルト接着剤として好適に利用することができる。
【0012】
以下、本樹脂組成物の含む各成分について、詳説する。
【0013】
(ミクロ相構造を有するα-オレフィン系重合体(A))
本樹脂組成物は、ミクロ相構造を有するα-オレフィン系重合体(A)を含む。本明細書において、「特異なミクロ相構造を有するα-オレフィン系重合体(A)」を、「成分(A)」と称する場合がある。
【0014】
本明細書において、「α-オレフィン系重合体」とは、α-オレフィンに由来する構成単位(α-オレフィン単位)を50重量%以上含む重合体を意図する。α-オレフィンの具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの直鎖状のα-オレフィン;3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンなどの分岐状のα-オレフィン;または、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサンなどの環状α-オレフィン;等が挙げられる。α-オレフィン系重合体は、上記の1種類のα-オレフィンからなる単独重合体であってもよく、2種類以上のα-オレフィンからなる共重合体であってもよい。
【0015】
α-オレフィンの炭素数としては、特に限定されないが、2~20であることが好ましく、3~10であることがより好ましい。
【0016】
α-オレフィン系重合体の具体例としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低分子量ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂(但し、後述する低密度ポリエチレン系樹脂は除く);プロピレン単独重合体;プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体等のプロピレンランダム共重合体;プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体等のポリプロピレンブロック重合体;ポリブテン等のその他のポリオレフィン系樹脂;等が挙げられる。これらの内でも、プロピレンランダム共重合体、特に、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体が、原料調達が容易であり、また、接着性、耐熱性等の良好な物性を発現できるという利点があることから、好ましい。
【0017】
本明細書において、「特異なミクロ相構造を有するα-オレフィン系重合体」とは、当該α-オレフィン系重合体が、α-オレフィン系重合体(A1)からなるA1相と、α-オレフィン系重合体(A1)とは異なるα-オレフィン系重合体であるα-オレフィン系重合体(A2)からなるA2相と、を含み、さらに、当該A1相およびA2相が以下の何れかの条件(1)~(3)のいずれか1つ以上を満たす、α-オレフィン系重合体を意図する。成分(A)は、2種類以上のα-オレフィン系重合体からなる組成物であるとも言える。
(1)(A1)相もしくは(A2)相のいずれか一方が分散相であり、他方が連続相である海島構造を形成し、当該分散相を楕円として近似した場合の最大径(d1)が1~200nmである;
(2)分散相ドメインの、最大径(d1)と最大径と直交する径の最大値(d2)との比(d1/d2)が20以上の棒状の分散相となっており、前記の最大径(d1)と直交する径の最大値(d2)が1nm~200nmの範囲内である;または、
(3)(A1)相および(A2)が、相(A1)相と(A2)相のいずれが分散相であるかをImage-Pro Plusのソフトを用いて判別できない、層状のラメラ構造を形成しおり、前記(A1)相もしくは(A2)相の少なくとも一方の層の厚みが1nm~200nmの範囲内にある、ミクロ相構造である。
【0018】
成分(A)としては、上記の条件(1)~(3)のいずれか1つ以上を満たせばよいが、上記の条件のうち、条件(2)または条件(3)を満たすものが好ましく、条件(3)を満たすものがより好ましい。
【0019】
上記の条件(1)~(3)の何れかを満たす成分(A)は、例えば、ヘテロ原子を含む官能基(GA1)を含有するα-オレフィン系重合体(A1)およびヘテロ原子を含む官能基(GA2)を含有するα-オレフィン系重合体(A2)を接触させて、ヘテロ原子を含む官能基(GA1)およびヘテロ原子を含む官能基(GA2)の少なくとも一部を反応させることにより、製造することができる。
【0020】
なお、α-オレフィン系重合体(A1)または(A2)の少なくとも一方が、分子末端にヘテロ原子含む官能基(GA1)または(GA2)を含むことが好ましい。
α-オレフィン系重合体(A1)および(A2)が、分子末端にヘテロ原子含む官能基(GA1)または(GA2)をそれぞれ含み、分子末端の官能基同士を反応させて異なるセグメントが化学的に結合された直鎖型ポリマーを含む、本発明に係る特異なミクロ相構造を有するα-オレフィン系重合体を製造してもよい。
【0021】
また、α-オレフィン系重合体(A1)または(A2)のいずれか一方だけが、分子末端にヘテロ原子含む官能基(GA1)または(GA2)を含み、他方は分子末端以外の部位に上記のヘテロ原子含む官能基(GA1)または(GA2)を含んでいて、分子末端の官能基と分子末端以外の部位の官能基とを反応させて異なるセグメントが化学的に結合された分岐型ポリマーを含む本発明に係る特異なミクロ相構造を有するα-オレフィン系重合体を製造してもよい。
【0022】
ここで、ヘテロ原子を含む官能基の例としては、アミノ基、ハロゲン原子、イソシアネート基、アルデヒド基、水酸基、カルボキシ基、酸無水基、シラノール基、スルフォン酸基、エポキシ基などを挙げることができる。これらの官能基は、単独または複数種組み合わされて付与されていてもよい。
【0023】
官能基(GA1)を含有するα-オレフィン系重合体(A1)と官能基(GA2)を含有するα-オレフィン系重合体(A2)との反応は、例えば、両者を攪拌下に接触させることによって行うことが好ましい。この際、α-オレフィン系重合体(A1)とα-オレフィン系重合体(A2)が溶融した状態、または、少なくとも一部のα-オレフィン系重合体(A1)と少なくとも一部のα-オレフィン系重合体(A2)が有機溶媒に溶解した状態で接触させることが好ましく、α-オレフィン系重合体(A1)とα-オレフィン系重合体(A2)が完全に有機溶媒に溶解した状態で行うことがより好ましい。
【0024】
上記の条件(1)~(3)の何れかを満たす成分(A)は、例えば、シングルサイト触媒を用いて重合されたα-オレフィン系重合体と、シングルサイト触媒以外の触媒を用いて重合されたα-オレフィン系重合体と、を混合することで製造することができる。α-オレフィン系重合体の製造(重合)に使用されるシングルサイト触媒の種類は特に限定されず、例えば、メタロセン触媒が挙げられる。なお、本明細書において、メタロセン触媒とは、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、必要に応じて、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、を含む組成物を意図する。
【0025】
シングルサイト触媒を用いるα-オレフィン系重合体の重合方法としては、シングルサイト触媒を使用すること以外は特に制限はなく、公知のスラリー重合法、バルク重合法、気相重合法、多段重合法等により重合することができる。
【0026】
メタロセン触媒等の、シングルサイト触媒を使用して重合されたα-オレフィン系重合体は、シングルサイト触媒ではない触媒(例えば、チーグラー・ナッタ触媒)を使用し重合されたα-オレフィン系重合体と比して、結晶性の低い(非晶性)α-オレフィン系重合体となる。すなわち、「シングルサイト触媒を使用して重合されたα-オレフィン系重合体」は、「非晶性α-オレフィン系重合体」であるといえ、また、シングルサイト触媒ではない触媒を用いて重合されたα-オレフィン系重合体は、比較的結晶性の高い、「結晶性のα-オレフィン系重合体」と言える。成分(A)は、このような結晶性のα-オレフィン系重合体と、非晶性のα-オレフィン系重合体とが、特異なミクロ相構造を形成してなる組成物であるとも言える。
【0027】
成分(A)のメルトフローレート(MFR)は、特に限定されないが、1.0~20g/10分であることが好ましく、2.0~15g/10分であることがより好ましく、5.0~10g/10分であることがさらに好ましい。成分(A)のMFRが上記範囲内にあることにより、加工性(例えば、フィルム状などに加工する際の加工性)に優れる樹脂組成物を提供できるという利点を有する。
【0028】
成分(A)の融点は、特に限定されないが、120~160℃であることが好ましく、130~150℃であることがより好ましく、135~145℃であることがさらに好ましい。成分(A)の融点が上記範囲内にあることにより、樹脂組成物が良好な耐熱性を示すという利点を有する。
【0029】
なお、本明細書において、成分(A)の融点およびMFRは、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0030】
本樹脂組成物における、成分(A)の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物の、接着性と耐熱性を両立させることができることから、成分(A)の全量100重量%中、50重量%~90重量%であることが好ましく、60重量%~85重量%であることが好ましく、70重量%~80重量%であることが好ましくい。
【0031】
(水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B))
本樹脂組成物は、成分(A)100重量に対して、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)3重量部~30重量部を含む。本明細書において、「水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(B)」を、「成分(B)」と称する場合がある。
【0032】
本明細書において、「水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー」とは、スチレン単位のみから構成されるスチレンブロックと共役ジエン系単位のみからなる共役ジエン系ブロックとを含むブロック共重合体(以下、共重合体Xとも称する。)を水素添加して得られる共重合体である。本明細書において「水素添加」を「水添」と称する場合がある。より具体的に、「水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー」とは、共重合体Xの共役ジエン系単位中の炭素-炭素二重結合の少なくとも一部が飽和されるように、共重合体Xを水素添加して得られる共重合体を意図する。
【0033】
共重合体Xに含まれる共役ジエン系単位としては、ブタジエン単位、イソプレン単位、1,3-ペンタジエン単位、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン単位、3-メチル-1,3-オクタジエン単位、または4-エチル-1,3-ヘキサジエン単位等が挙げられるが、特に限定されない。
【0034】
成分(B)の製造において、共重合体Xの共役ジエン系単位中の炭素-炭素二重結合は、少なくともその一部が飽和されていればよく、そのすべてが飽和されている必要はない。換言すれば、成分(B)は、成分(B)の製造に使用した共重合体Xが含んでいる共役ジエン系単位を含んでいてもよい。例えば、共重合体Xが共役ジエン系単位としてイソプレン単位を含む場合、当該共重合体Xを水添してなる成分(B)は、水素がイソプレン単位の炭素-炭素二重結合に付加重合されてなるエチレン単位およびプロピレン単位に加え、水素が付加されなかったイソプレン単位を含んでいてもよい。
【0035】
成分(B)において、製造に使用した共重合体Xの共役ジエン系単位全量のうち、炭素-炭素二重結合に水素が添加されている共役ジエン系単位の割合(以下、「水素添加率」と称する場合がある)は、50%以上であることが好ましく、70%~100%であることがより好ましく、80%~100%であることがさらに好ましい。成分(B)の水素添加率が上記の範囲である場合、成分(A)および成分(C)との相溶性が向上する傾向がある。成分(B)の水素添加率は、100%であってもよい。
【0036】
成分(B)の具体例としては、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレンブロック共重合体(SEPS)などが挙げられる。SEBSは、(a)スチレン単位のみから構成されるスチレンブロック、(b)ブタジエン単位のみから構成されるブタジエンブロックおよび(c)スチレン単位のみから構成されるスチレンブロック、がこの順で結合してなる共重合体(共重合体X)を水素添加して得られる共重合体である。より具体的に、SEBSは、(a)スチレン単位のみから構成されるスチレンブロック、(b)(b-1)1,2付加重合されたブタジエン単位を水添してなるブチレン単位と、(b-2)1,4付加重合されたブタジエン単位を水添してなるエチレン単位と、がランダムに結合しているブロック、および(c)前記スチレンブロックが、この順で結合してなる共重合体である。SEBSにおける、ブチレン単位とエチレン単位とがランダムに結合しているブロックは、ブタジエン単位を含んでいてもよい。SEPSは、(a)スチレン単位のみから構成されるスチレンブロック、(b)イソプレン単位のみから構成されるイソプレンブロックおよび(c)スチレン単位のみから構成されるスチレンブロック、がこの順で結合してなる共重合体(共重合体X)を水素添加して得られる共重合体である。より具体的に、SEPSは、(a)スチレン単位のみから構成されるスチレンブロック、(b)イソプレン単位を水添してなる、エチレン単位およびプロピレン単位が結合しているブロック、および(c)前記スチレンブロックが、この順で結合してなる共重合体である。これらの中でも、(i)各種粘着付与樹脂との併用により、低温加工での各種基材との接着性がより良好となり、かつ、(ii)耐熱性および耐候性が良好となるという利点があることから、本樹脂組成物は、成分(B)としてSEPSを含むことが好ましく、本樹脂組成物の含む成分(B)は、SEPSであることが特に好ましい。
【0037】
成分(B)のスチレン単位の含有量(以下、「スチレン含有量」と称する場合がある。)は、成分(B)100重量%中、5重量%~90重量%であることが好ましく、10重量%~85重量%であることが好ましく、15重量%~80重量%であることがより好ましく、25重量%~55重量%であることがより好ましい。当該構成によると、樹脂組成物の接着性と耐熱性が共に良好となるという利点を有する。
【0038】
成分(B)のメルトフローレート(MFR)は、特に限定されないが、1.0~20g/10分であることが好ましく、2.0~15g/10分であることがより好ましく、5.0~10g/10分であることがさらに好ましい。成分(B)のMFRが上記範囲内にあることにより、樹脂組成物の成形加工性が良好となるという利点を有する。
【0039】
なお、本明細書において、成分(B)のMFRは、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0040】
本樹脂組成物における、成分(B)の含有量は、成分(A)100重量部に対して、3~30重量部であり、4~25重量部が好ましく、5~20重量部がより好ましく、5~15重量部がさらに好ましい。成分(B)の含有量が、(i)3重量部以上であることにより、樹脂組成物の接着性を向上させるという利点があり、(ii)30重量部以下であることにより、樹脂組成物の耐熱性を低下させないという利点がある。
【0041】
(低密度ポリエチレン系樹脂(C))
本樹脂組成物は、成分(A)100重量に対して、低密度ポリエチレン系樹脂(C)3重量部~30重量部を含む。本明細書において、「低密度ポリエチレン系樹脂(C)」を、「成分(C)」と称する場合がある。
【0042】
本明細書において、「ポリエチレン系樹脂」とは、構成単位として、エチレンに由来すする構成単位(エチレン単位)を、全構成単位100モル%中、50モル%超有する(共)重合体を意図する。ポリエチレン系樹脂としては、(a)エチレン単位のみから構成されるポリエチレン単独重合体であってもよく、(b)エチレン単位と、エチレンと共重合可能なエチレン以外の単量体に由来する構成単位とから構成させるポリエチレン系共重合体であってもよい。
【0043】
本明細書において、「低密度ポリエチレン系樹脂」とは、JIS K 6760で規定される、密度が0.910g/cm3以上0.930g/cm3未満であるポリエチレン系樹脂を意図する。すなわち、本明細書における「低密度ポリエチレン系樹脂」とは、密度が0.910g/cm3以上0.930g/cm3未満である、ポリエチレン単独重合体およびポリエチレン系共重合体を意図する。本樹脂組成物が、このような密度が0.910g/cm3以上0.930g/cm3未満であるポリエチレン系樹脂(低密度ポリエチレン系樹脂)を含むことにより、優れた接着性と耐熱性とのバランスに優れる樹脂組成物となる。
【0044】
成分(C)がポリエチレン系共重合体である場合、「エチレンと共重合可能なエチレン以外の単量体」としては、(a)プロピレン、1-ブテンおよび1-ヘキセンなどのα-オレフィン、(b)酢酸ビニルなどのビニル系単量体、などが挙げられる。すなわち、低密度ポリエチレン系樹脂としては、(a)エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/プロピレン/1-ブテン共重合体、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/1-ヘキセン共重合体、エチレン/4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン/1-オクテン共重合体などのエチレン/エチレン以外のα-オレフィン共重合体、および(b)エチレン/酢酸ビニル共重合体などのエチレン/ビニル系単位共重合体、などの各種のポリエチレン系共重合体を使用することができる。また、低密度ポリエチレン系樹脂としては、スチレン改質ポリエチレン系樹脂または塩素化ポリエチレン等(その他のポリエチレン系樹脂と称する)を使用することもできる。
【0045】
本明細書において、エチレン単位とエチレン以外のα-オレフィン単位とを有する共重合体は、α-オレフィン以外の単量体に由来する構成単位を含んでいる場合であっても、エチレン/α-オレフィン共重合体と称する。換言すれば、エチレン/α-オレフィン共重合体は、α-オレフィン以外の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0046】
低密度ポリエチレンは、さらに、(a)高圧法により製造され、エチル基などの短鎖分岐に加えて長鎖分岐を有する低密度ポリエチレン(以下、分岐状低密度ポリエチレンとも称する。)、および(b)中・低圧化で遷移金属触媒を用いて製造され、分岐が短鎖である低密度ポリエチレン(以下、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPEまたはPE-LLD)とも称する。)に分類され得る。本発明の一実施形態に係る低密度ポリエチレン系樹脂は、分岐状低密度ポリエチレンであってもよく、直鎖状低密度ポリエチレンであってもよい。
【0047】
成分(C)としては、上述したポリエチレン単独重合体、ポリエチレン系共重合体およびその他のポリエチレン系樹脂から成る群から選択される1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
成分(C)の融点は特に限定されないが、樹脂組成物の耐熱性を向上するという観点から、100℃~120℃であってもよく、100~110℃であってもよい。
【0049】
成分(C)のMFRは、特に限定されないが、樹脂組成物の成形加工性を向上するという観点から、10g/10分~50g/10分が好ましく、20g/10分~40g/10分がより好ましく、25g/10分~35g/10分がさらに好ましい。
【0050】
なお、本明細書において、成分(C)の融点およびMFRは、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0051】
本樹脂組成物における、成分(C)の含有量は、成分(A)100重量部に対して、3~30重量部であり、5~25重量部であることが好ましく、7~25重量部であることがより好ましく、10~20重量部であることがさらに好ましく、10~15重量部であることがよりさらに好ましい。成分(C)の含有量が、(i)3重量部以上であることにより、樹脂組成物の接着性の低下を抑制できるという利点があり、(ii)30重量部以下であることにより、樹脂組成物の耐熱性の低下を抑制できるという利点がある。すなわち、成分(C)の含有量が上記範囲にあることにより、樹脂組成物の接着性と耐熱性との良好なバランスを実現できる。
【0052】
(粘着付与樹脂(D))
本樹脂組成物は、成分(A)100重量に対して、粘着付与樹脂(D)3重量部~30重量部を含む。本明細書において、「粘着付与樹脂(D)」を、「成分(D)」と称する場合がある。
【0053】
成分(D)としては、例えば、フェノール樹脂、変成フェノール樹脂、シクロペンタジエン-フェノール樹脂、キシレン樹脂、クロマン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等の芳香族変性テルペン樹脂、ロジンエステル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS樹脂)等が挙げられる。これらの中でも、樹脂組成物が、濡れ性、ハンドリング性、および、耐熱性に優れるという利点があることから、芳香族変性テルペン樹脂が好ましい。
【0054】
成分(D)の軟化点は、特に限定されないが、樹脂組成物の接着性、耐熱性、および、ハンドリング性を向上する観点から、70℃~150℃であることが好ましく、90℃~140℃であることがより好ましく、110℃~130℃であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、粘着付与樹脂の軟化点とは、ASTM法E28で測定される、環球式軟化点を意図する。
【0055】
本樹脂組成物における、成分(D)の含有量は、成分(A)100重量部に対して、3~30重量部であり、5~25重量部であることが好ましく、7~25重量部であることがより好ましく、10~20重量部であることがさらに好ましく、10~15重量部であることがよりさらに好ましい。成分(D)の含有量が、(i)3重量部以上であることにより、樹脂組成物の接着性が向上するという利点があり、(ii)30重量部以下であることにより、樹脂組成物の耐熱性の低下を抑制できるという利点がある。
【0056】
(その他の樹脂等)
本樹脂組成物は、本発明の一実施形態に係る効果を損なわない範囲で、樹脂成分として、成分(A)~(D)以外の樹脂(その他の樹脂等、と称する場合がある。)をさらに含んでいてもよい。前記その他の樹脂等としては、例えば、ポリスチレン、ポリブテン、アイオノマー等の、α-オレフィン以外の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0057】
(添加剤)
本樹脂組成物は、成分(A)~(D)の他に、さらに任意で添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、着色剤、吸水性物質、発泡核剤、帯電防止剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤、導電剤、滑剤等が挙げられる。これらの添加剤の添加量(含有量)は特に限定されず、本発明の一実施形態に係る効果を阻害しない範囲において、当業者が適宜決定することができる。
【0058】
本樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、所定量の成分(A)~(D)と、任意で、添加剤等と、を溶融混練することにより、本樹脂組成物を製造することができる。
【0059】
また、本樹脂組成物は、例えば、プレス処理を行うことにより、フィルム状に加工した状態で使用することもできる。このように本樹脂組成物をフィルム状に加工することにより、取り扱い性と、ホットメルト接着剤としての物性(特に、優れた接着性)とを両立した接着フィルムを提供することができる。すなわち、本発明の一実施形態において、本樹脂組成物からなる接着フィルムを提供する。
【0060】
〔2.積層フィルム〕
本発明の一実施形態において、本樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、熱可塑性樹脂からなる離型性フィルム層と、を有する積層フィルムを提供する。本明細書において、「本発明の一実施形態に係る積層フィルム」を、「本積層フィルム」と称する場合がある。
【0061】
本積層フィルムは、本樹脂組成物を含む樹脂組成物層を有するために、基材(例えば、ポリオレフィン系樹脂成形体等の基材樹脂)に対して、優れた接着性を発揮する。そのために、表皮材(ラミネートシート)、特に、自動車等の車両における内装品(例えば、インストルメントパネル)のような、複雑な形状を有し、かつ、高い美観を要求される部材用の表皮材として好適に利用できる。
【0062】
本積層フィルムにおける樹脂組成物層を実質的に構成する本樹脂組成物については、前記〔1.樹脂組成物〕項の記載を適宜援用する、
本積層フィルムの離型性フィルム層を実質的に構成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、ポリスチレン(PS)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(AS)、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体(耐熱PS)、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体(HIPS)、N-フェニルマレイミド-スチレン-無水マレイン酸の三次元共重合体、などのスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などのビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、MXDナイロンなどのポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアリレート、ポリカーボネートなどのポリエステル系樹脂、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂(変性PPE)、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルケトン樹脂などのエンジニアリングプラスチックなどが挙げられる。これらは単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
【0063】
これらの熱可塑性樹脂の中でも、原料調達が容易であり、及かつ、適度な離型性を有するという利点があることから、本積層フィルムの離型性フィルム層を実質的に構成する熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)であることが特に好ましい。
【0064】
本積層フィルムは、本樹脂組成物および前記熱可塑性樹脂に加え、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、染料および顔料等の着色剤、安定剤等の添加剤、フッ素樹脂、シリコンゴム等の耐衝撃性付与剤、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク等の無機充填剤、等の添加剤を含んでもよい。これらの添加剤の添加量(含有量)は特に限定されず、本発明の一実施形態に係る効果を阻害しない範囲において、当業者が適宜決定することができる。
【0065】
本積層フィルムの製造方法は特に限定されないが、例えば、本樹脂組成物からなる接着フィルムと、熱可塑性樹脂からなる離型性フィルムと、を積層し、ラミネーターを用いてラミネートすることで、本積層フィルムを製造することができる。すなわち、本積層フィルムは、本樹脂組成物からなる接着フィルムと、熱可塑性樹脂からなる離型性フィルムと、を積層してなる積層フィルムであるといえ、本樹脂組成物からなる接着フィルムと、熱可塑性樹脂からなる離型性フィルムと、を原料とする積層フィルムであるともいえる。
【0066】
〔3.積層体〕
本発明の一実施形態において、第1の基材と、本樹脂組成物と、第2の基材と、がこの順で積層してなる、積層体を提供する。本明細書において、「本発明の一実施形態に係る積層体」を、「本積層体」と称する場合がある。本積層体は、第1の基材と、本樹脂組成物と、第2の基材と、が一体化してなる積層体であるともいえる。
【0067】
本積層体においては、本樹脂組成物により、第1の基材と、第2の基材とが、接着される。そのため、第1の基材と、第2の基材との接着性に優れ、かつ、積層体表面に、膨れや部分的な剥がれが発生し難い積層体を提供することができる。本積層体は、第1の基材と、第2の基材と、を本樹脂組成物からなる接着剤(接着フィルム)を介して接着してなる積層体であるともいえる。
【0068】
本積層体を構成する基材(第1の基材および第2の基材)としては、特に限定されないが、紙、木綿、麻、布、木板などのセルロース系高分子材料;ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBS樹脂)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-エチレン/プロピレン-スチレン共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン、ポリウレタンなどのポリアミド系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の合成高分子材料;等が挙げられる。本積層体を構成する基材としては、これらの1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて(例えば、複合体として)使用してもよい。また、第1の基材と、第2の基材とは、それぞれ同じ種類の材料であってもよく、異なる種類の材料であってもよい。
【0069】
上記の基材の中でも、本積層体における第2の基材としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等の硬質ポリオレフィン系樹脂が好ましい。また、第2の基材としては、所望の形状に成形された、成形体(例えば、ポリオレフィン系樹脂成形体)を使用することが特に好ましい。
【0070】
本積層体の好ましい一例としては、自動車用インストルメントパネルが挙げられる。自動車用インストルメントパネルには、各種メーター類、エアコン、カーナビ等を収納する必要があるため、大型かつ複雑な形状を有する傾向があり、また、自動車に乗り込んだ時に最初に目にする箇所であるため、外観にも優れることが要求される。本積層体は、上記のように本樹脂組成物により、第1の基材と第2の基材とが接着されるため、大型かつ複雑な形状を有する自動車用インストルメントパネル用の第2の基材に対しても、接着性よく、第1の基材(表皮材)を接着することができる。そのため、本積層体は、自動車用インストルメントパネルとして好適に利用できる。
【0071】
本積層体の製造方法は特に限定されないが、例えば、第1の基材と、第2の基材との間に、本樹脂組成物(本樹脂組成物からなる接着フィルム)を当接して、両者を接合した後に、成形することによって、両者を一体化させることで、本積層体を製造することができる。
【0072】
本積層体の製造における、成形の方法としては、熱ラミネート、真空成形、真空圧空成形、熱プレス、熱ロール、ホットスタンプ成形など、種々の成形方法を適用することができる。中でも、真空成形、真空圧空成形、ホットスタンプ成形は、第1の基材と、アール(丸み)を有する第2の基材と、の接着に、好適に適用できる点で好ましい。
【0073】
また、上記方法において、第1の基材と、第2の基材との間に、本樹脂組成物(本樹脂組成物からなる接着フィルム)を接合する際には、まず、第1の基材に、本積層フィルムを貼り合わせた後(接着した後)、貼り合わせた本積層フィルムの離型性フィルム層(離型性フィルム)のみを剥がす。そして、離型性フィルム層を剥がすことで露出する、本樹脂組成物層(第1の基材との接着面の反対面)に、第2の基材を貼り合わせることで、第1の基材と、第2の基材との間に、本樹脂組成物を接合することもできる。
【0074】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0075】
以下、実施例および比較例をあげて、本発明の一実施形態をより詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0076】
〔材料〕
以下に、実施例および比較例で使用した材料について説明する。
【0077】
(成分(A))
三井化学製「タフマーPN2070」、プロピレン・エチレン・ブテン共重合体、融点140℃、MFR:7g/10分、プロピレン単位含有量:70mol%、エチレン単位含有量:15mol%、ブテン単位含有量:15mol%
(成分(B))
スチレン/エチレンプロピレン/スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン含量13%、MFR:7g/10分
(成分(C))
エチレン単独重合体、融点:105℃、MFR:32g/10分、密度:0.914g/cm3
(成分(D))
芳香族変性テルペン樹脂、環球式軟化点125℃。
【0078】
〔測定方法〕
各種項目の測定および評価は以下の様に実施した。
【0079】
<融点>
成分(A)および(C)の融点は、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)製、DSC6200型)を用いたDSC法により測定して求められる値とした。具体的な操作手順は以下(1)~(4)の通りであった:(1)測定対象の樹脂(成分(A)または(C))5mg~6mgの温度を10.0℃/分の昇温速度で40.0℃から220.0℃まで昇温することにより、当該樹脂を融解させた;(2)その後、融解された樹脂の温度を10.0℃/分の降温速度で220.0℃から40.0℃まで降温することにより当該樹脂を結晶化させた;(3)その後、さらに、結晶化された樹脂の温度を10.0℃/分の昇温速度で40.0℃から220.0℃まで昇温した;(4)2回目の昇温時(すなわち(3)のとき)に得られる当該樹脂のDSC曲線のピーク(融解ピーク)の温度を当該樹脂の融点とした。なお、上述の方法により、2回目の昇温時に得られる、ポリプロピレン系樹脂のDSC曲線において、ピーク(融解ピーク)が複数存在する場合、融解熱量が最大のピーク(融解ピーク)の温度を、当該樹脂の融点とした。
【0080】
<MFR>
成分(A)~(C)のMFRは、JIS K7210:1999に記載のMFR測定器を用い、以下の条件下で測定して得られた値とした:オリフィスの直径が2.0959±0.005mmφ、オリフィスの長さが8.000±0.025mm、荷重が2.16kgf、かつ温度が成分(A)および成分(B)の場合は、230℃(230±0.2℃)、成分(C)の場合は、190℃(190±0.2℃)。
【0081】
<引張せん断強度>
実施例および比較例で作製した樹脂組成物について、以下の方法により引張せん断強度を測定および評価した:(1)2.5cm×10cmのポリプロピレン製の基材を2枚用意し、貼り合わせ部分が2.5cm×1.25cmとなるよう樹脂組成物を該2枚の基材間に挟み込み、160℃、0.05MPaの条件でプレスし、試験片(積層体)を作製した;(2);作製した試験片について、引張試験機(島津製作所社製、AG-10TB)を用いて、引張速度50mm/分、チャック間距離80mmの条件で、せん断応力を加え、樹脂組成物と、基板との、接合部が破断した際のせん断応力の値を、試験力(N)とした。さらに、破断部を目視で確認し、以下の基準に基づき、樹脂組成物の引張せん断強度を評価した。
【0082】
〇(良好):基板側からの接合部破壊;
×(不良):樹脂組成物側からの接合部破壊。
【0083】
〔実施例1〕
(樹脂組成物の作製)
成分(A)であるタフマーPN2070を100重量部と、成分(B)であるSepton2063を12.5重量部と、成分(C)であるDNDV-0405Rを12.5重量部と、成分(D)であるTO125を12.5重量部と、と、を混練機(株式会社東洋精機製作所製、ラボプラストミル、型式:20C200(ミキサー=R60))を用いて、混練温度を170℃、スクリュー回転数を50rpmの条件で、5分間溶融混練し、樹脂組成物を得た。
【0084】
(接着フィルムの作製)
得られた樹脂組成物を、プレス機(神藤金属工業製、70t圧縮成形機、型式:NSF.70(型締力=70t))を用いて、プレス温度を190℃の条件で、微加圧(約0.05MPa)で7分間および10MPaで2分間プレスし、さらに、約25℃の条件で、5MPaで5分間プレス(冷却プレス)することで、樹脂組成物からなる接着フィルムを得た。得られた接着フィルムの厚みは100~150μmであった。
【0085】
〔比較例1〕
ENGAGE8200(Dow社製)を20重量部と、ウルトラゼックス1520L(株式会社三井石油化学工業製、線状低密度ポリエチレン)を40重量部と、Septon2002(株式会社クラレ製、SEPS)を20重量部と、アルコンM-115(株式会社荒川化学製、脂環族炭化水素樹脂)を20重量部と、エルカ酸アミドを0.2重量部と、ポリエチレングリコールを0.1重量部と、シリカを1重量部と、を混練温度150℃で溶融混練したこと以外は、実施例1と同様に、樹脂組成物および接着フィルムを得、引張せん断強度を測定、評価した。結果を表1に示す。
【0086】
【0087】
〔まとめ〕
表1から明らかなように、実施例1の樹脂組成物を含む積層体は、試験力が高く、また、基材樹脂側から材料破壊が発生しており、引張せん断強度に優れることが分かる。すなわち、本樹脂組成物は、接着性に優れることが分かる。
【0088】
一方で、従来の樹脂組成物を再現した比較例1の結果より、従来の樹脂組成物では、試験力が低く、また、樹脂組成物側から材料破壊が発生しており、引張せん断強度が不良となること、すなわち、接着性が不良であることが分かる。
本発明の一実施形態によれば、接着性に優れる樹脂組成物を提供することができる。このような接着性に優れる樹脂組成物は、接着剤、特に、自動車用インストルメントパネル用の接着剤等の用途に、好適に利用することができる。