(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013957
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】トンネル作業台車のアーチフレーム
(51)【国際特許分類】
E21D 11/40 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
E21D11/40 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116438
(22)【出願日】2022-07-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】596007979
【氏名又は名称】大栄工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅彦
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA05
2D155BB02
2D155FB02
2D155GB11
(57)【要約】
【課題】トンネル断面に応じた様々なアーチ形状を容易に設計可能なトンネル作業台車のアーチフレームを提供する。
【解決手段】本発明のトンネル作業台車のアーチフレーム1は、複数の主材10を、複数の連結材20及び複数の締結材30でアーチ状に連結してなり、主材10は、長尺状の主材本体11と、主材本体11の両端に設けた板状の連結端12と、連結端12の両面を貫通する軸孔13と、連結端12の両面を貫通する連結孔14と、を有し、連結材20は、板状の連結材本体21と、連結材本体21の両面を貫通する2つの連結孔22と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の主材を、複数の連結材及び複数の締結材でアーチ状に連結してなる、トンネル作業台車のアーチフレームであって、
前記主材は、長尺状の主材本体と、前記主材本体の両端に設けた板状の連結端と、前記連結端の両面を貫通する軸孔と、前記連結端の両面を貫通する連結孔と、を有し、
前記連結材は、板状の連結材本体と、前記連結材本体の両面を貫通する2つの連結孔と、を有し、
第1の前記主材の連結端の第1面に、第2の前記主材の連結端の第1面を添接し、
前記第1の主材の連結端の第2面に、第1の前記連結材を添接し、
前記第2の主材の連結端の第2面に、第2の前記連結材を添接し、
前記第1の主材の軸孔と、前記第2の主材の軸孔と、に前記締結材を連通して締結し、
前記第1の連結材の連結孔と、前記第1の主材の連結孔と、前記第2の連結材の連結孔と、に前記締結材を連通して締結し、
前記第1の連結材の連結孔と、前記第2の主材の連結孔と、前記第2の連結材の連結孔と、に前記締結材を連通して締結したことを特徴とする、
トンネル作業台車のアーチフレーム。
【請求項2】
前記連結端の第1面上に突起する支持台を備え、前記支持台の高さが前記連結端の厚みと実質的に同一であることを特徴とする、請求項1に記載のトンネル作業台車のアーチフレーム。
【請求項3】
前記連結孔が前記連結端と前記支持台を連通することを特徴とする、請求項2に記載のトンネル作業台車のアーチフレーム。
【請求項4】
前記主材が、前記連結端の両面を貫通する補助孔を備え、前記連結材が、前記連結材本体の両面を貫通する補助孔を備え、前記第1の連結材の補助孔と、前記第1の主材の補助孔と、前記第2の主材の補助孔と、前記第2の連結材の補助孔と、に前記締結材を連通して締結したことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトンネル作業台車のアーチフレーム。
【請求項5】
前記主材の補助孔が、円弧状の長孔であることを特徴とする、請求項4に記載のトンネル作業台車のアーチフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル作業台車のアーチフレームに関し、特にトンネル断面に応じた様々なアーチ形状を容易に設計可能なトンネル作業台車のアーチフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工事では、吹付コンクリート面に防水シートを敷設した後、トンネル内空に移動式のトンネル覆工用型枠を配置し、防水シート面と型枠体の外面の間に画設した打設空間内にコンクリートを打設することで、覆工コンクリートを成型する。
特許文献1には、打設後のコンクリートを養生するためのコンクリート養生台車が開示されている。
コンクリート養生台車は、複数のアーチ状のフレームをトンネル軸方向に連結してなる。このアーチフレームは、複数の形鋼をトンネルの断面形状に合わせて地組みし、これらを互いに溶接して製造する。
特許文献1のコンクリート養生台車によれば、アーチフレームの外周に養生シートを設置し、打設直後のコンクリートの表面に一定の間隔を保持して養生シートを位置させ、その間隔に温風や加熱した水蒸気を供給することで、コンクリートを養生して乾燥収縮によるひび割れを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリート養生台車は、養生シートと覆工コンクリートとの間に均一の間隔を確保するため、フレームのアーチ形状をトンネルの断面形状に対応させる必要がある。しかし、トンネルの断面形状はトンネルごとに異なるため、フレームを複数の現場に使いまわすことができない。
従来技術では、アーチフレームが形鋼を溶接してなるため、使用後のコンクリート養生台車を新たな現場に使用する場合、コンクリート養生台車を工場に搬入し、架台を複数のアーチフレームに解体した後、アーチフレームを溶断して分解し、新たなトンネルの断面形状に合わせて形鋼を組み直し、再度溶接して組み立てる必要がある。このため、納期が長期に及ぶ上、製造コストが嵩む。
また、工場から現場へ組み立てた状態で輸送する必要があるため、大型の輸送手段が必要となり、輸送コストが嵩む。
以上の問題はコンクリート養生台車に限らず、バルーン式の防水シート展張台車など、トンネル断面に対応したアーチフレームを有するトンネル作業台車全般に共通する。
【0005】
本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決するための、トンネル作業台車のアーチフレームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のトンネル作業台車のアーチフレームは、複数の主材を、複数の連結材及び複数の締結材でアーチ状に連結してなり、主材は、長尺状の主材本体と、主材本体の両端に設けた板状の連結端と、連結端の両面を貫通する軸孔と、連結端の両面を貫通する連結孔と、を有し、連結材は、板状の連結材本体と、連結材本体の両面を貫通する2つの連結孔と、を有し、第1の主材の連結端の第1面に、第2の主材の連結端の第1面を添接し、第1の主材の連結端の第2面に、第1の連結材を添接し、第2の主材の連結端の第2面に、第2の連結材を添接し、第1の主材の軸孔と、第2の主材の軸孔と、に締結材を連通して締結し、第1の連結材の連結孔と、第1の主材の連結孔と、第2の連結材の連結孔と、に締結材を連通して締結し、第1の連結材の連結孔と、第2の主材の連結孔と、第2の連結材の連結孔と、に締結材を連通して締結したことを特徴とする。
【0007】
本発明のトンネル作業台車のアーチフレームは、連結端の第1面上に突起する支持台を備え、支持台の高さが連結端の厚みと実質的に同一であってもよい。
【0008】
本発明のトンネル作業台車のアーチフレームは、連結孔が連結端と支持台を連通していてもよい。
【0009】
本発明のトンネル作業台車のアーチフレームは、主材が、連結端の両面を貫通する補助孔を備え、連結材が、連結材本体の両面を貫通する補助孔を備え、第1の連結材の補助孔と、第1の主材の補助孔と、第2の主材の補助孔と、第2の連結材の補助孔と、に締結材を連通して締結していてもよい。
【0010】
本発明のトンネル作業台車のアーチフレームは、主材の補助孔が、円弧状の長孔であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のトンネル作業台車のアーチフレームは、以下の効果の内少なくとも1つを備える。
<1>連結材に設ける連結孔の位置を設定するだけで、様々なトンネル断面に応じたアーチ形状を構成できる。このため、設計が容易で、製造コストが安い。
<2>安価な板材である連結材の連結孔の位置を変更するだけで、比較的高価な主材に溶接や穿孔などの加工を加えることなく、異なるアーチ形状を構成できる。このため、主材を繰り返し利用することができ、経済性が高い。
<3>分解した状態で輸送し、現場で組み立てることができる。これによって輸送コストを大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るトンネル作業台車のアーチフレームの説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明のトンネル作業台車のアーチフレームについて詳細に説明する。
【実施例0014】
[アーチフレーム]
<1>全体の構成(
図1)
本発明のトンネル作業台車のアーチフレーム1(以下単に「アーチフレーム1」)は、複数の主材10を、複数の連結材20及び複数の締結材30でアーチ状に連結してなる。
本発明のアーチフレーム1は、主材10同士の接続角を、連結材20に設ける連結孔22の位置によって調整することで、単一規格の主材10を利用して、トンネルの断面形状に対応した任意のアーチ形状を構成することができる。
【0015】
<1.1>トンネル作業台車(
図2)
トンネル作業台車Aは、少なくとも複数のアーチフレーム1を備える。
本例ではトンネル作業台車Aとして、前後2つのアーチフレーム1を複数の支持フレームA1で鉛直に支持し、これを複数の連結フレームA2でトンネル軸方向に連結してなるコンクリート養生台車を採用する。
アーチフレーム1の外周には、養生シートA3を展張する。
連結フレームA2の下部には、移動用の車輪A4を付設する。
なお、トンネル作業台車Aはコンクリート養生台車に限らず、例えばバルーン式の防水シート展張台車など、アーチフレーム1を備える台車であれば、他の様々な用途に適用することができる。
【0016】
<2>主材(
図3)
主材10は、アーチフレーム1のアーチ形状を構成する汎用部材である。
主材10は、長尺状の主材本体11と、主材本体11の両端に設けた板状の連結端12と、連結端12の両面を貫通する軸孔13と、連結端の両面を貫通する連結孔14と、を少なくとも備える。本例では更に連結端12の両面を貫通する補助孔15と、連結端12上に突起する支持台16と、を備える。
本例では主材10として、形鋼からなる主材本体11の両端に、鋼板からなる連結端12を一体に設けた部材を採用する。ただしこれに限らず、例えば主材本体11は鋼管からなってもよい。
連結端12は、第1面12aと、第2面12bと、を有する。
本例では2つの連結端12の第1面12a上に、それぞれ支持台16を設ける。
【0017】
<2.1>軸孔
軸孔13は、2本の主材10を回動可能に連結するための孔である。
軸孔13は、連結端12の先端付近において、アーチフレーム1の外周側に設ける。
【0018】
<2.2>連結孔
連結孔14は、主材10と連結材20を固定するための孔である。
連結孔14は、連結端12の基端付近において、アーチフレーム1の内周側に設ける。
本例では、連結孔14を支持台16上に設ける。すなわち、連結孔14が支持台16と連結端12を連通する。
【0019】
<2.3>補助孔
補助孔15は、主材10と連結材20の固定を補助するための孔である。
補助孔15は、連結端12の先端付近において、アーチフレーム1の内周側に設ける。
本例では、補助孔15が、軸孔13方向から連結孔14方向に延在する円弧状の長孔である。
補助孔15が円弧状の長孔であることによって、2本の主材10の複数の接続角において、締結材30を連通することができる。
【0020】
<2.4>支持台
支持台16は、連結端12と連結材20の隙間を塞ぐ台である。
支持台16は、連結端12の第1面12aに設ける。
支持台16の高さは、連結端12の厚みと実質的に同一である。
連結端12に支持台16を設けることによって、連結端12の第1面12aと連結材20の間に隙間がなくなり、主材10と連結材20を、確実に固定することが可能となる。
本例では、支持台16上に連結孔14を設けるが、支持台16の位置はこれに限らず、例えば連結孔14の近傍に設けてもよい。
【0021】
<3>連結材
連結材20は、主材10の連結角度を規定する部材である。
連結材20は、板状の連結材本体21と、連結材本体21の両面を貫通する2つの連結孔22と、を備える。本例では更に連結材本体21の両面を貫通する補助孔23を備える。
本例では連結材20として、矩形の鋼板を採用する。ただしこれに限らず、例えば連結材本体21は三角形その他の多角形状や円形状、楕円形状等からなってもよい。
【0022】
<4>締結材
締結材30は、主材10と連結材20を締結する部材である。
本例では締結材30として、ボルト31と、ナット32と、座金33と、を備える高力ボルトを採用する。
【0023】
<5>アーチフレームの組立方法(
図4)
アーチフレーム1は、例えば以下のような手順で組み立てることができる。
ここでは、第1の主材10A、第2の主材10B、第1の連結材20A、及び第2の連結材20Bの組み合わせについて説明する。
【0024】
<5.1>主材同士の連結
第1の主材10Aの連結端12の第1面12aに、第2の主材10Bの連結端12の第1面12aを添接する(
図5A)。詳細には、2つの主材10の第1面12a同士が接面しつつ、第1の主材10Aの支持台16が第2の主材10Bの連結端12より先端側に位置し、第2の主材10Bの支持台16が第1の主材10Aの連結端12より先端側に位置するように配置する。
第1の主材10Aの軸孔13と、第2の主材10Bの軸孔13と、にボルト31を連通し、ナット32と座金33とで締結する(
図5B)。
第1の主材10Aと、第2の主材10Bと、を設計上の所定の接続角に調整する(
図5C)。
【0025】
<5.2>主材と連結材の連結
第1の主材10Aの連結端12と、第2の主材10Bの連結端12と、を2枚の連結材20で両側から挟む。すなわち、第1の主材10Aの連結端12の第2面12bに、第1の連結材20Aを添接し、第2の主材10Bの連結端12の第2面12bに、第2の連結材20Bを添接する。
第1の連結材20Aの第1の連結孔22aと、第1の主材10Aの連結孔14と、第2の連結材20Bの第1の連結孔22aと、にボルト31を連通し、ナット32と座金33とで締結する。
第1の連結材20Aの第2の連結孔22bと、第2の主材10Bの連結孔14と、第2の連結材20Bの第2の連結孔22bと、にボルト31を連通し、ナット32と座金33とで締結する(
図5D)。
第1の連結材20Aの補助孔23と、第1の主材10Aの補助孔15と、第2の主材10Bの補助孔15と、第2の連結材20Bの補助孔23と、にボルト31を連通し、ナット32と座金33とで締結する(
図5E)。
【0026】
<5.3>工程の繰り返し
以上<5.1><5.2>の工程を繰り返し、所定の接続角で所定数の主材10を連結することで、アーチフレーム1を組み立てる。