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特開2024-139578シールド掘進機及びシールド掘進機における空気抜き方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139578
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】シールド掘進機及びシールド掘進機における空気抜き方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/12 20060101AFI20241002BHJP
   E21D 9/093 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
E21D9/12 Z
E21D9/093 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050584
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】串田 慎二
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC06
2D054AD11
2D054BA03
2D054BA14
2D054CA03
2D054DA03
2D054FA03
2D054GA10
2D054GA24
2D054GA25
2D054GA52
2D054GA63
2D054GA66
2D054GA94
(57)【要約】
【課題】チャンバ内に溜まった空気を排出できるシールド掘進機を提供する。
【解決手段】シールド掘進機1は、回転式のカッタ3と、カッタ3の後方に設けられるスキンプレート2と、スキンプレート2内に設けられ、スキンプレート2内を前後方向に仕切る隔壁4と、カッタ2と隔壁4との間に形成され、土砂が滞留するチャンバ2aと、チャンバ2a内の土砂の状態を検出する検出器と、隔壁4に開口して設けられ、チャンバ2a内に連通する連通管21と、連通管21に設けられ、チャンバ2a内に溜まった空気を排出するためのバルブ22と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転式のカッタと、
前記カッタの後方に設けられるスキンプレートと、
前記スキンプレート内に設けられ、前記スキンプレート内を前後方向に仕切る隔壁と、
前記カッタと前記隔壁との間に形成され、土砂が滞留するチャンバと、
前記チャンバ内の土砂の状態を検出する検出器と、
前記隔壁に開口して設けられ、前記チャンバ内に連通する連通管と、
前記連通管に設けられ、前記チャンバ内に溜まった空気を排出するための排気制御装置と、を備えたシールド掘進機。
【請求項2】
前記連通管は、
前記隔壁を貫通し、一端が前記チャンバ内に開口する第1連通管と、
前記第1連通管の周壁に開口するように接続され、前記排気制御装置が設けられる第2連通管と、を有し、
前記シールド掘進機は、
前記第1連通管の一端側の開口を塞いで前記チャンバ内の空間と前記第2連通管との連通を遮断する遮断位置と、前記チャンバ内の空間と前記第2連通管との連通を許容する連通位置と、の間で、前記第1連通管の内壁に沿って摺動する摺動部材を駆動する駆動装置をさらに備えた請求項1に記載のシールド掘進機。
【請求項3】
前記連通管には、前記排気制御装置内を洗浄するための洗浄水を注入可能な注入口が設けられる請求項1に記載のシールド掘進機。
【請求項4】
前記排気制御装置の下流側に設けられ、前記排気制御装置を通過した空気ないし土砂を貯留するタンクをさらに備えた請求項1に記載のシールド掘進機。
【請求項5】
前記排気制御装置の動作を制御するコントローラをさらに備え、
前記コントローラは、前記検出器によって検出された前記チャンバ内の土砂の状態に応じて、前記排気制御装置を作動させる請求項1に記載のシールド掘進機。
【請求項6】
回転式のカッタと、
前記カッタの後方に設けられるスキンプレートと、
前記スキンプレート内に設けられ、前記スキンプレート内を前後方向に仕切る隔壁と、
前記カッタと前記隔壁との間に形成され、土砂が滞留するチャンバと、
前記チャンバ内の土砂の状態を検出する検出器と、
前記隔壁に開口して設けられ、前記チャンバ内に連通する連通管と、
前記連通管に設けられ、前記チャンバ内に溜まった空気を排出するための排気制御装置と、を備えたシールド掘進機における空気抜き方法であって、
前記チャンバ内の土砂の状態を検出し、
前記チャンバ内に空気が溜まっている場合には、前記排気制御装置を作動させて前記チャンバ内に溜まった空気を排出する空気抜き方法。
【請求項7】
前記チャンバ内に溜まった空気を排出する際に、前記チャンバ内の圧力を所定値以上に維持する請求項6に記載の空気抜き方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機及びシールド掘進機における空気抜き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、盤を切削するカッタと、カッタの後方に設けられ、掘削土砂が導かれるチャンバとを備えたシールド掘進機が開示されている。また、特許文献1には、カッタヘッドから気泡を添加し、切羽で地盤を掘削して生じた土砂と混練撹拌することにより、泥土の塑性流動化を促進する気泡シールド工法により掘削することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-13821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなシールド掘進機では、掘削した土砂とともにチャンバ内に空気が取り込まれ、チャンバ内に溜まってしまうことがある。このようなチャンバ内に溜まった空気が、シールド掘進機の隙間から地盤に漏出すると、空気が地盤の土砂と入れ代わりながら地面に向けて上昇するなどして、地盤が脆弱化するおそれがある。
【0005】
本発明は、チャンバ内に溜まった空気を排出できるシールド掘進機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回転式のカッタと、カッタの後方に設けられるスキンプレートと、スキンプレート内に設けられ、スキンプレート内を前後方向に仕切る隔壁と、カッタと隔壁との間に形成され、土砂が滞留するチャンバと、チャンバ内の土砂の状態を検出する検出器と、隔壁に開口して設けられ、チャンバ内に連通する連通管と、連通管に設けられ、前記チャンバ内に溜まった空気を排出するための排気制御装置と、を備えたシールド掘進機である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シールド掘進機において、チャンバ内に溜まった空気を排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るシールド掘進機の概略構成を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るシールド掘進機のカッタヘッドの正面図である。
図3】本発明の実施形態に係る空気抜き機構の構成を示す概略図である。
図4】チャンバ内の土砂の状態を説明するための図である。
図5】変形例に係る空気抜き機構の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1を参照して、本発明の実施形態に係るシールド掘進機1について説明する。シールド掘進機1は、地中(地山)を掘進して掘削坑を形成し、掘削坑の内壁を覆うように後述のセグメントリング9を組み立てることによって、シールドトンネルT(トンネル)を構築するものである。以下では、シールド掘進機1が進む方向である切羽側を「前方」とし、その反対の方向である坑口側を「後方」として説明する。
【0011】
図1は、シールド掘進機1の概略構成を示す断面図であり、図2は、図1の前方からシールド掘進機1を見た図であり、カッタヘッド3の正面図である。
【0012】
本実施形態のシールド掘進機1は、気泡シールド工法に用いられる。図1に示すように、シールド掘進機1は、地山の内壁W1を支持可能な筒状のスキンプレート2と、スキンプレート2に装着された回転式のカッタヘッド3(カッタ)と、スキンプレート2内に設けられ、スキンプレート2内を前後方向に仕切る隔壁4と、を備える。スキンプレート2の内部では、シールド掘進機1の前進に伴ってセグメントリング9が順次構築される。なお、スキンプレート2の断面形状は円形に限定されず、楕円状や矩形であってもよい。
【0013】
スキンプレート2は、カッタヘッド3の後方に設けられる。スキンプレート2の隔壁4より後方の内壁には、ジャッキ5が固定される。ジャッキ5は、セグメントリング9から反力を得てスキンプレート2を前方に推進し、カッタヘッド3を地山に押付ける。スキンプレート2が推進されてセグメントリング9がスキンプレート2から出ると、セグメントリング9の外周面と地山の内壁W1との間に裏込め材(図示省略)が充填される。
【0014】
カッタヘッド3は、スキンプレート2の外径と略等しい大きさの外径を有する円盤状の構造体である。図2に示すように、カッタヘッド3は、回転軸C1を中心として放射状に延びる中空状のスポーク部31と、スポーク部31の先端側が接続される円環状のリング部32と、隣り合うスポーク部31間に形成される開口部33と、スポーク部31の掘削面(切羽)と対向する面に周方向及び径方向に所定の間隔をあけて配置された複数のカッタビット34,35と、を有する。
【0015】
図1に示すように、カッタヘッド3は、カッタシャフト6a及び減速機構6bを介してモータ6に連結され、モータ6の駆動によりスキンプレート2の前方で回転駆動する。カッタヘッド3が地山に押付けられた状態で回転すると、地山がカッタビット34,35により掘削される。
【0016】
カッタヘッド3と隔壁4との間には、チャンバ2aが形成される。カッタヘッド3の掘削によって生じた土砂は、カッタヘッド3に設けられた開口部33(図2参照)を通じてチャンバ2a内へと導かれる。
【0017】
隔壁4には、チャンバ2a内の土砂の状態を検出する検出器が取り付けられる。本実施形態では、検出器は、チャンバ2a内の土砂の比抵抗を検出する比抵抗計40である(図1参照)。チャンバ2a内の土砂の状態を検出する検出器は、ロードセルを用いた圧力(土圧)を検出する土圧計の他、隔壁4等の部材の歪を検出する歪計等であってもよい。
【0018】
カッタヘッド3の各スポーク部31には、チャンバ2a内に向かって突出した撹拌棒(図示せず)が設けられている。攪拌棒は、カッタヘッド3の回転に伴って、チャンバ2a内に滞留した土砂を撹拌する。
【0019】
図1に示すように、隔壁4には、チャンバ2a内の土砂を隔壁4の後方へ排出するためのスクリュコンベア7が設けられる。また、隔壁4には、チャンバ2a内に滞留した土砂を撹拌するために、チャンバ2a内に向かって突出する複数の固定翼(図示せず)が設けられる。
【0020】
シールド掘進機1では、チャンバ2a内を土砂で充満させてチャンバ2aに土砂の圧力(土圧)を生じさせることにより、切羽面の土圧及び地下水圧を抑え切羽面を安定させることができる。チャンバ2a内の土圧は、スクリュコンベア7によってチャンバ2a内の土砂の排出量を制御する、あるいは、シールド掘進機1の掘削速度を制御することにより、調整される。なお、チャンバ2a内の土圧は、チャンバ2a内の土砂に、例えば、加泥材を含有する水溶液(液体)を注入することによっても調整できる。
【0021】
図1に示すように、シールド掘進機1は、掘削した土砂の流動性を高めることを目的として、切羽に気泡を注入する気泡注入管10をさらに備える。気泡注入管10は、一方がポンプ等の気泡供給装置(図示せず)と接続されており、他方がカッタヘッド3の前面に開口している。
【0022】
シールド掘進機1は、気泡供給装置において気泡剤を発泡させることで得られたシェービングクリーム状の気泡を切羽面に注入しながら掘進する。切羽面に注入された気泡は、掘削した土砂の流動性と止水性を向上させ、かつ、チャンバ2a内での土砂の付着を抑制する。これにより、切羽の安定を保持しつつ掘進をスムーズに行うことができる。気泡剤としては、例えば、陰イオン界面活性剤が用いられている。なお、気泡をチャンバ2a内に注入してもよい。
【0023】
このように構成されたシールド掘進機1は、カッタヘッド3を回転して地山を掘削しながら、ジャッキ5を伸長させて地山を掘進する。地山には、掘削坑が掘削されるとともに、掘削坑の内周面に沿ってセグメントリング9が順次組み立てられることによってシールドトンネルTが構築される。掘削坑の内周面とセグメントリング9の外周面との間に生じる間隙に裏込め材を注入することで、セグメントリング9は裏込め材を介して地山に強固に結合された状態となる。
【0024】
ところで、シールド掘進機1において、チャンバ2a内に取り込まれた土砂に付着した気泡が弾けて、チャンバ2a内に空気が蓄積されることがある。空気は土砂に比べ比重が小さいので、チャンバ2a内の土砂が攪拌されている間に、チャンバ2a内の上方に蓄積される。また、地盤を掘削することにより地盤中の土砂、地下水、空気がチャンバ2a内に取り込まれ、土砂と地下水はシールド掘進機1の外に排出されるが、空気が排出されずチャンバ2a内に蓄積されることもある。
【0025】
このようなチャンバ2a内に溜まった空気が、スキンプレート2の隙間などから地山に漏出すると、空気が地山の土砂と入れ代わりながら地面に向けて上昇するなどして、地山(地盤)が脆弱化するおそれがある。
【0026】
そこで、本実施形態のシールド掘進機1は、チャンバ2a内に溜まった空気を抜くための空気抜き機構20を備えている。以下に、図1及び図3を参照しながら、空気抜き機構20について、具体的に説明する。
【0027】
図1及び図3に示すように、空気抜き機構20は、隔壁4に取り付けられる。図3に示すように、空気抜き機構20は、隔壁4に開口して設けられチャンバ2a内に連通する連通管21と、連通管21に設けられチャンバ2a内に溜まった空気を排出するためのバルブ22と、を有する。
【0028】
連通管21は、隔壁4を貫通し、一端がチャンバ2a内に開口する開口21dを有する第1連通管21aと、第1連通管21aの周壁に開口するように接続され、バルブ22が設けられる第2連通管21bと、第2連通管21bより後方において、第1連通管21aの周壁に開口するように接続される第3連通管21cと、を有する。第1連通管21a、第2連通管21b及び第3連通管21cは、例えば、断面が円形の金属管、あるいは、樹脂製のパイプによって構成される。第1連通管21aは、隔壁4の上方側、具体的には、隔壁4の最下点から隔壁4の高さの3/4より上方の領域において、隔壁4を貫通するようにして設けられる。なお、第1連通管21aは、可能な限り上方に設けられることが好ましい。
【0029】
第2連通管21bは、第1連通管21aに直交するように取り付けられる。第2連通管21bの出口側には、第2連通管21bから空気とともに放出される土砂を受けるための容器26が設けられる。なお、第2連通管21bに延長用の接続管やホースなどを設けてもよい。また、図1及び図3に示す構成では、第2連通管21bは、第1連通管21aとの接続部分が上方になっている(第2連通管21bの出口側が下方になっている)が、これに限らず、第1連通管21aとの接続部分が下方になっていてもよいし、水平になっていてもよい。
【0030】
バルブ22(排気制御装置)は、第2連通管21bを開閉するバルブである。バルブ22は、コントローラ30によって開閉が制御される電動や流体駆動の開閉弁によって構成される。
【0031】
第3連通管21cには、第3連通管21cを開閉する手動のバルブ25が設けられる。第3連通管21cにおける第1連通管21aの接続部分との反対側は、洗浄時に、連通管21内に洗浄水を注入するためのポンプ(図示せず)が接続される。なお、本実施形態の第3連通管21cは、特許請求の範囲における「注入口」に相当する。
【0032】
空気抜き機構20は、第1連通管21aの内壁に沿って摺動する摺動部材23と、摺動部材23を駆動する駆動装置24と、をさらに有する。
【0033】
摺動部材23は、第1連通管21aの内径よりもわずかに小さな外径を有する円柱状の部材によって形成される。摺動部材23の外周面には、摺動部材23の外周面と第1連通管21aの内周壁との間をシールするシール部材が設けられる。
【0034】
駆動装置24は、ロッド24aを有する流体圧シリンダである。駆動装置24は、第1連通管21aの他端側(後方側)の開口を塞ぐようにして、第1連通管21aに取り付けられる。ロッド24aの先端には、摺動部材23が取り付けられる。これにより、摺動部材23は、駆動装置24の動作に伴って、第1連通管21aの一端側(チャンバ2a側)の開口21dを塞いでチャンバ2a内の空間と第2連通管21bとの連通を遮断する遮断位置Sと、チャンバ2a内の空間と第2連通管21bとの連通を許容する連通位置Oと、の間を移動する。
【0035】
コントローラ30は、チャンバ2a内に空気が溜まっているか否かを判定し、この判定結果に基づいてバルブ22の開閉、及び駆動装置24の駆動を制御する。コントローラ30は、バルブ22の開閉、及び駆動装置24の駆動を制御するだけでなく、ジャッキ5、モータ6及びスクリュコンベア7の駆動を制御する。なお、コントローラ30は、複数のコンピュータによって構成されていてもよいし、1つのコンピュータによって構成されていてもよい。
【0036】
次に、空気抜き機構20を用いた空気抜き方法について具体的に説明する。
【0037】
まず、図4を参照して、チャンバ2a内に空気が溜まっているか否かの判定方法について説明する。
【0038】
図4は、前方から見たチャンバ2a内の土砂の堆積状態、及び各比抵抗計40によって検出された比抵抗値と比抵抗計40の取付位置との関係を示すグラフである。なお、本実施形態では、複数の比抵抗計40は、カッタヘッド3の回転方向に並んで配置されている。
【0039】
上述のように、カッタヘッド3には攪拌棒が取り付けられているため、チャンバ2a内に導かれた土砂は、カッタヘッド3の回転に伴って、チャンバ2a内でカッタヘッド3の回転方向(図4の矢印)に沿って持ち上げられながら攪拌される。
【0040】
このとき、気泡剤の気泡が破裂して放出された空気や掘削に伴って地山内から放出された空気がチャンバ2a内に蓄積する。空気は、土砂に比べ密度が小さいため、上方に蓄積する。また、土砂が回転方向の下側から上側に持ち上げられるときには、空気も土砂とともに下側から上側に持ち上げられる。そして、上側に持ち上げられた土砂が最高点に達すると、回転方向前方側へ崩れ落ちる。このとき、密度の小さな空気が上方に残り、密度の大きな土砂が下方に落ちることになる。したがって、空気は、図4に示すように、チャンバ2aにおける回転軸C1を含む水平面より上方の領域で、かつ、回転軸C1を含む鉛直面より回転方向前方側の領域(領域R)に蓄積し、空気領域(空気層)を形成する。
【0041】
空気の比抵抗値は、土砂の比抵抗値に比べて大きい。そこで、コントローラ30は、複数の比抵抗計40によって検出された比抵抗値が所定値以上の場合に、その比抵抗計40が設けられている場所に空気が溜まっていると判定する。
【0042】
また、領域Rに空気が蓄積することから、空気抜き機構20は、第1連通管21aの開口21dが領域Rに開口するように、隔壁4に取り付けられる。
【0043】
コントローラ30は、チャンバ2a内に空気が溜まっていると判定した場合には、まず、駆動装置24を駆動して、摺動部材23を遮断位置Sから連通位置Oに移動させる。次いで、コントローラ30は、バルブ22を開く。これにより、チャンバ2a内の空気が、第1連通管21aから第2連通管21b及びバルブ22を通って排出される。
【0044】
チャンバ2a内から空気抜き機構20を通じて空気が排出されると、チャンバ2a内の土圧(圧力)が低下する。チャンバ2a内の土圧(圧力)が低下すると、切羽が不安定になる、あるいは、地下水が漏出するおそれがある。このため、チャンバ2a内の土圧が所定値以上に維持されるように、ジャッキ5の油圧、モータ6の回転速度、スクリュコンベア7の回転速度の少なくとも1つを制御する。このように、チャンバ2a内から空気を排出している間、チャンバ2a内の土圧を所定値以上に維持することで、切羽を安定させることができる。なお、チャンバ2a内の土圧は、チャンバ2a内の土砂に液体、例えば、加泥材を含有する溶液を注入することによっても調整できる。その他、周知の方法で、チャンバ2a内の土圧を所定値以上に維持することで、切羽を安定させることができる。
【0045】
チャンバ2a内から空気が排出されると、領域R内の下側から空気が土砂に置き換わることになる。空気が土砂に置き換わると、比抵抗計40から比抵抗値が小さくなる。このため、チャンバ2a内から空気が排出されると、領域R内に位置する比抵抗計40によって検出される比抵抗値は、下側から順次小さくなっていく。コントローラ30は、隔壁4における第1連通管21aの開口21dのすぐ下側に位置する比抵抗計40aによって検出された比抵抗値が、小さくなったことを検知すると、バルブ22を閉じる。これにより、開口21dから連通管21内に土砂が流入することを防止できる。
【0046】
次に、コントローラ30は、駆動装置24を駆動して、摺動部材23を連通位置Oから遮断位置Sへ移動させる。このように、摺動部材23を連通位置Oから遮断位置Sへ移動させることで、第1連通管21a内に流入してしまった土砂を、チャンバ2a内に押し戻すことができる。これにより、第1連通管21a内に流入してしまった土砂がバルブ22へ流入して、バルブ22に不具合が起こることを防止できる。
【0047】
また、上述のように、第1連通管21aには、洗浄水を注入するための注入口(第3連通管21c)が設けられている。摺動部材23が遮断位置Sに位置しているときに、バルブ22を開弁し、第3連通管21cから洗浄水を注入することで、第2連通管21b及びバルブ22内を洗浄することができる。これにより、第2連通管21b及びバルブ22内に滞留した土砂を洗い流すことができ、土砂によるバルブ22の不具合を抑制できる。
【0048】
なお、上記実施形態では、空気抜きを実行する際に、コントローラ30がバルブ22及び駆動装置24を駆動していたが、コントローラ30を用いずに、作業者がバルブ22及び駆動装置24を操作することによって空気抜きを行ってもよい。具体的には、作業者が、比抵抗計40によって検出された比抵抗値から、上述した判定方法と同じようにチャンバ2a内に空気が溜まっているか否かを判定し、チャンバ2a内に空気が溜まっていると判定したときに、駆動装置24及びバルブ22を操作する。
【0049】
上記実施形態では、空気抜き機構20を1カ所に設けているが、複数カ所設けるようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、バルブ22がコントローラ30によって開閉制御される開閉弁である場合を例に説明したが、これに限らず、バルブ22をリリーフバルブによって構成してもよい。この場合には、コントローラ30が、駆動装置24を制御して摺動部材23を遮断位置Sから連通位置Oに移動させると、チャンバ2a内の空気は、第1連通管21a及び第2連通管21bを通ってリリーフバルブから自動的に排出される。リリーフバルブの上流側の圧力、つまり、チャンバ2a内の空気の圧力が、リリーフバルブの設定圧力まで低下すると、リリーフバルブは自動的に閉弁する。このような構成とすることで、コントローラ30の制御対象を少なくすることができる。
【0051】
さらに、コントローラ30が、比抵抗計40によって検出された比抵抗値の大きさに応じて、バルブ22の開度を調整するようにしてもよい。この場合には、比抵抗値が小さくなった場合に、バルブ22の開度を小さくすることで、チャンバ2a内の圧力が過剰に低下することを防止できる。
【0052】
上記実施形態では、比抵抗計40によって検出された比抵抗値に基づいて、チャンバ2a内に空気が溜まっているか否かを判定しているが、チャンバ2a内の密度を検出する密度計を設け、密度計の検出値に基づいて、チャンバ2a内に空気が溜まっているか否かを判定してもよい。空気と土砂とでは密度が大きく異なるため、密度計によって空気が滞留しているか否かを判定することができる。また、電磁波レーダー、超音波レーダー、電磁探査レーダーなどを用いて、チャンバ2a内の土砂の状態を検出して空気が滞留しているか否かを判定するようにしてもよい。
【0053】
さらに、土圧計を設け、土圧計によって検出された圧力に基づいて、チャンバ2a内に空気が溜まっているか否かを判定するようにしてもよい。土砂が存在する領域と空気が存在する領域とでは圧力分布が異なる。そこで、土圧計によって検出された圧力からチャンバ2a内の圧力分布を求めて、空気が溜まっているか否かを判定するようにしてもよい。
【0054】
また、チャンバ2a内の温度を測定する温度計を設け、温度に基づいて、空気が溜まっているか否かを判定するようにしてもよい。土砂は空気に比べ、温度の変動が大きい。そこで、変動の小さな箇所を空気が溜まっていると判定するようにしてもよい。
【0055】
なお、これらの検出器を併用して空気が溜まっているか否かを判定するようにしてもよい。
【0056】
上記実施形態では、シールド掘進機1が、摺動部材23及び駆動装置24を備えている場合を例に説明したが、シールド掘進機1が、摺動部材23及び駆動装置24を備えていなくてもよい。この場合には、第1連通管21aにバルブ22を設けることで、第2連通管21bを無くすこともできる。
【0057】
また、図5に示すように、容器26に換えて、バルブ22(第2連通管21b)の下流側にバルブ22を通過した空気ないし土砂を貯留する密閉型のタンク60を設け、さらに、タンク60の下流側にリリーフバルブ50を設けるようにしてもよい。このようなタンク60を設けることにより、第2連通管21bの出口から勢いよく空気や土砂が吹き出したとき、タンク60によって土砂を捕捉することができるとともに、坑内に排出される空気の勢いを弱めることができる。また、リリーフバルブ50を設けることにより、タンク60から坑内に吹き出す空気の勢いをさらに弱めることができる。さらに、バルブ22が故障して閉弁しなくなった場合に、リリーフバルブ50によって、チャンバ2aと隔壁4より後方の空間との連通を遮断することができる。
【0058】
以上の実施形態のシールド掘進機1によれば、次の作用効果を奏する。
【0059】
シールド掘進機1では、比抵抗計40によってチャンバ2a内の土砂の状態を検出して、チャンバ2a内に空気が溜まっているか否かを判定する。そして、チャンバ2a内に空気が溜まっていると判定された場合には、バルブ22を開弁してチャンバ2a内に溜まった空気を排出する。このようにチャンバ2a内に溜まった空気を排出することで、チャンバ2a内に溜まった空気が、シールド掘進機1の隙間から地山に漏出して、地山(地盤)が脆弱化することを抑制できる。
【0060】
シールド掘進機1では、摺動部材23を遮断位置Sに移動させることによって、第1連通管21aの開口21dを塞いでチャンバ2a内の空間と第2連通管21bとの連通を遮断することができる。これにより、バルブ22に加え、摺動部材23によっても、チャンバ2a内の空間を遮断することができるので、装置の安全性及び信頼性を高めることができる。
【0061】
また、摺動部材23を連通位置Oから遮断位置Sに移動させることによって、第1連通管21a内に流入した土砂を、チャンバ2a内に押し戻すことができる。これにより、バルブ22へ土砂が流入することを抑制できるので、土砂がバルブ22内に流入することによってバルブ22に不具合が生じることを抑制できる。
【0062】
シールド掘進機1は、バルブ22内を洗浄するための洗浄水を注入可能な注入口(第3連通管21c)を備えている。これにより、第2連通管21b及びバルブ22内に滞留した土砂を洗い流すことができ、バルブ22における土砂の流入による不具合を抑制できる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0064】
また、上記実施形態では、気泡シールド工法に用いられるシールド掘進機1に空気抜き機構20を設けた場合を例に説明したが、これに限らず、空気抜き機構20を泥土圧式シールド掘進機や泥水圧式シールド掘進機などに適用してもよい。これらの場合であっても、空気抜き機構20によってチャンバ2a内に溜まった空気を排出することができる。
【0065】
上記実施形態では、バルブ25が手動のバルブである場合を例に説明したが、バルブ25は、コントローラ30によって制御される電動や流体駆動のバルブであってもよい。また、上記実施形態では、第3連通管21cにバルブ25を設けていたが、これに換えて、第3連通管21cの端部をプラグなどで塞ぐようにしてもよい。さらに、シールド掘進機1において、第3連通管21cを設けずに、第1連通管21aの周壁に注入口を設けるようにしてもよい。なお、シールド掘進機1は、注入口自体を備えていなくてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、第2連通管21bが、第1連通管21aに直交するように取り付けられる場合を例に説明したが、これに限らず、第2連通管21bは、どのような角度で第1連通管21aに取り付けられていてもよい。
【0067】
上記実施形態では、チャンバ2a内に溜まった空気の排気を制御する排気制御装置としてバルブ22を例に説明したが、これに限らず、排気制御装置は、例えば、排気ポンプのような回転機構を有する装置であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1・・・シールド掘進機
2・・・スキンプレート
2a・・・チャンバ
3・・・カッタヘッド(カッタ)
4・・・隔壁
5・・・ジャッキ
7・・・スクリュコンベア
10・・・気泡注入管
20・・・空気抜き機構
21・・・連通管
21a・・・第1連通管
21b・・・第2連通管
21c・・・第3連通管(注入口)
21d・・・開口
22・・・バルブ(排気制御装置)
23・・・摺動部材
24・・・駆動装置
30・・・コントローラ
40・・・比抵抗計(検出器)
50・・・リリーフバルブ
60・・・タンク
O・・・連通位置
S・・・遮断位置
図1
図2
図3
図4
図5