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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139579
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】床版架設機
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20241002BHJP
   E01D 24/00 20060101ALI20241002BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20241002BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
E01D21/00 A
E01D24/00
E01D22/00 A
E01D19/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050587
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000228707
【氏名又は名称】日本コンベヤ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】布村 進
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕司
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐一
(72)【発明者】
【氏名】石橋 宏規
(72)【発明者】
【氏名】喜屋武 辰夫
(72)【発明者】
【氏名】増田 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】サリミ 緒己人
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 勉
(72)【発明者】
【氏名】大石 一明
(72)【発明者】
【氏名】永津 学
(72)【発明者】
【氏名】桑原 康
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康之
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059DD03
2D059GG39
2D059GG41
(57)【要約】
【課題】安定して床版を水平移動させることが可能な床版架設機を提供する。
【解決手段】この床版架設機100は、複数の床版2が並べられる架設方向に沿って移動可能な移動架台4と、移動架台4に設けられ、移動架台4の走行方向に沿って延びる走行桁5と、走行桁5に沿って走行する走行体6と、を備え、走行体6は、床版2を保持する保持機構12と、床版を走行方向および垂直方向に直交する方向に移動させるための横行駆動機構とを有する昇降体9と、昇降体9を垂直方向に昇降させる際のガイドとなるガイド部11と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路建設に用いられる複数の床版を架設する床版架設機であって、
前記複数の床版が並べられる架設方向に沿って移動可能な移動架台と、
前記移動架台に設けられ、前記移動架台の走行方向に沿って延びる走行桁と、
前記走行桁に沿って走行する走行体と、を備え、
前記走行体は、床版を保持する保持機構と、床版を走行方向および垂直方向に直交する横行方向に移動させる横行駆動機構とを有する昇降体と、前記昇降体を前記走行体に取り付けるとともに、前記昇降体を支持する昇降体支持軸を含み、前記昇降体を垂直方向に昇降させる際のガイドとなるガイド部と、を含む、床版架設機。
【請求項2】
前記走行体は、垂直軸線周りに前記保持機構を回転駆動させる垂直軸線回転駆動部を含む、請求項1に記載の床版架設機。
【請求項3】
前記走行体は、前記保持機構を水平方向に対して傾斜させる傾斜機構を含む、請求項1または2に記載の床版架設機。
【請求項4】
前記傾斜機構は、前記走行方向に延びる走行軸線周りに前記保持機構を回転駆動させて、水平方向に対して傾斜させるとともに、前記垂直方向および前記走行方向に直交する方向に延びる横行軸線周りに前記保持機構を回転駆動させて、水平方向に対して傾斜させるように構成されている、請求項3に記載の床版架設機。
【請求項5】
前記走行体は、前記走行体の位置を検出する位置検出部を含む、請求項1または2に記載の床版架設機。
【請求項6】
前記位置検出部は、前記走行体の移動量を計測するセンサを有する、請求項5に記載の床版架設機。
【請求項7】
前記床版には複数の金具が設けられており、
前記保持機構は、前記床版に設けられた前記複数の金具を把持するとともに駆動源を有する複数の把持部を有する、請求項1または2に記載の床版架設機。
【請求項8】
前記保持機構は、前記床版を真空吸着して保持する複数の吸着部を有する、請求項1または2に記載の床版架設機。
【請求項9】
前記保持機構は、前記吸着部と、前記床版の下面に当接する落下防止部とを有する、請求項8に記載の床版架設機。
【請求項10】
前記移動架台に設けられ、回収するために解体された前記床版を搬送する回収用搬送部と、
前記移動架台に設けられ、回収するために解体された前記床版を垂直方向に移動させる回収用昇降部と、をさらに備える、請求項1または2に記載の床版架設機。
【請求項11】
前記移動架台に設けられるとともに、前記回収用搬送部において搬送された前記床版、または、前記走行体により搬送された前記床版のうち少なくとも一方が一時的に保管される保管部をさらに備える、請求項10に記載の床版架設機。
【請求項12】
前記移動架台と、前記走行体と、前記昇降体と、前記横行駆動機構を駆動させる横行駆動部と、垂直軸線回転駆動部と、傾斜機構とのそれぞれの駆動部には、自己位置が計測可能な位置センサが設けられている、請求項1または2に記載の床版架設機。
【請求項13】
床版架設機の各軸座標において、床版架設機と架設位置座標とが予めプログラミングされており、操作を受け付けることによりプログラミングされたプログラムを部分的にあるいは全て実測するシステムが設けられている、請求項1または2に記載の床版架設機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床版架設機に関し、特に、床版を保持する保持機構を有する床版架設機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床版を保持する保持機構を有する床版架設機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、平面構造体と、平面構造体に沿って前後方向に走行可能に設けられた走行機構と、走行機構に設けられたチェーンとを備える、床版架設装置が開示されている。特許文献1では、床版架設装置は、チェーンを介して床版を吊り下げて保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-214858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の床版架設装置では、4本のチェーンを水平移動させる際に床版が揺動して、不安定になるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、安定して床版を水平移動させることが可能な床版架設機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による床版架設機は、道路建設に用いられる複数の床版を架設する床版架設機であって、複数の床版が並べられる架設方向に沿って移動可能な移動架台と、移動架台に設けられ、移動架台の走行方向に沿って延びる走行桁と、走行桁に沿って走行する走行体と、を備え、走行体は、床版を保持する保持機構と、床版を走行方向および垂直方向に直交する横行方向に移動させる横行駆動機構とを有する昇降体と、昇降体を走行体に取り付けるとともに、昇降体を支持する昇降体支持軸を含み、昇降体を垂直方向に昇降させる際のガイドとなるガイド部と、を含む。
【0008】
この発明の一の局面による床版架設機では、上記のように、走行体は、床版を保持する保持機構を有する昇降体と、昇降体を走行体に取り付けるとともに、昇降体を支持する昇降体支持軸を含み、昇降体を垂直方向に昇降させる際のガイドとなるガイド部とを含む。これによって、昇降体が、昇降体支持軸によって支持された状態で走行体に取り付けられるため、水平移動する際に昇降体が揺動することを抑制することができる。
【0009】
上記発明の一の局面による床版架設機において、好ましくは、走行体は、垂直軸線周りに保持機構を回転駆動させる垂直軸線回転駆動部を含む。このように構成すれば、保持機構を垂直軸線周りに回動させることにより、床版を回転させることができるため、平面視で床版の向きを容易に調整することができる。
【0010】
上記発明の一の局面による床版架設機において、好ましくは、走行体は、保持機構を水平方向に対して傾斜させる傾斜機構を含む。このように構成すれば、傾斜機構により保持機構を傾斜させることにより、保持機構に保持されている床版を傾斜させることができる。この結果、床版を架設する場所が傾斜している場合に、傾斜機構により床版の設置角度を容易に調整することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、傾斜機構は、走行方向に延びる走行軸線周りに保持機構を回転駆動させて、水平方向に対して傾斜させるとともに、垂直方向および走行方向に直交する方向に延びる横行軸線周りに保持機構を回転駆動させて、水平方向に対して傾斜させるように構成されている。このように構成すれば、傾斜機構により回転角度を調整することにより、傾斜角度を容易に調整することができる。
【0012】
上記発明の一の局面による床版架設機において、好ましくは、走行体は、走行体の位置を計測する位置検出部を含む。このように構成すれば、位置検出部により計測された走行体の位置に基づいて、走行体の位置を所定の位置に精度よく調整することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、位置検出部は、走行体の移動量を検知するセンサを有する。このように構成すれば、センサにより検知された走行体の移動量に基づいて、走行体の位置を容易に検知することができる。
【0014】
上記発明の一の局面による床版架設機において、好ましくは、床版には複数の金具が設けられており、保持機構は、床版に設けられた複数の金具を把持するとともに駆動源を有する複数の把持部を有する。このように構成すれば、床版に設けられた複数の金具を介して、床版を把持することができるため、安定して床版を把持することができる。
【0015】
上記発明の一の局面による床版架設機において、好ましくは、保持機構は、床版を真空吸着して保持する複数の吸着部を有する。このように構成すれば、複数の吸着部による吸着力により床版を保持することができる。
【0016】
この場合、好ましくは、保持機構は、吸着部と、床版の下面に当接する落下防止部とを有する。このように構成すれば、吸着部の吸着力が弱まった場合でも、落下防止部により床版が保持されるため、床版が予期せずに落下することを防止することができる。
【0017】
上記発明の一の局面による床版架設機において、好ましくは、移動架台に設けられ、回収するために解体された床版を搬送する回収用搬送部と、移動架台に設けられ、回収するために解体された床版を垂直方向に移動させる回収用昇降部と、をさらに備える。このように構成すれば、回収用搬送部と回収用昇降部とを用いて、床版の回収作業と床版の架設作業とを同時に行うことができる。
【0018】
この場合、好ましくは、移動架台に設けられるとともに、回収用搬送部において搬送された床版、または、走行体により搬送された床版のうち少なくとも一方が一時的に保管される保管部をさらに備える。このように構成すれば、たとえば、走行体を用いて床版を運搬する床版運搬車に積載された床版を保管部に一時保管することにより、床版運搬車に床版が積載されていない状態にすることができるため、回収用搬送部により回収された床版を同じ床版運搬車に積載することができる。また、床版を回収後は、走行体を用いて、保管部から架設場所に床版を搬送して、架設することができる。この結果、床版の回収作業と床版の架設作業とを効率よく行うことができる。
【0019】
上記発明の一の局面による床版架設機において、好ましくは、移動架台と、走行体と、昇降体と、横行駆動機構を駆動させる横行駆動部と、垂直軸線回転駆動部と、傾斜機構とのそれぞれの駆動部には、自己位置が計測可能な位置センサが設けられている。このように構成すれば、位置センサにより自己位置を計測することにより、床版があらかじめ決められた架設位置に位置しているか、あるいは、床版が予め設定されている架設角度であるかを計測することができるため、精度よく床版の架設位置および架設角度を調整することができる。
【0020】
上記発明の一の局面による床版架設機において、好ましくは、床版架設機の各軸座標において、床版架設機と架設位置座標とが予めプログラミングされており、操作を受け付けることによりプログラミングされたプログラムを部分的にあるいは全て実測するシステムが設けられている。このように構成すれば、プログラムを実行することにより自動的に床版が架設位置に架設されるため、操作者が細かい位置調整を行う必要がなくなり、操作者の操作が煩雑になることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記のように、安定して床版を水平移動させることが可能な床版架設機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】床版架設機を上方から見た平面図である。
図2】床版架設機を横行方向から見た側面図である。
図3】床版架設機を走行方向から見た正面図である。
図4】走行体を走行させる走行駆動部を説明するための平面図である。
図5図4のA-A線に沿った断面図である。
図6図5のB―B線に沿った断面図である。
図7】昇降機構により、昇降体が上昇した状態を示す側面図である。
図8】昇降機構により、昇降体が下降した状態を示す側面図である。
図9】第1実施形態における保持機構を説明するための底面図である。
図10図9のC-C線に沿った断面図である。
図11図9のD-D線に沿った断面図である。
図12】横行駆動機構を説明するための平面図である。
図13】横行駆動機構を説明するための正面図である。
図14】横行駆動機構を説明するための側面図である。
図15】垂直回転駆動部を説明するための平面図である。
図16】保持機構を垂直回転する前の状態を示す断面図である。
図17】保持機構を垂直回転した後の状態を示す断面図である。
図18】保持機構に傾斜機構を設置した状態を示す平面図である。
図19】複数の傾斜機構のストロークに差がない状態を示す矢視図である。
図20】走行軸線を中心に回転した状態を示す矢視図である。
図21】横行軸線を中心に回転した状態を示す矢視図である。
図22】昇降体が原点に位置している状態を示す側面図である。
図23】昇降体が床版を保持した状態を示す側面図である。
図24】床版を搬送している状態を示す側面図である。
図25】床版を回転させた状態を示す側面図である。
図26】昇降体を下降させた状態を示す側面図である。
図27】床版に金具が設けられている状態を示す斜視図である。
図28】第2実施形態における保持機構を説明するための側面図である。
図29】第3実施形態における床版架設機を説明するための側面図である。
図30】変形例における床版架設機を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
[第1実施形態]
図1図26を参照して、実施形態による床版架設機100の構成について説明する。床版架設機100は、高架、橋梁部またはトンネルなどの道路建設に用いられる。なお、本明細書では、道路上を車両が走行する方向を走行方向とし、Y方向と表す。道路の走行面において、走行方向と直交する方向を横行方向とし、X方向と表す。さらに、走行方向および横行方向に直交する方向を垂直方向とし、Z方向と表す。
【0025】
図1に示すように、床版架設機100は、横行方向(X方向)に所定の間隔で並べられた複数の主桁1上に複数の床版2を架設するために用いられる。また、床版架設機100は、リニューアルで解体された複数の床版2を回収するために用いられる。床版2は、走行方向に沿って並べられる。主桁1の上部に床版2が設置されることにより道路基礎部が構成される。床版2上には、床版架設機100を移動するためのレール3が架設される。レール3は、床版架設機100を支持している。レール3は、走行方向に沿って延びる。
【0026】
図2に示すように、床版架設機100は、移動架台4と、走行桁5と、走行体6とを備える。移動架台4は、下方に移動脚部8が設けられており、移動脚部8によりレール3上を移動する。移動架台4には、走行方向に沿って延びる走行桁5が2本架設されている。走行桁5は、横行方向において互いに対向している。
【0027】
図3および図4に示すように、走行体6は、走行体枠部6dを含む。走行体枠部6dには、昇降機構10と、ガイド部11とが取り付けられている。昇降体9は、昇降機構10と、ガイド部11とを介して垂直方向に昇降する。走行体6が走行することにより、昇降体9が走行方向に走行する。
【0028】
図6に示すように、走行体枠部6dには、走行方向に沿って並べられた複数の車輪6aが、横行方向に沿って対向するように設置されている。走行体6は、車輪6aによって2本の走行桁5に沿って走行する。
【0029】
(走行軸線走行機構)
図5に示すように、走行桁5の下部にはラックギヤ5aが設けられている。また、走行体6の下部(Z2側)には、走行方向に走行するための走行軸線走行機構が設けられている。走行軸線走行機構は、アクチュエータとして駆動モータ6bと、駆動モータ6bに取り付けられるピニオンギヤ6cとを含む。ピニオンギヤ6cは、ラックギヤ5aに下方から接触している。駆動モータ6bが駆動してピニオンギヤ6cが回転することにより、ラックギヤ5aに沿って走行体6が走行方向に沿って走行する。この時、図4に示す車輪6aおよびガイドローラ6eも同時に回転する。
【0030】
(昇降機構)
図7および図8に示すように、走行体6は、昇降体9と、昇降機構10と、ガイド部11と、保持機構12と、制御部14と、位置検出部15とを含む。昇降体9は、垂直方向および横行方向に移動可能に構成されている。昇降体9は、金属製であり、たとえば、鋼製の部材である。昇降体9は、中空の箱状の部材である。なお、昇降機構10と、ガイド部11とは、昇降体9を垂直方向に昇降させるためのアクチュエータである。
【0031】
図7に示すように、昇降機構10は、油圧シリンダである。油圧シリンダのロッドが伸縮されることにより、昇降体9を垂直方向に昇降する。油圧シリンダを構成するシリンダチューブが走行体6に取り付けられているとともに、油圧シリンダを構成するピストンのロッドの先端が昇降体9に接合されていてもよく、昇降体9が油圧シリンダを構成するピストンのロッドの先端に接合されていてもよい。昇降機構10は、Y方向に沿って並ぶ複数の昇降体支持軸11aの間に設置されている。昇降機構10は、X方向に沿って対向するように複数設置されている。
【0032】
ガイド部11は、昇降体9に取り付けられた複数の昇降体支持軸11aと、走行体6の走行体枠部6dに設けられた複数の昇降ガイド部材11bとからなる。昇降ガイド部材11bは、円筒形状を有しており、昇降体9の上面から上方に延びている。昇降ガイド部材11bの内部には、滑り軸受けまたは転がり軸受が設けられていてもよい。昇降体支持軸11aは、昇降ガイド部材11bに沿って垂直方向に昇降する。昇降ガイド部材11bと、昇降体支持軸11aとは、それぞれY方向に沿って複数設けられるとともに、X方向において互いに対向するように複数設置されている。
【0033】
図8および図9に示すように、保持機構12は、昇降体9の下面に設置された保持枠部12aと、保持枠部12aの下面に設けられた複数の吸着部12bと、落下防止部7とを含む。吸着部12bは、吸着パッドであり、真空発生装置(図示せず)を含む。真空発生装置により、吸着部12bは、床版2を吸着し、床版2を保持する。
【0034】
図10および図11に示すように、落下防止部7は、横行方向に対向する1対の落下防止フレーム7aと開閉油圧シリンダ7bとから構成されている。開閉油圧シリンダ7bは、昇降機構10とは互いに干渉しないように設けられているとともに、1対の落下防止フレーム7aを横行方向に移動させる。図11の破線で示すように、開閉油圧シリンダ7bが縮長する(縮む)ことにより落下防止フレーム7aが横行方向に移動し、1対の落下防止フレーム7a同士の間隔があいた状態で、床版2が保持される。床版2が保持された後、図11の実線で示すように、開閉油圧シリンダ7bが伸長することにより落下防止フレーム7aを横行方向に移動させて、1対の落下防止フレーム7a同士の間隔を狭くすることにより、落下防止フレーム7aが床版2の下面に当接する。なお、開閉式油圧シリンダの他、空圧シリンダやリンク機構とモータその他直動駆動装置を用いて落下防止フレームを移動させてもよい。
【0035】
図7に示すように、制御部14は、位置検出部15により検知された検知結果に基づいて、床版2を所定の位置に架設する。制御部14は、昇降体9に設けられていてもよく、床版架設機100とは別に設けられるコンピュータなどであってもよい。制御部14は、床版架設機100と架設位置座標とを床版架設機100の各軸座標において、予めプログラミングされている。操作を受け付けること によりプログラムを部分的にあるいは全て実測するシステムが設けられている。
【0036】
位置検出部15は、センサである。センサは、昇降体9の自己位置を計測するために昇降体油圧シリンダに内蔵または付属されている。図5に示すように、駆動モータ6bとピニオンギヤ6cとにより走行桁5に設置したラックギヤ5aに沿って移動する走行体6の場合、ピニオンギヤ6cの回転軸の回転数を計測するセンサとして、ロータリーエンコーダ15aが設けられる。ロータリーエンコーダ15aにより走行体6の走行距離が計測される。昇降機構10と、横行駆動機構19と、傾斜機構22との場合は、駆動用の油圧シリンダにストローク計を内蔵または付属する。垂直軸線回転駆動部20の場合は、回転軸に位置検出センサとしてロータリーエンコーダを設置して、回転角度を計測する。なお、センサは一例であってその他の機器を使用してもよい。
【0037】
(横行駆動機構)
図12および図13に示すように、昇降体9の内部には、昇降体9によって支持される床版2をX方向に移動させるための横行駆動機構19が設けられている。横行駆動機構19は、アクチュエータとして横行レール19aと、横行軸受け19bと、横行フレーム19cと、横行駆動部19eとを含む。横行レール19aと横行軸受け19bとは、それぞれ軸体および軸受けである。横行レール19aは、X方向に沿って延びている。横行レール19aは、Y方向に対向して2本設けられる。横行軸受け19bは、横行レール19aに沿って横行方向に移動可能であるとともに、横行フレーム19cと一体的に形成されている。
【0038】
横行駆動部19eは、油圧シリンダを含む。油圧シリンダは、ロッド端がブラケット19dを介して横行フレーム19cに接続していてもよく、横行フレーム19cがロッド端に接続していてもよい。横行駆動部19eは、昇降体9内に設けられたブラケット19dを介して、横行フレーム19cをX方向に駆動させる。これにより、横行軸受け19bが横行レール19aに沿って移動する。横行駆動部19eには、位置検出センサが設けられており、昇降体9の横行方向の位置が検出される。
【0039】
(垂直軸線回転駆動部)
図14および図15に示すように、走行体6は、垂直軸線回転駆動部20をさらに含む。垂直軸線回転駆動部20は、横行フレーム19cと保持機構12との間に設けられる。垂直軸線回転駆動部20は、ラックアンドピニオン型のアクチュエータを備えている。具体的には、横行方向に延びるとともに、走行方向に沿って対向する一対の回転用ラックギヤ20aの間に回転用ピニオンギヤ(図示せず)が噛み合わされている。
【0040】
図16および図17に示すように、回転用ピニオンギヤには、昇降体9が回転軸C1を介して取り付けられている。一対の回転用ラックギヤ20aが、走行方向の互いに異なる方向に沿って移動することにより回転用ピニオンギヤがC1周りに回転して、保持機構12が垂直軸線周り(C1周り)に回転する。これにより、床版2を垂直軸線に対して回転することができるため、床版2の90度反転および設置角度の調整が可能となる。
【0041】
(傾斜機構)
図14に示すように、垂直軸線回転駆動部20と保持機構12との間に中心軸受け21と複数の傾斜機構22とが設けられている。傾斜機構22は、保持機構12を水平方向(X方向およびY方向)に対して傾斜させる。すなわち、傾斜機構22は、床版2の傾斜角度を調整するための機構である。傾斜機構22は、アクチュエータとして油圧シリンダを含む。
【0042】
図18に示すように、傾斜機構22は、たとえば、X方向に沿って2つ並ぶとともに、Y方向に沿って、2つ並ぶように設けられている。傾斜機構22は、傾斜機構駆動部を含み、傾斜機構駆動部により走行方向に延びる走行軸線周りに保持機構12を回転駆動させて、水平方向に対して傾斜させる。傾斜機構22は、垂直方向および走行方向に直交する方向に延びる横行軸線周りに保持機構12を回転駆動させて、水平方向に対して傾斜させる。傾斜機構駆動部には、自己位置が計測可能なセンサが設けられている。
【0043】
図19に示すように、すべての傾斜機構22の油圧シリンダのストローク差が無い場合は、中立状態となり、保持機構12は水平状態である。図19の上図は、図18のEから見た矢視図(E矢視図)であり、図19の下図は、図18のFから見た矢視図(F矢視図)である。
【0044】
図20に示すように、走行軸線周りに保持機構12を回転駆動する場合、走行方向に並ぶ傾斜機構22の油圧シリンダは、同じストロークで伸縮させる。横行方向に並ぶ傾斜機構22は一方が伸長指示した場合に、他方は同値を縮長(縮めるように)指示する。具体的には、傾斜機構22aおよび傾斜機構22bの油圧シリンダを同じストロークで伸縮させるとともに、傾斜機構22cおよび傾斜機構22dの油圧シリンダを同じストロークで伸縮させる。図20上図は、傾斜機構22aおよび傾斜機構22bを縮めたるとともに、傾斜機構22cおよび傾斜機構22dを伸ばしている状態を示す。これにより走行軸線周りに保持機構12が傾斜する。また、図20下図は、傾斜機構22aおよび傾斜機構22bを伸ばし、傾斜機構22cおよび傾斜機構22dを縮めて、傾斜させた状態を示す。図20は、図18のEから見た矢視図(E矢視図)である。
【0045】
図21に示すように、横行軸線周りに保持機構12を回転駆動する場合、横行方向に並ぶ傾斜機構22の油圧シリンダは、同じストロークで伸縮し、走行方向に並ぶ傾斜機構22は一方が伸長指示した場合に、他方は同値を縮長指示する。具体的には、傾斜機構22aおよび傾斜機構22dの油圧シリンダが同じストロークで伸長させるとともに、傾斜機構22bおよび傾斜機構22cの油圧シリンダが同じストロークで伸縮する。図21上図では、傾斜機構22aおよび傾斜機構22dを伸ばすとともに、傾斜機構22bおよび傾斜機構22cを縮めた状態を示す。これにより、横行軸周りに保持機構12が傾斜する。また、図21下図では、傾斜機構22aおよび傾斜機構22dを縮め、傾斜機構22bおよび傾斜機構22cを伸ばして、傾斜させた状態を示す。図21は、図18のFから見た矢視図(F矢視図)である。
【0046】
傾斜機構22の油圧シリンダのストロークは、たとえば、200mmであり、中間位置(ストロークが100mm)が原点である。油圧シリンダの全てが中間位置(原点)の場合、保持機構12は水平位置となる。走行方向の前側(Y1側)の傾斜機構22aと、傾斜機構22dとを100mm縮めるとともに、同時に走行方向の後ろ側(Y2側)の傾斜機構22bと、傾斜機構22cとを100mm伸ばすことにより保持機構12は走行方向前側が5.7度上昇する。走行方向の前側(Y1側)の傾斜機構22aと、傾斜機構22dとを100mm伸ばすとともに、走行方向後ろ側(Y2側)の傾斜機構22bと、傾斜機構22cとを100mm縮めることにより保持機構12は走行方向前側(Y1側)が5.7度下降する。このように傾斜した姿勢にする制御をピッチング制御とする。
【0047】
また、走行方向の右側(X1側)の傾斜機構22aと、傾斜機構22bとを100mm縮めるとともに、同時に走行方向の左側(X2側)の傾斜機構22cと、傾斜機構22dとを100mm伸ばすことにより保持機構12は走行方向の右側(X1側)が5.7度上昇する。走行方向の右側(X1側)の傾斜機構22aと、傾斜機構22bとを100mm伸ばすとともに、同時に走行方向の左側(X2側)の傾斜機構22cと、傾斜機構22dとを100mm縮めることにより保持機構12は走行方向の右側(X1側)が5.7度下降する。このように傾斜した姿勢にする制御をローリング制御とする。
【0048】
(床版の架設)
床版2を架設する際の床版架設機100の動作を説明する。床版架設機100の動作は、制御部14をオン状態にして、プログラムで動かしてもよく、制御部14をオフ状態にして手動で動かしてもよい。制御部14をオン状態にした場合について説明する。
【0049】
床版架設機100は、制御システムとしてプログラマブルコントローラ(PLC)やその他の制御システムにより予め床版架設機100の架設手順を、6軸のアクチュエータの自己位置としてプログラム化しておき、架設手順に従って連続的にアクチュエータの位置を制御する。図21は、昇降体9が原点位置に待機した状態を示す。第1実施形態の原点位置は、走行体6の走行軸(Y軸)において移動架台4の中心に位置し、走行直角方向の横行軸(X軸)においては、昇降体9の中心に位置し、昇降機構10においては、上限の位置であり、昇降回転軸においては走行方向を原点として、時計周り、または反時計周りに90度回転させた位置であり、走行回転軸および横行回転軸は0度とする。なお、原点位置は、自由に設定することが可能である。また、図21では、床版2を運搬する床版運搬車13が運搬完了状態で待機している。
【0050】
図22は、待機している床版運搬車13から床版2を保持する保持位置に昇降体9を走行させた状態を示す。床版運搬車13の待機位置は予め設定されている。また、保持位置を座標化しておき、各駆動機構の位置を座標換算して昇降体9を位置決めする。
【0051】
床版運搬車13の待機位置の精度が悪い(所定の位置からずれている)場合があるため、床版架設機100に視認センサ(図示せず)を設け、視認センサにより位置を修正してもよい。例えば、床版2の中心位置などの予め決められた位置に保持マーク(図示せず)を設置しておき、床版架設機100の視認センサで読み取り、床版架設機100と保持マークとのずれを演算し、走行軸方向および横行軸方向の位置を修正する。なお、保持マークと視認センサと以外にもカメラで床版2の外形や角部を撮影し、撮影した画像を画像解析して算出する方法などを用いてもよい。
【0052】
図23に示すように、床版2を保持するために昇降体9が下降される。なお、床版2が床版運搬車13に載置されている高さ位置の精度が悪い(床版2の高さ位置が所定の保持位置よりもずれている)場合があるため、床版架設機100に距離計(図示せず)を設置してもよい。たとえば、床版架設機100に設置した距離計により床版2の表面位置を計測し、表面位置と自己位置との距離を演算して、下降位置を算出してもよい。なお、距離計を設置する以外の方法で行ってもよい。
【0053】
図24は、昇降体9が床版2を保持して上昇した後、床版2を架設する位置に走行させた状態を示す。このとき、床版架設機100の各駆動部は、走行軸(Y軸)以外は原点位置に戻る。
【0054】
床版2を把持した昇降体9は、床版2を回転可能な位置まで走行する。具体的には、ラックギヤ5aに沿ってピニオンギヤ6cが移動し、車輪6aが回転することにより、床版2を保持した走行方向に走行体6が移動する。床版運搬車13により運搬された床版2は、架設するときの床版2の向きと異なる場合がある。たとえば、搬送時は、矩形状の床版2の長辺が走行方向に沿うように搬送され、一方で架設時は長辺が横行方向に沿うように架設されるような場合である。床版2を回転可能な位置とは、搬送してきた床版2を移動架台4に干渉せずに回転できる位置であり、予め座標設定されている。
【0055】
図25に示すように、床版2を回転可能な位置において、搬送された床版2が90度回転し、架設方向に概略位置決めされる。回転可能な位置は、以前に架設した床版2の位置を基に次の床版2の架設走行軸位置を演算して設定され、床版2を架設するたびに更新される。
【0056】
床版2を回転可能な位置から床版2を架設する位置に位置修正がされる。位置修正を行う場合、精度を向上させるために、床版架設機100に設置した視認カメラセンサ(図示せず)により、床版2を回転可能な位置で昇降体9が回転した後に、架設済みの床版2の前端面および両側面の3面を撮影し、画像解析により平面位置座標(Y軸、X軸、Zθ軸方向)を数値化して自己位置(昇降体9の位置)との差異を演算する。演算した結果に基づいて、走行軸(Y軸)と、横行軸(X軸)と、昇降回転軸との各々のアクチュエータを制御して、床版2の位置を修正する。なお、視認カメラセンサを用いずに、床版2を架設する位置の位置座標を架設予定の位置を座標として予めプログラム化し、6軸のアクチュエータ位置を演算して座標移動させてもよい。
【0057】
また、床版架設機100に三角形形状に3ヵ所設置した距離センサ(図示せず)により、架設済みの床版2の相対距離および平行度を計測し、自己位置(昇降体9の位置)との差異を演算する。演算結果に基づいて、昇降軸(Z軸)と、ピッチング軸(Xθ軸)と、ローリング軸(Yθ軸)との各々のアクチュエータを制御し床版2の位置を修正して、架設してもよい。図26に示すように、床版2の位置決めが終了すると床版2を下降させて、床版2の架設は完了する。
【0058】
昇降体9は床版2の保持を解除し床版2を切り離し、昇降軸(Z軸)を収縮させて原点位置に移動させる。昇降軸(Z軸)移動過程で横行軸(X軸)と、昇降回転軸(Zθ軸)と、ピッチング軸(Xθ軸)と、ローリング軸(Yθ軸)との各々のアクチュエータを原点位置に戻し、把持を解除する位置に昇降体9が移動する。
【0059】
図22に示すように、昇降体9は、原点の位置に戻り、床版運搬車13によって運搬された新たな床版2を保持する。そして、床版2を上記のように搬送して、架設することを繰り返す。
【0060】
上記床版2を架設する工程を繰り返し、走行体6が走行軸(Y軸)の走行限度に達すると移動架台4を移動させて走行軸(Y軸)の作業範囲を確保する必要がある。移動架台4の移動には架設済の床版2と移動架台4との相対位置を更新する必要がある。たとえば、床版2を3枚架設する毎に移動架台4を移動させてもよい。
【0061】
本実施例の移動架台4の位置の更新方法は、新たに架設した床版2上にレール3を架設した後に移動脚部8の駆動部(図示せず)を作動させて移動させる。移動脚部8の駆動装部に回転センサを設置し、回転数から移動距離を演算できるように構成されていてもよく、他の方法で移動距離を演算できるように構成されていてもよい。
【0062】
床版2の架設は、前回架設済の床版2の位置座標を計測し、昇降体9の位置を制御して架設するため、移動架台4の移動に関しては精度が悪くともよいが、精度を向上させるために移動架台4の移動後に、前回架設した床版2の座標と移動架台4の移動後の座標との差異を演算して移動架台4の位置を修正、または記憶している前回架設済の床版2の位置座標を更新してもよい。
【0063】
制御部14は、移動架台4を数値化してある3枚分の床版2の架設距離を移動させた後、昇降体9を原点位置から前回架設した床版位置にある3枚の床版2の架設距離を減じたY軸座標へ移動し、昇降体9に設置してある視認カメラセンサ(図示せず)により、架設済の床版2の前端面および両側面の3面を撮影し画像解析により数値化した走行軸(Y軸)座標と前回架設した走行軸(Y軸)座標を比較し差異を修正し、記憶する。
【0064】
移動架台4の移動量の制御は、移動架台4の近傍に定点マーク(ベンチマーク)(図示せず)を設け、移動架台4から非接触で読み取り、移動量との差異を演算して、修正する方法など様々な方法を用いてもよい。
【0065】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0066】
第1実施形態では、上記のように、走行体6は、床版2を保持する保持機構12を有する昇降体9と、昇降体9を走行体6に取り付けるとともに、昇降体9を支持する昇降体支持軸11aを含み、昇降体9を垂直方向に昇降させる際のガイドとなるガイド部11とを含む。これによって、昇降体9が、昇降体支持軸11aによって支持された状態で走行体6に取り付けられるため、水平移動する際に昇降体9が揺動することを抑制することができる。
【0067】
第1実施形態では、上記のように、走行体6は、垂直軸線周りに保持機構12を回転駆動させる垂直軸線回転駆動部20を含む。これによって、保持機構12を垂直軸線周りに回動させることにより、床版2を回転させることができるため、平面視で床版2の向きを容易に調整することができる。
【0068】
第1実施形態では、上記のように、走行体6は、保持機構12を水平方向に対して傾斜させる傾斜機構22を含む。これによって、傾斜機構22により保持機構12を傾斜させることにより、保持機構12に保持されている床版2を傾斜させることができる。この結果、床版2を架設する場所が傾斜している場合に、傾斜機構22により床版2の設置角度を調整することができる。
【0069】
第1実施形態では、上記のように、傾斜機構22は、走行方向に延びる走行軸線周りに保持機構12を回転駆動させて、水平方向に対して傾斜させるとともに、垂直方向および走行方向に直交する方向に延びる横行軸線周りに保持機構12を回転駆動させて、水平方向に対して傾斜させるように構成されている。これによって、傾斜機構22により回転角度を調整することにより、傾斜角度を容易に調整することができる。
【0070】
第1実施形態では、上記のように、走行体6は、走行体6の位置を計測する位置検出部15を含む。これによって、位置検出部15により計測された走行体6の位置に基づいて、走行体6の位置を所定の位置に精度よく調整することができる。
【0071】
第1実施形態では、上記のように、位置検出部15は、走行体6の移動量を検知するセンサを有する。これによって、センサにより検知された走行体6の移動量に基づいて、走行体6の位置を容易に検知することができる。
【0072】
第1実施形態では、上記のように、保持機構12は、床版2を真空吸着して保持する複数の吸着部12bを有する。これによって、複数の吸着部12bによる吸着力により床版2を保持することができる。
【0073】
第1実施形態では、上記のように、保持機構12は、吸着部12bと、床版2の下面に当接する落下防止部7とを有する。これによって、吸着部12bの吸着力が弱まった場合でも、落下防止部7により床版2が保持されるため、床版2が予期せずに落下することを防止することができる。
【0074】
第1実施形態では、上記のように、移動架台4と、走行体6と、昇降体9と、横行駆動部19eと、垂直軸線回転駆動部20と、傾斜機構22とのそれぞれの駆動部には、自己位置が計測可能な位置センサが設けられている。これにより、位置センサにより自己位置を計測することにより、床版2があらかじめ決められた架設位置に位置しているか、あるいは、床版2が予め設定されている架設角度であるかを計測することができるため、精度よく床版2の架設位置および架設角度を調整することができる。
【0075】
第1実施形態では、上記のように、床版架設機100の各軸座標において、床版架設機100と架設位置座標とが予めプログラミングされており、操作を受け付けることによりプログラミングされたプログラムを部分的にあるいは全て実測するシステムが設けられている。これにより、プログラムを実行することにより自動的に床版2が架設位置に架設されるため、操作者が細かい位置調整を行う必要がなくなり、操作者の操作が煩雑になることを抑制することができる。
【0076】
[第2実施形態]
次に、図27および図28を参照して、第2実施形態について説明する。第1実施形態とは異なり、保持機構12には、吸着部12bの代わりに、把持部12fが設けられている。
【0077】
図27に示すように、床版2には、複数の金具2aが設けられている。具体的には、床版2には、半円状の凹部2bが複数設けられており、凹部2bの中心に金具2aが設けられている。金具2aは、把持部12fにより把持されている場合に落下しないように鍔部が設けられている。また、凹部2bは、把持部12fが開閉可能であるように直径が設定される。
【0078】
図28に示すように、把持部12fは、把持部油圧シリンダとリンク機構とを含む。油圧シリンダによりリンク機構が移動することにより、把持部12fが開閉する。図28では、開状態を破線で示し、閉状態を実線で示している。把持部12fが開閉することにより、床版2に設けられた複数の金具2aが保持される。把持部12fは、駆動源を有し、制御部14の制御によって床版2を把持する。
【0079】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0080】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、上記のように、走行体6は、床版2を保持する保持機構12を有する昇降体9と、昇降体9を走行体6に取り付けるとともに、昇降体9を支持する昇降体支持軸11aを含み、昇降体9を垂直方向に昇降させる際のガイドとなるガイド部11とを含む。これによって、昇降体9が、昇降体支持軸11aによって支持された状態で走行体6に取り付けられるため、水平移動する際に昇降体9が揺動することを抑制することができる。
【0081】
第2実施形態では、上記のように、床版2には複数の金具2aが設けられており、保持機構12は、床版2に設けられた複数の金具2aを把持するとともに駆動源を有する複数の把持部12fを有する。これによって、床版2に設けられた複数の金具2aを介して、床版2を把持することができるため、安定して床版2を把持することができる。
【0082】
また、第2実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0083】
[第3実施形態]
次に、図29を参照して、本発明の第3実施形態による床版架設機200の構成について説明する。床版架設機200は、第1実施形態の構成に加えて、回収用搬送部16と、回収用昇降部17と、保管部18とを備える。
【0084】
回収用搬送部16は、移動架台4に設けられてる。回収用搬送部16は、走行桁5よりも上方に設けられており、走行桁5と平行に延びている。回収用昇降部17は、回収用搬送部16に設けられる。回収用昇降部17は、巻上げ機によりワイヤーロープを介して保持枠部12aを昇降させるように構成されている。保持枠部12aには、第1実施形態に記載した吸着部12bまたは第2実施形態に記載した把持部12fのうちいずれか、あるいは従来通りの手動把持部が複数設けられており、吸着部12bまたは把持部12fまたは従来の手動把持部により床版2を保持する。
【0085】
保管部18は、移動架台4に設けられている、保管部18は、走行桁5よりも下方に設けられており、走行桁5と平行に延びている。保管部18は、回収する床版2または架設する床版2のうち少なくとも一方が一時的に保管される。保管部18に保管される床版2は、1枚でもよく、複数枚でもよい。
【0086】
昇降体9は、床版2を運搬する床版運搬車13から床版2を保持し、保管部18に一時的に保管する。
【0087】
次に、回収用搬送部16は、回収する床版2の位置まで移動される。そして、回収用昇降部17が、床版2を保持する保持位置まで下降した後、床版2を保持する。そして、床版2を回転可能な位置まで昇降および移動させた後、床版2を90度回転する。その後、床版2が、回収用搬送部16により床版運搬車13まで移動されて、床版運搬車13に積載される。なお、回収用搬送部16および回収用昇降部17は、それぞれ第1実施形態に記載した走行体6および昇降体9と同じような駆動機構が設けられてもよいが、従来通りの電動式ホイストクレーンでもよい。
【0088】
その後、昇降体9により床版2を保管部18から架設位置に移動させて、架設する。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0089】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、走行体6は、床版2を保持する保持機構12を有する昇降体9と、昇降体9を走行体6に取り付けるとともに、昇降体9を支持する昇降体支持軸11aを含み、昇降体9を垂直方向に昇降させる際のガイドとなるガイド部11とを含む。これによって、昇降体9が、昇降体支持軸11aによって支持された状態で走行体6に取り付けられるため、水平移動する際に昇降体9が揺動することを抑制することができる。
【0090】
第3実施形態では、上記のように、移動架台4に設けられ、回収するために解体された床版2を搬送する回収用搬送部16と、移動架台4に設けられ、回収するために解体された床版2を垂直方向に移動させる回収用昇降部17と、をさらに備える。これによって、回収用搬送部16と回収用昇降部17とを用いて、床版2の回収作業と床版2の架設作業とを同時に行うことができる。
【0091】
第3実施形態では、上記のように、移動架台4に設けられるとともに、回収用搬送部16において搬送された床版2、または、走行体6により搬送された床版2のうち少なくとも一方が一時的に保管される保管部18をさらに備える。これにより、たとえば、走行体6を用いて床版2を運搬する床版運搬車13に積載された床版2を保管部18に一時保管することにより、床版運搬車13に床版2が積載されていない状態にすることができるため、回収用搬送部16により回収された床版2を同じ床版運搬車13に積載することができる。また、床版2を回収後は、走行体6を用いて、保管部18から架設場所に床版2を搬送して、架設することができる。この結果、床版2の回収作業と床版2の架設作業とを効率よく行うことができる。
【0092】
また、第3実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0093】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0094】
たとえば、上記第1~第3実施形態では、走行体の移動に、ラックアンドピニオンを用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、なお、走行体の移動には、チェーンまたはワイヤーロープで牽引する方式でもよい。
【0095】
上記第1~第3実施形態では、横行方向の駆動は油圧シリンダを用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、その他のアクチュエータ、空圧シリンダまたは電動ボールねじでもよい。
【0096】
上記第1~第3実施形態では、横行レールと横行軸受けとが、それぞれ軸体と軸受けとである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、横行レール19aと横行軸受け19bとが、それぞれ直動軸受けのLMレールとLMブロックでもよく、ボールガイド、ローラガイドでもよい。
【0097】
上記第1~第3実施形態では、昇降軸回転軸の回転駆動には、油圧シリンダを用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、昇降軸回転軸の回転駆動には、ギヤとピニオンギヤとの組み合わせ、または、電動ロータリーアクチュエータやその他の方法でもよい。
【0098】
上記第3実施形態では、回収用搬送部および回収用昇降部ととともに、保管部を設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図30に示すように、回収用搬送部および回収用昇降部を設けずに保管部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 主桁
2 床版
2a 金具
4 移動架台
5 走行桁
6 走行体
7 落下防止部
9 昇降体
11 ガイド部
11a 昇降体支持軸
12 保持機構
12b 吸着部
12f 把持部
15 位置検出部
16 回収用搬送部
17 回収用昇降部
18 保管部
20 垂直軸線回転駆動部
22 傾斜機構
100、200 床版架設機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30