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特開2024-139580金型、成形装置、加飾成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139580
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】金型、成形装置、加飾成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/18 20060101AFI20241002BHJP
   B29C 45/37 20060101ALI20241002BHJP
   B29C 45/27 20060101ALI20241002BHJP
   B29C 45/40 20060101ALI20241002BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20241002BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B29C33/18
B29C45/37
B29C45/27
B29C45/40
B29C45/14
B29C51/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050589
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】阿竹 浩之
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
4F208
【Fターム(参考)】
4F202AD05
4F202AD08
4F202AG03
4F202AH18
4F202AJ02
4F202AJ10
4F202AR12
4F202AR13
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB13
4F202CK06
4F202CM02
4F202CQ01
4F202CQ06
4F206AD05
4F206AD08
4F206AG03
4F206AH18
4F206AJ02
4F206AJ10
4F206AM32
4F206JA07
4F206JB13
4F206JF05
4F206JF23
4F206JL02
4F206JQ81
4F208AC03
4F208AG03
4F208AH18
4F208MA01
4F208MB01
4F208MC01
4F208MG04
(57)【要約】
【課題】金型において加飾フィルムの位置がずれることを抑制する。
【解決手段】金型30は、加飾フィルム15に成形部11を一体的に成形して、加飾成形品10を製造するために用いられる。金型30は、加飾フィルム15に対向する第1面31を有する。金型30の少なくとも一部は、多孔質体で形成されている。第1面31の表面積の30%以上において、多孔質体による孔35が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加飾フィルムに成形部を一体的に成形して、加飾成形品を製造するために用いられる金型であって、
前記加飾フィルムに対向する第1面を有し、
当該金型の少なくとも一部は、多孔質体で形成されており、
前記第1面の表面積の30%以上において、前記多孔質体による複数の孔が形成されている、金型。
【請求項2】
前記孔の直径は、10μm以上25μm以下である、請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記第1面の表面積は、1000cm以上である、請求項1に記載の金型。
【請求項4】
前記第1面は、凸面である、請求項1に記載の金型。
【請求項5】
前記第1面において、前記加飾成形品を取り出すためのエジェクタをさらに有する、請求項1に記載の金型。
【請求項6】
請求項1に記載の金型を備え、
前記第1面によって、内部に樹脂を射出可能な収容空間の一部が画定されている、成形装置。
【請求項7】
前記収容空間に樹脂を射出するためのサイドゲートをさらに備える、請求項6に記載の成形装置。
【請求項8】
請求項6に記載の成形装置を用いて加飾成形品を製造する方法であって、
前記金型に加飾フィルムを配置する工程と、
前記孔を介して真空引きすることで、前記第1面に前記加飾フィルムを固定する工程と、
前記収容空間に樹脂を射出する工程と、を備える、加飾成形品の製造方法。
【請求項9】
前記加飾フィルムを真空成形する工程をさらに備える、請求項8に記載の加飾成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金型、金型を有する成形装置、及び成形装置を用いた加飾成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているような塗料が、自動車等の移動体の外装部材に塗装されている。外装部材が塗料で塗装されていることで、移動体は、優れた外観を呈する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-287031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塗料で塗装する工程では、塗料に含まれる揮発性有機化合物が排出されたり、乾燥工程のエネルギー消費により間接的に二酸化炭素が排出される。自動車等の移動体の外装部材等の大きな面積を有する部材を塗料で塗装する場合、大量の揮発性有機化合物や二酸化炭素が排出される。近年、環境に対する関心が高まっている。排出される揮発性有機化合物や二酸化炭素の量を減らすために、加飾フィルムを有する加飾成形品によって移動体の外装部材等を製造することが検討されている。加飾成形品は、加飾フィルムによる意匠を表示する。加飾成形品の製造工程で排出される揮発性有機化合物や二酸化炭素の量は、塗料で塗装する工程に比べて少ない。
【0005】
加飾成形品は、成形装置の金型に加飾フィルムを配置して射出成形することで製造される。移動体の外装部材等の大きな面積を有する加飾成形品では、加飾フィルムの面積も大きい。移動体の外装部材等の加飾成形品には、開口部が設けられていない。大きな面積を有する加飾フィルムや開口部が設けられていない加飾フィルムは、金型において適切な位置に配置することが困難である。金型において加飾フィルムの位置がずれると、加飾成形品が表示する意匠が歪み得る。
【0006】
本開示は、金型において加飾フィルムの位置がずれることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施の形態は、以下の[1]乃至[10]に関する。
[1]
加飾フィルムに成形部を一体的に成形して、加飾成形品を製造するために用いられる金型であって、
前記加飾フィルムに対向する第1面を有し、
当該金型の少なくとも一部は、多孔質体で形成されており、
前記第1面の表面積の30%以上において、前記多孔質体による複数の孔が形成されている、金型。
[2]
前記孔の直径は、10μm以上25μm以下である、[1]に記載の金型。
[3]
前記第1面の表面積は、1000cm以上である、[1]または「2」に記載の金型。
[4]
前記第1面は、凸面である、[1]乃至[3]のいずれかに記載の金型。
[5]
前記第1面において、前記加飾成形品を取り出すためのエジェクタをさらに有する、[1]乃至[4]のいずれかに記載の金型。
[6]
[1]乃至[5]のいずれかに記載の金型を備え、
前記第1面によって、内部に樹脂を射出可能な収容空間の一部が画定されている、成形装置。
[7]
前記収容空間に樹脂を射出するためのサイドゲートをさらに備える、[6]に記載の成形装置。
[8]
[6]または[7]に記載の成形装置を用いて加飾成形品を製造する方法であって、
前記金型に加飾フィルムを配置する工程と、
前記孔を介して真空引きすることで、前記第1面に前記加飾フィルムを固定する工程と、
前記収容空間に樹脂を射出する工程と、を備える、加飾成形品の製造方法。
[9]
前記加飾フィルムを真空成形する工程をさらに備える、[8]に記載の加飾成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、金型において加飾フィルムの位置がずれることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、加飾成形品を含む移動体の斜視図である。
図2図2は、加飾成形品の断面図である。
図3図3は、成形装置の断面図である。
図4図4は、金型の第1面の一部を拡大して示す正面図である。
図5図5は、成形装置を用いた加飾成形品の製造方法を説明するための図である。
図6図6は、成形装置を用いた加飾成形品の製造方法を説明するための図である。
図7図7は、成形装置を用いた加飾成形品の製造方法を説明するための図である。
図8図8は、従来の加飾成形品の一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。一部の図において示された構成等が、他の図において省略されていることもある。
【0011】
本明細書において、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等は、厳密な意味に限定されることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈される。
【0012】
本明細書において、「板面」とは、対象となる板状の部材を全体的且つ大局的に見た場合において対象となる板状部材と一致する面のことを指す。「板」を「フィルム」または「シート」等と読み替えた場合も同様である。
【0013】
本明細書において、パラメータに関して複数の上限値の候補及び複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータは、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせた数値範囲であってもよい。
【0014】
図1には、本開示の一実施の形態に係る移動体1が示されている。移動体1は、移動可能な装置あるいは機器である。図1に示されている例では、移動体1は、自動車である。移動体1は、バイク、自転車、三輪車、電車、航空機、船舶、雪上車、産業用ロボット、ドローン等であってもよい。自動車は、トラック、バス、タクシー、救急車、消防車、警察車両、工事用の作業車等であってもよい。
【0015】
移動体1は、加飾成形品10を有している。図1に示されている例では、自動車は、外装部材の一部として加飾成形品10を有している。自動車の外装部材の一部は、例えば、ルーフ、ボンネット、フェンダー、バンパー、ドア、ピラー、シル及びトランクリッドの少なくとも1つである。図示されている例では、自動車は、ボンネット5として、加飾成形品10を有している。移動体1は、複数の加飾成形品10を有していてもよい。
【0016】
加飾成形品10は、板状の部材である。加飾成形品10は、第1板面10Aと、第2板面10Bと、を有している。第2板面10Bは、第1板面10Aとは反対側の面である。第1板面10Aが、移動体1の表面の一部をなしている。第1板面10A及び第2板面10Bは、平坦な部分を含んでいてもよい。第1板面10A及び第2板面10Bは、曲がった部分を含んでいてもよい。図2には、加飾成形品10の断面図が示されている。図2に示されている例では、加飾成形品10は、全体として曲がっている。
【0017】
加飾成形品10が自動車のボンネット等の移動体1の外装部材等である場合、加飾成形品10は大きな面積を有していてもよい。加飾成形品10の一方の板面の表面積は、1000cm以上であってもよいし、2000cm以上であってもよい。加飾成形品10は、開口部が設けられていない。
【0018】
図2に示されているように、加飾成形品10は、成形部11と、加飾フィルム15と、を含んでいる。成形部11は、第1板面10Aをなしている。成形部11は、加飾成形品10を有する移動体1の表面の一部をなしている。加飾フィルム15は、第2板面10Bをなしている。加飾成形品10は、第1板面10Aが凸面となり、第2板面10Bが凹面となる形状に曲がっている。
【0019】
成形部11は、加飾成形品10の本体部である。加飾成形品10が移動体1の外装部材である場合、成形部11は外装部材の本体部である。成形部11は、移動体1の外装部材の少なくとも一部の形状となっている。例えば、成形部11は、自動車のボンネットの形状となっている。成形部11は、加飾フィルム15によって加飾される被加飾部材である。成形部11は、透明である。成形部11は、例えば熱可塑性の材料を成形することで作製される。成形により、成形部11を所望の形状にできる。成形部11の材料は、例えば、ガラス、樹脂である。樹脂は、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリプロピレン樹脂、繊維強化プラスチックである。
【0020】
本明細書において、「透明」とは、当該部材を介して当該部材の一方の側から他方の側を透視し得る程度の透明性を有していることを意味しており、30%以上、好ましくは70%以上の可視光透過率を有していることを意味する。
【0021】
本明細書において、可視光透過率は、JIS K0115に準拠した分光光度計を用いて、測定波長380nm以上780nm以下の範囲内で1nm毎に測定したときの、各波長における全光線透過率の平均値として特定される。可視光透過率の測定時における入射角は、特に透過方向が定められていない場合、0°とする。入射角は、入射面への法線方向に対して入射光の進行方向がなす角度であり、90°未満の値となる。
【0022】
加飾フィルム15は、意匠を表示する。加飾フィルム15を含む加飾成形品10は、優れた意匠を表示できる。加飾フィルム15は、色彩、幾何学模様等の意匠を表示してもよい。加飾フィルム15は、金属調やレザー調の質感の意匠を表示してもよい。加飾フィルム15は、グロス調やマット調の意匠を表示してもよい。
【0023】
加飾フィルム15は、薄板状である。加飾フィルム15は、第1フィルム面15Aと、第2フィルム面15Bと、を有している。第2フィルム面15Bは、第1フィルム面15Aの反対側の面である。第2フィルム面15Bは、加飾成形品10の第2板面10Bをなす。第2フィルム面15Bの形状は、加飾成形品10の第2板面10Bの形状と略同一である。第2フィルム面15Bは、平坦な部分を含んでいてもよいし、曲がった部分を含んでいてもよい。第2フィルム面15Bは、凹面である。第2フィルム面15Bの表面積は、1000cm以上であってもよいし、2000cm以上であってもよい。加飾フィルム15には、開口部が設けられていない。
【0024】
加飾フィルム15は、第1フィルム面15Aから第2フィルム面15Bに向かって、基材と、着色剤を含む材料と、をこの順で含んでもよいし、着色剤を含む材料と、基材と、をこの順で含んでもよい。基材は、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等からなる。着色剤を含む材料は、例えば基材に印刷することによって形成されてもよい。着色剤は、例えば顔料である。加飾フィルム15は、例えばアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等からなる第2基材をさらに含んでいてもよい。着色剤を含む材料が基材と第2基材との間に配置されていてもよいし、第2基材が基材と着色剤を含む材料との間に配置されていてもよい。
【0025】
加飾フィルム15に成形部11を一体的に成形することで、加飾成形品10が製造される。加飾成形品10の製造に用いられる成形装置20について説明する。
【0026】
図3には、成形装置20の断面図が示されている。図3に示されているように、成形装置20は、第1金型30と、第2金型40と、を有している。第1金型30及び第2金型40は、加飾フィルム15に成形部11を一体的に成形して、加飾成形品10を製造するために用いられる。第1金型30は、第1面31を有している。第2金型40は、第2面41を有している。第1金型30と第2金型40とは、第1面31と第2面41とが対面するように配置されている。第1金型30の一部と第2金型40の一部とは、互いに契合する。第1金型30の一部と第2金型40の一部とが契合した状態で、第1金型30と第2金型40との間に、第1面31と第2面41とによって、収容空間25が形成される。第1面31は、収容空間25の一部を画定し、第2面41は、収容空間25の他の一部を画定する。成形装置20は、収容空間25に加飾フィルム15を収容する。収容空間25の形状は、成形装置20によって製造される加飾成形品10の形状に対応している。第1金型30の第1面31は、製造される加飾成形品10の第2板面10Bに対応した形状である。第2金型40の第2面41は、製造される加飾成形品10の第1板面10Aに対応した形状である。収容空間25は、内部に樹脂を射出可能である。成形装置20は、収容空間25に樹脂を射出するためのサイドゲート27を含んでいる。図3に示された例では、サイドゲート27は、第2金型40に設けられている。図示された例に限らず、サイドゲート27は、第1金型30に設けられていてもよいし、第1金型30及び第2金型40とは独立して設けられていてもよい。
【0027】
第1金型30の第1面31は、加飾成形品10の製造の際に、加飾フィルム15に対向する部分である。第1金型30は、第1金型30の第1面31の周辺に、加飾フィルム15に対向しない面を含んでいてもよい。第1金型30の少なくとも一部は、多孔質体34(ポーラス材)で形成されている。多孔質体34の材料は、例えばステンレス(SUS)である。第1金型30は、第1面31の少なくとも一部において多孔質体34で形成されている。図4には、第1金型30の第1面31の一部の拡大正面図が示されている。図4に示されているように、第1面31の一部において、多孔質体34による複数の孔35が形成されている。孔35が形成されているのは、第1面31の表面積の20%以上であってもよいし、30%以上であってもよいし、50%以上であってもよい。第1面31の表面積とは、第1面31の包絡面の面積である。言い換えると、第1面31に沿って配置されるフィルム状の部材の表面積である。孔35を介して図示しない真空ポンプ等を用いて真空引きすることで、第1面31に加飾フィルム15を固定できる。孔35の直径は、10μm以上であってもよい。孔35の直径は、25μm以下であってもよい。孔35の直径とは、孔35の一方向に沿った最大の長さのことを意味する。
【0028】
第1面31は、当該第1面31に固定される加飾フィルム15の第2フィルム面15Bの形状に対応した形状である。第1面31は、平坦な部分を含んでいてもよいし、曲がった部分を含んでいてもよい。第1面31は、凸面である。第1面31の表面積は、1000cm以上であってもよいし、2000cm以上であってもよい。第1面31において孔35が形成されている面積は、300cm以上であってもよいし、500cm以上であってもよい。加飾フィルム15に開口部が設けられていないため、第1面31には、加飾フィルム15の開口部に対応させるような突出部が設けられていない。
【0029】
図8には、従来の加飾成形品110の一例として、第1面131に固定される加飾フィルム115に対して加飾フィルム115の第1フィルム面115A及び第2フィルム面115Bの法線方向に近い方向から樹脂を射出した場合に製造される成形部111及び加飾成形品110の断面図が示されている。図8に示されている例では、成形部111に角部111Xが形成されている。角部111Xは、加飾成形品が表示する意匠を劣化させる。角部111Xが形成されないような処理をする場合も、当該処理をされた部分において、加飾成形品が表示する意匠を劣化する。
【0030】
加飾成形品10の第1板面10Aに角部が形成されないよう、第1面31に固定される加飾フィルム15に対してサイドゲート27が樹脂を射出する。
【0031】
図3に示されているように、第1金型30は、エジェクタ37を有している。エジェクタ37は、第1面31に設けられている。エジェクタ37は、第1面31から加飾成形品10を押し出す。エジェクタ37により、加飾成形品10を取り出すことができる。エジェクタ37が加飾成形品10に当接する部分は、加飾成形品10の第2板面10Bに沿った形状となっており、第1面31に沿った形状となっている。
【0032】
第2金型40は、第1金型30に対して移動可能である。第2金型40が第1金型30に近づいて契合することで、収容空間25が形成される。第2金型40が第1金型30から離れることで、成形装置20の外部から第1金型30の第1面31に加飾フィルム15が対向するように配置でき、第1金型30の第1面31から成形装置20の外部に加飾成形品10を取り出すことができる。第2金型40の材料は、例えばステンレス(SUS)である。
【0033】
成形装置20を用いた加飾成形品10の製造方法の一例について説明する。加飾成形品10の製造方法は、加飾フィルム15を真空成形する工程と、加飾フィルム15を第1金型30の第1面31に配置する工程と、第1面31に加飾フィルム15を固定する工程と、収容空間25を形成する工程と、収容空間25に樹脂を射出する工程と、加飾成形品10を取り出す工程と、を含む。
【0034】
加飾フィルム15を真空成形する。加飾フィルム15は、図示しない真空成形装置によって真空成形される。加飾フィルム15を真空成形することで、加飾フィルム15の形状が、製造される加飾成形品10における加飾フィルム15の形状に変形する。本実施の形態では、第2フィルム面15Bが凹面となるように、加飾フィルム15は真空成形される。変形した状態で、加飾フィルム15は加飾成形品10において所望の意匠を表示する形状となっている。加飾フィルム15が製造される加飾成形品10における加飾フィルム15の形状であれば、加飾フィルム15を真空成形する工程は省略されてもよい。
【0035】
図5に示すように、加飾フィルム15を第1金型30の第1面31に配置する。第2金型40は、第1金型30から離れている。加飾フィルム15を例えばロボットアーム等で保持して第1金型30の第1面31に対向させる。加飾フィルム15の第2フィルム面15Bが、第1面31に対向する。第1面31の形状が第2フィルム面15Bに対応した形状であるため、加飾フィルム15は、シワ等が生じることなく第1面31に配置される。
【0036】
第1面31に加飾フィルム15を固定する。孔35を介して真空引きすることで、加飾フィルム15が第1面31に固定される。孔35が第1面31の表面積の30%以上に形成されているため、加飾フィルム15が第1面31から動きにくくなる。第1面31の形状が第2フィルム面15Bに対応した形状であるため、加飾フィルム15が孔35を介して真空引きされても、加飾フィルム15にシワ等が生じにくい。
【0037】
収容空間25を形成する。図6に示すように、第1金型30の第1面31に加飾フィルム15が固定されている状態で、第1金型30に第2金型40を近づけて、第1金型30の一部と第2金型40の一部とを契合させる。第1金型30の第1面31と第2金型40の第2面41との間に、収容空間25が形成される。収容空間25には、第1面31に固定された加飾フィルム15が収容されている。
【0038】
収容空間25に樹脂を射出する。樹脂は、例えば高温に加熱された熱可塑性樹脂である。図6に矢印で示すように、樹脂は、サイドゲート27から射出される。樹脂は、サイドゲート27から第1面31及び加飾フィルム15の第1フィルム面15Aに沿って射出される。樹脂が収容空間25を満たす。熱可塑性樹脂が冷えて固まることで、収容空間25の形状に対応した形状の成形部11が形成される。加飾フィルム15に成形部11が一体的に成形されて、加飾成形品10となる。
【0039】
加飾成形品10を取り出す。第2金型40が第1金型30から離れる。第1金型30の第1面31に設けられたエジェクタ37が、第1面31から加飾成形品10を押し出す。エジェクタ37に押し出された加飾成形品10を、例えばロボットアーム等で保持することで、取り出すことができる。
【0040】
従来の成形装置では、大きな面積を有する加飾フィルムや、開口部が設けられていない加飾フィルムは、金型においてずれやすい。加飾フィルムは、樹脂の流れによって動いたり、樹脂の熱によって収縮したりすることで、金型において適切な位置からずれることがある。金型において加飾フィルムの位置がずれると、加飾成形品が表示する意匠が歪み得る。金型において加飾フィルムの位置がずれると、加飾フィルムに延びやシワが生じ得る。加飾フィルムに生じたシワも、加飾成形品が表示する意匠を劣化させ得る。
【0041】
金型において加飾フィルムの位置がずれることを抑制するために、加飾フィルムに加飾成形品からは除去される外周部分を設けておき、外周部分において加飾フィルムを金型に固定することが考えられる。加飾フィルムが熱によって収縮し得る。加飾フィルムの外周部分が固定されていると、加飾フィルムが熱によって収縮する際に、加飾フィルムに延びやシワが生じやすくなる。
【0042】
本実施の形態の第1金型30の少なくとも一部は、多孔質体34で形成されている。第1面31の表面積の30%以上において、多孔質体34による複数の孔35が形成されている。孔35を介して真空引きすることで、加飾フィルム15を第1面31に固定できる。孔35が第1面31の表面積の30%以上に形成されていることで、第1金型30において、加飾フィルム15の位置がずれることを抑制できる。収容空間25に樹脂が射出される際に、特にサイドゲート27の近傍において、樹脂によって加飾フィルム15の位置がずれることが抑制される。
【0043】
孔35を介した真空引きにより第1面31に加飾フィルム15を固定することで、加飾フィルム15が熱によって収縮しても、第1面31において加飾フィルム15が適切に動くことができる。加飾フィルム15に延びやシワが生じることを抑制できる。
【0044】
孔35の直径は、10μm以上25μm以下である。孔35の直径が十分に大きいため、真空引きされた際に、各孔35において加飾フィルム15を適切に固定できる。孔35の直径が大きすぎないため、収容空間25に樹脂が射出成形された際に、孔35に大きな圧力がかかって多孔質体34が破損することが抑制される。
【0045】
第1面31の表面積は、1000cm以上である。第1面31に配置される加飾フィルム15の表面積は、1000cm以上である。加飾フィルム15の表面積が大きいほど、加飾フィルム15に延びやシワが生じやすい。加飾フィルム15の表面積が300cm以上である場合、孔35を介して真空引きすることによる加飾フィルム15に延びやシワが生じることを抑制する効果を、特に有効に奏することができる。
【0046】
加飾フィルムに開口部が設けられていると、当該開口部の内側に加飾フィルムを巻き込むことで、加飾フィルムを金型に固定できる。自動車のボンネット等としての加飾成形品において、加飾フィルムには開口部が設けられていないことが多い。本実施の形態では、加飾フィルム15に開口部が設けられていない。第1金型30の第1面31には、加飾フィルム15の開口部に対応させるような突出部が設けられていない。第1面31に加飾フィルム15が配置されると、加飾フィルム15の第1面31における位置がずれやすい。第1面31の表面積の30%以上に形成された孔35を介して真空引きして加飾フィルム15の位置がずれることを抑制する効果を、特に有効に奏することができる。
【0047】
第1金型30は、第1面31において、エジェクタ37を有する。エジェクタ37により、真空引きにより第1面31に固定された加飾フィルム15を有する加飾成形品10を、第1面31から容易に取り出すことができる。
【0048】
成形装置20において、サイドゲート27が収容空間25に樹脂を射出する。成形装置20によって製造される加飾成形品10において、図8に示すような角部が形成されることを抑制できる。サイドゲート27が収容空間25に樹脂を射出すると、樹脂の流れによって加飾フィルム15が第1面31からずれやすい。第1面31の表面積の30%以上に形成された孔35を介して真空引きすることによる加飾フィルム15の位置がずれることを抑制する効果を、特に有効に奏することができる。加飾成形品10に角部が形成されることを抑制しながら、加飾フィルム15の位置がずれることを抑制できる。
【0049】
加飾フィルム15を第1金型30に配置する前に、加飾フィルム15を真空成形する。加飾フィルム15が真空成形されることで、第1金型30の第1面31に沿って加飾フィルム15を容易に配置できる。孔35を介して真空引きして加飾フィルム15が第1面31に固定する際に、加飾フィルム15に延びやシワが生じることを抑制できる。
【0050】
本実施の形態の第1金型30は、加飾フィルム15に成形部11を一体的に成形して、加飾成形品10を製造するために用いられる。第1金型30は、加飾フィルム15に対向する第1面31を有する。第1金型30の少なくとも一部は、多孔質体34で形成されている。第1面31の表面積の30%以上において、多孔質体34による孔35が形成されている。本開示の金型30によれば、第1金型30において、加飾フィルム15の位置がずれることを抑制できる。
【0051】
本開示の一実施の形態について説明してきたが、本開示は上述の一実施の形態に限定されない。本開示は、その他の様々な形態で実施でき、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
【0052】
上述した実施の形態では、加飾成形品10の成形部11が、第1板面10Aをなしている。第1板面10Aは、移動体1の表面の一部をなしている。上述した実施の形態に限らず、加飾成形品10の加飾フィルム15が、第1板面10Aをなしていてもよい。この場合、加飾フィルム15の第2フィルム面15Bが、加飾成形品10の第1板面10Aをなす。加飾フィルム15の第2フィルム面15Bは、加飾成形品10の製造工程において、第1金型30の第1面31に対向する。
【0053】
加飾成形品10の製造工程において、加飾フィルム15が第1金型30の第1面31に孔35を介して真空引きされる。加飾フィルム15の第2フィルム面15Bに、第1金型30の第1面31に形成された複数の孔35の跡がつくことがある。孔35の跡は、第1板面10Aからの観察において、加飾成形品10が表示する意匠を劣化させる。孔35の跡がつくことを抑制するために、加飾フィルム15が第1金型30に配置される前に、加飾フィルム15の第2フィルム面15Bに保護フィルムが設けられていてもよい。保護フィルムは、加飾フィルム15に剥離可能に設けられている。加飾フィルム15の第2フィルム面15Bに保護フィルムが設けられているため、孔35を介して真空引きされることで第1面31に加飾フィルム15が固定されても、保護フィルムに孔35の跡がつき得るが、加飾フィルム15の第2フィルム面15Bには孔35の跡がつきにくい。成形装置20から加飾成形品10を取り出した後、保護フィルムを加飾フィルム15から剥離する。孔35の跡によって加飾成形品10が表示する意匠が劣化することが抑制できる。
【符号の説明】
【0054】
1 移動体
10 加飾成形品
10A 第1板面
10B 第2板面
11 成形部
15 加飾フィルム
20 成形装置
25 収容空間
27 サイドゲート
30 第1金型
31 第1面
35 孔
37 エジェクタ
40 第2金型
41 第2面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8