(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139581
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/34 20060101AFI20241002BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20241002BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241002BHJP
B60W 50/023 20120101ALI20241002BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241002BHJP
【FI】
H02J7/34 G
H02J9/06 110
H02J7/00 302B
B60W50/023
B60W60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050590
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊介
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
【テーマコード(参考)】
3D241
5G015
5G503
【Fターム(参考)】
3D241BA64
3D241CA06
3D241CA08
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC11
3D241CC17
3D241CE04
3D241CE05
5G015FA04
5G015FA06
5G015GB05
5G015JA05
5G015JA34
5G015JA42
5G015JA44
5G015JA52
5G015KA12
5G503AA07
5G503BA02
5G503BB02
5G503DA05
5G503DA14
5G503DA17
5G503EA05
5G503FA06
5G503GB03
5G503GD03
5G503GD06
5G503GD07
(57)【要約】
【課題】バックアップ電源の電池劣化を抑制しつつ、フェイルセーフ制御および退避走行制御を安全に終了させることができる制御装置および制御方法を提供する。
【解決手段】実施形態の一態様に係る制御装置は、自動運転機能を有する車両に搭載され、メイン電源が失陥した場合にバックアップ電源の電力を負荷に給電させるフェイルセーフ制御を行うコントローラを備える。コントローラは、フェイルセーフ制御において、バックアップ電源の充電残量が0より大きい値に設定された下限値に低下するまで負荷に給電させる。また、コントローラは、車両の周辺の安全度が予め設定されたレベル以下である場合、バックアップ電源の充電残量が下限値以下になっても負荷への給電を継続させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転機能を有する車両に搭載され、メイン電源が失陥した場合にバックアップ電源の電力を負荷に給電させるフェイルセーフ制御を行うコントローラを備えた制御装置であって、
前記コントローラは、
前記フェイルセーフ制御において、前記バックアップ電源の充電残量が0より大きい値に設定された下限値に低下するまで前記負荷に給電させるとともに、前記車両の周辺の安全度が予め設定されたレベル以下である場合、前記バックアップ電源の充電残量が前記下限値以下になっても前記負荷への給電を継続させる、
制御装置。
【請求項2】
前記フェイルセーフ制御の開始から前記バックアップ電源の充電残量が前記下限値に低下するまでの時間は、前記安全度が前記レベルより高い状況下において、給電された前記負荷による退避走行が完了すると予め想定された想定時間以上に設定される、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記負荷は複数あり、
前記コントローラは、
前記バックアップ電源の充電残量が前記下限値以下になっても前記負荷への給電を継続させる場合、複数の前記負荷のうち給電する前記負荷を制限する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記安全度が低くなるにつれて、制限される前記負荷の数を減少させる、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
給電する前記負荷を制限することを通知する、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項6】
前記安全度は、
前記車両の速度が高くなるにつれて低くなる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記安全度は、
前記車両が走行する道路の交通量が多くなるにつれて低くなる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記安全度は、
前記車両と前記車両に後続する他車両との車間距離が短くなるにつれて低くなる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
前記安全度は、
前記車両が走行する道路がカーブ路である場合に低くなる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項10】
前記安全度は、
前記車両が走行する道路の車線数が少なくなるにつれて低くなる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項11】
前記安全度は、
前記車両が走行する道路の車線幅が狭くなるにつれて低くなる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項12】
前記安全度は、
前記車両が走行する道路における天候が不良である場合に低くなる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項13】
前記安全度は、
前記車両が走行する道路の車線数が1車線であり、かつ、当該道路と対向する対向車線が存在する場合、前記対向車線の交通量が多くなるにつれて低くなる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項14】
前記コントローラは、
前記フェイルセーフ制御において、前記バックアップ電源の充電残量が前記下限値より高い閾値以下の場合に前記安全度を算出する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項15】
自動運転機能を有する車両に搭載され、メイン電源が失陥した場合にバックアップ電源の電力を負荷に給電させるフェイルセーフ制御を行わせる制御装置のコントローラが実行する制御方法であって、
前記フェイルセーフ制御において、前記バックアップ電源の充電残量が0より大きい値に設定された下限値に低下するまで前記負荷に給電させるとともに、前記車両の周辺の安全度が予め設定されたレベル以下である場合、前記バックアップ電源の充電残量が前記下限値以下になっても前記負荷への給電を継続させる、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冗長電源システムが搭載される車両は、メイン電源が失陥した場合に、バックアップ電源の電力を負荷に給電させるフェイルセーフ制御を行わせるとともに、給電された負荷を用いた退避走行制御を行わせるように構成される。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の技術にあっては、バックアップ電源の充電残量(SOC)が0になるまで退避走行制御は継続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようにバックアップ電源の充電残量が0になるまで退避走行制御が継続されると、バックアップ電源は過放電状態となり、バックアップ電源の再利用に支障をきたすおそれがある。そのため、バックアップ電源の再利用性を考慮すると、退避走行制御中に充電残量が電池劣化につながる下限値(例えば20%)以下になるとバックアップ電源からの給電を停止してフェイルセーフ制御および退避走行制御を終了させることが望ましい。ところが、退避走行制御を終了させる際の車両の周辺状況によっては、退避走行制御を終了させると、車両停止時の安全性が低下する場合もある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、バックアップ電源の電池劣化を抑制しつつ、フェイルセーフ制御および退避走行制御を安全に終了させることができる制御装置および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明において、制御装置は、自動運転機能を有する車両に搭載され、メイン電源が失陥した場合にバックアップ電源の電力を負荷に給電させるフェイルセーフ制御を行うコントローラを備える。前記コントローラは、前記フェイルセーフ制御において、前記バックアップ電源の充電残量が0より大きい値に設定された下限値に低下するまで前記負荷に給電させる。また、前記コントローラは、前記車両の周辺の安全度が予め設定されたレベル以下である場合、前記バックアップ電源の充電残量が前記下限値以下になっても前記負荷への給電を継続させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バックアップ電源の電池劣化を抑制しつつ、フェイルセーフ制御および退避走行制御を安全に終了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る制御システムの構成例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、フェイルセーフ制御中におけるバックアップ電源の充電残量の状態を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る安全度テーブルの一例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る安全度テーブルの一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る安全度テーブルの一例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る安全度テーブルの一例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る安全度テーブルの一例を示す説明図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る安全度テーブルの一例を示す説明図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態に係る安全度テーブルの一例を示す説明図である。
【
図14】
図14は、第1実施形態に係る安全度テーブルの一例を示す説明図である。
【
図15】
図15は、第1実施形態に係る電源制御装置のコントローラが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、第1実施形態に係る電源制御装置のコントローラが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、第1実施形態に係る電源制御装置のコントローラが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、第1実施形態に係る自動運転制御装置のコントローラが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、第2実施形態に係る電源制御装置が実行するフェイルセーフ制御中における、バックアップ電源の充電残量の状態を示す図である。
【
図20】
図20は、第2実施形態におけるメイン電源失陥時処理の一例を示すフローチャートである。
【
図21】
図21は、第3実施形態に係る電源制御装置が実行するフェイルセーフ制御中における、バックアップ電源の充電残量の状態を示す図である。
【
図22】
図22は、第3実施形態におけるメイン電源失陥時処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、制御装置および制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。実施形態に係る制御装置は、自動運転機能を備える電気自動車、ハイブリッド自動車、または、内燃機関によって走行するエンジン自動車などに搭載される。
【0011】
[1.第1実施形態]
[1-1.制御システムの構成]
図1は、第1実施形態に係る制御システム100の構成例を示す説明図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る制御システム100は、電源制御装置1と、メイン電源10と、自動運転制御装置60と、通知装置70と、ナビゲーション装置80とを含む。なお、電源制御装置1は、制御装置の一例である。
【0012】
メイン電源10は、電源制御装置1がエンジン自動車に搭載される場合、発電機12と、鉛バッテリ(以下、「PbB11」と記載する)とを含む。なお、メイン電源10の電池は、PbB11以外の任意の2次電池であってもよい。
【0013】
発電機12は、例えば、走行する車両の運動エネルギーを電気に変換して発電するオルタネータである。発電機12は、発電した電力によるPbB11および後述するバックアップ電源20の充電を行う。また、メイン電源10は、車両に搭載される複数の電気負荷に電力を供給する。
【0014】
メイン電源10は、電源制御装置1が電気自動車またはハイブリッド自動車に搭載される場合、DC/DCコンバータ(図示せず。以下、「DCDC」と記載する)と、PbB11とを含む。この場合、DCDCは、発電機12と、PbB11よりも電圧が高い高圧バッテリ(図示せず)とに接続され、発電機12および高圧バッテリの電圧を降圧して複数の電気負荷に電力を供給する。高圧バッテリは、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される車両駆動用のバッテリである。
【0015】
自動運転制御装置60は、電源制御装置1と、ナビゲーション装置80と電気的に接続される。自動運転制御装置60は、電源制御装置1と、ナビゲーション装置80との間で情報通信が可能である。
【0016】
自動運転制御装置60は、図示しないGPS(Global Positioning System)と、コントローラ61とを備える。コントローラ61は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有するマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記載する)や各種の回路を含む。
【0017】
なお、コントローラ61は、その一部または全部がASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0018】
コントローラ61は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することにより、車両を自動運転走行制御させる装置である。なお、自動運転制御装置60は、GPSの自車位置情報、地図情報、道路交通情報、および、天候情報などをナビゲーション装置80から取得するように構成されてもよい。なお、自動運転制御装置60は、地図情報、道路交通情報、および、天候情報の少なくともいずれかを、図示しない外部サーバから取得するように構成されてもよい。
【0019】
第1実施形態では、自動運転制御装置60のコントローラ61は、自動運転機能を有する車両に搭載され、メイン電源10が失陥した場合に、後述するバックアップ電源20によって退避走行制御を行わせるコントローラの一例である。また、コントローラ61は、バックアップ電源20が失陥した場合に、メイン電源10によって退避走行制御を行わせるコントローラの一例である。なお、メイン電源10の失陥は、メイン電源10の給電系統(後述する第1系統ライン110)における失陥を含む。また、バックアップ電源20の失陥は、バックアップ電源20の給電系統(後述する第2系統ライン120)における失陥を含む。
【0020】
通知装置70は、各種情報を車両の運転者に通知する装置である。通知装置70は、表示部71と、スピーカ72とを含む。表示部71は、例えば、ディスプレイまたは通知ランプなどを含む。表示部71は、各種情報を表示によって運転者に通知する。スピーカ72は、各種情報を音声によって運転者に通知する。なお、かかる音声は、警告音(ブザー)を含んでもよい。
【0021】
ナビゲーション装置80は、GPS、および、地図情報などを記憶する記憶部(いずれも図示せず)などを備える。ナビゲーション装置80は、現在地からユーザによって入力される目的地までの走行経路を案内する装置である。なお、ナビゲーション装置80は、図示しない外部サーバから、道路交通情報および天候情報を取得し、取得した情報を目的地までの走行経路に反映させて案内してもよい。
【0022】
電源制御装置1は、車両に搭載される複数の電気負荷への給電制御を行う装置である。電源制御装置1は、自動運転制御装置60の他に、通知装置70と、ナビゲーション装置80と電気的に接続される。電源制御装置1は、通知装置70と、ナビゲーション装置80との間で情報通信が可能である。また、電源制御装置1は、メイン電源10、第1走行負荷101、第2走行負荷102、第3走行負荷103、第1一般負荷104、および第2一般負荷105と電気的に接続される。
【0023】
第1走行負荷101、第2走行負荷102、および第3走行負荷103は、手動運転および自動運転による車両の走行自体に関係する電気負荷である。第1走行負荷101は、例えば、電動ステアリング装置、電動アクセル装置、電動ブレーキ装置などを含む。言い換えると、第1走行負荷101は、車両の走行時に必要な電気負荷であり、詳しくは手動運転および自動運転による車両の走行時に最低限必要な電気負荷である。
【0024】
第2走行負荷102は、例えば、シフトバイワイヤ装置、および車載カメラなどを含む。言い換えると、第2走行負荷102は、車両の走行時に用いられる電気負荷であり、詳しくは手動運転および自動運転による車両の走行時に動作した方が好ましい電気負荷である。上記した第1走行負荷101および第2走行負荷102は、手動運転中に、運転者のステアリング操作、アクセル操作、およびブレーキ操作などをアシストする。第1走行負荷101および第2走行負荷102は、自動運転中に、自動運転制御装置60によって制御されて車両を自動運転走行させる。
【0025】
第3走行負荷103は、車速センサなどの各種センサ、およびレーダなどを含む。言い換えると、第3走行負荷103は、車両の走行時に必要な電気負荷であり、また、後述する安全度の算出に必要な情報を出力可能な電気負荷である。具体的には、第3走行負荷103である車速センサは、車両の速度を検出し、検出した車両の速度を示す情報を電源制御装置1のコントローラ3へ出力する。また、第3走行負荷103であるレーダは、車両と車両に後続する他車両(以下「後続車両」と記載する場合がある)との車間距離を検出し、検出した車間距離を示す情報を電源制御装置1のコントローラ3へ出力する。
【0026】
第1一般負荷104および第2一般負荷105は、手動運転および自動運転による車両の走行自体には関係しない電気負荷である。第1一般負荷104および第2一般負荷105は、例えば、エアコン、オーディオ、車内照明、ドライブレコーダ、セキュリティ装置、通信装置、および各種センサなどを含む。
【0027】
電源制御装置1は、バックアップ電源20と、コントローラ3と、第1系統ライン110と、第2系統ライン120と、系統間ライン130と、系統間接続部41と、電池用スイッチ42と、第1~第10スイッチ30~39とを備える。
【0028】
バックアップ電源20は、メイン電源10による電力供給ができなくなった場合のバックアップ用電源である。バックアップ電源20は、リチウムイオンバッテリ(以下、「LiB21」と記載する)を備える。なお、バックアップ電源20の電池は、LiB21以外の任意の2次電池であってもよい。
【0029】
第1系統ライン110は、メイン電源10の電力を複数の電気負荷に供給する電力供給ラインである。つまり、メイン電源10の給電系統には、メイン電源10と第1系統ライン110とが含まれる。
【0030】
第2系統ライン120は、バックアップ電源20の電力を複数の電気負荷に供給する電力供給ラインである。つまり、バックアップ電源20の給電系統には、バックアップ電源20と第2系統ライン120とが含まれる。系統間ライン130は、第1系統ライン110と第2系統ライン120とを電気的に接続する接続ラインである。
【0031】
系統間接続部41は、第1系統ライン110と第2系統ライン120とを接続および切断可能なスイッチである。なお、系統間接続部41は、DCDCであってもよい。この場合、DCDCは、動作することによって第1系統ライン110と第2系統ライン120とを接続する。DCDCは、動作を停止することによって第1系統ライン110と第2系統ライン120との接続を切断する。電池用スイッチ42は、バックアップ電源20と第2系統ライン120とを接続および切断可能なスイッチである。
【0032】
第1スイッチ30は、第1系統ライン110と第1走行負荷101とを接続および切断可能なスイッチである。第2スイッチ31は、第1系統ライン110と第2走行負荷102とを接続および切断可能なスイッチである。第3スイッチ32は、第1系統ライン110と第3走行負荷103とを接続および切断可能なスイッチである。第4スイッチ33は、第1系統ライン110と第1一般負荷104とを接続および切断可能なスイッチである。第5スイッチ34は、第1系統ライン110と第2一般負荷105とを接続および切断可能なスイッチである。
【0033】
第6スイッチ35は、第2系統ライン120と第1走行負荷101とを接続および切断可能なスイッチである。第7スイッチ36は、第2系統ライン120と第2走行負荷102とを接続および切断可能なスイッチである。第8スイッチ37は、第2系統ライン120と第3走行負荷103とを接続および切断可能なスイッチである。第9スイッチ38は、第2系統ライン120と第1一般負荷104とを接続および切断可能なスイッチである。第10スイッチ39は、第2系統ライン120と第2一般負荷105とを接続および切断可能なスイッチである。
【0034】
また、電源制御装置1は、第1電圧センサ51と第2電圧センサ52とを備える。第1電圧センサ51は、第1系統ライン110に設けられる。第1電圧センサ51は、第1系統ライン110の電圧を検出し、検出結果をコントローラ3に出力する。第2電圧センサ52は、第2系統ライン120に設けられる。第2電圧センサ52は、第2系統ライン120の電圧を検出し、検出結果をコントローラ3に出力する。
【0035】
コントローラ3は、CPU、ROM、RAMなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。なお、コントローラ3は、その一部または全部がASICやFPGA等のハードウェアで構成されてもよい。
【0036】
コントローラ3は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することにより、系統間接続部41、電池用スイッチ42、および第1~第10スイッチ30~39の動作を制御する。
【0037】
また、コントローラ3は、バックアップ電源20から状態監視ライン23を介して取得するバックアップ電源20の充電残量を示す情報を取得する。バックアップ電源20の充電残量を示す情報は、例えば、LiB21のSOC(State Of Charge)である。
【0038】
LiB21は、SOCが100%のときが、充電残量が最大の状態である。LiB21は、SOCが0%のときが、充電残量がない状態である。コントローラ3は、バックアップ電源20の充電残量を示す情報として、例えば、LiB21のSOCを取得する。コントローラ3は、LiB21のSOCに基づいて、バックアップ電源20の充電残量を監視する。
【0039】
コントローラ3は、GPSの自車位置情報、地図情報、道路交通情報、および、天候情報などをナビゲーション装置80から取得するように構成されてもよい。なお、上記の地図情報には、例えば車両が走行する道路(以下、「走行路」と記載する場合がある)の形状(直線路、カーブ路、カーブ路の曲率など)を示す情報、走行路の車線数を示す情報、走行路の車線幅を示す情報などの道路の状態を示す道路状態情報が含まれる。なお、地図情報に含まれる情報は、上記に限定されるものではない。また、道路交通情報には、走行路の交通量を示す情報、走行路と対向する対向車線の交通量を示す情報などの自車両周辺の交通情報が含まれるが、これらに限定されるものではない。なお、コントローラ3は、地図情報、道路交通情報、および、天候情報の少なくともいずれかを、図示しない外部サーバまたは車載カメラなどから取得するように構成されてもよい。
【0040】
コントローラ3は、自動運転機能を有する車両に搭載され、メイン電源10が失陥した場合にバックアップ電源20の電力を各負荷101~105に給電させるフェイルセーフ制御(後述)を行う。また、コントローラ61は、バックアップ電源20が失陥した場合にメイン電源10の電力を各負荷101~105に給電させるフェイルセーフ制御(後述)を行う。
【0041】
[1-2.電源制御装置の動作例]
次に、
図2~
図5を参照して、第1実施形態に係る電源制御装置1の動作について説明する。
図2~
図5は、第1実施形態に係る電源制御装置1の動作例を示す説明図である。
【0042】
[1-2-1.通常時動作]
コントローラ3は、車両のイグニッションスイッチ(IG)がオンにされた状態で、メイン電源10およびバックアップ電源20の給電系統が失陥していない通常時の停車中、手動運転中、または自動運転中には、
図2に示すように、複数の接続部を制御する。
【0043】
具体的には、コントローラ3は、系統間接続部41をオンにする。コントローラ3は、電池用スイッチ42をオフにする。コントローラ3は、第1~第10スイッチ30~39をオンにする。これにより、電源制御装置1は、LiB21の通常時における放電を抑えつつ、メイン電源10から第1走行負荷101、第2走行負荷102、第3走行負荷103、第1一般負荷104、および第2一般負荷105に電力を供給できる。
【0044】
[1-2-2.電源制御装置の給電系統の失陥時動作]
制御システム100では、給電系統が失陥することがある。給電系統の失陥の例としては、メイン電源10を含む第1系統ライン110の地絡、およびバックアップ電源20を含む第2系統ライン120の地絡などがある。
【0045】
電源制御装置1では、通常時動作中に、第1系統ライン110の地絡、または第2系統ライン120の地絡等が発生した場合、第1系統ライン110および第2系統ライン120の電圧が正常な電圧よりも低くなる。
【0046】
このため、コントローラ3は、第2電圧センサ52によって検出される第2系統ライン120の電圧(以下、「第2系統電圧V2」と記載する)が地絡閾値以下になった場合、給電系統に失陥が発生したと仮判定する。そして、
図3に示すように、コントローラ3は、系統間接続部41をオフにするとともに、電池用スイッチ42をオンにする。なお、コントローラ3は、例えば、第1電圧センサ51によって検出される第1系統ライン110の電圧(以下、「第1系統電圧V1」と記載する)が地絡閾値以下になった場合、給電系統に失陥が発生したと仮判定してもよい。
【0047】
これにより、第1系統ライン110と第2系統ライン120との接続が切断される。そして、電源制御装置1は、第1系統ライン110が地絡していなければ、メイン電源10による給電が可能になる。また、電源制御装置1は、第2系統ライン120が地絡していなければ、バックアップ電源20による給電が可能になる。
【0048】
なお、この仮判定はコンパレータを有するハード回路で行ってもよい。その場合、コンパレータは第2系統電圧V2と地絡閾値とを比較する。コンパレータは、検出電圧が地絡閾値以下になると、仮判定を示す失陥検出信号を出力することによって、系統間接続部41をオフにし、電池用スイッチ42をオンにする。
【0049】
コントローラ3は、仮判定後所定時間が経過しても第2系統電圧V2が地絡閾値以下であり、かつ第1系統電圧V1が所定時間以内に地絡閾値を超えるまで回復すると第2系統ライン120の地絡と本判定する。
【0050】
この場合、コントローラ3は、メイン電源10の電力を各負荷101~105に給電させるフェイルセーフ制御を行う。具体的には、
図4に示すように、コントローラ3は、系統間接続部41のオフを継続しつつ電池用スイッチ42をオフにする。また、コントローラ3は、第6~第10スイッチ35~39をオフにする。そして、コントローラ3は、メイン電源10から第1系統ライン110を介して各負荷101~105に給電する。
【0051】
コントローラ3は、第2系統ライン120が地絡するなどバックアップ電源20が失陥したと本判定した場合、バックアップ電源20が失陥したこと、および、メイン電源10によるフェイルセーフ制御を開始したことを自動運転制御装置60に通知する。
【0052】
自動運転制御装置60のコントローラ61は、電源制御装置1からメイン電源10によるフェイルセーフ制御を開始したことが通知されると、自動運転による退避走行制御(FOP(フェイルオペレーション))を開始する。退避走行とは、車両を安全な場所まで走行させて停止させることである。
【0053】
自動運転制御装置60のコントローラ61は、自動運転による退避走行を開始すると、通知装置70を制御して運転者に手動運転による退避走行の開始を要求する。コントローラ61は、運転者の手動による運転操作を検出した場合には、自動運転制御を終了する。
【0054】
また、電源制御装置1では、給電系統に失陥が発生したと仮判定した後、第1系統電圧V1が所定時間以上地絡閾値以下になり、かつ第2系統電圧V2が所定時間以内に地絡閾値を超えるまで回復することがある。
【0055】
この場合、電源制御装置1のコントローラ3は、メイン電源10を含む第1系統ライン110の地絡と本判定する。コントローラ3は、このようにメイン電源10が失陥した場合にバックアップ電源20の電力を負荷に給電させるフェイルセーフ制御を行う。具体的には、
図5に示すように、コントローラ3は、系統間接続部41のオフと電池用スイッチ42のオンとを継続し、第1~第5スイッチ30~34をオフにして、バックアップ電源20から第2系統ライン120を介して各負荷101~105に給電する。
【0056】
コントローラ3は、第1系統ライン110の地絡などでメイン電源10が失陥したと本判定した場合、メイン電源10が失陥したこと、および、バックアップ電源20によるフェイルセーフ制御を開始したことを自動運転制御装置60に通知する。
【0057】
自動運転制御装置60のコントローラ61は、電源制御装置1からバックアップ電源20によるフェイルセーフ制御を開始したことが通知されると、自動運転による退避走行制御(FOP)を開始する。
【0058】
なお、コントローラ3は、仮判定後、第1系統電圧V1および第2系統電圧V2が所定時間以内に地絡閾値を超えるまで回復した場合、仮判定の結果を誤りと判定する。つまり、コントローラ3は、給電系統は失陥していないと本判定する。そして、コントローラ3は、電池用スイッチ42をオフにするとともに、系統間接続部41をオンにする。これにより、電源制御装置1は、
図2に示す通常時動作に復帰する。
【0059】
ところで、バックアップ電源20によるフェイルセーフ制御では、上記したようにバックアップ電源20の電力が負荷(第1~第3走行負荷101~103および第1、第2一般負荷104,105)に給電される(
図5参照)。そして、給電された負荷を用いた退避走行制御が行われる。
【0060】
バックアップ電源20は、メイン電源10が失陥してバックアップ電源20による退避走行制御が行われるときのために、退避走行を完了できるような充電状態とされる。例えば、バックアップ電源20は、バックアップ電源20による退避走行制御が行われるときに、退避走行を完了可能な想定時間(例えば20秒)を確保できるような充電状態とされる。
【0061】
しかしながら、例えば車両の現在地から安全な退避場所までの距離が比較的長いなど、退避走行時における車両の周辺状況によっては、退避走行完了までの実際の走行時間が想定時間より長くなる場合がある。退避走行完了までの走行時間が想定時間より長くなると、バックアップ電源20の充電残量が想定より減少し、電池劣化につながる下限値まで低下してしまう。なお、下限値は、0より大きい値(例えば20%)に予め設定される。
【0062】
バックアップ電源20は、充電残量が下限値以下になると過放電状態となり、バックアップ電源20の再利用に支障をきたすおそれがある。そのため、バックアップ電源20の再利用性を考慮すると、退避走行制御中に充電残量が下限値以下になるとバックアップ電源20からの給電を停止してフェイルセーフ制御および退避走行制御を終了させることが望ましい。ところが、退避走行制御を終了させる際の車両の周辺状況によっては、退避走行制御を終了させると、車両停止時の安全性が低下する場合もある。
【0063】
そこで、電源制御装置1のコントローラ3は、フェイルセーフ制御において、バックアップ電源20の充電残量(SOC)が下限値に低下するまで負荷に給電させる。そして、コントローラ3は、車両の周辺の安全度が予め設定されたレベル以下である場合、バックアップ電源20の充電残量が下限値以下になっても負荷への給電を継続させる。
【0064】
なお、安全度は、例えば車両がその場所で停止したときの安全性の度合いを示す指標値である。安全度は、例えば、周辺状況の内容に応じた数段階のレベル(例えば「高」「中」「低」)で示される値である。安全度は、車両の速度や走行路の交通量などに基づいて算出されるが、これについては後述する。
【0065】
ここで、上記したコントローラ3による処理について、
図6を参照しつつ詳しく説明する。
図6は、フェイルセーフ制御中におけるバックアップ電源20の充電残量(SOC)の状態を示す図である。
【0066】
図6に示すように、時刻T1でメイン電源10が失陥した場合、コントローラ3はフェイルセーフ制御を開始する。フェイルセーフ制御が開始されると、バックアップ電源20の電力が各負荷101~105に給電されるため、バックアップ電源20のSOCは徐々に低下する。そして、時刻T2において、バックアップ電源20のSOCが下限値(例えば20%)まで低下する。
【0067】
そして、
図6に実線で示すように、例えば車両の周辺の安全度が予め設定されたレベルより高い「高」であり、車両停止時の安全性が確保されているような場合、コントローラ3は、フェイルセーフ制御を終了する。すなわち、コントローラ3は、電池用スイッチ42を遮断するか、あるいはスイッチ35~39を遮断することで、バックアップ電源20から各負荷101~105への給電を停止する。また、コントローラ3は、フェイルセーフ制御を終了する際、自動運転制御装置60のコントローラ61に対して退避走行の終了を指示する退避走行終了指示を出力する。自動運転制御装置60のコントローラ61は、退避走行終了指示を受け付けると、退避走行制御を終了する。
【0068】
このように、コントローラ3は、安全度が予め設定されたレベルより高い場合、バックアップ電源20のSOCが下限値まで低下した時点(時刻T2)で、フェイルセーフ制御を終了する。これにより、バックアップ電源20のSOCは下限値を下回るまで低下しないことから、車両停止時の安全性を確保しつつ、バックアップ電源20が過放電状態となって電池劣化することを抑制することができる。
【0069】
一方、例えば車両の周辺の安全度が予め設定されたレベル以下の「中」あるいは「低」であり、車両停止時の安全性が確保されていない場合、コントローラ3は、バックアップ電源20の充電残量が下限値以下になってもフェイルセーフ制御を継続させる。言い換えると、
図6に破線または二点鎖線で示すように、コントローラ3は、時刻T2以降もフェイルセーフ制御を継続させる。これにより、退避走行制御も継続される。そして、フェイルセーフ制御および退避走行制御の継続により、車両が移動して例えば退避場所に到達すると、コントローラ3は、フェイルセーフ制御を終了する。また、自動運転制御装置60のコントローラ61は、車両が退避場所に到達すると、退避走行制御を終了する。
【0070】
このように、コントローラ3は、車両の周辺の安全度が予め設定されたレベル以下である場合、バックアップ電源20のSOCが下限値以下になっても負荷への給電を継続させる。これにより、車両停止時の安全性が確保されていない状態では、フェイルセーフ制御および退避走行制御を継続させることができ、例えば車両が退避場所に到達したときなどにフェイルセーフ制御および退避走行制御を安全に終了させることが可能になる。
【0071】
なお、
図6に示すように、上記した想定時間(時刻T1~Tx)は、フェイルセーフ制御の開始からバックアップ電源20のSOCが下限値に低下するまでの時間(時刻T1~T2)より短く設定される。言い換えると、フェイルセーフ制御の開始からバックアップ電源20のSOCが下限値に低下するまでの時間(時刻T1~T2)は、給電された負荷による退避走行が完了すると予め想定された想定時間(時刻T1~Tx)以上に設定される。かかる想定時間は、安全度が予め設定されたレベルより高い状況下(例えば、安全度が「高」の状況下)における退避走行を前提として設定される。
【0072】
これにより、例えば車両の周辺状況が、車両の現在地から安全な退避場所までの距離が比較的長いなどでなければ、バックアップ電源20のSOCが下限値に低下する前に、フェイルセーフ制御および退避走行制御を終了させることができる。
【0073】
なお、
図6に示すバックアップ電源20のSOCは、車両に表示されるSOCである。この表示上のSOCは、バックアップ電源20の実際のSOCより低くなるように設定される。従って、
図6に示すように、表示上のSOCが0%になっても、実際のSOCは0%より高いため、フェイルセーフ制御は継続して行われる。
【0074】
本実施形態に係るコントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが下限値以下になっても負荷への給電を継続させる場合、複数の負荷のうち給電する負荷を制限する。言い換えると、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが下限値以下になっても負荷への給電を継続させる場合、複数の負荷のうち一部の負荷に給電させる。
【0075】
具体的には、
図6に破線で示すように、コントローラ3は、例えば車両の周辺の安全度が「中」であり、バックアップ電源20のSOCが下限値以下で、かつ、表示上のSOCが0%になった場合(時刻T3)、複数の負荷のうち給電する負荷を制限する。詳しくは、コントローラ3は、車両の走行時に最低限必要な第1走行負荷101、安全度の算出に必要な情報を出力可能な第3走行負荷103へ給電させる。一方、コントローラ3は、その他の第2走行負荷102、第1一般負荷104および第2一般負荷105へ給電を停止する。
【0076】
このように、コントローラ3は、給電する負荷を制限することで、バックアップ電源20のSOCの低下を抑制することができ、結果としてフェイルセーフ制御および退避走行制御を継続できる時間を延ばすことが可能になる。
【0077】
また、コントローラ3は、給電する負荷を制限することをユーザに通知する。具体的には、コントローラ3は、通知装置70(
図5参照)を制御して、給電する負荷を制限することをユーザに通知する。より具体的には、コントローラ3は、給電する負荷を制限する旨を通知装置70の表示部71に表示させる、あるいは、給電する負荷を制限する旨の音声をスピーカ72から出力させることで、ユーザに通知する。
【0078】
これにより、コントローラ3は、給電する負荷が制限されることをユーザに対して認識させることができる。そのため、コントローラ3は、給電する負荷が制限されることに対するユーザの不安を緩和させることができる。
【0079】
但し、車両の周辺の安全度が「中」より低い「低」である場合、給電する負荷を制限するよりも、給電する負荷を制限せずに(あるいは制限する負荷の数を減らして)退避走行が精度良く行われる方がよい。
【0080】
そこで、本実施形態に係るコントローラ3は、安全度が低くなるにつれて、制限される負荷の数を減少させる。具体的には、
図6に二点鎖線で示すように、コントローラ3は、例えば車両の周辺の安全度が「低」であり、バックアップ電源20のSOCが下限値以下で、かつ、表示上のSOCが0%になった場合(時刻T3)、全ての負荷へ給電させる。なお、上記では、コントローラ3は、全ての負荷へ給電させるようにしたが、これに限られず、例えば第1~第3走行負荷101~103へ給電させる一方、第1、第2一般負荷104,105へ給電を停止するようにしてもよい。
【0081】
これにより、給電する負荷が制限されない(あるいは制限する負荷の数が減る)ため、例えば給電される負荷を用いた退避走行の精度を向上させることができる。
【0082】
[1-3.安全度テーブル]
次に、車両の周辺の安全度の算出について説明する。電源制御装置1のコントローラ3は、上記した安全度を算出するために、安全度テーブルを記憶する。ここで、
図7~
図14を参照して第1実施形態に係る安全度テーブルについて説明する。
図7~
図14は、第1実施形態に係る安全度テーブルの一例を示す説明図である。
【0083】
コントローラ3は、安全度を算出するための情報として、車両の速度、走行路の交通量、車両と後続車両との車間距離、走行路の形状、走行路の車線数、走行路の車線幅、走行路の天候、走行路と対向する対向車線の交通量などの情報を用いる。すなわち、コントローラ3は、車両の速度、走行路の交通量、車両と後続車両との車間距離、走行路の形状、走行路の車線数、走行路の車線幅、走行路の天候、走行路と対向する対向車線の交通量などの情報に応じて安全度を算出する。
【0084】
図7に示す安全度テーブルは、車両の速度(以下「車速」と記載する場合がある)を示す情報と、安全度とが対応付けられたテーブルである。
図7に示すように、例えば車速が10km/h未満であり、低速であることを示す「低」である場合、車両は比較的安全に停止できることから、安全度は「2」に設定される。なお、安全度は、値が大きくなるにつれて、車両停止時の安全性がより確保されていることを示している。
【0085】
また、例えば車速が10km/h以上でかつ20km/h未満であり、中速であることを示す「中」である場合、安全度は、車速が「低」のときより低い「1」に設定される。また、例えば車速が20km/h以上であり、高速であることを示す「高」である場合、安全度は、車速が「中」のときより低い「0」に設定される。
【0086】
このように、安全度は、車速が高くなるにつれて低くなる。これにより、コントローラ3は、車両が停止した場合の安全度を、車速に応じて精度良く算出することができる。
【0087】
図8に示す安全度テーブルは、走行路の交通量を示す情報と、安全度とが対応付けられたテーブルである。
図8に示すように、例えば走行路の交通量が比較的少ないことを示す「少」である場合、車両は比較的安全に停止できることから、安全度は「2」に設定される。また、例えば走行路の交通量が中程度であることを示す「中」である場合、安全度は、交通量が「少」のときより低い「1」に設定される。また、例えば走行路の交通量が比較的多いことを示す「多」である場合、安全度は、交通量が「中」のときより低い「0」に設定される。
【0088】
このように、安全度は、車両が走行する道路(走行路)の交通量が多くなるにつれて低くなる。これにより、コントローラ3は、車両が停止した場合の安全度を、走行路の交通量に応じて精度良く算出することができる。
【0089】
図9に示す安全度テーブルは、車両と後続車両との車間距離を示す情報と、安全度とが対応付けられたテーブルである。
図9に示すように、例えば車間距離が100m以上であり比較的長いことを示す「長」である場合、車両は後続車両に影響を与えることなく比較的安全に停止できることから、安全度は「2」に設定される。また、例えば車間距離が40m以上かつ100m未満であり中程度であることを示す「中」である場合、安全度は、車間距離が「長」のときより低い「1」に設定される。また、例えば車間距離が40m未満であり比較短いことを示す「短」である場合、安全度は、車間距離が「中」のときより低い「0」に設定される。
【0090】
このように、安全度は、車両と車両に後続する他車両(後続車両)との車間距離が短くなるにつれて低くなる。これにより、コントローラ3は、車両が停止した場合の安全度を、後続車両との車間距離に応じて精度良く算出することができる。
【0091】
図10に示す安全度テーブルは、走行路の形状を示す情報と、安全度とが対応付けられたテーブルである。
図10に示すように、例えば走行路の形状が「直線路」である場合、車両は後続車両から見え易い位置で比較的安全に停止できることから、安全度は「2」に設定される。また、例えば走行路の形状が「カーブ路」であり、そのカーブ路の曲率が比較的小さい場合、安全度は、走行路の形状が「直線路」のときより低い「1」に設定される。また、例えば走行路の形状が「カーブ路」であり、そのカーブ路の曲率が比較的大きい場合、安全度は、走行路の形状が「カーブ路」で曲率が小さいときより低い「0」に設定される。
【0092】
このように、安全度は、車両が走行する道路(走行路)がカーブ路である場合に低くなる。詳しくは、安全度は、カーブ路の曲率が大きくなるにつれて低くなる。これにより、コントローラ3は、車両が停止した場合の安全度を、走行路の形状に応じて精度良く算出することができる。
【0093】
図11に示す安全度テーブルは、走行路の車線数を示す情報と、安全度とが対応付けられたテーブルである。
図11に示すように、例えば走行路の車線数が「3以上」である場合、車両は3以上の車線のうち端の車線に比較的安全に停止できることから、安全度は「2」に設定される。また、例えば走行路の車線数が「2」である場合、安全度は、車線数が「3以上」のときより低い「1」に設定される。また、例えば走行路の車線数が「1」である場合、安全度は、車線数が「2」のときより低い「0」に設定される。
【0094】
このように、安全度は、車両が走行する道路(走行路)の車線数が少なくなるにつれて低くなる。これにより、コントローラ3は、車両が停止した場合の安全度を、走行路の車線数に応じて精度良く算出することができる。
【0095】
図12に示す安全度テーブルは、走行路の車線幅を示す情報と、安全度とが対応付けられたテーブルである。
図12に示すように、例えば走行路の車線幅が比較的大きいことを示す「大」である場合、車両は車線の端の位置に比較的安全に停止できることから、安全度は「2」に設定される。また、例えば走行路の車線幅が中程度であることを示す「中」である場合、安全度は、走行路の車線幅が「大」のときより低い「1」に設定される。また、例えば走行路の車線幅が比較的小さいことを示す「小」である場合、安全度は、走行路の車線幅が「中」のときより低い「0」に設定される。
【0096】
このように、安全度は、車両が走行する道路(走行路)の車線幅が少なくなるにつれて低くなる。これにより、コントローラ3は、車両が停止した場合の安全度を、走行路の車線幅に応じて精度良く算出することができる。
【0097】
図13に示す安全度テーブルは、走行路の天候を示す情報と、安全度とが対応付けられたテーブルである。
図13に示すように、例えば走行路の天候が「良好」である場合、車両は比較的安全に停止できることから、安全度は「1」に設定される。また、例えば走行路の天候が暴風雨等で「不良」である場合、安全度は、天候が「良好」のときより低い「0」に設定される。
【0098】
このように、安全度は、車両が走行する道路(走行路)における天候が不良である場合に低くなる。これにより、コントローラ3は、車両が停止した場合の安全度を、走行路における天候に応じて精度良く算出することができる。
【0099】
図14に示す安全度テーブルは、走行路と対向する対向車線の交通量を示す情報と、安全度とが対応付けられたテーブルである。この
図14に示す安全度テーブルは、車両が走行する走行路が1車線であり、かつ、走行路と対向する対向車線が存在する場合(すなわち、走行路が片側1車線である場合)に参照されて、安全度の算出が行われる。具体的には、例えば車両が片側1車線で停止した場合、後続車両は、停止した車両を追い抜く際に対向車線付近あるいは対向車線の一部を走行することがあるため、車両停止時の安全性に影響を及ぼす可能性がある。そこで、本実施形態では、走行路が片側1車線である場合、
図14に示す安全度テーブルを参照して安全度の算出が行われるようにした。
【0100】
図14に示すように、例えば対向車線の交通量が比較的少ないことを示す「少」である場合、後続車両は停止した車両を追い抜き易く車両は比較的安全に停止できることから、安全度は「2」に設定される。また、例えば対向車線の交通量が中程度であることを示す「中」である場合、安全度は、交通量が「少」のときより低い「1」に設定される。また、例えば対向車線の交通量が比較的多いことを示す「多」である場合、安全度は、交通量が「中」のときより低い「0」に設定される。
【0101】
このように、安全度は、車両が走行する道路(走行路)が1車線であり、かつ、走行路と対向する対向車線が存在する場合、対向車線の交通量が多くなるにつれて低くなる。これにより、コントローラ3は、車両が停止した場合の安全度を、対向車線の交通量に応じて精度良く算出することができる。
【0102】
なお、
図7~
図14に示す安全度テーブルでは、安全度の数値、安全度を判別するための閾値などを具体的に示したが、これはあくまでも例示であって限定されるものではなく、任意の値に設定可能である。また、各安全度テーブルにおいて安全度を段階的に示したが、その段階の数についても、図示の数に限られず、任意に設定可能である。
【0103】
コントローラ3は、上記した安全度テーブルを参照して、安全度を算出する。一例として、車速が「低」、走行路の交通量が「少」、車間距離が「長」、走行路の形状が「直線路」、車線数が「3」、車線幅が「大」、天候が「良好」、対向車線の交通量が「少」である場合、コントローラ3は、これらの条件に対応する安全度を加算する。具体的にコントローラ3は、車速条件、交通量条件、車間距離条件、走行路の形状条件、車線数条件、車線幅条件、対向車線の交通量条件の安全度はそれぞれ「2」であり、天候条件の安全度は「1」であるため、最終的な安全度を「15」と算出する。
【0104】
他の例として、車速が「高」、走行路の交通量が「多」、車間距離が「短」、走行路の形状が「カーブ路(曲率大)」、車線数が「1」、車線幅が「小」、天候が「不良」、対向車線の交通量が「多」である場合を挙げる。かかる場合、コントローラ3は、車速条件、交通量条件、車間距離条件、走行路の形状条件、車線数条件、車線幅条件、天候条件、対向車線の交通量条件の安全度はそれぞれ「0」であるため、最終的な安全度を「0」と算出する。
【0105】
そして、コントローラ3は、算出した安全度に基づいて安全度のレベルを判定する。例えば、コントローラ3は、算出した安全度が9以上で比較的高い場合、安全度のレベルは、車両が比較的安全に停止できることを示す「高」であると判定する。また、コントローラ3は、算出した安全度が3以上で8以下の場合、安全度のレベルは、安全度が9以上のときより低い「中」であると判定する。また、コントローラ3は、算出した安全度が2以下の場合、安全度のレベルは、安全度が3以上で8以下のときより低い「低」であると判定する。なお、上記では、安全度のレベルを判定する閾値を具体的な数値で示したが、これはあくまでも例示であって限定されるものではなく、任意の値に設定可能である。
【0106】
なお、上記では、安全度が、車両の速度、走行路の交通量、後続車両との車間距離、走行路の形状、車線数、車線幅、天候、対向車線の交通量などの情報に応じて算出されるようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、安全度は、車両の速度、走行路の交通量、後続車両との車間距離、走行路の形状、車線数、車線幅、天候、対向車線の交通量などの情報の少なくともいずれかを用いて算出されてもよいし、他の評価項目の情報を加えてもよい。
【0107】
[1-4.電源制御装置のコントローラが実行する処理]
次に、
図15~
図17を参照して、第1実施形態に係る電源制御装置1のコントローラ3が実行する処理について説明する。
図15~
図17は、第1実施形態に係る電源制御装置1のコントローラ3が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0108】
コントローラ3は、車両が起動されると、系統間接続部41をオンにし、電池用スイッチ42をオフにした後、
図15に示す処理を実行する。
図15に示すように、コントローラ3は、電源失陥が発生したか否かを仮判定する(ステップS101)。言い換えると、コントローラ3は、給電系統に失陥が発生したか否かを仮判定する。
【0109】
コントローラ3は、第2系統電圧V2が地絡閾値以下になった場合、給電系統に失陥が発生したと仮判定する。コントローラ3は、第2系統電圧V2が地絡閾値を超えている場合、給電系統は失陥していないと判定する。
【0110】
コントローラ3は、電源失陥が発生していないと判定した場合(ステップS101,No)、処理を終了してステップS101から再度処理を開始する。コントローラ3は、電源失陥が発生したと仮判定した場合(ステップS101,Yes)、系統間接続部41をオフにし、かつ電池用スイッチ42をオンにする(ステップS102)。
【0111】
その後、コントローラ3は、電源失陥の本判定を行う(ステップS103)。具体的には、コントローラ3は、仮判定後、第1系統電圧V1が所定時間以上地絡閾値以下であり、かつ第2系統電圧V2が所定時間以内に地絡閾値を超える場合、メイン電源10の失陥と本判定する。
【0112】
コントローラ3は、仮判定後、第2系統電圧V2が所定時間以上地絡閾値以下であり、かつ第1系統電圧V1が所定時間以内に地絡閾値を超える場合、バックアップ電源20の失陥と本判定する。
【0113】
また、コントローラ3は、仮判定後、第1系統電圧V1および第2系統電圧V2が所定時間以内に地絡閾値を超える場合、仮判定の結果を誤りと判定する。つまり、コントローラ3は、電源失陥が発生していないと本判定する。
【0114】
コントローラ3は、本判定の結果がメイン電源10の失陥であったか否かを判定する(ステップS104)。コントローラ3は、本判定の結果がメイン電源10の失陥であった場合(ステップS104,Yes)、第1~第5スイッチ30~34をオフにする(ステップS105)。そして、コントローラ3は、処理をステップS108へ移す。これにより、バックアップ電源20の電力が第6~第10スイッチ35~39を介して各負荷101~105に供給され、バックアップ電源20を用いたフェイルセーフ制御および退避走行制御(FOP)が行われる。
【0115】
コントローラ3は、本判定の結果がメイン電源10の失陥でなかった場合(ステップS104,No)、本判定の結果がバックアップ電源20の失陥であったか否かを判定する(ステップS106)。
【0116】
コントローラ3は、本判定の結果がバックアップ電源20の失陥であった場合(ステップS106,Yes)、電池用スイッチ42をオフにし、第6~第10スイッチ35~39をオフにして(ステップS107)、処理をステップS108へ移す。これにより、メイン電源10の電力が第1~第5スイッチ30~34を介して各負荷101~105に供給され、メイン電源10を用いたフェイルセーフ制御および退避走行制御(FOP)が行われる。
【0117】
ステップS108において、コントローラ3は、失陥した電源の給電系統を自動運転制御装置60に通知して処理を終了する。例えば、コントローラ3は、メイン電源10が失陥したと本判定した場合、メイン電源10を含む第1系統ライン110が地絡したこと、および、バックアップ電源20によるフェイルセーフ制御を開始したことを自動運転制御装置60に通知する。
【0118】
また、コントローラ3は、バックアップ電源20が失陥したと本判定した場合、例えば、バックアップ電源20を含む第2系統ライン120が地絡したこと、および、メイン電源10によるフェイルセーフ制御を開始したことを自動運転制御装置60に通知する。
【0119】
また、コントローラ3は、本判定の結果がメイン電源10の失陥でも、バックアップ電源20の失陥でもなかった場合(ステップS106,No)、電池用スイッチ42をオフにし、系統間接続部41をオンにする(ステップS109)。つまり、コントローラ3は、電源失陥していないと本判定した場合、電池用スイッチ42をオフにし、系統間接続部41をオンにする。これにより、電池用スイッチ42および系統間接続部41は、もとの通常状態に戻る。そして、コントローラ3は、処理を終了してステップS101から再度処理を開始する。
【0120】
[1-4-1.電源制御装置のコントローラが実行するメイン電源失陥時処理]
次に、電源制御装置1のコントローラ3が実行するメイン電源失陥時処理について説明する。
図16および
図17は、メイン電源失陥時処理の一例を示すフローチャートである。
【0121】
電源制御装置1のコントローラ3は、
図15に示す電源失陥の判定処理と並行して、
図16等に示すメイン電源失陥時処理を実行する。例えば、
図16に示すように、コントローラ3は、メイン電源10の失陥であるか否かを判定する(ステップS201)。
【0122】
コントローラ3は、メイン電源10の失陥でないと判定した場合(ステップS201,No)、すなわちバックアップ電源20が失陥している場合、あるいは、電源失陥が発生していない場合、処理を終了してステップS201から再度処理を開始する。
【0123】
コントローラ3は、メイン電源10が失陥したと判定した場合(ステップS201,Yes)、メイン電源10失陥時の処理を実行する(ステップS202)。
図17は、ステップS202におけるメイン電源10失陥時の処理の一例を示している。
【0124】
図17に示すように、コントローラ3はまず、後述する処理でバックアップ電源20のSOCと比較する対象となる閾値THを、電池劣化につながる下限値である「20%」に設定する(ステップS301)。
【0125】
次いで、コントローラ3は、車両の周辺の安全度を算出する(ステップS302)。詳しくは、コントローラ3は、車両の速度、走行路の交通量、後続車両との車間距離、走行路の形状、車線数、車線幅、天候、対向車線の交通量などの情報に応じて安全度を算出する。
【0126】
そして、コントローラ3は、算出した安全度から安全度のレベルが「高」、「中」、「低」のいずれであるかを判定する。例えば、コントローラ3は、算出した安全度が9以上で比較的高い場合、安全度のレベルは、車両が比較的安全に停止できることを示す「高」であると判定する。また、コントローラ3は、算出した安全度が3以上で8以下の場合、安全度のレベルは「中」であると判定する。コントローラ3は、算出した安全度が2以下の場合、安全度のレベルは「低」であると判定する。
【0127】
まず、安全度のレベルが「高」である場合について説明する。コントローラ3は、ステップS303の処理において安全度のレベルが「高」であると判定した場合、現在のバックアップ電源20のSOCが閾値TH以下であるか否かを判定する(ステップS304)。ここでの閾値THは、ステップS301で設定した20%であることから、ステップS304の処理において、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが20%以下であるか否かを判定することとなる。
【0128】
コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが閾値TH以下でないと判定した場合(ステップS304,No)、ステップS302に戻り、ステップS302以降の処理を再度実行する。なお、ステップS304におけるバックアップ電源20のSOCは、表示上のSOCであるが、これに限定されるものではない。
【0129】
コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが閾値TH(ここでは20%)以下であると判定した場合(ステップS304,Yes)、安全度のレベルが「高」であるか否かを判定する(ステップS305)。ここでの安全度のレベルは「高」である。そのため、コントローラ3は、安全度のレベルが「高」であると判定し(ステップS305,Yes)、フェイルセーフ制御を終了し、退避走行終了指示を自動運転制御装置60のコントローラ61に出力する(ステップS306)。具体的には、コントローラ3は、フェイルセーフ制御を終了することで、バックアップ電源20の電力の各負荷101~105への給電を停止する。また、コントローラ3は、退避走行終了指示を自動運転制御装置60に出力することで、自動運転制御装置60のコントローラ61は退避走行制御を終了する。
【0130】
このように、コントローラ3は、安全度のレベルが「高」である場合、バックアップ電源20のSOCが下限値(20%)まで低下した時点で、フェイルセーフ制御を終了する。これにより、バックアップ電源20のSOCは下限値を下回るまで低下しないことから、バックアップ電源20が過放電状態となって電池劣化することを抑制することができる。また、安全度のレベルが「高」であるため、退避走行制御が終了する際に、車両は、安全性が確保された位置で停止することができる。
【0131】
次に、安全度のレベルが「中」である場合について説明する。コントローラ3は、ステップS303の処理において安全度のレベルが「中」であると判定した場合、閾値THを、給電する負荷を制限する際の基準となる値(ここでは0%)に設定する(ステップS307)。
【0132】
次いで、コントローラ3は、現在のバックアップ電源20のSOCが閾値TH(0%)以下であるか否かを判定する(ステップS308)。なお、ステップS308におけるバックアップ電源20のSOCは、表示上のSOCであるが、これに限定されるものではない。
【0133】
コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが閾値TH(0%)以下でないと判定した場合(ステップS308,No)、ステップS304の処理において、バックアップ電源20のSOCが閾値TH(0%)以下であるか否かを判定する。コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが閾値TH(0%)以下でないと判定した場合(ステップS304,No)、ステップS302に戻り、ステップS302以降の処理を再度実行する。
【0134】
すなわち、安全度のレベルが「中」である場合、閾値THは下限値(20%)から、下限値より低い0%に設定されるため、バックアップ電源20のSOCが下限値(20%)以下になっても負荷への給電は継続される。これにより、車両停止時の安全性が確保されていない状態では、フェイルセーフ制御および退避走行制御を継続させることができ、例えば車両が退避場所に到達したときなどにフェイルセーフ制御および退避走行制御を安全に終了させることが可能になる。
【0135】
一方、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが閾値TH(0%)以下であると判定した場合(ステップS308,Yes)、複数の負荷のうち給電する負荷を制限する(ステップS309)。このように、コントローラ3は、給電する負荷を制限することで、バックアップ電源20のSOCの低下を抑制することができ、結果としてフェイルセーフ制御および退避走行制御を継続できる時間を延ばすことが可能になる。
【0136】
次いで、コントローラ3は、給電する負荷を制限することをユーザに通知する(ステップS310)。具体的には、コントローラ3は、給電する負荷を制限する旨を通知装置70の表示部71に表示させることで、ユーザに通知する。また、コントローラ3は、表示部71の表示に代えて、あるいは加えて給電する負荷を制限する旨の音声をスピーカ72から出力させて、ユーザに通知してもよい。これにより、コントローラ3は、給電する負荷が制限されることをユーザに対して認識させることができ、給電する負荷が制限されることに対するユーザの不安を緩和させることができる。
【0137】
続いて、コントローラ3は、ステップS304において、バックアップ電源20のSOCが閾値TH(0%)以下であると判定した場合、ステップS305において、安全度のレベルが「高」であるか否かを判定する。ここでは、安全度のレベルが「中」であるため、コントローラ3は、安全度のレベルが「高」ではないと判定し(ステップS305,No)、そのまま処理を終了する。
【0138】
したがって、コントローラ3は、安全度のレベルが「中」である場合、バックアップ電源20のSOCが閾値TH(0%)以上の間は、ステップS309を実行しないため、負荷を制限せずにバックアップ電源20の電力を各負荷101~105に供給する。また、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが閾値TH(0%)以下になると、ステップS309の処理により負荷を制限してバックアップ電源20の電力供給を継続する。
【0139】
次に、安全度のレベルが「低」である場合について説明する。コントローラ3は、ステップS303の処理において安全度のレベルが「低」であると判定した場合、閾値THを、下限値(20%)より低い値(ここでは0%)に設定する(ステップS311)。
【0140】
次いで、コントローラ3は、ステップS304の処理において、バックアップ電源20のSOCが閾値TH(0%)以下であるか否かを判定する。コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが閾値TH(0%)以下でないと判定した場合(ステップS304,No)、ステップS302に戻り、ステップS302以降の処理を再度実行する。
【0141】
すなわち、安全度のレベルが「低」である場合、閾値THは下限値(20%)から、下限値より低い0%に設定されるため、バックアップ電源20のSOCが下限値(20%)以下になっても負荷への給電は継続される。これにより、車両停止時の安全性が確保されていない状態では、フェイルセーフ制御および退避走行制御を継続させることができ、例えば車両が退避場所に到達したときなどにフェイルセーフ制御および退避走行制御を安全に終了させることが可能になる。
【0142】
コントローラ3は、ステップS304において、バックアップ電源20のSOCが閾値TH(0%)以下であると判定した場合、ステップS305において、安全度のレベルが「高」であるか否かを判定する。ここでは、安全度のレベルが「低」であるため、コントローラ3は、安全度のレベルが「高」ではないと判定し(ステップS305,No)、そのまま処理を終了する。
【0143】
したがって、コントローラ3は、安全度のレベルが「低」である場合、バックアップ電源20のSOCが閾値TH(0%)以上である間、負荷を制限せずにバックアップ電源20から各負荷101~105に電力供給を継続する。また、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが閾値TH(0%)以下になっても、負荷を制限せずにバックアップ電源20から各負荷101~105に電力供給を継続する。
【0144】
[1-5.自動運転装置のコントローラが実行する処理]
次に、
図18を参照して、第1実施形態に係る自動運転制御装置60のコントローラ61が実行する処理について説明する。
図18は、第1実施形態に係る自動運転制御装置60のコントローラ61が実行する処理の一例を示すフローチャートである。なお、
図18は、第1実施形態に係る自動運転制御装置60のコントローラ61が実行する退避走行処理を示している。
【0145】
コントローラ61は、電源制御装置1から電源が失陥してフェイルセーフ制御が開始されたことが通知されると、自動運転による退避走行制御を開始させる(ステップS401)。
【0146】
次いで、コントローラ61は、地図情報とGPSとを使用して、車両が安全な場所に停止したか否かを判定する(ステップS402)。コントローラ61は、車両が安全な場所に停止していないと判定した場合(ステップS402,No)、電源制御装置1からの通知に基づいて、メイン電源10の失陥か否かを判定する(ステップS403)。
【0147】
コントローラ61は、メイン電源10の失陥ではないと判定した場合(ステップS403,No)、すなわちバックアップ電源20の失陥である場合、ステップS402に戻って、ステップS402以降の処理を再度実行する。詳しくは、バックアップ電源20の失陥である場合、第1系統ライン110において、発電機12によって発電された電力などが各負荷101~105に給電され、退避走行は継続される。
【0148】
一方、コントローラ61は、メイン電源10の失陥であると判定した場合(ステップS403,Yes)、電源制御装置1のコントローラ3から退避走行終了指示が出力されたか否かを判定する(ステップS404)。
【0149】
コントローラ61は、退避走行終了指示が出力されていないと判定した場合(ステップS404,No)、ステップS402に戻って、ステップS402以降の処理を再度実行する。
【0150】
一方、コントローラ61は、退避走行終了指示が出力されていると判定した場合(ステップS404,Yes)、退避走行制御を終了する(ステップS405)、言い換えると、車両を停止させる。この退避走行終了指示は、上記したように、バックアップ電源20のSOCが閾値TH(20%)以下で、安全度のレベルが「高」である場合に、電源制御装置1から出力される。そのため、ステップS405における退避走行制御の終了により、車両は、安全性が確保された位置で停止することができる。
【0151】
また、コントローラ61は、車両が安全な場所に停止したと判定した場合(ステップS402,Yes)、ステップS405の処理において退避走行制御を終了する。
【0152】
上述してきたように、第1実施形態に係る電源制御装置(制御装置の一例)1は、自動運転機能を有する車両に搭載され、メイン電源10が失陥した場合にバックアップ電源20の電力を負荷に給電させるフェイルセーフ制御を行うコントローラ3を備える。コントローラ3は、フェイルセーフ制御において、バックアップ電源20の充電残量(SOC)が0より大きい値に設定された下限値に低下するまで負荷に給電させる。また、コントローラ3は、車両の周辺の安全度が予め設定されたレベル以下(例えば安全度のレベルが「中」あるいは「低」である場合、バックアップ電源20の充電残量が下限値以下になっても負荷への給電を継続させる。これにより、バックアップ電源20の電池劣化を抑制しつつ、フェイルセーフ制御および退避走行制御を安全に終了させることができる。
【0153】
[2.変形例]
次に、変形例に係る電源制御装置1について説明する。上記した第1実施形態では、安全度が、車両の速度、走行路の交通量、後続車両との車間距離、走行路の形状、車線数、車線幅、天候、対向車線の交通量などの各情報に応じて算出されるようにした。
【0154】
変形例に係る電源制御装置1では、これらの各情報のうち一部の情報に応じて安全度を算出する。なお、安全度の算出に用いられる情報の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。安全度の算出に用いられる情報は、例えば車両停止時の安全性に影響を与え易いと推定される情報とされるが、これに限定されるものではない。
【0155】
一例として、電源制御装置1のコントローラ3は、車両と後続車両との車間距離を示す情報のみに応じて安全度を算出する。具体的には、コントローラ3は、車間距離を示す情報に応じて、
図9に示す安全度テーブルを参照し、安全度を算出する。そして、コントローラ3は、算出した安全度が2(すなわち車間距離が「長」)の場合、車両は後続車両に影響を与えることなく比較的安全に停止できることから、安全度のレベルは、車両が比較的安全に停止できることを示す「高」であると判定する。また、コントローラ3は、算出した安全度が1(すなわち車間距離が「中」)の場合、安全度のレベルは「中」であると判定する。コントローラ3は、算出した安全度が0(すなわち車間距離が「短」)の場合、安全度のレベルは「低」であると判定する。
【0156】
このように、コントローラ3は、1つの情報(ここでは後続車両との車間距離を示す情報)のみであっても、安全度を算出することができる。また、安全度の算出に用いられる情報が1つであるため、コントローラ3において、安全度算出による処理負荷の増加を抑制することができる。
【0157】
なお、上記では、安全度の算出に用いられる1つの情報が、後続車両との車間距離を示す情報である例を示したが、これに限られず、走行路の形状、走行路の交通量などその他の情報であってもよい。
【0158】
他の例として、電源制御装置1のコントローラ3は、車両と後続車両との車間距離を示す情報、および、走行路の形状を示す情報の2つの情報に応じて安全度を算出する。具体的には、コントローラ3は、車間距離を示す情報に応じて、
図9に示す安全度テーブルを参照し、安全度を算出する。コントローラ3は、走行路の形状を示す情報に応じて、
図10に示す安全度テーブルを参照し、安全度を算出する。
【0159】
そして、コントローラ3は、車間距離に応じて算出した安全度、および、走行路の形状に応じて算出された安全度において、最小値が2の場合、車両は比較的安全に停止できることから、安全度のレベルは「高」であると判定する。また、コントローラ3は、車間距離に応じて算出した安全度、および、走行路の形状に応じて算出された安全度において、最小値が1の場合、安全度のレベルは「中」であると判定する。コントローラ3は、車間距離に応じて算出した安全度、および、走行路の形状に応じて算出された安全度において、最小値が0の場合、安全度のレベルは「低」であると判定する。
【0160】
このように、コントローラ3は、2つの情報(ここでは後続車両との車間距離を示す情報、および、走行路の形状を示す情報)を組み合わせても、安全度を算出することができる。また、安全度の算出に用いられる情報が2つであるため、コントローラ3において、安全度算出による処理負荷の増加を抑制することができる。
【0161】
なお、上記では、安全度の算出に用いられる2つの情報が、後続車両との車間距離を示す情報、および、走行路の形状を示す情報である例を示したが、これに限られず、走行路の交通量、車線数などその他の情報であってもよい。
【0162】
[3.第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る電源制御装置1について
図19を参照して説明する。
図19は、第2実施形態に係る電源制御装置1が実行するフェイルセーフ制御中における、バックアップ電源20の充電残量(SOC)の状態を示す図である。なお、以下においては、第1実施形態と共通の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0163】
図19に示すように、例えば安全度が予め設定されたレベル以下の「中」であり、車両停止時の安全性が確保されていない場合、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが下限値(20%)以下になってもフェイルセーフ制御を継続させる。言い換えると、
図19に破線で示すように、コントローラ3は、時刻T2以降もフェイルセーフ制御を継続させる。これにより、退避走行制御も継続される。
【0164】
その後、バックアップ電源20のSOCが、下限値より低い値(ここでは10%)以下にまで低下した場合(時刻T2a)、フェイルセーフ制御を終了する。すなわち、コントローラ3は、バックアップ電源20の電力の負荷への給電を停止する。また、コントローラ3は、フェイルセーフ制御を終了する際、自動運転制御装置60のコントローラ61に対して退避走行終了指示を出力する。コントローラ61は、退避走行終了指示を受け付けると、退避走行制御を終了する。
【0165】
このように、コントローラ3は、例えば安全度が予め設定されたレベル以下の「中」である場合、バックアップ電源20のSOCが下限値より低い値(10%)まで低下した時点(時刻T2a)で、フェイルセーフ制御を終了する。これにより、バックアップ電源20の電池劣化を可能な限り抑制しつつ、フェイルセーフ制御および退避走行制御を継続させることが可能になる。
【0166】
なお、第2実施形態に係るコントローラ3は、安全度のレベルが「中」で、バックアップ電源20のSOCが下限値(20%)以下になった場合、給電する負荷を制限しないようにするが、これに限定されるものではない。すなわち、コントローラ3は、安全度のレベルが「中」で、バックアップ電源20のSOCが下限値(20%)以下になった場合、給電する負荷を制限してもよい。
【0167】
次に、第2実施形態に係る電源制御装置1のコントローラ3が実行するメイン電源失陥時処理について
図20を参照して説明する。
図20は、第2実施形態におけるメイン電源失陥時処理の一例を示すフローチャートである。
【0168】
図20に示すように、コントローラ3は、ステップS303の処理において安全度のレベルが「中」であると判定した場合、閾値THを、下限値より低い値(ここでは10%)に設定する(ステップS307a)。
【0169】
次いで、コントローラ3は、ステップS304の処理において、バックアップ電源20のSOCが閾値TH(10%)以下であるか否かを判定する。コントローラ3は、ステップS304において、バックアップ電源20のSOCが閾値TH(10%)以下でないと判定した場合、ステップS302に戻り、ステップS302以降の処理を再度実行する。
【0170】
すなわち、安全度のレベルが「中」である場合、閾値THは下限値(20%)から、下限値より低い10%に設定されるため、バックアップ電源20のSOCが下限値(20%)以下になっても負荷への給電は継続される。これにより、車両停止時の安全性が確保されていない状態では、フェイルセーフ制御および退避走行制御を継続させることができ、例えば車両が退避場所に到達したときなどにフェイルセーフ制御および退避走行制御を安全に終了させることが可能になる。
【0171】
コントローラ3は、ステップS304において、バックアップ電源20のSOCが閾値TH(10%)以下であると判定した場合、安全度のレベルが「高」または「中」であるか否かを判定する(ステップS305a)。ここでの安全度のレベルは「中」であるため、コントローラ3は、安全度のレベルが「中」であると判定する(ステップS305a,Yes)。そして、コントローラ3は、ステップS306において、フェイルセーフ制御を終了し、退避走行終了指示を自動運転制御装置60のコントローラ61に出力する。具体的には、コントローラ3は、フェイルセーフ制御を終了することで、バックアップ電源20の電力の負荷への給電を停止する。また、コントローラ3は、退避走行終了指示を自動運転制御装置60に出力することで、自動運転制御装置60のコントローラ61は退避走行制御を終了する。
【0172】
これにより、バックアップ電源20のSOCは、下限値以下となるが、閾値TH(10%)までしか低下しないため、バックアップ電源20の電池劣化を可能な限り抑制することができる。
【0173】
また、安全度のレベルが「低」であるような場合、コントローラ3は、安全度のレベルが「高」または「中」ではないと判定し(ステップS305a,No)、そのまま処理を終了する。
【0174】
[4.第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る電源制御装置1について
図21を参照して説明する。
図21は、第3実施形態に係る電源制御装置1が実行するフェイルセーフ制御中における、バックアップ電源20の充電残量(SOC)の状態を示す図である。
【0175】
図21に示すように、第3実施形態に係るコントローラ3は、バックアップ電源20のSOCがある程度低下した段階で、安全度の算出を開始する。具体的には、第3実施形態では、上記した下限値(20%)より高い閾値THxが設定される。
図21では、閾値THxは30%に設定されるが、これは例示であって限定されるものではく、任意の値に設定可能である。
【0176】
そして、第3実施形態に係るコントローラ3は、フェイルセーフ制御において、バックアップ電源20のSOCが閾値THx(ここでは30%)以下の場合に安全度を算出する。
【0177】
これにより、バックアップ電源20のSOCが閾値THx(30%)以下になるまで、安全度の算出は行われない。そのため、第3の実施形態にあっては、コントローラ3において安全度を算出する処理負荷を、安全度を常時算出するような場合に比べて軽減させることができる。
【0178】
次に、第3実施形態に係る電源制御装置1のコントローラ3が実行するメイン電源失陥時処理について
図22を参照して説明する。
図22は、第2実施形態におけるメイン電源失陥時処理の一例を示すフローチャートである。
【0179】
図22に示すように、コントローラ3は、まず現在のバックアップ電源20のSOCが、下限値(20%)より高いに設定された閾値THx(ここでは30%)以下であるか否かを判定する(ステップS301a)。
【0180】
コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが閾値THx(30%)以下でないと判定した場合(ステップS301a,No)、例えばステップS302の安全度の算出処理などをスキップする。
【0181】
一方、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが閾値THx(30%)以下であると判定した場合(ステップS301a,Yes)、ステップS301以降の処理に進み、例えばステップS302において安全度を算出する。
【0182】
また、上記した各実施形態では、車両の速度、走行路の交通量、後続車両との車間距離、走行路の形状、車線数、車線幅、天候、対向車線の交通量などの各情報に応じて安全度算出するようにした。かかる算出処理において、各情報のうち、車両停止時の安全性に影響を与える度合いの高い情報に対して重み付けを行うように構成してもよい。例えば、後続車両との車間距離が他の情報に比べて、車両停止時の安全性に影響を与える度合いの高い場合、後続車両との車間距離を示す情報を重み付けして、安全度を算出する処理が行われてもよい。
【0183】
[5.付記]
付記として、本発明の特徴を以下の通り示す。
(1)
自動運転機能を有する車両に搭載され、メイン電源が失陥した場合にバックアップ電源の電力を負荷に給電させるフェイルセーフ制御を行うコントローラを備えた制御装置であって、
前記コントローラは、
前記フェイルセーフ制御において、前記バックアップ電源の充電残量が0より大きい値に設定された下限値に低下するまで前記負荷に給電させるとともに、前記車両の周辺の安全度が予め設定されたレベル以下である場合、前記バックアップ電源の充電残量が前記下限値以下になっても前記負荷への給電を継続させる、
制御装置。
(2)
前記フェイルセーフ制御の開始から前記バックアップ電源の充電残量が前記下限値に低下するまでの時間は、前記安全度が前記レベルより高い状況下において、給電された前記負荷による退避走行が完了すると予め想定された想定時間以上に設定される、
(1)に記載の制御装置。
(3)
前記負荷は複数あり、
前記コントローラは、
前記バックアップ電源の充電残量が前記下限値以下になっても前記負荷への給電を継続させる場合、複数の前記負荷のうち給電する前記負荷を制限する、
(1)または(2)に記載の制御装置。
(4)
前記コントローラは、
前記安全度が低くなるにつれて、制限される前記負荷の数を減少させる、
(3)に記載の制御装置。
(5)
前記コントローラは、
給電する前記負荷を制限することを通知する、
(3)または(4)に記載の制御装置。
(6)
前記安全度は、
前記車両の速度が高くなるにつれて低くなる、
(1)から(5)のいずれか一つに記載の制御装置。
(7)
前記安全度は、
前記車両が走行する道路の交通量が多くなるにつれて低くなる、
(1)から(6)のいずれか一つに記載の制御装置。
(8)
前記安全度は、
前記車両と前記車両に後続する他車両との車間距離が短くなるにつれて低くなる、
(1)から(7)のいずれか一つに記載の制御装置。
(9)
前記安全度は、
前記車両が走行する道路がカーブ路である場合に低くなる、
(1)から(8)のいずれか一つに記載の制御装置。
(10)
前記安全度は、
前記車両が走行する道路の車線数が少なくなるにつれて低くなる、
(1)から(9)のいずれか一つに記載の制御装置。
(11)
前記安全度は、
前記車両が走行する道路の車線幅が狭くなるにつれて低くなる、
(1)から(10)のいずれか一つに記載の制御装置。
(12)
前記安全度は、
前記車両が走行する道路における天候が不良である場合に低くなる、
(1)から(11)のいずれか一つに記載の制御装置。
(13)
前記安全度は、
前記車両が走行する道路の車線数が1車線であり、かつ、当該道路と対向する対向車線が存在する場合、前記対向車線の交通量が多くなるにつれて低くなる、
(1)から(12)のいずれか一つに記載の制御装置。
(14)
前記コントローラは、
前記フェイルセーフ制御において、前記バックアップ電源の充電残量が前記下限値より高い閾値以下の場合に前記安全度を算出する、
(1)から(13)のいずれか一つに記載の制御装置。
(15)
自動運転機能を有する車両に搭載され、メイン電源が失陥した場合にバックアップ電源の電力を負荷に給電させるフェイルセーフ制御を行わせる制御装置のコントローラが実行する制御方法であって、
前記フェイルセーフ制御において、前記バックアップ電源の充電残量が0より大きい値に設定された下限値に低下するまで前記負荷に給電させるとともに、前記車両の周辺の安全度が予め設定されたレベル以下である場合、前記バックアップ電源の充電残量が前記下限値以下になっても前記負荷への給電を継続させる、
制御方法。
【0184】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0185】
1 電源制御装置
3 コントローラ
10 メイン電源
12 発電機
20 バックアップ電源
60 自動運転制御装置
70 通知装置
101 第1走行負荷
102 第2走行負荷
103 第3走行負荷
104 第1一般負荷
105 第2一般負荷