(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139583
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】浴室洗い場床
(51)【国際特許分類】
E03C 1/20 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
E03C1/20 A
E03C1/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050592
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】山本 康徳
(72)【発明者】
【氏名】林田 猛
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061CA02
2D061CB10
2D061CC05
2D061CC12
(57)【要約】
【課題】クッション層と表面層との間に空気が溜まるのを抑制できる浴室洗い場床を提供する。
【解決手段】基材層と、前記基材層の上に位置する床面層と、を備え、前記床面層は、前記基材層の上に位置するクッション層と、前記クッション層の上に位置する表面層と、を有し、前記クッション層と前記表面層との間には、前記床面層の側面に空気抜き口を有する空気流通路が設けられていることを特徴とする浴室洗い場床。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層の上に位置する床面層と、を備え、
前記床面層は、
前記基材層の上に位置するクッション層と、
前記クッション層の上に位置する表面層と、
を有し、
前記クッション層と前記表面層との間には、前記床面層の側面に空気抜き口を有する空気流通路が設けられていることを特徴とする浴室洗い場床。
【請求項2】
前記クッション層の線膨張係数から前記表面層の線膨張係数を引いた値は、前記クッション層の線膨張係数から前記基材層の線膨張係数を引いた値よりも大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載の浴室洗い場床。
【請求項3】
前記空気流通路および前記空気抜き口は、前記クッション層に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の浴室洗い場床。
【請求項4】
前記クッション層の厚さ寸法は、前記空気流通路の深さ寸法の2倍以上となっていることを特徴とする請求項3に記載の浴室洗い場床。
【請求項5】
前記空気流通路は、前記床面層の前記側面に沿って延びていることを特徴とする請求項1に記載の浴室洗い場床。
【請求項6】
前記空気流通路は、格子状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の浴室洗い場床。
【請求項7】
前記表面層は、水を排水させるための排水口を有し、
前記クッション層は、前記排水口に対応する位置に開口部を有し、
前記クッション層の上面は、前記開口部に向けて下方に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の浴室洗い場床。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、浴室洗い場床に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室洗い場床において、基材層の上にクッション層および表面層を設けたものが知られている。基材層には、基材層と表面層との間の空気を逃がす空気抜き流路を設けている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基材層に空気抜き流路を設けた場合には、基材層の強度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、クッション層と表面層との間に空気が溜まるのを抑制できる浴室洗い場床を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、基材層と、前記基材層の上に位置する床面層と、を備え、前記床面層は、前記基材層の上に位置するクッション層と、前記クッション層の上に位置する表面層と、を有し、前記クッション層と前記表面層との間には、前記床面層の側面に空気抜き口を有する空気流通路が設けられていることを特徴とする浴室洗い場床である。
【0007】
この浴室洗い場床によれば、クッション層と表面層との間に空気流通路を設けることにより、クッション層と表面層とを貼り付けるときに、クッション層と表面層との間に空気溜まりが発生するのを抑制できる。さらに、浴室内の温度差により、各層が膨張・収縮しても、応力が空気流通路で分散されるため、膨張・収縮を抑制することができ、層間に隙間が生じるのを抑制できる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記クッション層の線膨張係数から前記表面層の線膨張係数を引いた値は、前記クッション層の線膨張係数から前記基材層の線膨張係数を引いた値よりも大きくなっていることを特徴とする浴室洗い場床である。
【0009】
この浴室洗い場床によれば、クッション層と表面層との線膨張係数の差がクッション層と基材層との線膨張係数の差よりも大きいため、浴室内の温度変化による各層の膨張・収縮により、クッション層と表面層と間に隙間が生じやすい。しかし、クッション層と表面層との間に設けられた空気流通路により、応力を分散させることができるので、隙間が生じるのを抑制できる。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記空気流通路および前記空気抜き口は、前記クッション層に設けられていることを特徴とする浴室洗い場床である。
【0011】
この浴室洗い場床によれば、基材層や表面層の強度を低下させることなく、クッション層と表面層との間に隙間が生じるのを抑制できる。また、クッション層と表面層との間に隙間が生じると、その隙間を起点にして空気が膨張することにより、表面層の剥離、水の浸入、漏水が生じる場合があり、浴室洗い場床の耐久性の低下につながるおそれがある。この浴室洗い場床によれば、隙間が生じるのが抑制されるので、浴室洗い場床の耐久性を向上させることができる。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、前記クッション層の厚さ寸法は、前記空気流通路の深さ寸法の2倍以上となっていることを特徴とする浴室洗い場床である。
【0013】
この浴室洗い場床によれば、クッション層のクッション性を維持するとともに、クッション層と表面層とを貼り付けたときの空気溜まりの形成を抑制できる。また、空気流通路により、各層の膨張・収縮による応力を分散させることができる。
【0014】
第5の発明は、第1の発明において、前記空気流通路は、前記床面層の前記側面に沿って延びていることを特徴とする浴室洗い場床である。
【0015】
この浴室洗い場床によれば、各層において、最も応力が集中しやすい側面に沿って空気流通路が設けられているので、応力を効率よく分散させて、隙間が生じるのを抑制できる。
【0016】
第6の発明は、第1の発明において、前記空気流通路は、格子状に形成されていることを特徴とする浴室洗い場床である。
【0017】
この浴室洗い場床によれば、クッション層と表面層との間の空気溜まりを空気流通路に導きやすい。従って、空気溜まりが大きくなるのを抑制できる。
【0018】
第7の発明は、第1の発明において、前記表面層は、水を排水させるための排水口を有し、前記クッション層は、前記排水口に対応する位置に開口部を有し、前記クッション層の上面は、前記開口部に向けて下方に傾斜していることを特徴とする浴室洗い場床である。
【0019】
この浴室洗い場床によれば、クッション層と表面層とを接着するときに、クッション層の上面の傾斜により表面層との間に空気が入りやすくても、その空気を空気流通路に逃がすことができる。従って、クッション層と表面層との間に隙間ができるのを抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の態様によれば、クッション層と表面層との間に空気が溜まるのを抑制できる浴室洗い場床を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係る浴室洗い場床を備えた浴室ユニットを示す斜視図である。
【
図2】浴室洗い場床を分解して示す分解斜視図である。
【
図4】浴室洗い場床を
図3中の矢示A-A方向からみた断面図である。
【
図5】浴室洗い場床を
図3中の矢示B-B方向からみた断面図である。
【
図6】第1変形例に係る浴室洗い場床を上方からみた平面図である。
【
図7】第2変形例に係る浴室洗い場床を上方からみた平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係る浴室洗い場床を備えた浴室ユニットを示す斜視図である。
図1に示すように、浴室ユニット1は、浴室洗い場床10と、浴槽60と、壁パネル71a~71fと、を備える。
【0023】
浴槽60の底部の裏面における四隅近傍には、支持脚61が設けられ、その支持脚61を介して、浴槽60は設置面(例えば、建物の床)100の上に設置される。支持脚61の先端側(下端側)にはボルト部が設けられ、そのボルト部を回転させることで支持脚61の高さが調整可能となっている。
【0024】
浴槽60の横の空間における底部に、浴室洗い場床10が設置されている。浴室洗い場床10の表面10aは、浴室外部に水を漏出させない防水性を有する。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加温されたお湯も含むものとする。
【0025】
浴室洗い場床10の裏側(下方側)において、浴槽60との境界部近傍には排水配管62が設けられている。浴室洗い場床10において、例えば浴槽60との境界部近傍には、排水配管62に連通する排水口10hが形成されている。排水口10hが設けられた部分は、下方に窪んでおり、浴室洗い場床10の表面10aには、排水口10hに向けて下向き傾斜した排水勾配が付けられている。また、浴槽60の底部に設けられた図示しない排水口も、排水配管62に接続されている。
【0026】
図1において2点鎖線で表すように、浴槽60のリムの上には壁パネル71a~71cが設置されている。また、浴室洗い場床10の周縁部の上には、壁パネル71d~71fが設置されている。また、壁パネル71fには、図示しないドア取付枠を介してドアが取り付けられる。
【0027】
浴槽60と浴室洗い場床10との境界には、浴槽60における浴室洗い場床10側の側面を覆い隠すバスエプロン67が設けられている。なお、浴槽60の構造によっては、バスエプロン67を設けなくてよいものもある。
【0028】
また、バスエプロン67の長手方向の一端側と、壁パネル71dとの間には小パネル65bが設けられている。また、バスエプロン67の長手方向の他端側と、壁パネル71fとの間には小パネル65aが設けられている。小パネル65a、65bは、必要に応じて設けられ、省略可能である。
【0029】
図2は、浴室洗い場床を分解して示す分解斜視図である。
図2に示すように、浴室洗い場床10は、フレーム体20と、床本体30と、を備える。
【0030】
フレーム体20は、床本体30の下に設けられ、床本体30を下方から支持する。フレーム体20は、外枠21と、管体22と、支持脚23と、を有する。外枠21、管体22、および支持脚23は、それぞれ、金属製である。
【0031】
外枠21は、フレーム体20の外形(アウトライン)を形成する。管体22は、外枠21の内側を左右方向または前後方向に延びており、外枠21の内部を格子状に仕切る。管体22は、例えば床本体30の内側部分を支持する。支持脚23は、管体22の下面に設けられる。支持脚23は、管体22の下面から下方(設置面側)に向かって延びている。支持脚23は、外枠21の下面に設けられてもよい。
図2に示すように、この例では、5つの支持脚23が設けられているが、支持脚23の数は、5つ以上であってもよいし、5つ未満であってもよい。
【0032】
フレーム体20は、各支持脚23を介して設置面100の上に設置される。各支持脚23の先端側(下端側)にはボルト部が設けられ、そのボルト部を回転させることで各支持脚23の高さが調整可能となっている。各支持脚23の高さ調整により、フレーム体20の上に支持される床本体30の設置高さや水平度が調整される。
【0033】
フレーム体20は、排水口10hに対応する位置に設けられた開口部20hを有する。開口部20hは、外枠21の内側に設けられたプレートに形成され、プレートを厚さ方向(上下方向)に貫通する。
【0034】
次に、フレーム体20の上に載置される床本体30について、
図2~
図4を参照して説明する。
図3は、浴室洗い場床を上方からみた平面図である。
図4は、浴室洗い場床を
図3中の矢示A-A方向からみた断面図である。
図5は、浴室洗い場床を
図3中の矢示B-B方向からみた断面図である。
図3に示すように、床本体30は、排水口10h側(浴槽60側)を「前」とし、その反対側を「後」、およびその前後に対して「左」、「右」として説明する。
【0035】
床本体30は、フレーム体20の上に載置され、フレーム体20により支持される。床本体30は、基材層31と、基材層31の上に位置する床面層32と、を備えている。床面層32は、基材層31の上に位置するクッション層33と、クッション層33の上に位置する表面層34と、を有している。すなわち、床本体30は、下側から基材層31、クッション層33、表面層34の順で積層されている。
【0036】
基材層31は、床本体30の最下部に位置し、クッション層33および表面層34を支持する。基材層31は、例えば周縁部が上側に折り曲げられた浅底の器状(パン状)に形成されている。
【0037】
基材層31は、排水口10hに対応する位置に設けられた開口部31hを有する。開口部31hは、開口部31hは、基材層31を厚さ方向(上下方向)に貫通している。また、基材層31の上面31aには、開口部31hに向けて下方に傾斜した排水勾配が形成されている。基材層31を設けることで、浴室洗い場床10(床本体30)の強度を高めることができる。
【0038】
基材層31は、例えば熱可塑性樹脂からなり、強度、断熱性、耐久性などを考慮して選ばれる。基材層31は、例えば鋼材がインサートされた、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン、発泡ポリアミド、発泡ポリエステルなどを用いることができる。また、基材層31は、着色剤、抗菌剤、耐侯剤、顔料、充填剤、架橋剤、発泡剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0039】
クッション層33は、基材層31の上、かつ表面層34の下に位置している。つまり、クッション層33は、基材層31と表面層34との間に設けられている。クッション層33は、基材層31の周縁部よりも内側に設けられている。クッション層33は、基材層31とは別体となっており、基材層31の上面31aに接着されている。なお、基材層31とクッション層33とは、一体的に形成されていてもよい。
【0040】
クッション層33を設けることで、使用者に床面の柔らかい使用感(踏み心地)を与えることができる。クッション層33の硬さ(柔らかさ)を変えることで、床面の硬さ(柔らかさ)の仕様を変更することができる。
【0041】
クッション層33は、排水口10hに対応する位置に開口部33hを有する。開口部33hは、クッション層33を厚さ方向(上下方向)に貫通し、基材層31の開口部31hと連通している。また、
図4に示すように、クッション層33の上面33aは、開口部33hに向けて下方に傾斜している。すなわち、クッション層33の上面33aには、開口部33hに向けて下方に傾斜した排水勾配が形成されている。
【0042】
クッション層33は、例えば熱可塑性樹脂からなる発泡体となっている。基材層31の線膨張係数とクッション層33の線膨張係数とは、ほぼ同じ値となっている。これにより、基材層31とクッション層33とは、温度変化による膨張、収縮の影響を可及的に小さくすることができ、密着性を高めることができる。クッション層33の上面33aには、後述の空気流通路35が形成されている。
【0043】
表面層34は、クッション層33の上に位置している。換言すれば、表面層34は、クッション層33を介して基材層31の上に設けられている。表面層34は、基材層31およびクッション層33を覆い、浴室洗い場床10の表面10aを形成する。表面層34は、浴室洗い場床10の表面10aに外観意匠性および防水性を与える。
【0044】
表面層34は、排水口10hに対応する位置に設けられた開口部34hを有する。開口部34hは、表面層34を厚さ方向(上下方向)に貫通し、クッション層33の開口部33hおよび基材層31の開口部31hと連通している。また、表面層34の上面34aには、開口部34hに向けて下方に傾斜した排水勾配が形成されている。これにより、表面層34の上面34aは、排水口10h(開口部34h)に向けて水が流れるようになっている。表面層34の上面34aは、浴室洗い場床10の表面10aを形成している。
【0045】
表面層34には、例えば防水性および可撓性を有する軟質樹脂シート材が用いられる。表面層34の上面34aには、浴室洗い場床10の表面10aの意匠性や水はけ性を向上させるために、凹凸や柄模様を設ける加工が施されていてもよい。
【0046】
フレーム体20、基材層31、クッション層33、および表面層34は、それぞれの開口部20h、31h、33h、34hの位置を合わせて重ねられる。各開口部20h、31h、33h、34hの内側には、排水ピットが設けられる。排水ピットは、樹脂により形成され、非透水性を有する。排水ピットの内側には、排水口10hが設けられる。この排水口10hは、排水配管62と接続される。これにより、浴室洗い場床10(床本体30)の表面10aに流れた水が、排水ピットなどを介して排水配管62に排水される。
【0047】
クッション層33と表面層34との間には、床面層32の側面32aに空気抜き口35aを有する空気流通路35が設けられている。この例では、空気流通路35および空気抜き口35aは、クッション層33に設けられている。具体的には、空気流通路35は、クッション層33の上面33aから下方に向けて凹状に窪んだ溝部として形成されている。空気流通路35の上方は、表面層34により閉塞されている。
図3~
図5に示すように、空気流通路35は、クッション層33の側面33bに空気抜き口35aを有している。
【0048】
図4、
図5に示すように、クッション層33の厚さ寸法t1は、空気流通路35の深さ寸法t2の2倍以上となっている。これにより、クッション層33のクッション性を維持できる。また、クッション層33と表面層34とを貼り付けたときの空気溜まりを空気流通路35に逃がすことができるので、クッション層33と表面層34との間の空気溜まりを低減させることができる。また、クッション層33が収縮した場合の応力を空気流通路35により分散させることができるので、クッション層33と表面層34とが剥離するのを抑制できる。
【0049】
図3に示すように、空気流通路35は、クッション層33の側面33b(床面層32の側面32a)に沿って延びる外側通路36と、外側通路36内を延びる第1通路37と、外側通路36内を第1通路37とは異なる方向に延びる第2通路38と、クッション層33の側面33bに向けて延びる排気通路39と、を有している。
【0050】
図3に示すように、各外側通路36は、クッション層33の各側面33bに対して平行に延びている。各外側通路36は、クッション層33の外枠に沿って連続している。これにより、全体的な外側通路36の形状は、クッション層33の外形形状と類似している。
【0051】
床面層32は、膨張や収縮により外縁側でズレが発生しやすくなる。外側通路36を設けることで、床面層32の外縁に生じる応力を分散させることができ、クッション層33と表面層34との間に隙間が生じるのを低減できる。
【0052】
第1通路37は、外側通路36内に位置して左右方向に延びている。各第1通路37は、左右方向に位置する外側通路36に接続されている。すなわち、各第1通路37は、左側に位置する外側通路36から右側に位置する外側通路36に向けて延びている。
【0053】
第2通路38は、外側通路36内に位置して前後方向に延びている。各第2通路38は、前後方向に位置する外側通路36に接続されている。すなわち、各第2通路38は、前側に位置する外側通路36から後側に位置する外側通路36に向けて延びている。第1通路37および第2通路38の本数は、浴室洗い場床10の広さや、クッション性および耐久性などを考慮して設定されている。
【0054】
第1通路37と第2通路38とは、同一平面上で直交するように形成されている。すなわち、空気流通路35は、第1通路37と第2通路38とにより、平面視で格子状に形成されている。これにより、クッション層33と表面層34との間に発生した空気溜まりを効率よく第1流路37または第2通路38に導くことができる。その結果、クッション層33と表面層34との間で空気溜まりが大きくなるのを抑制できる。
【0055】
排気通路39は、外側通路36からクッション層33の側面33bに向けて延びている。排気通路39は、クッション層33の側面33bの開口が空気抜き口35aとなっている。この例では、排気通路39は、前側に位置する外側通路36からクッション層33の前側の側面に向けて延びている。なお、排気通路39は、クッション層33の他の側面33bに向けて延びていてもよい。また、排気通路39は、第1通路37や第2通路38からクッション層33の側面33bに向けて延びていてもよい。
【0056】
クッション層33と表面層34との間に発生した空気溜まりは、外側通路36、第1通路37、および第2通路38に導かれ、排気通路39を介して外部に排出される。これにより、クッション層33と表面層34とが剥離してしまうのを抑制できる。
【0057】
また、クッション層33の上面33aは、開口部33hに向けて下方に傾斜している。従って、例えば表面層34の上面34aから下方に向けて力が作用したときに、クッション層33の上面33aには、横方向の力が作用することになる。そうすると、クッション層33と表面層34とのズレにより、クッション層33と表面層34との間に空気溜まりが発生するおそれがある。
【0058】
空気流通路35は、このように発生した空気溜まりも外部に向けて排出させることができる。その結果、浴室ユニット1の使用における空気溜まりが大きくなるのを抑制できるので、長期にわたってクッション性の低下を抑制できる。
【0059】
次に、基材層31、クッション層33、および表面層34のそれぞれの線膨張係数に基づく各層間のズレの発生について説明する。
【0060】
基材層31の線膨張係数は、クッション層33の線膨張係数よりも小さく、表面層34の線膨張係数よりも大きくなっている。従って、クッション層33の線膨張係数から表面層34の線膨張係数を引いた値は、クッション層33の線膨張係数から基材層31の線膨張係数を引いた値よりも大きくなっている。
【0061】
その結果、浴室ユニット1を使用しているときの温度変化により、クッション層33と基材層31との間よりもクッション層33と表面層34との間の方がズレやすく、隙間ができやすい。このような場合に、空気流通路35は、クッション層33と表面層34との間で応力を分散させることができるので、隙間が発生するのを低減できる。
【0062】
ここで、基材層31に空気流通路を設けた場合には、基材層31の強度が低下してしまうおそれがある。また、基材層とクッション層とを分割して間に空間を設けて積層した場合には、積層時の位置合わせが煩雑であり、基材層だけでなくクッション層の強度も低下してしまうおそれがある。
【0063】
また、クッション層33は、発泡体からなり、かつ上面33aに排水勾配を有している。一方、表面層34は、樹脂材料からなるため、クッション層33に表面層34を貼り付ける場合に、表面層34の方が硬く、クッション層33の上面33aの排水勾配の形状に追従しにくい。このため、クッション層33と基材層31との間よりも、クッション層33と表面層34との間の方が空気が混入しやすい。クッション層33と表面層34との間に空気が入ると、浴室ユニット1の使用時にその空気が膨張することで、表面層34がクッション層33から剥がれてしまうおそれがある。
【0064】
また、浴室ユニット1の使用時には、浴室内の温度変化により、各層が膨張・収縮する。特に、樹脂材料からなる表面層34と、発泡体からなるクッション層33との線膨張の差が大きいため、この2層間に隙間ができやすい。クッション層33と表面層34との間に空気が入ると、表面層34がクッション層33から剥がれてしまうおそれがある。
【0065】
すなわち、浴室洗い場床10は、製造時においても、使用時においても、クッション層33と表面層34との間に空気が混入しやすくなっている。そこで、本実施形態による浴室洗い場床10によれば、クッション層33と表面層34との間に空気流通路35を設けている。これにより、基材層31の強度を低下させることなく、浴室洗い場床10の各層の剥がれやズレを抑制できる。
【0066】
図6は、第1変形例に係る浴室洗い場床を上方からみた平面図である。
図7は、第2変形例に係る浴室洗い場床を上方からみた平面図である。
上述した実施形態では、空気流通路35の第1通路37と第2通路38とが同一平面上で直交している場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明の態様はこれに限らず、例えば
図6に示す第1変形例のように、空気流通路50は、第1通路51と、第1通路51と異なる方向に延びる第2通路52とにより、ひし形状を組み合わせた形状となっていてもよい。なお、第1変形例では、床面層32の後側の側面に向けて排気通路39が設けられている。
【0067】
また、例えば
図7に示す第2変形例のように、空気流通路55は、第1通路37、第2通路38に加えて、斜め方向に延びる第3通路56と、第4通路57とにより、三角形状を組み合わせた形状となっていてもよい。空気流通路は、クッション層33と表面層34との間の空気を側面から外部に排出できれば、全体的にどのような形状となっていてもよい。なお、第2変形例では、床面層32の左右側の側面に向けて排気通路39が設けられている。
【0068】
また、上述した実施形態では、クッション層33に空気流通路35が設けられている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明の態様はこれに限らず、例えば表面層34の下面に空気流通路が設けられていてもよい。また、クッション層33と表面層34との間の接着層(図示せず)に空気流通路が設けられていてもよい。また、クッション層33と表面層34との両方に空気流通路が設けられていてもよい。
【0069】
実施形態は、以下の構成を含んでもよい。
(構成1)
基材層と、
前記基材層の上に位置する床面層と、を備え、
前記床面層は、
前記基材層の上に位置するクッション層と、
前記クッション層の上に位置する表面層と、
を有し、
前記クッション層と前記表面層との間には、前記床面層の側面に空気抜き口を有する空気流通路が設けられていることを特徴とする浴室洗い場床 。
(構成2)
前記クッション層の線膨張係数から前記表面層の線膨張係数を引いた値は、前記クッション層の線膨張係数から前記基材層の線膨張係数を引いた値よりも大きくなっていることを特徴とする構成1に記載の浴室洗い場床。
(構成3)
前記空気流通路および前記空気抜き口は、前記クッション層に設けられていることを特徴とする構成1または2に記載の浴室洗い場床。
(構成4)
前記クッション層の厚さ寸法は、前記空気流通路の深さ寸法の2倍以上となっていることを特徴とする構成3に記載の浴室洗い場床。
(構成5)
前記空気流通路は、前記床面層の前記側面に沿って延びていることを特徴とする構成1~4のいずれか1つに記載の浴室洗い場床。
(構成6)
前記空気流通路は、格子状に形成されていることを特徴とする構成1~5のいずれか1つに記載の浴室洗い場床。
(構成7)
前記表面層は、水を排水させるための排水口を有し、
前記クッション層は、前記排水口に対応する位置に開口部を有し、
前記クッション層の上面は、前記開口部に向けて下方に傾斜していることを特徴とする構成1~6のいずれか1つに記載の浴室洗い場床。
【0070】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、浴室洗い場床などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0071】
1 浴室ユニット
10 浴室洗い場床
10a 表面
10h 排水口
20 フレーム体
20h 開口部
21 外枠
22 管体
23 支持脚
30 床本体
31 基材層
31a 上面
31h 開口部
32 床面層
32a 側面
33 クッション層
33a 上面
33b 側面
33h 開口部
34 表面層
34a 上面
34h 開口部
35 空気流通路
35a 空気抜き口
36 外側通路
37 第1通路
38 第2通路
39 排気通路
50 空気流通路
51 第1通路
52 第2通路
55 空気流通路
56 第3通路
57 第4通路
60 浴槽
61 支持脚
62 排水配管
65a 小パネル
65b 小パネル
67 バスエプロン
71a~71f 壁パネル
100 設置面