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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139584
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】成型体製造装置及び成型体製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20241002BHJP
   C01B 33/155 20060101ALI20241002BHJP
   B01J 20/281 20060101ALI20241002BHJP
   B28B 3/20 20060101ALN20241002BHJP
   C04B 35/624 20060101ALN20241002BHJP
【FI】
C04B38/00 304Z
C01B33/155
B01J20/281 X
B28B3/20 E
C04B35/624
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050593
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大迫 隆男
(72)【発明者】
【氏名】井出 竹則
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 将吾
(72)【発明者】
【氏名】福本 博
(72)【発明者】
【氏名】渡部 慎也
【テーマコード(参考)】
4G019
4G054
4G072
【Fターム(参考)】
4G019GA04
4G054AA05
4G054AA06
4G054AB08
4G054BA25
4G054BA37
4G054BA42
4G054BA62
4G054BA64
4G054BA76
4G054BD01
4G054BD11
4G054BD15
4G054BD18
4G054BE03
4G054BE04
4G054DA01
4G054DA02
4G054DA03
4G054DA06
4G072AA28
4G072BB01
4G072CC05
4G072EE05
4G072EE06
4G072EE07
4G072GG01
4G072GG03
4G072GG05
4G072HH30
4G072LL11
4G072LL15
4G072MM01
4G072PP03
4G072QQ02
4G072RR05
4G072RR12
(57)【要約】
【課題】成型容器内部に成型された成型体を、成型容器内部から安定して効率的に排出することができる成型体製造装置及び成型体製造方法を提供する。
【解決手段】原料液が注入され、成型体が内部に成型される成型部と、成型部に液体を供給する液体供給部と、成型部に気体を供給する気体供給部とを備え、成型部に、液体供給部と気体供給部から液体と気体をそれぞれ供給することによって、成型体を成型部から排出するように構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料液が注入され、成型体が内部に成型される成型部と、
前記成型部に液体を供給する液体供給部と、
前記成型部に気体を供給する気体供給部と、
を備える成型体製造装置であって、
前記成型部に、前記液体供給部と前記気体供給部から前記液体と前記気体をそれぞれ供給することによって、前記成型体を前記成型部から排出するように構成する成型体製造装置。
【請求項2】
前記成型部に、前記液体供給部から前記液体を供給した後に、前記気体供給部から前記気体を供給するように構成する、請求項1に記載の成型体製造装置。
【請求項3】
前記気体供給部から供給される前記気体の圧力が、0.01MPa以上0.5MPa以下である、請求項1に記載の成型体製造装置。
【請求項4】
前記液体供給部から供給される、前記成型部の内部空間の径方向の断面積の合計に対する前記液体の流量が、1L/min/m2以上25L/min/m2以下である、請求項1に記載の成型体製造装置。
【請求項5】
前記成型部の内径が、0.5mm以上100mm以下である、請求項1に記載の成型体製造装置。
【請求項6】
前記成型部の長さが、50mm以上5000mm以下である、請求項1に記載の成型体製造装置。
【請求項7】
前記成型部の内部空間の径方向の断面積に対する、前記成型体の径方向の断面積の割合が30%以上99%以下である、請求項1に記載の成型体製造装置。
【請求項8】
少なくとも2つの前記成型部を有し、前記成型部の内部空間の径方向の断面積の合計が0.01m2以上である、請求項1に記載の成型体製造装置。
【請求項9】
前記成型部の内部空間の総容積が0.01m3以上10m3以下である、請求項1に記載の成型体製造装置。
【請求項10】
前記成型部を加熱する加熱部をさらに有する、請求項1に記載の成型体製造装置。
【請求項11】
前記成型部から排出された前記成型体を切断する切断部をさらに備える、請求項1から10のいずれかに記載の成型体製造装置。
【請求項12】
成型部の内部に成型された成型体を、液体と気体の両方を用いて、前記成型体を前記成型部から排出する、成型体製造方法。
【請求項13】
前記成型部に、前記液体を供給した後に、前記気体を供給して前記成型体を排出する、請求項12に記載の成型体製造方法。
【請求項14】
前記気体の圧力が、0.01MPa以上0.5MPa以下である、請求項12に記載の成型体製造方法。
【請求項15】
前記成型部の内部空間の径方向の断面積の合計に対する前記液体の流量が、1L/min/m2以上25L/min/m2以下である、請求項12に記載の成型体製造方法。
【請求項16】
前記成型部の内径が、0.5mm以上100mm以下である、請求項12に記載の成型体製造方法。
【請求項17】
前記成型部の長さが、50mm以上5000mm以下である、請求項12に記載の成型体製造方法。
【請求項18】
前記成型部の内部空間の径方向の断面積に対する、前記成型体の径方向の断面積の割合が30%以上99%以下である、請求項12に記載の成型体製造方法。
【請求項19】
少なくとも2つの前記成型部を有し、前記成型部の内部空間の径方向の断面積の合計が0.01m2以上である、請求項12に記載の成型体製造方法。
【請求項20】
前記成型部の内部空間の総容積が0.01m3以上10m3以下である、請求項12に記載の成型体製造方法。
【請求項21】
前記成型部に前記原料液を充填した後、前記成型部を加熱する、請求項12に記載の成型体製造方法。
【請求項22】
前記成型部から排出された前記成型体を切断する、請求項12から請求項21のいずれかに記載の成型体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型体を製造する成型体製造装置及び成型体製造方法に関し、具体的には、成型体が内部に成型される成型部から成型体を効率的に排出することができる成型体製造装置及び成型体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゾルゲル法で合成されるシリカ多孔体は、クロマトグラフィー用分離カラム、酸素担体、触媒担体、吸着材などに広く利用されている。例えば、吸着材として用いる場合、少量では吸着容量に限界があるため、多量のシリカ多孔体が必要になる。このため、ゾルゲル法で合成されるシリカ多孔体を、効率良く大量に製造することが求められている。
【0003】
ゾルゲル法で合成されるシリカ多孔体は、例えば、特許文献1に記載されるように、攪拌容器内で原料を冷却しながら攪拌することで均質なゲルを製造した後、成型容器にゾルを移してゲル化温度まで加熱することでゲルを製造し、製造されたゲルを焼成することによって製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-96960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シリカ多孔体の加工性及び製造面の効率化を考慮すると、多孔体は、例えば、柱状であることが好ましい。このような多孔体は、成型容器(鋳型)に原料液を流し込んで柱状に成型されたゲルを製造し、この柱状のゲル(成型体)を所望の長さに切断した後、焼成することで製造することができる。
【0006】
この場合、多孔体を効率良く大量に製造する観点から、柱状ゲルを押し出しながら適当な長さに連続的に切断していくことが好ましい。本発明者らは、ゲルを成型する成型容器(鋳型)の内部に水を供給し、水流でゲルを押し出し、連続的に切断していく方法を検討したが、水流での押し出しでは成型容器の内部で柱状ゲルが浮いてしまうことが明らかとなった。このことに起因して、成型容器内での柱状ゲルの位置が定まらず、安定して押し出しながら切断することが困難であることが明らかとなった。
【0007】
また、成型容器内に十分な量の水を供給した後に、水の供給を止めてからゲルを切断する方法も検討したが、成型容器内部に溜まった水によって、ゲルが逆流してしまう場合があることが明らかとなった。
【0008】
さらには、成型容器と成型されたゲルとの間に隙間がある場合、水だけで押し出そうとすると、大量の水を流す必要があり、経済的な課題があることが明らかとなった。
【0009】
一方で、成型容器の内部にポンプで空気を送り込み、成型されたゲルを空気によって押し出すことも検討したが、成型が不完全で固化しきらずに成型容器に残留した原料液によって、成型されたゲルが成型容器の内面に張りついてしまい、押し出されない場合があることが明らかとなった。
【0010】
本発明では、このような現状に鑑み、成型容器内部に成型された成型体を、成型容器内部から安定して効率的に排出することができる成型体製造装置及び成型体製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述するような従来技術における課題を解決するために発明されたものであって、本発明の成型体製造装置及び成型体製造方法は、以下のように構成されたものを含む。
【0012】
[1] 原料液が注入され、成型体が内部に成型される成型部と、
前記成型部に液体を供給する液体供給部と、
前記成型部に気体を供給する気体供給部と、
を備える成型体製造装置であって、
前記成型部に、前記液体供給部と前記気体供給部から前記液体と前記気体をそれぞれ供給することによって、前記成型体を前記成型部から排出するように構成する成型体製造装置。
【0013】
[2] 前記成型部に、前記液体供給部から前記液体を供給した後に、前記気体供給部から前記気体を供給するように構成する、[1]に記載の成型体製造装置。
【0014】
[3] 前記気体供給部から供給される前記気体の圧力が、0.01MPa以上0.5MPa以下である、[1]または[2]に記載の成型体製造装置。
【0015】
[4] 前記液体供給部から供給される、前記成型部の内部空間の径方向の断面積の合計に対する前記液体の流量が、1L/min/m2以上25L/min/m2以下である、[1]から[3]のいずれかに記載の成型体製造装置。
【0016】
[5] 前記成型部の内径が、0.5mm以上100mm以下である、[1]から[4]のいずれかに記載の成型体製造装置。
【0017】
[6] 前記成型部の長さが、50mm以上5000mm以下である、[1]から[5]のいずれかに記載の成型体製造装置。
【0018】
[7] 前記成型部の内部空間の径方向の断面積に対する、前記成型体の径方向の断面積の割合が30%以上99%以下である、[1]から[6]のいずれかに記載の成型体製造装置。
【0019】
[8] 少なくとも2つの前記成型部を有し、前記成型部の内部空間の径方向の断面積の合計が0.01m2以上である、[1]から[7]のいずれかに記載の成型体製造装置。
【0020】
[9] 前記成型部の内部空間の総容積が0.01m3以上10m3以下である、[1]から[8]のいずれかに記載の成型体製造装置。
【0021】
[10] 前記成型部を加熱する加熱部をさらに有する、[1]から[9]のいずれかに記載の成型体製造装置。
【0022】
[11] 前記成型部から排出された前記成型体を切断する切断部をさらに備える、[1]から[10]のいずれかに記載の成型体製造装置。
【0023】
[12] 成型部の内部に成型された成型体を、液体と気体の両方を用いて、前記成型体を前記成型部から排出する、成型体製造方法。
【0024】
[13] 前記成型部に、前記液体を供給した後に、前記気体を供給して前記成型体を排出する、[12]に記載の成型体製造方法。
【0025】
[14] 前記気体の圧力が、0.01MPa以上0.5MPa以下である、[12]または[13]に記載の成型体製造方法。
【0026】
[15] 前記成型部の内部空間の径方向の断面積の合計に対する前記液体の流量が、1L/min/m2以上25L/min/m2以下である、[12]から[14]のいずれかに記載の成型体製造方法。
【0027】
[16] 前記成型部の内径が、0.5mm以上100mm以下である、[12]から[15]のいずれかに記載の成型体製造方法。
【0028】
[17] 前記成型部の長さが、50mm以上5000mm以下である、[12]から[16]のいずれかに記載の成型体製造方法。
【0029】
[18] 前記成型部の内部空間の径方向の断面積に対する、前記成型体の径方向の断面積の割合が30%以上99%以下である、[12]から[17]のいずれかに記載の成型体製造方法。
【0030】
[19] 少なくとも2つの前記成型部を有し、前記成型部の内部空間の径方向の断面積の合計が0.01m2以上である、[12]から[18]のいずれかに記載の成型体製造方法。
【0031】
[20] 前記成型部の内部空間の総容積が0.01m3以上10m3以下である、[12]から[19]のいずれかに記載の成型体製造方法。
【0032】
[21] 前記成型部に前記原料液を充填した後、前記成型部を加熱する、[12]から[20]のいずれかに記載の成型体製造方法。
【0033】
[22] 前記成型部から排出された前記成型体を切断する、[12]から[21]のいずれかに記載の成型体製造方法。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、水と空気の両方を用いて、成型部内に成型された成型体を押し出すことにより、成型体を成型部内から安定して効率的に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本実施形態における成型体製造装置の構成を説明するための模式図である。
図2図2は、図1の成型体製造装置の成型部を説明するための模式図であり、図2(a)は成型部の鉛直方向断面図、図2(b)は成型部の水平方向断面図、図2(c)は成型部内部に成型体が存在しない状態の水平方向断面図である。
図3図3は、図1の成型体製造装置を用いて成型体を製造する流れを説明するための模式図である。
図4図4は、図1の成型体製造装置を用いて成型体を製造する流れを説明するための模式図である。
図5図5は、図1の成型体製造装置を用いて成型体を製造する流れを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいて、より詳細に説明する。
図1は、本実施形態における成型体製造装置の構成を説明するための模式図、図2は、図1の成型体製造装置の成型部を説明するための模式図であり、図2(a)は成型部の鉛直方向断面図、図2(b)は成型部の水平方向断面図、図2(c)は成型部内部に成型体が存在しない状態の水平方向断面図である。
【0037】
図1に示すように、本実施形態の成型体製造装置10は、複数の成型部12と、恒温水槽14と、合成液槽16と、ペレット受け部18と、切断部20と、を備える。
【0038】
本実施形態において成型部12は、円柱状の成型体30を成型するために円筒形状としている。後述するように、成型された成型体30を切断して複数のペレット状の成型体30aを製造する観点から、成型部12は、柱状の成型体30を成型することができる筒状の成型部とすることが好ましいが、円筒形状(すなわち、図2(c)に示すように、成型部12の内部空間の径方向の断面Aが円形)に限らず、成型部12の内部空間の径方向の断面Aが楕円形、矩形、多角形などの筒状の成型部とすることもできる。
【0039】
図2(b)に示す成型部12の内径Rは、0.5mm以上100mm以下とすることが好ましく、1mm以上50mm以下とすることがより好ましく、3mm以上20mm以下とすることが更に好ましい。成型部12の内径が0.5mm以上であると、成型部12を流れる液体と気体の抵抗が小さくなるため、原料液の充填や成型体30の押し出しを容易に行うことが可能となる。また、成型部12の内径が100mm以下であると、成型体30を押し出すために必要な液体と気体の量が多くなりすぎず、安定して工業的に製造することが可能となる。
【0040】
なお、成型部12の内部空間の径方向の断面Aが円形以外の場合、成型部12の内部空間の径方向の断面の外接円の内径Rが、0.5mm以上100mm以下とすることが好ましく、1mm以上50mm以下とすることがより好ましく、3mm以上20mm以下とすることが更に好ましい。
【0041】
図2(a)に示すように、成型部12の長さLは、50mm以上5000mm以下とすることが好ましく、100mm以上4000mm以下とすることがより好ましく、500mm以上2000mm以下とすることが更に好ましい。成型部12の長さLが50mm以上であると、成型部12の内部に液体を留めやすくなり、成型体30と成型部12内面との隙間を液体が埋めた状態で、気体によって成型体30を押し出して、成型部12から成型体30を排出しやすくなる。また、成型部12の長さが5000mm以下であると、成型部12が長すぎることによって内部に存在する空気が抜けにくくなることを抑制できるため、成型部12に効率よく原料液を充填することが可能となる。
【0042】
成型部12の内部空間の総容積は、0.01m3以上とすることが好ましい。成型部12の内部空間の総容積が0.01m3以上であると、液体または気体をそれぞれ単独で用いて成型体30を押し出すよりも、液体と気体を組み合わせて押し出す方が効率よく押し出すことができる。この利点を顕著にするためには、成型部12の内部空間の総容積は、0.05m3以上とすることがより好ましく、0.10m3以上とすることが更に好ましい。成型部12の内部空間の総容積の上限は特に限定されないが、取り扱いの容易性の観点から、10m3以下であることが好ましく、8m3以下であることがより好ましく、7m3以下であることが更に好ましい。
【0043】
このような成型部12の内部に成型される成型体30の径方向の断面積(図2(b)に示す成型体30の径方向の断面Bの面積)は、成型部12の内部空間の径方向の断面積(図2(c)に示す成型部12の内部空間の径方向の断面Aの面積)に対する割合が30%以上99%以下とすることが好ましく、30%以上90%以下とすることがより好ましく、30%以上80%以下とすることが更に好ましい。成型体の径方向の断面積が成型部12の内部空間の径方向の断面積の30%以上であると、供給する液体や気体が、成型部12と成型体30の隙間を過剰に抜けてしまうことを抑制し、効率よく成型体30を押し出すことができる。また、成型体の径方向の断面積が成型部12の内部空間の径方向の断面積の99%以下であると、成型体30が成型部12内を円滑に移動することができるため、安定して押し出すことができる。
【0044】
なお、本実施形態のように、成型体製造装置10は、複数の成型部12を有することが好ましい。このように、複数の成型部12を有することにより、同時に複数の成型体30を成型することができ、効率良く大量に製造することができる。
【0045】
この場合、同時に複数の成型体を大量に製造する観点から、成型部12は一定以上の大きさであることが好ましい。具体的には、複数の成型部12の内部空間の径方向の断面積の合計は0.01m2以上とすることが好ましく、0.03m2以上とすることがより好ましく、0.05m2以上とすることが更に好ましい。複数の成型部12の内部空間の径方向の断面積の合計の上限は特に限定されないが、取り扱いの容易性の観点から、2m2以下とすることが好ましい。
【0046】
また、この場合、成型部12の長さは、複数の成型部12の長さの算術平均値を基準として±5%の範囲内であることが、複数の成型部12に同程度の量の原料液を効率よく充填する観点から好ましい。同様の観点から、複数の成型部12の長さが全て同じであることが、より好ましい。
【0047】
成型部12の内径に対する、成型部12の長さの比は、10以上2000以下とすることが好ましく、50以上1500以下とすることがより好ましく、100以上1000以下とすることが更に好ましい。成型部12の内径に対する成型部12の長さの比が10以上であると、成型部12の内部に液体を留めやすくなり、成型体30と成型部12内面との隙間を液体が埋めた状態で、気体によって成型体30を押し出して、成型部12から成型体30を排出しやすくなる。また、成型部12の内径に対する成型部12の長さの比が2000以下であると、成型部12が内径に対して長すぎることによって成型部12の内部に存在する空気が抜けにくくなることを抑制できるため、成型部12に効率よく原料液を充填することが可能となる。
【0048】
このように構成される成型部12は、本実施形態においては、恒温水槽14内部に鉛直方向に配置されている。この状態において、成型部12に原料液を充填し、加熱部である恒温水槽14によって成型部12を所定の温度まで加熱することによって、成型体を製造することができる。本実施形態において加熱部は恒温水槽14であり加熱媒体として液体を用いているが、加熱媒体は特に限定されるものではなく、例えば、気体を用いても構わない。
【0049】
成型体30がシリカ多孔体の場合、例えば、原料液はテトラメトキシシラン等のアルコキシシラン、塩酸や酢酸等の酸、ポリエチレングリコール等の水溶性ポリマー、及び水やアルコール類等の溶媒を含む混合液を用いることができる。原料液を加熱する恒温水槽14の温度は、例えば、20℃以上80℃以下とすることができ、25℃以上40℃以下とすることがより好ましい。また、加熱時間は、例えば、4時間以上24時間以下とすることができる。
【0050】
また、複数の成型部12は、合成液槽16(連通部)を介して連通するように構成される。合成液槽16は、図1に示すように、成型部12の注液側12aとは反対側に設けられている。このように、合成液槽16を設けて成型部12を連通させることにより、複数の成型部12の少なくともいずれかの成型部(以下、「注入用成型部13」とも呼ぶ。)の注液側13aから原料液を注液することにより、原料液は合成液槽16に溜っていき、そのまま注液を続けることにより、複数の成型部12にも均等に原料液が充填されていくこととなる。なお、本実施形態において「注入用成型部13」は、「複数の成型部12」に含まれる。
【0051】
このとき、複数の成型部12内部及び合成液槽16内部の空気は、成型部12の注液側12aから抜けていくことになるため、成型部12内部に空気が残留することなく、全ての成型部12に対して同程度の量の原料液を充填することができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、上述するように空気が抜けていくようにするため、複数の成型部12を鉛直方向に配置しているが、原料液の注液の際に、成型部12の注液側12aから空気が抜けていけばよいため、複数の成型部12は非水平方向に配置していればよい。本明細書において「非水平方向」とは、水平面に対して成型部12が角度を有し傾いていれば、特に限定されるものではないが、例えば、水平面に対する成型部12の角度が30°以上90°以下であることが、原料液の注液の際に空気を効率よく抜く観点から好ましい。
【0053】
また、複数の成型部12のうちどの成型部を注入用成型部13とするか、また、注入用成型部13の数を何本とするかは、成型部12の数、内部空間の径方向の断面積、長さなどに応じて適宜変更することができる。
【0054】
本実施形態において、恒温水槽14は、回動機構を備えており、回転軸14aを中心として、複数の成型部12とともに恒温水槽14を回動させることができる。このように構成することにより、成型部12内部に成型体30を成型した後、成型体30を成型部12から排出する際には、複数の成型部12が略水平方向となるように回動させることができる。本明細書において「略水平方向」とは、成型体30を排出することができる程度であれば水平方向から傾いた状態を含んでいる。例えば、水平方向から±5%の範囲内であることが、成型体30が意図せずに落下することを抑制する観点から好ましい。このような回動機構を設けることによって、装置の設計や成型体30の長さなどに合わせて、成型体30の排出方向を調節することができる。
【0055】
なお、複数の成型部12とともに恒温水槽14を回動させた後に、合成液槽16を取り外しておくことが好ましい。この場合、合成液槽16内部で固まった原料液(以下、「成型体連接部32」と呼ぶ。)は、後述するように、成型部12から成型体30を排出する前に、切断部20によって切断して除去しておくことが好ましい。なお、合成液槽16は、着脱自在な構成とし、上述するように合成液槽16を取り外した後、再度取り付けることができるようにすることが好ましい。
【0056】
略水平方向に配置された成型部12から、後述するように、柱状の成型体30を排出するとともに、切断部20によって、柱状の成型体30を切断することにより、ペレット状の成型体30aを得ることができる。なお、ペレット状の成型体30aは、そのまま落下して、ペレット受け部18に溜められる。このようにして得られたペレット状の成型体30aは、例えば、焼成することにより、シリカ多孔体などの所望の多孔体を得ることができる。
【0057】
なお、切断部20としては、柱状の成型体30を切断することができるものであれば、特に限定されるものではないが、複数の成型部12から排出される複数の成型体30を同時に切断することができるものとすることが好ましい。
【0058】
成型体30の材料は、特に限定されるものではなく、無機系材料であってもよく、有機系材料であってもよい。また、無機系材料と有機系材料の複合材料であってもよい。なお、無機系材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化スズ、セリア、チタニア、ジルコニア等を原料とするセラミック材などが挙げられる。また、有機系材料としては、例えば、イオン交換樹脂やプラスチック材などが挙げられる。
【0059】
本実施形態において、成型体製造装置10は、複数の成型部12に液体を供給する液体供給部22と、複数の成型部12に気体を供給する気体供給部24とを備えている。なお、液体供給部22及び気体供給部24は、成型部12に原料液を充填する際には、成型部12と接続されておらず、後述するように、成型部12から成型体30を排出する際に、成型部12と接続されるように構成される。
【0060】
液体供給部22及び気体供給部24は、複数の成型部12のうち少なくとも1つの成型部12に液体及び気体を供給するように構成されていればよい。この場合、液体供給部22及び気体供給部24からは、それぞれ、可撓性のチューブ22a及び24aが接続され、このチューブ22a及び24aを成型部12の注入側12aに挿入することで、成型部12の内部に液体及び気体を供給することができる。そして、複数の成型部12に対して、順次、液体及び気体を供給していくことで、複数の成型部12から成型体30を排出していくことができる。もちろん、複数の成型部12全てに対して同時に液体及び気体を供給するように構成することも可能である。
【0061】
液体供給部22は、例えば、水や低粘度の油など、成型体30に影響の無い液体を成型部12の内部に供給するように構成されている。このような液体供給部22は、例えば、液体用ポンプなどを用いることで実現可能である。
【0062】
液体供給部22から供給される液体の流量は、成型部12の内径や長さなどの設計に応じて適宜調整することができる。特に制限はないが、液体用ポンプの性能や安定した工業生産の観点から、10L/min以上5000L/min以下とすることが好ましく、100L/min以上1000L/min以下であることがより好ましく、100L/min以上500L/min以下であることが更に好ましい。
【0063】
また、同様の観点から、液体供給部22から供給される、成型部12の内部空間の径方向の断面積の合計に対する液体の流量は、1L/min/m2以上25L/min/m2以下とすることが好ましく、2L/min/m2以上15L/min/m2以下であることがより好ましく、5L/min/m2以上10L/min/m2以下であることが更に好ましい。
【0064】
気体供給部24は、例えば、空気や窒素、二酸化炭素など、成型体30に影響の無い気体を成型部12の内部に供給するように構成されている。このような気体供給部24は、例えば、気体用ポンプなどを用いることで実現可能である。
【0065】
なお、気体供給部24から供給される気体の圧力は、成型部12の内径や長さなどの設計に応じて適宜調整することができる。特に制限はないが、気体用ポンプの性能や安定した工業生産の観点から、0.01MPa以上0.5MPa以下とすることが好ましく、0.05MPa以上0.3MPa以下であることがより好ましく、0.1MPa以上0.25MPa以下であることが更に好ましい。
【0066】
本実施形態においては、上述するように、注入用成型部13から原料液を注入して、複数の成型部12に原料液を充填して、加熱により成型部12内部に成型体30を成型した後、複数の成型部12が略水平方向となるように回動させた状態で、液体供給部22と気体供給部24から液体と気体をそれぞれ、複数の成型部12内部に供給することによって、成型体を成型部12から排出するようにしている。
【0067】
具体的には、図3(a)に示すように、注入用成型部13から原料液を注入する。これにより、合成液槽16には、原料液が溜っていく。このまま、注入用成型部13から原料液を注入していくと、図3(b)に示すように、合成液槽16が満杯となり、複数の成型部12にも原料液が溜っていく。このとき、合成液槽16内部の空気は成型部12の方へ逃げていき、また、成型部12には下方から原料液が溜っていくため、成型部12内部の空気は、成型部12の注液側12aから外部に放出される。
【0068】
このまま、原料液の注液を継続することにより、図4(a)に示すように、全ての成型部12に同程度の量の原料液が充填されることになる。なお、原料液の注液は、成型部12に充填された原料液の量を検知することによって停止させるようにしてもよいし、また、注液の開始からの時間によって停止させるようにしてもよい。
【0069】
このように、全ての成型部12に原料液が充填されたら、恒温水槽14の水温を所定の温度まで上昇させる。これにより、成型部12内部の原料液が固化して、成型部12内部に成型体30が成型される。
【0070】
成型体30が成型された後、複数の成型部12とともに恒温水槽14を回動させて、合成液槽16を取り外し、図4(b)に示すように、複数の成型部12が略水平方向に配置されるようにする。
【0071】
この状態で、切断部20によって、成型体連接部32を切断して除去する。なお、成型体連接部32を確実に除去するため、図5(a)に示すように、液体供給部22及び気体供給部24を用いて、成型体30を押し出してから切断するようにしてもよい。
【0072】
成型体連接部32を除去した後、図5(b)に示すように、液体供給部22及び気体供給部24から液体と気体をそれぞれ供給することによって、柱状の成型体30を排出し、切断部20によって柱状の成型体30を切断することで、ペレット状の成型体30aを得ることができる。
【0073】
このように液体と気体の両方を用いて成型体30を押し出すことにより、成型体30と成型部12内面との隙間を液体が埋めた状態で、気体によって成型体30を押し出して、成型部12から排出することができる。
【0074】
また、成型が不完全で固化しきらずに成型部12内に残留した原料液によって成型部12内面に成型体30が張り付いている場合、液体を供給することによって、固化しきらなかった原料液を液体によって流した後、上述するように成型体30を成型部12から排出することができる。
【0075】
この場合、供給する気体の流量を制御することにより、成型部12から押し出される成型体30の長さを調節することができるため、一定の長さで安定して切断することが可能となる。
【0076】
なお、液体供給部22から液体を供給しながら、気体供給部24から気体を供給して、成型体30を押し出すようにしてもよいが、液体供給部22から液体を供給した後、液体の供給を止めてから、気体供給部24から気体を供給して、成型体30を押し出すようにすることで、成型部12から押し出される成型体の長さの調節をより容易に行うことができる。
【0077】
また、気体供給部24は、気体の供給と供給停止を周期的に繰り返し、気体をパルス状に成型部12に供給してもよい。このように気体を供給することで、成型体30の排出に必要な気体の消費量を少なくすることができる。なお、気体の供給と供給停止の周期は、特に制限されないが、例えば、1秒以上5秒以下の範囲内で気体の供給を行った後、1秒以上5秒以下の範囲内で気体の供給を停止することを繰り返し行い、気体をパルス状に供給してもよい。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
10 成型体製造装置
12 成型部
12a 注液側
13 注入用成型部
13a 注液側
14 恒温水槽
14a 回転軸
16 合成液槽
18 ペレット受け部
20 切断部
22 液体供給部
22a チューブ
24 気体供給部
24a チューブ
30 成型体
30a ペレット状の成型体
32 成型体連接部
図1
図2
図3
図4
図5