(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139588
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】シボの形成方法
(51)【国際特許分類】
B29C 59/16 20060101AFI20241002BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20241002BHJP
B29C 59/04 20060101ALI20241002BHJP
B23K 26/352 20140101ALI20241002BHJP
B22F 10/80 20210101ALI20241002BHJP
【FI】
B29C59/16
B29C59/02 B
B29C59/04 C
B23K26/352
B22F10/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050598
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】510061221
【氏名又は名称】株式会社ケイズデザインラボ
(74)【代理人】
【識別番号】110001391
【氏名又は名称】弁理士法人レガート知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 圭
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】岸本 慎也
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 敏彰
(72)【発明者】
【氏名】櫻庭 美穂
(72)【発明者】
【氏名】内田 麻子
【テーマコード(参考)】
4E168
4F209
4K018
【Fターム(参考)】
4E168AB01
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH31
4F209PA02
4F209PA03
4F209PA15
4F209PB01
4F209PB02
4F209PC05
4F209PQ03
4F209PQ11
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
【課題】この発明は、所定の機能を備えたシボを効率よく開発し、素材表面に形成することを課題とするものである。
【解決手段】この発明は、所定の機能を備えたシボを素材に形成する方法において、前記所定の機能に関する既知の情報に基づいて適切と考えられるシボ形状を3Dデータとして作成し、前記3Dデータに基づいて、素材に対してXYZ方向にレーザー加工処理を行いシボを形成することを特徴とする、シボの形成方法である。
前記所定の機能とは、例えば素材表面の氷結防止機能、撥水機能、流体摩擦低減機能が挙げられるが、これらに限定されるものではない。シボに要求される機能を設定して、この発明の手法によって、その機能を備えたシボ形状を考案し、シボを形成することができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の機能を備えたシボを素材に形成する方法において、
前記所定の機能に関する既知の情報に基づいて適切と考えられるシボ形状を3Dデータとして作成し、
前記3Dデータに基づいて、素材に対してXYZ方向にレーザー加工処理を行いシボを形成することを特徴とする、
シボの形成方法。
【請求項2】
所定の機能を備えたシボを素材に形成する方法において、
前記所定の機能に関する既知の情報に基づいて適切と考えられるシボ形状を3Dデータとして複数作成し、
複数のシボ形状について、それぞれの3Dデータに基づいてレーザー加工処理又は3Dプリンターによって試料を製作し、
各試料について前記所定の機能に対する効果を測定し、
最も効果の高い試料の3Dデータ又はこれを修正した3Dデータに基づいて、素材に対してXYZ方向にレーザー加工処理を行いシボを形成することを特徴とする、
シボの形成方法。
【請求項3】
所定の機能を備えたシボを素材に形成する方法において、
前記所定の機能に関する既知の情報に基づいて適切と考えられるシボ形状を3Dデータとして作成し、
前記3Dデータを凹凸反転すべく変換し、変換された3Dデータに基づいて、金型材に対してXYZ方向にレーザー加工処理を行いシボ形成用の金型を製造し、
この金型を使用してシボを素材に形成することを特徴とする、
シボの形成方法。
【請求項4】
所定の機能を備えたシボを素材に形成する方法において、
前記所定の機能に関する既知の情報に基づいて適切と考えられるシボ形状を3Dデータとして複数作成し、
複数のシボ形状について、それぞれの3Dデータに基づいてレーザー加工処理又は3Dプリンターによって試料を製作し、
各試料について前記所定の機能に対する効果を測定し、
最も効果の高い試料の3Dデータ又はこれを修正した3Dデータを凹凸反転すべく変換し、変換された3Dデータに基づいて、金型材に対してXYZ方向にレーザー加工処理を行いシボ形成用の金型を製造し、
この金型を使用してシボを素材に形成することを特徴とする、
シボの形成方法。
【請求項5】
所定の機能を、素材表面の氷結防止機能又は撥水機能とし、既知の情報をロータス機能に関する情報とした、請求項1ないし4の何れかに記載のシボの形成方法。
【請求項6】
所定の機能を、流体摩擦低減機能とし、既知の情報をペンギンの体表に関する情報とした、請求項1ないし4の何れかに記載のシボの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属、樹脂、ガラスその他の素材の表面に、所定の機能を備えたシボを形成するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シボを形成するためには、エッチングによって金属金型の表面に微細な凹凸(反転されたシボ形状)を形成し、この金型を用いて金属や樹脂の表面にシボを形成している。また、レーザー加工処理によってシボを形成する手法も試みられている。
ところで、シボは単なる装飾目的の他、素材に高級感を与えたり、傷や汚れを目立たなくする、滑り止めなどの目的で採用されているが、近年では、凸凹の形状によって撥水性、親水性、汚れがつきにくいなどの機能を奏することが知られており、所定の機能を備えたシボの形成が行われている。
しかしながら、シボに特定の機能を持たせることについての工夫はなされていない。できあがったシボを検証して、そのシボが備える機能を見いだしているのが現状である。
【特許文献1】特開平11-99887号公報 この文献には、ウエザストリップ表面の所定部位に所定のシボパターンにてレーザー光を照射して当該表面にシボ模様を形成せしめることを特徴とするシボ付きウエザストリップの製造方法が開示されている。
【非特許文献1】東京都立産業技術研究センター https://www.iri-tokyo.jp/uploaded/attachment/12250.pdf (2023年3月13日閲覧) このサイトにおいて、機能性を備えたシボの存在が紹介されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、所定の機能を備えたシボ形状を効率よく開発し、素材表面にシボを形成することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、所定の機能を備えたシボを素材に形成する方法において、前記所定の機能に関する既知の情報に基づいて適切と考えられるシボ形状を3Dデータとして作成し、前記3Dデータに基づいて、素材に対してXYZ方向にレーザー加工処理を行いシボを形成することを特徴とする、シボの形成方法である。
なお、この発明において「シボ形状」とは微細な凹凸の形状それ自体を意味し、「シボ」とは素材に形成された微細な凹凸を意味するものとして使用する。
【0005】
前記所定の機能とは、例えば素材表面の氷結防止機能、撥水機能、流体摩擦低減機能が挙げられるが、これらに限定されるものではない。シボに要求される機能を設定して、この発明の手法によって、その機能を備えたシボ形状を考案し、シボを形成することができる。
【0006】
この発明の特徴の一つは、シボ形状を、シボに要求される所定の機能に関する既知の情報に基づいて、3Dデータとして作成することである。
現在、いかなる形状のシボがいかなる機能を備えているのか、ということについての情報は存在していない。従来の技術として記載した機能性を備えたシボの製作においても、この形状のシボにすると目的とする機能が得られる、という開発手法が採られることはなく、多数製作したシボのなかで、あるシボはこのような機能がある、別のシボは別の機能がある、というように、シボを製作した後で、そのシボの機能を検証しているのが実情である。
【0007】
この発明における「シボに要求される所定の機能」は、シボの用途に基づいて適宜設定する。以下の実施例などの例示に限定されるものではない。
この発明における「シボに要求される所定の機能に関する既知の情報」としては、技術情報の他、自然界における動植物に関する情報が利用される(バイオミミクリー(生物模倣)と呼ばれる)。
氷結防止機能、撥水機能を備えたシボ形状の考案においては、一例としてロータス効果(ハス科の植物に見られる自浄作用)を既知の情報として利用し、流体摩擦低減機能を備えたシボ形状の考案においては、一例としてペンギンの体表の羽毛が遊泳中の摩擦抵抗を低減することを既知の情報として利用する。
【0008】
既知の情報に基づいて考案されたシボ形状は、3Dデータとして作成する。3Dデータとして作成することにより、このデータを用いて素材にレーザー加工処理を施してシボを形成することや、3Dプリンターによって機能確認のための試料を作成することが可能であり、またデータ上でシボ形状を調整することもできる。
【0009】
素材のレーザー加工処理は、素材に対してXYZ方向にレーザー加工処理を行いシボを形成する。
エッチング手法や二次元データを用いたレーザー加工処理においては、深さ方向の傾斜面を形成することはできないところ、この発明においては、3Dデータに基づいて素材に対してXYZ方向にレーザー加工処理を行うことにより、傾斜面(逆テーパーを含む)を備えたシボやドーム状のシボを形成することができる。
【0010】
請求項2の発明は、所定の機能を備えたシボを素材に形成する方法において、前記所定の機能に関する既知の情報に基づいて適切と考えられるシボ形状を3Dデータとして複数作成し、複数のシボ形状について、それぞれの3Dデータに基づいてレーザー加工処理又は3Dプリンターによって試料を製作し、各試料について前記所定の機能に対する効果を測定し、最も効果の高い試料の3Dデータ又はこれを修正した3Dデータに基づいて、素材に対してXYZ方向にレーザー加工処理を行いシボを形成することを特徴とする、シボの形成方法である。
【0011】
すなわち、請求項1の発明に、適切と考えられるシボ形状を複数作成し、各シボ形状についての試料を製作して、各シボ形状の効果を測定する過程を組み込んだものである。
【0012】
上述の通り、従来シボ形状が特定の機能を備えることは知られていたが、いかなる形状のシボがいかなる機能を備えるものであるかは、シボを形成した後にそのシボの機能を検証しているのが実情である。そして、請求項1の発明によれば、所定の機能に関する既知の情報に基づいて適切と考えられるシボを形成することができるが、請求項2の発明によれば、試料による効果測定の過程を組むことにより、一層適切なシボ形状を効率よく得ることができる。
【0013】
一つの既知に知見に基づいてシボ形状を考案する場合において、適切と考えられるシボ形状が一義的に得られるものではない。また、参照すべき既知に知見が複数存在する場合もあり、参照する資料により考案されるシボ形状も異なるものとなる。
したがって、適切と考えられるシボ形状は複数考案されるのであり、複数のシボ形状から最も適切と考えられるシボ形状を選定してシボを形成することが好ましい。この発明においては、複数のシボ形状を3Dデータとして作成するので、このデータに基づいてレーザー加工処理又は3Dプリンター加工によって、容易に試料を製作することができる。
この試料を用いて、試料に現されたシボの所定の機能に対する効果の程度を測定し(目視を含む)、比較する。そして、必用であればシボ形状を適宜修正して最終的に採用するシボ形状を決定する。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1の発明と同様の手法で得られた3Dデータを凹凸反転すべく変換し、変換された3Dデータに基づいて、金型材に対してXYZ方向にレーザー加工処理を行いシボ形成用の金型を製造し、この金型を使用してシボを素材に形成することを特徴とするシボの形成方法である。
そして、請求項4の発明は、請求項2の発明と同様の手法で得られた3Dデータを凹凸反転すべく変換し、変換された3Dデータに基づいて、金型材に対してXYZ方向にレーザー加工処理を行いシボ形成用の金型を形成し、この金型を使用してシボを素材に形成することを特徴とするシボの形成方法である。
【0015】
請求項3,4の何れの発明においても、適切と考えられるシボ形状の3Dデータを凹凸反転すべく変換し、変換されたデータを使用してレーザー加工処理を行うことにより、成型すべきシボと凹凸反転した形状に加工された金型を得ることができる。この金型を使用することによって、シボを量産することができる。
【0016】
請求項5の発明は、所定の機能を、素材表面の氷結防止機能又は撥水機能とし、既知の情報をロータス機能とした、請求項1ないし4の何れかに記載のシボの形成方法であり、請求項6の発明は、所定の機能を、流体摩擦低減機能とし、既知の情報をペンギンの体表とした、請求項1ないし4の何れかに記載のシボの形成方法である。
いずれも、請求項1ないし4の発明の具体的な適用に関するものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、シボに求める所定の機能を設定し、それに関連する既知の情報に基づいて適切と考えられるシボ形状を考案するので、勘や技能に頼ることなく科学的な根拠に基づいてシボ形状を考案することができる。そして、シボ形状を3Dデータとして作成するので、そのデータに基づいてレーザー加工処理を行うことができる。加えて、3Dデータで素材に対してXYZ方向にレーザー加工処理を行うことにより、逆テーパーを含む傾斜面やドーム状形状を備えたシボを形成することができる。
すなわち、この発明によれば、機能性の高いシボを効率よく得ることができる。
【0018】
従来のエッチング手法においては傾斜面やドーム状形状を備えたシボを得ることはできない。また、レーザー加工もエッチング手法を置き換えたものであるから、二次元データを用いた加工であって、傾斜面などを備えたシボを得ることはできず、傾斜面などを備えたシボを得るという発想自体がなかった。
この発明は、シボ形状を3Dデータとして作成することにより、逆テーパーを含む傾斜面を備えたシボやドーム状形状のシボの形成を可能とするものである。また、レーザー加工処理であるからシボを形成する素材の制約もない。
【0019】
請求項2の発明によれば、所定の機能に関する既知の情報に基づいて適切と考えられるシボ形状を3Dデータとして複数作成し、複数のシボ形状について、それぞれの3Dデータに基づいてレーザー加工処理又は3Dプリンターによって試料を製作し、各試料について前記所定の機能に対する効果を測定することにより、適切と考えられるシボ形状の中でも最適なシボ形状を見いだすことができる。
【0020】
従来、予め所定の機能を設定してシボ形状を作成することは行われておらず、複数のシボ形状についての機能に対する効果を測定することは考えられていない。
しかるに、この発明は、所定の機能に関する既知の情報に基づいて適切と考えられるシボ形状を3Dデータとして作成するものであるから、3Dデータに基づいて容易に試料を製作することができ、シボの効果を測定することができる。
【0021】
請求項3,4の発明によれば、3Dデータを凹凸反転すべく変換し、変換された3Dデータに基づいて、金型材に対してXYZ方向にレーザー加工処理を行いシボ形成用の金型を形成し、この金型を使用してシボを素材に形成することにより、シボの量産が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】タイプAのシボ形状を示す図であり、(1)は断面図、(2)は斜視図。
【
図3】タイプBのシボ形状を示す図であり、(1)は断面図、(2)は斜視図。
【
図4】タイプCのシボ形状を示す図であり、(1)は断面図、(2)は斜視図。
【
図5】実施例1の液滴テストを示す図であり、AはタイプA、BはタイプB、CはタイプCを示す。
【
図11】実施例2の液滴テスト(1)を示す図であり、DはタイプD、EはタイプE、FはタイプFを示す。
【
図12】実施例2の液滴テスト(2)を示す図であり、DはタイプD、EはタイプE、FはタイプFを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下この発明の実施例を説明する。
【実施例0024】
実施例1として、氷結防止機能を備えたシボの形成を説明する。
【0025】
航空機は、機体が凍ると翼の動きや機能の低下、空力の低下、燃費の低下につながる。そこで、機体に不凍液を吹きかけたり、翼に加熱システムを装備するなどの方法によって、氷結を回避しているが、いずれも費用がかさむ。
そこで、このような問題を改善するために、航空機ボディの表面に氷結防止機能を備えたシボを形成することを課題として設定した。
【0026】
航空機ボディの表面の氷結防止構造に関しては、ドイツの研究機関であるFraunhoher IWSと航空機メーカーAirbus社の共同研究(2020年文献公開)が既知の情報として存在する。この研究において、氷が一定の厚さ・重量に堆積すると、自然と翼から落下するようになることが示されている。
この情報に基づき、「氷が落下しやすいシボ形状」を得ることにより、航空機ボディの表面の氷結防止に寄与できることが分かり、ハスの葉の表面形状によるロータス効果に着目した。
【0027】
ハスの葉の表皮は、高さ10μm~20μm、幅10μm~15μmの乳頭を有しており、表面の撥水性は、その接触角によって測定できる。接触角が大きいほど表面の撥水性が高くなる。接触角90度以下の表面は親水性と呼ばれ、90度以上の表面は撥水性を呼ばれる。ハスの葉の表面は170度までの接触角を有し、それによって液滴の接触面積はわずか0.6%であり、これが超撥水性現象をもたらしている。
なお、超撥水性は、ハスの葉以外にもキンレンカ、ウチワサボテン、アルケミラ、サトウキビ、及び特定の昆虫の羽などにも見られる。
【0028】
以上の情報に基づき、
図2ないし
図4に示す3タイプのシボ形状を考案し、3Dデータとして作成した。
タイプA(
図2)は高低差0.38mm、ピッチ1.0~1.5mm、タイプB(
図3)は高低差0.5mm、ピッチ1.0mm、タイプC(
図4)は高低差0.5mm、ピッチ0.8mm、凸部の直径は0.5mmである。いずれも3段階の深さとランダムでない整列性、一定方向の指向性を備えた形状としている。
【0029】
次いで、3タイプのシボ形状の3Dデータを使用して、3Dプリンターで3タイプのシボ形状の試料(100×33×3mm)を製作した。
各試料において表面の液滴テストを行い、各タイプのシボ形状の撥水性を目視によって確認した。
図5に示すタイプCのシボにおいて、タイプAのシボ、タイプBのシボと比較して、水滴が盛り上がり、広がり面積も小さい。
したがって、タイプCのシボは他のシボよりも撥水性が高いことが分かる。
【0030】
目視検証において高い評価となったタイプCのシボ形状を、適切なシボ形状と位置付け、このシボ形状について、3Dデータを使用して素材に対してレーザー加工を行い、シボを形成する。
また、必要により、3Dデータを凹凸逆としたデータに変換して、金型材にレーザー加工を施して金型を製作し、この金型を用いて素材にシボを形成する。
【0031】
目視検証と併せて、面の算術平均高さ(パラメーターSa)、面の突出部深さ(パラメーターSvK)、界面の展開面積比(パラメーターSdr)、表面形状のアスべクト比(パラメーターStr)を測定した。この値はシボ形状の物性を示すもので、直接的にシボの機能を示すものではないが、各種のシボ形状についての測定を積み重ねることで、シボ形状と機能との関係性を導き出す可能性があるものと期待できる。
測定結果を
図6に示す。
既知の情報として次の研究報告がある(東京工業大学工学院機械系/齋藤遼輔(修士課程2年)、田中博人准教授および山階鳥類研究所の山崎剛史研究員の研究グループ)。
この研究では、ペンギンの優れた遊泳能力に着目し、体表の羽毛が形成する微小な列状の凹凸(リブレット)が流体抵抗に与える影響を調べるために、全身標本および採取した羽毛の形状を計測した。その結果に基づき、リブ断面が台形の模倣リブレットを設計し、紫外線レーザースキャン加工でフィルム状に製作した。製作したリブレットフィルムを平板に貼り付け、水流中で抵抗を計測した。
その結果、平滑なフィルムを貼った場合と比較して、抵抗が最大2%低減した。この抵抗低減効果は、リブ配向が流速方向に対して平行な場合よりも15度角度をつけた場合の方が向上した。つまり、抵抗軽減効果は流速方向の変化に強かった。
この実験結果は、ペンギン体表の羽毛が流体摩擦抵抗を低減するように進化したことを示唆する。本リブレットを応用すれば、流速方向の変化が大きい自動車や船舶などの燃費向上が期待できる、とされている。
目視検証において高い評価となったタイプDのシボ形状を、流体摩擦低減機能のための適切なシボ形状と位置付け、この選定したシボ形状について、3Dデータを使用して素材に対してレーザー加工を行い、シボと形成する。
また、必要により、3Dデータを凹凸逆としたデータに変換して、金型材にレーザー加工を施して金型を製作し、この金型を用いて素材にシボを形成する。