IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

特開2024-139591ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルムの製造方法、および樹脂フィルム
<>
  • 特開-ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルムの製造方法、および樹脂フィルム 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139591
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルムの製造方法、および樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/69 20190101AFI20241002BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20241002BHJP
   B29C 48/88 20190101ALI20241002BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20241002BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20241002BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20241002BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20241002BHJP
【FI】
B29C48/69
B29C48/305
B29C48/88
B29C48/08
C08J5/18 CFD
B29K67:00
B29L7:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050603
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】上仮屋 直也
【テーマコード(参考)】
4F071
4F207
【Fターム(参考)】
4F071AA43
4F071AA81
4F071AA86
4F071AF16Y
4F071AF52
4F071AH04
4F071AH06
4F071BA01
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC12
4F207AA24
4F207AG01
4F207AH81
4F207AM10
4F207AR01
4F207AR06
4F207AR11
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK64
4F207KL38
4F207KL84
4F207KM20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】樹脂中の異物が少ないポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルムを、熱分解による樹脂の強度低下を抑制し、優れた生産性で製造できる製造方法を提供すること。
【解決手段】溶融したポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含む樹脂組成物を、ポリマーフィルター12を通過させる工程を含み、前記ポリマーフィルター内における樹脂滞留時間が60/(樹脂温度-165℃)分以内(但し、樹脂温度>165℃。)である、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルムの製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融押出法によるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含む樹脂フィルムの製造方法であって、溶融したポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含む樹脂組成物を、ポリマーフィルターを通過させる工程を含み、
前記ポリマーフィルター内における樹脂滞留時間が60/(樹脂温度-165℃)分以内(但し、樹脂温度>165℃。)である、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記ポリマーフィルターを通過させる工程において、樹脂温度が165℃より高く、185℃以下である、請求項1に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む、請求項1又は2に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含む、請求項3に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の製造方法によって製造された、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルム。
【請求項6】
前記樹脂フィルム100m当たりに含まれる、大きさが50μm以上の異物が10個以下である、請求項5に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルム。
【請求項7】
引裂強度が、1N/μmより高い、請求項5に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルム。
【請求項8】
前記ポリ(3-ヒドロキアルカノエート)系樹脂が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含む、請求項5に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含む樹脂フィルムの製造方法、および樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、欧州を中心に生ゴミの分別回収やコンポスト処理が進められており、生ゴミと共にコンポスト処理できるプラスチック製品が望まれている。
【0003】
一方で、廃棄プラスチックが引き起こす環境問題がクローズアップされ、特に海洋投棄や河川などを経由して海に流入したプラスチックが、地球規模で多量に海洋を漂流していることが判ってきた。この様なプラスチックは長期間にわたって形状を保つため、海洋生物を拘束、捕獲する、いわゆるゴーストフィッシングや、海洋生物が摂取した場合は消化器内に留まり摂食障害を引き起こすなど、生態系への影響が指摘されている。
【0004】
更には、プラスチックが紫外線などで崩壊・微粒化したマイクロプラスチックが、海水中の有害な化合物を吸着し、これを海生生物が摂取することで有害物が食物連鎖に取り込まれる問題も指摘されている。
【0005】
この様なプラスチックによる海洋汚染に対し、生分解性プラスチックの使用が期待されるが、国連環境計画が2015年に取り纏めた報告書では、ポリ乳酸などのコンポストで生分解可能なプラスチックは、温度が低い実海洋中では短期間での分解が期待できないために、海洋汚染の対策にはなりえないと指摘されている。
【0006】
この様な中、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂は海水中でも生分解が進行しうる材料であるため、上記課題を解決する素材として注目されている。
【0007】
プラスチックフィルムに商品デザイン等を印刷する際にプラスチックフィルム中の異物起点の隆起によって部分的に印刷がされない部分(印刷抜け)が生じる問題がある。これに対し、樹脂中に含まれる異物を除去するため、溶融樹脂に対しポリマーフィルターを用いて生産性良く、高い異物除去能で溶融樹脂中の異物を取り除く技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7-165896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1には、ポリ乳酸を含む樹脂ペレットを溶融押出法で製造する際に、ポリ乳酸樹脂を190℃に設定した押出機から出たポリマーを20μmのフィルターでろ過する方法が開示されている。しかしながら、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を主成分とする樹脂を用いる場合、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂は、樹脂の融点と熱分解温度が近いため、例えば、190℃の温度で溶融した樹脂がポリマーフィルター通過中に樹脂が熱分解し、樹脂の強度が低下するという課題がある。一方で、熱分解を抑制するためろ過時の温度を下げると溶融樹脂の溶融粘度が高くなり、ポリマーフィルターの負担が増大し、ポリマーフィルターの耐圧制限以下とするためにろ過速度を下げる等により生産性が著しく低下してしまうという課題があった。上述のように、溶融押出法によりポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含む樹脂ペレットを製造する場合、ポリマーフィルターを用いることが難しいため異物数が低減したペレットを製造することが困難であった。
【0010】
本発明は、上記現状に鑑み、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含むフィルムの製造方法において、樹脂中の異物が少ないフィルムを、熱分解による樹脂の強度低下を抑制し、優れた生産性で製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリマーフィルターを用いてポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含む樹脂フィルムを製造する場合、溶融した樹脂がポリマーフィルターを通過する樹脂滞留時間と樹脂温度の関係を特定範囲とすることで、熱分解による樹脂の強度低下が抑制でき、生産性よく異物が少ない状態でフィルムを製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は、溶融押出方法によるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含む樹脂フィルムの製造方法であって、溶融したポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含む樹脂組成物を、ポリマーフィルターを通過させる工程を含み、前記ポリマーフィルター内における樹脂滞留時間が60/(樹脂温度-165℃)分以内(但し、樹脂温度>165℃。)である、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルムの製造方法に関する。
【0013】
また本発明は、前記製造方法より製造された、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルムに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含み、熱分解による強度低下を抑制し、生産性に優れ、樹脂中の異物が少ないフィルムを製造できる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一態様に係るフィルムを製造する装置の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本発明ではポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含む樹脂組成物を樹脂フィルム状に成形し製造する。フィルムの製造方法としては、公知乃至慣用の方法に従って実施可能であり、生産性等の観点で溶融押出法を好適に使用できる。例えば、押出機(一軸押出機、二軸押出機)、ニーダー等を使用し、樹脂を溶融混錬した後、Tダイからフィルム状に吐出させ、温調されたキャストロールで冷却固化することでフィルムとすることができる。
【0018】
図1は、フィルムを製造する装置の一例を模式的に示す図である。フィルムの原料である樹脂組成物が押出機10に投入され、押出機10内において、ガラス転移温度以上の温度まで加熱され、溶融状態となる。溶融状態の樹脂組成物は、押出機の出口側に取り付けられたギアポンプ11にて流量制御され、続けてポリマーフィルター12に移行する。ポリマーフィルター12内において、樹脂組成物を滞留させ、ポリマーフィルター12の出口側に取り付けられたTダイ13に移行し、Tイス出口14から溶融状態のまま、吐出される。その吐出時において、ダイス出口の形状により、溶融状態の樹脂組成物15はフィルム形状となる。
【0019】
この溶融状態にある熱可塑性樹脂組成物のフィルムを温調されたキャストロール17で冷却固化し、必要に応じ延伸機18にて延伸し、連続したフィルム成形体19が得られる。
(ポリマーフィルター)
本実施形態に係るポリマーフィルターは、押出機の出口側に取り付けてもよいが押出機とポリマーフィルターの間に介した流量制御のためのギアポンプの出口側に取り付けてもよい。ポリマーフィルターの構造は、例えば、繊維束を撚り合わせた構造、網目構造、不織布構造、粉末焼結体構造などが挙げられ、溶融樹脂組成物中の異物除去の観点から、これらの中でも、不織布構造が好ましい。ポリマーフィルターの形状は、例えば、シート形状(リーフディスクタイプ)やプリーツ形状が挙げられ、ろ過面積が大きく、高粘度樹脂のろ過にも適用容易である等の点で、シート形状(リーフディスクタイプ)のポリマーフィルターを好ましく使用することができる。リーフディスクタイプの場合、濾過後溶融樹脂の流路を兼ねたフィルター支持体を軸に並行に積層することが好ましい。
【0020】
ポリマーフィルターの構造を形成する材料は、例えば金属(ステンレス鋼、ニッケル鋼等)、樹脂などが挙げられ、これらの中でも金属(ステンレス鋼、ニッケル鋼等)が好ましくステンレス鋼がより好ましい。
【0021】
ポリマーフィルターの濾過精度は、樹脂組成物中の異物除去の観点から、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下が特に好ましい。特に繊維の異物はほどけた繊維1本毎の径が20~30μmと小さいためポリマーフィルターをすり抜けやすく数10~数100μmの繊維長さで異物として検出される。このため、繊維異物を除去する場合、特に50μm以下のろ過精度を用いることが好ましい。
【0022】
本発明では溶融樹脂がポリマーフィルター内における樹脂滞留時間を60/(樹脂温度-165℃)分以内(但し、樹脂温度>165℃。)とする。ポリマーフィルター内における樹脂滞留時間とは溶融樹脂がポリマーフィルターに流入後、濾過されポリマーフィルターから流出するまでの時間である。ある吐出量においてポリマーフィルターを用いない場合の原料投入からTダイまで吐出する時間とポリマーフィルターを用いた場合の時間の差にて算出することができ、任意の吐出量における樹脂滞留時間は前記滞留時間との吐出量比から算出することができる。また、溶融粘度・吐出量・ポリマーフィルターサイズなど計算に必要パラメーターを用いてシミュレーションで求めることも可能である。
【0023】
樹脂温度は押出機出口における樹脂温度であって、ポリマーフィルターに流入する時の樹脂温度であり、ポリマーフィルター内でのポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂流動性を確保するために165℃より高い温度であることが好ましい。樹脂温度は、押出機出口における樹脂温度であり、例えば、押出機出口に具備された樹脂温度計で測定した温度である。ポリマーフィルターを通過する樹脂滞留時間が60/(樹脂温度―165℃)分を超えると、樹脂の熱分解が進行し、本樹脂ペレットを用いて成形体を製造した場合の強度が低下するため好ましくない。ポリマーフィルターを通過する樹脂滞留時間が60/(樹脂温度―165℃)分以内が好ましく、50/(樹脂温度―165℃)分以内がさらに好ましい。
【0024】
ポリマーフィルター内における樹脂滞留時間を上記とするには、成形樹脂温度、ポリマーフィルターの容積および/または押出機樹脂吐出量を適宜設定すればよい。ポリマーフィルターの容積は、例えばリーフディスクフィルターの場合、リーフディスクフィルターの径と枚数を変えることで変更することができる。リーフディスクフィルターは設計上の耐圧上限があり、それを超えないよう樹脂温度・容積・吐出量を選択し滞留時間を決定することが必要である。ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を成形する場合、ポリマーフィルターの設計が合わず熱分解が抑制可能な条件選択ができないことがあるが、本発明によれば所望の生産に適したポリマーフィルターの設計が可能となる。
【0025】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を用いる場合、樹脂温度が高くなると熱分解が著しく進行する。樹脂温度は210℃以下が好ましく、195℃以下がさらに好ましく、185℃より低いことが特に好ましい。185℃以下であっても樹脂滞留時間が長くなることで熱分解が進行するため、上記のよう樹脂温度に応じ、60/(樹脂温度―165℃)を算出し、それ以下の滞留時間とすることで樹脂熱分解を抑制してフィルムの製造が可能となる。
【0026】
樹脂の熱分解が進行すると、例えば、得られた樹脂フィルムの強度(例えば、引裂強度)が落ち、破れやすくなるため、包装体やラベル等強度が必要な用途での使用に適さない傾向がある。フィルムの引裂強度としては1N/μmより高いことが好ましく、1.5N/μmより高いことが好ましい。
【0027】
本実施の形態に係る原料樹脂組成物は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含む樹脂である。
【0028】
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂(以下、「P3HA系樹脂」と称することがある。)は、生分解性を有する脂肪族ポリエステル(芳香環を含まないポリエステル)であり、一般式:[-CHR-CH-CO-O-]で示される3-ヒドロキシアルカン酸繰り返し単位(式中、RはCnH2n+1で表されるアルキル基で、nは1以上15以下の整数である。)を含むポリヒドロキシアルカノエートである。中でも、当該繰り返し単位を、全モノマー繰り返し単位(100モル%)に対して50モル%以上含むものが好ましく、より好ましくは70モル%以上である。
【0029】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂の中でも、特に入手しやすい、加工しやすい等の点で、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を好ましく用いることができる。
【0030】
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂(以下、「P3HB系樹脂」と称することがある。)は、微生物から生産され得る脂肪族ポリエステル樹脂であって、3-ヒドロキシブチレートを繰り返し単位とするポリエステル樹脂である。当該ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、3-ヒドロキシブチレートのみを繰り返し単位とするポリ(3-ヒドロキシブチレート)であってもよいし、3-ヒドロキシブチレートと他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体であってもよい。また、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、単独重合体と1種または2種以上の共重合体の混合物、又は、2種以上の共重合体の混合物であってもよい。
【0031】
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の具体例としては、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(以下、「P3HB3HH」と称することがある。)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)(以下、「P3HB3HV」と称することがある。)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタデカノエート)等が挙げられる。中でも、工業的に生産が容易であることから、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましい。
【0032】
更には、繰り返し単位の組成比を変えることで、融点、結晶化度を変化させ、ヤング率、耐熱性などの物性を変化させることができ、ポリプロピレンとポリエチレンとの間の物性を付与することが可能であること、また、工業的に生産が容易であり、物性的に有用なプラスチックであるという観点から、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)が好ましい。特に、180℃以上の加熱下で熱分解しやすい特性を有するポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の中でも、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)は融点を低くすることができ、低温での成形加工が可能となる観点からも好ましい。
【0033】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)の市販品としては、株式会社カネカ「カネカ生分解性ポリマーGreen Planet」(登録商標)などが挙げられる。
【0034】
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)は、3-ヒドロキシブチレート成分と3-ヒドロキシバリレート成分の比率によって融点、ヤング率などが変化するが、両成分が共結晶化するため結晶化度は50%以上と高く、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)に比べれば柔軟ではあるが、脆性の改良は不充分である。
【0035】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体を含む場合、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を構成する全モノマー単位に占める3-ヒドロキシブチレート単位および他のヒドロキシアルカノエート単位の平均含有比率は、延伸フィルムの強度と生産性を両立する観点から、3-ヒドロキシブチレート単位/他のヒドロキシアルカノエート=99/1~80/20(モル%/モル%)が好ましく、97/3~85/15(モル%/モル%)がより好ましい。
【0036】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を構成する全モノマー単位に占める各モノマー単位の平均含有比率は、当業者に公知の方法、例えば国際公開2013/147139号の段落[0047]に記載の方法により求めることができる。平均含有比率とは、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を構成する全モノマー単位に占める各モノマー単位のモル比を意味し、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が2種以上のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の混合物である場合、混合物全体に含まれる各モノマー単位のモル比を意味する。
【0037】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、構成モノマーの種類及び/又は構成モノマーの含有割合が互いに異なる少なくとも2種のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の混合物であってもよい。この場合、少なくとも1種の高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂と、少なくとも1種の低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を組み合わせて使用することができる。
【0038】
一般に、高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は生産性に優れるが機械強度が乏しい性質を有し、低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は生産性に劣るが優れた機械特性を有する。両樹脂を併用すると、高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が微細な樹脂結晶粒子を形成し、低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が、該樹脂結晶粒子同士を架橋するタイ分子を形成すると推測される。これらの樹脂を組み合わせて使用することで、延伸フィルムの強度及び生産性が改善され得る。
【0039】
前記高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂に含まれる3-ヒドロキシブチレート単位の含有割合は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の混合物を構成する全モノマー単位に占める3-ヒドロキシブチレート単位の平均含有割合よりも高いことが好ましい。
【0040】
高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位を含む場合、該高結晶性の樹脂における他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合は、1モル%以上5モル%未満が好ましく、2以上4モル%以下がより好ましい。
【0041】
前記高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂としては、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、又は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましく、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)がより好ましい。
【0042】
また、前記低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂に含まれる3-ヒドロキシブチレート単位の含有割合は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の混合物を構成する全モノマー単位に占める3-ヒドロキシブチレート単位の平均含有割合よりも低いことが好ましい。
【0043】
低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位を含む場合、該低結晶性の樹脂における他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合は、24~99モル%が好ましく、24~50モル%がより好ましく、24~35モル%がさらに好ましく、24~30モル%が特に好ましい。
【0044】
前記低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂としては、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、又は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましく、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)がより好ましい。
【0045】
高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂と低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を併用する場合、両樹脂の合計量に対する各樹脂の使用割合は特に限定されないが、前者が10重量%以上60重量%以下で、後者が40重量%以上90重量%以下であることが好ましく、前者が25重量%以上45重量%以下で、後者が55重量%以上75重量%以下であることがより好ましい。
【0046】
一実施形態によると、前記高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂と、前記低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂に加えて、さらに、結晶性が両樹脂の中間にある中結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を組み合わせて使用することができる。
【0047】
中結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位を含む場合、該中結晶性の樹脂における他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合は、5モル%以上24モル%未満であることが好ましく、5モル%以上22モル%以下がより好ましく、5モル%以上20モル%以下がさらに好ましく、5モル%以上18モル%以下が好ましい。
【0048】
前記中結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂としては、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、又は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましく、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)がより好ましい。
【0049】
前記中結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂をさらに併用する場合、高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂、低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂、及び、中結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の合計に対する中結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の割合は、1重量%以上99重量%以下が好ましく、5重量%以上90重量%以下がより好ましく、8重量%以上85重量%以下がさらに好ましい。
【0050】
2種以上のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂のブレンド物を得る方法は特に限定されず、微生物産生によりブレンド物を得る方法であってよいし、化学合成によりブレンド物を得る方法であってもよい。また、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等を用いて2種以上の樹脂を溶融混練してブレンド物を得てもよいし、2種以上の樹脂を溶媒に溶解して混合・乾燥してブレンド物を得ても良い。
【0051】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂全体の重量平均分子量は、特に限定されないが、延伸フィルムの強度と生産性を両立する観点から、20万~200万が好ましく、25万~150万がより好ましく、30万~100万が更に好ましい。
【0052】
また、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が2種以上のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の混合物である場合、該混合物を構成する各ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されない。しかし、前述した高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂と低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂とを併用する場合、高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の重量平均分子量は、延伸フィルムの強度と生産性を両立する観点から、20万~100万が好ましく、22万~80万がより好ましく、25万~60万が更に好ましい。一方、低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の重量平均分子量は、延伸フィルムの強度と生産性を両立する観点から、20万~250万が好ましく、25万~230万がより好ましく、30万~200万が更に好ましい。また、前述した中結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂をさらに使用する場合、中結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の重量平均分子量は、延伸フィルムの強度と生産性を両立する観点から、20万~250万が好ましく、25万~230万がより好ましく、30万~200万が更に好ましい。
【0053】
なお、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の重量平均分子量は、クロロホルム溶液を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(島津製作所社製HPLC GPC system)を用い、ポリスチレン換算により測定することができる。該ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるカラムとしては、重量平均分子量を測定するのに適切なカラムを使用すればよい。
【0054】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の製造方法は特に限定されず、化学合成による製造方法であってもよいし、微生物による製造方法であってもよい。中でも、微生物による製造方法が好ましい。微生物による製造方法については、公知の方法を適用できる。例えば、3-ヒドロキシブチレートと、その他のヒドロキシアルカノエートとのコポリマー生産菌としては、P3HB3HVおよびP3HB3HH生産菌であるアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、P3HB4HB生産菌であるアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)等が知られている。特に、P3HB3HHに関し、P3HB3HHの生産性を上げるために、P3HA合成酵素群の遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32,FERM BP-6038)(T.Fukui,Y.Doi,J.Bateriol.,179,p4821-4830(1997))等がより好ましく、これらの微生物を適切な条件で培養して菌体内にP3HB3HHを蓄積させた微生物菌体が用いられる。また前記以外にも、生産したいポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂に合わせて、各種ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂合成関連遺伝子を導入した遺伝子組み換え微生物を用いても良いし、基質の種類を含む培養条件の最適化をすればよい。
【0055】
本実施形態に係る樹脂フィルムは延伸処理を行っても良い。延伸処理は公知乃至慣用の方法に従って実施可能であり、フィルムの搬送方向、および/または搬送方向と直行方向の延伸処理をしてもよい。延伸処理は一度フィルムを巻き取った後にオフラインとして実施してもよいし、巻き取らずに連続して実施しても良い。延伸することで延伸方向の強度が上がり、包装用途に好適に用いることができる。
【0056】
本実施形態に係る樹脂フィルムは特にフィルム中異物が少ないことが好ましい用途として、包装体、ラベル等の用途に好適に用いることができるものである。
【0057】
本実施形態に係る樹脂ペレットは、フィルム100m当たりに大きさが50μm以上の異物が10個以下であることが好ましい。
【0058】
本実施形態に係る異物とは、成形体において印刷抜け等の欠陥を生じやすい50μm以上の大きさの異物(塊状固体の最も大きくなるよう測った径、繊維の長さ)であり、その材質は特に制限はないが、例えば樹脂ペレット材料と異なる樹脂や、金属粉、繊維くず等を挙げることができる。異物がフィルム100m当たりに大きさが50μm以上の異物が10個以下であることが好ましく、さらに好ましくは8個以下、特に好ましくは3個以下である。
【0059】
本実施形態に係るフィルムに用いる原料は、発明の効果を阻害しない範囲で、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂と共に使用可能な添加剤を含んでもよい。添加剤としては顔料、染料などの着色剤、活性炭、ゼオライト等の臭気吸収剤、バニリン、デキストリン等の香料、充填材、可塑剤、酸化防止剤、抗酸化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤、摺動性改良剤等が挙げられる。添加剤としては1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これら添加剤の含有量は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。
【0060】
以下、結晶核剤、滑剤、充填材、及び可塑剤について、さらに詳しく説明する。
【0061】
(結晶核剤)
前記原料は、結晶核剤も含んでもよい。結晶核剤としては、例えば、ペンタエリスリトール、ガラクチトール、マンニトール等の多価アルコール;オロチン酸、アスパルテーム、シアヌル酸、グリシン、フェニルホスホン酸亜鉛、窒化ホウ素等が挙げられる。中でも、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂の結晶化を促進する効果が特に優れている点で、ペンタエリスリトールが好ましい。結晶核剤は、1種を使用してよいし、2種以上使用してもよく、目的に応じて、使用比率を適宜調整することができる。
【0062】
結晶核剤の使用量は、特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂の総量100重量部に対して、0.1~5重量部が好ましく、0.5~3重量部がより好ましく、0.7~1.5重量部がさらに好ましい。
【0063】
(滑剤)
前記原料は、滑剤も含んでもよい。滑剤としては、例えば、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、N-ステアリルベヘン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、p-フェニレンビスステアリン酸アミド、エチレンジアミンとステアリン酸とセバシン酸の重縮合物等が挙げられる。中でも、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂への滑剤効果が特に優れている点で、ベヘン酸アミド又はエルカ酸アミドが好ましい。滑剤は、1種を使用してもよいし、2種以上使用してもよく、目的に応じて、使用比率を適宜調整することができる。
【0064】
滑剤の使用量は、特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂の総量100重量部に対して、0.01~5重量部が好ましく、0.05~3重量部がより好ましく、0.1~1.5重量部がさらに好ましい。
【0065】
(充填材)
前記原料は、充填材を含有してもよい。充填材を含むことで、より高強度のフィルムとすることができる。前記充填材としては、無機充填材と有機充填材いずれでもあってよく、両者を併用してもよい。無機充填材としては特に限定されないが、例えば、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、燐酸塩、酸化物、水酸化物、窒化物、カーボンブラック等が挙げられる。無機充填材は1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0066】
前記充填材の含有量は、特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂100重量部に対して1~100重量部であることが好ましく、3~80重量部であることがより好ましく、5~70重量部であることが更に好ましく、10~60重量部であることがより更に好ましい。しかし、前記フィルム原料は、充填材を含有しなくともよい。
【0067】
(可塑剤)
前記原料は、可塑剤を含んでもよい。可塑剤としては、例えば、グリセリンエステル系化合物、クエン酸エステル系化合物、セバシン酸エステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物、安息香酸エステル系化合物、フタル酸エステル系化合物、イソソルバイドエステル系化合物、ポリカプロラクトン系化合物、二塩基酸エステル系化合物等が挙げられる。中でも、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂への可塑化効果が特に優れている点で、グリセリンエステル系化合物、クエン酸エステル系化合物、セバシン酸エステル系化合物、二塩基酸エステル系化合物が好ましい。グリセリンエステル系化合物としては、例えば、グリセリンジアセトモノラウレート等が挙げられる。クエン酸エステル系化合物としては、例えば、アセチルクエン酸トリブチル等が挙げられる。セバシン酸エステル系化合物としては、例えば、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。二塩基酸エステル系化合物としては、例えば、ベンジルメチルジエチレングリコールアジペート等が挙げられる。可塑剤は、1種を使用してもよいし、2種以上使用してもよく、目的に応じて、使用比率を適宜調整することができる。
【0068】
可塑剤の使用量は、特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂の総量100重量部に対して、1~20重量部が好ましく、2~15重量部がより好ましく、3~10重量部がさらに好ましい。
【0069】
以下の各項目では、本開示における好ましい態様を列挙するが、本発明は以下の項目に限定されるものではない。
[項目1]
溶融押出法によるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含む樹脂フィルムの製造方法であって、溶融したポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含む樹脂組成物を、ポリマーフィルターを通過させる工程を含み、
前記ポリマーフィルター内における樹脂滞留時間が60/(樹脂温度-165℃)分以内(但し、樹脂温度>165℃。)である、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルムの製造方法。
[項目2]
前記ポリマーフィルターを通過させる工程において、樹脂温度が165℃より高く、185℃以下である、項目1に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルムの製造方法。
[項目3]
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む、項目1又は2に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルムの製造方法。
[項目4]
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含む、項目3に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルムの製造方法。
[項目5]
項目1~4に記載の製造方法によって製造された、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルム。
[項目6]
前記樹脂フィルム100m当たりに含まれる、大きさが50μm以上の異物が10個以下である、項目5に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルム。
[項目7]
引裂強度が、1N/μmより高い、項目5に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルム。
[項目8]
前記ポリ(3-ヒドロキアルカノエート)系樹脂が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含む、項目5に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂フィルム。
【実施例0070】
以下に実施例と比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0071】
実施例においては、以下の原料を使用した。
【0072】
(ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂)
P3HA系樹脂として、下記A-1~A-4のポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HH)樹脂を用いた。以下の3HBは、3-ヒドロキシブチレート繰り返し単位、3HHは、3-ヒドロキシヘキサノエート繰り返し単位を示す。
A-1:P3HB3HH(平均含有比率3HB/3HH=97.2/2.8(モル%/モル%)、重量平均分子量は66万g/mol、ガラス転移温度は6℃)
国際公開第2019/142845号の実施例2に記載の方法に準じて製造した。
A-2:P3HB3HH(平均含有比率3HB/3HH=71.8/28.2(モル%/モル%)、重量平均分子量は66万g/mol、ガラス転移温度は1℃)
国際公開第2019/142845号の実施例9に記載の方法に準じて製造した。
A-3:P3HB3HH(平均含有比率3HB/3HH=94/6(モル%/モル%)、重量平均分子量は60万g/mol、ガラス転移温度は6℃)
国際公開第2019/142845号の実施例1に記載の方法に準じて製造した。
A-4:P3HB3HH(平均含有比率3HB/3HH=94/6(モル%/モル%)、重量平均分子量は40万g/mol、ガラス転移温度は6℃)
国際公開第2019/142845号の実施例1に記載の方法に準じて製造した。
(滑剤)
B-1:ベヘン酸アミド(日本精化社製:BNT-22H)
(結晶核剤)
C-1:ペンタエリスリトール(三菱化学社製、ノイライザーP)
各実施例および比較例においては、以下の評価を実施した。
【0073】
[異物]
樹脂ペレットを単軸押出機機ホッパーに入れ、Tダイからシート状に吐出させ、冷却ロールで冷却させることで、厚さ30μm、300mm幅のロール状に巻いたフィルムとした。このフィルムを欠陥検査機を用いて50μm以上の異物を500m以上検査しフィルム100mあたりの異物量を評価した。
尚、異物が10個/100m以下の場合は〇、30個/100m以上の場合は×、その間の場合は△とした。
【0074】
[フィルムの引裂強度]
JIS P-8116に規定された標準エルメンドルフ引裂試験機に準拠する機能と構造を有する軽荷重引裂度試験機(熊谷理機工業株式会社製:NO.2037特殊仕様機)によって測定される値をフィルムの厚さで除し、フィルムの引裂強度とした。
【0075】
尚、引裂強度3N/μm以上の場合は〇、1N/μm以下の場合は×、その間の場合は△とした。
【0076】
(実施例1)
[樹脂組成物の製造方法]
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂A-1 30重量部、A-2 30重量部 A-3 10重量部、A-4 30重量部に対して、滑剤としてB-1 0.5重量部、結晶核剤としてC-1 1.0重量部をドライブレンドした。得られた樹脂組成物を、φ26mmの同方向二軸押出機ホッパーに投入、溶融混錬し樹脂温度170℃にて通過させダイよりストランド状に押出し、45℃の水を満たした水槽に通してストランドを固化し、ペレタイザーで裁断することにより、樹脂ペレットを得た。
【0077】
得られた樹脂ペレットを単軸押出機機ホッパーに入れ溶融混錬し、リーフディスクポリマーフィルター(ろ過精度20μmカット、5インチ、12枚挿入)を樹脂温度170℃、滞留時間8分にて通過させTダイからシート状に吐出させ、40℃に温調させた冷却ロールで冷却させることで、厚さ30μm、300mm幅のロール状に巻いたフィルムとした。得られたフィルムの引裂強度は3.5N/μmであった。得られた樹脂フィルムの異物を検査した結果、100mあたりの50μm以上の異物は2個であった。評価結果を表1に示す。
【0078】
(実施例2)
ポリマーフィルターを樹脂温度180℃、滞留時間3分にて通過させた以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの引裂強度は3N/μmであった。得られた樹脂フィルムの異物を検査した結果、100mあたりの50μm以上の異物は1個であった。評価結果を表1に示す。
【0079】
(比較例1)
ポリマーフィルターを樹脂温度170℃、滞留時間15分にて通過させた以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの引裂強度は1N/μmであった。得られた樹脂フィルムの異物を検査した結果、100mあたりの50μm以上の異物は3個であった。評価結果を表1に示す。
【0080】
(比較例2)
ポリマーフィルターを樹脂温度170℃、滞留時間20分にて通過させた以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの引裂強度は0.8N/μmであった。得られた樹脂フィルムの異物を検査した結果、100mあたりの50μm以上の異物は3個であった。評価結果を表1に示す。
(比較例3)
ポリマーフィルターを樹脂温度180℃、滞留時間8分にて通過させた以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの引裂強度は0.5N/μmであった。得られた樹脂フィルムの異物を検査した結果、100mあたりの50μm以上の異物は1個であった。評価結果を表1に示す。
(比較例4)
ポリマーフィルターを用いず、押出機とTダイの間に目開き200の金網メッシュを用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの引裂強度は4N/μmであった。得られた樹脂フィルムの異物を検査した結果、100mあたりの50μm以上の異物は100個であった。評価結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
表1より、実施例1および2で示したフィルムは、ポリマーフィルターを用い、好適な条件でろ過したことにより、実用的な異物数とフィルム強度のバランスを有しているため、包装用途フィルムとして好ましく用いることができる。
【0082】
一方、比較例1~3で示したフィルムは、ポリマーフィルターを用いてろ過したため、異物数は少ないものの、ろ過を好適な範囲を超えた時間で行ったため、引裂強度が小さくなり、包装フィルム用途として好ましくない。
【0083】
また、比較例4は、ポリマーフィルターを用いずに製造した樹脂ペレットのため、異物数が多く、成形加工用途として好ましくない。
【符号の説明】
【0084】
10 押出機
11 ギヤポンプ
12 ポリマーフィルター
13 ダイ
14 ダイ出口
15 熱可塑性樹脂組成物
16 弾性ロール
17 キャストロール
18 延伸機
19 巻き取り機
図1