(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013960
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04858 20160101AFI20240125BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20240125BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20240125BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20240125BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/04225
H01M8/04302
H01M8/04537
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116441
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】山川 大輝
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC01
5H127BA02
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127DA01
5H127DB53
5H127DB69
5H127DB89
5H127DB99
5H127DC42
5H127DC45
5H127DC89
5H127DC96
(57)【要約】 (修正有)
【課題】過電流異常を解消することにより、システムの停止を抑制することが可能な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システムは、燃料電池スタックと、負荷と、燃料電池スタックの電圧を所定の電圧に変換する電圧変換装置と、蓄電装置と、メインコンタクタと、蓄電装置の両端電圧を検知する電圧センサと、蓄電装置を介して流れる電流を検知する電流センサと、燃料電池スタックが所定の状態になるように制御する制御部と、を有する。制御部は、燃料電池システムの起動時において、燃料電池スタックの電圧と負荷の電圧との大小関係、または、電圧変換装置に流れる電流のうち少なくともいずれか一方から電圧変換装置による昇降圧の判定を行い、燃料電池スタックの電圧が負荷の電圧よりも大きい場合、または、電圧変換装置に流れる電流が所定値よりも大きい場合のうち少なくともいずれか一方のときには電圧変換装置により降圧する制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池セルを有する燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックに電気的に接続される負荷と、
前記燃料電池スタックと前記負荷との間に電気的に接続され、前記燃料電池スタックの電圧を所定の電圧に変換する電圧変換装置と、
前記電圧変換装置と前記負荷との間に電気的に接続される蓄電装置と、
前記電圧変換装置の下流と前記負荷との間に設けられるメインコンタクタと、
前記蓄電装置の両端電圧を検知する電圧センサと、
前記蓄電装置を介して流れる電流を検知する電流センサと、
前記燃料電池スタックが所定の状態になるように制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
燃料電池システムの起動時において、前記燃料電池スタックの電圧と前記負荷の電圧との大小関係、または、前記電圧変換装置に流れる電流のうち少なくともいずれか一方から前記電圧変換装置による昇降圧の判定を行い、
前記燃料電池スタックの電圧が前記負荷の電圧よりも大きい場合、または、前記電圧変換装置に流れる電流が所定値よりも大きい場合のうち少なくともいずれか一方のときには、前記電圧変換装置により降圧する制御を行うことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記電流センサの取得結果の補正に用いられる内部値を取得しており、
通常起動時は前記電流センサのキャリブリーションを行い、
前記制御部が降圧中と判定した場合には、前記内部値の結果を保持することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記昇降圧の判定のときに、前記燃料電池スタックと前記負荷との電圧の大小関係に加えて、前記電圧変換装置に流れる電流が所定値よりも大きいことも用いることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記電圧変換装置は、ダイオードにより構成される第1経路を有し、
前記制御部は、
前記燃料電池スタックの電圧が前記蓄電装置の電圧よりも高くなった際に、前記燃料電池スタックで発生する電力を前記第1経路によって前記蓄電装置に充電可能な状態とする構成であることを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池スタックの電圧を所定電圧に変換する電圧変換装置(DCDCコンバータ)と、電圧変換装置と負荷との間に電気的に接続される蓄電装置とを備える燃料電池システムが存在する。燃料電池システムでは、ダイオードにより形成された第1経路を有する電圧変換装置で燃料電池スタックの電圧の昇降圧を行うことにより燃料電池スタックの電圧及び電流が制御される。
【0003】
燃料電池システムは、燃料電池スタックの電圧が蓄電装置の電圧よりも高くなった際に、燃料電池スタックで発生する電力を第1経路によって蓄電装置に充電可能な状態と設計されている。
【0004】
燃料電池スタックの電圧は、燃料電池スタックを構成するセル枚数×高電位回避電圧により決定される。燃料電池スタックのセル枚数を所定の式が成立するよう設定すると、燃料電池スタックのセルの枚数を多く設定し、結果として燃料電池スタックの出力をあげることができる。また、燃料電池スタックの電圧が蓄電装置の電圧よりも大きくなる電圧(領域)においては成り行きに任せて電流を流しておくだけで、高電位回避を行い燃料電池スタックの電圧を下げること(以下、「パッシブ降圧」ともいう)ができる燃料電池システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、燃料電池スタックによる発電中に非常停止後すぐに再起動、または、異常停止後すぐに再起動が行われると、メインコンタクタが接続されていない状態、即ち燃料電池スタックと負荷とが電気的に接続されていない状態で燃料電池システムの起動シーケンスが開始されることになり、燃料電池スタックの電圧が開回路電圧まで持ち上がってしまう。その結果、燃料電池スタックの電圧を高電位回避するために電圧制御しようとすると、負荷によって電力が消費されず起動時の電力消費が少なく燃料電池スタックの電圧が目標電圧まで低下するまで一定時間を要することとなる。
【0007】
また、電圧変換装置の内部では、燃料電池スタックの電圧と指令値の差分をフィードバック制御しているが、前述のように燃料電池システムと負荷とが電気的に接続されていない状態で燃料電池システムの起動シーケンスが開始されるため、電圧変換装置のスイッチング動作が意図せず始まってしまう。その結果、起動シーケンスにおいて燃料電池システムに過電流が発生してしまうため、電圧変換装置が異常停止し、その電圧変換装置の異常停止によって燃料電池システムが停止してしまう。
【0008】
本発明の一側面に係る目的は、過電流異常を解消することにより、燃料電池システムの停止を抑制することが可能な燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る一つの態様の燃料電池システムは、複数の燃料電池セルを有する燃料電池スタックと、燃料電池スタックに電気的に接続される負荷と、燃料電池スタックと負荷との間に電気的に接続され、燃料電池スタックの電圧を所定の電圧に変換する電圧変換装置と、電圧変換装置と負荷との間に電気的に接続される蓄電装置と、電圧変換装置の下流と負荷との間に設けられるメインコンタクタと、蓄電装置の両端電圧を検知する電圧センサと、蓄電装置を介して流れる電流を検知する電流センサと、燃料電池スタックが所定の状態になるように制御する制御部と、を有する。制御部は、燃料電池システムの起動時において、燃料電池スタックの電圧と負荷の電圧との大小関係、または、電圧変換装置に流れる電流のうち少なくともいずれか一方から電圧変換装置による昇降圧の判定を行い、燃料電池スタックの電圧が負荷の電圧よりも大きい場合、または、電圧変換装置に流れる電流が所定値よりも大きい場合のうち少なくともいずれか一方のときには、電圧変換装置により降圧する制御を行う。
【0010】
燃料電池システムの状態によっては、燃料電池システムの起動が不安定になる場合があるため、燃料電池システムの起動時に安定して出力準備ができるようになる。これにより、過電流異常を解消することにより、燃料電池システムの停止を抑制することができる。
【0011】
また、制御部は、電流センサの取得結果の補正に用いられる内部値を取得してもよい。制御部は、通常起動時は電流センサのキャリブリーションを行い、制御部が降圧中と判定した場合には、内部値の結果を保持する。
【0012】
通常は燃料電池スタックにより発電がされておらず電流が流れていないため、電流センサのゼロ点補正等のキャリブレーションを行うことができる。この点、発電が行われている状態においては、電流が流れてしまっているため、キャリブレーションを正確に行うことができない。この点、本願発明では、降圧中と判定した場合には、内部値の結果を保持することで、前回の結果を維持したり、所定の制御モードで予め定めた所定の値にしたり、することができる。これにより、既に電流が流れている状態においても、キャリブレーションができないことによる弊害を取り除くことができる。
【0013】
また、制御部は、昇降圧の判定のときに、燃料電池スタックと負荷との電圧大小関係に加えて、電圧変換装置に流れる電流が所定値よりも大きいことも用いてもよい。これにより、降圧の判定をより確実に行うことができる。
【0014】
また、電圧変換装置は、ダイオードにより構成される第1経路を有し、制御部は、燃料電池スタックの電圧が蓄電装置の電圧よりも高くなった際に、燃料電池スタックで発生する電力を第1経路によって蓄電装置に充電可能な状態とする構成としてもよい。
【0015】
これにより、第1経路により成り行きに任せて電流を流しておくだけで、高電位回避を行い燃料電池スタックの電圧を下げることができる。その結果、過電流異常を解消して、燃料電池システムの停止を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、過電流異常を解消することにより、燃料電池システムの停止を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係わる燃料電池システムの一例を示す図である。
【
図2】従来の通常時の燃料電池システムのFC電圧とFC電流等との関係の一例を示す図である。
【
図3】従来の異常発生時の燃料電池システムのFC電圧とFC電流等との関係の一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る燃料電池システムのFC電圧とFC電流等との関係の一例を示す図である。
【
図5】別実施形態に係わる燃料電池システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係わる燃料電池システムの一例を示す図である。
【0020】
図1に示す燃料電池システム1は、フォークリフトなどの産業車両や電気自動車などの車両Veに搭載され、負荷Loに電力を供給する。なお、負荷Loは、走行用モータ、電装部品、コンピュータやメモリなどに電力を供給するための電源などである。また、燃料電池システム1は、非常用電源などの定置型発電機にも適用可能である。
【0021】
また、燃料電池システム1は、燃料電池FCと、電流検出部(電流センサ)Si0と、電圧検出部(電圧センサ)V1、V2と、電力変換装置としてのDCDCコンバータCnvと、リアクトルRe1、Re2、Re3と、電流検出部Si1、Si2、Si3と、メインコンタクタCt1と、出力側のコンタクタCt2と、蓄電装置Sと、制御部Cntとを備える。
【0022】
DCDCコンバータCnvは、電圧変換装置である。DCDCコンバータCnvは、燃料電池FCと、蓄電装置Sとの間に接続される。DCDCコンバータCnvは、6つのスイッチング素子Q1~Q6と、6つのダイオードD1~D6と、コンデンサCdとを備えている。燃料電池FCは、リアクトルRe1、Re2、Re3および電流検出部Si1、Si2、Si3を介して6つのスイッチング素子Q1~Q6および6つのダイオードD1~D6と接続される。電流検出部Si0は、燃料電池FCと、リアクトルRe1、Re2、Re3との間に接続される。スイッチング素子Q1~Q6として、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)を用いている。但し、スイッチング素子として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等を用いてもよい。6つのダイオードD1~D6はそれぞれ、6つのスイッチング素子(MOSFET)Q1~Q6の寄生ダイオードである。
【0023】
正極母線Lpと負極母線Lnとの間に、u相上アームを構成するスイッチング素子Q1と、u相下アームを構成するスイッチング素子Q2が直列接続されている。正極母線Lpと負極母線Lnとの間に、v相上アームを構成するスイッチング素子Q3と、v相下アームを構成するスイッチング素子Q4が直列接続されている。正極母線Lpと負極母線Lnとの間に、w相上アームを構成するスイッチング素子Q5と、w相下アームを構成するスイッチング素子Q6が直列接続されている。
【0024】
正極母線Lp、負極母線LnにはコンデンサCdを介して蓄電装置Sが接続されている。
【0025】
DCDCコンバータCnvをMOSFETと、MOSFETの寄生ダイオードで構成することにより、DCDCコンバータCnvの構成をメカニカルスイッチ等で構成するよりも簡単な構成で作成することができ、燃料電池システム1の小型化を図ることができる。
【0026】
燃料電池FCから供給された電力がダイオードD1、D3、D5、または、D2、D4、D6を通る経路を、以下「第1経路」と呼ぶ。また、燃料電池FCから供給された電力がスイッチング素子Q1、Q3、Q5、または、Q2、Q4、Q6を通る経路を、以下「第2経路」と呼ぶ。
【0027】
u相上アームを構成するスイッチング素子Q1と、v相上アームを構成するスイッチング素子Q3と、w相上アームを構成するスイッチング素子Q5とが正極母線Lpを介して負荷Loに接続されている。u相下アームを構成するスイッチング素子Q2と、v相下アームを構成するスイッチング素子Q4と、w相下アームを構成するスイッチング素子Q6とが負極母線Lnを介して負荷Loに接続されている。
【0028】
上下のアームを構成するスイッチング素子Q1~Q6のスイッチング動作に伴い、蓄電装置Sの電圧である直流電圧を負荷Loに供給できるようになっている。負荷Loは、例えば車両駆動用モータや荷役用モータである。
【0029】
各スイッチング素子Q1~Q6のゲート端子には、制御部Cntが接続されている。制御部Cntは、制御信号CSであるパルスパターンに基づいてDCDCコンバータCnvのスイッチング素子Q1~Q6をスイッチング動作させる。
【0030】
三相交流のDCDCコンバータCnvは、入力される制御信号CSによりスイッチング素子Q1~Q6をオン、オフすることで、燃料電池FCの電圧(以下、「FC電圧」とも呼ぶ)を一定電圧に変換し、負荷Loや蓄電装置Sに出力する。
【0031】
リアクトルRe1は、電流検出部Si0と、スイッチング素子Q1-スイッチング素子Q2間との間に接続される。リアクトルRe2は、電流検出部Si0と、スイッチング素子Q3-スイッチング素子Q4間との間に接続される。リアクトルRe3は、電流検出部Si0と、スイッチング素子Q5-スイッチング素子Q6間との間に接続される。
【0032】
電流検出部Si1は、リアクトルRe1と、スイッチング素子Q1-スイッチング素子Q2間との間に接続される。電流検出部Si2は、リアクトルRe2と、スイッチング素子Q3-スイッチング素子Q4間との間に接続される。電流検出部Si3は、リアクトルRe3と、スイッチング素子Q5-スイッチング素子Q6間との間に接続される。
【0033】
燃料電池FCは、互いに直列接続される複数の燃料電池セルにより構成される燃料電池スタックであり、制御部Cntの制御に基づき供給される燃料(水素)と空気(酸素)との電気化学反応を利用して発電を行う。蓄電装置Sは、リチウムイオンキャパシタなどにより構成され、DCDCコンバータCnvと負荷Loとの間に接続される。
【0034】
DCDCコンバータCnvから出力される電力が、負荷Loが要求する電力より大きい場合、余剰分の電力が蓄電装置Sに供給され、蓄電装置Sが充電される。また、DCDCコンバータCnvから出力される電力が、負荷Loが要求する電力より小さい場合、不足分の電力が蓄電装置Sから負荷Loに供給される。また、負荷Loから蓄電装置Sに回生電力が供給されると、蓄電装置Sが充電される。なお、蓄電装置Sは、充電及び放電することが可能な蓄電装置(リチウムイオン電池など)であれば、リチウムイオンキャパシタに限定されない。
【0035】
電流検出部Si0は、電流計などにより構成され、燃料電池FCからDCDCコンバータCnvに流れる電流を検出し、その検出した電流を制御部Cntに出力する。
【0036】
電流検出部(電流検出手段)Si1は、電流計などにより構成され、スイッチング素子Q1またはスイッチング素子Q2を介してDCDCコンバータCnvに流れる電流を検出し、その検出した電流を制御部Cntに出力する。
【0037】
電流検出部(電流検出手段)Si2は、電流計などにより構成され、スイッチング素子Q3またはスイッチング素子Q4を介してDCDCコンバータCnvに流れる電流を検出し、その検出した電流を制御部Cntに出力する。
【0038】
電流検出部(電流検出手段)Si3は、電流計などにより構成され、スイッチング素子Q5またはスイッチング素子Q6を介してDCDCコンバータCnvに流れる電流を検出し、その検出した電流を制御部Cntに出力する。電圧検出部(スタック電圧検出手段)V1は、電圧計などにより構成され、燃料電池FCの電圧を検出し、その検出した電圧を制御部Cntに出力する。電圧検出部(蓄電電圧検出手段)V2は、電圧計などにより構成され、蓄電装置Sの両端電圧を検出し、その検出した電圧を制御部Cntに出力する。
【0039】
DCDCコンバータCnvと蓄電装置Sとの間には、メインコンタクタCt1が設けられる。メインコンタクタCt1は、通常はオンであり、メインコンタクタCt1のオン/オフは制御部Cntによって制御される。
【0040】
DCDCコンバータCnvと負荷Loとの間には、出力側のコンタクタCt2が設けられる。出力側のコンタクタCt2は、通常はオンであり、出力側のコンタクタCt2のオン/オフは、車両Ve側に搭載された制御部によって制御される。出力側のコンタクタCt2のオン/オフは、制御部Cntによって制御されてもよい。
【0041】
制御部Cntは、CPU(Central Processing Unit)またはプログラマブルなデバイス(FPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device))などにより構成され、制御信号CSを出力する。制御部Cntは、DCDCコンバータCnvの動作を制御することで燃料電池FCの発電量(電力)を制御する。すなわち、燃料電池FCに供給される燃料(水素)や空気(酸素)の量が増加するほど、燃料電池FCの発電量が増加し、燃料電池FCに供給される燃料や空気の量が減少するほど、燃料電池FCの発電量が減少する。なお、制御部Cntは、燃料電池FCに供給される燃料や空気の量を段階的に増加または減少させてもよい。また、制御部Cntは、燃料電池FCに供給される燃料や空気の量をゼロにすると、所定時間経過後に、燃料電池FCの発電が停止して燃料電池FCの発電量がゼロになるものとする。また、燃料電池FCの発電中において、燃料電池FCから出力される電流が増加するほど、燃料電池FC(燃料電池セル)の電圧が減少し、燃料電池FCから出力される電流が減少するほど、燃料電池FC(燃料電池セル)の電圧が増加するものとする。
【0042】
また、制御部Cntは、負荷Loや蓄電装置Sから要求される電力に応じた電流が燃料電池FCから出力されるように、かつ、燃料電池FCの電圧が閾値を超えないように、DCDCコンバータCnvの動作を制御する。なお、燃料電池FCの電圧が閾値を超えて燃料電池FCが劣化しないように、DCDCコンバータCnvに流れる電流を調整する処理を高電位回避処理という。また、負荷Loや蓄電装置Sから要求される電力が増加するほど、制御信号CSのデューティ比が増加し、負荷Loや蓄電装置Sから要求される電力が減少するほど、制御信号CSのデューティ比が減少するものとする。また、閾値は、燃料電池FCが劣化するおそれがあるときの燃料電池FCの電圧とし、燃料電池FCの電圧が閾値を超えそうなとき、制御信号CSのデューティ比の減少が制限される。燃料電池システム1では、高電位回避を行うために燃料電池FCのセル当たりの電圧が第1の閾値以上とならないように設定している。この第1の閾値の電圧を、以下「高電位回避電圧」という。
【0043】
本実施形態においては、低コストの燃料電池システム1を作るために、燃料電池FCを構成するセルの枚数を減らして、昇圧式のDCDCコンバータCnvで燃料電池FCの電圧を昇圧させる構成としている。燃料電池FCの電圧は、下記式1を満たすよう設定される。
【0044】
燃料電池FCの電圧≦高電位回避電圧×セル枚数・・・式1
DCDCコンバータCnvは、昇圧式なので、通常の運転時、即ち、負荷Loにより電流が引かれている場合には、燃料電池FCの電圧が、蓄電装置Sの電圧とオーバーラップしないよう、燃料電池FCの電圧が、蓄電装置Sの電圧よりも小さくなるようにセルの枚数を調整される。但し、燃料電池FCの電圧が小さくなるようにし過ぎると、セルの枚数が少なくなり過ぎる。その結果、燃料電池FCの出力が不足するため、燃料電池システムとして成立しなくなる。
【0045】
したがって、本実施形態においては、高電位回避を行うとともに、燃料電池システム1の出力を向上するために、燃料電池システム1は、燃料電池FCの電圧が蓄電装置Sの電圧よりも高くなった際に、パッシブ降圧が実施され、燃料電池FCの電圧が蓄電装置Sの電圧よりも低くなった際に、昇圧が実施されるように設定する。具体的には、負荷Loや蓄電装置Sからの要求電力がなくなった際に燃料電池FCによる発電を停止し、高電位回避電圧×セル枚数の値が蓄電装置Sの電圧よりも高くなった際にパッシブ降圧が実施されるようにセル枚数が定められている。なお、燃料電池システム1は、燃料電池FCによる発電中は燃料電池FCの電圧が蓄電装置Sの電圧よりも低くなった際に昇圧が実施されるようにセル枚数が定められている。これにより、DCDCコンバータCnvの動作すべきタイミングが明確になるため、DCDCコンバータCnvの制御が容易となる。
【0046】
制御部Cntは、発電を停止した際に燃料電池FCで発生する電力を第1経路(ダイオードD1、D3、D5)または第2経路(スイッチング素子Q1、Q3、Q5)のうち少なくとも一方によって蓄電装置Sに充電可能な状態とする。
【0047】
本実施形態において、発電を停止した際に燃料電池FCで発生する電力とは、制御部Cntの制御に基づき供給がゼロにされた燃料や空気のうち、燃料電池システム1内に残留する燃料や空気の反応により生じる電力をいう。また、燃料電池FCによる発電を停止とは、燃料電池FCの発電量が完全にゼロになる場合だけでなく、燃料電池FCによる発電を抑制し、燃料電池FCの発電量が限りなくゼロに近くなる場合も含まれる。したがって、発電を停止した際には、第1経路(ダイオードD1、D3、D5)の方へ電流を流すことにより、燃料電池FCの電流(以下、「FC電流」とも呼ぶ)を蓄電装置Sで充電することができる。
【0048】
また、燃料電池システム1では、蓄電装置Sが過充電とならないように、燃料電池FCの電圧が第2の閾値以上とならないように設定している。この第2の閾値の電圧を、以下「発電停止電圧」という。発電停止電圧は、燃料電池システム1の固有の値である。例えば、蓄電装置SのSOC(State Of Charge)の所定の割合(蓄電残量)における電圧を発電停止電圧として使用する。蓄電装置Sの電圧が発電停止電圧を超えた際に、燃料電池FCによる発電を停止する。燃料電池FCのセルの枚数は、下記式2により決定する。
【0049】
セル枚数×高電位回避電圧=発電停止電圧+Vf・・・式2
Vfは、ダイオードD1、D3、D5による損失分の閾値電圧(立ち上がり電圧)である。燃料電池FCの電圧は、セル枚数×高電位回避電圧により決定される。
【0050】
燃料電池FCのセル枚数を式2が成立するよう設定すると、燃料電池FCのセルの枚数を多く設定し、結果として燃料電池FCの出力をあげることができる。また、燃料電池FCの電圧が蓄電装置Sの電圧よりも大きくなる電圧(領域)においては成り行きに任せて電流を流しておくだけで、高電位回避を行い燃料電池FCの電圧を下げることができる。
【0051】
負荷Loにより電流が引かれている場合には、燃料電池FCの電圧は下がるので、DCDCコンバータCnvは燃料電池FCの電圧を昇圧して所望の電圧を出力する。昇圧する場合には、DCDCコンバータCnvは、上アームのスイッチング素子Q1、Q3、Q5を全てOFFにし、下アームのスイッチング素子Q2、Q4、Q6の位相をずらしてON-OFFする。
【0052】
負荷Loにより電流が引かれていない場合には、制御部Cntは、燃料電池FCによる発電を停止する。但し、燃料電池FCによる発電が停止された場合であっても、負荷Loにより電力が引かれない場合には、残留する燃料(水素)や空気(酸素)の反応で生じる電力により燃料電池FCの電圧が上がる。そして、下記式3を満たし、燃料電池FCの電圧が蓄電装置Sの電圧よりも高くなると、DCDCコンバータCnvにより昇圧することはできなくなる。
【0053】
燃料電池FCの電圧>蓄電装置Sの電圧・・・式3
発電を停止した際に、式3の状態となった場合であっても、式2で設定したセル枚数とすることにより、成り行きで第1経路の方へ電流を流れるように、燃料電池FCの電流を蓄電装置Sで充電させることができ、燃料電池FCのセルが高電位回避電圧以下となる状態を維持できる。成り行きで電流を流す場合には、DCDCコンバータCnvは、上アームのスイッチング素子Q1、Q3、Q5、下アームのスイッチング素子Q2、Q4、Q6を全てOFFにする。式3の関係が成立している場合には、燃料電池FCで発生した電流は、上アームのダイオードD1、D3、D5を通って蓄電装置Sへ流れる。
【0054】
したがって、寄生ダイオードである上アームのダイオードD1、D3、D5の特性を活用して、成り行きで高電位回避を行うことができる。また、燃料電池FCの電圧と蓄電装置Sの電圧とのオーバーラップを許容することができるため、燃料電池FCのセルの枚数を増加させて、燃料電池FCの出力をあげることができる。
【0055】
また、式2を満たすセル枚数とすると、昇圧式のDCDCコンバータCnvを動かさずに(即ち制御せずに)成り行きで高電位回避を行うことができつつ、燃料電池FCの出力を最適とした状態が決まる。よって、燃料電池システム1の制御が複雑にならずに、セル枚数の最適化を図ることができる。
【0056】
このように、実施形態の燃料電池システム1では燃料電池FCの電圧が蓄電装置Sの電圧よりも高くなった際に、燃料電池FCで発生する電力をダイオードD1、D3、D5(第1の経路)またはスイッチング素子Q1、Q3、Q5(第2経路)のうち少なくとも一方によって蓄電装置Sに充電可能な状態とする構成である。
【0057】
これにより、負荷Loにより電流が引かれていない場合には、制御部Cntは、燃料電池FCによる発電を停止した場合であっても、成り行きで第1経路の方へ電流を流れるようセル枚数を決定することで、燃料電池FCの電流を蓄電装置Sで充電させることができる。これにより、高電位回避を行うことができるとともに、燃料電池システム1の出力を向上することができる。
【0058】
また、制御部Cntは、燃料電池FCによる発電中は燃料電池FCの電圧が蓄電装置Sの電圧よりも低くなるようにDCDCコンバータCnvを制御する。具体的には、負荷の負荷Loや蓄電装置Sからの要求電力が発生したときに燃料電池FCによる発電を開始し、制御部Cntは要求電力に応じた目標の電流となるようDCDCコンバータCnvを制御する。これにより、DCDCコンバータCnvを動作すべきタイミングを明確にすることができるため、DCDCコンバータCnvの制御が容易となる。
【0059】
また、制御部Cntは、燃料電池FCの発電電圧範囲(燃料電池FCの制御における下限電圧及び上限電圧の範囲)のうち最も低い電圧を、蓄電装置Sの利用電圧範囲(蓄電装置Sの下限SOC及び上限SOCから設定した電圧の範囲)のうち最も低い電圧よりも低い電圧に設定する。これにより、蓄電装置Sの性能を可能な限り多く活用することができる。
【0060】
また、DCDCコンバータCnvのスイッチング素子をMOSFETで構成し、ダイオードをMOSFETの寄生ダイオードで構成する。これにより、DCDCコンバータCnvの構成をメカニカルスイッチ等で構成するよりも簡単な構成で作成することができ、燃料電池システム1の小型化を図ることができる。
【0061】
制御部Cntは、メインコンタクタCt1がオンした状態で、燃料電池FCの電圧と負荷Loの電圧との大小関係、または、DCDCコンバータCnvに流れる電流のうち少なくともいずれか一方に基づいて、DCDCコンバータCnvによる昇降圧の判定を行う。
【0062】
好ましくは、制御部Cntは、メインコンタクタCt1がオンした状態で、燃料電池FCの電圧と負荷Loの電圧との大小関係に加えて、DCDCコンバータCnvに流れる電流に基づいて、DCDCコンバータCnvによる昇降圧の判定を行う。これにより、昇降圧判定の精度を向上することができる。
【0063】
そして、制御部Cntは、燃料電池FCの電圧が負荷Loの電圧よりも大きい場合、または、DCDCコンバータCnvに流れる電流が所定値よりも大きい場合のうち少なくともいずれか一方のときには、DCDCコンバータCnvにより降圧する制御を行う。この場合、制御部Cntは、パッシブ降圧を実施して燃料電池FCの電圧及び電流の制御を実施する。
【0064】
制御部Cntは、燃料電池システム1の起動時において、燃料電池FCの電圧と負荷Loの電圧との大小関係、または、DCDCコンバータCnvに流れる電流のうち少なくともいずれか一方からDCDCコンバータCnvによる昇降圧の判定を行い、燃料電池FCの電圧が負荷Loの電圧よりも大きい場合、または、DCDCコンバータCnvに流れる電流が所定値よりも大きい場合のうち少なくともいずれか一方のときには、DCDCコンバータCnvにより降圧する制御切替指令のフラグを立てる。制御部Cntから制御切替指令のフラグを受けたDCDCコンバータCnvの制御部(不図示)は、DCDCコンバータCnvを制御することにより、電圧制御及び電流制御を実施する。
【0065】
電圧制御は、間欠運転など、負荷Loが小さい時に実施する制御である。電圧制御時においては、制御部Cntより指示される電圧指令値が維持される。電圧制御時においては、燃料電池FCの劣化抑制のため、実電圧よりフィードバック制御を行いながら高電位回避が実施される。電圧制御時の高電位回避は、DCDCコンバータCnvの単相(u相、v相、w相のうちの1相)により制御される。
【0066】
電圧検出部V2は、分圧抵抗やIC(Integrated Circuit)などにより構成され、蓄電装置Sの両端電圧に応じた電圧を検出して制御部Cntに出力する。制御部Cntは、電圧検出部V2から出力される電圧に基づいて蓄電装置Sの両端電圧を検知する。
【0067】
電流検出部Si0は、シャント抵抗やオペアンプ、またはホール素子などにより構成され、蓄電装置Sに流れる電流に応じた電圧を検出して制御部Cntに出力する。制御部Cntは、電流検出部Si0から出力される電圧に基づいて蓄電装置Sを介して流れる電流を検知する。
【0068】
また、制御部Cntは、電流検出部Si0による電流の取得結果の補正に用いられる内部値を取得する。内部値には、変数や指令値等の値が含まれる。
【0069】
図2は、従来の通常時の燃料電池システム1のFC電圧とFC電流等との関係の一例を示す図である。なお横軸は時間で、縦軸は燃料電池システム1に関連する各項目の大小関係を模式的に示しており、以降で説明する
図3及び
図4も同様である。燃料電池システム1に関連する各項目として、例えば、FCC電圧指令値、FC電圧、FCC電流指令値、FC電流、燃料電池FCに空気を供給するエアコンプレッサの回転数指令値の高低や、エアコンプレッサ回転数の大小が示されている。
図2、
図3においては、燃料電池システム1に関連する各項目の値が、縦軸に沿って遷移することにより、燃料電池システム1に関連する各項目の大小関係が示されている。
図2に示すように、燃料電池システム1に異常が発生していない通常時には、燃料電池システム1の起動シーケンスのフェーズ(以下、「FCシステムフェーズ」と呼ぶ)は、センサチェック、水素入れ、空気入れ、起動前充電(低負荷充電)、発電の順に移行する。
【0070】
センサチェックのFCシステムフェーズP11においては、DCDCコンバータCnvは、内部値を初期化(以下、「内部値初期化」とも呼ぶ)して、センサ値のキャリブレーション(以下、「センサ値キャリブレーション」とも呼ぶ)を行った後に、電圧電流フィードバック(F/B)制御を行う。センサ値には、DCDCコンバータCnvが有する電流検出部Si1、Si2、Si3が検出した電流値等が含まれる。
【0071】
FCシステムフェーズがセンサチェックから水素入れのFCシステムフェーズP12に移行した場合、すなわち、メインコンタクタCt1がオンとなったタイミングで、制御部Cntは、燃料電池FCの電圧指令値としてFCC電圧指令値を不図示のメモリなどから読み込む。そして、FCシステムフェーズが水素入れから空気入れのFCシステムフェーズP13に移行すると、FC電流(燃料電池FCに流れる電流)は成り行きで流れるため一時的に上昇する。そして、電圧・電流制御判定が電圧制御から電流フィードバック(F/B)制御のFCシステムフェーズP14に移行すると、FC電流はFCC電流指令値に張り付いて制御される。そして、負荷Loから電流が引かれると、FCシステムフェーズが起動前充電(低負荷充電)から発電のFCシステムフェーズP15へ移行する。
【0072】
図3は、従来の異常発生時の燃料電池システム1のFC電圧とFC電流等との関係の一例を示す図である。なお、
図3においては、FCC電圧指令値がFC電圧よりも低い状態であり、残留する燃料や空気により、FC電圧が当該FCC電圧指令値よりも高い状態となるため、FCC電圧指令値の記載については省略する。
【0073】
異常発生時には、メインコンタクタCt1がオフとなり、
図3に示すように、燃料電池FCの内部に残留する燃料と空気により、FC電圧が異常の状態(FCC電圧指令値よりも高い状態)で止まってしまう(維持されている)。この場合、エアコンプレッサはOFFとなり、空気は供給されておらずエアコンプレッサ回転数は0(ゼロ)となっている。
【0074】
通常時においては、FCシステムフェーズがセンサチェックから水素入れのタイミングで電圧制御に切り替わるところ、異常発生時においては、電圧・電流制御判定は電圧制御のままとなって停止している。このため、異常発生時においては、FCC電圧指令値が読み込まれていない状態で切り替わってしまうため、本来は、DCDC内部指令値通りに緩やかに稼働するところ、DCDCコンバータCnvの内部指令値(以下、「DCDC内部指令値」とも呼ぶ)に基づきDuty比が100%の状態P21が発生してしまう。これは、本来制御部が電圧制御を行い、負荷Loへ電流を流せる状態にすることで燃料電池FCの電圧を下げようとするために発生する。
【0075】
異常発生後における再起動時はメインコンタクタCt1がオフの状態のため、Duty比が100%の状態P21となっていても問題はすぐに発生しないが、センサチェックが完了し水素入れに遷移した際、スイッチング素子Q1~Q6が繋がった状態のままメインコンタクタCt1が接続され、正極母線Lpの経路が繋がった状態で燃料電池FCから負荷Loへ電流が流れる。その結果、DCDCコンバータCnvに流れる電流が閾値を超え、過電流の異常が起きてしまい、燃料電池システム1が停止してしまうという問題があった。これに対し、本願発明の実施形態に係る燃料電池システム1においては、
図4に示す制御を行うこととした。
【0076】
図4は、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1のFC電圧とFC電流等との関係の一例を示す図である。
【0077】
図4を参照して、燃料電池システム1の再起動後のDCDCコンバータCnvの挙動について説明すると、従来は、センサチェックのFCシステムフェーズで行われるセンサ値キャリブレーションを必須の要件としていた。これに対し、本発明の実施の形態においては、DCDCコンバータCnvの起動後に、DCDCコンバータCnvが昇圧の制御(アクティブ昇圧)が行われているか、降圧(パッシブ降圧)の制御が行われているかを判定する昇降圧判定を行う。昇降圧判定は、DCDCコンバータCnvの電圧によって判断しているがこれに限られるものではない。例えば、DCDCコンバータCnvに流れる電流に基づいて昇降圧判定を行うこともできる。更に好ましくは、DCDCコンバータCnvの電圧及びDCDCコンバータCnvに流れる電流に基づいて昇降圧判定を行うこともできる。これにより、昇降圧判定をより確実に行うことができる。
【0078】
昇降圧判定の結果、アクティブ昇圧が行われていると判定された場合には、すなわち、通常起動時においては、DCDCコンバータCnvは、内部値初期化を行った後に、センサ値キャリブレーションを行い、電圧による制御、または、電流によるフィードバック(F/B)制御を行う。
【0079】
昇降圧判定の結果、DCDCコンバータCnvが降圧中と判定された場合、すなわちパッシブ降圧が行われていると判定された場合には、DCDCコンバータCnvは、内部値の結果をキャリブレーションする代わりに、停止前内部値(停止前固定値)を内部値として保持(代入)する。停止前内部値とは、DCDCコンバータCnvが異常停止する前に保持していた値であり、センサ値キャリブレーションによって失われることを防ぐ目的で保持される。その結果、停止前内部値を内部値として保持(代入)することで、センサ値キャリブレーションができない状況でのDCDCコンバータCnvの停止を抑制することができる。
【0080】
その後、制御部Cntは、DCDCコンバータCnvにより電圧制御が行われているか電流制御が行われているかを判定する。電圧制御が行われているか電流制御が行われているかの判定は、水素入れと空気入れのFCシステムフェーズが完了しているか否かに基づき判定することができる。例えば、水素入れと空気入れのFCシステムフェーズが完了している場合には、電流制御が行われていると判定することができ、空気入れのFCシステムフェーズが完了していない場合には、電圧制御が行われていると判定することができる。
【0081】
判定の結果、電圧制御が行われている場合には、DCDCコンバータCnvは、内部指令値を固定(以下、「内部値指令値固定」とも呼ぶ)することで、パッシブ降圧中は従来に示すようにDuty比が100%に張り付くことなく制御を行うことができる。内部指令値とは、フィードバック(F/B)制御で用いられるFCC電圧指令値が含まれる。停止前内部値には、内部指令値も含まれる。
【0082】
判定の結果、電流制御の場合には、負荷Loから電流が引かれているため、DCDCコンバータCnvは、フィードバック(F/B)制御を行いながら、FC電圧もすぐに低下させることができる。その結果、すぐにアクティブ昇圧に切り替えることができる。
【0083】
その結果、従来においては、
図3に示すように、水素入れのタイミングで、Duty比が100%となって、パッシブ降圧が終わった瞬間にアクティブ昇圧が急に行われて、Duty比が100%となりメインコンダクタCt1がオンになってしまい過電流が発生していたところ、本発明の実施形態においては、Duty比が上昇してほぼ100%となってしまうことにより発生する過電流を抑止することができる。その結果、過電流の発生による燃料電池システム1の停止を抑制することができる。
【0084】
図4に示すように、DCDCコンバータCnvの起動後、センサチェックのFCシステムフェーズP31においてメインコンタクタCt1がオンとなることによって、パッシブ降圧が行われる。パッシブ降圧が終わって、FCC電圧指令値がFC電圧に向かって下がっていくため、パッシブ降圧が終わっても問題なく電流制御を行うことができる。
【0085】
また、本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0086】
<その他の実施形態>
上述の燃料電池システム1は、u相、v相、w相の三相により構成しているがこの限りではない。燃料電池システム1は、単相または二相の構成であってもよいし、四相以上のシステムにより構成してもよい。
【0087】
また、上述の燃料電池システム1は、DCDCコンバータに三相交流のDCDCコンバータを用いた構成としているがこの限りではない。燃料電池システム1は、
図5に示すようなDCDCコンバータであってもよい。この場合、スイッチング素子を有する第2経路は有さないが、燃料電池FCによる発電を停止した際はダイオードを有する第1経路によって電流が流れ、燃料電池FCの高電位回避が行われる。
【0088】
また、上述の実施形態においては、燃料電池FCのセルの枚数は、式2により決定しているがこの限りではない。例えば、燃料電池FCの電圧は、蓄電装置Sの電圧に加えてダイオードの閾値電圧(立ち上がり電圧)を加算した電圧よりも高くなるようにしてもよい。この場合、燃料電池FCのセルの枚数は、ダイオードD1、D3、D5による損失分の閾値電圧(立ち上がり電圧)Vfを考慮しない下記式4により決定してもよい。
【0089】
セル枚数×高電位回避電圧=発電停止電圧・・・式4
また、上述の実施形態においては、成り行きで電流を流す場合には、上アームのダイオードD1、D3、D5へ電流を流しているがこの限りではない。
【0090】
制御部Cntは、電圧検出部V1で検出した燃料電池FCの電圧が電圧検出部V2で検出した蓄電装置Sの電圧よりも高いことを検出したときに、スイッチング素子Q1、Q3、Q5をON(閉じ状態)にしてもよい。これにより、燃料電池FCの電圧が蓄電装置Sの電圧よりも大きい状態(上記式3の状態)となった場合であっても、燃料電池FCで発生した電流は、スイッチング素子Q1、Q3、Q5を通って蓄電装置Sへ流れる。これにより、ダイオードによる電力の損失がなくなり、燃料電池FCで出力した電力を蓄電装置Sに効率よく充電することができる。
【0091】
また、制御部Cntは、スイッチング素子Q1~Q6のON-OFF状態(開閉状態)を検知可能にしてもよい。制御部Cntは、スイッチング素子Q1~Q6のON-OFF動作が行われていない場合に、第1経路または第2経路に電流が流れていることを検出した場合には、スイッチング素子Q1~Q6をOFF状態(閉じ状態)とする。これにより、燃料電池FCの電圧が蓄電装置Sの電圧よりも大きい状態(上記式3の状態)となった場合であっても、燃料電池FCで発生した電流は、スイッチング素子Q1、Q3、Q5を通って蓄電装置Sへ流れる。これにより、ダイオードによる電力の損失がなくなり、燃料電池FCで出力した電力を蓄電装置Sに効率よく充電することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 燃料電池システム
Ve 車両
Lo 負荷
FC 燃料電池
Si0 電流検出部
V1、V2 電圧検出部
Co コンデンサ
Ct1 :メインコンタクタ
Ct2 :出力側のコンタクタ
Re1、Re2、Re3 リアクトル
Si1、Si2、Si3 電流検出部
Cnv DCDCコンバータ
S 蓄電装置
Cnt 制御部
Q1~Q6 スイッチング素子
D1~D6 ダイオード