(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139601
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】塗布用治具
(51)【国際特許分類】
E04F 21/165 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
E04F21/165 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050618
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 一夫
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】原田 亮一
(72)【発明者】
【氏名】永田 優
(57)【要約】
【課題】塗布された塗布材の外観の悪化を抑制することが可能な塗布用治具を提供することを目的とする。
【解決手段】基部と、前記基部の先端に設けられ、塗布材を均す整形面を有する整形部と、を備え、前記整形部は、弾性部材であり、前記整形部の形状は、前記整形面が先端に向けて凸の曲面となる、ボール状の一部である、塗布用治具が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部の先端に設けられ、塗布材を均す整形面を有する整形部と、
を備え、
前記整形部は、弾性部材であり、
前記整形部の形状は、前記整形面が先端に向けて凸の曲面となる、ボール状の一部である、塗布用治具。
【請求項2】
先端に向かう第1方向と垂直な平面における断面において、前記整形面の形状は、円の少なくとも一部である、請求項1に記載の塗布用治具。
【請求項3】
前記整形面は、半球面形状である、請求項1または2に記載の塗布用治具。
【請求項4】
前記整形面を、第1面と、前記第1面と垂直方向に延びる第2面と、に接触させた状態において、前記第1面に平行で前記第2面に平行な第1視方向から見たときの、前記第1面と、先端に向かう第1方向に延びる軸と、の間の角度を傾斜角とし、
前記第1面に垂直で前記第2面に平行な第2視方向から見たときの、前記第2面と前記軸との間の角度を回転角とし、
前記整形面の前記第1面との第1接触点から、前記整形面の前記第2面との第2接触点までの、前記第1視方向から見たときの前記整形面の形状を塗布形状とすると、
前記傾斜角が第1傾斜角度であり前記回転角が第1回転角度である第1状態における前記塗布形状は、前記傾斜角が前記第1傾斜角度とは異なる第2傾斜角度であり前記回転角が前記第1回転角度である第2状態における前記塗布形状と同じ、かつ/又は、前記傾斜角が前記第1傾斜角度であり前記回転角が前記第1回転角度とは異なる第2回転角度である第3状態における前記塗布形状と同じである、請求項1または2に記載の塗布用治具。
【請求項5】
前記整形部の材料の硬度は、30°以上60°以下である、請求項1または2に記載の塗布用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、塗布用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物などの構造物においては、構造物の材料の間に隙間が生じることがある。例えば壁と床との間や、壁と壁との間など、建築材同士の間には、溝や目地が形成される。このような隙間には、コーキング材などの塗布材が塗布される。ヘラなどの塗布用治具を用いて、塗布された塗布材を均して、塗布材の表面の凹凸を小さく方法が知られている。このような塗布材の外観の悪化を抑制することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、塗布された塗布材の外観の悪化を抑制することが可能な塗布用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、基部と、前記基部の先端に設けられ、塗布材を均す整形面を有する整形部と、を備え、前記整形部は、弾性部材であり、前記整形部の形状は、前記整形面が先端に向けて凸の曲面となる、ボール状の一部である、塗布用治具である。
【0006】
この塗布用治具によれば、塗布した塗布材に対して整形部が接する向きが変化しても、整形部に接する塗布材の表面の形状の変化を抑制できる。これにより、塗布された塗布材の外観の悪化を抑制することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、先端に向かう第1方向と垂直な平面における断面において、前記整形面の形状は、円の少なくとも一部である、塗布用治具である。
【0008】
この塗布用治具によれば、整形部の対称性が高いため、整形部の向きが変化しても、整形部に接する塗布材の表面の形状の変化をより抑制できる。
【0009】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記整形面は、半球面形状である、塗布用治具である。
【0010】
この塗布用治具によれば、整形部の向きが変化しても、整形部に接する塗布材の表面の形状の変化がより抑制できる。塗布された塗布材の外観の悪化をより抑制することができる。
【0011】
第4の発明は、第1または第2の発明において、前記整形面を、第1面と、前記第1面と垂直方向に延びる第2面と、に接触させた状態において、前記第1面に平行で前記第2面に平行な第1視方向から見たときの、前記第1面と、先端に向かう第1方向に延びる軸と、の間の角度を傾斜角とし、前記第1面に垂直で前記第2面に平行な第2視方向から見たときの、前記第2面と前記軸との間の角度を回転角とし、前記整形面の前記第1面との第1接触点から、前記整形面の前記第2面との第2接触点までの、前記第1視方向から見たときの前記整形面の形状を塗布形状とすると、前記傾斜角が第1傾斜角度であり前記回転角が第1回転角度である第1状態における前記塗布形状は、前記傾斜角が前記第1傾斜角度度とは異なる第2傾斜角度であり前記回転角が前記第1回転角度である第2状態における前記塗布形状と同じ、かつ/又は、前記傾斜角が前記第1傾斜角度であり前記回転角が前記第1回転角度とは異なる第2回転角度である第3状態における前記塗布形状と同じである、塗布用治具である。
【0012】
この塗布用治具によれば、塗布用治具の構造物に対する傾斜角及び回転角の少なくともいずれかが変化しても、整形部に接する塗布材の表面の形状の変化をより抑制できる。
【0013】
第5の発明は、第1または第2の発明において、前記整形部の材料の硬度は、30°以上50°以下である、塗布用治具である。
【0014】
この塗布用治具によれば、構造物の表面の凹凸が、塗布材の表面形状に反映されることを抑制しつつも、整形部が大きく弾性変形し過ぎることを抑制できる。例えば、整形部が変形して構造物の表面の凹部に入り込むことが抑制でき、安定感を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の態様によれば、塗布された塗布材の外観の悪化を抑制することが可能な塗布用治具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(a)及び
図1(b)は、実施形態に係る塗布用治具を例示する模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る塗布用治具の基部及び整形部を例示する斜視図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、実施形態に係る塗布用治具の基部及び整形部を例示する断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る塗布用治具の整形部を例示する平面図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、実施形態に係る塗布用治具を拡大して表す模式図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、実施形態に係る塗布用治具の使用状態を例示する模式図である。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、実施形態に係る塗布用治具の使用状態を例示する模式図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る塗布用治具の変形例を例示する斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る塗布用治具の変形例を例示する断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る塗布用治具の変形例を例示する斜視図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る塗布用治具の変形例を例示する断面図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る塗布用治具の変形例を例示する斜視図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る塗布用治具の変形例を例示する断面図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る塗布用治具の変形例を例示する斜視図である。
【
図15】
図15は、実施形態に係る塗布用治具の変形例を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1(a)及び
図1(b)は、実施形態に係る塗布用治具を例示する模式図である。
図1(a)及び
図1(b)は、実施形態に係る塗布用治具100を用いて、構造物200の隙間Gに塗布材Ckを塗布する様子を表している。
【0018】
図1(a)に表したように、構造物200は、第1面F1と第2面F2とを有する。この例では、構造物200は浴室である。第1面F1は、浴室の床面であり、略水平方向に延在する平面に沿った面である。第2面F2は浴室の壁面であり、上下方向(鉛直方向)に延在する平面に沿った面である。
【0019】
図1(a)は、塗布用治具100及び構造物200を、
図1(b)に表した第1視方向VD1(例えば側方)から見た状態を表す。第1視方向VD1は、第1面F1と平行であり第2面F2と平行な方向である。
図1(b)は、塗布用治具100及び構造物200を、
図1(a)に表した第2視方向VD2(例えば上方)から見た状態を表す。第2視方向VD2は、第1面F1と垂直であり第2面F2と平行な方向である。
【0020】
隙間Gは、例えば第1面F1と第2面F2との間に設けられる。具体的には、第2面F2は、第1面F1の端から離れており、第2面F2は、第1面F1よりも上方から第1面F1よりも下方まで延びている。これにより、第1面F1と第2面F2との境界部に沿って、略水平方向に延びる溝状の隙間Gが形成されている。なお、略水平とは、厳密な水平のみならず、例えば浴室の洗い場床に設けられる排水勾配程度の傾きがあってもよい。
【0021】
塗布材Ckは、建築物などの構造物に塗布される材料である。例えば、塗布材Ckは、構造物の隙間に塗布される。言い換えれば、塗布材Ckは、隙間に充填される充填材でもよい。例えば、塗布材Ckは、隙間に塗布(充填)可能な粘性及び流動性を有するペースト状である。具体的には、塗布材Ckは、コーキング材、シーリング材、または接着材である。塗布材Ckは、例えばシリコーンを含む。
【0022】
塗布用治具100は、構造物200に塗布された塗布材Ckの表面を均す治具である。すなわち、例えば、隙間Gを埋めるように、隙間G内に塗布材Ckが注入される。塗布用治具100は、注入された塗布材Ckの表面に接触することで、塗布材Ckの表面形状を整える。例えば、塗布材Ckの表面の凹凸を小さくすることができる。
【0023】
塗布用治具100は、整形部10と、基部20と、を有する。整形部10は、基部20の先端に設けられる。基部20から整形部10へ向かう方向は、塗布用治具100の先端に向かう第1方向D1である。第1方向D1は、例えば塗布用治具100(整形部10)の軸方向である。
【0024】
整形部10の表面は、塗布材Ckを均す整形面10fとなっている。すなわち、整形面10fを塗布材Ckの表面に接触させることで、塗布材Ckの表面の凹凸を小さくし、塗布材Ckの形状を整えることができる。整形部10の形状は、ボール状の一部であり、整形面10fは、先端に向けて凸の曲面である。つまり、整形面10fの形状は、ボール状の一部の表面の形状である。
【0025】
なお、ボール状は、厳密な球体のみならず、表面が凸の曲面である丸まった形状でよい。例えば、ボール状とは、断面が円の形状のみならず、断面が楕円(又は略楕円)や扁平円である形状を含む。ボール状の一部とは、例えば、球体の一部、または、回転楕円体の一部でもよい。整形部10は、角のない形状であり得る。
【0026】
整形部10(整形面10f)は、第1方向D1に平行な第1軸Ax1の周りに設けられている。例えば、第1軸Ax1は、整形部10の中心軸である。
【0027】
この例では、基部20は、第1軸Ax1を中心軸とする円柱状である。ただし、これに限らず、基部20の形状は、角柱、錐体、錐台または球体の一部など、整形部10を支持することが可能な任意の形状でよい。また、この例では、基部20は、整形部10と同じ材料で一体に形成されている。ただし、基部20は、整形部10とは別体であり、基部20と整形部10とが組み立てられてもよい。
【0028】
塗布用治具100は、作業者が把持するための把持部30を有する。把持部30は、基部20の後端側に設けられる。この例では、把持部30は、第1軸Ax1を中心軸として第1方向D1に延在する円柱状である。ただし、これに限らず、把持部30の少なくとも一部は、第1方向D1と交差する方向に延在していてもよい。把持部30は、円柱状でなくてもよく、例えば表面に凹凸があってもよい。
【0029】
この例では、把持部30は、基部20とは別体であり、把持部30と基部20(及び整形部10)とが組み立てられている。基部20は、把持部30と整形部10とを接続する接続部として機能する。ただし、これに限らず、把持部30の少なくとも一部は、基部20と一体に形成された構造でもよい。
【0030】
例えば、整形部10は、弾性部材である。弾性部材は、例えば合成ゴムまたはエラストマーである。弾性部材は、天然ゴムでもよい。合成ゴムは、例えばEPDM、NBR
、シリコーン系 フッ素系など種々の材料が挙げられる。エラストマーとしては、例えばオレフィン系、スチレン系が挙げられる。整形部10の材料は、整形面10fに付着した塗布材Ckを取り除きやすい(剥がしやすい)材料が望ましい。
【0031】
整形部10の材料である弾性部材の硬度は、例えば10°以上80°以下であればよく、好ましくは30°以上60°以下である。なお、硬度は、JIS K 6253-3に準じたデュロメータ硬さである。例えば、弾性部材の硬度は、把持部30の材料の硬度よりも低くてもよい。例えば、弾性部材の弾性率(ヤング率)は、把持部30の材料の弾性率よりも低くてもよい。把持部30には、例えばプラスチックや金属を用いてもよい。
【0032】
塗布用治具100を用いた塗布材Ckの塗布方法の一例について説明する。まず、上述したように、隙間Gに塗布材Ckを注入する。その後、作業者は、把持部30を掴んで、
図1(a)に表したように、整形部10の整形面10fを第1面F1と第2面F2とに接触させる。このとき、整形面10fは、例えば、塗布材Ckの表面に接触する。作業者は、整形面10fを第1面F1及び第2面F2の両方に接触させた状態のまま、塗布用治具100を隙間Gが延在する方向(この例では略水平方向)にスライドさせる。これにより、塗布材Ckの表面が、整形面10fの形状に沿った形状に整えられる。
【0033】
なお、実施形態において、構造物200は、必ずしも浴室でなくてもよい。第1面F1及び第2面F2は、それぞれ、建築物の床面、壁面及び天井面のいずれかでもよい。例えば、第1面F1が上下方向に延びる壁面であり、第2面F2が上下方向に延在する別の壁面であってもよい。
【0034】
図2は、実施形態に係る塗布用治具の基部及び整形部を例示する斜視図である。
図3(a)及び
図3(b)は、実施形態に係る塗布用治具の基部及び整形部を例示する断面図である。
図3(a)は、第1軸Ax1を通り第1軸Ax1に平行な第1平面における断面を表している。第1平面は、例えば
図2のA-A線で表した断面である。
図3(a)に表したように、整形部10の先端部は、丸められた形状である。整形部10の先端10t(第1方向D1における端)における整形面10fの接線は、第1軸Ax1に垂直である。整形面10fは、第1軸Ax1に近づくほど、第1方向D1に突出した形状である。
図3(a)に表した第1平面における断面において、整形面10fは、曲線である。
【0035】
図3(b)は、第1軸Ax1を通り第1軸Ax1に平行な第2平面における断面を表している。第2平面は、
図3(a)に表した第1平面と交差する面であり、第1平面と第2平面とがなす角度は、例えば45°以上90°以下である。第2平面は、例えば
図2のB-B線で表した断面である。第2平面における断面においても、整形面10fは、曲線である。このように、整形面10fは、立体的な凸曲面であり、第1軸Ax1を通り第1軸Ax1に平行な複数の断面のそれぞれにおいて曲線状となる。この曲線状は、例えば尖った頂点(例えば傾きが不連続に変化する角)を有さない形状である。また、この曲線状は、例えば両端の間に変曲点を有さない形状である。
【0036】
この例では、整形部10の形状は、半球である。そのため、第1平面における断面上の整形面10fの形状は、半円である。第2平面における断面上の整形面10fの形状は、第1平面における断面上の整形面10fの形状と同じである。例えば、第1軸Ax1を通り第1軸Ax1に平行な任意の断面において、整形面10fは、曲線状(例えば同一の曲線状)でよい。ただし、必ずしも、第2平面における断面上の整形面10fの形状は、第1平面における断面上の整形面10fの形状と厳密に同じでなくてもよい。
【0037】
図3(a)に表した整形部10の直径R10(第1方向D1に垂直な第2方向D2に沿った長さ)は、例えば、10mm~14mm程度以上であり、18mm~22mm程度以下である。直径R10は、
図1(b)に表した隙間Gの幅WG(第1面F1と第2面F2との間の距離)よりも大きい。幅WGは、例えば2mm以上10mm未満程度である。基部20の直径R20(第1方向に垂直な第2方向D2に沿った長さ)は、例えば直径R10以下でよい。ただし、整形部10、基部20及び隙間Gの寸法は、上記に限らず、構造物200の仕様に応じて適宜変更可能である。
【0038】
この例では、直径R20は、直径R10と同じである。基部20は、第1方向D1に延在する側面20fを有する。整形面10fは、側面20fと連続している。例えば、整形面10fは、側面20fと段差なく、滑らかに接続されている。例えば、整形面10fは、側面20fと正接している。すなわち、
図3(a)の断面において、整形面10fの側面20fとの接点10pにおける接線は、側面20fに沿う。
【0039】
基部20には、後端側に開口する穴20eが形成されている。例えば基部20は、円筒状である。基部20の後端側の開口から穴20eに把持部30を挿入して接続することができる。
【0040】
図4は、実施形態に係る塗布用治具の整形部を例示する平面図である。
図4は、整形部10を先端側から見た様子である。
図4中の点線は、
図3(a)に表したC-C断面における整形部10の形状を表している。C-C断面は、第1方向D1と垂直な平面における断面である。C-C断面において、整形面10fの形状は、円である。
【0041】
実施形態に係る整形部10の整形面10fは、例えば第1軸Ax1を中心として、第1平面P1上の曲線CLを回転させた回転体の表面の形状である。曲線CLは、
図3(a)に表した端部が先端10tに位置する曲線(例えば弧)である。
図3(a)の例では、曲線CLは、中心角αが90°の四分円である。
【0042】
上述したように、この例では、整形部10は半球である。つまり、整形面10fは、第1軸Ax1を中心に、曲線CLを360°回転させて得られる回転体である。ただし、実施形態において、曲線CLを回転させる角度は、360°に限らない。言い換えれば、整形面10fは、曲線CLを第1軸Ax1を中心に360°回転させて得られる回転体の一部であってもよい。例えば、整形面10fは、第1軸Ax1を中心に曲線CLを例えば180°以上270°以下、好ましくは270°以上360°以下回転させて得られる立体の表面形状とすることができる。また、曲線CLは、四分円に限らず、中心角αが例えば45°以上90°以下の円弧でもよいし、中心角αが90°よりも大きく180°未満の円弧であってもよい。曲線CLは、円弧に限らず、楕円や放物線の一部や、その他の弓なり状の曲線であってもよい。C-C断面において、整形面10fの形状は、円の少なくとも一部となる。
【0043】
図5(a)及び
図5(b)は、実施形態に係る塗布用治具を拡大して表す模式図である。
図5(b)は、
図5(a)に示したD-D線における断面を拡大して表す。
図5(b)に表したように、この例では、第1面F1に凹凸が設けられている。例えば、第1面F1には、複数の溝gが設けられる。このような凹凸(溝)を設けることにより、例えば浴室においては、洗い場床の意匠性または水捌けを向上させることができる。溝は、例えば上方から見たときに格子状に形成されてもよい。整形部10の直径R10は、溝gの短手方向の幅Wgよりも大きい。例えば、整形部10の半径は、幅Wgよりも大きい。また、第1面F1の凹凸は、
図5(b)では矩形状であるが、曲面形状で形成される凹凸も含まれる。
【0044】
図6(a)及び
図6(b)は、実施形態に係る塗布用治具の使用状態を例示する模式図である。
図6(a)及び
図6(b)は、実施形態の一例である塗布用治具を、第1視方向VD1から見た状態である。
図6(a)において、塗布用治具は、第1状態ST1である。
図6(b)において、塗布用治具は、第2状態ST2である。
【0045】
図6(a)または
図6(b)に表したように、整形面10fを第1面F1及び第2面F2に接触させた状態において、第1視方向VD1から見たときの、第1面F1と第1軸Ax1との間の角度を、傾斜角θとする。なお、傾斜角θは、第1面F1と第1軸Ax1との間の角度のうち、小さい方の角度である。例えば、傾斜角θは、0°以上90°以下の範囲で変化する。第1方向D1が第1面F1と平行の場合、傾斜角θは0°であり、第1方向D1が第1面F1と垂直の場合、傾斜角θは90°である。
【0046】
図6(a)または
図6(b)に表したように、第1視方向VD1から見たときに、整形面10fと第1面F1との第1接触点tp1から、整形面10fと第2面F2との第2接触点tp2までの、整形面10fの形状を「塗布形状」と呼ぶ。塗布形状は、例えば整形面10fのうち塗布材Ckと接する領域の形状に対応する。例えば、塗布形状は、第1接触点tp1と第2接触点tp2とを通り第1視方向VD1に垂直な断面における整形面10fの形状に対応する。
【0047】
第1状態ST1は、傾斜角θが第1傾斜角度θ1の状態である。第2状態ST2は、傾斜角θが第2傾斜角度θ2の状態である。つまり、第1状態ST1と第2状態ST2とは、傾斜角θの大きさにおいて異なる。第1傾斜角度θ1と第2傾斜角度θ2との差は、例えば0°よりも大きく90°以下の範囲である。なお、第1状態ST1における回転角φ(
図7(a)に関して後述する)は、第2状態ST2における回転角φと同じでよい。
【0048】
図6(a)及び
図6(b)に表したように、例えば、第1状態ST1における塗布形状は、第2状態ST2における塗布形状と同じである。なお、塗布形状が同じという範囲は、厳密に同じである場合だけでなく、実質的に同じである場合を含む。例えば、作業者が塗布材Ckを均すために塗布用治具100に加える力によって整形部10が弾性変形する程度の変化が生じても、同じに含まれる。
【0049】
また、第1面F1及び第2面F2は、例えば平面である。ただし、第1面F1及び第2面F2の表面には溝(例えば
図5(b)に関して説明した複数の溝g)が設けられてもよい。このような場合、第1接触点t1及び第2接触点tp2は、第1面F1及び第2面F2の表面に設けられた溝を除く範囲に、整形部10を接触させたときの接触点である。
【0050】
図7(a)及び
図7(b)は、実施形態に係る塗布用治具の使用状態を例示する模式図である。
図7(a)及び
図7(b)は、実施形態の一例である塗布用治具を、第2視方向VD2から見た状態である。
図7(a)において、塗布用治具は、第1状態ST1である。
図7(b)において、塗布用治具は、第3状態ST3である。
【0051】
図7(a)または
図7(b)に表したように、整形面10fを第1面F1及び第2面F2に接触させた状態において、第2視方向VD2から見たときの、第2面F2と第1軸Ax1との間の角度を、回転角φとする。なお、回転角φは、第2面F2から時計回りに測った第1軸Ax1までの角度である。例えば、回転角φは、0°以上180°以下の範囲で変化する。例えば、第1方向D1が第1視方向VD1と平行の場合、回転角φは0°であり、第1方向D1が第1視方向VD1と反平行の場合、回転角φは180°である。
【0052】
第1状態ST1は、回転角φが第1回転角度φ1の状態である。第3状態ST3は、回転角φが第2回転角度φ2の状態である。つまり、第1状態ST1と第3状態ST3とは、回転角φの大きさにおいて異なる。第1回転角度φ1と第2回転角度φ2との差は、0°よりも大きく180°以下の範囲である。なお、第3状態ST3における傾斜角θは、第1状態ST1における傾斜角θと同じでよい。
【0053】
例えば、第1状態ST1における塗布形状は、第3状態ST3における塗布形状と同じである。
【0054】
従来、施工時に塗布材を塗布した際には、指を用いて、余分な塗布材を掻き取り、塗布材の凹凸を均す方法があった。しかし、指を用いる場合には、塗布材を掻き取り過ぎて、塗布材の表面に大きな凹部が形成されてしまう恐れがある。大きな凹部には、水や埃が溜まる恐れがある。また、指を用いる場合は、作業者によって仕上がりにバラツキが生じやすい。そこで、ヘラなどの塗布用治具を用いる方法が検討されている。塗布用治具を用いて塗布材を均す際には、例えば、塗布材を塗布する構造物の表面(例えば第1面F1)と、塗布材と、の両方に塗布用治具を接触させた状態で、塗布用治具を当該表面に沿って動かす。これにより、塗布材を、構造物の表面の位置及び形状に合わせて整えることができる。しかし、薄いヘラなどの塗布用治具を用いた場合には、塗布した塗布材に対してヘラが接触する向きが変化すると、ヘラに接する塗布材の表面の形状が変化してしまう。このような変化により、仕上がりにバラツキが生じ、外観が悪化する恐れがある。
【0055】
これに対して、実施形態においては、整形部10は、弾性部材であり、整形部10の形状は、整形面10fが先端に向けて凸の曲面となる、ボール状の一部である。実施形態によれば、塗布した塗布材Ckに対して整形部10が接する向き(例えば傾斜角θまたは回転角φ)が変化しても、整形部10に接する塗布材Ckの表面の形状の変化を抑制できる。これにより、塗布された塗布材の外観の悪化を抑制することができる。
【0056】
また、構造物の表面には、例えば意匠性または排水性などの観点から、複数の溝(例えば
図5(b)に表した溝g)などの、凹凸が形成されることがある。この場合、塗布材を均す際に、ヘラなどの塗布用治具を構造物の表面に沿って動かすと、構造物の表面の凹凸に合わせて、塗布用治具も上下(表面に垂直な方向)に変位することとなる。このような塗布用治具の変位は、塗布材の表面形状に凹凸として反映されるため、塗布材の外観の悪化を招く恐れがある。
【0057】
これに対して、実施形態においては、整形部10は弾性部材であり、整形面10fが凸の曲面であり、整形部10の形状がボール状の一部である。塗布材Ckを均す際に整形部10を構造物の表面に沿って動かした場合に、構造物の表面の凹凸に応じて整形部10は、例えば弾性変形する。例えば、塗布時(整形時)の衝撃を吸収して塗布材Ckの表面のがたつきを抑えることができる。例えば、塗布材を均す際に整形部10を構造物の表面に沿って動かした場合に、薄いヘラを用いる場合に比べて、整形部10の位置が構造物の表面の凹凸に合わせて上下に変位することを抑制できる。構造物の表面の凹凸が、塗布材の表面形状に反映されることを抑制しやすく、より均一な形状にコーキングを整形することができる。
【0058】
また、例えば
図4に関して説明したように、第1方向D1と垂直な平面における断面において、整形面10fの形状は、円の少なくとも一部である。この場合、整形部10の対称性が高いため、整形部10の向きが変化しても、整形部10に接する塗布材Ckの表面の形状の変化をより抑制できる。
【0059】
また、例えば
図3に関して説明したように、整形面10fは、基部20の第1方向D1に延在する側面20fと連続する。この場合、塗布用治具の先端側から側面に到るまでの比較的広い範囲が曲面となる。これにより、整形部の向きが変化しても、整形部に接する塗布材の表面の形状の変化をより抑制できる。
【0060】
また、例えば整形面10fは、半球面形状である。そして、例えば、
図6(a)~
図7(b)に関して説明したように、第1状態ST1における塗布形状は、第1状態ST1とは傾斜角θが異なる第2状態ST2における塗布形状と同じである、かつ/又は、第1状態ST1における塗布形状は、第1状態ST1とは回転角φが異なる第3状態ST3における塗布形状と同じである。この場合、塗布用治具の構造物に対する傾斜角θ及び回転角φの少なくともいずれかが変化しても、整形部10に接する塗布材Ckの表面の形状の変化をより抑制できる。
【0061】
上述したように、整形部の材料の硬度は、例えば10°以上80°以下であればよく、好ましくは30°以上60°以下とすることができる。これにより、例えば、構造物の表面の凹凸が、塗布材Ckの表面形状に反映されることを抑制しつつも、整形部10が大きく弾性変形し過ぎることを抑制できる。例えば、整形部10が変形して構造物の表面の凹部に入り込むことが抑制でき、安定感を向上させることができる。
【0062】
図8は、実施形態に係る塗布用治具の変形例を例示する斜視図である。
図9は、実施形態に係る塗布用治具の変形例を例示する断面図である。
図8は、実施形態に係る塗布用治具100Aの整形部10及び基部20を表している。
図9は、
図8に表したA2-A2線における断面を表している。
この例では、整形部10の形状は、球体の一部であり、半球より大きい。
図9に表したように、曲線CLは、中心角αが90°より大きく180°よりも小さい弧である。整形部10の直径R10は、基部20の直径R20よりも大きい。
【0063】
図10は、実施形態に係る塗布用治具の変形例を例示する斜視図である。
図11は、実施形態に係る塗布用治具の変形例を例示する断面図である。
図10は、実施形態に係る塗布用治具100Bの整形部10及び基部20を表している。
図11は、
図10に表したA3-A3線における断面を表している。
この例では、整形部10の形状は、球体の一部であり、半球より小さい。
図11に表したように、整形面10fは、基部20の側面20fと正接しなくてもよい。
図11に表したように、曲線CLは、中心角αが90°よりよりも小さい弧である。整形部10の直径R10は、基部20の直径R20と同じである。
【0064】
図12は、実施形態に係る塗布用治具の変形例を例示する斜視図である。
図13は、実施形態に係る塗布用治具の変形例を例示する断面図である。
図12は、実施形態に係る塗布用治具100Cの整形部10及び基部20を表している。
図13は、
図12に表したA4-A4線における断面を表している。
この例では、整形部10の形状は、回転楕円体の半分である。
図13に表したように、曲線CLは、短軸が第1方向D1に延在する楕円の一部である。
【0065】
図14は、実施形態に係る塗布用治具の変形例を例示する斜視図である。
図15は、実施形態に係る塗布用治具の変形例を例示する断面図である。
図14は、実施形態に係る塗布用治具100Dの整形部10及び基部20を表している。
図15は、
図14に表したA5-A5線における断面を表している。
この例では、整形部10の表面形状は、曲率が変化する曲面である。
図15に表したように、曲線CLは、例えば第1曲率部CL1と、第2曲率部CL2とを含む。第1曲率部CL1の一端は、先端10tに位置する。第2曲率部CL2は、第1曲率部CL1の他端から連続して後端側に延びる。第2曲率部CL2の曲率半径は、第1曲率部CL1の曲率半径よりも大きい。このように、ボール状の一部とは、断面において表面の曲率が変化する形状であってもよい。
【0066】
図8~
図15に関して説明した各塗布用治具100A、100B、100C、100Dにおいても、整形部10は、弾性部材であり、整形部10の形状は、整形面10fが先端に向けて凸の曲面となる、ボール状の一部である。これにより、塗布用治具100と同様に、塗布材の外観の悪化を抑制することができる。
【0067】
実施形態は、以下の構成を含んでもよい。
(構成1)
基部と、
前記基部の先端に設けられ、塗布材を均す整形面を有する整形部と、
を備え、
前記整形部は、弾性部材であり、
前記整形部の形状は、前記整形面が先端に向けて凸の曲面となる、ボール状の一部である、塗布用治具。
(構成2)
先端に向かう第1方向と垂直な平面における断面において、前記整形面の形状は、円の少なくとも一部である、構成1に記載の塗布用治具。
(構成3)
前記整形面は、半球面形状である、構成1または2に記載の塗布用治具。
(構成4)
前記整形面を、第1面と、前記第1面と垂直方向に延びる第2面と、に接触させた状態において、前記第1面に平行で前記第2面に平行な第1視方向から見たときの、前記第1面と、先端に向かう第1方向に延びる軸と、の間の角度を傾斜角とし、
前記第1面に垂直で前記第2面に平行な第2視方向から見たときの、前記第2面と前記軸との間の角度を回転角とし、
前記整形面の前記第1面との第1接触点から、前記整形面の前記第2面との第2接触点までの、前記第1視方向から見たときの前記整形面の形状を塗布形状とすると、
前記傾斜角が第1傾斜角度であり前記回転角が第1回転角度である第1状態における前記塗布形状は、前記傾斜角が前記第1傾斜角度とは異なる第2傾斜角度であり前記回転角が前記第1回転角度である第2状態における前記塗布形状と同じ、かつ/又は、前記傾斜角が前記第1傾斜角度であり前記回転角が前記第1回転角度とは異なる第2回転角度である第3状態における前記塗布形状と同じである、構成1~3のいずれか1つに記載の塗布用治具。
(構成5)
前記整形部の材料の硬度は、30°以上60°以下である、構成1~4のいずれか1つに記載の塗布用治具。
【0068】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0069】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、塗布用治具が備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0070】
10:整形部
10f:整形面
10p:接点
10t:先端
20:基部
20e:穴
20f:側面
30:把持部
100、100A、100B、100C、100D:塗布用治具
200:構造物
Ax1:第1軸
CL:曲線
CL1:第1曲率部
CL2:第2曲率部
Ck:塗布材
D1:第1方向
D2:第2方向
F1:第1面
F2:第2面
G:隙間
P1:第1平面
R10:直径
R20:直径
ST1:第1状態
ST2:第2状態
ST3:第3状態
VD1:第1視方向
VD2:第2視方向
WG:幅
Wg:幅
g:溝
tp1:第1接触点
tp2:第2接触点
α:中心角
θ:傾斜角
θ1:第1傾斜角度
θ2:第2傾斜角度
φ:回転角
φ1:第1回転角度
φ2:第2回転角度