(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139626
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】硬質表面用液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 3/20 20060101AFI20241002BHJP
C11D 3/04 20060101ALI20241002BHJP
C11D 3/34 20060101ALI20241002BHJP
C11D 17/04 20060101ALI20241002BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
C11D3/20
C11D3/04
C11D3/34
C11D17/04
C11D17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050660
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】397056042
【氏名又は名称】セッツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金井 康貴
(72)【発明者】
【氏名】村上 拡
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB05
4H003AB31
4H003AC08
4H003AC15
4H003BA12
4H003BA20
4H003BA21
4H003DA05
4H003DA07
4H003DA12
4H003DA17
4H003DB02
4H003DC02
4H003EA21
4H003EB06
4H003EB13
4H003EB14
4H003EB16
4H003ED02
4H003ED29
4H003FA04
4H003FA07
4H003FA28
(57)【要約】
【課題】グリコールエーテル系溶剤の配合量を少なくしても、油汚れに対して高い洗浄力を有する硬質表面用液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)ジエチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルからなる群より選ばれる1種以上の疎水性グリコールエーテル系溶剤:0.05~2重量%、(b)ジエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールからなる群より選ばれる1種以上の親水性グリコールエーテル系溶剤:3.5~7.5重量%、(c)アルカリ剤:2~10重量%、(d)界面活性剤:1.5~10重量%、並びに水を含む、pHが10以上の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ジエチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、及びジエチレングリコールモノヘキシルエーテルからなる群より選ばれる1種以上の疎水性グリコールエーテル系溶剤:0.05~2重量%、
(b)ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及び3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールからなる群より選ばれる1種以上の親水性グリコールエーテル系溶剤:3.5~7.5重量%
(c)アルカリ剤:2~10重量%、
(d)界面活性剤:1.5~10重量%、
並びに水を含む、pHが10以上の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
さらに、成分(e)としてキレート剤を含有する、請求項1に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
上記成分(c)がアルカリ金属水酸化物、及びアミン系化合物からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
上記成分(d)がアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上である、請求項1に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物を、前記硬質表面に接触させた後、機械力をかけずに放置する、硬質表面の洗浄方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物を、スプレイヤー容器に充填してなる、スプレー容器入り硬質表面用洗浄剤物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質表面用液体洗浄剤組成物に関する。より詳しくは、調理の際に飛散した油脂が台所まわりの硬質表面に付着して発生した油汚れを効果的に除去・洗浄できる、硬質表面用液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
レストランや食堂、スーパーマーケットの厨房や食品工場のコンロや換気扇周り、床や壁、調理器具においては、油脂による頑固な油汚れが発生する。これらの油汚れを洗浄の対象とする硬質表面用液体洗浄剤組成物は、通常、界面活性剤、アルカリ剤及び溶剤を基本成分としている。ここで、溶剤は、強固に固まった油汚れに浸透していき、汚れをふやかす(膨潤)ことで洗浄効率を上げる大切な役目を担っている。
【0003】
このような溶剤を配合した硬質表面用液体洗浄剤組成物としては、従来、グリコールエーテル系溶剤を必須成分としたものが、油汚れに対して優れた洗浄力を有するものとして知られている。例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテルやジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤として加えた硬質表面用液体洗浄剤組成物としては、以下のものが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1では(a)アルカリ剤、(b)陰イオン性界面活性剤、(c)金属イオン封鎖剤、(d)水溶性グリコール系溶剤、(e)水、(f)キシレンスルホン酸塩、クメンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩から選ばれる成分を含有することを特徴とするアルカリ性洗浄剤組成物が記載されている。また、特許文献2には水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムと、アミンオキシド、アルキルポリグリコシド、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを含有した油及び焦げ付き汚れ用の液体洗浄剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4082576号
【特許文献2】特許第5579761号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の通り、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤を使用する硬質表面用液体洗浄剤組成物は、油汚れに対して優れた洗浄力を有するものの、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤は原油高騰の影響などもあり、比較的高価なものであるため、その配合量はできるだけ少なくすることが求められている。
さらに、環境への負荷を減らすためにも、グリコールエーテル系溶剤の使用量を減らすのが好ましい。
【0007】
そこで、本発明は、グリコールエーテル系溶剤の配合量を少なくしても、油汚れに対して高い洗浄力を有する硬質表面用液体洗浄剤組成物を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の親水性グリコールエーテル系溶剤であるジエチレングリコールモノブチルエーテルや3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(成分(b))に対して、特定の疎水性グリコールエーテル系溶剤(成分(a))を少量組み合わせて使用することにより、グリコールエーテル系溶剤の配合量を少なくしても、硬質表面に付着した油汚れが効果的に洗浄されることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
本発明はすなわち、以下の態様を含み得る。
〔1〕(a)ジエチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、及びジエチレングリコールモノヘキシルエーテルからなる群より選ばれる1種以上の疎水性グリコールエーテル系溶剤:0.05~2重量%、
(b)ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及び3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールからなる群より選ばれる1種以上の親水性グリコールエーテル系溶剤:3.5~7.5重量%、
(c)アルカリ剤:2~10重量%、
(d)界面活性剤:1.5~10重量%、
並びに水を含む、pHが10以上の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
〔2〕さらに、成分(e)としてキレート剤を含有する、〔1〕に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
〔3〕上記成分(c)がアルカリ金属水酸化物、及びアミン系化合物からなる群より選ばれる1種以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
〔4〕上記成分(d)がアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
〔5〕〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物を、前記硬質表面に接触させた後、機械力をかけずに放置する、硬質表面の洗浄方法。
〔6〕〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物を、スプレイヤー容器に充填してなる、スプレー容器入り硬質表面用洗浄剤物品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、グリコールエーテル系溶剤の使用量を減らしても、硬質表面に付着した油汚れに対して高い洗浄力を有する硬質表面用液体洗浄剤組成物を提供することができる。さらに、本発明によれば、当該洗浄剤組成物を用いた洗浄方法や、当該洗浄剤組成物を、スプレイヤー容器に充填してなる、スプレー容器入り硬質表面用洗浄剤物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、(a)ジエチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルからなる群より選ばれる1種以上の疎水性グリコールエーテル系溶剤0.05~2重量%、(b)ジエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールからなる群より選ばれる1種以上の親水性グリコールエーテル系溶剤3.5~7.5重量%、(c)アルカリ剤2~10重量%、(d)界面活性剤1.5~10重量%、並びに水を含み、pHが10以上であることを特徴としている。本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、このような構成を備えることにより、グリコールエーテル系溶剤の配合量を減らしても、油汚れに対して優れた洗浄効果を発揮することができる。なお、本明細書における各成分の配合量に関する記載は、純分での配合量である。
【0012】
[硬質表面用液体洗浄剤組成物を構成する成分]
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物を構成する、成分(a)~成分(e)について、順を追ってそれぞれ説明する。
まず、成分(a)は、ジエチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルからなる群より選ばれる1種以上の疎水性グリコールエーテル系溶剤である。
本発明の成分(a)は、例示したように、グリコール系溶剤の中でも疎水性のもの、すなわち、疎水性グリコール系溶剤である。この疎水性グリコール系溶剤の疎水性の程度は、JIS-K8001:2017「試薬試験方法通則」に記載された溶解の程度を表す用語で表現することができ、水にやや溶けにくい(溶質(成分(a))1g又は1mlを溶かすのに要する溶媒量(水の量)が30ml以上~100ml未満)、水に溶けにくい(溶質(成分(a))1g又は1mlを溶かすのに要する溶媒量(水の量)が100ml以上~1000ml未満)、水に極めて溶けにくい(溶質(成分(a))1g又は1mlを溶かすのに要する溶媒量(水の量)が1000ml以上~10000ml未満)、又は水にほとんど溶けない(溶質(成分(a))1g又は1mlを溶かすのに要する溶媒量(水の量)が10000ml以上)ものである。
これらは市販のものを用いることができ、単独で使用しても、併用してもよい。
ただし、成分(a)の配合量は、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物を100重量%とした場合、0.05~2重量%という少量に制限され、好ましくは、0.1~1重量%に制限され、より好ましくは、0.1~0.9重量%に制限される。成分(a)の配合量が0.05重量%未満であれば油汚れに対する浸透性が弱く、洗浄力が発揮できず、2重量%より多い場合、油汚れに対するすすぎ性が悪くなる場合があり、洗浄効果の向上が期待できない。0.05~2重量%の範囲内が洗浄性、すすぎ性ともに効果を発揮する最適な濃度である
【0013】
次に、成分(b)は、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールからなる群より選ばれるいずれか1種以上の親水性グリコールエーテル系溶剤である。
本発明の成分(b)は、例示したように、グリコール系溶剤の中でも親水性のもの、すなわち、親水性グリコール系溶剤である。この親水性グリコール系溶剤の親水性の程度は、JIS-K8001:2017「試薬試験方法通則」に記載された溶解の程度を表す用語で表現することができ、水にやや溶けやすい(溶質(成分(b))1g/又は1mlを溶かすのに要する溶媒量(水の量)が10ml以上~30ml未満)、水に溶けやすい(溶質(成分(b))1g/又は1mlを溶かすのに要する溶媒量(水の量)が1ml以上~10ml未満)、水に極めて溶けやすい(溶質(成分(b))1g/又は1mlを溶かすのに要する溶媒量(水の量)が1ml未満)ものである。
これらは市販のものを用いることができ、単独で使用しても、併用してもよい。ただし、その配合量は、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物を100重量%とした場合、3.5~7.5重量%であり、より好ましくは、3.6~7.4重量%であり、さらに好ましくは、4~7重量%であり、最も好ましくは、5~6重量%である。
成分(b)の配合量が3.5~7.5重量%の範囲内であれば、洗浄組成物がより優れた洗浄力を発揮することができる。このように、グリコールエーテル系溶剤である、成分(b)の配合量を少なくしても、洗浄効果を維持できることが本発明の利点の1つである。
【0014】
本発明においては、グリコールエーテル系溶剤の(合計の)配合量を少なくするため、成分(b)の親水性グリコールエーテル系溶剤に対して、成分(a)の疎水性グリコールエーテル系溶剤を少量配合する。そのため、成分(a)と成分(b)の配合比率は重量比で1:2~1:100となるように設計することが好ましく、1:2~1:50となるように設計することがより好ましく、1:5~1:50となるように設計することがさらに好ましい。このような重量比とすることで、より優れた洗浄力を得ることができる。
【0015】
次に、成分(c)は、アルカリ剤である。前記アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、アンモニア及びその誘導体、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン系化合物を挙げることができる。なかでも、アルカリ金属水酸化物、アミン系化合物からなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましい。これらは市販のものを用いることができ、単独で使用しても、併用してもよい。ただし、その配合量は、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物を100重量%とした場合、2~10重量%であり、より好ましくは、3~9.5重量%であり、さらに好ましくは4~9.5重量%である。
成分(c)の配合量が2~10重量%の範囲内であれば、油汚れに対して優れた洗浄力を発揮することができる。2重量%未満の配合量では油汚れに対する洗浄力が発揮されず、10重量%を超えると洗浄力のさらなる向上は見込めず、経済性という点からも好ましくない。
【0016】
次に、成分(d)は、界面活性剤である。前記界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤を用いることが好ましい。これらは市販のものを用いることができ、単独で使用しても、併用してもよい。なお、ここでいう界面活性剤の種類(アニオン、ノニオン、両性)は、硬質表面用液体洗浄剤組成物の一部として存在する状態のものではなく、当該組成物に加えられる前の状態のものを指す。また、後述するように、カチオン界面活性剤は、本発明では用いることができない。また、その配合量は、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物を100重量%とした場合、1.5~10重量%であることが好ましい。より好ましくは、1.8~8重量%、さらに好ましくは、2~5重量%である。成分(d)の配合量が1.5重量%未満の配合量では油汚れに対する洗浄力が発揮されず、10重量%を超えると洗浄力のさらなる向上は見込めず、コスト等の経済性という点からも好ましくない。
【0017】
上記アニオン界面活性剤の例としては、例えば、アルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシアルキレンエーテルカルボン酸塩、アルキル又はアルケニルアミドエーテルカルボン酸塩、アシルアミノカルボン酸塩等のカルボン酸型のアニオン界面活性剤、アルキル基を有するアルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩(AOS)、α-スルホ脂肪酸エステル塩(α-SF)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)等のスルホン酸型のアニオン界面活性剤、直鎖又は分岐鎖のアルキル硫酸塩(AS)、アルキルエーテル硫酸塩またはアルケニル硫酸塩(AES)等の硫酸エステル型のアニオン界面活性剤、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルリン酸エステル塩、グリセリン脂肪酸エステルモノリン酸エステル塩等のリン酸エステル型のアニオン界面活性剤が挙げられる。この中でも特に、カルボン酸型、硫酸エステル型のアニオン界面活性剤がより好ましい。具体例としては、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンラウリルエーテルカルボン酸エステル塩等が挙げられる。これらのアニオン界面活性剤は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
上記ノニオン界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキル又はアルケニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキル又はアルケニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキル又はアルケニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルフェニルエーテル類、ポリオキシブチレンアルキル又はアルケニルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類、ポリオキシアルキレンアルキルアミド類、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸モノエステル類、高級脂肪酸アルカノールアミド類、アルキルグリコシド類、ポリオキシアルキレンひまし油類等が挙げられる。この中でも、特にポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が特に好ましく、具体例としては、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミン等が挙げられる。これらのノニオン界面活性剤は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
上記両性界面活性剤の例としては、例えば、アミンオキシド型、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリニウムベタイン型、脂肪酸アミドプロピルベタイン型、グリシン型、アミノ酸型等が挙げられる。この中でも、特にアミンオキシド型が特に好ましく、具体例としてはデシルジメチルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。これらの両性界面活性剤は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
次に、成分(e)は、キレート剤である。これは、本発明にとって必須の成分ではないが、良好な洗浄力を得る観点から、任意に加えられる成分である。
前記キレート剤の例としては 、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロ三酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、酒石酸塩等が挙げられる。前記塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属の塩、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属の塩を挙げることができる。中でも、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。具体例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が好ましい。これらは市販のものを用いることができ、単独で使用しても、併用してもよい。
また、その配合量は、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物を100重量%とした場合、キレート剤の配合量は、0.1~10重量%であることが好ましい。より好ましくは、0.1~5重量%、さらに好ましくは、0.1~2重量%である。成分(d)の配合量が0.1~10重量%の範囲内であれば、目的の洗浄力を損なうことなく優れた洗浄力を発揮することができる。
【0021】
その他の水は、上記した成分(a)~(e)の残部として配合され、その配合量は特に制限されない。また、水として、特にその種類は限定されないが、水道水、蒸留水、純水、及びイオン交換水等を挙げることができ、これらを2種以上併用してもよい。
【0022】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物のpHは10以上であり、pHが10.5以上であることが好ましく、11以上であることが更に好ましい。なお、本発明のpHは、JIS Z8802:2011によって、25℃において測定したpHである。硬質表面用液体洗浄剤組成物のpHが10未満であると、目的の洗浄力が発揮されないからである。
【0023】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、上記した成分(a)~(e)及び水の他に、ゲル化防止剤、金属腐食抑制剤、可溶化剤、増粘剤、酵素、香料、染料、顔料、殺菌剤、防腐剤、防カビ剤、pH調整剤などの成分を任意に含有することができる。これらの添加量は、本発明の効果に影響を与えない範囲で、当業者が適宜決定することができる。
【0024】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は25℃において液体であり、そして、25℃における粘度は、1~1000mPa・sであることが好ましく、1~500mPa・sであることがより好ましく、特に1~100mPa・sであることがより好ましい。
25℃のおける粘度が上記範囲内であれば、スプレーなどの吐出容器から吐出しやすく、取り扱い性が良好になる。なお、本発明における25℃での粘度は、試料を25℃に調整し、B型粘度計(東機産業社製)を用いて測定した粘度を意味する(測定条件:ローターNo.1、回転数60rpmとする)。
【0025】
[硬質表面用液体洗浄剤組成物の製造方法]
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、任意の方法で製造することができる。例えば、溶媒である水に、成分(a)の疎水性グリコールエーテル系溶剤と、成分(b)の親水性グリコールエーテル系溶剤と、成分(c)のアルカリ剤と、成分(d)の界面活性剤とを加え、さらに必要に応じて成分(e)のキレート剤と、その他の任意成分を加えて、撹拌混合すればよい。前記撹拌混合には、公知の装置を用いることができる。
【0026】
[硬質表面用液体洗浄剤組成物を用いた洗浄方法]
本発明は、硬質表面用液体洗浄剤組成物を用いた洗浄方法にも関する。前記洗浄方法は、例えば、上記した本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物を、油汚れのある硬質表面に接触させた後、機械力をかけずに放置する。また、該硬質表面用液体洗浄剤組成物をスポンジ等の洗浄用具に含浸させ、油汚れのある硬質表面をスポンジ等で擦り洗いする。なお、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、高い洗浄力を有し、かつ、使用量が増加した場合でも優れたすすぎ性を持ち、環境への影響も少ないことから、上記硬質表面用液体洗浄剤組成物を噴霧又は塗布し、一定時間経過後に、水等ですすぐ、「擦らず洗い」に好ましく用いることができる。すなわち、上記硬質表面用液体洗浄剤組成物は、液滴状にして噴霧する、又は泡状にして塗布することが好ましい。具体的には、スプレー手段を用いることが好ましい。
なお、本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、汚れの強度や被洗浄物によって、そのまま洗浄に使用することもできるが、硬質表面用液体洗浄剤組成物を水道水で希釈したものを使用することもできる。希釈の程度としては、例えば、硬質表面用液体洗浄剤組成物1質量部を、0.5~100質量部の水道水等で希釈したものを使用することができる。
本発明の洗浄対象は、例えば、台所、レストラン、スーパーマーケット、食品工場等の厨房や作業場等における、食器、容器、調理器具、調理家電、換気扇、レンジ、オーブン、流し、床等様々な物品の硬質表面を対象とする。また、硬質表面の材質としては、例えば、プラスチック等の硬質樹脂表面、ステンレスや鉄等の金属表面、タイル等の陶器表面、及びそれらの組合せを挙げることができる。
【0027】
[スプレー容器入り硬質表面用洗浄剤物品]
本発明は、上記硬質表面用液体洗浄剤組成物を、スプレイヤー容器に充填してなる、スプレー容器入り硬質表面用洗浄剤物品にも関する。前記スプレイヤー容器としては、トリガー式スプレー容器、ポンプ式スプレー容器等の噴射剤を使用しない手動式スプレー装置や、噴射剤を用いるエアゾール等を挙げることができる。本発明においては、内容物を液滴状又は泡状にして噴霧又は塗布することができるトリガー式スプレーが好ましい。スプレイヤー容器は市販のものを用いることができ、当業者であれば、液滴状又は泡状にするために必要な最適なスプレイヤー容器を適宜選択することができる。
【実施例0028】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。なお、実施例及び比較例における装置、材料、実施手順等の詳細は、以下の通りである。
【0029】
成分(a):疎水性グリコールエーテル系溶剤
(a1)ジエチレングリコールジブチルエーテル(商品名:「ジブチルジグリコール」、製造者:日本乳化剤社製、水への溶解度:溶けにくい)
(a2)エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(商品名:「2-エチルヘキシルグリコール」、製造者:日本乳化剤社製、水への溶解度:溶けにくい)
(a3)ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(商品名:「2-エチルヘキシルジグリコール」、製造者:日本乳化剤社製、水への溶解度:溶けにくい)
(a4)ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(商品名:「ヘキシルジグリコール」、製造者:日本乳化剤社製、水への溶解度:やや溶けにくい)
なお、特定の疎水性グリコールエーテル系溶剤の組み合わせにのみ、所望の効果があることを示すため、以下の成分(a’)の疎水性グリコールエーテル系溶剤を比較例として用いた。
(a’1)エチレングリコールモノフェニルエーテル(商品名:「フェニルグリコール」、製造者:日本乳化剤社製、水への溶解度:やや溶けにくい)
(a’2)エチレングリコールモノベンジルエーテル(商品名:「ベンジルグリコール」、製造者:日本乳化剤社製、水への溶解度:溶けにくい)
【0030】
成分(b):親水性グリコールエーテル系溶剤
(b1)ジエチレングリコールモノブチルエーテル(商品名:「ブチルジグリコールNO」、製造者:日本乳化剤社製、水への溶解度:極めて溶けやすい)
(b2)3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(商品名:「ソルフィット」、製造者:クラレ社製、水への溶解度:極めて溶けやすい)
なお、特定の親水性グリコールエーテル系溶剤の組み合わせにのみ、所望の効果があることを示すため、以下の成分(b’)の親水性グリコールエーテル系溶剤を比較例として用いた。
(b’1)エチレングリコールモノメチルエーテル(商品名:「メチルグリコール」、製造者:日本乳化剤社製、水への溶解度:極めて溶けやすい)
(b’2)ジエチレングリコールモノメチルエーテル(商品名:「メチルジグリコール」、製造者:日本乳化剤社製、水への溶解度:極めて溶けやすい)
【0031】
成分(c):アルカリ剤
(c1)水酸化ナトリウム(東ソー社製)
(c2)水酸化カリウム(AGC社製)
(c3)モノエタノールアミン(三井化学社製)
【0032】
成分(d):界面活性剤
(d1)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩(アニオン)(商品名:「エマール20C」、製造者:花王社製)
(d2)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム(アニオン)(商品名:「カオーアキポRLM-45NV」、製造者:花王社製)
(d3)ラウリルジメチルアミンオキシド(両性)(商品名:「アンヒトール20N」、製造者:花王社製)
(d4)ポリオキシエチレンデシルエーテル(ノニオン)(商品名:「ファインサーフD-1303」、製造者:青木油脂工業社製)
なお、界面活性剤のうち、カチオン界面活性剤を用いた場合には所望の効果を奏さないことを示すため、以下の成分(d’)のカチオン界面活性剤を比較例として用いた。
(d’1)ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド(カチオン)(商品名:「コータミン24P」、製造者:花王社製)
【0033】
成分(e):キレート剤
(e1)エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩(商品名:「EDTA・4Na」、製造者:三菱ケミカル社製)
【0034】
<pHの測定方法>
(1)評価方法
JIS Z8802:2011に従って、25℃での供試洗浄剤組成物のpHを、pHメーター(堀場製作所社製、F-72型)を用いて測定した。
(2)評価基準
○:pHが10以上
×:pHが10未満
【0035】
<洗浄性評価の実施手順>
(1)評価方法
以下の工程を行うことで、洗浄性を評価した。
工程1:試験前にポリプロピレン製テストピース(太佑機材社製:75.0×25.0×1.0mm)の重量を測定する(この重量を(a)とする)。
工程2:変性大豆油(大豆油を、180℃オーブンにて120時間加熱したもの)を約100mgテストピースに塗布し、塗布後の重量を測定する(この重量を(b)とする)。
工程3:スプレイヤーを用いて本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物を吹き付けて、10分間静置する。
工程4:吹き付けてから10分後、水道水で1分間すすぎを実施し、一晩風乾させる。
工程5:風乾後の重量を測定し(この重量を(c)とする)、下記の計算式より洗浄率を算出した。
(2)計算式
洗浄率%=(b-c)/(b-a)×100
(3)評価基準
上記計算式により導かれた洗浄率%に基づいて、洗浄力スコアを以下のとおりに評価した。
スコア1=洗浄率0~19%
スコア2=洗浄率20~39%
スコア3=洗浄率40~59%
スコア4=洗浄率60~79%
スコア5=洗浄率80~100%
上記洗浄力スコアが、4以上である場合に、優れた洗浄力を有する(合格)と評価した。
【0036】
表1~表8に記載の配合で硬質表面用液体洗浄剤組成物を作成し、これを上記したpHの測定、洗浄性評価の実施手順に則り、(1)の評価方法の順番で各工程を実施し、(2)の計算式で洗浄率を求め、(3)の評価基準に従い、表1~8に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物の洗浄力を評価した。その結果を表1~8にまとめた。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
表1~8に示すとおり、少量の特定の疎水性グリコールエーテル系溶剤(成分(a))をジエチレングリコールモノブチルエーテルや3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(成分(b))に組み合わせて使用することで、グリコールエーテル系溶剤の配合量を少なくしても、硬質表面に付着した油汚れが効果的に洗浄されることを見出した。溶剤には変性した油汚れを膨潤させることで洗浄力を向上させる機能があり、親水性グリコールエーテル系溶剤に対して、少量の特定の疎水性グリコールエーテル系溶剤(成分(a))を加えることで、親水性のグリコールエーテル系溶剤の洗浄効果のピークをより少量側にシフトさせることができるためと考えられる。これにより、親水性グリコールエーテル系溶剤の配合量を大幅に減らすことができるので、疎水性グリコールエーテル系溶剤を加えたとしても、トータルとしてのグリコールエーテル系溶剤の配合量を少なくすることができ、コスト削減と作業者の安全性や環境への影響を低減させることができる。
【0046】
また、実施例12にあるように、キレート剤(d)は、本発明にとって任意成分であることを確認した。一方、比較例2、3により、同じ疎水性グリコールエーテル系溶剤の中でも洗浄力に劣るものがあることがわかった。また、比較例5、11により、成分(b)の配合量が多いもの(グリコールエーテル系溶剤が10質量%と高い場合)と比較して、本発明の洗浄剤組成物の洗浄力は同等以上であることを確認した。これは、これまでグリコールエーテル系溶剤を10質量%使用する必要があったところ、本発明によれば、疎水性グリコールエーテル系溶剤と親水性グリコールエーテル系溶剤の合計配合量を9質量%以下にまで減少させることができることを意味する。そして、比較例10により、界面活性剤として、カチオン界面活性剤を用いると、洗浄力が低下することがわかった。また、比較例16及び17により、ジエチレングリコールモノブチルエーテルや3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(成分(b))の代わりに、別のグリコールエーテル系溶剤(成分(b’))を用いると、洗浄力の向上が見られないことを確認した。