(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139629
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】回転体およびそれを用いた重力発電機
(51)【国際特許分類】
F03G 3/00 20060101AFI20241002BHJP
F03B 17/06 20060101ALI20241002BHJP
F03G 3/08 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
F03G3/00 A
F03B17/06
F03G3/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050669
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】523109828
【氏名又は名称】清水 麻実
(71)【出願人】
【識別番号】523113386
【氏名又は名称】清水 三鈴
(74)【代理人】
【識別番号】100207251
【弁理士】
【氏名又は名称】矢島 弘文
(72)【発明者】
【氏名】清水 秀昭
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA10
3H074AA18
3H074BB19
3H074CC11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】自力で回転を続けられる回転体およびその様な回転体を用いた発電機を提供する。
【解決手段】複数個の重り部が均等間隔に外周に付けられた環状の履帯部と、略円柱状の基部と、からなる回転体。基部は、一方の環状の半円部分である第1の半円部上にある履帯部の重り部の数Nが、もう一方の環状の半円部分である第2の半円部上にある履帯部の重り部の数Mよりも常に多くなるように、左右で異なる曲率を有する略円形の断面形状を有しており、回転体は、基部の断面形状と基部に取り付けられた履帯部によって、第1の半円部上にある履帯部のN個の重り部によるトルクが、第2の半円部上にある履帯部のM個の重り部によるトルクよりも常に大きくなっていることで、基部の側面上で履帯部が第1の半円部の最高部から最底部の方向に回転を続ける。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の重り部が均等間隔に外周に付けられた環状の履帯部と、略円柱状の基部と、からなる回転体であって、
前記基部は、前記基部の底面が垂直になるように固定して配置され、
前記履帯部は、前記履帯部の環状の辺から構成される面が垂直になる様に、前記基部の側面上に回転可能に取り付けられ、
前記履帯部が取り付けられた前記基部は、
一方の環状の半円部分である第1の半円部上にある前記履帯部の前記重り部の数Nが、もう一方の環状の半円部分である第2の半円部上にある前記履帯部の前記重り部の数Mよりも常に多くなるように、左右で異なる曲率を有する略円形の断面形状を有しており、
前記回転体は、前記基部の前記断面形状と前記基部に取り付けられた前記履帯部によって、前記第1の半円部上にある前記履帯部のN個の前記重り部によるトルクが、前記第2の半円部上にある前記履帯部のM個の重り部によるトルクよりも常に大きくなっていることにより、前記基部の側面上で前記履帯部が前記第1の半円部上の最高部から最底部の方向に回転を続けるようになっているものである、
ことを特徴とする回転体。
【請求項2】
請求項1に記載の回転体を用いた重力発電機であって、さらに、中心位置に軸部が取り付けられ前記軸部を軸に回転可能な内歯歯車部を有し、かつ、前記基部に取り付けられた前記履帯部の各前記重り部の外側に外歯が取り付けられ、
前記内歯歯車部は、前記第1の半円部上にある前記履帯部の前記外歯を外歯歯車として対で回転するための、複数の内歯を有し、
前記重力発電機は、前記回転体が回転を続けることで回転する、前記内歯歯車部の前記軸部に取り付けられた発電機により、発電を続けるようになっているものである、
ことを特徴とする重力発電機。
【請求項3】
請求項2に記載の重力発電機であって、さらに、前記内歯歯車部の外周には複数個の羽根部が放射線状に均等間隔に取り付けられており、かつ、前記回転体の回転を助力する方向に作動流体が前記羽根部を通過する羽根部作動流体通過構造を有し、
前記動力発電機は、前記重力発電機が摩擦エネルギーによって失われた回転エネルギー分を、前記羽根部作動流体通過構造によって作動流体が有する運動エネルギーを回転エネルギーに変えることで賄い、発電を続けるようになっているものである、
ことを特徴とする重力発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
回転体およびそれを用いた重力発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
今までは、自力で回転を続けられる回転体およびその様な回転体を用いた発電機が無かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はそのような状況に鑑み、自力で回転を続けられる回転体およびその様な回転体を用いた発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の発明による回転体は、複数個の重り部が均等間隔に外周に付けられた環状の履帯部と、略円柱状の基部と、からなる回転体であって、基部は、基部の底面が垂直になるように固定して配置され、履帯部は、履帯部の環状の辺から構成される面が垂直になる様に、基部の側面上に回転可能に取り付けられ、履帯部が取り付けられた基部は、一方の環状の半円部分である第1の半円部上にある履帯部の重り部の数Nが、もう一方の環状の半円部分である第2の半円部上にある履帯部の重り部の数Mよりも常に多くなるように、左右で異なる曲率を有する略円形の断面形状を有しており、回転体は、基部の断面形状と基部に取り付けられた履帯部によって、第1の半円部上にある履帯部のN個の重り部によるトルクが、第2の半円部上にある履帯部のM個の重り部によるトルクよりも常に大きくなっていることにより、基部の側面上で履帯部が第1の半円部の最高部から最底部の方向に回転を続けるようになっているものである、ことを特徴とする。
第2の発明による重力発電機は、第1の発明による回転体を用いた重力発電機であって、さらに、中心位置に軸部が取り付けられ軸部を軸に回転可能な内歯歯車部を有し、かつ、基部に取り付けられた履帯部の各重り部の外側に外歯が取り付けられ、内歯歯車部は、第1の半円部上にある履帯部の外歯を外歯歯車として対で回転するための、複数の内歯を有し、重力発電機は、回転体が回転を続けることで回転する、内歯歯車部の軸部に取り付けられた発電機により、発電を続けるようになっているものである、ことを特徴とする。
第3の発明による重力発電機は、第2の発明による重力発電機に対し、さらに、内歯歯車部の外周には複数個の羽根部が放射線状に均等間隔に取り付けられており、かつ、回転体の回転を助力する方向に作動流体が羽根部を通過する羽根部作動流体通過構造を有し、動力発電機は、重力発電機が摩擦エネルギーによって失われた回転エネルギー分を、羽根部作動流体通過構造によって作動流体が有する運動エネルギーを回転エネルギーに変えることで賄い、発電を続けるようになっているものである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の回転体は、自力で回転を続けられる回転体およびその様な回転体を用いた自力で発電を続けられる発電機を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本願の第1実施形態に係る回転体の構成であって、ある一例の形状である場合の断面図である。
【
図2】本願の第1実施形態に係る回転体の構成であって、別例の形状である場合の断面図である。
【
図3】本願の第1実施形態に係る回転体の構成であって、
図2における斜視図である。
【
図4】本願の第2実施形態に係る重力発電機の動作時の構成の一例を示す斜視図である。
【
図5】本願の第2実施形態に係る重力発電機の停止時およびメンテナンス時の構成の一例を示す斜視図である。
【
図6】本願の第3実施形態に係る重力発電機の動作時の構成の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明による回転体およびそれを用いた重力発電機の実施例を説明する。
本発明において垂直とは、重力の方向のことであると定義する。
底面が垂直とは、面が垂直に立っている、すなわち面の法線が水平であることを意味する。
履帯部の環状の辺から構成される面とは、履帯部が環状になっていることにより閉じた環状の辺が内側に形成されるが、その閉じた辺から構成される面のことであると定義する。
左右とは、
図1や
図2の断面図で見た場合において、基部の断面形状の左右(x軸のプラスマイナス方向)のことであると定義する。
発電機とは、外力によりコイルを回転させ誘導起電力を発生させることによる発電機のことであると定義する。
作動流体とは、ある機械を作動させるために用いられる流体のことであって、この流体には流水、蒸気、ガス、空気などが含まれるものとする。
【実施例0008】
図1から
図3を用いて、本実施例に係る回転体について説明する。
図1は、第1の実施例における回転体1の構成であってある一例の形状である場合の断面図、
図2は、当該構成であって別例の形状である場合の断面図、
図3は、
図2における斜視図である。
図3に立体的形状のx軸、y軸、z軸を示すが、y軸は回転体1の垂直方向、z軸は回転体1の厚み方向である。
図1、
図2においては、y軸は紙面の上下方向で、z軸は紙面の厚み方向で表される。
【0009】
[回転体1の構成および構造について]
図1から
図3に示す通り、第1の実施例による回転体1は、複数個の重り部1011が均等間隔に外周に付けられた環状の履帯部101と、略円柱状の基部102と、からなる。
図1から
図3および同図のx軸、y軸、z軸で示される様に、基部102は、基部102の底面が垂直になるように固定して配置される。また、履帯部101は、履帯部101の環状の辺から構成される面が垂直になる様に、基部102の側面上に取り付けられている。
履帯部101の環状の辺から構成される面とは、履帯部101が環状になっていることにより閉じた環状の辺が内側に形成されるが、その閉じた辺から構成される面のことである。すなわち
図1や
図2に見られるように、履帯部101の内側に形成された閉じた環状の辺はx-y平面上(紙面上)にあり、この面に相当する面のことを言う。
端的に言えば、上記は回転体1が
図3で示されるような構成、構造となっていることを示している。
【0010】
また、履帯部101は、基部102の側面上において回転可能な様に取り付けられている。上述の通り基部102は
図3に示す通りの配置で固定されているので、履帯部101のみが基部102の側面上で回転する。簡単のため図示はしていないが、この回転を可能とする手段としては、例えば基部102の履帯部101が接触する側面上、または履帯部101の内周側にローラなどを設けることで回転可能とする手段としても良い。ここで、回転可能とする手段としては接触抵抗が極力少なくなる様な手段であることが望ましい。また、接触抵抗が極力少なくなる様に履帯部101と基部102との間に適度な隙間を有することが望ましい。ローラ等の手段と組み合わせ、または単独の手段として、オイル潤滑するものであっても良い。
【0011】
履帯部101が取り付けられた基部102は、一方の環状の半円部分である第1の半円部1021上にある履帯部101の重り部1011の数Nが、もう一方の環状の半円部分である第2の半円部1022上にある履帯部101の重り部1011の数Mよりも常に多くなるように、左右で異なる曲率を有する略円形の断面形状1023を有している。
図1に示すようなある一例の形状では、基部102において、第1の半円部1021の半円の曲率は、第2の半円部1022の半円の曲率よりも大きくなっている。すなわち、左右で異なる曲率を有する断面形状1023である。よって、第1の半円部1021上にある履帯部101の重り部1011の数Nは、第2の半円部1022上にある履帯部101の重り部1011の数Mよりも常に多くなる。
図2に示す別例の形状では、第1の半円部1021の半円の曲率は
図1のものと同一であるが、第2の半円部1022の半円の曲率はほぼ0であり、側面はほぼ垂直になっている場合の、曲率が左右で異なる場合の極端な例である。
ここで、履帯部101の回転摩擦を極力減らすため、第1の半円部1021と第2の半円部1022との境界部分は、
図1および
図2に示す通り、ある程度の丸みをもったものとすることが望ましい。なお、
図3および
図3以降の図においては、簡単のため、このような丸み部分は示されていない。
図2の別例の形状は、Mの数が
図1の形状のものよりも少なくなるため後述する左右のトルク差の関係では望ましいが、左右での曲率の変化が大きくなってしまうために摩擦抵抗が大きくなるという点においては望ましくない。
【0012】
回転体1は、基部102の断面形状1023と基部102に取り付けられた履帯部101によって、第1の半円部1021上にある履帯部101のN個の重り部1011によるトルクが、第2の半円部1022上にある履帯部101のM個の重り部1011によるトルクよりも常に大きくなっている。それにより、基部102の側面上で履帯部101が第1の半円部1021の最高部から最底部の方向に回転を続けるようになっているものである。
回転動作原理については、下記で述べる。
【0013】
[回転体1の回転動作原理について]
簡単のため、
図2に示す形状(別例の形状)の場合においては第2の半円部1022においてトルクは発生しないため、
図2の場合のトルクについてのみ示す。
図1において0時位置から右回りのθ
i位置(i=1~N)にある第1の半円部1021上の履帯部101の重り部1011による半円部接線方向にかかる重力による力F
iは、各重り部1011の質量をm、重力加速度をgとすると、式1の通りである。
[式1]
また、履帯部101と基部102との接触部分の摩擦係数をμとすると、θ
i置の重り部1011の摩擦力f
iは式2の通りである。
[式2]
よって、第1の半円部1022の半径をrとすると、θ
i位置の重り部1011のトルクT
iは、式3となる。
[式3]
よって、θ
1からθ
N位置までの重り部による総トルクは次式となる。
[式4]
第1の半円部1021上の履帯部101のN個の重り部1011によって、履帯部101は常にトルクが発生するため、基部102の側面上で履帯部101が第1の半円部1021の最高部から最底部の方向に回転を続ける。
回転体1が回転を始めるエネルギーは、第1の半円部1021上にある履帯部101のN個の重り部1011の位置エネルギーと第2の半円部1022上にある履帯部101のM個の重り部1011の位置エネルギーとの差であり、これが、基部102の側面上で履帯部101が第1の半円部1021の最高部から最底部の方向への回転エネルギーに変換される。
ただし、回転体1は永久に回転を続けるものではない。すなわち、上述の摩擦エネルギーの発生により回転エネルギーは徐々に弱まるため、永久機関がありないと同様の理由で、回転体1はある程度回転を続けたのち停止する。
【0014】
[回転体1の応用例について]
回転体1は、第2や第3の実施例に示すような発電機に応用する以外に、例えば玩具としての応用例が考えられる。
第3の実施例で示すような作動流体(例えば水流など)が有する運動エネルギーを回転エネルギーに変える仕組みを有するものや、電磁石によって回転エネルギーを補うことで、摩擦エネルギーによる回転エネルギーの損失を賄い、回転体1が回転を続ける玩具などである。
【0015】
[回転体1の効果について]
このような第1の実施例により、自力で回転を続けられる回転体を提供できる。
さらに、第2の台座203の位置にある内歯歯車部201部分には、さらにもう1セットの回転体と内歯歯車部の組み合わせがあり、2セットの回転体により内歯歯車部を回転させるものであってもよい。この場合には2倍の回転力が与えられる。また、左右2セットの回転体とすることで軸部の片側に荷重が掛からなくなり、安定した軸部の回転が得られる。
[重力発電機2の制御(回転の開始や停止)について]
図5は、本願の第2実施形態に係る重力発電機の停止時およびメンテナンス時の構成の一例を示す斜視図である。
図5においては、簡単のため台座は示されていない。
図4および
図5に示す、基部102に取り付けられた制御ホイール1024は、内歯歯車部201へ、履帯部101が取り付けられた基部102を入れることで回転を始めさせたり、内歯歯車部201から、履帯部101が取り付けられた基部102を取り出して回転を停止させたりメンテナンスを行うためのものである。
具体的には、回転(発電)の開始時は、
図5の状態から、制御ホイール1024に取り付けられたジョイント部1025を用いて基部102をz軸方向に動かし、内歯歯車部201へ履帯部101が取り付けられた基部102を入れ、外歯1012と内歯2012とをかみ合わせる。そして制御ホイール1024を用いて履帯部101が取り付けられた基部102を
図4の状態に回転させると、上述の原理により、基部102の側面上で履帯部101が回転を始め、発電が始まる。
回転(発電)の停止およびメンテナンス時は、
図4の状態から、制御ホイール1024を用いて履帯部101が取り付けられた基部102を
図5の状態に回転させると回転が停止する。そして、制御ホイール1024により基部102をz軸方向に動かし、内歯歯車部201から履帯部101が取り付けられた基部102を外して、外歯1012と内歯2012とのかみ合わせを無くし
図5の状態とする。
図4においては、制御ホイール1024が取り付けられた基部102を支える第3の台座204が示されているが、これは必須の構成品ではない。第3の台座204を設ける場合には制御ホイール1024との接触部分には部分にローラなどを設け、制御ホイール1024が回転可能とする必要がある。ただし、発電中において基部102は固定されており回転しないため、発電能力の点からは接触抵抗についてはそれほど考慮する必要はない。