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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139640
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】システム、装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 6/26 20060101AFI20241002BHJP
   H01M 14/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H01M6/26 Z
H01M14/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050683
(22)【出願日】2023-03-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年3月28日にトライポッド・デザイン株式会社により、TOWARDS THE FUTUREでの展示にて公開。 令和4年4月26日にトライポッド・デザイン株式会社により、国際シンポジウム RETURN TO NATUREでの展示にて公開。 令和4年10月11日にトライポッド・デザイン株式会社により、国際シンポジウム SPECULATIVE DESIGN & TECHNOLOGYでの展示にて公開。 令和4年10月25日にトライポッド・デザイン株式会社により、ウェブサイトへの掲載にて公開(https://www.facebook.com/photo/?fbid=555244779935476&set=pcb.555250793268208)。 令和4年10月25日にトライポッド・デザイン株式会社により、ウェブサイトへの掲載にて公開(https://www.facebook.com/FutureBrainLab/posts/pfbid028LqTBqhkhpBfT1R1kXZDLbTKWcbAevwYXD9TGPvcjuio4RG9XuXrnMmcr3HrZePVl)。 令和4年10月25日に株式会社センシングネットにより、ウェブサイトへの掲載にて公開(https://www.facebook.com/sensingnet/posts/pfbid02a64nGvCEJa5avZESYxbWRSthgnwB6NBkYjF6YKLKjBjKKhvZek7UVdiycU4XNbNNl)。 令和5年1月5日~1月8日にトライポッド・デザイン株式会社により、CES 2023での展示にて公開。 令和5年1月6日、令和5年1月7日、令和5年1月8日、令和5年1月10日、及び令和5年1月13日にトライポッド・デザイン株式会社により、ウェブサイトへの掲載にて公開(https://www.facebook.com/tripoddesign/videos/569536417922835 他)。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年1月7日、及び令和5年1月8日に株式会社アークエッジ・スペースにより、ウェブサイトへの掲載にて公開(https://twitter.com/ArkEdgeSpace/status/1611578471784022017?cxt=HHwWgoDUpZyFvd0sAAAA 他)。 令和5年1月10日にトライポッド・デザイン株式会社により、ウェブサイトへの掲載にて公開(https://www.facebook.com/FutureBrainLab/posts/pfbid02vq1pS4xeTMqWjwXMUXCMiRy42ErJRHmWRo4RDSiFpsGM6PbFL42krG58epAifGnNl)。 令和5年1月10日に株式会社センシングネットにより、ウェブサイトへの掲載にて公開(https://www.facebook.com/sensingnet/posts/pfbid0xmB7UfcTAKicnDwnZW9A39CkRFoyP6nGnYAckS1vp2Eu5hFkqL2NjeatLfphkeK9l)。 令和5年1月13日に日本テレビ放送網株式会社により、ウェブサイトへの掲載にて公開(https://twitter.com/ntv_rd/status/1613865963929362433?cxt=HHwWgoDT8eSizeUsAAAA)。 令和5年1月17日に株式会社電波新聞社により、ウェブサイトへの掲載にて公開(https://dempa-digital.com/article/394556?fbclid=IwAR3liD1_oVaiio6SMpxE4gu4CxMXxfGwCzXynODu4XMUFjL6WTwplGVbkY4)。 令和5年1月17日にトライポッド・デザイン株式会社により、ウェブサイトへの掲載にて公開(https://www.facebook.com/tripoddesign/posts/pfbid02M6BvD8u5cH8pXCaz4hhsakx7w966Fn1UKQT27Rb3kuNrYJvYbNNM3qtMXRqp4a97l 他)。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年1月25日に株式会社マイナビにより、ウェブサイトへの掲載にて公開(https://news.mynavi.jp/techplus/article/20230125-2574082/?fbclid=IwAR36Dnc4S_uR4S73U--SQS2aVhSh-NFEe4FZVBq3aeV-CAMlbbHydmCifVc)。 令和5年3月12日にBuzzFeed Japan株式会社により、YouTubeへの投稿にて公開(https://www.youtube.com/watch?v=VhgDwB5NViQ)。 令和5年3月13日にBuzzFeed Japan株式会社により、ウェブサイトへの掲載にて公開(https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_64099123e4b01ea51224a6a3)。 令和5年3月14日にトライポッド・デザイン株式会社により、ウェブサイトへの掲載にて公開(https://www.facebook.com/tripoddesign/posts/pfbid0nm3tarpXpfM1gWTiyQXkPHkZttSTehstY7pP7gj5FZG8GpR6M2ezRSMuio9zYULvl 他)。 令和5年3月14日にトライポッド・デザイン株式会社により、ウェブサイトへの掲載にて公開(https://www.facebook.com/FutureBrainLab/posts/pfbid025gxapHHJdkHR4ohjstteugSmefRFWUYXE6DEABYh33QTq43YeN4Cejucj3pfWoutl)。 令和5年3月14日に株式会社センシングネットにより、ウェブサイトへの掲載にて公開(https://www.facebook.com/sensingnet/posts/pfbid0chDMYdeUbdThcZpJFzvbiRxHvvcjV6h4F6rKCn7Tf8zrokrWyjSoKxkwCfGvkKuyl)。
(71)【出願人】
【識別番号】399131116
【氏名又は名称】トライポッド・デザイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】弁理士法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 聰
【テーマコード(参考)】
5H025
5H032
【Fターム(参考)】
5H025AA02
5H025BB11
5H025CC10
5H025CC18
5H025CC31
5H032AA08
5H032AS02
5H032AS11
5H032CC11
5H032EE14
(57)【要約】
【課題】
コロイド状物質を含有する媒体により発電するシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】
第一導電部及び第二導電部と、媒体と、機能部とを備え、第一導電部及び機能部は接続されており、第二導電部及び機能部は接続されており、第一導電部が媒体と接触し、第二導電部が媒体と接触し、第一導電部及び第二導電部は互いに非接触であり、媒体がコロイド状物質を含有する、システム。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一導電部及び第二導電部と、
媒体と、
機能部と
を備え、
第一導電部及び機能部は接続されており、
第二導電部及び機能部は接続されており、
第一導電部が媒体と接触し、
第二導電部が媒体と接触し、
第一導電部及び第二導電部は互いに非接触であり、
媒体がコロイド状物質を含有する、
システム。
【請求項2】
コロイド状物質が、高吸水性ポリマー、寒天、ゼラチン、及び/又は、でんぷんを含有する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
媒体が、水、海水、及び/又は、水分を含む砂もしくは土を含有する、
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
第一導電部及び第二導電部と、
媒体と、
を備え、
第一導電部が媒体と接触し、
第二導電部が媒体と接触し、
第一導電部及び第二導電部は互いに非接触であり、
媒体がコロイド状物質を含有する、装置。
【請求項5】
第一導電部及び第二導電部を機能部と接続することにより発電し、機能部を機能させる、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
第一導電部及び第二導電部と、
媒体と、
を備え、
第一導電部が媒体と接触し、
第二導電部が媒体と接触し、
第一導電部及び第二導電部は互いに非接触であり、
媒体がコロイド状物質を含有する装置において、
第一導電部及び第二導電部を機能部と接続することにより発電させ、機能部を機能させる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システム、装置、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルタ電池やダニエル電池のように、異なる二種類の金属を電極とし、電解液に浸すことで、それぞれの電極において、酸化反応又は還元反応を生じさせ、電子の流れる経路を作り出す装置(つまり、電池)がある。
【0003】
電池の電解液として使用される液体は、化学やけどのおそれ、火災又は爆発のおそれ、あるいは有毒なガスの発生等、人体や環境に悪影響を与える可能性があり、電解液の取り扱いは非常に難しいものであった。加えて、製品化をする際において、液漏れを起こさないようにしなければならず、コストが増大するという課題があった。
【0004】
ところで、近年は、可視光、熱、電波、あるいは微生物による有機物の分解処理等の微小なエネルギーを電力に変換するエネルギーハーヴェスティング技術が注目されており、エネルギーハーヴェスティング技術を利用して、自立電源を実用化する研究がなされている。
【0005】
また、土や水など、身近に存在するものを媒体として発電するシステムも知られている(特許文献1参照)。このシステムによれば、導電部を、土や水などの媒体と接触させることで電力を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2021/045236号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、コロイド状物質を含有する媒体により発電するシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記目的は、
[1]第一導電部及び第二導電部と、媒体と、機能部とを備え、第一導電部及び機能部は接続されており、第二導電部及び機能部は接続されており、第一導電部が媒体と接触し、第二導電部が媒体と接触し、第一導電部及び第二導電部は互いに非接触であり、媒体がコロイド状物質を含有する、システム;
[2]コロイド状物質が、高吸水性ポリマー、寒天、ゼラチン、及び/又は、でんぷんを含有する、[1]に記載のシステム;
[3]媒体が、水、海水、及び/又は、水分を含む砂もしくは土を含有する、[1]又は[2]に記載のシステム;
[4]第一導電部及び第二導電部と、媒体と、を備え、第一導電部が媒体と接触し、第二導電部が媒体と接触し、第一導電部及び第二導電部は互いに非接触であり、媒体がコロイド状物質を含有する、装置;
[5]第一導電部及び第二導電部を機能部と接続することにより発電し、機能部を機能させる、[4]に記載の装置;
[6]第一導電部及び第二導電部と、媒体と、を備え、第一導電部が媒体と接触し、第二導電部が媒体と接触し、第一導電部及び第二導電部は互いに非接触であり、媒体がコロイド状物質を含有する装置において、第一導電部及び第二導電部を機能部と接続することにより発電させ、機能部を機能させる、方法;
により達成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コロイド状物質を含有する媒体により発電するシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態にかかるシステムの構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態にかかる電力変換部の構成を示す図である。
図3】本発明の実施の形態にかかる実施例及び比較例の装置の電圧の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下、効果に関する記載は、本発明の実施の形態の効果の一側面であり、ここに記載するものに限定されない。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態にかかるシステムの構成を示す図である。図1(A)~(D)に示するように、本発明の実施の形態にかかるシステムは、第一導電部1と、第二導電部2と、機能部3と、媒体4(4a及び4b)とから構成される。第一導電部1及び機能部3、並びに、機能部3及び第二導電部2は、それぞれ電気的に接続されている。「電気的に接続」とは、例えば、導電性を有する導線等により通電可能に接続されることをいう。
【0013】
第一導電部1の一部又は全部が、媒体4と接触している。また、第二導電部2の一部又は全部が、媒体4と接触している。第一導電部1及び第二導電部2は、互いに非接触である。「非接触」とは、例えば、第一導電部1と第二導電部2とが直接接触していない状態をいう。
【0014】
図1(A)においては、媒体4は、同一の組成を有する物質又は同一の素材が物理的に連続することで、一体として構成されている。つまり、図1(A)においては、第一導電部1と接触している媒体4と、第二導電部2と接触している媒体4とは、同一の組成を有する物質又は同一の素材であり、かつ、媒体4は、物理的に連続し、一体として構成されている。
【0015】
また、図1(A)において、媒体4は、容器に収容されていている。媒体4を収納する容器等の素材は、特に限定されず、適宜設計可能である。例えば、木製の容器、アクリル製の容器等を用いることができる。
【0016】
媒体4は、コロイド状物質を含有するものである。コロイド状物質には、ゲル状物質、ゾル状物質、ゲルとゾルの中間状態の物質などが含まれる。ゲルとは、液体を分散媒とするコロイドであって、流動性を有しないものを指す。ゾルとは、液体を分散媒とするコロイドであって、流動性を有するものを指す。分散媒は、水などの無機溶媒でも、アルコールなどの有機溶媒でもよい。ゲルは、溶媒に不溶の三次元網目構造を持つ高分子の膨潤体であってもよい。ゾルは、エマルションやサスペンションであってもよい。ゲル状物質は、ゲルの状態となっている物質のことを指す。ゾル状物質は、ゾルの状態となっている物質のことを指す。
【0017】
コロイド状物質、例えば、ゲル状物質及び/又はゾル状物質は、高吸水性ポリマー、寒天、ゼラチン、及び/又は、でんぷんを含有していてもよい。これらの物質は、コロイド状物質において、分散質として機能し得る。また、これらの物質は、入手が容易で、環境への負荷が小さい。
【0018】
ゲル及び/又はゾルは、液体と固体の中間の物質形態であると言える。水、海水などの液体を媒体4として発電する場合、砂、土などの固体を媒体4として発電する場合よりも、媒体4の第一導電部1と第二導電部2間の抵抗値は小さくなる。該抵抗値が小さい場合、該抵抗値が大きい場合と比べて、単位時間あたりの発電量は大きくなるが、第一導電部1及び/又は第二導電部2が劣化する速度は早くなる。ゲル状物質及び/又はゾル状物質は、一般的に、分散媒となる液体よりも、抵抗値が大きくなる。また、ゲル状物質及び/又はゾル状物質は、一般的に、砂、土などの固体よりも、抵抗値が小さい。そのため、媒体4にゲル状物質及び/又はゾル状物質を含有させることで、媒体4の第一導電部1と第二導電部2間の抵抗値を変化させ、単位時間あたりの発電量、並びに、第一導電部1及び/又は第二導電部2が劣化する速度を調整することが可能となる。
【0019】
媒体4の第一導電部1と第二導電部2間の抵抗値は、0.001kΩ以上が好ましく、0.01kΩ以上がより好ましく、0.1kΩ以上がさらに好ましく、1kΩ以上であることがより一層好ましく、10kΩ以上であることが特に好ましい。本発明の実施の形態にかかるシステムは、一般的な電解液を用いた電池とは異なり、媒体4の第一導電部1と第二導電部2間の抵抗値が大きくとも、機能することが可能である。
【0020】
媒体4は、少なくとも一部にゲル状物質及び/又はゾル状物質を含有していてもよく、全体がゲル状物質及び/又はゾル状物質となっていてもよい。「少なくとも一部にゲル状物質及び/又はゾル状物質を含有する」とは、媒体4の成分中にゲル状物質及び/又はゾル状物質を含有することをいう。例えば、媒体4の中に、液体とゲル状物質及び/又はゾル状物質が混在していてもよく、固体とゲル状物質及び/又はゾル状物質が混在していてもよい。「混在する」とは、全体が均一に混ざり合い、均一な素材となっていることでもよく、部分的に均一に混ざり合っておらず、不均一な素材となっていることでもよい。
【0021】
媒体4が少なくとも一部にゲル状物質及び/又はゾル状物質を含有する場合、第一導電部1の一部又は全部が、媒体4中のゲル状物質及び/又はゾル状物質と接触していてもよく、媒体4中のゲル状物質及び/又はゾル状物質とは接触していなくともよい。また、媒体4が少なくとも一部にゲル状物質及び/又はゾル状物質を含むものである場合には、第二導電部2の一部又は全部が、媒体4中のゲル状物質及び/又はゾル状物質と接触していてもよく、媒体4中のゲル状物質及び/又はゾル状物質とは接触していなくともよい。
【0022】
媒体4が少なくとも一部にゲル状物質及び/又はゾル状物質を含有する場合、第一導電部1の一部又は全部が、媒体4中のゲル状物質及び/又はゾル状物質と接触していることが好ましい。また、媒体4が少なくとも一部にゲル状物質及び/又はゾル状物質を含有する場合、第二導電部2の一部又は全部が、媒体4中のゲル状物質及び/又はゾル状物質と接触していることが好ましい。
【0023】
さらに、媒体4が少なくとも一部にゲル状物質及び/又はゾル状物質を含有する場合、第一導電部1が媒体4と接触する面においては、第一導電部1の全部が、媒体4中のゲル状物質及び/又はゾル状物質と接触していることが好ましい。また、媒体4が少なくとも一部にゲル状物質及び/又はゾル状物質を含有する場合、第二導電部2が媒体4と接触する面においては、第二導電部2の全部が、媒体4中のゲル状物質及び/又はゾル状物質と接触していることが好ましい。
【0024】
媒体4は、水、海水、及び/又は、水分を含む砂もしくは土を含有してもよい。つまり、媒体4は、高吸水性ポリマー、寒天、ゼラチン、及び、でんぷんからなる群より選ばれる1以上の物質と、水、海水、水分を含む砂、及び、水分を含む土からなる群より選ばれる1以上の物質とを含有していてもよい。高吸水性ポリマー、寒天、ゼラチン、及び、でんぷんからなる群より選ばれる1以上の物質と、水、海水、水分を含む砂、及び、水分を含む土からなる群より選ばれる1以上の物質とは、全体が均一に混ざり合い、均一な物質となっていてもよく、不均一に混ざり合い、部分的に均一に混ざり合っておらず、不均一な物質となっていてもよい。
【0025】
媒体4が水を含有する場合、水の電解質濃度は、1mol/L以下であってもよく、0.6mol/L以下であってもよく、0.1mol/L以下であってもよく、0.01mol/L以下であってもよく、0.001mol/L以下であってもよく、さらには、0.0001mol/L以下であってもよい。また、水に含まれる電解質のうち、陽イオンの濃度は、0.00001mol/L以下であってもよく、0.000001mol/L以下であってもよく、0.0000001mol/L以下であってもよく、0.00000001mol/L以下であってもよく、さらには、0mol/Lであってもよい。
【0026】
土又は砂の含水率は、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることがより一層好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。また、土又は砂の含水率は、100質量%未満であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。ここで、含水率とは、土又は砂に含まれる水分の質量を、水分と土又は砂の固形分との質量の和で除したものをいう。例えば、水を含んだ土の質量を測定し、100℃以上で3分間以上乾燥し、乾燥後の質量を測定することで、土に含まれる水分の質量を求め、これを乾燥前の水を含んだ土の質量で除することで、土の含水率を算出することができる。
【0027】
また、媒体4に含まれるゲル状物質及び/又はゾル状物質の含有量((媒体4に含まれるゲル状物質及び/又はゾル状物質の体積)/(該媒体4の体積)の百分率)は、50体積%以上であることが好ましく、70体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることがさらに好ましい。また、媒体4に含まれるゲル状物質の含有量は、100体積%以下であってもよく、98体積%以下であってもよく、95体積%以下であってもよい。ここで、「媒体4に含まれるゲル状物質及び/又はゾル状物質の体積」は、「媒体4の体積」から、「媒体4に含まれる液体の体積」と「媒体4に含まれる固体の体積」との和を減じたものとする。媒体4の全体がゲル状又はゾル状である場合、媒体4に含まれるゲル状物質又はゾル状物質の含有量は100体積%である。
【0028】
媒体4に含まれるゲル状物質及び/又はゾル状物質における、分散媒と分散質との割合は、特に限定されず、分散媒及び分散質の種類や、発電する際に希望する抵抗値などに応じて、適宜設計可能である。
【0029】
本発明の実施の形態にかかるシステムは、図1(B)に示すように、第一導電部1が接触する媒体4aと、第二導電部2が接触する媒体4bとが、接触していてもよい。この場合、第一導電部1が接触する媒体4aと第二導電部2が接触する媒体4bとは、互いに異なる組成を有する物質又は異なる素材である。媒体4aと媒体4bとは、同一種類の素材を含有し、各素材の配合量が異なるものであってもよく、異なる種類の素材を含有するもの又は異なる素材であってもよい。
【0030】
この場合、媒体4aと媒体4bとのうち、いずれか1以上がゲル状物質及び/又はゾル状物質を含有していればよい。つまり、媒体4a及び/又は媒体4bは、ゲル状物質及び/又はゾル状物質を含有する。媒体4aと媒体4bとのうち、ゲル状物質及び/又はゾル状物質を含有しない媒体4は、水、海水、及び/又は、水分を含む砂もしくは土を含有してもよい。また、ゲル状物質及び/又はゾル状物質を含有する媒体4a及び/又は媒体4bも、水、海水、及び/又は、水分を含む砂もしくは土を含有してもよい。
【0031】
また、媒体4aと媒体4bが互いに異なる組成を有する物質又は異なる素材である場合には、第一導電部1と第二導電部2が同一の素材からなるものであってもよい。
【0032】
図1(B)において、媒体4a及び媒体4bは、容器に収容されていている。媒体4a及び媒体4bを収納する容器等の素材は、特に限定されず、適宜設計可能である。例えば、木製の容器、アクリル製の容器等を用いることができる。
【0033】
あるいは、図示しないが、システムが備える媒体4は、3以上の互いに異なる組成を有する物質又は異なる素材から構成されてもよい。その場合、第一導電部1が接触する媒体4aと、第二導電部2が接触する媒体4bとは、媒体4aと媒体4b以外の、他の組成を有する物質又は異なる素材からなる媒体を介して物理的に接続していることが好ましい。
【0034】
あるいは、システムが備える媒体4は、図示しないが、第一導電部1と接触している媒体4と第二導電部2と接触している媒体4とが同一の組成を有する物質又は同一の素材であって、第一導電部1と接触している媒体4と、第二導電部2と接触している媒体4とが、他の組成を有する物質又は他の素材からなる媒体を介して物理的に接続していてもよい。
【0035】
つまり、システムにおいて、媒体4は、媒体を介して第一導電部1と第二導電部2との間で陽イオン、陰イオン、及び/又は電子の移動が可能であるように構成されていればよい。また、媒体4は、容器に収容されていていてもよい。
【0036】
また、本発明実施の形態にかかるシステムは、図1(C)に示すように、複数の第一導電部1と第二導電部2の対(以下、「導電部の対」という)を、直列に接続してもよい。図1(C)において、システムは、n個の第一導電部1(1、・・・、1、1k+1、・・・、1)と、n個の第二導電部2(2、・・・、2、2k+1、・・・、2)と、機能部3と、n個の媒体4(4、・・・、4、4k+1、・・・、4)とから構成されている。ここで、nは2以上の任意の整数を表し、kは1以上、n未満の整数を表す。
【0037】
図1(C)では、隣接する導電部の対のうち、第二導電部2と第一導電部1k+1とが電気的に接続されることで、隣接する導電部の対が直列に接続されている。以下、直列に接続された導電部の対を、「直列接続された導電部の対」という。
【0038】
図1(C)では、直列接続された導電部の対の端部にあたる、第一導電部1と第二導電部2が、それぞれ機能部3と電気的に接続されている。「電気的に接続」とは、例えば、導電性を有する導線等により通電可能に接続されることをいう。
【0039】
直列接続された導電部の対の数が多いほど、機能部3に印加される電圧も高くなる。
【0040】
また、図1(C)に示すように、それぞれの導電部の対の、第一導電部1の一部又は全部が、媒体4と接触している。さらに、それぞれの導電部の対の、第二導電部2の一部又は全部が、媒体4と接触している。そして、それぞれの導電部の対の、第一導電部1及び第二導電部2は、互いに非接触である。「非接触」とは、例えば、第一導電部1と第二導電部2とが直接接触していない状態をいう。
【0041】
図1(C)では、それぞれの導電部の対の、第一導電部1及び第二導電部2は、同じ媒体4と接触している。そして、それぞれの導電部の対の第一導電部1及び第二導電部2が接触している媒体4は、分離している。つまり、第一導電部1と第二導電部2が媒体4と接触しており、第一導電部1と第二導電部2が媒体4と接触しており、第一導電部1k+1と第二導電部2k+1が媒体4k+1と接触しており、第一導電部1と第二導電部2が媒体4と接触している。そして、媒体4、媒体4、媒体4k+1、媒体4は、それぞれ異なる容器に収容されており、非接触の状態である。媒体4を収納する容器等の素材は特に限定されない。例えば、木製の容器、アクリル容器等を用いることができる。
【0042】
図示しないが、それぞれの導電部の対の第一導電部1及び第二導電部2が接触している媒体4は分離されず、物理的に連続し、一体として形成されていてもよい。
【0043】
また、図示しないが、図1(B)のように、それぞれの導電部の対の、第一導電部1が接触する媒体4aと第二導電部2が接触する媒体4bが互いに異なる組成を有する物質又は異なる素材であって、それぞれの導電部の対の、第一導電部1が接触する媒体4aと第二導電部2が接触する媒体4bが接触していてもよい。この場合、それぞれの導電部の対が接触している媒体4の組成の組み合わせは、他の導電部の対が接触している媒体4の組成の組み合わせと同じでも、異なっていてもよい。
【0044】
あるいは、図示しないが、媒体4は、3以上の互いに異なる組成を有する物質又は異なる素材から構成されてもよい。その場合、第一導電部1が接触する媒体4aと、第二導電部2が接触する媒体4bとは、媒体4aと媒体4b以外の、他の組成を有する物質又は他の素材からなる媒体を介して物理的に接続していることが好ましい。
【0045】
あるいは、媒体4は、図示しないが、第一導電部1と接触している媒体4と第二導電部2と接触している媒体4とが同一の組成を有する物質又は同一の素材であって、第一導電部1と接触している媒体4と、第二導電部2と接触している媒体4とが、他の組成を有する物質又は他の素材からなる媒体を介して物理的に接続していてもよい。
【0046】
つまり、システムにおいて、媒体4は、媒体を介して第一導電部1と第二導電部2との間で陽イオン、陰イオン、及び/又は電子の移動が可能であるように構成されていればよい。また、媒体4は、容器に収容されていていてもよい。
【0047】
また、本発明の実施の形態にかかるシステムは、図1(D)に示すように、複数の第一導電部1と第二導電部2の対を、並列に接続してもよい。図1(D)において、システムは、m個の第一導電部1(1、・・・、1、1j+1、・・・、1)と、m個の第二導電部2(2、・・・、2、2j+1、・・・、2)と、機能部3と、m個の媒体4(4、・・・、4、4j+1、・・・、4)とから構成されている。ここで、mは2以上の任意の整数を表し、jは1以上、m未満の整数を表す。
【0048】
図1(D)では、隣接する導電部の対のうち、第一導電部1と第一導電部1j+1とが電気的に接続され、第二導電部2と第二導電部2j+1とが電気的に接続されることで、隣接する導電部の対が並列に接続されている。以下、並列に接続された導電部の対を、「並列接続された導電部の対」という。
【0049】
図1(D)では、並列接続された導電部の対の端部にあたる、第一導電部1と第二導電部2が、それぞれ機能部3と電気的に接続されている。「電気的に接続」とは、例えば、導電性を有する導線等により通電可能に接続されることをいう。
【0050】
並列接続された導電部の対の数が多いほど、機能部3に供給される電流も大きくなる。つまり、導電部が媒体4に接触する面積が大きいほど、機能部3に供給される電流も大きくなる。
【0051】
なお、第一導電部1と第二導電部2は、対にならない状態で並列に接続されていてもよい。つまり、第一導電部1と第二導電部2の数がそれぞれ異なった状態で、第一導電部1同士、及び第二導電部2同士が接続されていてもよい。例えば、3個の第一導電部1と2個の第二導電部2が並列に接続されていてもよい。
【0052】
第一導電部1と第二導電部2の数がそれぞれ異なっている場合にも、並列接続された導電部の数が多いほど、機能部3に供給される電流も大きくなる。つまり、導電部が媒体4に接触する面積が大きいほど、機能部3に供給される電流も大きくなる。
【0053】
また、図1(D)に示すように、それぞれの導電部の対の、第一導電部1の一部又は全部が、媒体4と接触している。さらに、それぞれの導電部の対の、第二導電部2の一部又は全部が、媒体4と接触している。そして、それぞれの導電部の対の、第一導電部1及び第二導電部2は、互いに非接触である。「非接触」とは、例えば、第一導電部1と第二導電部2とが直接接触していない状態をいう。
【0054】
図1(D)では、それぞれの導電部の対の、第一導電部1及び第二導電部2は、同じ媒体4と接触している。そして、それぞれの導電部の対の第一導電部1及び第二導電部2が接触している媒体4は、分離している。つまり、第一導電部1と第二導電部2が媒体4と接触しており、第一導電部1と第二導電部2が媒体4と接触しており、第一導電部1j+1と第二導電部2j+1が媒体4j+1と接触しており、第一導電部1と第二導電部2が媒体4と接触している。そして、媒体4、媒体4、媒体4j+1、媒体4は、それぞれ異なる容器に収容されており、非接触の状態である。媒体4を収納する容器等の素材は特に限定されない。例えば、木製の容器、アクリル容器等を用いることができる。
【0055】
図示しないが、それぞれの導電部の対の第一導電部1及び第二導電部2が接触している媒体4は分離されず、物理的に連続し、一体として形成されていてもよい。
【0056】
また、図示しないが、図1(B)のように、それぞれの導電部の対の、第一導電部1が接触する媒体4aと第二導電部2が接触する媒体4bが互いに異なる組成を有する物質又は異なる素材であって、それぞれの導電部の対の、第一導電部1が接触する媒体4aと第二導電部2が接触する媒体4bが接触していてもよい。この場合、それぞれの導電部の対が接触している媒体4の組成の組み合わせは、他の導電部の対が接触している媒体4の組成の組み合わせと同じでも、異なっていてもよい。
【0057】
あるいは、図示しないが、媒体4は、3以上の互いに異なる組成を有する物質又は異なる素材から構成されてもよい。その場合、第一導電部1が接触する媒体4aと、第二導電部2が接触する媒体4bとは、媒体4aと媒体4b以外の、他の組成を有する物質又は他の素材からなる媒体を介して物理的に接続していることが好ましい。
【0058】
あるいは、媒体4は、図示しないが、第一導電部1と接触している媒体4と第二導電部2と接触している媒体4とが同一の組成を有する物質であって、第一導電部1と接触している媒体4と、第二導電部2と接触している媒体4とが、他の組成を有する物質又は他の素材からなる媒体を介して物理的に接続していてもよい。
【0059】
つまり、システムにおいて、媒体4は、媒体を介して第一導電部1と第二導電部2との間で陽イオン、陰イオン、及び/又は電子の移動が可能であるように構成されていればよい。また、媒体4は、容器に収容されていていてもよい。
【0060】
また、本発明の実施の形態にかかるシステムは、上記のように複数の導電部を並列に接続したものを、複数個、直列に接続してもよい。以下、並列接続と直列接続が混在するシステムの中で、複数の導電部を並列に接続したものを並列ユニットという。並列ユニットを直列に接続する態様については、図1(C)及び(D)の説明の記載を必要な範囲で採用できる。直列接続された並列ユニットの数が多いほど、機能部3に印加される電圧も高くなる。
【0061】
並列ユニットの中で並列に接続する導電部の数は、特に限定されず、適宜設計可能である。例えば、並列ユニットの中で並列に接続する導電部の数は、6個でも、8個でも、20個でもよい。
【0062】
また、直列に接続する並列ユニットの数は、特に限定されず、適宜設計可能である。例えば、直列に接続する並列ユニットの数は、3個でも、10個でも、50個でもよい。
【0063】
本発明の実施の形態にかかるシステムにおいて、各導電部の形状が円柱状又は角柱状である場合、対となる各導電部(第一導電部1及び第二導電部2)は、導電部の長さ方向が略平行となるように配置されることが好ましい。各導電部の形状がシート状である場合、対となる各導電部(第一導電部1及び第二導電部2)は、各導電部の平面が略平行となるように配置されることが好ましい。
【0064】
第一導電部1が媒体4に接触する位置と、第二導電部2が媒体4に接触する位置との間の距離、つまり第一導電部1と第二導電部2との間の距離は、第一導電部1、第二導電部2、及び/又は媒体4の種類や、発電したい電力量に応じて、適宜設計可能である。
【0065】
第一導電部1及び第二導電部2の間の距離は、例えば、20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることがさらに好ましい。また、第一導電部1及び第二導電部2の間の距離は、例えば、0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましく、1mm以上であることがさらに好ましい。
【0066】
第一導電部1及び第二導電部2の間に媒体4を配置することで、第一導電部1及び第二導電部2の間の距離を上記範囲内となるようにしてもよい。また、第一導電部1及び第二導電部2の間に媒体4を配置することで、第一導電部1と第二導電部2とが接触することを防止することができる。
【0067】
以下、本発明の実施の形態にかかるシステムが備える、第一導電部1、第二導電部2、及び機能部3について説明する。
【0068】
第一導電部1及び第二導電部2は、いずれも導電性を有することが好ましい。ここで、第一導電部1及び第二導電部2の素材として、例えば、金属、導電性ポリマー、カーボン等が挙げられる。第一導電部1及び第二導電部2の形状は、特に限定されない。第一導電部1及び第二導電部2の形状は、直方体状、円柱状(棒状)、角錐状、円錐状、板状、シート状、フィルム状、又は紐状であってもよく、形状を問わない。
【0069】
第一導電部1及び第二導電部2に用いられる金属としては、例えば、銀、銅、金、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、白金、スズ、チタン、ステンレス、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、又は、その他上述の金属夫々の酸化物などから適宜選択して用いることができる。また、所定の金属に、所定の金属とは異なる他の金属や、他の導電性を有する材料が被膜されていてもよい。
【0070】
第一導電部1と第二導電部2の素材は、異なる種類のものを用いてもよく、同じ種類のものを用いてもよい。
【0071】
交流インピーダンス法を用いて、第一導電部1及び第二導電部2の少なくとも一方に対して分極抵抗を測定した場合に、測定値が100Ω以上であることが好ましい。
【0072】
ここで、例えば、電流の起点となる導電部を第一導電部1として定義し、終点となる導電部を第二導電部2として定義することができる。いずれの導電部が第一導電部1として機能するかは、導電部の材質、又は、導電部を取り巻く環境(例えば、温度、湿度、気圧、pHなど)により決定される。第一導電部1又は第二導電部2と媒体4の界面で、化学反応が行われ、導電部に自由電子が発生する。
【0073】
例えば、第一導電部1と第二導電部2において異なる金属を用いた場合には、標準電極電位が大きな値の金属を用いた方が第一導電部1に、標準電極電位が小さな値の金属を用いた方が第二導電部2になる。この場合、第二導電部2から機能部3へ向かって電子が移動し、機能部3から第一導電部1へ向かって電子が移動する。すなわち、第一導電部1側から機能部3を介して第二導電部2側へ電流が流れる。
【0074】
例えば、第二導電部2では、導電部を構成する金属が媒体4中に陽イオンとして溶出して、自由電子が発生する。また、例えば、第二導電部2では、媒体4に含まれる陰イオンもしくは水の分子が酸化されて、自由電子が発生する。また、例えば、第一導電部1では、媒体4の中にある陽イオン又は水分子が自由電子と反応し、電気的に中和又は還元される。また、例えば、第一導電部1では、空気中に含まれる酸素分子が自由電子と反応し、電気的に還元される。
【0075】
標準電極電位の高低は、物質同士の標準電極電位の相対的な値(相対値)を比較して定められるものであって、標準電極電位の絶対値を用いて比較するものではない。例えば、標準電極電位が-5Vの物質Aと+2Vの物質Bとを比較した場合に、物質Aの標準電極電位は低く、物質Bの標準電極電位は高い。
【0076】
一方、導電部に同一の金属を用いた場合でも、例えば、温度、湿度、気圧、pH、媒体4の種類、媒体4が導電部と接触している面積など、導電部の周辺環境の条件が、2つの導電部の相互で異なれば、いずれかの導電部が第一導電部1として、他方の導電部が第二導電部2として機能し、電流が流れる。例えば、一方の導電部が接触している媒体4と、他方の導電部が接触している媒体4とが同一の場合であっても、媒体4と導電部が接触している面積が相互に異なれば、一方の導電部が第一導電部1として、他方の導電部が第二導電部2として機能する。よって、2つの導電部の周囲の温度、湿度、気圧、pH、媒体4の種類、媒体4が導電部と接触している面積などの条件が変われば、第一導電部1として機能していたものが第二導電部2として機能し、第二導電部2として機能していたものが第一導電部1として機能することもあり得る。
【0077】
第一導電部1と第二導電部2が異なる素材を用いる場合に、標準電極電位の低い方の導電部に用いられる素材としては、例えば、亜鉛、鉛、カドミウム、マグネシウム、炭素系材料、導電性高分子(ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、PEDOT等)、金属(リチウム、スズ、アルミニウム、ジルコニウム、チタン等)及びこれらの合金、金属酸化物(酸化チタン、リチウム―チタン酸化物、ケイ素酸化物等)等があげられる。標準電極電位の低い方の導電部に用いられる素材の標準電極電位は、-200mV以下であることが好ましく、-500mV以下であることがより好ましく、-700mV以下であることがさらに好ましい。また、標準電極電位の低い方の導電部に用いられる素材の標準電極電位は、-3.5V以上であることが好ましく、-2.5V以上であることがより好ましく、-1.5V以上であることがさらに好ましい。
【0078】
第一導電部1と第二導電部2が異なる素材を用いる場合に、標準電極電位の高い方の導電部に用いられる素材としては、例えば、酸化マンガン、酸化銀、酸素、オゾン、酸化鉛、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル、酸化銅、酸化クロム、酸化鉄、アルカリ金属又はアルカリ土類金属とそれ以外の金属(コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、マグネシウム、アルミニウムなど)、炭素系材料などがあげられる。標準電極電位の高い方の導電部に用いられる素材の標準電極電位は、-300mV以上であることが好ましく、0mV以上であることがより好ましく、+500mV以上であることがさらに好ましい。また、標準電極電位の高い方の導電部に用いられる素材の標準電極電位は、3.5V以下であることが好ましく、2.5V以下であることが好ましく、1.5V以下であることがさらに好ましい。
【0079】
第一導電部1と第二導電部2が同一の素材を用いる場合、上述した、標準電極電位の低い方の導電部に用いられる素材、及び、標準電極電位の高い方の導電部に用いられる素材として例示したものを、導電部に用いることができる。
【0080】
導電部間の標準電極電位の差は、200mV以上であることが好ましく、500mV以上であることがより好ましく、700mV以上であることがさらに好ましい。
【0081】
第一導電部1及び第二導電部2の間で生じる起電力は、1.8V以下であることが好ましく、0.9V以下であることがより好ましく、0.35V以下であることがさらに好ましく、0.25V以下であることがとりわけ好ましい。また、第一導電部1及び第二導電部2の間で生じる起電力は、5mV以上であることが好ましい。
【0082】
機能部3は、例えば、通電することで所定の機能を実行するものをいう。機能部3は、電力を消費して所定の機能を発揮する電力消費部、導電部にて発生した電気を蓄電する蓄電部、昇圧回路や降圧回路のように出力する電圧を変換する出力電圧変換部等、回路を制御するマイコン等の制御部、他の装置と無線により通信が可能な通信部等を含むことができる。電力消費部としては、例えば、白熱電球や発光ダイオードなどの光源、熱を発する発熱体、音を発する発音体、又は、信号を発する発信体等のいずれかを採用することができる。蓄電部は、昇圧回路又は降圧回路に含まれていてもよい。マイコン等の制御部は、回路を制御して、蓄電部に蓄電した電気を所定の条件で放出させることができる。放出された電気は、電力消費部にて消費される。また、マイコン等の制御部においても、わずかではあるが電力が消費されるため、制御部を起動させるのに必要な電力を確保しつつ、蓄電した電気を放出するように制御することができる。
【0083】
機能部3は、電力消費部、蓄電部、出力電圧変換部及び制御部のいずれか1つを備えていればよく、電力消費部、蓄電部、出力電圧変換部及び制御部のいずれか2つ以上を組み合わせて構成したものを機能部3としてもよい。また、機能部3は、電力消費部、蓄電部、出力電圧変換部及び制御部のいずれか2つ以上を一体に構成したものであってもよく、電力消費部、蓄電部、出力電圧変換部及び制御部のいずれかを、電気的に接続しつつ、それぞれ別々に構成したものであってもよい。
【0084】
機能部3における入力インピーダンスは、0.001kΩ以上であってもよく、0.01kΩ以上であってもよく、0.1kΩ以上であってもよい。
【0085】
機能部3における入力インピーダンスの値に特に制限はないが、入力インピーダンスが1kΩ以上である場合には、機能部3における入力インピーダンスは、非線形な電流-電圧特性(I-V特性)を有していてもよい。非線形な電流-電圧特性とは、抵抗に電圧をかけた場合に、電圧の値と電流の値が比例しないような特性をいう。例えば、電圧が大きくなるにしたがって、インピーダンスが大きくなり、電流の値が大きくなる度合いが小さくなるような場合をいう。
【0086】
一般的に、電気回路において、電池にて発生した電力は、電池の内部抵抗と、外部抵抗とにおいて消費される。電池にて発生した電力は、内部抵抗により電圧降下するため、外部抵抗に印加される電圧は、電池の起電力に比べて低下する。内部抵抗が小さいほど、外部抵抗に印加される電圧は増大する。
【0087】
本発明のシステムにおいては、第一導電部1及び第二導電部2の間で生じる起電力が電池の起電力、媒体4の第一導電部1と第二導電部2間の抵抗値が内部抵抗に相当し、機能部3における入力インピーダンスが外部抵抗に相当すると考えることができる。媒体4の第一導電部1と第二導電部2間の抵抗値が、機能部3の入力インピーダンスよりも十分に大きい場合、線形な電流-電圧特性を有する機能部3を利用すると、出力される出力電圧は低くなる傾向にある。しかし、非線形な電流-電圧特性を有する機能部3を利用する場合、機能部3に印加される電圧値が高くなるにしたがって電流値が大きくなる度合いが小さくなり、機能部3の入力インピーダンスが高くなる。そのため、非線形な電流-電圧特性を有する機能部3を利用する場合、線形な電流電圧特性を有する機能部3を利用する場合と比べ、機能部3に印加される電圧を高くすることができ、機能部3の消費電力も大きくなる。
【0088】
本発明のシステムは、媒体4の種類や、第一導電部1と第二導電部2間の距離によって、媒体4の第一導電部1と第二導電部2間の抵抗値にはばらつきが生じる。媒体4の第一導電部1と第二導電部2間の抵抗値が経時的に変化し、機能部3の入力インピーダンスが、非線形な電流-電圧特性を有することで、電力の伝達効率を改善することができる。そのため、本発明のシステムでは、起電力が小さくとも、機能することが可能である。
【0089】
一方、機能部3における入力インピーダンスが1kΩ未満である場合には、機能部3における入力インピーダンスは、線形な電流-電圧特性(I-V特性)を有していてもよい。線形な電流-電圧特性とは、例えば、機能部3に電流を流した際の電圧変化において、電流値が大きくなるに従って電圧値が高くなり、電圧が電流に比例するような場合をいう。
【0090】
媒体4の第一導電部1と第二導電部2間の抵抗値が1kΩ以上である場合には、機能部3における入力インピーダンスを1kΩ以上としてもよい。
【0091】
媒体4の第一導電部1と第二導電部2間の抵抗値と機能部3における入力インピーダンスの比(媒体4の第一導電部1と第二導電部2間の抵抗値/機能部3における入力インピーダンス)は、1/100以上であることが好ましく、1/10以上であることがより好ましく、1/1以上であることがさらに好ましい。
【0092】
媒体4の第一導電部1と第二導電部2間の抵抗値は、電力を出力する側の出力インピーダンスとみなすことができ、機能部3における入力インピーダンスは、電力を受け入れる側の負荷インピーダンスとみなすことができる。出力インピーダンスと負荷インピーダンスを同程度にする、すなわち、インピーダンス整合を行うことで、第一導電部1と第二導電部2との間で生じた微小な電力を、より効率的に機能部へ伝達することができる。
【0093】
機能部3は、出力インピーダンスを変換する機能を有することが好ましい。これにより、機能部3の入力信号に与える影響を制御することができる。また、機能部3は、蓄電部を有し、第一導電部1及び/又は第二導電部2から供給される電荷を蓄積することとしてもよい。制御部は、電荷を蓄積するのに要した時間よりも短い時間で、蓄積した電荷を放出するように制御することができる。
【0094】
機能部3の動作電圧の下限値は、0.9V以下で動作することが好ましい。0.35V以下で動作することがより好ましく、20mV以下で動作することがさらに好ましい。
【0095】
図2は、本発明の実施の形態にかかる、電力変換部の構成を示すブロック図である。図2(A)は、本発明の実施の形態にかかる昇圧回路の回路図である。昇圧回路又は降圧回路は、機能部3の一例であり、蓄電部を備えている。
【0096】
図示するように、インダクタL、ダイオードD、トランジスタTr、及びコンデンサCが電気的に接続されている。例えば、入力端子A1は、第一導電部1と接続され、入力端子A2は、第二導電部2と接続されている。出力端子B1及び出力端子B2は、電力消費部や制御部等と接続されている。なお、制御部は、昇圧回路と、第一導電部1及び第二導電部2との間で、昇圧回路と並列になるように接続されていてもよい。トランジスタTrがONである場合に、入力電圧VINが印加されると、インダクタLにエネルギーが蓄電される。入力電圧VINは、接続点Pと接続点Pの電位差である。トランジスタTrがOFFである場合に、入力電圧VINに由来する電気エネルギーにインダクタLに蓄電されたエネルギーが加算され、ダイオードDを介して出力される。その結果、入力電圧VINよりも接続点Pと接続点Pの電位差である出力電圧VOUTの方が高い電圧となる。昇圧回路は、入力電圧VINが所定の電圧よりも低い電圧であることを前提にするもので、所定の電圧よりも高い電圧では昇圧制御が実行されないようなものであってもよい。昇圧回路の入力電圧VINは、5mV以上であることが好ましい。なお、トランジスタTrのON/OFFは、制御部により制御される。
【0097】
図2(B)は、本発明の実施の形態にかかる、降圧回路の回路図である。図示するように、トランジスタTr、インダクタL、ダイオードD、及びコンデンサCが電気的に接続される。例えば、入力端子A1は、第一導電部1と接続され、入力端子A2は、第二導電部2と接続されている。出力端子B1及び出力端子B2は、電力消費部や制御部等と接続されている。なお、制御部は、降圧回路と、第一導電部1及び第二導電部2との間で、降圧回路と並列になるように接続されていてもよい。
【0098】
トランジスタTrがONの場合には、インダクタLに電気エネルギーが蓄電される。入力電圧VINは、接続点P11と接続点P12の電位差であり、出力電圧VOUTは、接続点P13と接続点P14の電位差である。この場合、入力電圧VINは、出力電圧VOUTとほぼ等しくなる。トランジスタTrがOFFとなると、インダクタLの左端にある接続点P15の電位が接続点P14の電位よりも低くなるため、出力電圧VOUTの方が低い電圧となる。降圧回路は、入力電圧VINが所定の電圧よりも高い電圧であることを前提にするもので、所定の電圧よりも低い電圧では降圧制御が実行されないようなものであってもよい。なお、トランジスタTrのON/OFFは、制御部により制御される。
【0099】
本発明の実施の形態にかかるシステムは、第一導電部1及び第二導電部2と、媒体4と、を備え、第一導電部1が媒体4と接触し、第二導電部2が媒体4と接触し、第一導電部1及び第二導電部2は互いに非接触であり、媒体4がコロイド状物質を含有する装置を、機能部3と接続することにより構築することができる。
【0100】
また、第一導電部1及び第二導電部2と、媒体4と、を備え、第一導電部1が媒体4と接触し、第二導電部2が媒体4と接触し、第一導電部1及び第二導電部2は互いに非接触であり、媒体4がコロイド状物質を含有する装置を、機能部3と接続することにより、第一導電部1及び第二導電部2から発電することが可能となる。さらに、機能部3は、第一導電部1及び第二導電部2から発電した電力を使用して機能することができる。つまり、第一導電部1及び第二導電部2の電位の差を利用して得られた電力は、機能部3に供給される。そして、機能部3は、該電力を利用して、所定の機能を実行することができる。
【0101】
このように、システムが、第一導電部及び第二導電部と、媒体と、機能部とを備え、第一導電部及び機能部は接続されており、第二導電部及び機能部は接続されており、第一導電部が媒体と接触し、第二導電部が媒体と接触し、第一導電部及び第二導電部は互いに非接触であり、媒体がコロイド状物質を含有することで、コロイド状物質を含有する媒体により発電するシステムを提供することができる。
【実施例0102】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0103】
(実施例1)
試験は、常温、常圧で行った。図1(A)に示すような、第一導電部1、第二導電部2、機能部3、及び媒体4を備えるシステムを構成するため、第一導電部1として、カーボン製のシート状部材(約1mm厚、10cm×10cm、日本特殊塗料株式会社製、カーボンクロス)を用い、第二導電部2として、マグネシウム製のシート状部材(0.5mm厚、10cm×10cm)を用いた。
【0104】
機能部3は、電力消費部、出力電圧変換部及び制御部を備えるものを用いた。また、その入力インピーダンスは1kΩ以上であり、非線形な電流-電圧特性を有するものを用いた。電力消費部には、3V以上の電圧がかかると点灯するLEDを用いた。出力電圧変換部には、昇圧回路を用いた。制御部には、電荷を蓄積するのに要した時間よりも短い時間で、蓄積した電荷を放出するように制御するものを用いた。
【0105】
媒体4としては、水道水をゼラチン(マルハニチロ株式会社製、ゼライス)でゲル状にした物質(以下、ゼリーともいう)を用いた。つまり、ゼリーの分散媒は、水道水であった。ゼリーには、水道水100質量部に対して、ゼラチン2質量部が含まれるようにした。
【0106】
まず、水道水を80℃まで加熱し、ゼラチンを加えて攪拌することでゼラチン溶液を作成した。アクリル製の容器(内寸:縦10cm×横10cm×深さ10cm)の中に、ゼラチン溶液を、高さ5cmまで注いだ。該アクリル製の容器の中に、第一導電部1及び第二導電部2を、シート状の平面部分がアクリル製の容器の深さ方向に平行となるように配置した。第一導電部1及び第二導電部2は、シート状の平面部分が対向するように略平行に配置され、第一導電部1と第二導電部2との間の距離は約10mmであった。第一導電部1及び第二導電部2と、ゼラチン溶液とが内部に配された状態で、アクリル製の容器を冷蔵庫内で冷却することで、ゼラチン溶液を固めてゼリー状とした。
【0107】
第一導電部1を出力電圧変換部の昇圧回路の入力端子A1に接続し、また、昇圧回路の出力端子B1をLED電球に接続した。さらに、第二導電部2を昇圧回路の入力端子A2に接続し、また、昇圧回路の出力端子B2を、LED電球の出力端子B1と接続されている端子とは反対側の端子で接続することで、システムを構成した。
【0108】
構成したシステムにおいて、LED電球は2秒おきに点滅を繰り返した。すなわち、第一導電部1及び/又は第二導電部2から、発電していることを確認できた。
【0109】
構成したシステムにおいて、機能部3の代わりに34401Aマルチメーター(Agilent Technologies社製)を接続し、第一導電部1と第二導電部2の間の電圧を測定したところ、370mVであった。
【0110】
(実施例2)
試験は、常温、常圧で行った。媒体4として、水道水を寒天(株式会社カサイ製、角寒天)でゲル状にした物質(以下、寒天ゲルともいう)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、システムを構成した。つまり、寒天ゲルの分散媒は、水道水であった。寒天ゲルには、水道水100質量部に対して、寒天1.5質量部が含まれるようにした。また、水道水の加熱温度は100℃であった。
【0111】
構成したシステムにおいて、LED電球は10~20秒おきに点滅を繰り返した。すなわち、第一導電部1及び/又は第二導電部2から、発電していることを確認できた。
【0112】
構成したシステムにおいて、機能部3の代わりに34401Aマルチメーター(Agilent Technologies社製)を接続し、第一導電部1と第二導電部2の間の電圧を測定したところ、300mVであった。
【0113】
(実施例3)
試験は、常温、常圧で行った。図1(A)に示すような、第一導電部1、第二導電部2、機能部3、及び媒体4を備えるシステムを構成するため、第一導電部1として、カーボン製のシート状部材(0.05~0.5mm厚、12cm×12cm)を用い、第二導電部2として、マグネシウム製のシート状部材(0.5mm厚、12cm×12cm)を用いた。
【0114】
機能部3は、電力消費部、出力電圧変換部及び制御部を備えるものを用いた。また、その入力インピーダンスは1kΩ以上であり、非線形な電流-電圧特性を有するものを用いた。電力消費部には、3V以上の電圧がかかると点灯するLEDを用いた。出力電圧変換部には、昇圧回路を用いた。制御部には、電荷を蓄積するのに要した時間よりも短い時間で、蓄積した電荷を放出するように制御するものを用いた。
【0115】
媒体4としては、土(茨城県にて採取した黒土、160cm、含水率約30~50%)と、高吸水性ポリマー(ケニス株式会社製、超吸水性樹脂)とを混合し、ゲル状にした物質(以下、土ポリマーともいう)を用いた。つまり、土ポリマーの分散媒は、土に含まれる水分であった。土ポリマーには、土100質量部に対して、高吸水性ポリマー100質量部が含まれるようにした。
【0116】
第一導電部1を、シート状の平面部分が作業台の上面に平行となるように、作業台の上に載置した。第二導電部2の上面全体に、土ポリマーを、厚さ約1mmとなるよう塗り広げた。土ポリマーの上に、第二導電部2を、第一導電部1とシート状の平面部分が対向するように略平行に配置した。第一導電部1と第二導電部2との間の距離は約1mmであった。
【0117】
第一導電部1を出力電圧変換部の昇圧回路の入力端子A1に接続し、また、昇圧回路の出力端子B1をLED電球に接続した。さらに、第二導電部2を昇圧回路の入力端子A2に接続し、また、昇圧回路の出力端子B2を、LED電球の出力端子B1と接続されている端子とは反対側の端子で接続することで、システムを構成した。
【0118】
構成したシステムにおいて、LED電球は5~6秒おきに点滅を繰り返した。すなわち、第一導電部1及び/又は第二導電部2から、発電していることを確認できた。
【0119】
構成したシステムにおいて、機能部3の代わりに34401Aマルチメーター(Agilent Technologies社製)を接続し、第一導電部1と第二導電部2の間の電圧を測定したところ、1.2Vであった。
【0120】
(実施例4)
試験は、常温、常圧で行った。図1(A)に示すような、第一導電部1、第二導電部2、機能部3、及び媒体4を備えるシステムを構成するため、第一導電部1として、カーボンナノチューブのシート状部材(0.1mm厚、17.9cm×17.9cm)を用い、第二導電部2として、マグネシウム製のシート状部材(0.5mm厚、17.9cm×17.9cm)を用いた。
【0121】
機能部3は、電力消費部、出力電圧変換部及び制御部を備えるものを用いた。また、その入力インピーダンスは1kΩ以上であり、非線形な電流-電圧特性を有するものを用いた。電力消費部には、3V以上の電圧がかかると点灯するLEDを用いた。出力電圧変換部には、昇圧回路を用いた。制御部には、電荷を蓄積するのに要した時間よりも短い時間で、蓄積した電荷を放出するように制御するものを用いた。
【0122】
媒体4としては、水道水と高吸水性ポリマー(ケニス株式会社製、超吸水性樹脂)とを混合し、ゲル状にした物質(以下、水ポリマーともいう)を用いた。つまり、水ポリマーの分散媒は、水道水であった。水ポリマーには、水道水100質量部に対して、高吸水性ポリマー0.5質量部が含まれるようにした。
【0123】
アクリル製の容器(内寸:厚さ1.2cm×横21.4cm×深さ21.4cm)の中に、第一導電部1を、容器の内部の平面部分(面積が広い方の側面)に接触するように配置した。また、第二導電部2を、第一導電部1と対向する容器の内部の平面部分(面積が広い方の側面)に接触するように配置した。第一導電部1と第二導電部2との間の距離は12mmであり、第一導電部1及び第二導電部2は、シート状の平面部分が対向するように略平行に配置されていた。次に、第一導電部1と第二導電部2の間に水ポリマーが配置されるように、容器の内部に水ポリマーを高さ14.5cmまで入れた。以下、このように作成した実施例4の装置を、水ポリマー装置ともいう。
【0124】
第一導電部1を出力電圧変換部の昇圧回路の入力端子A1に接続し、また、昇圧回路の出力端子B1をLED電球に接続した。さらに、第二導電部2を昇圧回路の入力端子A2に接続し、また、昇圧回路の出力端子B2を、LED電球の出力端子B1と接続されている端子とは反対側の端子で接続することで、システムを構成した。
【0125】
構成したシステムにおいて、LED電球は少なくとも1時間以上、点灯していた。すなわち、第一導電部1及び/又は第二導電部2から、発電していることを確認できた。
【0126】
次に、構築したシステムにおいて、機能部3を外し、水ポリマー装置から所定の電流を引いたとき(所定の電流を負荷したとき)の電圧の変化を調べるため、第一導電部1と第二導電部2に電子負荷装置(Bio-Logic Science Instruments社製、EC-LAB)を接続した。
【0127】
図3は、本発明の実施の形態にかかる実施例及び比較例の装置の電圧の変化を示す図である。図3において、横軸は時間(秒)、左側の縦軸は電圧(V)、右側の縦軸は電流(mA)を表す。電圧の測定は、第一導電部1と第二導電部2に接続した34401Aマルチメーター(Agilent Technologies社製)により行った。また、測定された電圧を、データロガー装置を用いて記録した。
【0128】
図3(A)は、実施例4の水ポリマー装置から所定の電流を引いたときの電圧の変化を示している。
【0129】
まず、実施例4の水ポリマー装置から電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、実施例4の水ポリマー装置から0.01mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。次に、実施例4の水ポリマー装置から電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、実施例4の水ポリマー装置から0.05mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。また、実施例4の水ポリマー装置から電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、実施例4の水ポリマー装置から0.1mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。さらに、実施例4の水ポリマー装置から電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、実施例4の水ポリマー装置から0.2mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。また、実施例4の水ポリマー装置から電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した後、実施例4の水ポリマー装置から0.5mAの電流を引いた状態で10分間電圧を測定した。さらに、実施例4の水ポリマー装置から電流を引くのを止め、電流を引かない状態で10分間電圧を測定した。
【0130】
測定された電圧は、電流を引かれている間は低下し、電流を引かれなくなると、約1.59V前後まで戻るという変化を示した。図3(A)において両矢印で示した、実施例4の水ポリマー装置から0.5mAの電流を引いたときの電圧の低下Vaは、約0.095Vであった。つまり、実施例4の水ポリマー装置から0.5mAの電流を引いたときの、実施例4の水ポリマー装置の内部抵抗の値は、約193Ωであった。
【0131】
(比較例1)
試験は、常温、常圧で行った。媒体4として水道水を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、装置(以下、水装置ともいう)、及び、システムを構成した。水道水は、容器の内部において、高さ15cmとなるように入れられた。
【0132】
構成したシステムにおいて、LED電球は数秒間点灯した後、1秒間に約10回の間隔で点滅を繰り返した。すなわち、第一導電部1及び/又は第二導電部2から、発電していることを確認できた。
【0133】
次に、構築したシステムにおいて、機能部3を外し、実施例4と同様に、水装置から所定の電流を引いたとき(所定の電流を負荷したとき)の電圧の変化を調べた。図3(B)は、比較例1の水装置から所定の電流を引いたときの電圧の変化を示している。
【0134】
測定された電圧は、電流を引かれている間は低下し、電流を引かれなくなると、約1.56V前後まで戻るという変化を示した。図3(B)において両矢印で示した、比較例1の水装置から0.5mAの電流を引いたときの電圧の低下Vbは、約0.036Vであった。つまり、比較例1の水装置から0.5mAの電流を引いたときの、比較例1の水装置の内部抵抗の値は、約72.3Ωであった。
【0135】
(比較例2)
試験は、常温、常圧で行った。媒体4として土(茨城県にて産出された黒土)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、装置(以下、土装置ともいう)、及び、システムを構成した。土は、容器の内部において、高さ13cmとなるように入れられた。
【0136】
構成したシステムにおいて、LED電球は数秒間点灯した後、1秒間に約10回の間隔で点滅を繰り返した。すなわち、第一導電部1及び/又は第二導電部2から、発電していることを確認できた。
【0137】
次に、構築したシステムにおいて、機能部3を外し、実施例4と同様に、土装置から所定の電流を引いたとき(所定の電流を負荷したとき)の電圧の変化を調べた。図3(C)は、比較例2の土装置から所定の電流を引いたときの電圧の変化を示している。
【0138】
測定された電圧は、電流を引かれている間は低下し、電流を引かれなくなると、約1.63V前後まで戻るという変化を示した。図3(C)において両矢印で示した、比較例2の土装置から0.5mAの電流を引いたときの電圧の低下Vcは、約0.19Vであった。つまり、比較例2の土装置から0.5mAの電流を引いたときの、比較例2の土装置の内部抵抗の値は、約382Ωであった。
【0139】
実施例4、及び、比較例1の結果から、水を溶媒としたゲル状物質を媒体4とした場合は、水を媒体4とした場合よりも、装置の内部抵抗が大きかった。また、実施例4、比較例1、及び、比較例2の結果から、装置の内部抵抗は、媒体4が水である場合、媒体4が水を溶媒としたゲル状物質である場合、媒体4が土である場合の順に大きかった。
【符号の説明】
【0140】
1 第一導電部、2 第二導電部、3 機能部、4 媒体
図1
図2
図3