(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013965
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 7/02 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
E06B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116455
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】伊坂 友和
(72)【発明者】
【氏名】中馬 紗貴
【テーマコード(参考)】
2E036
【Fターム(参考)】
2E036JA04
2E036JC02
2E036KA06
2E036KB01
2E036KB02
2E036LA01
(57)【要約】
【課題】突合せ框を有する内障子において等圧構造を実現し、とくに高風圧時においても屋内への雨水の浸入を防止できる建具を提供する。
【解決手段】建物の開口部に設けられ四方を枠組みした枠体に支持されガラスパネル40を保持するガラス保持溝45を有する障子を備え、障子のうち少なくとも2枚の内障子3Aが突合せ框37を有して互いに突き合せられ、突合せ框37は、ガラス保持溝45に隣接してもう一方の突合せ框側に位置するホロー37Aを有し、内障子3Aは、下框に設けられ屋外に連通する外気導入孔と、外気導入孔に連通し、ホロー37Aにおけるガラス保持溝45に隣接する内側面に設けられた空気導入孔38と、を備え、ガラス保持溝45内のガラス保持空間S1とホロー37A内のホロー空間S2とが等圧空間となる構成とした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部に設けられ四方を枠組みした枠体と、
前記枠体に支持されガラスパネルを保持するガラス保持溝を有する障子と、を備え、
前記障子のうち少なくとも2枚の内障子が突合せ框を有して互いに突き合せられ、
前記突合せ框は、前記ガラス保持溝に隣接してもう一方の突合せ框側にホローを有し、
前記内障子は、
下框及び上框のうち少なくとも一方に設けられ屋外に連通する外気導入孔と、
前記外気導入孔に連通し、前記ホローにおける前記ガラス保持溝に隣接する内側面に設けられた空気導入孔と、を備え、
前記ガラス保持溝内のガラス保持空間と前記ホロー内のホロー空間とが等圧空間となる建具。
【請求項2】
前記空気導入孔は、前記ホローの前記内側面の下部に設けられている、
請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記空気導入孔は、前記ホローの前記内側面の上部に設けられている、
請求項1に記載の建具。
【請求項4】
前記空気導入孔の開口面積は、15.7mm2以上である、
請求項1に記載の建具。
【請求項5】
中央2枚の前記障子が前記突合せ框を有する前記内障子を有する4枚建ての引き違いサッシである、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の建具。
【請求項6】
前記突合せ框を有する前記内障子を備えた引き分けサッシである、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ビル用のサッシでは、例えば特許文献1に示されるように、サッシの框内空間を外気圧と等気圧とし、屋外の雨水を屋内に引き込ませないように水密性をもたせた等圧構造とすることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば4枚建ての引き違いサッシ等では、枠体内において、外障子は縦枠と縦框との間に屋外と通じる部分(外気と触れる部分)があるのに対して、外障子同士の間に配置される2枚の内障子は、外気や雨風を直接的に受ける突合せ框の屋外側の外面のみとなる。この外面に空気導入孔を設けて等圧空間を形成することが難しく、4枚建ての内障子に関しては充分な量の外気を導入することが困難になっていた。そのため、4枚建ての引き違いサッシの場合には、内障子の空間内に送り込まれる外気量が不十分となることから、等圧空間を維持できないという問題があった。等圧空間を維持できないことによって、雨水が屋内側に浸入する場合があることから、その点で改善の余地があった。
【0005】
本開示は、突合せ框を有する内障子において等圧構造を実現し、特に高風圧時においても屋内への雨水の浸入を防止できる建具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の建具は、建物の開口部に設けられ四方を枠組みした枠体と、前記枠体に支持されガラスパネルを保持するガラス保持溝を有する障子と、を備え、前記障子のうち少なくとも2枚の内障子が突合せ框を有して互いに突き合せられ、前記突合せ框は、前記ガラス保持溝に隣接してもう一方の突合せ框側に位置するホローを有し、前記内障子には、下框及び上框のうち少なくとも一方に設けられ屋外に連通する外気導入孔と、前記外気導入孔に連通し、前記ホローにおける前記ガラス保持溝に隣接する内側面に設けられた空気導入孔と、前記ガラス保持溝内のガラス保持空間と前記ホロー内のホロー空間とが等圧空間となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の第1実施形態による引き違いサッシを屋内側から見た正面図である。
【
図2】
図1に示す引き違いサッシの縦断面図である。
【
図3】
図1に示す引き違いサッシの水平断面図である。
【
図5】
図4に示すI-I線矢視図であって、突合せ框を屋外から見た側面図である。
【
図6】
図4に示すII-II線矢視図であって、突合せ框をガラスパネル側から見た側面図である。
【
図7】内障子における外気の導入状態を示す要部縦断面図である。
【
図8】内障子における外気の導入状態を示す要部水平断面図である。
【
図9】第2実施形態による引き分けサッシを屋内側から見た正面図である。
【
図10】
図9に示す引き分けサッシの縦断面図である。
【
図11】
図9に示す引き分けサッシの水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態では、建物の開口部に設けられる4枚建ての引き違いサッシ100を建具の一例として説明する。
【0009】
引き違いサッシ100は、建物の開口部に設けられ四方を枠組みした枠体2と、枠体2に支持されスライド可能な4枚の障子3と、を備えている。引き違いサッシ100は、4枚の障子3のうち左右中央2枚の障子3が突合せ框37を有し屋内側に位置する内障子3Aである。中央の2枚の内障子3Aの左右両側の屋外側に位置する外障子は、符号3Bで示す。
【0010】
以下の説明では、屋外側(
図2等に示す+Z側)と屋内側(
図2等に示す-Z側)とを結び水平方向に沿う方向を、屋内外方向(図の矢印Zの方向)と称する。屋内外方向Zと直交し水平方向に沿う方向を、左右方向(図の矢印Xの方向)と称する。屋内外方向Z及び左右方向Xと直交する方向を、上下方向(図の矢印Yの方向)と称する。各構成部材において、屋内外方向Z及び左右方向Xで中心から離れる側を外側と称し、中心に向かう側を内側という場合がある。引き違いサッシ100を構成する部位において、屋内外方向Zを見込み方向と称し、見込み方向に直交する面方向を見付け方向と称する場合がある。
【0011】
枠体2は、四方枠状に形成されている。枠体2は、上枠21と、下枠22と、一対の縦枠23と、を有している。枠体2は、アルミ製である。なお、枠体2は、アルミ合金等の金属形材から構成されたもの、アルミ樹脂複合(アルミニウム製部材と樹脂製部材とが組み付けられた構成)から構成されたもの、あるいは樹脂製のみの部材から構成されたものであってもよい。
【0012】
上枠21及び下枠22は、左右方向Xに延びている。縦枠23は、上下方向Yに延びている。各縦枠23は、上枠21の端部と下枠22の端部とを連結している。
【0013】
図2に示すように、上枠21は、左右方向Xに沿って延在し屋内外方向Zに間隔をあけて設けられる一対のレール案内壁211、212を有している。屋内側の内側レール211には、内障子3Aの上端が左右方向Xにスライド自在に嵌め込まれている。屋外側の外側レール212には、外障子3Bの上端が左右方向Xにスライド自在に嵌め込まれている。なお、上枠21の形状としては、
図2に示すような一対のレール案内壁211、212を有する形状であることに限定されることはなく、例えばドブ溝形状の上枠を採用してもよい。
【0014】
下枠22は、上段部221と、内側壁222と、内側レール223と、下段部224と、外側壁225と、外側レール226と、を有している。下枠22は、上段部221と下段部224とによって階段状に形成されている。なお、下枠22の形状としては、
図2に示すような階段状となる段差を有する形状に限定されることはなく、例えば段差のない水平方向にフラットな形状の下枠を採用してもよい。
【0015】
上段部221は、下枠22の屋内側に配置されている。上段部221は、板状に形成され、板面を上向きにして左右方向Xに延びる。内側壁222は、上段部221において屋内側の位置で上方に突出している。内側壁222には、気密材支持部222aが設けられている。気密材支持部222aは、屋外側に延びて突出する第1気密材24を屋内側から支持している。第1気密材24は、下枠22の長手方向に沿って延在している。内側壁222は、内障子3Aの下框35の屋内側面に対して屋内側から第1気密材24を介して接触している。内側レール223は、上段部221における屋外側の位置で上方に突出し、内障子3Aの戸車43を転動可能に支持している。
【0016】
下段部224は、上段部221よりも屋外側に配置されている。下段部224は、板状に形成され、板面を上向きにして左右方向Xに延びる。外側壁225は、下段部224において屋外側の位置で上方に突出している。上段部221の屋外側の位置には、屋外側に延びて突出する気密材支持部227が設けられている。気密材支持部227の屋外側先端には、第2気密材25を保持する気密材取付部227aが設けられている。第2気密材25は、下枠22の長手方向に沿って延在し、外障子3Bの下框32の屋内側面に対して屋内側から接触している。外側レール226は、下段部224における外側壁225との間の位置で上方に突出し、外障子3Bの戸車44を転動可能に支持している。外障子3Bを支持する外側レール226は、内障子3Aを支持する内側レール223よりも低い位置に配置されている。
【0017】
左右方向両側の一対の外障子3Bは、それぞれ一対の内障子3Aよりも屋外側に配置されている。外障子3B及び内障子3Aは、枠体2に左右方向Xにスライド可能で引き違い可能に設けられている。外障子3B及び内障子3Aが閉じた状態では、外障子3B及び内障子3Aは枠体2の内側の開口部を閉塞する。
【0018】
図1から
図3に示すように、外障子3Bは、框体30Bと、ガラスパネル40と、を有している。框体30Bは、四方枠状に形成されている。框体30Bは、上框31と、下框32と、一対の縦框33と、を有している。框体30Bは、アルミ製である。なお、框体30Bは、アルミ合金等の金属形材から構成されたもの、アルミ樹脂複合(アルミニウム製部材と樹脂製部材とが組み付けられた構成)から構成されたもの、あるいは樹脂製のみの部材から構成されたものであってもよい。上框31及び下框32は、左右方向Xに延びている。縦框33は、上下方向Yに延び、上框31の端部と下框32の端部とを連結している。
【0019】
図2に示すように、上框31は、外壁311と、内壁312と、外壁311及び内壁312の上端同士を連結する上壁313と、上壁313の上側においてレール212を掛止するとともに気密材を支持するレール掛止部314と、を有している。外壁311は、ガラスパネル40よりも屋外側に配置されている。内壁312は、ガラスパネル40よりも屋内側に配置されている。外壁311及び内壁312は、板状に形成され、それぞれの板面が屋内外方向に直交する方向に配置されている。外壁311及び内壁312は、外障子3Bの左右方向Xの略全長にわたって配置されている。
【0020】
レール掛止部314は、上方に開口した凹溝314aを有する。凹溝314aは、上枠21の外側レール212に嵌め合わされている。外障子3Bは、上枠21の外側レール212に沿って移動可能である。
【0021】
下框32は、外壁321と、内壁322と、外壁321及び内壁322の下端同士を連結する下壁323と、下壁323の下側に延びる下框本体部324と、を有している。外壁321は、ガラスパネル40よりも屋外側に配置されている。内壁322は、ガラスパネル40よりも屋内側に配置されている。外壁321及び内壁322は、板状に形成され、それぞれの板面が屋内外方向Zに直交する方向に配置されている。外壁321及び内壁322は、外障子3Bの左右方向Xの略全長にわたって配置されている。
【0022】
下框本体部324は、下壁323から下方に延びるとともに、下方に開口した戸車収容凹溝324aを有する。戸車収容凹溝324aには、戸車44が回転可能に支持されている。戸車44は、下枠22の外側レール226に対して上下方向Yに対向する位置に設けられている。戸車44は、下枠22の外側レール226上を転動することで走行可能である。
【0023】
外障子3Bのガラスパネル40は、框体30B内に納められている。ガラスパネル40は、ペアガラスであるが、単板ガラス等であってもよい。
【0024】
左右方向中央の一対の内障子3Aは、框体30Aと、ガラスパネル40と、を有している。框体30Aは、四方枠状に形成されている。
【0025】
図1から
図3に示すように、框体30Aは、上框34と、下框35と、召合せ框36と、突合せ框37と、を有している。框体30Aは、アルミ製である。なお、框体30Aは、アルミ合金等の金属形材から構成されたもの、アルミ樹脂複合(アルミニウム製部材と樹脂製部材とが組み付けられた構成)から構成されたもの、あるいは樹脂製のみの部材から構成されたものであってもよい。上框34及び下框35は、左右方向Xに延びている。召合せ框36及び突合せ框37は、上下方向Yに延び、上框34の端部と下框35の端部とを連結している。
【0026】
図2に示すように、上框34は、外壁341と、内壁342と、外壁341及び内壁342の上端同士を連結する上壁343と、上壁343の上側においてレール211を掛止するとともに気密材を支持するレール掛止部344と、を有している。外壁341は、ガラスパネル40よりも屋外側に配置されている。内壁342は、ガラスパネル40よりも屋内側に配置されている。外壁341及び内壁342は、板状に形成され、それぞれの板面が屋内外方向に直交する方向に配置されている。外壁341及び内壁342は、内障子3Aの左右方向Xの略全長にわたって配置されている。
【0027】
レール掛止部344は、上方に開口した凹溝344aを有する。凹溝344aは、上枠21の内側レール211が支持されている。凹溝344aは、上枠21の内側レール211に沿って走行可能である。
【0028】
下框35は、外壁351と、内壁352と、外壁351及び内壁352の下端同士を連結する下壁353と、下壁353の下側に延びる下框本体部354と、を有している。外壁351は、ガラスパネル40よりも屋外側に配置されている。内壁352は、ガラスパネル40よりも屋内側に配置されている。外壁351及び内壁352は、板状に形成され、それぞれの板面が屋内外方向に直交する方向に配置されている。外壁351及び内壁352は、内障子3Aの左右方向Xの略全長にわたって配置されている。
【0029】
下框35の下壁353には、外壁351及び内壁352の間で上下方向に貫通する第1外気導入孔41及び第2外気導入孔42を有している。外気導入孔41、42は、それぞれ下框35の長手方向に沿って例えば二箇所に設けられている。外気(空気E)は、第1外気導入孔41及び第2外気導入孔42を通じて下框32における下壁353の上側、すなわち下壁353の下方から上方の領域に流れる(
図7及び
図8参照)。
【0030】
下框本体部354は、下壁353から下方に延びるとともに、下方に開口した凹溝354aを有する。凹溝354aには、戸車43が回転可能に支持されている。戸車43は、下枠22の内側レール223に対して上下方向Yに対向する位置に設けられている。戸車43は、下枠22の内側レール223上を転動することで走行可能である。
【0031】
内障子3Aのガラスパネル40は、框体30A内に納められている。ガラスパネル40は、ペアガラスであるが、単板ガラス等であってもよい。
【0032】
図3に示すように、召合せ框36は、内障子3A及び外障子3Bが閉じている状態で、外障子3Bの縦框33に屋内外方向Zに重なっている。
【0033】
上框34、下框35、召合せ框36及び突合せ框37には、それぞれ断面略コの字状のガラス保持溝45が形成されている。ガラスパネル40の周縁部は、ガラス保持溝45内に嵌め込まれている。ガラスパネル40の周縁部のガラス面は、各框34、35、36、37に係止されたガラス保持材46A及びパッキン46Bで押さえられている(
図7及び
図8参照)。パッキン46Bは、省略することも可能である。
【0034】
各框34、35、36、37におけるガラス保持溝45とガラス保持材46A及びパッキン46Bとの間には、ガラス保持空間S1(
図7参照)が形成されている。ガラス保持空間S1は、下框32に設けられる第1外気導入孔41及び第2外気導入孔42を介して屋外に連通し、かつ後述する空気導入孔38を介して突合せ框37のホロー37Aのホロー空間S2(
図8参照)に連通している。
【0035】
図4に示すように、突合せ框37は、屋外側の外壁371と、屋内側の内壁372と、外壁371及び内壁372を連結する一対の連結壁373、374と、一対の連結壁373、374の屋内外方向Zの略中間部で連結する中間壁375と、を有する。
【0036】
図3に示すように、一対の内障子3Aのうち両方もしくはいずれか一方の突合せ部376には、上下方向Yに延びる突合せ気密材377が設けられている。突合せ気密材377は、両方もしくはいずれか一方の突合せ部376の上下方向Yに沿って全長にわたって配置されている。突合せ気密材377は、一対の内障子3Aの突合せ框37同士が突合せされた状態で、突合せ部376に隙間が生じないよう、突合せ部構成部材に気密に接触している。
【0037】
突合せ框37には、外壁371と内壁372との間で外壁371に沿って中空状に形成され、上下方向Yの全長にわたって延びるホロー37Aが形成されている。ホロー37Aは、外壁371、一対の連結壁373、374及び中間壁375により構成され、上下方向Yに延びるホロー空間S2を形成している。
【0038】
図4から
図6に示すように、ホロー37Aを構成する一対の連結壁373、374のうちガラス保持溝45に隣接する第1連結壁373の内側面373aには、複数の空気導入孔38が形成されている。第1連結壁373の内側面373aは、ガラス保持溝45の一部である。空気導入孔38は、ガラス保持溝45内の等圧空間であるガラス保持空間S1を介して外気導入孔41、42に連通している。つまり、ガラス保持溝45内のガラス保持空間S1とホロー37A内のホロー空間S2とが連通した等圧空間となる。
【0039】
複数の空気導入孔38は、ホロー37Aの内側面373aの下部において、上下方向に複数(ここでは4つ)が配列されている。空気導入孔38は、孔形状が円形であり、例えば直径8mm程度に設定される。空気導入孔38は、内側面373aに形成される全体の開口面積が15.7mm2以上であることが好ましい。すなわち 空気導入孔38は、ホロー37A内のホロー空間S2に導入される空気量に基づき、内側面373aに形成される全体の開口面積を算出され、孔形状と孔数が算出される。
【0040】
引き違いサッシ100(建具)の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
図2及び
図3に示すように、引き違いサッシ100は、建物の開口部に設けられ四方を枠組みした枠体2と、枠体2に支持されガラスパネル40を保持するガラス保持溝45を有する障子3と、を備える。2枚の内障子3Aは、突合せ框37を有して互いに突き合せられている。突合せ框37は、ガラス保持溝45に隣接してもう一方の突合せ框側に位置するホロー37Aを有する。内障子3Aには、下框35及び上框34のうち少なくとも一方(本実施形態では下框35)に設けられ屋外に連通する外気導入孔41、42と、外気導入孔41、42に連通し、ホロー37Aにおけるガラス保持溝45に隣接する内側面373aに設けられた空気導入孔38と、を備える。ガラス保持溝45内のガラス保持空間S1とホロー37A内のホロー空間S2とが等圧空間となる。
【0041】
図7及び
図8に示すように、外気(空気E)は内障子3Aに設けられる外気導入孔41、42を通じてガラス保持空間S1内に導入される。ガラス保持空間S1内の空気Eがガラス保持空間S1に空気導入孔38を通じて連通する突合せ框37のホロー37A内のホロー空間S2に送り込まれる。内障子3Aは、ガラス保持空間S1と突合せ框37のホロー空間S2との間に形成される等圧空間によって、多くの外気を送り込むための空気ルートを十分に確保できる。引き違いサッシ100は、内障子3Aに形成される等圧空間に送り込む外気量を増やすことができる。
【0042】
引き違いサッシ100では、突合せ框37を有する内障子3Aにおいて等圧構造を実現することができるので、例えば2枚の内障子3Aを閉じた状態で枠体2の縦枠23に対して隣接しない4枚建ての引き違いサッシであっても、高風圧時において雨水が屋内に引き込まれて浸入することをより確実に防止できる。
【0043】
引き違いサッシ100は、外気や風雨を直接的に受ける突合せ框37の外壁371に空気導入孔を設ける必要がない、あるいは空気導入孔の数を削減したり簡単な構成にすることができる。引き違いサッシ100は、屋外側に露出する外壁371に孔を形成することに伴う見映えの低下を抑え、意匠性を向上することができる。
【0044】
引き違いサッシ100は、外気導入孔41、42が下框35に設けられる場合において、空気導入孔38が外気導入孔41、42に対して上下方向Yで近いホロー37Aの内側面の下部に設けられているので、ガラス保持空間S1内の空気Eを効率よくホロー空間S2内に導入することができる。
【0045】
空気導入孔38の開口面積が15.7mm2以上であるので、ガラス保持空間S1内の空気Eを効率よくホロー空間S2内に導入することができる。
【0046】
本実施形態による引き違いサッシ100は、突合せ框37を有する内障子3Aにおいて等圧構造を実現し、とくに高風圧時においても屋内への雨水の浸入を防止できる。
【0047】
(第2実施形態)
図9から
図11に示すように、第2実施形態は、左右方向両側の一対の外障子3Bが固定され、突合せ框37を有する2枚の内障子3Aを備えた引き分けサッシ100Aを建具とした一例である。引き分けサッシ100Aの内障子3Aの構造も上述した第1実施形態の引き違いサッシ100と同様に構成されている。
【0048】
引き分けサッシ100Aは、建物の開口部に設けられ四方を枠組みした枠体2と、枠体2に支持されガラスパネル40を保持するガラス保持溝45を有する障子3と、を備える。2枚の内障子3Aは、突合せ框37を有して互いに突き合せられている。突合せ框37は、ガラス保持溝45に隣接してもう一方の突合せ框側に位置するホロー37Aを有する。内障子3Aは、下框35及び上框34のうち少なくとも一方(ここでは下框35)に設けられ屋外に連通する外気導入孔41、42と、外気導入孔41、42に連通し、ホロー37Aにおけるガラス保持溝45に隣接する内側面373aに設けられた空気導入孔38と、を備える。ガラス保持溝45内のガラス保持空間S1とホロー37A内のホロー空間S2とが等圧空間となる。
【0049】
引き分けサッシ100Aでは、外気は内障子3Aに設けられる外気導入孔41、42を通じてガラス保持空間S1内に導入される。ガラス保持空間S1内の空気は、ガラス保持空間S1に空気導入孔38を通じて連通する突合せ框37のホロー37A内のホロー空間S2に送り込まれる。引き分けサッシ100Aは、ガラス保持空間S1と突合せ框37のホロー空間S2との間に形成される等圧空間により多くの外気を送り込むための空気ルートを十分に確保できる。引き分けサッシ100Aは、内障子3Aに形成される等圧空間に送り込む外気量を増やすことができる。
【0050】
引き分けサッシ100Aでは、突合せ框37を有する内障子3Aにおいて等圧構造を実現することができるので、例えば2枚の内障子3Aを閉じた状態で枠体2の縦枠23に対して隣接しない引き分けサッシであっても、高風圧時において雨水が屋内に引き込まれて浸入することをより確実に防止できる。
【0051】
以上、本開示による建具の実施形態について説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0052】
例えば、上記第1実施形態において中央2枚の内障子3Aを有する4枚建ての引き違いサッシ100や、第2実施形態において左右方向両側の一対の外障子3Bが固定され、突合せ框37を有する2枚の内障子3Aを備えた引き分けサッシ100Aを建具の一例としているが、これらの建具に限定されることはない。要は、障子3のうち少なくとも2枚の内障子3Aが突合せ框37を有して互いに突き合せられる構成の建具に適用可能である。
【0053】
また、ホロー37Aの内側面373aに設けられる空気導入孔38の上下方向の位置は限定されるものではない。例えば、外気導入孔41、42が上框31に設けられる場合には、空気導入孔38を内側面373aの上部に設けるようにしてもよい。これにより、空気導入孔38が外気導入孔41、42に対して上下方向Yで近いホロー37Aの内側面373aの上部に設けられているので、ガラス保持空間S1内の空気を効率よくホロー空間S2内に導入することができる。
【0054】
また、空気導入孔38の孔径、孔の大きさ、孔形状、孔数量、孔の位置は、適宜変更可能である。要は、ガラス保持溝45内のガラス保持空間S1とホロー37A内のホロー空間S2との間で通気可能に設けられればよく、ホロー空間S2に導入される空気量に基づき、内側面373aに形成される空気導入孔38の構成を設定することができる。
【0055】
さらに、本実施形態では、外気導入孔41、42が内障子3Aの下框32に設けられているが、下框32であることに限定されることはなく、上框31に外気導入孔が設けられる構成、あるいは下框32及び上框31の両方に外気導入孔が設けられていてもよい。また、框における外気導入孔41、42の位置、孔形状、孔数量などの構成についても、適宜な箇所に設定することができる。
【0056】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0057】
100…引き違いサッシ(建具)、100A…引き分けサッシ(建具)、2…枠体、3…障子、3A…内障子、3B…外障子、30A、30B…框体、31、34…上框、32、35…下框、33…縦框、36…召合せ框、37…突合せ框、38…空気導入孔、41…第1外気導入孔、42…第2外気導入孔、45…ガラス保持溝、371…外壁、372…内壁、373、374…連結壁、373a…内側面、375…中間壁、S1…ガラス保持空間、S2…ホロー空間、X…左右方向、Y…上下方向、Z…屋内外方向