IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 西沢 克弥の特許一覧

<>
  • 特開-真空装置、真空ポンプ 図1
  • 特開-真空装置、真空ポンプ 図2
  • 特開-真空装置、真空ポンプ 図3
  • 特開-真空装置、真空ポンプ 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139665
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】真空装置、真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 37/16 20060101AFI20241002BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
F04B37/16 Z
F04B39/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023174180
(22)【出願日】2023-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】714009083
【氏名又は名称】西沢 克弥
(72)【発明者】
【氏名】西沢 克弥
【テーマコード(参考)】
3H003
3H076
【Fターム(参考)】
3H003AC04
3H003AD00
3H003CD07
3H076AA16
3H076AA21
3H076BB43
3H076BB50
3H076CC55
(57)【要約】
【課題】真空ポンプの作動流体を考案する。作動流体には水銀のように蒸気圧の高い液体金属や、生体に適合しない合成油等の作動流体があり、蒸気圧が低い作動流体や生体に適合し環境負荷の低い作動流体を検討した。
【解決手段】作動流体にガリウム・ガリウムを含む液体金属を提案する。またイオン液体、深共晶溶媒DES・天然深共晶溶媒NADESを作動流体に用いた真空ポンプを開示する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体に深共晶溶媒DESを含む真空ポンプ。
【請求項2】
作動流体に天然深共晶溶媒NADESを含む請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
ロータリーポンプの作動流体に天然深共晶溶媒NADESを含む請求項2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
液封ポンプの作動流体に天然深共晶溶媒NADESを含む請求項2に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
請求項2に記載の真空ポンプを用いた真空引き・減圧工程を経て製造・加工された食品・医薬品・化学物質・包装・容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本考案・本願は真空装置、真空機器、真空ポンプ、真空容器に関する。作動液体を用いたポンプと真空容器を開示する。(本願は実証が必要である)
【背景技術】
【0002】
(1)<真空ポンプ>真空ポンプにはスプレンゲルポンプ(水銀を用いて大気を排出するポンプ)、水銀拡散ポンプ、拡散ポンプ、油回転ポンプ(作動液体に油を用いるもの、ローター・シリンダー・カム・ベーンの摺動部を油・流体にて潤滑・シーリングする物)、液封式ポンプ(液封式圧縮機、水封式ポンプ、羽根車をモータ等動力で駆動し作動液体による液体リングを形成する物)、渦巻ポンプ(渦巻ポンプを用いてスプレンゲルポンプの様に液体を循環させ真空槽内部の大気を取り込んで排出するポンプでもよい)が存在する。(図4
【0003】
液封ポンプ・液封真空ポンプの作動液・作動流体は前記ポンプの到達可能な真空度・圧力(Torr・Pa)の上限を決定する。特許文献1に記載のように、液封真空ポンプでは回転する流体環が互いに相対する羽根室同士を密封し、ガスに必要な圧力エネルギーを伝達するために必要であって、前記環の液体の蒸気圧が、達成し得る吸引圧力レベルの最低値を制限する。例えば水や油を用いるときはその液体の蒸気圧に制限される。また同様に、スプレンゲルポンプ等においても用いる液体金属・水銀の蒸気圧により到達可能な(真空の)圧力が決定される。作動液体として水銀を用いたポンプが古くから公知であり白熱電球の製造等で用いられている。
【0004】
真空ポンプの作動液・作動流体の蒸気圧は低いことが好ましいかもしれない。公知の方法として、特許文献1のように、(出願時点では高価であるが、)蒸気圧が低い特徴を持つイオン液体を用いた液封ポンプが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008-530441
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】インジウムコーポレーション社、「ガリウムの特徴と利点」各金属の温度と蒸気圧関係。インターネット、令和5年4月12日閲覧、https://www.indium.com/products/metals/gallium/#image-4
【非特許文献2】「Vapor Pressure Mapping of Ionic Liquids and Low-Volatility Fluids Using Graded Isothermal Thermogravimetric Analysis」2019, 3(2), 42; https://doi.org/10.3390/chemengineering3020042
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願において解決しようとする問題点は、(実用的又は安価な、)蒸気圧の低い、前記真空ポンプの作動液体を考案することである。
【0008】
(2)本願は水・油・水銀の代わりに天然深共晶溶媒NADESやガリウム・ガリウム合金・溶融した錫・溶融金属を用いた真空ポンプ・スプレンゲルポンプ(ガイスラー・スプレンゲルポンプの水銀をガリウムやDES・NADES等別の物質に置き換えたもの)を開示する。
また水を含む内容物Nを真空引きする際にポンプ4RFPに水分が取り込まれる恐れがある。そこで水分を除去する部分や水分を取り込みにくい・取り込んだ水分を分離しやすい作動流体の提案(DES利用時の疎水性DES利用、或いは同様にイオン液体利用時の疎水性イオン液体の利用)を記載する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(3)<解決手段としての液体金属の作動流体への利用>本願はガリウム・ガリウム合金・溶融した錫・溶融金属を前記作動液体に用いた真空ポンプを開示する。例えば図1のスプレンゲルポンプ式の真空ポンプ4RFPに前記ガリウム・ガリウム合金・ガリウムインジウム錫GaInSn・溶融した錫・溶融金属を用いてよい。
非特許文献1においてもガリウム及びインジウムの蒸気圧は水銀より低い。水銀を用いたポンプでは水銀の蒸気圧より高い真空に到達できないが、ガリウムの場合その蒸気圧は水銀より低く、前記ガリウムをポンプに用いることでより高い真空に到達させることを意図している。前記ガリウム・ガリウム合金・ガリウムインジウム錫GaInSn・溶融した錫・溶融金属を用いた液封ポンプ・ロータリーポンプでもよい。
【0010】
水銀と液体のガリウム・金属ガリウムを比較すると金属ガリウムは溶融時に蒸気圧が低く、ガリウムを作動流体に用いた真空ポンプは水銀を用いた場合よりも高真空に真空引きできうる。そこで本願では作動流体に液体ガリウムを用いたスプレンゲルポンプや、その他作動流体を用いる真空ポンプを含む、真空ポンプ4RFPを開示する。(*ただし、公知のようにガリウム資源量の制約があるため、本願ではこの開示とは別にイオン液体やDESを用いたポンプ4RFPも開示している。)
【0011】
(4)<解決手段としてのイオン液体並びに深共晶溶媒の利用>また前記作動液体にイオン液体・深共晶溶媒を用いた場合も開示する。液封ポンプ、ロータリーポンプにおいては真空ポンプ用オイルを用いるが、そのオイルをイオン液体・深共晶溶媒に置き換えた系(1、1IL、1DES)を開示する。
●イオン液体はオイルよりも蒸気圧が低い場合(10のマイナス2から3乗パスカルクラスの場合)、イオン液体を用いた前記ポンプは所謂ロータリーポンプ用の合成油・真空用オイルを用いた場合(0.1パスカル)より高い真空度への到達をできる事を期待する。
●DESのうちNADESは合成油・合成真空用オイルより生物・環境への影響が小さくなることを期待して食品用途の真空ポンプへの利用を開示する。
【0012】
液封ポンプ等で作動流体に用いる水をイオン液体・深共晶溶媒に置き換え真空度を向上させた前記ポンプにつながる可能性がある。またスプレンゲルポンプ等の真空ポンプにおいて作動流体に用いる水銀をガリウム合金系、ガリウムに置き換えることで蒸気圧が低下し、真空度を向上させた前記ポンプにつながる可能性がある。
【0013】
<イオン液体の利用>
非特許文献2によればイオン液体の蒸気圧は373から523ケルビンで10の-3乗から27パスカルの範囲にある。この値は水による液封ポンプの水の蒸気圧( 水温摂氏15度で10の3乗パスカル )やロータリーポンプのオイルの蒸気圧(10の-1乗、0.1パスカル)よりは低くできる範囲にある。そのため、イオン液体をロータリーポンプ・液封ポンプの作動流体に用いることで到達可能な圧力を低減できうる。本願では図1図3等の真空ポンプ4RFPにイオン液体を用いる系を開示する。
(注:水が作動液体である液封ポンプは到達圧力が10の3乗パスカル程度である。水が作動液体である液封ポンプは水の蒸気圧による制限がある。水温摂氏15度で10の3乗パスカルである。)(注:ロータリーポンプの作動流体は潤滑油部分。図4のシール部等)
【0014】
<深共晶溶媒DES、天然深共晶溶媒NADESの利用>
本願では前記作動液体に深共晶溶媒DES・天然深共晶溶媒NADESを用いてよい。非特許文献2によれば深共晶溶媒の蒸気圧は液封ポンプの到達可能な圧力よりは低いかもしれない。非特許文献2にはNADESなCholine chloride:urea (1:2) Relineの他に、NADESではないが人工なDESのCholine chloride:ethylene glycol (1:2) Ethaline、Choline chloride:glycerol (1:2)がある。それらNADES、DESの蒸気圧は313-433ケルビンの範囲で2-161パスカルであり、上記水の蒸気圧(10の3乗パスカル)より低いといえる。その為、本願で開示する1DESの4RFPポンプが液封ポンプ、ロータリーポンプ等であって、その作動液体に水の代わりにNADES・DES用いたとき、水より低い圧力・高い真空(2.12-161.95 パスカル)に到達可能である効果を期待する。
【0015】
*イオン液体にはイミダゾリウムカチオン等の人工的な有機カチオンと、[BF4-]、[TfO-]、[Tf2N-(TFSIアニオン)]、[PF6-]等のアニオンは人体になじみのない物質であることは考慮する。イオン液体の製造コストが高い可能性があることも考慮すると図2の食品用の用途で、液封ポンプやロータリーポンプの作動流体に用いるにはイオン液体より、人体に関わりのある物質、(天然に存在しうる、)塩化コリン・尿素等の系を用いるNADESのほうが好ましいと考えるため、本願ではNADESを用いたポンプ4RFPを用いる図2の系を開示する。
【0016】
本願では食品の用途に水を用いた液封ポンプ・ロータリーポンプより低い圧力に到達できるようにしつつ、人造油を用いたロータリーポンプの可食できない・人体に適合しないオイルミストの発生をさせない系として、塩化コリン(ビタミンB2複合体の一つ)と尿素(尿中に含まれる有機物)の混合物Choline chloride:urea (1:2) Relineを本願で開示する1DESの4RFPポンプが液封ポンプ、ロータリーポンプ等であって、その作動液体に水の代わりにNADES・DES用いてよい。
【0017】
前記作動液体に用いる場合、ポンプが大型になるほど大量の作動液体を要することが推定され、作動液体のコストを低減することが必要になる。金属ガリウムを作動液体に用いる場合資源量に制限があるガリウムに利用が必要になる。またイオン液体・DESも低コストであると好ましい。前記イオン液体はカチオンとアニオンからなる塩であり、極性が高く、合成時に副生物の塩や水分などを取り込むなどでそれらを分離する等により高価になる虞がある。
一方で深共晶溶媒DESは水素結合ドナー性の物質Dとアクセプター性の物質Aを混合・加熱することで形成出来、前記物質DとAをあらかじめ生成・精製しておき混合することで溶媒にして前記作動流体として利用する。
【0018】
(5)そのためDESは前記イオン液体よりも精製や不純物・水分の混入を抑えられるならば低価格化につながり、前記DESを作動液体に用いた真空ポンプは低価格・低環境負荷・作動液体の蒸気圧が非特許文献2図4のように水銀などより低く、到達可能な真空度を水銀を用いたポンプ、拡散ポンプ、油回転ポンプ、水を用いた液封式ポンプ、水を用いた渦巻ポンプよりも低くできるかもしれない。
【0019】
(6)環境負荷を低くし、大量生産にも貢献するかもしれない天然深共晶溶媒NADESが存在する。(例:塩化コリン・クエン酸の系)前記DES・NADESを真空ポンプの作動液体として用いてよい。例えば尿素と塩化コリンのDES(共晶温度12℃、モル比で尿素2:塩化コリン1)が存在し、温度12℃以上の環境では真空ポンプの前記作動流体に用いてよい。
【0020】
*深共晶溶媒(Deep Eutectic Solvent:DES):水素結合ドナー性の化合物と水素結合アクセプター性の化合物を一定比率で混ぜ合わせ室温で液体となる溶媒。蒸気圧が低い・難燃性・熱安定性・電気化学的安定性が高い・電位窓が広い・任意の物質を溶かしやすい等の特徴を有しイオン液体より安価な場合もある。天然に得られ環境負荷が低いとみられる天然深共晶溶媒も存在する。それらを用いてよい。
【0021】
(7)また水分や二酸化炭素など大気等気体を含む容器から真空ポンプにて排気するときに、前記作動流体・DES・NADESが取り込みした・吸収した・含んだ前記水分・二酸化炭素等を除去する部分4RFP-REFIを真空ポンプ・真空排気システムに備えさせて良い。例えば水分を吸収しやすいイオン液体・NADESを乾燥させる部分を装置・真空ポンプ・真空排気システムに備えてよい。
【0022】
(8)本願図2のように、食品用途で食品FDの乾燥・フリーズドライ・フリーズドライ食品製造に前記NADESを作動液体に用いた真空ポンプを用いてよい。冷凍・凍結された食品FDFを真空ポンプを動作させフリーズドライ食品FDFDRYを製造してよい。前記NADESは天然に得られうる物質であって、食品用(若しくは医療用・生物へ提供されるサービス用の)真空ポンプの作動流体に適しているかもしれない。フリーズドライにおいては水分を含む食品FDを凍結し凍結した食品FDFを得て、前記FDFを減圧下・真空下に置き水分を昇華・除去することで乾燥させ製品となる食品FDFDRYを製造する。(喫食時は水分を与え用いる)
【0023】
(9)前記フリーズドライ時、作動流体(NADES等。イオン液体でも同様)は食品から昇華・除去された水分を含むことが想定され、水分除去のために作動流体中の水分など不純物除去部分4RFP-REFIを作動流体の流路(真空ポンプ4、真空排気システム4P)に備えてよい。また作動流体がポンプや真空容器内に漏洩しないよう防止する手段を備えてよい。(例えば逆流を防止する弁・作動流体のトラップ部。)
【0024】
(10)作動流体が水分を吸収しやすい時、前記フリーズドライ時は作動流体が水分を含みやすくなり水分など不純物除去部分4RFP-REFIが必要になりうる。他方、作動流体は水分を取り込みやすい場合、前記フリーズドライ時の様に水分を除去する際に作動流体への水分吸収と真空・減圧による水分除去の双方を行い、フリーズドライすることが可能かもしれない。
【0025】
食品用ポンプでは作動流体に水を用いる渦巻ポンプやゴム・インペラ・ベーン・ピストン・ギヤによるポンプ・容積式ポンプが用いられる。他方油回転ポンプ・ロータリーポンプは動作時に食用ではない・真空用途に合成された油のミストを放出しミストを嫌う製造装置・製造ラインでは利用を避ける。また真空容器内も油の蒸気混入の恐れがある(例えば別の油を用いる方式の油拡散ポンプにおいても、真空容器内への油蒸気の影響を考え、有機半導体デバイス製造用にはターボ分子ポンプなどのドライポンプが利用される)ので、前記油・油蒸気は食品用途に利用しにくいかもしれない。
他方本願の(特に栄養強化剤に用いられる、一般に安全であると認められる塩化コリンと、柑橘類など果実・食品に含まれうるクエン酸を用いる)NADESは真空容器に到達しうる作動流体の蒸気(非特許文献2図4のようにNADES・DES・イオン液体は低い蒸気であり、例えば真空容器中に存在するNADESは微量となりうる)が前記の様に安全・又は食用のものであり、真空容器内に食品を配置し食品の加工・製造に用いる用途では体内に微量に取り込んでもよい(少量ならば食べても問題ない)作動流体の蒸気を発する真空ポンプとして提供できるかもしれない。
【0026】
(11)食用の化学物質であっても食塩等は過剰に製品に混入すると有害であるのと同様に、定期メンテナンスされていない等で装置の破損しNADESが真空容器や製造ライン・製品に大量に混入することは好ましくない・避けなければいけない。
例えば急性毒性について、塩化コリンはLD50 = 3400 mg/kg (ラット)であり、NADESのうち非特許文献2に記載のReline塩化コリン尿素混合物に含まれる尿素はLD50=14300 mg/kg(経口 ラット)である。NADESの他の構成例としてクエン酸水和物は LD50=5,040 mg/kg(経口 マウス)である。身の回りにある物質の例として食塩はLD50=4.0g/kg(経口 マウス)である。食塩と同等にNADESも急性毒性を有しており、塩化コリン・尿素からなるNADESを用いた真空ポンプ4Pも食塩と同程度に大量摂取しないようにする事が望まれる。例えば(真空容器内での作動流体の蒸気での今夕ではなくて)製造ラインにて塩化コリン・尿素からなるNADESを用いた真空ポンプ4Pが何らかの事故により破損・NADESが漏洩し食品に混入する事は避けるべきである。
【0027】
本願の真空ポンプ4Pにおいて作動流体量を監視するセンサ4RFP-SENとコンピュータ又は制御部4PCONを備えさせ、作動流体・NADESのポンプ内の残存量・溶液量の監視・モニタリングや作動流体中の水分を検出するセンサ手段として用いてよい。また前記作動流体・NADESのポンプ内の残存量・溶液量・水分の含有状態等センシングデータは4PCONに備えさせた出力装置・無線通信装置にて外部に出力・通信・伝達してよく、例えば漏洩時・液量の継続的減少検知したとき・水分異常時はブザーで通知する・無線ビーコンで周囲に知らせる・無線通信を介してインターネット・社内ネットワーク経由で管理者にモニタリング情報や漏洩・異常の発生・疑いを伝達するなどしてよい)
【0028】
(12)食品分野に限らず、金属製品・部品の真空焼き入れなど製品の加工用途や半導体・電子部品製造分野のポンプに用いてよいし、製造ラインでの搬送用の吸引・減圧ポンプ(製品を吸引し持ち運ぶ・チャックする)や家電・ロボット・機械装置・医療機器を駆動する用途に用いてよい。
【0029】
図3は本願のポンプを単体で真空槽・真空容器・真空引きする部分に接続して用いた例や他のポンプを組み合わせて用いた場合の説明図である。
【発明の効果】
【0030】
本願のポンプ・真空排気系について、実施例の1つの例として、天然に(安価に)存在する環境負荷・蒸気圧が低いNADES溶媒を真空ポンプの作動流体に用いた場合、真空蒸着・電子部品製造・理化学機械器具に加え、食品用途に利用可能な真空ポンプが提供可能な利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は深共晶溶媒等を作動液体に用いた真空ポンプ4RFPを用いた系1の説明図である。(実施例1、ポンプの例としてスプレンゲルポンプ式を用いている例)
図2図2は系1の説明図である。(実施例2、例として食品用ポンプに用いる系1の説明図である。ここでポンプの形式は液封ポンプ、ロータリーポンプ等の作動液体を用いるポンプでよい。)
図3図3は低真空用ポンプRP、高真空ポンプFPを含む真空排気系と本願真空ポンプ4RFP・系1との比較図であって、組合せの説明図である。
図4図4は一般的な液封ポンプ、ロータリーポンプ説明図である。(本願では例えば作動液体・液封・液封環・シール部にNADES、イオン液体ILを利用)
【発明を実施するための形態】
【0032】
<DESを用いる系>作動流体にDES、NADESを用いることで公知の元素・資源量の限られる液体金属を用いる場合と比べ、低コスト・低環境負荷に構成・提供する。(図1図2の4RFP)<イオン液体を用いる系>作動流体にDES、NADESと比べ蒸気圧の低いイオン液体を用いた真空ポンプを構成・提供する。(図1図3の4RFP)
<ガリウムを用いる系>イオン液体よりも蒸気圧が低く高真空化可能であると期待できる作動流体としてガリウムを用いる。その例としてスプレンゲルポンプでの例を開示する。(図1図3の4RFP)
【0033】
作動流体のガリウムを溶融させるために作動流体を用いる4RFPにはガリウムを加熱するヒータ・加温手段・溶融手段を内蔵してよい。作動流体のイオン液体・DESにおいても液の温度を制御し、温度・粘度を制御するため、作動流体を用いる4RFPには作動流体を加熱するヒータ・加温手段・溶融手段を内蔵してよい。また加熱後に冷却し温度調整する目的で冷却フィン・ヒートシンク・ラジエータ・熱交換機、ファン、ペルチェ素子、温度調節用装置があってもよい。
【0034】
ガリウムはアルミニウム製のヒートシンク・配管・冷却部を脆弱化させるため、銅やその他ガリウムによる腐食又は合金化・溶融に耐性のある金属を用いる事が好ましい。
【実施例0035】
図1図2図3は本願の実施例である。
【0036】
図1のポンプ例>図1はスプレンゲルポンプにおいて本考案を適用したときのポンプ4RFPと真空排気系1の説明図・説明例である。作動流体を水銀からDES、NADES溶媒(或いは本願の別の実施形態ではガリウム、ガリウムを含む流体金属)に置き換えた系(1,NADES時:1DES、ガリウム含有液体金属時:1LM)の例である。
【0037】
真空排気される真空容器4はスプレンゲルポンプ型の4RFPと接続され、4RFPは液体タンクFTよりB部分において容器4の気体を巻き込みながら流れ落ち・移動して、真空排気を行う。流れ落ちた・移動した作動流体は流体受けで受け止め、(4RFP-REFIにて作動流体中の水分・不純物を除去し、)ポンプ・動力にてタンクFTに戻され再度流れ落ちてを繰り返し容器4を真空排気する。
【0038】
図2の食品ポンプ例>図2は各種作動液を用いる真空ポンプ(油回転ポンプ・ロータリーポンプ、液封式ポンプ、渦巻ポンプ、他に拡散ポンプ)において作動液体を油類からをDES、NADES溶媒に置き換えた系(1,1DES)の説明図であって、その利用例の一つとしてフリーズドライ食品を製造する際に食品の内容物Nを真空凍結乾燥機にて冷凍し真空引きを行って水分を除去しているときの真空排気系(1、1DES)の説明図である。用途としてはフリーズドライの味噌汁、インスタント(ソリュブル・粉末)コーヒー・飲料類、凍み豆腐・寒天、米飯・おかず・弁当の類、レーション類、宇宙食の製造、医薬品用・医療用などである。例えば図4の液封ポンプの液封環にDES・NADESを用いる。
【0039】
食品用に用いる時、作動液体のDES、NADESの食品製造ラインへの漏洩やポンプの動作異常を察知するため、入力装置・センサ4RFP-SENを持つコントローラ部4PCONを前記ポンプ4RFPは備えていてもよい。また4RFPはRFP-REFIを備え、該部分にて作動流体中の水分・不純物を除去できてよい。
【0040】
上記凍結真空乾燥、真空乾燥の他に、蒸留(ウイスキー・焼酎蒸留酒、各種食品薬品、化学薬品)、真空濃縮、調理や乾燥、保温、冷却、脱臭用途、吸引・吸着・ガス収集、に用いてよく、成型(パック成型)、液体充填、ガスの置換、脱気・脱泡、真空蒸着・スパッタリング・化学蒸着CVD、真空断熱容器の真空引き、酸化防止等用いてよい。
【0041】
図3の例>図3は粗びきポンプ、フォアポンプを含む真空排気系と本考案を適用したときの真空ポンプ4RFP・真空排気系1との比較図であって、組合せの説明図である。4RFPは各種作動液を用いる真空ポンプ(油回転ポンプ・ロータリーポンプ、液封式ポンプ、渦巻ポンプ、他に拡散ポンプ)において作動液体を油類からをDES、NADES溶媒に置き換えたポンプ(4RFP)である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本願のNADESを用いる真空ポンプ4RFPは食品や医薬品の用途に利用できる。
【符号の説明】
【0043】
図1等>
1:深共晶溶媒DES・天然深共晶溶媒NADES等を作動液体として用いる真空ポンプ4RFPを含む真空排気系。
1LM:1のうちガリウムを含む作動液体を作動液体として用いる真空ポンプ4RFPを含む真空排気系。
1IL:1のうちイオン液体を作動液体として用いる真空ポンプ4RFPを含む真空排気系。
1DES:1のうち深共晶溶媒DES・天然深共晶溶媒NADESを作動液体として用いる真空ポンプ4RFPを含む真空排気系。
4:真空容器、(4D:ドーナツ状真空容器、4D-T:トカマク核融合炉に用いられる様な、ドーナツ状・トーラス型の真空容器、4T:チューブ・円筒状真空容器。)
*核融合炉用・実験用の真空容器は真空排気すべき容積が大きく、真空排気するためのポンプの廃棄速度が大きく、到達可能な蒸気圧が低い方が良いかもしれない。そこで本願では公知のオーソドックスなロータリーポンプ+油拡散ポンプやターボ分子ポンプの構成に加えて、イオン液体IL、DES・NADES、ガリウム・ガリウム合金、流体金属LMを作動流体に用いた真空排気ポンプ4P、4RFPを開示する。
4P:真空ポンプ。(真空容器4又は真空排気したい部分に対し真空引きするポンプ)
4RP:低真空ポンプ、粗びきポンプ(RP:油回転ポンプ等。この箇所は次の4RFPでもよい。)
4FP:高真空ポンプ、主ポンプ(DP:拡散ポンプ、TMP:ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、チタンゲッターポンプ等。この箇所は次の4RFPでもよい。)
4RFP:作動流体を用いるポンプ。スプレンゲルポンプ、油回転、液封、渦巻ポンプ。4RFPの作動流体は流体・流体金属(例:ガリウムを含む)・イオン液体・深共晶溶媒・天然深共晶溶媒。
4RFP-LM:液体ガリウム、又は液体のガリウム含有合金・金属を用いた高真空ポンプ4FP又はポンプ4RFP。本願実施例の1つ。
液体金属LM:ガリウム・ガリウム含有金属・ガリウム合金の他に、公知にはやリチウムLi、スズSn、リチウム鉛合金等があり核融合炉の内壁・ブランケットの液体金属ブランケットに用いられるものもある。冷却に用いられるナトリウムNaや、ガリウムGaより低融点だが水分大気との接触で発火の恐れのあるナトリウムカリウム合金NaK等もある。リチウム鉛は核融合炉において生じた中性子をリチウムに捕捉させトリチウムTを生じさせる。
4RFP-IL:(蒸気圧が10のー3乗であってもよい、)イオン液体の作動流体を用いた高真空ポンプ4FP又はポンプ4RFP。本願実施例の1つ。
4RFP-DES:DES又はNADESを作動流体に用いた真空ポンプ。本願実施例の1つ。
4RFP-REFI:イオン液体・深共晶溶媒の精製部・水分除去部または液入れ替え部。作動流体の品質を保つ部分。
4RFP-REFI-DES:DESの精製部・水分除去部または液入れ替え部。
DESの精製部・水分除去部または液入れ替え部に関連して、DESは親水性DESと疎水性DESがあり、本願では双方用いてよい。例えば疎水性DESは水相と接触すると相分離する(参考文献:J.Phys.Chem.B2022,126,2,513-527)ので、ポンプ作動中に内部に取り込んだ水分を疎水性DESと分離できうる。ポンプ4RFPで吸引したい物質の特性(親水性物質、疎水性物質、表面張力等)に合わせて親水DES、疎水DESを作動流体に用いてよい。
(DESは混合物を液化するまで加熱して室温に戻すか、混合物に水を加えて凍結乾燥するか、または混合物を粉砕して時間の経過とともに液化するペーストを形成することによって調製される。DESは前記のように精製・乾燥されてよい。)
イオン液体・高分子化イオン液体やDESには加熱等温度変化により含んでいた水を吐き出し・除去してよい。
4AOS: 4を大気開放する場合の接続先大気・空間。(4AOSは外部でよく、大気であったり、宇宙空間であるかもしれない。)
4MP:圧力計、真空計。ブルドン管圧力計、(マノメータ、)ダイヤフラム真空計、ベローズ真空計、マクラウド真空計、半導体技術を用いた圧力センサ素子、ピラニ真空計、電離真空計等の測定装置・素子。
図2
4RFP:作動流体を用いるポンプ。スプレンゲルポンプ、油回転、液封、渦巻ポンプ。作動流体:流体・流体金属・イオン液体・深共晶溶媒
4RFP-REFI:イオン液体・深共晶溶媒の生成部・水分除去部。作動流体の物質としての性能・性質・状態維持するための手段、作動流体のメンテナンス部。
4PCON:ポンプ制御部・コンピュータ(センサ等入力装置・記憶装置・処理装置・出力装置・通信装置など備えてよい。例えばスマートフォン・無線接続式コンピュータでもよい)
4RFP-SEN:センサ。作動流体の水分量・不純物量・液体の濁り具合等を測定する手段・センサを備えてよい。
N、FD、FDF、FDFDRY:真空引きされる内容物N、その例としてフリーズドライ食品・内容物
4AOS: 4を大気開放する場合の接続先大気Air、または、接続先が宇宙空間Outer Spaceの真空である場合の宇宙空間Space。
4MP:圧力計、真空計
図3
1:真空ポンプを用いた系。深共晶溶媒DES・天然深共晶溶媒NADES・イオン液体・ガリウムを含む流体金属を用いた真空ポンプ、真空排気系。
4:容器、真空容器。真空蒸着機・スパッタ装置の真空槽や、真空管、各種理化学機械器具、電子顕微鏡など真空応用測定機器、各種真空機器の真空槽・真空引きされる部分でもよい。
4D:環状の真空容器。4D-T:ドーナツ状真空容器、4D-Tは粒子加速器やプラズマを用いる核融合炉などの大型実験装置のの容器でもよい。ダイバータ4P-DVに排気ポートと4Pを連結してよい。例えば容積の大きい加速器やトカマク系核融合炉の真空容器の真空引きに用いてよい。本願ポンプ4RFP、4RFP-NADESは(本願の考案が実際に可能である場合には)作動流体により、液封ポンプ、ロータリーポンプ風に(安価かつ)大流量にて真空排気可能になるかもしれない。
4P:真空ポンプ・真空排気システム、
4RP:ラフポンプ。4FP:フォアポンプ。
4RFP:流体金属・イオン液体・深共晶溶媒を用いるポンプ(本願ポンプ)
4AOS: 外部大気・宇宙空間への開放先、
4MP:圧力計、真空計
VALV:バルブVALVE
【0044】
本願の考案、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。
【0045】
<書類名>要約書
<要約><課題>真空ポンプの作動流体を考案する。作動流体には水銀のように蒸気圧の高い液体金属や、生体に適合しない合成油等の作動流体があり、蒸気圧が低い作動流体や生体に適合し環境負荷の低い作動流体を検討した。
<解決手段>作動流体にガリウム・ガリウムを含む液体金属を提案する。またイオン液体、深共晶溶媒DES・天然深共晶溶媒NADESを作動流体に用いた真空ポンプを開示する。
<選択図>図2
<書類名>図面
図1図2図3図4
<請求の範囲>
<請求項PDES1>作動流体に深共晶溶媒DESを含む真空ポンプ。
<請求項PDES2>作動流体に天然深共晶溶媒NADESを含む請求項PDES1に記載の真空ポンプ。
<請求項PDES3>ロータリーポンプの作動流体に天然深共晶溶媒NADESを含む請求項PDES2に記載の真空ポンプ。
<請求項PDES4>液封ポンプの作動流体に天然深共晶溶媒NADESを含む請求項PDES2に記載の真空ポンプ。
<請求項PDES5>請求項PDES2に記載の真空ポンプを用いた真空引き・減圧工程を経て製造・加工された食品・医薬品・化学物質・包装・容器。
<請求項PIL1>ロータリーポンプの作動流体にイオン液体を用いる真空ポンプ。
(<請求項PIL2>液封ポンプの作動流体にイオン液体を用いるの真空ポンプ。)
<請求項PLM1>作動流体にガリウム・ガリウム合金を含む真空ポンプ。
<請求項PLM2>スプレンゲルポンプの作動流体・液体金属部にガリウム・ガリウム合金を含む請求項PLM1に記載の真空ポンプ。
<請求項PLM1>請求項PLM1に記載の真空ポンプを用いる半導体製造装置・真空容器。
図1
図2
図3
図4