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特開2024-139666ホウ素とミュオニック水素原子を用いるミューオン触媒核融合システム
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  • 特開-ホウ素とミュオニック水素原子を用いるミューオン触媒核融合システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139666
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ホウ素とミュオニック水素原子を用いるミューオン触媒核融合システム
(51)【国際特許分類】
   G21B 3/00 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
G21B3/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023174791
(22)【出願日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2023150635
(32)【優先日】2023-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023151787
(32)【優先日】2023-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】714009083
【氏名又は名称】西沢 克弥
(72)【発明者】
【氏名】西沢 克弥
(57)【要約】
【課題】公知のミューオン触媒核融合において、水素・重水素D・三重水素T等の核融合燃料物質でなく核融合後の生成物質であるヘリウムにミューオン(ミュオン)が付着・捕捉・トラップされ触媒核融合が停止する課題があった。ミューオンが核融合燃料物質でなく核融合後の生成物質に補足されミューオン触媒核融合反応が進みにくい問題を解決したいと考えた。また中性子を発生しにくい系も考案したい。
【解決手段】ミューオン触媒核融合において原子核が核融合する際に、核融合により生成した物質の原子核の電荷が、核融合燃料となる原子の原子核の電荷より小さい特徴を持つ、核融合反応系を用いる。具体的には核融合燃料に陽子とホウ素、若しくは陽子を水素分子としてホウ素とともに含むジボランを用いるミューオン触媒核融合系を提案する。また電気的に中性であるミュオニック水素原子と水素化ホウ素の混合物を作り、前記混合物を圧縮する系を開示する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核融合燃料は陽子(P1)とホウ素(B1)を含み、前記核融合燃料がミューオンを用いてミューオン触媒核融合反応又はミューオンを用いた核融合反応により核融合したのちに生成した原子・粒子はヘリウム・アルファ線である、ミューオン触媒核融合システムであって、
前記核融合燃料は水素化ホウ素を用いる、ミューオン触媒核融合システムであって、
ミューオン(M1)と陽子(P1)が結合し電気的に中和されたミュオニック水素原子を前記水素化ホウ素に投入・入射させ、ミュオニック水素原子と水素化ホウ素の混合物(MP1-XMB)を形成する特徴を持つ、ミューオン触媒核融合システムであって、
ミュオニック水素原子の照射手段(NBI)を用いて、ミュオニック水素原子を前記水素化ホウ素に投入・入射する特徴を持つ、ミューオン触媒核融合システムであって、
前記混合物(MP1-XMB)は第1の加圧手段(PUMP)により加圧される特徴を持つミューオン触媒核融合システムであって、
前記混合物(MP1-XMB)は第1の加圧手段(PUMP)により混合される特徴を持つミューオン触媒核融合システムであって、
前記混合物(MP1-XMB)は第2の加圧手段(PUMP)により第1の加圧手段による圧力よりも高い圧力になるように圧縮され加熱される特徴を持つミューオン触媒核融合システム。
【請求項2】
第2の加圧手段はラムジェットのラム部(RAM)を用いた圧縮部にて行われる特徴を有する、請求項1に記載のミューオン触媒核融合システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力に関連する考案・発明である。本発明はミューオン触媒核融合システムに関するものである。(アイデアによる出願であって、実証が必要である)
【背景技術】
【0002】
非特許文献1のようにミューオン触媒核融合方式(ミュオン触媒核融合)が公知である。
【0003】
重水素Dや三重水素Tを含む水素分子を液体とし、そこへミューオン(ミュオン)を投入しミュオンが核融合の触媒のようにふるまい核融合反応をさせる。しかし水素分子では核融合後の原子核の電荷が水素原子の+1からヘリウム原子の+2に増え、+2の電荷をもつ核・へリウム核・アルファ粒子核によりミューオンがクーロン力的に捕捉・トラップされて前記ミュオン触媒核融合が停止する(反応しにくくさせる)課題があった。
【0004】
非特許文献2によれば、陽子とホウ素を用いる熱核融合方式が公知である。熱核融合炉ではD-T、D-D反応で核融合炉を放射化させうる高エネルギーの中性子線が問題になっており、その解決の例として中性子を放出しない、しにくい、陽子とホウ素を用いる系(P-11B系、陽子ホウ素系)が検討されている。前記P-11B系を熱核融合炉で行う場合、熱核融合を起こさせる温度がD-T系より10倍高温にする必要がある課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】高エネルギー加速器研究機構KEK、ミュオン触媒核融合[インターネット、WEBページ、URL:https://www2.kek.jp/imss/msl/muon-tour/fusion.htmll、令和5年9月18日閲覧]
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献2】核融合科学研究所NIFS、先進的核融合燃料を使った核融合反応の実証- 中性子を生成しない軽水素ホウ素反応を利用したクリーンな核融合炉への第一歩 -[インターネットWEBページ、URL:https://www.nifs.ac.jp/news/researches/230309-01.html、令和5年9月18日閲覧]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、水素原子・水素分子を用いるミューオン触媒核融合の系において、ミューオンがクーロン力的に捕捉・トラップされて前記ミューオン触媒核融合が停止する(反応しにくくさせる)問題である。また、ミューオン核融合において重水素Dや三重水素T等を用いる系では核融合炉や核融合システムの部材を放射化する虞のある中性子が発生するが、中性子の発生しない系があってもよいかもしれない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ミューオン触媒核融合において核融合前の燃料物質である水素原子にミューオンを近づけて核融合させたいが、核融合後の原子核のヘリウム原子核は核融合前の水素原子核よりも電荷が増えてミューオンを捕捉しやすくなる。そこで本発明ではその電荷の変化を逆にする系として、陽子とホウ素を用いる系を実施例1として図1に開示する。またそれを搭載した宇宙船3・輸送機器3の想定例を図5に記載する。
【0009】
図5の意図として恒星間惑星間を航行する宇宙船や宇宙探査ロボット3は太陽光・恒星の光の届かない、惑星間・恒星間においても宇宙船に搭載された燃料を用いて発電や推進する事が求められうる。その動力源として、宇宙の真空環境を用い、粒子加速器を稼働させミューオンや陽子を生成させ核融合炉・核融合推進器を構成出来ればと考えた背景がある。
【0010】
また中性子が出る可能性はあるものの、本発明の別の視点での実施例(実施例2)として、陽子ホウ素を用いる系に限定しない例として、陽子とリチウムを用いる系等も開示する。リチウムの系を開示する意図としては、リチウムは融点がホウ素より低く、加熱して液体リチウムにしやすい。他方ホウ素を用いる系はホウ素の融点として摂氏2000度超える高温に加熱する必要がある。
【0011】
本発明は、陽子ホウ素による核融合反応系(P-11B系)において、核融合燃料となるホウ素の原子核の電荷が+5であり、核融合後に生じるヘリウムの電荷が+3であることに着目する。P-11B系はホウ素からヘリウムへと核融合反応する時に原子核の電荷が減少する系である。(*他方、D-T系は先述のように核融合後に電荷が増加する系でありトラップが起きる。)
【0012】
本願の図1では次の反応を想定している。(実証されていない)
1.+1の電荷をもつ陽子がー1の電荷をもつミューオンを補足した+5の電荷をもつホウ素原子核(ホウ素を含むミュオン分子)に入射し核融合反応する・反応を促す。
2.核融合により、1個の陽子と1個ホウ素から+3の電荷をもつ3個のヘリウム・アルファ線とエネルギーが生成される。
3.ミューオンは生成後の+3のヘリウムにトラップされるよりは、ミューオンの周囲に多量にバルクに存在する+5の電荷をもつホウ素にトラップされることを好む(電気的に引き寄せられる)と考える。
4.ミューオンはヘリウムよりはホウ素近傍に留まるようになり、ミュ‐オンをトラップしホウ素は(ミュオン分子化し陽子が電気的に接近しやすく核融合しやすくなり)入射した陽子により核融合してを繰り返し、陽子とホウ素による核融合反応をミューオンが触媒する。
【0013】
本発明又は考案では、陽子ホウ素による核融合反応系(P-11B系)において、核融合燃料となるホウ素が電荷が5(+5)であり、核融合後に生じるヘリウムの電荷が3(+3)であるから、ミューオンと陽子をホウ素のターゲットに照射しミューオン触媒核融合を起させようとする系(図1)を提案する。
*本願はアイデアの段階であり実証はされていないが、P-11B系では燃料はホウ素の+5の電荷をもっており生成後のヘリウムの+2の電荷よりは負電荷のミューオンを強く補足・トラップしやすい系であると仮定して出願を行う。*この逆の系、公知の水素・D-T系ミューオン触媒核融合システムでは負電荷のミューオンはヘリウムに補足されやすい。
【0014】
*本願考案・発明は陽子ホウ素の核融合の系を例として示したが、発明の範囲を限定しないように、より一般的に本発明の条件を開示すると、原子核が融合する際に生成した物質の電荷が核融合燃料となる原子の電荷より小さい系であれば良いかもしれない。*例えば図2に記載のような反応式の系が考えられる。図2の例のようにホウ素BやリチウムLiを用いる系であってもよい。
【0015】
●本願のホウ素やリチウムは常温より加熱し液体として用いてよい。例えば液体リチウムを用いてよい。
既存のミューオン触媒核融合系では冷却された液体水素(融点は摂氏マイナス250度)を用いるが、それに対し液体リチウムは融点が摂氏180度程度であるので、液体水素に比べ液体リチウムのほうが液体化してミューオンのターゲット部に用いたいときに液体化しやすい利点があるかもしれない。
●ホウ素についても融点は摂氏2070度であり、沸点は4000度でリチウムと比べ温度は高いものの液体ホウ素としてミューオンと陽子が照射されるターゲット部に用いることができる。ターゲット部ではミューオン触媒核融合が原子核の電荷が+5のホウ素や+3のリチウムを核融合燃料として用い起きることを期待している。前記ミューオン触媒核融合後に原子核の電荷が+2であるヘリウム・アルファ線が生成され系より放出される。(ホウ素と陽子を用いる系は図1、陽子・中性子とリチウムを用いる系は図3に開示する。)
【0016】
本発明は原子核が前記核融合する際に生成した物質(図1のHe、アルファ線)の電荷が核融合燃料となる原子(図1のB)の電荷より小さい系をミューオン触媒核融合システムに用いることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、P-11B系の持つ中性子を放出しない核融合システムであって、核融合時に放射化された物質が出にくい可能性があるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1はホウ素と陽子を用いたミューオン触媒核融合システム1F-SYSの説明図である。
図2図2は原子核が核融合する際に、核融合により生成した物質の原子核の電荷が、核融合燃料となる原子の原子核の電荷より小さい特徴を持つ、核融合反応系の例である。(図2は説明の資料であって、図2に記載のすべての例が本願発明に用いられるわけではないが、該特徴を持つ反応系の例として記載する。例えば図2において陽子とホウ素、陽子とリチウムを用いる系がある。)
図3図3はリチウムと陽子を用いたミューオン触媒核融合システム1F-SYSの説明図である。
図4図4は既存のDやTを持ちいたミューオン触媒核融合方式と本願陽子とBやLiを用いたミューオン触媒核融合方式の比較説明図である。(図4上段D、Tによる方式、図4下段は本願の陽子とB、Liによる方式)
図5図5は本願1F-SYSを含む核融合反応炉1Rや核融合応用推進器1THとその応用例。*例えば、空中・宇宙空間・惑星間・恒星間を推進・移動する宇宙船3・探査ロボット3に1F-SYSが搭載されていてよい。宇宙船3は加速器によりミューオン・陽子・中性子を生成し核燃料のBやLiを採取保管し前記核融合反応させHeアルファ線等を3の後方に放出した反作用により推進させる宇宙船があってもよい。*3は宇宙船に限らず各種輸送機器、航空機・宇宙機、船舶・潜水艦、車両・自動車、ロボット、各種産業機械、宇宙探査ロボットでもよい。
図6図6はジボラン・水素化ホウ素を用いるミューオン触媒核融合システム1F-SYSの説明図である。(図1における陽子を照射する部分を除き、ターゲットT1をジボランにしたシステムの説明図である)
図7図7はラムジェット方式で加圧されるジボラン・水素化ホウ素部分を用いるミューオン触媒核融合システム1F-SYSの説明図である。
図8図8は圧縮部でジボラン等水素化ホウ素とミュオニック水素原子を混合し圧縮する系1F-SYS-MP1の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は実施例1である。ミューオン触媒核融合の前記トラップ問題に着目し、図1のM1やT1、B1に記載のように、ホウ素を用いるミューオン触媒核融合システムを考案した。図1の実際に利用する形態として太陽光の届かない惑星間・恒星間を移動する宇宙船や探査ロボット3の形態を図5に記載する。
【実施例0020】
図1は、燃料F1やターゲット部T1にホウ素を用いる本発明装置・システムの実施例の説明図である。
*本系はミューオンや陽子を用いるため、加速器等設備が必要になる点もある。加速器の駆動には真空を要する。宇宙空間に加速器を配置する場合は宇宙空間の真空を用いてよい。
【実施例0021】
図2は、燃料F1やターゲット部T1にリチウムを用いる本発明装置・システムの実施例の説明図である。
リチウムはホウ素より融点が低い。
【産業上の利用可能性】
【0022】
ホウ素やリチウム等の資源を確保する必要はあるものの、核融合による電源を作る事ができるかもしれない。本願発明は真空の必要な加速器などを用い、噴射速度が高くなると想定されるアルファ線を生じるので、図5のように真空である宇宙空間を航行する宇宙船の推進装置に用いてもよいかもしれない。
【符号の説明】
【0023】
図1図3
1F-SYS:ホウ素と陽子を用いる核融合反応を利用したミューオン触媒核融合システムの説明図。
M1:ミューオン生成手段、ミューオンを核融合燃料ターゲットT1に投入照射する手段。例:ミューオン生成可能な粒子加速器を用いた系
P1:陽子生成手段、陽子を核融合燃料ターゲットT1に投入照射する手段。例:陽子を加速しターゲットに打ち込み・照射可能な粒子加速器。ホウ素陽子核融合反応系における核融合燃料の要素。N1:中性子生成手段、中性子を核融合燃料ターゲットT1に投入照射する手段。例:中性子を加速しターゲットに打ち込み・照射可能な粒子加速器。A1:粒子加速器A1。
T1:核融合燃料を含むターゲット部。核融合燃料T1、F1。
B1:T1のうちホウ素を用いる部分。ホウ素ターゲット。ホウ素は溶融していてもよい。
L1:T1のうちリチウムを用いる部分。リチウムターゲット。リチウムは溶融した液体リチウムでもよい。
EX1:核融合後の生成物EX1。図1図3等においては核融合後に生成するヘリウムHe・アルファ線。
図5
1R:核融合炉である1F-SYS。1F-SYSを含む核融合炉。アルファ線のエネルギーを電力エネルギーに変換する発電部が備えられててもよい。
図5には明記されていないが、1F-SYS、1Rにより生じた核融合由来の電力を、ミューオン発生部M1や陽子発生部P1に供給し、ミューオンや陽子を発生させることに用いてよい。該電力を本発明のシステムやシステム各部の駆動に用いてよい。
1TH:1F-SYSを含む核融合応用推進装置、推力発生装置。
1TH-NZ: 1THのノズル部。核融合後の生成物EX1がエネルギー持つヘリウム、アルファ線であるときに前記アルファ線を放出するノズル部。推力偏向装置・ノズルでもよい。該アルファ線を推進剤に照射し、推進剤を加熱させ噴射してもよい。*1TH-NZとは別に、1Rで生じた電力を用いてイオン推進器や光子レーザーを放出した反動で推進する推進装置を稼働してもよい。
図6>ジボランB2H6を用いた系
BH1:ホウ素を含む物質であって、水素化ホウ素・ジボラン・ボランであるB1。ジボランであるT1、F1。ジボランのターゲット。ジボラン、BH1は気体、液体、流体、(固体)でもよい。(流体を用いた図7の構成も可能である)図6の系では水素・陽子を含むジボランを用いるので図1等に記載の陽子導入部P1が不要になる。
図7
1F-SYS-RAM:核融合システム。(公知のラムジェット部を持つ核融合燃料流体がクローズドループ系にて循環する系に、本願ジボランを用いる系を適用した場合の想定図)
RAM:ラムジェット式で圧縮する際のラム圧発生装置部。
PBH1:圧縮されたBH1部。圧縮されたジボラン流体部を持つミューオンのターゲット部。
FP:核融合反応部、ミューオン照射部。
FEEDC:システム内を循環するジボラン流体内のヘリウムを除去したり、余剰な物質を除去し、必要な物質、燃料となるジボランを追加する部分。フィードのコントロール部。燃料供給系、燃料制御系。ヘリウムHe除去部、ジボラン燃料供給部等
HX:熱交換器
ENEX:図中にはないが、アルファ線・核融合エネルギーを基に発電する装置部、発電部。システム内に含まれていてよい。
PUMP:圧縮機、ポンプ。システム内の流体を加圧し、圧縮し、循環させる。モーターなどで駆動される。(発電部より電力を得て駆動される)
M1:ミュオン発生部、ミュオン照射部。(発電部より電力を得て駆動される)
EX1:核融合後に生成した(除去必要な)ヘリウム。
【0024】
<その他>本願では核燃料物質(例:B、Li)の原子核の正電荷が核融合後生成物(例:He)よりも大きくなっている系を用いることで、負電荷をもつミューオンを核燃料物質の原子の原子核にとどめるようとしている。核融合生成物より核融合燃料にミューオンが位置するほうがクーロン力・電荷・電場・電気的に安定となる意図を持っている。
*例えばホウ素の系に、ホウ素よりも原子番号Zが大きい不純物がある場合、本願の考えに従うならば、ホウ素よりZの大きい不純物はミュオンをトラップし反応を停止させるかもしれない。(例えばジボランの原料にされる水素化ホウ素ナトリウムNaBH4を考えると、ナトリウムはZがホウ素より大きく、本願の考えによればミュオンはNaBH4中のNaにトラップされるはずである。)
【0025】
本願の考案、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。
【0026】
<<優先権を主張した出願による追記部分>>先の出願、特願2023-150635に対し次の項目を追加した。
【0027】
図1において陽子をホウ素に照射しているが、図6に示すように、予めホウ素と陽子・水素原子が結合したボラン、ジボランB2H6、水素化ホウ素をターゲット部T1に利用してよい。例えば液化した、液体のジボランを核融合燃料F1またはターゲットT1部に用いてよい。図6の系では水素・陽子を含むジボランを用いるので図1等に記載の陽子導入部P1が不要になる利点があるかもしれない。
【0028】
図7に、ジボランを加圧・圧縮・循環させミューオンを照射し核融合させようとする系1F-SYS-RAMを記載する。(図7図6の実施例・実施形態の1つである。)図7は公知のラムジェット部を持つ核融合燃料流体がクローズドループ系にて循環する系に、本願ジボランを用いる系を適用した場合の想定図である。
【0029】
図7の1F-SYS-RAM系内にあるジボランは圧縮機PUMPにより加圧、圧縮され循環している。加圧された流体のジボランは圧縮装置部RAMによりさらに圧縮され、圧縮されたBH1部(PBH1部)を形成する。
ミューオン照射部M1よりPBH1にミューオンが照射され、核融合を促す。(ジボランは圧縮されているため密度が高くなり、ミューオンと接触・近接・触れ合いやすくなり、前記触媒核融合反応が起きやすいことを期待している。)
【0030】
図7の系1F-SYS-RAMでは陽子とホウ素を水素とホウ素の結合したジボランとして共にシステムに供給できる利点がある。
陽子導入部P1が不要である上に、系への燃料の追加や系からのHeの除去(デガス)も可能である。(ヘリウムHe除去部、ジボラン燃料供給部等、フィードコントロール部FEEDCを利用)
【0031】
またホウ素より原子番号が大きい不純物の混入しやすさを考慮すると、固体ホウ素よりも、精製可能な気体のジボランのほうがよいかもしれない。(固体ホウ素は固体結晶として生成・精製・精錬が必要。)
本願段落0024で水素化ホウ素ナトリウムNaBH4を例として述べたように、本願は核融合燃料の原子番号より大きな原子番号の原子・核融合後生成物EX1あるいは燃料中不純物の存在を存在を好まないと考えられる。
【0032】
また本願の図1図3図6図7等の系ではミュ‐オンの進む先には核融合燃料の原子番号より大きな原子番号の原子・核融合後生成物EX1・不純物の存在を想定していない。例えばホウ素Bより原子番号の大きな大気分子原子(例えば窒素Nや酸素O)が存在しない前提である。仮に窒素Nが存在する場合、トラップされるかもしれない。本願構成は燃料とするホウ素(あるいはリチウムなどの他の候補元素・原子)よりも大きな原子番号の原子を避けるように配慮する必要があるかもしれない。
【0033】
<書類名>特許請求の範囲
<請求項1>核融合反応によって生成した原子・粒子の原子核の電荷が、核燃料物質の原子の原子核の電荷より小さい特徴を持つ、核融合反応系を用いる、ミューオン触媒核融合システム。
<請求項2>前記核融合燃料はホウ素又はリチウムを含み、前記核融合反応によって生成した原子・粒子はヘリウム・アルファ線である、請求項1に記載のミューオン触媒核融合システム。
<請求項3>前記燃料は液体又は流体の状態である請求項2に記載のミューオン触媒核融合システム。
<請求項4>核融合反応によって中性子を生じにくい特徴を持つ系であって、前記核融合燃料はホウ素・水素化ホウ素を用い、前記核融合反応によって生成した原子・粒子はヘリウム・アルファ線である、請求項1に記載のミュオン触媒核融合システム。
<書類名>要約書
<要約><課題>公知のミューオン触媒核融合において、水素・重水素D・三重水素T等の核融合燃料物質でなく核融合後の生成物質であるヘリウムにミューオンが付着・捕捉・トラップされ触媒核融合が停止する課題があった。ミューオンが核融合燃料物質でなく核融合後の生成物質に補足されミューオン触媒核融合反応が進みにくい問題を解決したいと考えた。また中性子を発生しにくい系も考案したい。
<解決手段>ミューオン触媒核融合において原子核が核融合する際に、核融合により生成した物質の原子核の電荷が、核融合燃料となる原子の原子核の電荷より小さい特徴を持つ、核融合反応系を用いる。具体的には核融合燃料に陽子とホウ素、若しくは陽子を水素分子としてホウ素とともに含むジボランを用いるミューオン触媒核融合系を提案する。
【0034】
<<優先権を主張した出願による追記部分>>先の出願、特願2023-150635及び特願2023-151787に対し次の項目を追加した。
【0035】
図8図5のP1とM1をミュオニック水素として同一の射線・ライン上で併せて・混ぜてターゲット部に導入する場合>
本願では図5のように、陽子P1とミューオンM1を同一の射線・ライン上で併せて・混ぜてターゲット部T1に照射することができる。図5のように粒子加速器A1を用いて、燃料の陽子P1と触媒となるミューオンM1を同一の射線・ライン上で併せて・混ぜてホウ素を含むターゲット部T1に照射することができる。
【0036】
また、本願では図5のように粒子加速器A1若しくは中性ビーム入射装置NBIを用いて、燃料の陽子P1と触媒となるミューオンM1(ミュオンM1)が結合して形成された電気的に中性であるミュオニック水素原子MP1(場合によりミュオニック水素原子2つからなる電気的に中性なミュオニック水素分子MP12も)をターゲット部T1の水素化ホウ素に照射・投入することができる。(又はMP1やMP12を水素化ホウ素と混ぜ込んでターゲット部に吹き込み圧縮することができる。)
そしてミュオニック水素原子MP1をターゲット部T1の加圧された水素化ホウ素に照射・投入している際に、投入中の経路又はターゲット部T1近傍にて、ミュオニック水素原子MP1と水素化ホウ素が加圧され、(さらにガス流体の内部でMP1と水素化ホウ素、MP12と水素化ホウ素は加圧により混ぜられることもでき、)ミュオニック水素原子と水素化ホウ素の混合体MP1-XBHが形成される。
ミュオニック水素原子と水素化ホウ素の混合体MP1-XBHはラム部(RAM)に加圧輸送され、ラム部にてさらに加圧・圧縮され圧縮された混合物PMP1-XMBとなる。ラム部で圧縮されたミュオニック水素原子MP1・MP12と水素化ホウ素の混合体MP1-XBH(圧縮された混合物PMP1-XMB)はミュオン触媒反応時の温度やミュオンと陽子・ホウ素の体積当たりの密度を増加され、ミュオン触媒核融合反応を促す事につながる。
またラムジェット方式でラム部を用いて前記混合体MP1-XMBを加圧・圧縮し高温にすることもできて、ミュオニック水素原子MP1・MP12と水素化ホウ素の混合体MP1-XBHはミュオン触媒反応時の温度やミュオンと陽子・ホウ素の体積当たりの密度を増加する事に加えて、温度の高い、分子や粒子の運動の盛んな条件でミュオン触媒反応を行わせることができる。本願ではミュオニック水素原子を用いミュオン触媒反応時の温度やミュオンと陽子・ホウ素の体積当たりの密度やミュオンと陽子やホウ素の熱運動を増加させ、ミュオン触媒核融合反応を促す。
【0037】
ミューオン単体(ミューオンビーム線)をホウ素の表面やリチウムの表面、あるいは水素化ホウ素のガス・流体の表面に照射した場合、負に帯電し、ミュオン同士で反発してしまい、ミュオンを一点に集めたり圧縮出来なくなる恐れがあるので、本願図8のようにミュオンを陽子ホウ素燃料の陽子と組みわせ電荷を中性子にして、前記圧縮しミュオンと陽子ホウ素燃料を一か所に高密度に集め、より多くのミュオンと燃料を近接させミュオン触媒核融合を促す。
*ミューオンの持つ負電荷の問題でミューオン同士では電気的に反発して一か所に圧縮しにくい虞があるが、ミューオンを(ホウ素陽子核融合にて燃料でもある)陽子・水素原子核と結合させミュオニック水素原子MP1(又はMP12)として電気的に中和することで、前記電気的に反発することなく、圧縮することができるようになる。
【0038】
水素化リチウムは融点が高く、通常は固体または液体で存在する。水素化ホウ素よりは水素化リチウムは気体にしにくい点がある。水素化リチウムや固体のホウ素では前記のように常温常圧では固体の為、常温常圧でガスである水素化ホウ素と比較して混ぜ合わせにくく、ラム部に圧送して圧縮することも難しいかもしれない。他方MP1やガスであるとみられるMP12とガスである水素化ホウ素は加圧等の手段、混合手段を用い、混ぜ合わせ、その後ラム部に向け加圧・圧送しさらに圧縮・断熱加熱することが可能である。
【0039】
公知のD-T反応ではミュオンが最大2個必要であるのに対し、リチウムと陽子では4つ、ホウ素では6つミュオンが必要になり、限られた空間内にミュオンと陽子・ホウ素を圧縮して閉じ込めることが必要かもしれない。公知のD-T反応系より、本願で検討するp-11B反応系のほうがミュオンと核融合燃料を混ぜて一か所に閉じ込めて高密度にして核融合燃料と反応させる必要があるかもしれない。
そこで、本願では電気的に中性な前記ミュオニック水素原子MP1と水素化ホウ素を用い、それらを混合し、圧縮し、一か所に閉じ込めて高密度にしてミュオン触媒核融合(若しくはミュオンによりアシストされた核融合)を起させることを試みる。
【0040】
<飛翔中ミュオン触媒核融合>
ミュオニック水素原子MP1は通常の陽子電子からなる水素原子よりもボーア半径が小さく・クーロン障壁が低く(又は量子力学的にトンネリングしやすく)他の原子に向けて飛翔し、他の原子と衝突・近接した際に核融合(飛翔中ミュオン触媒核融合)反応しやすい事が期待される。速度を持ちホウ素と衝突したミュオニック水素原子はその後エネルギーをもつアルファ線を生成するがそのアルファ線のエネルギーを用いて水素化ホウ素を加熱し、その水素化ホウ素が熱交換器HXを通るときに外部の蒸気発生器等に熱エネルギーを伝えて、該熱エネルギー・運動エネルギーは蒸気発生器からタービン発電機1PPに伝達され蒸気タービン発電機1PPを回転・稼働させ電力を生じさせて良い。
【0041】
図8において、ミュオニック水素原子MP1の源になる部分MP1若しくは中性粒子ビーム入射装置NBI・粒子加速器A1から水素化ホウ素(B2H6等)にて満たされた進路又は経路S1を通りノズル部NZを通り、ターゲット部T1・ラム部RAMに向かってMP1やMP1とホウ素の混合物MP1-XMBは進んでいく。その際に、ミュオニック水素原子MP1は進路S1上にある水素化ホウ素と反応してもよい。
*固体のホウ素、溶融したホウ素や固体液体の水素化リチウムの表面にMP1を入射した場合、その表面で核融合反応が起きエネルギーが生じることが期待でき本願の一つの例として固体や液体のホウ素や水素化リチウム・リチウムをターゲットT1とした際にミュオン触媒核融合を促進させることができてもよい。(但し図8や上記のようなMP1・MP12と水素化ホウ素の混合体・混合流体・混合気体MP1-XMBを圧縮し高密度・高温にして核融合を促す事はできないかもしれない。)
【0042】
記号等
図8
1F-SYS-MP1、1F-SYS-MP1-RAM:ミュオニック水素原子と燃料の混合物を用いる核融合システム
ミュオニック水素原子MP1:
AMP1:ミュオニック水素原子生成照射部(粒子加速器A1、中性粒子ビーム照射装置NBI等、MP1やMP12を生じ、入射・投入できるもの。)
S1:経路S1 (MP1と水素化ホウ素の混合有)
MP1-XMB:MP1と水素化ホウ素・ジボランの混合物
PMP1-XMB:RAM等の第2の圧縮手段により圧縮された混合物MP1-XMB
RAM:ラム部
NZ:ノズル部
1PP:蒸気タービン発電機
HX熱交換器、蒸気発生部、蒸気パイプ・冷却パイプ
【0043】
<請求項1>
核融合燃料は陽子(P1)とホウ素(B1)を含み、前記核融合燃料がミューオンを用いてミューオン触媒核融合反応又はミューオンを用いた核融合反応により核融合したのちに生成した原子・粒子はヘリウム・アルファ線である、ミューオン触媒核融合システムであって、
前記核融合燃料は水素化ホウ素を用いる、ミューオン触媒核融合システムであって、
ミューオン(M1)と陽子(P1)が結合し電気的に中和されたミュオニック水素原子を前記水素化ホウ素に投入・入射させ、ミュオニック水素原子と水素化ホウ素の混合物(MP1-XMB)を形成する特徴を持つ、ミューオン触媒核融合システムであって、
ミュオニック水素原子の照射手段(NBI)を用いて、ミュオニック水素原子を前記水素化ホウ素に投入・入射する特徴を持つ、ミューオン触媒核融合システムであって、
前記混合物(MP1-XMB)は第1の加圧手段(PUMP)により加圧される特徴を持つミューオン触媒核融合システムであって、
前記混合物(MP1-XMB)は第1の加圧手段(PUMP)により混合される特徴を持つミューオン触媒核融合システムであって、
前記混合物(MP1-XMB)は第2の加圧手段(PUMP)により第1の加圧手段による圧力よりも高い圧力になるように圧縮され(圧縮された混合物PMP1-XMBとなって)加熱される特徴を持つミューオン触媒核融合システム(図8、1SYS-MP1)。
<請求項2>
第2の加圧手段はラムジェットのラム部(RAM)を用いた圧縮部にて行われる特徴を有する、請求項1に記載のミューオン触媒核融合システム(図8、1SYS-MP1-RAM)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-11-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核融合反応によって生成した原子・粒子の原子核の電荷が、核融合燃料物質の原子・粒子の原子核の電荷より小さい特徴を持つ、前記核融合反応によって生成した原子・粒子と、前記核融合燃料物質の原子・粒子とを含む核融合反応系を用いるミューオン触媒核融合システムであって、
前記核融合燃料物質は前記ミューオン触媒核融合システムの動作時に固体ではない核融合燃料物質若しくは気体・液体・流体の核融合燃料物質を用いるミューオン触媒核融合システム。
【請求項2】
前記核融合燃料物質にミューオンを照射・投入する工程を有する、請求項1に記載のミューオン触媒核融合システム。
【請求項3】
原子核にミュオンが結合・付加した原子・粒子若しくはミュオニック原子を前記核融合燃料物質に投入・入射させる特徴を持つ、請求項1に記載のミューオン触媒核融合システム。
【請求項4】
ミューオンまたはミュオニック原子を前記核融合燃料物質に投入・入射させた後、前記核融合燃料物質は加圧手段により加圧される特徴を持つ請求項1に記載のミューオン触媒核融合システム。
【請求項5】
ミューオンまたはミュオニック原子を前記核融合燃料物質に投入・入射させた後、前記核融合燃料物質は加圧手段により混合される特徴を持つ請求項1に記載のミューオン触媒核融合システム。
【請求項6】
前記核融合燃料物質は第1の加圧手段により加圧された後、第2の加圧手段により加圧・圧縮される特徴を持つ請求項5に記載のミューオン触媒核融合システム。
【請求項7】
前記核融合燃料物質は水素化ホウ素を含み、前記核融合燃料物質がミューオン触媒核融合反応したのちに生成した原子・粒子はヘリウム・アルファ線である、請求項1に記載のミューオン触媒核融合システム。
【請求項8】
前記核融合燃料物質は陽子(P1)とホウ素(B1)を含み、前記核融合燃料物質がミューオンを用いてミューオン触媒核融合反応又はミューオンを用いた核融合反応により核融合したのちに生成した原子・粒子はヘリウム・アルファ線である、ミューオン触媒核融合システムであって、
前記核融合燃料物質は水素化ホウ素を用いる、ミューオン触媒核融合システムであって、
ミューオン(M1)と陽子(P1)が結合し電気的に中和されたミュオニック水素原子を前記水素化ホウ素に投入・入射させ、ミュオニック水素原子と水素化ホウ素の核融合燃料物質の混合物(MP1-XMB)を形成する特徴を持つ、ミューオン触媒核融合システムであって、
ミュオニック水素原子の照射手段若しくは中性粒子ビーム入射装置(NBI)を用いて、ミュオニック水素原子を前記水素化ホウ素に投入・入射する特徴を持つ、請求項1に記載のミューオン触媒核融合システム
【請求項9】
前記混合物(MP1-XMB)は第1の加圧手段により加圧される特徴を持つミューオン触媒核融合システムであって、
前記混合物(MP1-XMB)は第1の加圧手段により混合される特徴を持つ請求項8に記載のミューオン触媒核融合システム
【請求項10】
前記混合物(MP1-XMB)は第2の加圧手段により第1の加圧手段による圧力よりも高い圧力になるように圧縮され加熱される特徴を持つ請求項9に記載のミューオン触媒核融合システム。