(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139669
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
H01L21/68 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023189813
(22)【出願日】2023-11-07
(62)【分割の表示】P 2023049637の分割
【原出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】池口 雅文
(72)【発明者】
【氏名】下園 直輝
(72)【発明者】
【氏名】片山 宝
(72)【発明者】
【氏名】新美 泰之
(72)【発明者】
【氏名】宮本 悠雅
(72)【発明者】
【氏名】上藤 淳平
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131AA33
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA23
5F131CA03
5F131CA18
5F131EA03
5F131EA04
5F131EA05
5F131EB11
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
5F131EB84
5F131EB85
(57)【要約】
【課題】誘電体基板に内蔵された導体層への給電を安定して行うことのできる静電チャック、を提供する。
【解決手段】静電チャック10は、誘電体基板100と、誘電体基板100に内蔵された吸着電極130と、誘電体基板100の面120に設けられた電極端子50と、吸着電極130と電極端子50との間を電気的に接続するビア部40と、を備える。ビア部40の単位体積あたりにおけるアルミナの含有量は、吸着電極130のうちビア部40が接続されている部分とその近傍とを除く部分、の単位体積あたりにおけるアルミナの含有量よりも多い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板に内蔵された導体層と、
前記誘電体基板のうち前記載置面とは反対側となる位置に設けられた電極部と、
前記導体層と前記電極部との間を電気的に接続するビア部と、を備え、
前記誘電体基板は所定材料を含み、
前記ビア部の単位体積あたりにおける前記所定材料の含有量は、
前記導体層のうち前記ビア部が接続されている部分とその近傍とを除く部分、の単位体積あたりにおける前記所定材料の含有量よりも多いことを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板に内蔵された導体層と、
前記誘電体基板のうち前記載置面とは反対側となる位置に設けられた電極部と、
前記導体層と前記電極部との間を電気的に接続するビア部と、を備え、
前記誘電体基板は所定材料を含み、
前記導体層のうち前記ビア部が接続されている部分とその近傍とを含む部分のことを第1部分とし、
前記導体層のうち前記第1部分の周囲にある部分のことを第2部分としたときに、
前記第1部分の単位体積あたりにおける前記所定材料の含有量は、
前記第2部分の単位体積あたりにおける前記所定材料の含有量よりも多いことを特徴とする静電チャック。
【請求項3】
前記第1部分における前記導体層の厚さは、前記ビア部に近づくに従って厚くなっていることを特徴とする、請求項2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記所定材料はアルミナであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばCVD装置やエッチング装置のような半導体製造装置には、処理の対象となるシリコンウェハ等の基板を吸着し保持するための装置として、静電チャックが設けられる。静電チャックは、吸着電極が設けられた誘電体基板と、誘電体基板を支持するベースプレートと、を備え、これらが互いに接合された構成を有する。吸着電極に電圧が印加されると静電力が生じ、誘電体基板上に載置された基板が吸着され保持される。
【0003】
誘電体基板の内部には導体層が埋め込まれる。導体層は、例えば上記の吸着電極であるが、電気ヒーターやRF電極等であってもよい。誘電体基板のうち載置面とは反対側となる位置には、導体層への給電を行うための電極部(例えば電極端子)が設けられる。下記特許文献1に示されるように、導体層と電極部との間は、誘電体基板の内部に設けられた電路によって電気的に接続される。
【0004】
上記電路としては、誘電体基板100において載置面とは垂直な方向に伸びるように形成された穴(ビア)の内側に、例えばタングステンのような導電性の材料を充填した構成のものが採用されることが多い。このような構成の電路のことを、以下では「ビア部」とも称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
導体層やビア部を構成する材料の熱膨張係数と、誘電体基板を構成する材料の熱膨張係数とは、互いに異なる。このため、誘電体基板の焼成時や、静電チャックの使用時等においては、両者の熱膨張係数の差に起因して、導体層から電極部までの電路の途中において断線等の不具合が生じ、導体層への給電が適切に行われなくなってしまう可能性がある。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、誘電体基板に内蔵された導体層への給電を安定して行うことのできる静電チャック、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る静電チャックは、被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、誘電体基板に内蔵された導体層と、誘電体基板のうち載置面とは反対側となる位置に設けられた電極部と、導体層と電極部との間を電気的に接続するビア部と、を備える。誘電体基板は所定材料を含む。ビア部の単位体積あたりにおける所定材料の含有量は、導体層のうちビア部が接続されている部分とその近傍とを除く部分、の単位体積あたりにおける所定材料の含有量よりも多い。
【0009】
このような構成の静電チャックでは、ビア部が、誘電体基板と共通の「所定材料」を含んでいる。所定材料は導体層にも含まれていてもよいが、いずれにしても、ビア部では、導体層に比べてより多くの所定材料を含んでいる。熱膨張に伴う断線等が最も生じやすい部分であるビア部の熱膨張係数が、その周囲にある誘電体基板の熱膨張係数に近い値となるため、断線等の発生を抑制することができる。尚、所定材料を導体層に過剰に含ませる必要が無いので、導体層の性能が低下してしまうことは無い。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る静電チャックは、被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、誘電体基板に内蔵された導体層と、誘電体基板のうち載置面とは反対側となる位置に設けられた電極部と、導体層と電極部との間を電気的に接続するビア部と、を備える。誘電体基板は所定材料を含む。導体層のうちビア部が接続されている部分とその近傍とを含む部分のことを第1部分とし、導体層のうち第1部分の周囲にある部分のことを第2部分としたときに、第1部分の単位体積あたりにおける所定材料の含有量は、第2部分の単位体積あたりにおける所定材料の含有量よりも多い。
【0011】
このような構成の静電チャックでは、導体層のうちビア部が接続されている部分とその近傍とを含む第1部分が、誘電体基板と共通の「所定材料」を含んでいる。所定材料は導体層のうちの他の部分である第2部分にも含まれていてもよいが、いずれにしても、第1部分では、第2部分に比べてより多くの所定材料を含んでいる。
【0012】
導体層のうち、熱膨張に伴う断線等が最も生じやすい部分である第1部分の熱膨張係数が、その周囲にある誘電体基板の熱膨張係数に近い値となるため、断線等の発生を抑制することができる。尚、所定材料を、第2部分を含む導体層の全体に過剰に含ませる必要が無いので、導体層の性能が低下してしまうことは無い。
【0013】
また、本発明に係る静電チャックでは、第1部分における導体層の厚さは、ビア部に近づくに従って厚くなっていることも好ましい。導体層のうち、熱膨張に伴う断線等が最も生じやすい部分であるビア部近傍の部分を厚くしておくことで、断線等の発生を更に抑制することができる。
【0014】
また、本発明に係る静電チャックでは、所定材料はアルミナであることも好ましい。誘電体基板の材料として広く採用されているアルミナを、誘電体基板とビア部(又は、誘電体基板と第1部分)の両方に含有させることにより、断線等の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、誘電体基板に内蔵された導体層への給電を安定して行うことのできる静電チャック、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る静電チャックの構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】ビア部等の具体的な構成を示す斜視図である。
【
図3】ビア部等の具体的な構成を示す断面図である。
【
図4】ビア部等の形成方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0018】
本実施形態に係る静電チャック10は、例えばCVD成膜装置のような不図示の半導体製造装置の内部において、処理対象となる基板Wを静電力によって吸着し保持するものである。基板Wは、例えばシリコンウェハである。静電チャック10は、半導体製造装置以外の装置に用いられてもよい。
【0019】
図1には、基板Wを吸着保持した状態の静電チャック10の構成が、模式的な断面図として示されている。静電チャック10は、誘電体基板100と、ベースプレート200と、接合層300と、を備える。
【0020】
誘電体基板100は、セラミック焼結体からなる略円盤状の部材である。誘電体基板100は、例えば高純度のアルミナ(Al2O3)を含むが、他の材料を含んでもよい。誘電体基板100におけるセラミックスの純度や種類、添加物等は、半導体製造装置において誘電体基板100に求められる耐プラズマ性等を考慮して、適宜設定することができる。
【0021】
誘電体基板100のうち
図1における上方側の面110は、被吸着物である基板Wが載置される「載置面」となっている。また、誘電体基板100のうち
図1における下方側の面120(つまり、面110とは反対側の面120)は、後述の接合層300を介してベースプレート200に接合される「被接合面」となっている。面110に対し垂直な方向に沿って、面110側から静電チャック10を見た場合の視点のことを、以下では「上面視」のようにも表記する。
【0022】
誘電体基板100の内部には、吸着電極130が埋め込まれている。吸着電極130は、例えばタングステン等の金属材料により形成された薄い平板状の導体層であり、面110に対し平行となるように配置されている。吸着電極130の材料としては、タングステンの他、モリブデン、白金、パラジウム等を用いてもよい。尚、吸着電極130は、概ね全体が面110に対し平行となっていればよく、一部において、面110に対し平行ではない部分を含んでいてもよい。後述のビア部40を介して外部から吸着電極130に電圧が印加されると、面110と基板Wとの間に静電力が生じ、これにより基板Wが吸着保持される。吸着電極130は、所謂「双極」の電極として本実施形態のように2つ設けられていてもよいが、所謂「単極」の電極として1つだけ設けられていてもよい。
【0023】
それぞれの吸着電極130に対応して、面120には電極端子50が埋め込まれている。電極端子50と吸着電極130との間は、誘電体基板100の内部に設けられたビア部40によって電気的に接続されている。それぞれの電極端子50には給電路13の一端が接続されている。給電路13は導電性の金属部材(例えばバスバー)であって、ベースプレート200に設けられた不図示の貫通穴を通じて外部へと引き出されている。当該貫通穴の内面と給電路13との間には、例えば円筒状の絶縁部材が設けられていてもよい。電極端子50は、誘電体基板100のうち面110とは反対側となる位置において、外部からの給電を受ける部分となっている。電極端子50は、本実施形態における「電極部」に該当する。
【0024】
ビア部40、電極端子50、及び給電路13は、吸着電極130に電圧を印加するための電路を構成している。
図1においては、ビア部40等の構成が簡略化して描かれている。ビア部40の具体的な構成については後に説明する。
【0025】
誘電体基板100と基板Wとの間には空間SPが形成されている。半導体製造装置において成膜等の処理が行われる際には、空間SPには、誘電体基板100に形成された不図示のガス穴を介して外部から温度調整用のヘリウムガスが供給される。誘電体基板100と基板Wとの間にヘリウムガスを介在させることで、両者間の熱抵抗が調整され、これにより基板Wの温度が適温に保たれる。尚、空間SPに供給される温度調整用のガスは、ヘリウムとは異なる種類のガスであってもよい。
【0026】
吸着面である面110上にはシールリング111やドット112が設けられており、空間SPはこれらの周囲に形成されている。
【0027】
シールリング111は、最外周となる位置において空間SPを区画する壁である。それぞれのシールリング111の上端は面110の一部となっており、基板Wに当接する。尚、空間SPを分割するように複数のシールリング111が設けられていてもよい。このような構成とすることで、それぞれの空間SPにおけるヘリウムガスの圧力を個別に調整し、処理中における基板Wの表面温度分布を均一に近づけることが可能となる。
【0028】
図1等において符号「116」が付されている部分は、空間SPの底面である。以下では、当該部分のことを「底面116」とも称する。シールリング111は、次に述べるドット112と共に、面110の一部を底面116の位置まで掘り下げた結果として形成されている。底面116には、ヘリウムガスを空間SP内で素早く拡散させるための溝が形成されていてもよい。
【0029】
ドット112は、底面116から突出する円形の突起である。ドット112は複数設けられており、誘電体基板100の吸着面において略均等に分散配置されている。それぞれのドット112の上端は、面110の一部となっており、基板Wに当接する。このようなドット112を複数設けておくことで、基板Wの撓みが抑制される。
【0030】
ベースプレート200は、誘電体基板100を支持するために、誘電体基板100の面120に接合される略円盤状の部材である。ベースプレート200は、例えばアルミニウムのような金属により形成されている。ベースプレート200のうち、
図1における上方側の面210は、接合層300を介して誘電体基板100に接合される「被接合面」となっている。面210を含むベースプレート200の表面は、例えばアルミナ溶射膜のような絶縁膜で覆われていてもよい。
【0031】
接合層300は、誘電体基板100とベースプレート200との間に設けられた層であって、両者を接合している。接合層300は、絶縁性の材料からなる接着材を硬化させたものである。このような接着剤としては、例えばシリコーン系の接着剤を用いることができる。
【0032】
ベースプレート200の内部には、冷媒を流すための冷媒流路250が形成されている。半導体製造装置において成膜等の処理が行われる際には、外部から冷媒が冷媒流路250に供給され、これによりベースプレート200が冷却される。処理中において基板Wで生じた熱は、空間SPのヘリウムガス、誘電体基板100、及びベースプレート200を介して冷媒へと伝えられ、冷媒と共に外部へと排出される。
【0033】
誘電体基板100のうち、ビア部40及びその近傍部分の具体的な構成について説明する。
図2には、当該部分の構成が模式的な斜視図として示されている。
図3には、当該部分の構成が模式的な断面図として示されている。
【0034】
図2に示されるように、本実施形態では、1つの電極端子50と吸着電極130との間が、2本のビア部40によって接続されている。このような態様に換えて、1つの電極端子50に繋がるビア部40の数を1本のみとしてもよく、3本以上としてもよい。
【0035】
それぞれのビア部40は、誘電体基板100に形成された穴(ビア)の内側に、例えばタングステンのような導電性の材料を充填することにより形成されている。当該穴のことを、以下では「ビア150」とも称する。ビア150は略円柱形状の穴であって、面110とは垂直な方向に伸びるように形成されている。ビア部40は、ビア150の内部に配置された導電性の部材として構成されたものとなっている。
【0036】
誘電体基板100の面120には、不図示の凹部が形成されており、電極端子50は、当該凹部の中に埋め込まれた状態で保持されている。電極端子50は略円柱形状の金属端子である。電極端子50の中心軸は、面110や面120に対して垂直である。
図2において符号「51」が付されているのは、上記の凹部の底面を覆うように設けられたろう材であって、例えば銀ろうである。電極端子50は、このろう材51を介して、誘電体基板100の凹部に固定されている。ろう材51は、ビア部40等と共に、吸着電極130に給電を行うための電路の一部を構成している。
【0037】
電極端子50に替えて、ろう材51の位置に薄い金属板を設けた上で、外部から挿入された棒状のピンを当該金属板に当接させる構成としてもよい。この場合は、上記の金属板が「電極部」に該当することとなる。
【0038】
図3には、誘電体基板100のうちビア部40及びその近傍の部分を、ビア部40の中心軸を含む面に沿って切断した場合の断面が示されている。同図に示されるように、吸着電極130の厚さは全体において一様とはなっていない。ビア部40が接続されている部分やその近傍においては、吸着電極130の厚さは局所的に大きくなっている。尚、ここでいう「厚さ」とは、面110に対し垂直な方向に沿った寸法のことである。
【0039】
説明の便宜上、吸着電極130のうち
図3の点線DL1で囲まれている部分のことを、以下では「被接続部130A」とも称する。また、吸着電極130のうち
図3の点線DL2で囲まれている部分のことを、以下では「中間部130B」とも称する。更に、吸着電極130のうち
図3の点線DL3で囲まれている部分のことを、以下では「周縁部130C」とも称する。
【0040】
被接続部130Aは、吸着電極130のうちビア部40が接続されている部分である。被接続部130Aは、吸着電極130のうち上面視においてビア部40と重なる部分、ということもできる。
【0041】
中間部130Bは、吸着電極130のうち被接続部130Aの近傍の部分である。上面視において、中間部130Bは、被接続部130Aの周囲を円形に囲んでいる。
図3に示されるように、中間部130Bにおいては、被接続部130Aに近づくに従って吸着電極130が次第に厚くなっている。
【0042】
周縁部130Cは、吸着電極130のうち、上記の被接続部130A及び中間部130Bを除く部分である。周縁部130Cにおいては、吸着電極130の厚さは全体において概ね一様となっている。周縁部130Cにおける吸着電極130の厚さは、被接続部130Aにおける吸着電極130の厚さよりも小さい。先に述べた中間部130Bは、互いに厚さの異なる被接続部130Aと周縁部130Cとの間において、位置により厚さを変化させることによって両者を滑らかに繋いでいる。
【0043】
先に述べたように、誘電体基板100は高純度のアルミナを含むセラミック焼結体である。また、誘電体基板100に内蔵された吸着電極130及びビア部40はいずれも、タングステン等の金属材料により形成されている。このような構成においては一般的に、吸着電極130やビア部40を構成する材料の熱膨張係数と、誘電体基板100を構成する材料の熱膨張係数とは、互いに異なるものとなる。このため、誘電体基板100の焼成時や、静電チャック10の使用時(つまり、基板Wの処理時)等においては、誘電体基板100とビア部40等との間の熱膨張係数の差に起因して、導体層から電極部までの電路の途中において断線等の不具合が生じてしまうことが懸念される。
【0044】
そこで、本実施形態では、誘電体基板100が含む材料と同一の材料を、ビア部40や吸着電極130に含有させている。これにより、ビア部40等の熱膨張係数を、誘電体基板100の熱膨張係数に近づけることで、上記のような断線等の発生を抑制している。
【0045】
ビア部40等に含ませてある上記材料、すなわち、「誘電体基板100が含む材料と同一の材料」とは、誘電体基板100を構成する材料と同一の組成を有する材料のことであり、本実施形態において具体的にはアルミナである。
【0046】
上記のように、熱膨張係数の調整を目的として吸着電極130等に含ませてある材料であって、誘電体基板100にも含まれている材料のことを、以下では「調整材料」とも称する。例えば、誘電体基板100と同一の材料からなる部材を、所定の大きさの粒子状とした上で、複数の当該粒子を、調整材料として吸着電極130及びビア部40のそれぞれに含ませればよい。
【0047】
吸着電極130及びビア部40の各部において、単位体積あたりにおける調整材料の含有量は全体で一様とはなっておらず、場所によって異なっている。ここでいう「含有量」とは、例えば質量のことであるが、体積のことであってもよい。
【0048】
本実施形態では、ビア部40の単位体積あたりにおける調整材料の含有量が、吸着電極130のうちビア部40が接続されている部分とその近傍とを除く部分、の単位体積あたりにおける調整材料の含有量よりも多くなっている。「吸着電極130のうちビア部40が接続されている部分とその近傍とを除く部分」とは、周縁部130Cのことである。
【0049】
調整材料の含有量が上記のように調整された構成においては、ビア部40が、誘電体基板100と共通の調整材料(アルミナ)を多く含有している。周縁部130Cにおける調整材料の含有量は0であってもよいが、周縁部130Cが少量の調整材料を含有していてもよい。いずれにしても、ビア部40では、周縁部130Cに比べてより多くの調整材料を含んでいる。
【0050】
熱膨張に伴う断線等が最も生じやすい部分であるビア部40の熱膨張係数が、その周囲にある誘電体基板100の熱膨張係数に近い値となるため、断線等の発生を抑制することができる。尚、吸着電極130のうち大部分を占めている周縁部130Cには、調整材料を過剰に含ませる必要が無いので、吸着電極130の性能が低下してしまうことは無い。
【0051】
ここで、吸着電極130のうちビア部40が接続されている部分である被接続部130Aと、その近傍の部分である中間部130Bと、を合わせた全体のことを、以下では「第1部分」とも称する。吸着電極130のうち第1部分の周囲にある部分、すなわち周縁部130Cのことを、以下では「第2部分」とも称する。本実施形態では、第1部分(被接続部130A、中間部130B)の単位体積あたりにおける調整材料の含有量が、第2部分(周縁部130C)の単位体積あたりにおける調整材料の含有量よりも多くなっている。第1部分(被接続部130A、中間部130B)の単位体積あたりにおける調整材料の含有量は、ビア部40の単位体積あたりにおける調整材料の含有量に概ね等しい。
【0052】
調整材料の含有量が上記のように調整された構成においては、吸着電極130の第1部分(被接続部130A、中間部130B)が、誘電体基板100と共通の調整材料(アルミナ)を多く含有している。先に述べた通り、周縁部130Cにおける調整材料の含有量は0であってもよいが、周縁部130Cが少量の調整材料を含有していてもよい。いずれにしても、第1部分(被接続部130A、中間部130B)では、第2部分(周縁部130C)に比べてより多くの調整材料を含有している。
【0053】
吸着電極130のうち、熱膨張に伴う断線等が最も生じやすい部分である第1部分の熱膨張係数が、その周囲にある誘電体基板100の熱膨張係数に近い値となるため、断線等の発生を抑制することができる。
【0054】
本実施形態では上記のように、(1)ビア部40における調整材料の含有量が、周縁部130Cにおける調整材料の含有量よりも多くなっている構成と、(2)第1部分における調整材料の含有量が、第2部分における調整材料の含有量よりも多くなっている構成と、の両方を採用している。このような態様に換えて、上記(1)及び(2)のうちいずれか一方のみの構成を採用してもよい。
【0055】
例えば、ビア部40の単位体積あたりにおける調整材料の含有量が、周縁部130Cの単位体積あたりにおける調整材料の含有量よりも多くなっている一方で、第1部分(被接続部130A、中間部130B)の単位体積あたりにおける調整材料の含有量が、周縁部130Cの単位体積あたりにおける調整材料の含有量と同程度となっている構成としてもよい。この場合、断線等を抑制する効果は、本実施形態に比べると低下するが、従来に比べて一定程度の抑制効果を得ることができる。
【0056】
先に述べたように、第1部分のうち中間部130Bにおける吸着電極130の厚さは、ビア部40側に近づくに従って厚くなっている。吸着電極130のうち、熱膨張に伴う断線等が最も生じやすい部分であるビア部40近傍の部分を厚くしておくことで、断線等の発生を更に抑制することが可能となっている。
【0057】
上記のような構成の吸着電極130やビア部40等を形成する方法について、
図4を参照しながら説明する。本実施形態の誘電体基板100は、複数枚のグリーンシート101を積層し加圧することにより得られる成形体を、焼成することにより製造される。
【0058】
図4(A)に示されるように、一部のグリーンシート101には、ビア150が予め形成されており、それぞれのビア150の位置が上下に重なるようにグリーンシート101が積層される。その後、一列に並ぶビア150の内側に、ビア部40の材料である導電性ペーストが充填される。当該ペーストは、最上段のグリーンシート101の上面Sよりも、更に上方側に向けて盛り上がった状態とされる。
図4(A)においては、導電性ペーストのうち上面Sよりも盛り上がっている部分に、符号「41」が付されている。当該部分のことを、以下では「盛り上げ部41」とも称する。盛り上げ部41を含む導電性ペーストの全体には、所定量の調整材料(アルミナ)を予め一様に含有させてある。上面視において、盛り上げ部41はビア150の外側まで広がっている。
【0059】
図4(A)の上面Sに対し積層されるグリーンシート101Aのうち、上面Sに対向する面には、吸着電極130となる導電性ペーストが予め塗布される。この導電性ペーストには、調整材料(アルミナ)が含有されていないが、僅かに含有されていてもよい。いずれの場合であっても、ビア部40となる導電性ペーストの、単位体積当たりにおける調整材料の含有量は、吸着電極130となる導電性ペーストの、単位体積当たりにおける調整材料の含有量よりも多くなっていることが好ましい。
【0060】
その後、グリーンシート101Aが上面Sに重ねられ、積層体の全体が加圧される。
図4(B)には、加圧が完了した状態における積層体の断面が示されている。
【0061】
このとき、上面Sのうち盛り上げ部41で覆われていた部分は、盛り上げ部41を挟み込んで加圧された結果として、矢印AR1で示されるように凹状に変形する。これにより、その上方側には中間部130Bが形成される。
【0062】
グリーンシート101Aに塗布されていた導電性ペースト(吸着電極130となる部分)は、加圧時において盛り上げ部41と一体となる。このため、当該導電性ペーストにおける調整材料の含有量は、盛り上げ部41と一体となった部分においては局所的に多くなり、ビア部40における調整材料の含有量と概ね同程度になる。
【0063】
その結果、本実施形態では先に述べたように、第1部分(被接続部130A、中間部130B)の単位体積あたりにおける調整材料の含有量が、第2部分(周縁部130C)の単位体積あたりにおける調整材料の含有量よりも多くなる。また、ビア部40の単位体積あたりにおける調整材料の含有量が、周縁部130Cの単位体積あたりにおける調整材料の含有量よりも多くなる。
【0064】
ビア部40を介して給電を受ける「導体層」は、本実施形態のように吸着電極130であってもよいが、他の目的で設けられた層であってもよい。例えば、導体層はRF電極であってもよく、電気ヒーター等であってもよい。
【0065】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0066】
W:基板
10:静電チャック
40:ビア部
50:電極端子
100:誘電体基板
110,120:面
130:吸着電極
130A:被接続部
130B:中間部
130C:周縁部