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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013967
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/18 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
B66B1/18 N
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116457
(22)【出願日】2022-07-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒向 一徳
【テーマコード(参考)】
3F502
【Fターム(参考)】
3F502HB10
3F502HB14
3F502JA23
3F502JA72
3F502KA11
(57)【要約】
【課題】エレベータの輸送効率の低下を抑えつつ、エレベータ内での感染対策をとる。
【解決手段】エレベータに対する新規の呼び登録を要求するユーザーである新規ユーザーの感染リスク情報を取得する取得手段と、新規の呼びに対応して、複数のかご夫々に、感染リスク情報に応じた重みを決定する重み決定手段と、複数のかご夫々の新規の呼びに対応する重みと、複数のかご夫々に割り当て済みの呼びに対応する重みと、に基づいて、複数のかごの中から、新規の呼びに対して割り当てるかごを決定する割当手段と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータに対する新規の呼び登録を要求するユーザーである新規ユーザーの感染リスク情報を取得する取得手段と、
前記新規の呼びに対応して、複数のかご夫々に、前記感染リスク情報に応じた重みを決定する重み決定手段と、
前記複数のかご夫々の前記新規の呼びに対応する重みと、前記複数のかご夫々に割り当て済みの呼びに対応する重みと、に基づいて、前記複数のかごの中から、前記新規の呼びに対して割り当てるかごを決定する割当手段と、
を備えるエレベータシステム。
【請求項2】
前記エレベータの乗場に設置され、前記新規ユーザーの情報を読み取り可能な読取手段を、更に備え、
前記取得手段は、前記読取手段と通信可能に接続されて、前記読取手段によって取得された情報から、前記新規ユーザーの前記感染リスク情報を取得する
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記エレベータの乗場に設置され、前記新規ユーザーの情報を読み取り可能な読取手段と、
前記エレベータを利用するユーザー夫々を特定可能な利用者情報と、前記ユーザー夫々の感染リスク情報とを対応づけて記憶する記憶手段と、
を更に備え、
前記取得手段は、
前記読取手段によって取得された情報から、前記新規ユーザーを特定可能な利用者情報を取得して、
前記利用者情報に基づいて、前記記憶手段から、前記新規ユーザーの前記感染リスク情報を取得する
請求項1又は2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記重み決定手段は、
前記新規ユーザーの前記感染リスク情報に応じて、前記複数のかご夫々の乗車人数を算出する人数算出手段と、
前記乗車人数のユーザーが前記複数のかご夫々に乗車したと仮定した場合の、前記ユーザーの前記複数のかご夫々における想定乗車位置を、前記複数のかご夫々に対して算出する位置算出手段と、
前記複数のかご夫々の前記想定乗車位置に前記ユーザーが乗車した場合の、前記ユーザー間の想定距離を算出する距離算出手段と、
を、更に備え、
前記複数のかご夫々の想定距離に応じて、前記複数のかご夫々の前記新規の呼びに対応する重みを決定する
請求項1又は2に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記感染リスク情報には、ワクチン接種回数、ワクチン種別、ワクチン接種からの経過日数、及び、感染症に関する情報、の少なくとも1つの情報が含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のかごを備えるエレベータの群管理制御において、エレベータのユーザーが乗車前に行先階を予約する乗場行先呼びを行う方式が知られている。乗場行先呼びを採用する群管理制御によれば、例えば、行先階が同じユーザーが同じかごに乗車するようにかごを割り当てる等、行先階の情報に基づく制御を行うことができ、エレベータシステムの輸送効率の向上を図ることができる。
【0003】
また、例えば特許文献1には、身体障害者等の所定属性を有するユーザーに適した仕様を有する所定エレベータを含む複数台のエレベータの運行を制御するエレベータの群管理制御装置が記載されている。この群管理制御装置では、各エレベータの出発時の乗車率が乗車率上限値以下となるようにエレベータの割り当てを行う。また、この群管理制御装置は、取得された利用者情報が示すユーザーが所定属性を有するユーザーである場合、所定エレベータの乗車率上限値を、所定期間、通常時の乗車率上限値よりも小さくする。特許文献1に記載の群管理制御装置によれば、ユーザー属性に応じて乗車率上限値を切り替えることで、輸送能力と身体障害等の所定属性を有するユーザーの利便性の両立が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-154839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年、感染症予防に対する関心の高まりとともに、エレベータのかご内においても感染症に対する何らかの感染対策が求められるようになっている。かご内で発生する感染の場合、主な感染経路は飛沫感染又は空気感染であることを考慮すると、感染対策として、かご内のユーザー間で十分な間隔を持てるようにすることは有効な感染対策の1つである。しかし、感染リスク低減のみを優先し、かご内に乗車できる人数を減らすだけでは、エレベータの輸送効率が低下し、エレベータのサービスの低下につながる虞がある。
【0006】
本開示は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、エレベータの輸送効率の低下を抑えつつ、感染リスクを低減する感染対策をとり得る得るよう改良されたエレベータシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るエレベータシステムは、エレベータに対する新規の呼び登録を要求するユーザーである新規ユーザーの感染リスク情報を取得する取得手段と、新規の呼びに対応して、複数のかご夫々に、感染リスク情報に応じた重みを決定する重み決定手段と、複数のかご夫々の新規の呼びに対応する重みと、複数のかご夫々に割り当て済みの呼びに対応する重みと、に基づいて、複数のかごの中から、新規の呼びに対して割り当てるかごを決定する割当手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、新規ユーザーの感染リスク情報から、かご夫々に対する重みが決定され、この重みを踏まえて、かごの割り当てを決定することができる。これにより、エレベータの輸送効率の低下を小さく抑えつつ、十分な感染対策をとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施の形態1に係る群管理制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】本開示の実施の形態1に係る群権利制御装置の人数算出手段により算出される補正係数の一例を示す図である。
図3】本開示の実施の形態1に係る群管理制御装置において算出される、乗車人数とかご内の想定乗車位置との関係例を示す図である。
図4】本開示の実施の形態1に係る群管理制御装置の重み決定手段により決定されるかご夫々の重みについて説明するための図である。
図5】本開示の実施の形態1に係る群管理制御装置により実行される制御動作の一例を示すフローチャートである。
図6】本開示の実施の形態2に係る群管理制御装置により実行される制御動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、同一または相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化ないし省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るエレベータシステムの群管理制御装置の概略構成を示すブロック図である。本実施の形態においてエレベータシステムは、複数のエレベータを備え、群管理制御装置1により各エレベータの動作を制御する。図1の群管理制御装置1の設置場所に限定はないが、例えば、エレベータが設置されたビル内に設置される。
【0012】
本実施の形態に係る群管理制御装置1は、制御部11、インターフェイス12、及び、記憶部13を備えている。インターフェイス12と制御部11との間、及び、制御部11と記憶部13との間は、通信可能に接続され、情報の送受信を行うことができる。
【0013】
インターフェイス12は、エレベータの各乗場に設置されている。インターフェイス12は、ユーザーが、エレベータに対する新規の呼び登録を要求する際、そのユーザーの情報を取得する読取手段としての機能を有する。
【0014】
なお、以下の説明において、必要に応じて、今回エレベータに対する新規の呼びを「新規呼び」、新規呼びの登録を要求するユーザーを「新規ユーザー」として、それぞれ、既に登録済みの他の呼び、他のユーザー、と区別して記載する。
【0015】
インターフェイス12には、例えば、個人認証を行う照合装置、体温測定可能なセンサ等の機器、QRコード(登録商標)等の一又二次元の識別コードを読み取り可能なバーコードリーダー、及び、体温測定とコードの読み取りとが可能なカメラ等が含まれ得る。
【0016】
インターフェイス12を介して読み取られるユーザーの情報には、当該ユーザーの感染リスク情報が含まれる。感染リスク情報は、ユーザーが特定の感染症に感染している可能性の高さを示す指標となる情報である。ここで、特定の感染症は、例えば、現在流行している感染症などのうち、主な感染経路を空気感染又は飛沫感染とし、かつ、高い感染対策が望まれる感染症などである。特定の感染症は、その時の状況に応じて適宜設定される。感染リスク情報は、感染症の種類によって異なり、感染症の設定共に、適宜情報内容が設定される。具体的に例えば、感染リスク情報には、ワクチン接種回数、ワクチン種別、及び、ワクチン接種から過日数等のワクチン接種に関する情報と、感染症の流行状態及び感染しやすさ等を示す感染症リスク傾向情報と、ユーザーの現在の体温等のユーザーの健康状態に関する情報とが含まれ得る。
【0017】
インターフェイス12は、感染リスク情報が、例えばワクチン接種に関する情報である場合、ユーザーが提示したワクチン接種の証明書の識別コードを読み取ることで、感染リスク情報を読み取ることができる。また、インターフェイス12は、感染リスク情報が、例えばユーザーの現在の健康状態に関する情報である場合、カメラ等によってユーザーの体温を測定することで、感染リスク情報を読み取ることができる。あるいは、インターフェイス12は、ユーザーが予め個人情報として登録した感染リスク情報を、照合装置によって読み取ることで、感染リスク情報を取得してもよい。
【0018】
制御部11は、処理回路を備える。処理回路は、専用のハードウエアであっても、ソフトウエアであっても、あるいは、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせからなるものであってもよい。処理回路がソフトウエである場合、処理回路はメモリに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)を備え、メモリに記憶されたプログラムをCPUが実行することにより、制御部11が備える以下の各手段の各機能を実現する。処理回路がハードウエアである場合、制御部11が備える以下の各手段が有する各機能は個々の処理回路で実現されてもよいし、まとめて1つの処理回路で実現されてもよい。
【0019】
制御部11は、取得手段11a、人数算出手段11b、位置算出手段11c、距離算出手段11d、重み決定手段11e、及び、割当手段11fを備えている。制御部11は、その他にも様々な機能を備えているが、それらについての図示は省略されている。
【0020】
取得手段11aは、インターフェイス12を介して読み取られた新規ユーザーに関する情報を取得する。取得手段11aにより取得される情報の中には、新規ユーザーの感染リスク情報が含まれる。取得手段11aにより取得された新規ユーザーの感染リスク情報は、人数算出手段11bに入力される。
【0021】
人数算出手段11bは、新規ユーザーの感染リスク情報に基づいて、かご夫々の新規呼びに対応する乗車人数を算出する。図2は、人数算出手段により算出される補正係数の一例を示す図である。人数算出手段11bは、図2に示されるように、感染リスク情報が有する各情報を補正係数に変換する。そして、予め設定されているかご夫々の既定の定員に、補正係数を乗じることで、かご夫々の新規呼びに対応する乗車人数を算出する。なお、補正係数を乗ずる乗車人数の算出では、小数点以下の数字が発生した場合には、予め設定されたルールに従って処理される。予め設定されたるルールは、例えば、「切り捨てる」等である。
【0022】
図2の例では、感染リスク情報の中で補正係数の算出に用いられるパラメータは、ワクチン接種回数、ワクチン種類、及び、ワクチン接種からの経過日数である。そして、ワクチン接種回数が、3回、2回、1回、0回の夫々の場合、補正係数は、1、0.9、0.8、0.6とされる。同様に、ワクチン種類が、X、Y、Z、未接種の場合、補正係数は、1、0.9、0.8、0.6とされ、ワクチン接種からの経過日数が、0~90日、91~181日、181日以上、未接種の場合、補正係数は、1、0.9、0.8、0.6とされる。そして、今回の新規呼びに対応する補正係数は、これら補正係数をかけた値となる。従って、例えば、新規ユーザーの感染リスク情報のワクチン接種回数が2回、ワクチン種類がX、経過日数が91~180日の場合、補正係数は0.9×1×0.9となる。算出された補正係数は、かご夫々の規定の定員に乗じられ、かご夫々の乗車人数が算出される。例えば、あるかごの規定の定員が例えば20人であれば、当該かごの新規呼びに対応する乗車人数は20×0.9×1×0.9として算出され、小数点以下が切り捨てられ、補正定員は16人とされる。
【0023】
人数算出手段11bにより算出された、かご夫々の新規呼びに対応する乗車人数は、位置算出手段11cに入力される。
【0024】
位置算出手段11cは、かご夫々の新規呼びに対応する乗車人数に基づいて、かご夫々の想定乗車位置を算出する。想定乗車位置は、乗車人数のユーザーが、各かご内でできるだけ距離を開けて乗車した場合の乗車位置である。図3は、乗車人数と、かご内の想定乗車位置との関係例を示す図である。図3に示されるように、乗車人数と想定乗車位置との関係は、かご毎に予め設定され、記憶部13に記憶されている。位置算出手段11cは、記憶部13に記憶されたかご毎の乗車人数と想定乗車位置との関係に基づいて、かご毎に、人数算出手段11bから入力された乗客人数に応じた想定乗車位置を算出する。かご夫々に対し算出された想定乗車位置は、距離算出手段11dに入力される。
【0025】
距離算出手段11dは、乗車位置に基づいてかご夫々の利用者間距離を算出する。例えば、利用者間距離は、かご夫々の想定乗車位置のうち任意の2つの位置の距離の中で、最短の距離とされる。具体的に、乗車人数が5人である場合、図3に示されるように、中央から、四隅の何れかの位置までの距離が最短であり、この距離が利用者間距離として算出される。算出されたかご夫々の利用者間距離は、重み決定手段11eに入力される。
【0026】
重み決定手段11eは、かご夫々の利用者間距離に基づいて、かご夫々の、新規呼びに対応する重みを決定する。図4は、重み決定手段により決定されるかご夫々の重みについて説明するための図である。具体的に、図4の例において、重み決定手段11eは、例えば、利用者間距離を乗車人数で除算した値を、エレベータの号機毎(即ち、かご毎)の、新規呼びに対応する重みとして決定する。重み決定手段11eで決定された重みは、記憶部13に登録される。
【0027】
例えば、同一のかごで比較した場合、乗車人数が少ない場合ほど、利用者間距離は長くなる。従って、かご夫々の重みは、ワクチンの接種回数が少なく、接種からの経過日数が長い新規ユーザーの新規呼びに対しては相対的に大きい値となり、ワクチン接種回数が多く、かつ、経過日数が短い新規ユーザーの新規呼びに対しては相対的に小さい値となる。
【0028】
重み決定手段11eで決定されたかご夫々の新規呼びに対応する重みは、割当手段11fに入力される。
【0029】
割当手段11fは、新規呼びに割り当てるかごを決定する。具体的には、割当手段11fは、図4に示すように、既に割り当て済みの呼び、即ち、かご夫々の登録済みの呼び及び現在応答中の呼びの夫々に対応する重みを、記憶部13から読み出す。そして、読み出した割り当て済みの呼び夫々に対する重みと、新規呼びに対応する重みとに基づいて、かご夫々の重みを決定する。ここでは、例えば、割り当て済みの呼び夫々に対応する重みと新規呼びに対応する重みとの中の最大値を、かご夫々の重みとする。
【0030】
割当手段11fは、更に、かご夫々に対する現在の呼び個数、即ち、登録済みの呼びと、現在応答中の呼びと、今回の新規呼びとの合計数に、かご夫々の重みを乗算して、乗算結果を求める。この乗算結果を、割当かごの決定要素の1つに用いることができる。
【0031】
例えば、図4の例では、A号機のかごに割り当て済みの呼び数は6であり、今回の新規呼びの分1を加算した数がA号機のかごに対する呼びの合計数であり、同様に、B号機、C号機のかごに対する呼びの合計数は、共に2である。また、A号機、B号機、及び、C号機の重みの最大値は、3、10、50である。従って、かご夫々の重みの最大値と呼び合計数との乗算結果は、A号機が18(重み最大値3×呼び個数6)、B号機が20(重み最大値10×呼び個数2)、C号機が100(重み最大値50×呼び個数2)となる。従って、割当手段11fは、乗算結果が最低値となるA号機のかごを、割当かごとして決定する。但し、割当かごの決定に際し、乗算結果とは異なる要因が考慮される場合において、その異なる要因によりA号機を割当かごの候補から外す場合、例えば、次点であるB号機が割当かごとして決定される。
【0032】
次に、実施の形態1の群管理制御装置1の制御動作を、フローチャートを用いて説明する。図5は、実施の形態1に係る群管理制御装置により実行される制御動作の一例を示すフローチャートである。図5の制御動作において、インターフェイス12に新規ユーザーからの呼び登録の要求があると、まず、ステップS101で、インターフェイス12を介して、新規ユーザーの感染リスク情報が取得される。
【0033】
次に、ステップS102において、号機番号Nに「1」が設定される。ここで号機番号Nは、各エレベータに対応する番号であり、群管理制御装置1が制御する全てのエレベータに連番で設定された値とする。
【0034】
次に、ステップS103において、N号機の乗車人数が算出される。具体的には、新規ユーザーの感染リスク情報に応じて、新規ユーザーに対応する補正係数が算出される。算出された補正係数が、N号機に対し予め設定されている規定の定員に乗じられ、必要に応じて小数点以下の値が切り捨てられる。この算出結果が、N号機に対する、新規ユーザーに対応する乗車人数とされる。
【0035】
次に、ステップS104において、ステップS103で算出された乗車人数に基づいて、N号機のかご内の想定乗車位置が算出される。次に、ステップS105において、想定乗車位置に応じて、N号機のかご内の利用者間距離が算出される。
【0036】
次に、ステップS106において、N号機に対し、新規ユーザーに対応する重みが決定される。具体的には、ステップS105で算出された利用者間距離を、ステップS103で算出された乗車人数で除算した値が、N号機の新規ユーザーに対応する重みとして用いられる。決定した重みは、記憶部13に登録される。
【0037】
次に、ステップS107において、号機番号Nに1が加算される。次に、ステップS108において、号機番号Nが、群管理制御装置が制御する全かごの台数である号機台数を越えるか否かが判定される。ステップS108で号機番号Nが号機台数を超えていないと判別された場合、処理はステップS103に戻され、ステップS103~S107の処理により、次の号機(即ち、N=N+1号機)に対する新規ユーザーの重みが決定される。
【0038】
ステップS108で、号機番号Nが号機台数を超えると判定された場合、ステップS109に進む。ステップS109では、各号機のかごに登録済みの呼びと応答中の呼びに対応する重みと、ステップS106で決定した重み、及び、各号機に対する呼びの数に基づいて、新規呼びに対応する割当かごが決定される。その後、今回の処理は終了とされる。
【0039】
以上のように、実施の形態1によれば、ワクチンの接種回数が少なく、ワクチンを接種してからの経過日数が長いといったような、感染リスクの高い新規ユーザーが利用する際には、重みが大きな値に設定されることで、かご内の乗車人数が少なく設定され、利用者間距離が大きくとれるように割当かごが決定される。このように、感染リスク情報に応じてかごの割り当てが制御されることで、かご内で感染が発生するリスクを低減することができる。一方、感染リスクの低いと見込まれるユーザーがエレベータを利用する場合には、かご内の乗車人数を多く設定することができ、エレベータの輸送効率を確保することができる。従って、感染症が流行し感染対策が望まれる状況下においても、乗車人数が過度に制限されることを抑えることができ、エレベータの輸送効率の低下を抑えることができる。
【0040】
なお、本実施の形態においては、図2を用いて感染リスク情報と補正係数との関係を説明したが、これは一例であり、感染リスク情報と補正係数との関係は、現在の感染症の流行状況から感染対策が望まれる特定の感染症、その感染経路、感染力、感染症に対するワクチンの有効性と相関を有する要因(例えば、接種回数、種類、接種からの経過日数など)に応じて適宜設定される。
【0041】
また、本実施の形態において、新規ユーザーに対応する乗車人数を、かご夫々の規定の定員に補正係数を乗じることで算出する場合について説明したが、乗車人数の算出方法はこれに限られず、新規ユーザーの感染リスク情報が示す情報から感染の可能性が高いと判断される場合、低いと判断される場合に比べて、乗車人数が少なくなるように、乗車人数が算出されるものであればよい。従って、例えば、感染リスク情報と補正人数との関係を予め設定しておいて、新規ユーザーの感染リスク情報に応じた補正人数を、かご夫々の規定の定員から減算するなどにより、乗車人数を決定する構成とすることもできる。
【0042】
また、本実施の形態では、位置算出手段11cが、記憶部13に記憶された乗車人数と想定乗車位置との関係に基づいて、想定乗車位置を算出し、距離算出手段11dが、想定乗車位置に基づいて利用者間距離を算出する場合について説明した。しかしながら、利用者間距離の算出方法はこれに限られない。例えば、記憶部13に予め乗車人数と利用者間距離との関係を登録し、この関係に基づいて、距離算出手段11dが、乗車人数に応じた利用者間距離を読み出すようにしてもよい。また、この場合、複数のかご間で床面積が互いに異なる場合には、乗車人数と利用者間距離との関係を、かご毎に、あるいは床面積毎に設定し、登録してもよい。
【0043】
また、本実施の形態では、感染リスク情報に応じて、新規呼びに対応する乗車人数、想定乗車位置、及び、利用者間距離が算出され、これに応じて、新規呼びに対応する重みが決定される場合について説明した。これにより、新規ユーザーの感染の可能性の高さに応じて、新規呼びに対応する適切な重みを決定することができる。しかしながら、重みの決定方法はこれに限られるものではなく、例えば、感染リスク情報と、重みとの関係性をダイレクトに定め、これを記憶部13に記憶しておいてもよい。これにより、群管理制御装置1は、記憶部13に記憶された関係性に基づいて、新規ユーザーの感染リスク情報に応じた、新規呼びに対応する重みを決定することができる。
【0044】
実施の形態2.
実施の形態2の群管理制御装置1は、取得手段11aで取得される情報及び記憶部13が記憶している情報が異なる点を除き、実施の形態1で説明した群管理制御装置1と同一である。具体的に、実施の形態2の群管理制御装置1において、記憶部13は、エレベータを利用するユーザー夫々の利用者情報を記憶すると共に、各利用者情報に紐づけされた感染リスク情報を記憶している。
【0045】
取得手段11aは、インターフェイス12から、例えばユーザーID等、新規ユーザーを特定し得る情報を取得し、記憶部13に記憶された利用者情報に基づいてユーザーを認証すると、当該ユーザーの利用者情報に紐づけされた感染リスク情報から、当該ユーザーの感染リスク情報を取得する。
【0046】
図6は、本実施の形態2に係る群管理制御装置により実行される制御動作の一例を示すフローチャートである。図6の制御動作は、ステップS101に替えて、ステップS110とS111の処理を有す点を除き、図5の制御動作と同一である。
【0047】
図6において、インターフェイス12に新規ユーザーからの呼び登録の要求があると、まず、ステップS110で、取得手段11aは、インターフェイス12から、新規ユーザーを特定し得る利用者情報を取得する。
【0048】
次に、ステップS111において、記憶部13に記憶された利用者情報に紐づけされた感染リスク情報から、ステップS110で取得された新規ユーザーの利用者情報に対応する感染リスク情報が取得される。
【0049】
その後、ステップS110で取得された感染リスク情報を用いて、図5のステップS102~S109の処理が実行され割当かごが決定される。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態2の群管理制御装置によれば、実施の形態1の群管理制御装置1と同様に、エレベータの輸送効率の低減を抑制しつつ、感染対策を行うことができる。また実施の形態2の群管理制御装置によれば、利用者情報に対応して予めユーザーごとの感染リスク情報を登録しておくことで、例えば、体温測定機器及び識別コードを読み取るためのカメラ等の機器の設置を省略することができ、インターフェイス12の簡略化を図ることができる。また、事前に情報を登録することで、円滑に、かごの割当制御を進めることができる。
【0051】
なお、実施の形態1では、インターフェイス12により取得手段11aがユーザーの感染リスクを取得する場合について説明し、実施の形態2では、取得手段11aにより取得された利用者情報に応じて、記憶部13に記憶された感染リスクが読み出される場合について説明した。しかし、感染リスクの取得方法は、いずれか一方の方法に限られるものではなく、両者を用いて感染リスクを取得してもよい。
【0052】
例えば、ユーザー個々の感染リスク情報はインターフェイス12を用いてその都度取得し、個人差の生じない情報を、記憶部13から取得する、という構成としても良い。個人差の生じない情報には、例えば、感染症の流行状態等を示す感染リスク傾向情報などが含まれ得る。このような都度取得が不要な情報については、予め記憶部13に記憶しておくことで、装置間の不要な通信を抑制することが出来る。
【0053】
また、例えば、ワクチン接種の回数、種類、及び、接種日等のように事前に登録可能な情報は、予め記憶部13に登録し、記憶部13から読み出しことし、例えば、ユーザーのエレベータ利用時の体温等の情報を、インターフェイス12を用いて取得して、これらを感染リスク情報として用いる構成としてもよい。これにより、より多くの感染リスク情報に従って、適切にかごの割り当てを行うことができると共に、利用時に取得が必要な情報数を低減することができ、不要な通信を抑制し円滑にかごの割り当てを実行することができる。
【0054】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0055】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
エレベータに対する新規の呼び登録を要求するユーザーである新規ユーザーの感染リスク情報を取得する取得手段と、
前記新規の呼びに対応して、複数のかご夫々に、前記感染リスク情報に応じた重みを決定する重み決定手段と、
前記複数のかご夫々の前記新規の呼びに対応する重みと、前記複数のかご夫々に割り当て済みの呼びに対応する重みと、に基づいて、前記複数のかごの中から、前記新規の呼びに対して割り当てるかごを決定する割当手段と、
を備えるエレベータの群管理制御装置。
(付記2)
前記エレベータの乗場に設置され、前記新規ユーザーの情報を読み取り可能な読取手段を、更に備え、
前記取得手段は、前記読取手段と通信可能に接続されて、前記読取手段によって取得された情報から、前記新規ユーザーの前記感染リスク情報を取得する
付記1に記載のエレベータの群管理制御装置。
(付記3)
前記エレベータの乗場に設置され、前記新規ユーザーの情報を読み取り可能な読取手段と、
前記エレベータを利用するユーザー夫々を特定可能な利用者情報と、前記ユーザー夫々の感染リスク情報とを対応づけて記憶する記憶手段と、
を更に備え、
前記取得手段は、
前記読取手段によって取得された情報から、前記新規ユーザーを特定可能な利用者情報を取得して、
前記利用者情報に基づいて、前記記憶手段から、前記新規ユーザーの前記感染リスク情報を取得する
付記1又は2に記載のエレベータの群管理制御装置。
(付記4)
前記重み決定手段は、
前記新規ユーザーの前記感染リスク情報に応じて、前記複数のかご夫々の乗車人数を算出する人数算出手段と、
前記乗車人数のユーザーが前記複数のかご夫々に乗車したと仮定した場合の、前記ユーザーの前記複数のかご夫々における想定乗車位置を、前記複数のかご夫々に対して算出する位置算出手段と、
前記複数のかご夫々の前記想定乗車位置に前記ユーザーが乗車した場合の、前記ユーザー間の想定距離を算出する距離算出手段と、
を、更に備え、
前記複数のかご夫々の想定距離に応じて、前記複数のかご夫々の前記新規の呼びに対応する重みを決定する
付記1から付記3の何れかに記載のエレベータの群管理制御装置。
(付記5)
前記感染リスク情報には、ワクチン接種回数、ワクチン種別、ワクチン接種からの経過日数、及び、感染リスク傾向情報、の少なくとも1つの情報が含まれることを特徴とする付記1から付記4の何れかに記載のエレベータの群管理制御装置。
【0056】
なお、以上の実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、この実施の形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【符号の説明】
【0057】
1 群管理制御装置、 11 制御部、 11a 取得手段、 11b 人数算出手段、 11c 位置算出手段、 11d 距離算出手段、 11e 決定手段、 11f 割当手段、 12 インターフェイス、 13 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6