IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国海洋大学の特許一覧

特開2024-139672マルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲルとその製造方法、海水淡水化装置
<>
  • 特開-マルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲルとその製造方法、海水淡水化装置 図1
  • 特開-マルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲルとその製造方法、海水淡水化装置 図2
  • 特開-マルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲルとその製造方法、海水淡水化装置 図3
  • 特開-マルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲルとその製造方法、海水淡水化装置 図4
  • 特開-マルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲルとその製造方法、海水淡水化装置 図5
  • 特開-マルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲルとその製造方法、海水淡水化装置 図6a
  • 特開-マルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲルとその製造方法、海水淡水化装置 図6b
  • 特開-マルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲルとその製造方法、海水淡水化装置 図7a
  • 特開-マルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲルとその製造方法、海水淡水化装置 図7b
  • 特開-マルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲルとその製造方法、海水淡水化装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139672
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】マルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲルとその製造方法、海水淡水化装置
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/00 20060101AFI20241002BHJP
   C08J 9/28 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
C08J9/00 Z CER
C08J9/00 CEZ
C08J9/28 101
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023197611
(22)【出願日】2023-11-21
(31)【優先権主張番号】202310303307.8
(32)【優先日】2023-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】515223167
【氏名又は名称】中国海洋大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000073
【氏名又は名称】弁理士法人プロテック
(74)【代理人】
【識別番号】100108051
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 生央
(72)【発明者】
【氏名】崔 洪芝
(72)【発明者】
【氏名】徐 瑞▲キ▼
(72)【発明者】
【氏名】魏 娜
(72)【発明者】
【氏名】趙 明崗
(72)【発明者】
【氏名】王 愛萍
(72)【発明者】
【氏名】趙 君
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA03
4F074AA42
4F074AC32
4F074AH03
4F074BB10
4F074CA10
4F074CB47
4F074CC05Y
4F074CC28Y
4F074CC30Y
4F074CC48Y
4F074CD11
4F074DA43
4F074DA59
(57)【要約】      (修正有)
【課題】太陽エネルギー変換利用材料等に利用される、再現性のあるマルチスケール細孔構造のケイ素含有無機-有機複合エアロゲル、およびその調製方法を提供する。
【解決手段】ケイ素含有ナノ無機材料を凍結モチーフとし、バイオマス重合体を架橋剤とし、脱イオン水を溶剤として、これら3つを均一に混合して静置して凝固させてハイドロゲルを形成した後、凍結して氷晶を形成し、続いて凍結乾燥技術を用いて氷晶を除去してマイクロ-ナノスケールの多孔質エアロゲルを形成し、最後に、パルスレーザー技術を用いて、得られたマイクロ-ナノスケールのエアロゲルに対してミリ細孔のカスタマイズされたパンチングを行い、最終的に、ミリ-マイクロ-ナノのマルチスケール細孔構造エアロゲルを得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスレーザーに基づくマルチスケール細孔構造エアロゲルであって、ケイ素含有ナノ無機材料を凍結モチーフとし、バイオマス重合体を架橋剤とし、脱イオン水を溶剤として、これら3つを均一に混合して静置して凝固させてケイ素含有無機-有機複合ハイドロゲルを形成した後、凍結して氷晶を形成し、続いて凍結乾燥技術を用いて氷晶を除去してマイクロ-ナノスケールのケイ素含有無機-有機複合エアロゲルを形成し、最後に、パルスレーザー技術を用いて、得られたマイクロ-ナノスケールのケイ素含有無機-有機複合エアロゲルに対してミリ細孔のカスタマイズされたパンチングを行い、レーザーの高速、高エネルギー、パンチングパターンの設計可能な特性を利用して、エアロゲルのミリ細孔の細孔径、細孔形状及び細孔数を設計し、プロセスが制御可能で、複数のシーン、複雑な使用環境のニーズを満たすことができるミリ-マイクロ-ナノスケールのマルチスケール細孔のケイ素含有無機-有機複合エアロゲルを得ることを特徴とするパルスレーザーに基づくマルチスケール細孔構造エアロゲル。
【請求項2】
前記ケイ素含有ナノ無機材料は、MoSi、SiO2及びSi4を含むが、これらに限定されないことを特徴とする請求項1に記載のパルスレーザーに基づくマルチスケール細孔構造エアロゲル。
【請求項3】
前記架橋剤は、少なくともポリビニルアルコール、寒天及びグルタルアルデヒドを含むことを特徴とする請求項1に記載のパルスレーザーに基づくマルチスケール細孔構造エアロゲル。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のパルスレーザーに基づくマルチスケール細孔構造エアロゲルの調製方法であって、ステップ1~ステップ3を含み、
ステップ1:ケイ素含有無機-有機複合ハイドロゲルの調製
まず、ポリビニルアルコールと寒天を秤量し、脱イオン水を加えて加熱して2種類の粉末を溶解して均質な溶液を得た後、溶液にグルタルアルデヒド溶液を加えて架橋させ、架橋液にケイ素含有ナノ無機粉末を加えて均一なケイ素含有無機-有機複合ゾルを得、ケイ素含有無機-有機複合ゾルを静置して凝固させた後、一定の靭性を有するケイ素含有無機-有機複合ハイドロゲルを形成し、
ステップ2:マイクロ-ナノスケールのケイ素含有無機-有機複合エアロゲルの調製
ステップ1で得られたケイ素含有無機-有機複合ハイドロゲルを凍結して氷晶を得た後、真空凍結乾燥してマイクロ-ナノスケールのケイ素含有無機-有機複合エアロゲルを得、
ステップ3:ミリ-マイクロ-ナノスケールのマルチスケール細孔のケイ素含有無機-有機複合エアロゲルの合成
パルスレーザー加工技術を用いて、得られたマイクロ-ナノスケールのケイ素含有無機-有機複合エアロゲルに対してミリ細孔の構造処理を行い、具体的な処理方法は、
パルスレーザーの周波数を20、パルス幅を5000、走査速度を50~150mm/s、レーザーパワーを3~8%、レーザースポットを1mmに設定し、ミリ細孔の形状を設計し、マトリックスパンチングプログラミングを実行し、続いて、レーザー光源は、マイクロ-ナノスケールのケイ素含有無機-有機複合エアロゲルに対して上から下へミリ細孔のパンチング処理を行い、レーザーの高効率、高速、高エネルギー、パンチングパターンの設計可能な特性を利用して、エアロゲルのミリ細孔の細孔径、細孔形状、細孔数を設計し、垂直に配向したミリ細孔の形状、調整可能な気孔率を有するミリ-マイクロ-ナノのマルチスケール細孔のケイ素含有無機-有機複合エアロゲルを得ることであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のパルスレーザーに基づくマルチスケール細孔構造エアロゲルの調製方法。
【請求項5】
ステップ1において、ケイ素含有無機-有機複合ゾル系における前記ポリビニルアルコールの濃度は1~4wt%であり、ケイ素含有無機-有機複合ゾル系における寒天の濃度は1~2wt%であり、ケイ素含有無機-有機複合ゾル系におけるケイ素含有ナノ無機粉末の濃度は0.02~1wt%であることを特徴とする請求項4に記載のパルスレーザーに基づくマルチスケール細孔構造エアロゲルの調製方法。
【請求項6】
ステップ2において、ケイ素含有無機-有機複合ハイドロゲルの凍結温度範囲は、-30~-80℃であることを特徴とする請求項4に記載のパルスレーザーに基づくマルチスケール細孔構造エアロゲルの調製方法。
【請求項7】
前記ミリ細孔の形状は、正方形、円形及び多角形を含むが、これらに限定されないことを特徴とする請求項4に記載のパルスレーザーに基づくマルチスケール細孔構造エアロゲルの調製方法。
【請求項8】
太陽エネルギー変換・利用方法であって、請求項1~3のいずれか一項に記載のパルスレーザーに基づくマルチスケール細孔構造エアロゲルを使用することを特徴とする太陽エネルギー変換・利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゲル材料調製の技術分野に属し、特に、太陽エネルギー変換・利用に用いられるエアロゲル材料調製の技術分野に属し、具体的には、垂直に配向したミリ細孔-3次元連通のマイクロ-ナノ細孔をカスタマイズできるマルチスケール細孔構造のケイ素含有無機-有機複合エアロゲルの調製方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
非再生可能エネルギーの消費が増加するにつれて、再生可能なエネルギーを利用してエネルギーを変換することは、将来の重要な発展傾向となっている。太陽エネルギーは、資源が豊富で、クリーンで汚染がないという特徴を有する。太陽エネルギーを利用・変換して一部の化石エネルギーの消費を代替することは、環境保護及び持続可能な開発に対して重要な意義を有する。軽量かつ高効率で大量生産可能な太陽エネルギー変換・利用材料の設計・開発は、太陽エネルギーの実用化を実現する重要な方途である。
【0003】
エアロゲル材料は、低い線形密度、軽量、低い熱伝導率、大きな比表面積、高い気孔率等の優れた特徴を有し、生活、生産に広く使用されている。エアロゲル材料は通常、超臨界乾燥又は凍結乾燥条件下で形成され、3次元多孔質網目骨格構造を有し、その細孔構造特性は、凍結モチーフ及び架橋強度の両方の影響を受けることが多い。エアロゲルの強度を確保するためには、化学架橋又は物理架橋が一般的に使用されている。化学架橋とは、化学架橋剤の作用下でモノマーが重縮合又は共重合反応を引き起こし、共有結合を形成して3次元網目構造を構築することを意味する。物理架橋とは、水素結合、配位結合、ファンデルワールス力、分子間絡み合いなどの物理的な力を介して結合架橋することによって形成される3次元重合体網目である。異なる特徴を有する架橋剤を選択することにより、エアロゲルの細孔構造及び架橋強度を制御し、様々な使用環境のニーズを満たすことができる。ポリビニルアルコールは、豊富な水酸基を有し、用途が広い水溶性高分子重合体であり、良好な成膜性、熱安定性、接着性、耐摩耗性、自己修復性及び良好な機械的強度を有し、優れた生体適合性、生分解性及び無毒無害等の特性を有し、環境保護の分野で独特の優位性を有する。寒天は、生物適合性に優れた多糖類物質として、豊富なカルボキシル基を含み、90℃の水温で溶解し、室温で硬化できるため、優れたリサイクル性を有する。したがって、適切な架橋剤を選択し、複数の架橋機構を利用することで、エアロゲルの架橋強度を効果的に向上させることができる。
【0004】
エアロゲル材料は、細孔構造が制御可能で、気孔率が高いという特徴を有し、太陽エネルギー駆動の水蒸発の分野に使用されると、太陽光吸収の面でかなりの光吸収面積を提供できるだけでなく、水輸送及び蒸気の逃がしに豊富な通路を提供することもできる。したがって、エアロゲル材料は、太陽エネルギー駆動の界面水蒸発による海水淡水化、汚水処理、光熱触媒などの分野において幅広い応用見通しを有する。しかしながら、エアロゲルの内部細孔径は2~50nmのメソ細孔であることが多く、単一細孔構造を有するエアロゲルは水輸送、光吸収、熱伝導、エネルギー利用などに多くの制限があるのに対し、マルチスケール細孔構造を有するエアロゲルは、より大きな比表面積を提供して太陽光を吸収し、同時に細孔径の制御により毛細管作用を発揮し、給水速度を改善することができる。また、エアロゲルの内部に貫通孔構造を構築することで、長手方向の塩分濃度差を利用して表面張力勾配を形成し、マランゴニ効果を発揮し、塩イオンの移動を促進し、それによりエアロゲル材料の塩析防止機能の設計を実現することができる。ミリ-マイクロ-ナノのマルチスケール細孔構造の光吸収能力と物質交換能力を相乗的に利用することで、海水脱塩、汚水処理、空気浄化などの環境保護分野におけるエアロゲルのより多くの応用可能性を提供する。したがって、多機能性を達成しながら構造特性を確保するには、エアロゲルの細孔径分布及び細孔構造をさらに制御及び最適化する必要がある。
【0005】
現在、開発が比較的成熟したエアロゲルは、重合体系エアロゲル、バイオマスエアロゲル等を含むが、このような有機エアロゲルは燃えやすく、その細孔形成技術及び応用が厳しく制限され、細孔径を正確に制御及び最適化することが困難である。報告されたマルチスケール細孔構造の構築方法では、通常、1つ又は2つの細孔形成方法が組み合わせて使用される。例えば、特許文献1(中国特許出願公開第109243849号明細書)に開示された窒素ドープ階層的細孔グラフェンエアロゲルの調製方法は、CaCO@ポリドーパミン粒子をテンプレートとして使用し、酸洗浄によりCaCOを除去して細孔を形成するが、該方法では、テンプレート剤が導入され、後続のステップでテンプレート剤を除去する必要があり、プロセスが複雑であるだけでなく、細孔の形態及び構造の制御にも役立たない。特許文献2(中国特許出願公開第110064347号明細書)には、凍結鋳造成形法により調製された無機ナノファイバー/有機重合体複合エアロゲルが開示されており、これは「層-スタック-層」構造を有するが、マイクロの通路しか提供できず、水とガスの流束、物質の交換と移動の面で一定の制限がある。特許文献3(中国特許出願公開第113578282号明細書)には、エアロゲル材料を調製するためのエマルジョンテンプレート法が開示されているが、この方法は、エアロゲルの細孔径分布及び細孔構造に対する制御性能が低く、各種の細孔型の数及び分布を正確に制御しにくい。したがって、細孔形成剤テンプレートを必要とせず、プロセスが簡単で、効率的に調製でき、細孔構造の特性と分布を正確に制御して、細孔径が最適化されたマルチスケール細孔構造エアロゲルを調製できる技術の開発は、太陽エネルギー駆動の水の蒸発効率の向上、その適用範囲の拡大に対して重要な意義を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許出願公開第109243849号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第110064347号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第113578282号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エアロゲルの細孔構造の特性と分布を正確に制御するために、本発明はパルスレーザーに基づくマルチスケール細孔エアロゲルを提供し、このエアロゲルは、ミリ-マイクロ-ナノの3つのスケールの細孔径を同時に有するだけでなく、調製時には細孔形成剤テンプレートを必要としない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はまた、このエアロゲルの調製方法及び使用を提供する。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明が採用する技術的解決手段の全体的な考え方は、以下のとおりである。まず、ケイ素含有ナノ無機材料の高融点、優れた高温安定性及び高温耐酸化性等の利点を利用し、ポリビニルアルコール、寒天及びグルタルアルデヒドを架橋剤とし、水素結合及び重縮合反応等の物理・化学架橋機構を相乗的に利用して、ケイ素含有ナノ無機-有機複合多孔質二重網目エアロゲルを調製し、該エアロゲルは、重合体材料の強度及び靭性を利用してエアロゲルの機械的特性を保証するだけでなく、無機材料の特性を利用してポリビニルアルコール/寒天エアロゲルの硬度及び難燃能力も向上させ、その耐アブレーション性の強化に基づいて、それに加工多様性を備えさせる。次に、難燃性を有するケイ素含有ナノ無機-有機エアロゲルを調製した上で、パルスエネルギーが高く、加工効率が高いパルスレーザー技術を利用して、プロセスが簡単で高効率であり、ミリ細孔の数及び分布を正確に制御でき、細孔のパターンはカスタマイズできる。
【0010】
具体的な技術的解決手段は、以下のとおりである。パルスレーザーに基づくマルチスケール細孔構造エアロゲルであって、ケイ素含有ナノ無機材料を凍結モチーフとし、バイオマス重合体を架橋剤とし、脱イオン水を溶剤として、これら3つを均一に混合して静置して凝固させてケイ素含有無機-有機複合ハイドロゲルを形成した後、凍結して氷晶を形成し、続いて凍結乾燥技術を用いて氷晶を除去してマイクロ-ナノスケールのケイ素含有無機-有機複合エアロゲルを形成し、最後に、パルスレーザー技術を用いて、得られたマイクロ-ナノスケールのケイ素含有無機-有機複合エアロゲルに対してミリ細孔のカスタマイズされたパンチングを行い、レーザーの高速、高エネルギー、パンチングパターンの設計可能な特性を利用して、エアロゲルのミリ細孔の細孔径、細孔形状及び細孔数を設計し、プロセスが制御可能で、複数のシーン、複雑な使用環境のニーズを満たすことができるミリ-マイクロ-ナノスケールのマルチスケール細孔のケイ素含有無機-有機複合エアロゲルを得ることである。
【0011】
さらに、前記ケイ素含有ナノ無機材料は、MoSi、SiO2、Si4などを含むが、これらに限定されない。
【0012】
さらに、前記架橋剤は、少なくともポリビニルアルコール、寒天及びグルタルアルデヒドを含む。
【0013】
以下、上記のパルスレーザーに基づくマルチスケール細孔構造のエアロゲルの調製方法を提供し、ステップ1~ステップ3を含む。
ステップ1:ケイ素含有無機-有機複合ハイドロゲルの調製
まず、ポリビニルアルコールと寒天を秤量し、脱イオン水を加えて加熱して2種類の粉末を溶解して均質な溶液を得た後、溶液にグルタルアルデヒド溶液を加えて架橋させ、架橋液にケイ素含有ナノ無機粉末を加えて均一なケイ素含有無機-有機複合ゾルを得、ケイ素含有無機-有機複合ゾルを静置して凝固させた後、一定の靭性を有するケイ素含有無機-有機ハイドロゲルを形成し、
さらに、ケイ素含有無機-有機複合ゾル系における前記ポリビニルアルコールの濃度は1~4wt%であり、ケイ素含有無機-有機複合ゾル系における寒天の濃度は1~2wt%であり、ケイ素含有無機-有機複合ゾル系におけるケイ素含有ナノ無機粉末の濃度は0.02~1wt%である。
さらに、前記グルタルアルデヒド溶液の濃度は50wt%である。
ステップ2:マイクロ-ナノスケールのケイ素含有無機-有機複合エアロゲルの調製
ステップ1で得られたケイ素含有無機-有機複合ハイドロゲルを凍結して氷晶を得た後、真空凍結乾燥してマイクロ-ナノスケールのケイ素含有無機-有機複合エアロゲルを得、
さらに、ケイ素含有無機-有機複合ハイドロゲルの凍結温度範囲は-30~-80℃であり、凍結温度が低いほど細孔径は小さくなり、温度が高いほど細孔径は大きくなる。
ステップ3:ミリ-マイクロ-ナノスケールのマルチスケール細孔のケイ素含有無機-有機複合エアロゲルの合成
パルスレーザー加工技術を用いて、得られたマイクロ-ナノスケールのケイ素含有無機-有機複合エアロゲルに対してミリ細孔の構造処理を行い、具体的な処理方法は、
パルスレーザーの周波数を20、パルス幅を5000、走査速度を50~150mm/s、レーザーパワーを3~8%、レーザースポットを1mmに設定し、ミリ細孔の形状を設計し、マトリックスパンチングプログラミングを実行し、続いて、レーザー光源は、マイクロ-ナノスケールのケイ素含有無機-有機複合エアロゲルに対して上から下へミリ細孔のパンチング処理を行い、レーザーの高効率、高速、高エネルギー、パンチングパターンの設計可能な特性を利用して、エアロゲルのミリ細孔の細孔径、細孔形状、細孔数などを設計し、垂直に配向したミリ細孔の形状、調整可能な気孔率を備えたミリ-マイクロ-ナノスケールのマルチスケール細孔のケイ素含有無機-有機複合エアロゲルを得る、ことである。原則として、ミリ細孔の細孔径は、セルフプログラミングによって制御され、制限を受けず、ミリ細孔の数は、細孔密度及びエアロゲルの面積によって決定され、セルフプログラミングによって制御され、制限を受けない。気孔率は、98%より大きくてもよい。
【0014】
さらに、前記ミリ細孔の形状は、正方形、円形及び多角形を含むが、これらに限定されず、ミリ細孔の分布パターンは制限されない。
【0015】
本発明のパルスレーザーに基づくマルチスケール細孔構造エアロゲルは、太陽エネルギー駆動の海水淡水化に用いることができる。使用方法は、該エアロゲルをポリスチレンフォーム、繊維吸水紙を組み合わせて、蒸発器を組み立てることである。ケイ素含有無機-有機複合エアロゲルは、太陽エネルギーを吸収及び変換し、海水を蒸発させて淡水を得、ポリスチレンフォームは断熱層として熱管理を行い、光熱蒸発過程における熱伝導損失を抑制し、親水性繊維紙は毛細管力によって海水を輸送する。
【0016】
蒸発器の海水淡水化速度の試験方法は、該蒸発器を分析天秤に置き、模擬キセノンランプ光源で照射し、天秤に接続されたコンピュータを通じて異なる時刻の蒸発器の質量変化を連続的に記録し、質量損失を監視し、蒸発速度を計算することである。
【発明の効果】
【0017】
従来技術に比べて、本発明が提供する技術的解決手段は、以下の有益な効果を有する。
(1)本発明は、架橋剤としてポリビニルアルコール、寒天及びグルタルアルデヒドを使用し、ポリビニルアルコール分子鎖上に大量のヒドロキシル官能基を有し、寒天には大量のカルボキシル官能基を含み、ヒドロキシル基とカルボキシル基は分子鎖間に水素結合を形成して物理架橋ネットワークを形成し、カルボキシル基とアルデヒド基はまた、重縮合反応して共有結合を形成し、化学架橋ネットワークを形成し、二重ネットワーク構造は、凍結乾燥中に安定した3次元多孔質構造を形成できるだけでなく、エアロゲルの強度をさらに向上させることもできる。これらの特性は、エアロゲルのマクロ成形性を保証し、体積収縮を回避するのに役立つだけでなく、圧縮強度を高め、耐膨潤性を向上させ、優れた機械的特性を実現することもできる。
(2)本発明は、無機-有機複合エアロゲルを調製することにより、ケイ素含有無機ナノ材料の添加によりエアロゲルの難燃性を向上させ、それにパルスレーザー加工性を備えさせる。従来技術と比較して、パルスレーザー衝撃を初めて使用して、エアロゲルに対してミリスケール細孔のカスタマイズされた最適化と制御を行い、テンプレートのサイズ及び形状に制限されず、簡単なプログラミングだけでミリ細孔の多様な設計を実現でき、方法が簡単で、プロセスが安定し、再現性が良好で、簡便で効率的で、コストが低く、環境に優しく汚染がなく、細孔構造の制御範囲が広く、異なる使用シーンに応じて正確な構造マッチング設計を行うことができ、複数の分野において良好な商業応用の見通しを有し、大規模な普及応用の可能性を有する。
(3)本発明は、多成分材料を配合し、巧妙なマルチスケール細孔構造設計を組み合わせることにより、垂直配向と3次元連通を兼ね備えたミリ-マイクロ-ナノのマルチスケール細孔構造のケイ素含有無機-有機複合エアロゲルを得、細孔径分布を最適化し、比表面積を増加させ、その耐膨潤性を向上させ、水輸送性能、物質交換効率及び自己洗浄機能を向上させる。太陽エネルギー駆動の海水淡水化の分野において良好な蒸発速度を備え、太陽エネルギー変換・利用の分野での応用の見通しを示しており、海水淡水化及び汚水処理等の分野を含むが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例で使用する必要のある図面を簡単に説明し、以下に説明する図面は本発明の一部の実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【0019】
図1】本発明のミリ-マイクロ-ナノのマルチスケール細孔構造のMoSiエアロゲルの調製プロセスの概略図である。
図2】本発明の実施例1~3におけるパルスレーザーパンチング前後のミリ-マイクロ-ナノのマルチスケール細孔構造のMoSiエアロゲルの巨視的写真である。
図3】本発明の実施例1におけるマルチスケール細孔構造のMoSiエアロゲルのSEM図であり、a、b、c、dの4つの写真で構成され、写真aは、MoSiエアロゲル表面のマイクロ-ナノスケールの細孔構造を表し、写真bは、MoSiエアロゲルのレーザーパンチング後のミリスケールの細孔のチャネル内の微視的構造を表し、写真cは、元のMoSiエアロゲルの内部細孔構造を表し、写真dは、MoSiエアロゲルのミリスケールの細孔のチャネル内の微視的構造の拡大図である。
図4】本発明の元のMoSiエアロゲル及び実施例1~3で合成したマルチスケール細孔構造のMoSiエアロゲルの密度図である。
図5】本発明の元のMoSiエアロゲル及び実施例1~3で合成したマルチスケール細孔構造のMoSiエアロゲルの膨潤性能を示す図である。
図6a】本発明のMoSiナノ材料の添加前のエアロゲルの難燃性試験の実物図である。
図6b】本発明のMoSiナノ材料の添加後のエアロゲルの難燃性試験の実物図である。
図7a】本発明の元のMoSiエアロゲルのマルチスケール細孔の60min内の1倍の太陽光強度での質量損失及び蒸発速度図である。
図7b】本発明の実施例1~3のマルチスケール細孔MoSiエアロゲルの60min内の1倍の太陽光強度での質量損失及び蒸発速度図である。
図8】本発明の元のMoSiエアロゲル及び実施例1~3のマルチスケール細孔MoSiエアロゲルの経時的な塩の自己溶解の実物図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施例を詳細に説明し、本発明の利点及び特徴が当業者に容易に理解されるようにし、本発明の保護範囲をより明確に特定する。
【0021】
説明すべきこととして、本発明に記載の元のMoSiエアロゲルとは、レーザーパンチングを行わないマイクロ-ナノスケールのMoSiエアロゲルを指す。
【0022】
実施例1
実施例1は、巨視的細孔が5×5の円形細孔マトリックスであるMoSiエアロゲルの調製を例として、図1を参照して本発明のミリ-マイクロ-ナノのマルチスケール細孔構造のMoSiエアロゲルの調製方法及び使用を説明し、以下のステップ1~ステップ3を含む。
ステップ1:MoSiハイドロゲルの調製
まず、質量分率が2wt%の寒天と1wt%のポリビニルアルコール粉末を秤量してビーカーに入れ、脱イオン水100mlを加えて90℃に加熱し、1h磁気撹拌を維持し、2種類の粉末を溶解して均質な溶液を得た。続いて、溶液に濃度50wt%のグルタルアルデヒド溶液100μlを加え、10分間撹拌を続けた。続いて、質量分率0.02wt%のMoSi粉末を秤量し、上記溶液にゆっくりと加え、均一な黒色溶液が得られるまで磁気撹拌した。
上記で得られた黒色溶液を、サイズ100×100×10mmのプレハブ型に流し込み、5分間静置した後、溶液が凝固して、一定の靭性を有するMoSiハイドロゲルを形成した。
ステップ2:マイクロ-ナノスケールの細孔構造のMoSiエアロゲルの調製
ステップ1で得られたMoSiハイドロゲルを-80℃の冷蔵庫に入れ、24h凍結して氷晶を凝結させた。続いて、凍結したゲルを取り出し、-80度の凍結乾燥機に入れて48h真空乾燥した後に取り出し、マイクロ-ナノスケールの細孔構造を有するMoSiエアロゲルを得た。
ステップ3:ミリ-マイクロ-ナノのマルチスケール細孔MoSiエアロゲルの合成
ステップ2におけるエアロゲルを切断し、サイズ30×30mmの正方形のエアロゲルを得た。パルスレーザーを用いて、得られたマイクロ-ナノスケールのMoSiエアロゲルに対してミリ細孔パターンのカスタマイズされたパンチング処理を行った。ルスレーザーの周波数を20、パルス幅を5000、速度を100mm/s、レーザパワーを8%に設定し、細孔形状を直径1mmの円に設定し、細孔の間隔を設定し、5×5マトリックス円形細孔のプログラミング設計を行い、その後、レーザーを起動し、レーザ光源はMoSiエアロゲルに対して上から下へミリ細孔のパンチング処理を行った。約30秒後、レーザーパンチングが終了すると、図2に示すようなP5×5パターン及び図3に示すような垂直配向の貫通孔を有するミリル細孔及び3次元連通のマイクロ-ナノのマルチスケール細孔MoSiエアロゲルを得た。
(5)光熱海水淡水化の使用
試験を経て、実施例1のP5×5マルチスケール細孔MoSiエアロゲルの水蒸発速度は、1.39kg・m-2・h-1であった。
【0023】
実施例2
実施例2は、ミリ細孔が6×6の円形細孔マトリックスであるMoSiエアロゲルの調製を例として、調製方法は基本的に実施例1と同じであり、異なる点は、巨視的形状が崩壊しないことを保証する条件下で、本発明におけるエアロゲルのミリ細孔のメッシュ数の調整可能性を検証するために、実施例1におけるステップ3の5×5マトリックスの円形細孔のプログラミング設計を6×6のマトリックスの円形細孔のプログラミングに変更することであり、パルスレーザーの他のパラメータ及び操作ステップは変更せず、図2に示すようなP6×6ミリ細孔のメッシュ数のマルチスケール細孔エアロゲルを得た。
試験を経て、実施例2のP6×6マルチスケール細孔MoSiエアロゲルの水蒸発速度は、1.26kg・m-2・h-1であった。
【0024】
実施例3
実施例3は、巨視的細孔が7×7の四角形細孔マトリックスであるMoSiエアロゲルの調製を例として、調製方法は基本的に実施例1と同じであり、異なる点は、本発明におけるエアロゲルのミリスケールの細孔パターンを正確にカスタマイズできることを検証するために、実施例1におけるステップ3の5×5マトリックスの円形細孔のプログラミング設計を7×7マトリックスの四角形細孔のプログラミング設計に変更することであり、パルスレーザーの他のパラメータ及び操作ステップは変更せず、図2に示すようなP7×7ミリ細孔のメッシュ数のマルチスケール細孔エアロゲルを得た。
試験を経て、実施例3のP7×7マルチスケール細孔MoSiエアロゲルの水蒸発速度は、1.13kg・m-2・h-1であった。
図2は、本発明の実施例1~3におけるパルスレーザーパンチング前後のミリ-マイクロ-ナノのマルチスケール細孔構造MoSiエアロゲルの巨視的写真である。図から分かるように、本発明により調製されたMoSiエアロゲルは、巨視的成形性が良好であり、表面にクラック及び明らかな収縮変形がなく、良好な切断加工特性を有する。パルスレーザーパンチング後、エアロゲルはアブレーション、構造崩壊等の破壊現象が発生せず、ミリ細孔のメッシュ数の増加及び細孔形状の変化に伴い、エアロゲルは依然として安定した巨視的構造の特徴を保持し、ミリ細孔パターンのカスタマイズ加工、メッシュ数の調整可能性、細孔径分布の制御可能性等の優位性を実現することができる。マルチスケール細孔構造MoSiエアロゲルを水に浸漬すると、表面の色が黒くなり、これはゲル化の除去によるものであるが、細孔の形状に崩壊現象が発生しておらず、エアロゲルの巨視的形状に破壊が発生していないことから、マルチスケール細孔エアロゲルは優れた強度及び靭性を保持することが証明された。
図3は、本発明の実施例1におけるマルチスケール細孔構造MoSiエアロゲルのSEM図である。図中の写真aから、レーザーパンチングを行わなかったMoSiエアロゲルの表面は楕円形のマイクロ細孔構造であり、大量のナノ細孔が構成された網目骨格に均一に分布していることがわかった。図中の写真bから、パルスレーザー加工後、貫通孔の細孔骨格は高温で炭化し、表面が黒くなり、架橋結合が切断され、層状に積み重ねられた微視的構造が形成されることがわかった。図中の写真dは、写真bにおける局所拡大図であり、図から分かるように、破断後の細孔骨格の表面にしわがあり、層ごとに組み立てられた隙間構造を有する。図中の写真cは、レーザーパンチングを行わなかったMoSiエアロゲルの内部細孔構造であり、図から分かるように、エアロゲル骨格が大きく成長しており、一方向の貫通孔を有する。
図4は、本発明の元のMoSiエアロゲル及び実施例1~3のマルチスケール細孔MoSiエアロゲルの密度図である。その密度は、順に0.039、0.036、0.034、0.033g/cm3であり、図から分かるように、エアロゲルのミリ細孔のメッシュ数の増加に伴い、その密度は徐々に減少するが、その差は小さいことから、レーザーパンチングによるエアロゲルの品質への影響が小さいことを示している。
図5は、本発明の元のMoSiエアロゲル及び実施例1~3のマルチスケール細孔MoSiエアロゲルの膨潤率を示す図である。その膨潤率は、順に17.3、18.8、19.3、21.4%であり、図から分かるように、エアロゲルのミリ細孔のメッシュの増加に伴い、その膨潤率が徐々に増加し、エアロゲルの吸水能力が強化され、水飽和度が大きくなることが証明された。その理由は、架橋程度が大きい元のMoSiエアロゲルと比較して、ミリ細孔の存在により、水溶液により多くの浸透通路を提供し、架橋結合が破断することで水溶液の浸透抵抗が低減し、より多くのミリ細孔を有するマルチスケール細孔構造エアロゲルが、同じ時間内により多くの水分を吸収することを促進することである。
図6a及び図6bは、それぞれ本発明のMoSiナノ材料の添加前後のエアロゲルの難燃性試験の実物図である。図から分かるように、MoSiナノ材料を添加する前に、ポリビニルアルコール/寒天エアロゲルは、14s以内に燃焼し続けたが、ポリビニルアルコール/寒天/MoSiエアロゲルは、燃焼が14sに進むと自己停止し、MoSiナノ材料の添加によりエアロゲルの難燃性が向上したことが証明された。これは、MoSiが高温安定性を有し、断熱材として機能し、燃焼過程において良好な物理的バリアを形成し、隣接する部分が燃え続けるのを効果的に防止することができるためである。
図7a及び図7bは、それぞれ本発明の元のMoSiエアロゲル及び実施例1~3のマルチスケール細孔MoSiエアロゲルの60min内の1倍の太陽光強度での質量損失及び蒸発速度図である。図7aの質量損失図及び図7bの蒸発速度図から分かるように、元のMoSiエアロゲルは、蒸発の最初の30分以内に速い質量損失を維持したが、30~60分以内に質量損失が明らかに遅くなり、これは、元のMoSiエアロゲルの架橋度が大きいため、給水が遅くなり、給水速度が蒸発速度にはるかに追いつかないためであるが、ミリスケールの貫通孔の数がP5×5になると蒸発速度が著しく増加し、これは、給水速度が速くなるためであり、ミリ貫通孔の数がさらに増加する場合、蒸発速度が低下し、これは、ミリ細孔のメッシュ数の増加により、光吸収面積の減少をもたらすためである。以上から分かるように、適切なミリ細孔のメッシュ数を制御し、給水速度の向上と給水能力の確保を前提に、面積損失を最小化することで、マルチスケール細孔構造MoSiエアロゲルの太陽エネルギー蒸発性能を効果的に向上させることができる。
図8は、本発明の元のMoSiエアロゲル及び実施例1~3のマルチスケール細孔MoSiエアロゲルの塩の自己溶解の実物図である。図から分かるように、塩分が異なるエアロゲルの表面に堆積した時、時間の経過とともに、塩分の溶解効率は高い順にP7×7>P6×6>P5×5>元のMoSiエアロゲルであり、元のマイクロ-ナノ構造エアロゲルと比較して、ミリ細孔のメッシュ数の増加により、MoSiエアロゲルの内部物質移動効率が向上し、自己洗浄機能が付与され、ミリ-マイクロ-ナノのマルチスケール細孔構造エアロゲルを設計及び構築する必要性をさらに実証した。
【0025】
以上は本発明の具体的な実施例に過ぎず、本発明の保護範囲はこれに限定されるものではなく、創造的な労力を必要とせずに想到し得る任意の変更又は置換は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって定義される保護範囲に基づくべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-05-29
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、垂直に配向したミリ細孔と3次元的に連通したマイクロ-ナノ細孔から構成されたマルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲルとその製造方法、及びそのような複合エアロゲルを使用した海水淡水化装置に関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素含有無機ゲル料とバイオマス重合体から成るマルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲルであって、
パルスレーザーによって形成されたミリスケールの細孔が、垂直方向に所定の間隔で複数個メッシュ状に形成されているマルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲル。
【請求項2】
表面にマイクロ細孔が形成され、内部にナノ細孔が網目骨格に分布して、層状に積み重ねられた構造体が形成され、
ミリスケールの細孔の壁面に露出しているナノ細孔の網目骨格は、パルスレーザーによって炭化して架橋結合が切断されている請求項1に記載のマルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲル。
【請求項3】
密度が0.033g/cm から0.039g/cm である請求項1又は請求項2に記載のマルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲル。
【請求項4】
ケイ素含有ナノ無機ゲル料、バイオマス重合体からなる架橋剤及び溶剤である脱イオン水を混合する工程と、
これらの混合物を静置して凝固させてケイ素含有無機-有機複合ハイドロゲルを形成する工程と、
前記ハイドロゲルを凍結して氷晶を形成し、凍結乾燥技術を用いて前記氷晶を除去して、マイクロ-ナノスケールのケイ素含有無機-有機複合ゲルを作成する工程と、
前記工程で得られた得られたマイクロ-ナノスケールのケイ素含有無機-有機複合ゲルに対して、パルスレーザー技術を用いて、ミリスケールの細孔を垂直方向に所定の間隔で複数個メッシュ状に形成する工程と、
を有するマルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲルの製造方法。
【請求項5】
前記架橋剤は、少なくともポリビニルアルコール、寒天及びグルタルアルデヒドを含むことを特徴とする請求項4に記載のマルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲルの製造方法。
【請求項6】
前記ケイ素含有無機-有機複合ハイドロゲルを形成する工程は、
ポリビニルアルコール粉末と寒天粉末に脱イオン水を加えて加熱して2種類の粉末の溶液を得た後、前記溶液にグルタルアルデヒド溶液を加えて架橋させ、架橋液にケイ素含有ナノ無機粉末を加えて前記ケイ素含有無機-有機複合ゾルを得ことを特徴とする請求項4に記載のマルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲルの製造方法。
【請求項7】
前記ポリビニルアルコールの濃度は1から4wt%であり、前記寒天の濃度は1から2wt%であり、前記ケイ素含有ナノ無機粉末の濃度は0.02から1wt%であることを特徴とする請求項6に記載のマルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲルの製造方法。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか1項に記載のマルチスケール多孔質構造を有する複合エアロゲルを、海水の吸水・蒸発ゲル料として使用した太陽エネルギーによる海水淡水化装置。