(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139675
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ガスセンサおよびガス検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/04 20060101AFI20241002BHJP
G01N 27/12 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
G01N27/04 F
G01N27/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023211066
(22)【出願日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2023050348
(32)【優先日】2023-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松尾 拓己
(72)【発明者】
【氏名】柴田 誠
(72)【発明者】
【氏名】小野 志津子
【テーマコード(参考)】
2G046
2G060
【Fターム(参考)】
2G046AA05
2G046AA11
2G046AA19
2G046AA24
2G046BA01
2G046BA03
2G046BA07
2G046BB01
2G046BC05
2G046BE07
2G046BJ04
2G046DC03
2G046FB01
2G046FB02
2G046FE02
2G046FE03
2G046FE06
2G046FE09
2G046FE10
2G046FE11
2G046FE12
2G046FE21
2G046FE25
2G046FE29
2G046FE31
2G046FE34
2G046FE35
2G046FE38
2G046FE44
2G046FE48
2G060AA02
2G060AB03
2G060AB08
2G060AB17
2G060AB21
2G060AE19
2G060AF07
2G060AG10
2G060BA01
2G060BB04
2G060BD04
2G060HC04
2G060JA01
2G060KA01
(57)【要約】
【課題】適切な湿度補正等を行うことが可能であり、精度良くガスを検出できるガスセンサ。
【解決手段】キャビティが形成される基材と、前記キャビティ上および前記キャビティの周縁部であるキャビティ周縁部に形成される第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜の上に重ねて形成される第2の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜と前記第2の絶縁膜との間に形成されるヒーター部と、前記キャビティ上の第1の位置において第1の形成面積で形成されダミー材料を有する第1ダミー材料を有する第1補償用素子と、前記キャビティ上の第2の位置において第2の形成面積で形成され前記ダミー材料を有する第2ダミー材料部を有する第2補償用素子と、前記キャビティ上の第3の位置において前記所定のガスに反応するガス検知材料を有する検知材料部を有する検知用素子と、を有するガスセンサ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティが形成される基材と、
前記キャビティ上および前記キャビティの周縁部であるキャビティ周縁部に形成される第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜の上に重ねて形成される第2の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜と前記第2の絶縁膜との間に形成されるヒーター部と、
前記キャビティ上の第1の位置において前記ヒーター部および前記第2の絶縁膜の上に第1の形成面積で形成され所定のガスに反応しないダミー材料を有する第1ダミー材料部と、前記第1ダミー材料部の物理量を検出する第1補償検出部と、を有する第1補償用素子と、
前記キャビティ上の第2の位置において前記ヒーター部および前記第2の絶縁膜の上に前記第1の形成面積とは異なる第2の形成面積で形成され前記ダミー材料を有する第2ダミー材料部と、前記第2ダミー材料部の物理量を検出する第2補償検出部と、を有する第2補償用素子と、
前記キャビティ上の第3の位置において前記ヒーター部および前記第2の絶縁膜の上に形成され前記所定のガスに反応するガス検知材料を有する検知材料部と、前記検知材料部の物理量を検出する反応検出部と、を有する検知用素子と、を有するガスセンサ。
【請求項2】
前記第1補償検出部および前記第2補償検出部の検出値を用いて、前記反応検出部の検出値の湿度補正を行う湿度補正部を有する請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記反応検出部は第3の形成面積で形成されており、
前記第3の形成面積は、前記第1の形成面積および前記第2の形成面積のいずれか一方より広く、かつ、前記第1の形成面積および前記第2の形成面積のいずれか他方より狭い請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記検知用素子と前記第1補償用素子との間の距離である第1の距離と、前記検知用素子と前記第2補償用素子との間の距離である第2の距離とは、略等しい請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記検知用素子の中心位置と、前記第1補償用素子の中心位置と、前記第2補償用素子の中心位置とを結ぶ線は、略正三角形を形成する請求項1に記載するガスセンサ。
【請求項6】
前記基材の前記キャビティは、前記検知用素子と、前記第1補償用素子と、前記第2補償用素子とが上方に配置される一体キャビティであり、
前記第1の絶縁膜および前記第2の絶縁膜のうち前記第1の位置にある部分である絶縁膜第1部分と、前記第1の絶縁膜および前記第2の絶縁膜のうち前記第2の位置にある部分である絶縁膜第2部分と、前記第1の絶縁膜および前記第2の絶縁膜のうち前記第3の位置にある部分である絶縁膜第3部分とは、前記キャビティ周縁部に固定される部分を介さず互いに接続する一体メンブレンを形成する請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項7】
請求項1~請求項6までのいずれかに記載のガスセンサによるガス検出方法であって、
前記第1補償用素子の検出値と、前記第1の形成面積と、前記第2補償用素子の検出値と、第2の形成面積と、から、前記反応検出部と同じ第3の形成面積で形成され前記ダミー材料を有する仮想的な第3補償用素子の検出値と、を算出するステップと、
前記検知用素子の検出値と前記第3補償用素子の検出値との差分から、前記所定のガスの濃度を算出するステップと、を有するガス検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスセンサおよびガス検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサは、雰囲気中に存在するガスを検知し、その種類、濃度等の情報を電気信号に変換して出力する装置である。このようなガスセンサは、家電機器、産業用機器、環境モニタリング機器等に搭載され、人間、環境等に対して影響を及ぼす特定のガスを検知するために用いられている。
【0003】
ガスセンサとしては、検知するガスの種類、濃度範囲、精度、動作原理、構成材料等の違いにより様々な検知方式が知られている。そのなかでも、検出部と、検出部周辺の温度を制御するためのヒーターとを組み合わせたものが、温度影響による誤差を低減できるセンサとして、開発が進められている。
【0004】
また、従来から、ガスの濃度等に応じて電気抵抗値などの物理量が変化する検知用素子とヒーターとを組み合わせたガスセンサなどが提案されている。しかしながら、ヒーターを有するガスセンサにおいても、湿度等の環境変化により検知用素子の出力値が変化する問題がある。そこで、湿度等の環境変化により検知用素子の出力値が変化する問題に対応した従来技術として、たとえば素子外部に湿度検出部を設置する技術や、感湿膜を用いることで湿度を検出する技術などが提案されている(特許文献1、特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6168919号明細書
【特許文献2】特許第6218270号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、ガス濃度を検出する検知用素子と湿度検出部等との位置的および構造的差異により、湿度検出部等による検出値の補正が十分でないという課題を有する。そこで、本開示では、所定のガスを検出する検知用素子の検出値について精度よく湿度補正を行うことができるガスセンサ等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るガスセンサは、
キャビティが形成される基材と、
前記キャビティ上および前記キャビティの周縁部であるキャビティ周縁部に形成される第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜の上に重ねて形成される第2の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜と前記第2の絶縁膜との間に形成されるヒーター部と、
前記キャビティ上の第1の位置において前記ヒーター部および前記第2の絶縁膜の上に第1の形成面積で形成され所定のガスに反応しないダミー材料を有する第1ダミー材料部と、前記第1ダミー材料部の物理量を検出する第1補償検出部と、を有する第1補償用素子と、
前記キャビティ上の第2の位置において前記ヒーター部および前記第2の絶縁膜の上に前記第1の形成面積とは異なる第2の形成面積で形成され前記ダミー材料を有する第2ダミー材料部と、前記第2ダミー材料部の物理量を検出する第2補償検出部と、を有する第2補償用素子と、
前記キャビティ上の第3の位置において前記ヒーター部および前記第2の絶縁膜の上に形成され前記所定のガスに反応するガス検知材料を有する検知材料部と、前記検知材料部の物理量を検出する反応検出部と、を有する検知用素子と、を有する。
【0008】
このようなガスセンサは、基材、第1の絶縁膜、第2の絶縁膜およびヒーター部などの共通する構造的特徴に対して、検知用素子と、第1補償用素子および第2補償用素子が組み込まれている。したがって、検知用素子と、第1補償用素子および第2補償用素子とのガス検知材料以外の構造および位置的条件が極めて近い。そのため、本開示に係るガスセンサは、所定のガスを検出する検知用素子の検出値から、所定のガスの濃度以外の環境変化の影響を精度よく除去し、精度良くガスを検出できる。また、形成面積が互いに異なる第1補償用素子および第2補償用素子を有することにより、ガス検出材料または第1および第2ダミー材料部の形成面積の製造ばらつきによる補正誤差を小さくすることができる。したがって、本開示に係るガスセンサは、このような観点からも、所定のガスの濃度以外の環境変化による誤差を精度よく除去し、ガスの検出精度を高めることができる。
【0009】
また、たとえば、本開示に係るガスセンサは、前記第1補償検出部および前記第2補償検出部の検出値を用いて、前記反応検出部の検出値の湿度補正を行う湿度補正部を有してもよい。
【0010】
このような湿度補正部を有するガスセンサは、特に湿度の変化が想定されるような条件においても、ガス濃度を精度よく検出することができる。
【0011】
また、たとえば、前記反応検出部は第3の形成面積で形成されていてもよく、
前記第3の形成面積は、前記第1の形成面積および前記第2の形成面積のいずれか一方より広くてもよく、かつ、前記第1の形成面積および前記第2の形成面積のいずれか他方より狭くてもよい。
【0012】
反応検出部、第1ダミー材料部および第2ダミー材料部の形成面積をこのようにすることで、所定のガスを検出する検知用素子の検出値から、所定のガスの濃度以外の環境変化の影響をより精度よく除去し、ガスの検出精度を効果的に高めることができる。
【0013】
また、たとえば、前記検知用素子と前記第1補償用素子との間の距離である第1の距離と、前記検知用素子と前記第2補償用素子との間の距離である第2の距離とは、略等しくてもよい。
【0014】
このようなガスセンサでは、第1補償用素子と第2補償用素子との間の位置的な条件の差を小さくすることができ、所定のガスの濃度以外の環境変化の影響をより精度よく除去し、ガスの検出精度を効果的に高めることができる。
【0015】
また、たとえば、前記検知用素子の中心位置と、前記第1補償用素子の中心位置と、前記第2補償用素子の中心位置とを結ぶ線は、略正三角形を形成してもよい。
【0016】
このようなガスセンサは、検知用素子と、第1補償用素子と、第2補償用素子との間の位置的な条件の差を小さくすることができ、所定のガスの濃度以外の環境変化による誤差をより精度よく除去し、ガスの検出精度を効果的に高めることができる。
【0017】
また、たとえば、前記基材の前記キャビティは、前記検知用素子と、前記第1補償用素子と、前記第2補償用素子とが上方に配置される一体キャビティであってもよく、
前記第1の絶縁膜および前記第2の絶縁膜のうち前記第1の位置にある部分である絶縁膜第1部分と、前記第1の絶縁膜および前記第2の絶縁膜のうち前記第2の位置にある部分である絶縁膜第2部分と、前記第1の絶縁膜および前記第2の絶縁膜のうち前記第3の位置にある部分である絶縁膜第3部分とは、前記キャビティ周縁部に固定される部分を介さず互いに接続する一体メンブレンを形成してもよい。
【0018】
このようなガスセンサでは、一体メンブレンを形成していることにより、検知用素子と、第1補償用素子と、第2補償用素子との間の条件の差を小さくすることができ、所定のガスの濃度以外の環境変化の影響をより精度よく除去し、ガスの検出精度を効果的に高めることができる。特に、このようなガスセンサでは、検知用素子と、第1補償用素子と、第2補償用素子との間の熱的条件を、効果的に均一化することができる。
【0019】
本開示に係るガス検出方法は、上記いずれかに記載のガスセンサによるガス検出方法であって、
前記第1補償用素子の検出値と、前記第1の形成面積と、前記第2補償用素子の検出値と、前記第2の形成面積と、から、前記反応検出部と同じ第3の形成面積で形成され前記ダミー材料を有する仮想的な第3補償用素子の検出値と、を算出するステップと、
前記検知用素子の検出値と前記第3補償用素子の検出値との差分から、前記所定のガスの濃度を算出するステップと、を有する。
【0020】
このようなガス検出方法によれば、所定のガスの濃度以外の環境変化による誤差を精度よく除去し、精度良くガスを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係るガスセンサの平面模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すガスセンサの断面線II-IIに沿う断面模式図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すガスセンサの断面線IIIA-IIIA、IIIB-IIIB、IIIC-IIIC、に沿う断面模式図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すガスセンサの基材の形状を示す断面図および平面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すガスセンサの第1の絶縁膜の形状を示す断面図および平面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示すガスセンサにおけるヒーター膜の形状を示す断面図および平面図である。
【
図7】
図7は、
図1に示すガスセンサにおける第2の絶縁膜の形状を示す断面図および平面図である。
【
図8】
図8は、
図1に示すガスセンサにおける検出電極膜の形状を示す断面図および平面図である。
【
図9】
図9は、
図1に示すガスセンサにおけるサーミスタ膜の形状を示す断面図および平面図である。
【
図10】
図10は、
図1に示すガスセンサにおける端子電極膜の形状を示す断面図および平面図である。
【
図11】
図11は、
図1に示すガスセンサにおける検知材料部、第1ダミー材料部および第2ダミー材料部の形状を示す断面図および平面図である。
【
図12】
図12は、本開示の第2実施形態に係るガスセンサの平面模式図である。
【
図13】
図13は、
図12に示すガスセンサの断面線XIIIA-XIIIA、XIIIB-XIIIB、XIIIC-XIIIC、に沿う断面模式図である。
【
図14】
図14は、
図12に示すガスセンサの断面線XIVA-XIVA、XIVB-XIVB、XIVC-XIVC、に沿う断面模式図である。
【
図15】
図15は、本開示の第3実施形態に係るガスセンサの平面模式図である。
【
図17】
図17は、
図15に示すガスセンサの断面線XVIIA-XVIIA、XVIIB-XVIIBに沿う断面模式図である。。
【
図18】
図18は、第1実施例に係るガスセンサの各素子の出力値の推移を示すグラフである。
【
図19】
図19は、第1実施例に係るガスセンサの各素子の検出値に基づき、ガス濃度を算出するための抵抗値差の算出プロセスを示すグラフである。
【
図20】
図20は、第1実施例に係るガスセンサの抵抗値差の算出結果と、参考例に係るガスセンサの抵抗値差の算出結果とを比較したグラフである。
【
図21】
図21は、第2実施例に係るガスセンサの各素子の検出値に基づき、ガス濃度を算出するための抵抗値差の算出プロセスを示すグラフである。
【
図22】
図22は、第2実施例に係るガスセンサの抵抗値差の算出結果と、参考例に係るガスセンサの抵抗値差の算出結果とを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を、具体的な実施形態等に基づき、以下の順序で詳細に説明する。
1.第1実施形態
1.1.全体構成
1.2.基材
1.3.第1および第2の絶縁膜
1.4.ヒーター膜
1.5.サーミスタ膜および検出電極膜
1.6.検知材料部およびダミー材料部
1.7.端子電極膜
1.8.製造方法
1.9.動作
1.10.作用
2.第2実施形態
3.第3実施形態
4.第1実施例
5.第2実施例
【0023】
(1.第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るガスセンサ10を示す概略平面図であり、ガスセンサ10を上方から見た図である。ガスセンサ10は、複数の膜が上下方向に積層した積層構造を有するが、なお、
図1では、説明の都合上、すべての膜を透視し、各層の輪郭形状を表示している。
図12、
図15についても同様である。
【0024】
(1.1.全体構成)
ガスセンサ10は、薄膜状のメンブレン18により支持される第1補償用素子12、第2補償用素子14および検知用素子16で構成される少なくとも3つの検出部分を有する。後述するように、ガスセンサ10の3つの検出部分のうち、検知用素子16が、所定のガスに対する検出能力を有する。ガスセンサ10の検知対象ガスは可燃性ガスおよび還元性ガスであり、具体的には、一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)、水素(H2)、エタノール(C2H5OH)等が例示される。
【0025】
ガスセンサ10の検知用素子16は、所定のガスに反応するガス検知材料を有する検知材料部80cと、検知材料部80cの物理量を検出する反応検出部17とを有する。後述するように、検知材料部80cは、サーミスタ膜60によるサーミスタ膜第3部分60c(
図9(a)参照)と、検出電極膜70による検出電極第3部分70c(
図8(a)参照)とを有する。反応検出部17は、発熱および吸熱として現れる検知材料部17のガスとの反応に伴う物理量を、サーミスタ膜60におけるサーミスタ膜第3部分60cの抵抗変化として、検出電極第3部分70cを介して検出する。サーミスタ膜60と検出電極膜70を用いる反応検出部17は、検知対象ガスが高濃度の場合にはサーミスタ膜第3部分60cの抵抗変化を検出電極第3部分70cが検出しやすくなるため、検知対象ガスが高濃度の場合の検知に特に好適である。
【0026】
検知材料部17が有するガス検知材料としては、ガスセンサの触媒として公知の材料であれば特に制限されない。たとえば、担体に貴金属粒子または非貴金属の金属粒子が担持されたものが用いられる。担体としては、酸化アルミニウム(γアルミナ等)や、酸化シリコンや、酸化ビスマスや、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化チタンのような遷移金属酸化物や、複数種類の遷移金属元素を含む金属複合酸化物等の酸化物材料が例示される。また、担体に担持される貴金属粒子としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、金(Au)、銀(Ag)等の貴金属粒子等が例示され、非貴金属の金属粒子としては銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等の非貴金属粒子が例示される。
【0027】
なお、本開示に係る検知用素子16としては、ガス検知材料を有する検知材料部80cと、サーミスタ膜60および検出電極膜70を有する反応検出部17とを組み合わせたもののみには限定されない。たとえば、他の検知用素子としては、ガス検知材料を有する検知材料部80cと、Pt線を有する反応検出部とを組みわせたものや、ガス検知材料としての半導体材料と、半導体材料の抵抗を検出する検出電極を有する反応検出部とを組みあわせたものなどが挙げられる。
【0028】
検知用素子16が、所定のガスに反応するガス検知材料を有する検知材料部80cを有するのに対して、第1補償用素子12は、所定のガスに反応しないダミー材料を有する第1ダミー材料部80aを有し、第2補償用素子14は、所定のガスに反応しないダミー材料を有する第2ダミー材料部80bを有する。また、第1補償用素子12は、第1ダミー材料部80aの物理量を検出する第1補償検出部13を有し、第2補償用素子14は、第2ダミー材料部80bの物理量を検出する第2補償検出部15を有する。
【0029】
第1ダミー材料部80aおよび第2ダミー材料部80bが有するダミー材料としては、少なくともガスセンサ10の作動条件範囲において、所定のガスに対する電気的、熱的な反応性を有しないものであれば特に限定されない。また、ダミー材料としては、質量やで熱伝導率など、ガスに対する反応性を除く物理的特性が、検知材料部17が有するガス検知材料と類似することも好ましい。なお、所定のガスに対する反応性を有しないダミー材料には、所定のガスに対する反応性を全く有しないものの他、ガス検知材料に比べて十分に低速または僅かな反応性を有するものが含まれる。また、第1ダミー材料部80aと第2ダミー材料部80bが有するダミー材料は、互いに同じ材料であることが好ましいが、同じ材料のみには限定されない。
【0030】
ここで、ガスセンサ10の検知用素子16が有する反応検出部17の検出値には、検出対象である所定のガスの濃度以外の環境変化、たとえば温度や、湿度などの影響が含まれる。しかし、ガスセンサ10は、反応検出部17に加えて、所定のガスに反応しないダミー材料を有する第1補償検出部13および第2補償検出部15を用いる第1補償用素子12および第2補償用素子14を有する。このため、ガスセンサ10は、第1補償用素子12および第2補償用素子14により、検出対象である所定のガスの濃度以外の環境変化が、検知用素子16の検出値にどのような影響を与えているかを、精度よく検出することができる。
【0031】
また、ガスセンサ10は、検出対象である所定のガスの濃度以外の環境変化の検出値への影響を第1補償検出部13および第2補償検出部15により検出し、所定のガスを検出する反応検出部17の検出値から、所定のガスの濃度以外の環境変化の影響を除去することにより、ガス濃度を精度良く検出できる。たとえば、ガスセンサ10は、
図1に示すような湿度補正部11を有する。湿度補正部11は、第1補償検出部13および第2補償検出部15の検出値を用いて、反応検出部17の検出値の湿度補正を行う。なお、本開示に係る第1補償用素子12としては、ダミー材料を有する第1ダミー材料部80aと、サーミスタ膜60および検出電極膜70を有する第1補償検出部13とを組み合わせたもののみには限定されない。たとえば、他の第1補償用素子としては、ダミー材料を有する第1ダミー材料部80aと、Pt線を有する第1補償検出部や、ダミー材料の抵抗を検出する検出電極を有する第1補償検出部とを組みあわせたものなどが挙げられる。また、本開示に係る第2補償用素子14としては、ダミー材料を有する第2ダミー材料部80bと、サーミスタ膜60および検出電極膜70を有する第2補償検出部15とを組み合わせたもののみには限定されない。たとえば、他の第2補償用素子としては、ダミー材料を有する第2ダミー材料部80bと、Pt線を有する第2補償検出部や、ダミー材料の抵抗を検出する検出電極を有する第2補償検出部とを組みあわせたものなどが挙げられる。
【0032】
図2は、
図1におけるII-II線に沿う平面で切断したガスセンサ10の断面模式図である。
図3(a)は、
図1におけるIIIA-IIIA線に沿う平面で切断したガスセンサ10の断面模式図であり、
図3(b)は、
図1におけるIIIB-IIIB線に沿う平面で切断したガスセンサ10の断面模式図であり、
図3(c)は、
図1におけるIIIC-IIIC線に沿う平面で切断したガスセンサ10の断面模式図である。なお、ガスセンサ10の説明では、ガスセンサ10の上下方向をZ軸とし、Z軸に垂直であってメンブレン18の中心位置と検知用素子16の中心位置を結ぶ方向をY軸とし、Z軸およびY軸に垂直な方向をX軸とする。なお、ガスセンサ10のZ軸方向は、後述する第1の絶縁膜31および第2の絶縁膜32等の積層方向と一致する。また、ガスセンサ10の説明では、基材20から第1の絶縁膜31および第2の絶縁膜32側を上側およびZ軸正方向として、上側およびZ軸正方向の反対方向を下側およびZ軸負方向として説明を行う。
【0033】
図4は、ガスセンサ10が基材20を示す平面図および断面図である。
図1~
図4に示すように、ガスセンサ10は、キャビティ22が形成される基材20を有する。
図2および
図3に示すように、ガスセンサ10における基材20以外の他の部材は、基材20のキャビティ22の上およびキャビティ22の周縁部であるキャビティ周縁部24に配置されている。ガスセンサ10が有する基材20以外の他の部材としては、第1の絶縁膜31(
図5)、第2の絶縁膜32(
図7)、ヒーター膜50(
図6)、検出電極膜70(
図8)、サーミスタ膜60(
図9)、端子電極膜90(
図10)、第1ダミー材料部80a、第2ダミー材料部80b、検知材料部80c(
図11)等が挙げられる。ガスセンサ10では、キャビティ22の上に形成される各部材の部分が組み合わされることにより、第1補償検出部13、第2補償検出部15および反応検出部17が構成される。
【0034】
(1.2.基材)
図4に示すように、キャビティ22は基材20の中央付近に形成されている。基材20の平面図である
図4(a)に示すように、キャビティ22は、平面視略Y字状の形状を有する。
図1に示すように、キャビティ22の上方にはメンブレン18が配置されている。断面図である
図4(b)に示すように、キャビティ22は基材20に形成される貫通孔で構成される。
【0035】
ただし、キャビティ22は、
図2および
図3に示すような貫通孔のみには限定されず、キャビティ22は、基板表面側であるキャビティ周縁部24から下方に凹む凹部で構成されていてもよい。
【0036】
また、
図1と
図4との比較から理解できるように、基材20のキャビティ22は、検知用素子16と、第1補償用素子12と、第2補償用素子14とが上方に配置される一体キャビティである。すなわち、検知用素子16と、第1補償用素子12と、第2補償用素子14とは、互いにキャビティ周縁部24により隔てられていない、連続するキャビティに配置されている。
【0037】
基材20の材質は、キャビティ22の上およびキャビティ周縁部24に形成される部材を支持できる程度の機械的強度を有し、かつエッチング等の微細加工に適した材料で構成されていれば、特に限定されない。本実施形態では、基材20として、シリコン単結晶基板、サファイア単結晶基板、セラミック基板、石英基板、ガラス基板、フェライト基板等が例示される。
【0038】
(1.3.第1および第2の絶縁膜)
図5(a)は、第1の絶縁膜31および基材20の平面図であり、
図5(b)は、第1の絶縁膜31および基材20の断面図である。また、
図7(a)は、第2の絶縁膜32および基材20の平面図であり、
図7(b)は、第2の絶縁膜32および基材20の断面図である。
【0039】
図1、
図2、
図5に示すように、基材20の中央部に形成されるキャビティ22の上側および基材20の上側表面を構成するキャビティ周縁部24の上側には、第1の絶縁膜31が形成されている。
図5(a)に示すように、第1の絶縁膜31は、キャビティ22の外縁部周辺に形成される周縁孔部34a~34lに相当する部分と、メンブレン18の中央に形成される中央孔部35に相当する部分を除き、基材20の上側全体に形成されている。
【0040】
また、
図1、
図2、
図7に示すように、第2の絶縁膜32は、第1の絶縁膜31の上に重ねて形成されている。
図7(a)に示すように、第2の絶縁膜32は、キャビティ22の外縁部周辺に形成される周縁孔部34a~34lに相当する部分と、メンブレン18の中央に形成される中央孔部35と、キャビティ周縁部24においてヒーター端子95a、95bが形成される貫通孔32a、32bを除き、基材20の上側全体に形成されている。
【0041】
図5(a)と
図7(a)との比較から理解できるように、第2の絶縁膜32にはヒーター端子95a、95b(
図10参照)が形成される部分に貫通孔32a、32bが形成されることを除き、第1の絶縁膜31と第2の絶縁膜とは、略同一の平面形状を有する。
図2に示すように、第1の絶縁膜31と第2の絶縁膜32とにより、絶縁膜30を構成する。ただし、第2の絶縁膜32は、実施形態に示す形状のみには限定されず、第2の絶縁膜32の平面形状は、第1の絶縁膜31の平面形状とは、必ずしも一致していなくてもよい。
【0042】
また、絶縁膜30のうち、キャビティ22の上に配置される部分が、ガスセンサ10におけるメンブレン18を構成する。絶縁膜30のうち、キャビティ周縁部24の上に配置される部分が、絶縁膜周縁部36である。
図1、
図5(a)、
図7(a)に示すように、絶縁膜30は、メンブレン18と絶縁膜周縁部36とを接続する複数(実施形態では10)の梁部33a~33lを有する。
図2に示すように、メンブレン18の下方にキャビティ22による空洞が配置されるが、メンブレン18は、梁部33a~33lを介してキャビティ22上に保持される。また、
図1に示すように、絶縁膜30には、任意の2つの梁部33a~33lの間に、周縁孔部34a~34lが形成されている。
【0043】
図1、
図5(a)、
図7(a)に示すように、絶縁膜30において、メンブレン18の周りには、メンブレン18を囲むように周縁孔部34a~34lが形成されている。それぞれの周縁孔部34a~34lは、任意の2つの梁部33a~33lの間に配置されている。これにより、メンブレン18の周りには、周縁孔部34a~34lと梁部33a~33lとが、メンブレン18を囲うように、交互に配置されている。したがって、メンブレン18は、XY平面に垂直な断面における断面積の狭い梁部34a~34l等を介して、基材20に対して支持されている。
【0044】
このようなガスセンサ10は、
図1に示すように、メンブレン18に配置される反応検出部17、第1補償検出部13および第2補償検出部15の近傍において、検知材料部80c、第1ダミー材料部80aおよび第2ダミー材料部80bを除く他の物質の熱容量を小さくすることができる。また、梁部33a~33lに支持されるメンブレン18の構造により、メンブレン18に配置される検知用素子16、第1補償用素子12および第2補償用素子14等が、メンブレン18を支える基材20に対して好適に断熱された構造となる。このようなガスセンサ10は、検知用素子16、第1補償用素子12および第2補償用素子14を所定の温度まで加熱するために必要なヒーター第1部分52a、ヒーター第2部分52b、ヒーター第3部分52c(
図6参照)の消費電力を非常に小さくすることができる。
【0045】
また、第1の絶縁膜31および第2の絶縁膜32で構成される絶縁膜30のうち、第1の位置22aにある部分である絶縁膜第1部分30aと、第2の位置22bにある部分である絶縁膜第2部分30bと、第3の位置22cにある部分である絶縁膜第3部分30cとは、キャビティ周縁部24に固定される部分である絶縁膜周縁部36を介さず互いに接続する一体メンブレンとしてのメンブレン18を形成している。ここで、
図1に示すように、第1の位置22aとは、第1ダミー材料部80aが形成されるキャビティ22上の位置であり、第2の位置22bとは、第2ダミー材料部80bが形成されるキャビティ22上の位置であり、第3の位置22cとは、検知材料部80cが形成されるキャビティ22上の位置である。
【0046】
図1に示すように、メンブレン18は、キャビティ22と同様に、平面視略Y字状の形状を有する。
図5(a)に示すように、メンブレン18の中央には貫通孔である中央孔部35が形成されており、中央孔部35のY軸方向正方向側が絶縁膜第3部分30cである。また、中央孔部35を中心として絶縁膜第3部分30cを半時計周りに略120度回転させた位置が絶縁膜第1部分30aであり、中央孔部35を中心として絶縁膜第3部分30cを時計周りに略120度回転させた位置が絶縁膜第2部分30bである。
【0047】
図1、
図5(a)および
図7(a)に示すように、ガスセンサ10は、絶縁膜第1部分30aと、絶縁膜第2部分30bと、絶縁膜第3部分30cとが一体メンブレンを形成することにより、検知用素子16と、第1補償用素子12と、第2補償用素子14との間の条件の差を小さくすることができる。したがって、ガスセンサ10は、所定のガスの濃度以外の環境変化の影響を、検知用素子16が有する反応検出部17の検出値から精度よく除去し、ガスの検出精度を効果的に高めることができる。
【0048】
また、ガスセンサ10では、中央孔部35を形成することにより、各素子12、14、16間の温度の緩衝を抑えることができるほか、熱膨張による伸縮に伴う応力の抑制に効果を有する。。
【0049】
第1の絶縁膜31および第2の絶縁膜32の厚みとしては特に限定されないが、
図2に示すように、第1の絶縁膜31の厚みが、第2の絶縁膜32の厚みより厚いことが、メンブレン18の強度を確保しつつ、ヒーター第1部分52a、ヒーター第2部分52b、ヒーター第3部分52cの熱を、第1補償用素子12、第2補償用素子14、検知用素子16に効率的に伝える観点から好ましい。第1の絶縁膜31の厚みは、たとえば0.1~10μmとすることが好ましく、たとえば0.5~5μmとすることがより好ましい。また、第2の絶縁膜32の厚みは、たとえば0.1~5μmとすることが好ましく、たとえば0.2~2μmとすることがより好ましい。
【0050】
第1の絶縁膜31および第2の絶縁膜32の材質は、熱ストレスによる耐久性、機械的強度、膜応力、密着性、電気絶縁性等を考慮して採用され、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウムや五酸化二タンタルなどが挙げられる。第1の絶縁膜31と第2の絶縁膜42の材質は、同じであっても、異なっていてもよい。また、第1の絶縁膜31と第2の絶縁膜32は、上述した材質の膜の積層膜であってもよい。
【0051】
(1.4.ヒーター膜)
図1および
図2に示すように、ヒーター膜50およびヒーター膜50の一部によって形成されるヒーター部としてのヒーター第1部分52a、ヒーター第2部分52b、ヒーター第3部分52cは、上下方向に関して第1の絶縁膜31と第2の絶縁膜32との間に設けられる。
【0052】
図6(a)は、ヒーター膜50とキャビティ22の平面図であり、
図6(b)は、ヒーター膜50とキャビティ22の断面図である。
図6(a)に示すように、ヒーター膜50は、キャビティ22上に配置されるヒーター第1部分52a、ヒーター第2部分52bおよびヒーター第3部分52cを有する。ヒーター第1部分52a、ヒーター第2部分52bおよびヒーター第3部分52cにおいて、ヒーター膜50は、細長い矩形波形状(ミアンダパターン)を有する。
【0053】
ヒーター第1部分52a、ヒーター第2部分52bおよびヒーター第3部分52cは、それぞれ、キャビティ22上の第1の位置22a、第2の位置22bおよび第3の位置22cに配置されている。ヒーター部を構成するヒーター第1部分52a、ヒーター第2部分52bおよびヒーター第3部分52cは、ヒーター膜50の他の一部であるヒーター膜配線部53を介して、キャビティ周縁部24まで配線されている。
【0054】
ヒーター第1部分52a、ヒーター第2部分52bおよびヒーター第3部分52cは、通電によりジュール熱を発生し、第1補償用素子12、第2補償用素子14、検知用素子16の温度を上昇させる。たとえば、
図2に示すように、ヒーター第3部分52cは、第2の絶縁膜32を介して上側に配置される反応検出部17および検知材料部80cを加熱する。同様に、ヒーター第1部分52aとヒーター第2部分52bも、第1補償検出部13および第1ダミー材料部80aと、第2補償検出部15および第2ダミー材料部80bとを加熱する(
図1参照)。
【0055】
ヒーター第1部分52a、ヒーター第2部分52bおよびヒーター第3部分52cは、絶縁膜30の梁部33a、33d、33e、33h、33i、33lを通って互いに直列接続されている。ヒーター第1部分52a、ヒーター第2部分52bおよびヒーター第3部分52cの配線としては、
図6に示すように直列接続する態様のみには限定されず、ヒーター第1部分52a、ヒーター第2部分52bおよびヒーター第3部分52cを、それぞれ独立に配線する態様であってもよい。
【0056】
ヒーター膜50の材質としては、導電性であれば特に限定されないが、第1補償用素子12、第2補償用素子14および検知用素子16の形成工程における高温プロセスを可能とする観点から、比較的高融点の材料であることが好ましい。このような材料として、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、ニッケルクロム合金(NiCr)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、または、これらを2つ以上含む合金が例示される。
【0057】
(1.5.検出電極膜およびサーミスタ膜)
図8(a)は、検出電極膜70と基材20の平面図であり、
図8(b)は、検出電極膜70と基材20の断面図である。また、
図9(a)は、サーミスタ膜60と基材20の平面図であり、
図9(b)は、サーミスタ膜60と基材20の断面図である。
【0058】
サーミスタ膜60と検出電極膜70は、第2の絶縁膜32の上に形成されている。
図3(b)に示すように、ガスセンサ10では、サーミスタ膜60(サーミスタ膜第3部分60c)の上に検出電極膜70(検出電極第3部分70c)が形成されている。ただし、サーミスタ膜60と検出電極膜70の上下関係は実施形態に示すもののみには限定されず、検出電極膜70(検出電極第3部分70c)の上にサーミスタ膜60が形成されていてもよい。
【0059】
サーミスタ膜60と検出電極膜70の各部分は、
図1に示す第1補償検出部13、第2補償検出部15、反応検出部17を構成する。
図9に示すように、サーミスタ膜60は、キャビティ22の上に配置されており、メンブレン18と同様の平面視略Y字状の外形状を有する。サーミスタ膜60の中央部には、メンブレン18の中央孔部35と重なる位置に、貫通孔であるサーミスタ中央孔部65が形成されている。
【0060】
図9(a)に示すように、サーミスタ膜60は、キャビティ22上の第1の位置22aにあるサーミスタ膜第1部分60aと、キャビティ22上の第2の位置22bにあるサーミスタ膜第2部分60bと、キャビティ22上の第3の位置22cにあるサーミスタ膜第3部分60cとを有する。サーミスタ膜第1部分60aと、サーミスタ膜第2部分60bと、サーミスタ膜第3部分60cとは、メンブレン18の上で互いに繋がっている。ただし、サーミスタ膜第1部分60aと、サーミスタ膜第2部分60bと、サーミスタ膜第3部分60cとは、それぞれ
図8に示す検出電極第1部分70a、検出電極第2部分70b、検出電極第3部分70cに重ねて形成されていればよく、各部分が分離していてもかまわない。
【0061】
図8(a)に示すように、検出電極膜70は、キャビティ22上の第1の位置22aにある検出電極第1部分70aと、キャビティ22上の第2の位置22bにある検出電極第2部分70bと、キャビティ22上の第3の位置22cにある検出電極第3部分70cとを有する。
【0062】
検出電極第1部分70a、検出電極第2部分70bおよび検出電極第3部分70cは、検出電極膜70の他の一部である検出電極膜配線部を介して、キャビティ周縁部24まで配線されている。検出電極第1部分70aは絶縁膜30の梁部33b、33cを介して、検出電極第2部分70bは絶縁膜30の梁部33f、33gを介して、検出電極第3部分70cは絶縁膜30の梁部33j、33kを介して、それぞれ独立にキャビティ周縁部24に配線されている。検出電極第1部分70a、検出電極第2部分70bおよび検出電極第3部分70cの検出信号は、
図1に示す湿度補正部11や、図示しない制御演算部に送られる。なお、検出電極第1部分70a一方の電極と、検出電極第2部分70bの一方の電極とは、GNDに接続されるため1つの配線にまとめられているが、検出電極膜70の配線は、
図8に示す例のみには限定されない。
【0063】
検出電極第1部分70a、検出電極第2部分70b、検出電極第3部分70cは、それぞれが接触するサーミスタ膜第1部分60a、サーミスタ膜第2部分60b、サーミスタ膜第3部分60cの抵抗変化(主として温度変化による)を検出する。
図3(b)に示すように、サーミスタ膜第3部分60cは、第3の位置22cにおいてサーミスタ膜第3部分60cの上に形成される検知材料部80cに接触する。そのため、検出電極第3部分70cは、サーミスタ膜第3部分60cの抵抗変化を検出することで、検知材料部80cにおける所定のガスとの反応に伴う熱的な変化を検出できる。
【0064】
検出電極第1部分70aおよび検出電極第2部分70bも、検出電極第3部分70cと同様に、サーミスタ膜第1部分60aおよびサーミスタ膜第2部分60bの抵抗変化を検出することで、第1ダミー材料部80aおよび第2ダミー材料部80bの熱的な変化などを検出できる。第1ダミー材料部80aおよび第2ダミー材料部80bは、所定のガスと反応しないダミー材料を有するため、検出電極第1部分70aおよび検出電極第2部分70bでは、測定対象のガスの濃度上昇および濃度低下による影響以外の環境の変化を検出できる。
【0065】
図8に示す検出電極膜70の材質としては、金属などの導電体を用いることができ、たとえば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)などが挙げられる。また、
図9に示すサーミスタ膜60を構成する材料としては、温度変化によって抵抗値が変化するサーミスタ膜として使用可能な材料であれば特に制限されないが、たとえば、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)等の金属元素を含む複合金属酸化物等が例示される。
【0066】
(1.6.検知材料部およびダミー材料部)
図11(a)は、検知材料部80c、第1ダミー材料部80a、第2ダミー材料部80bと基材20の平面図であり、
図8(b)は、検知材料部80と基材20の断面図である。
図1および
図3(b)に示すように、検知材料部80cは、キャビティ22上の第3の位置22cにおいて、ヒーター第3部分52cおよび絶縁膜第3部分30cにおける第2の絶縁膜32の上に形成される。具体的には、検知材料部80cは、絶縁膜第3部分30cの上に形成される反応検出部17に重ねて、反応検出部17の上に形成される。
【0067】
図1および
図3(b)に示すように、キャビティ22上の第3の位置22cにおいて、絶縁膜第3部分30cの上に形成される反応検出部17および検知材料部80cが、検知用素子16を構成する。
【0068】
図1および
図8(a)に示すように、第1ダミー材料部80aは、キャビティ22上の第1の位置22aにおいて、ヒーター第1部分52aおよび絶縁膜第1部分30aにおける第2の絶縁膜32の上に形成される。第1ダミー材料部80aは、検知材料部80cと同様に、絶縁膜第1部分30aの上に形成される第1補償検出部13に重ねて、第1補償検出部13の上に形成される。
【0069】
また、第2ダミー材料部80bは、キャビティ22上の第2の位置22bにおいて、ヒーター第2部分52bおよび絶縁膜第2部分30bにおける第2の絶縁膜32の上に形成される。第2ダミー材料部80bは、検知材料部80cおよび第1ダミー材料部80aと同様に、絶縁膜第2部分30bの上に形成される第2補償検出部15に重ねて、第2補償検出部15の上に形成される。
【0070】
図1に示すように、キャビティ22上の第1の位置22aにおいて、絶縁膜第1部分30aの上に形成される第1補償検出部13および第1ダミー材料部80aは、第1補償用素子12を構成する。また、絶縁膜第2部分30bの上に形成される第2補償検出部15および第2ダミー材料部80bは、第2補償用素子14を構成する。
【0071】
図11に示すように、第1ダミー材料部80aの形成面積である第1の形成面積S1と、第2ダミー材料部80bの形成面積である第2の形成面積S2とは、互いに異なる。すなわち、第1ダミー材料部80aは第1の形成面積S1で形成され、第2ダミー材料部80bは、第1の形成面積S1とは異なる第2の形成面積S2で形成される。ガスセンサ10では、形成面積が互いに異なる第1および第2ダミー材料部80a、80bを含む第1補償用素子12および第2補償用素子14を有することにより、検知材料部80cまたは第1および第2ダミー材料部80a、80bの形成面積の製造ばらつきによって生じる補正誤差を小さくすることができる。
【0072】
また、検知材料部80cは、第3の形成面積S3で形成される。第3の形成面積S3は、第1の形成面積S1および第2の形成面積S2のいずれか一方より広く、かつ、第1の形成面積S1および第2の形成面積S2のいずれか他方より狭いことが好ましい。
図1および
図11(a)に示すガスセンサ10では、検知材料部80cの第3の形成面積S3は、第1ダミー材料部80aの第1の形成面積S1より広く、かつ、第2ダミー材料部80bの第2の形成面積S2より狭い。
【0073】
このようなガスセンサ10は、所定のガスを検出する検知用素子16による検出値から、所定のガスの濃度以外の環境変化の影響をより精度よく除去し、ガスの検出精度を効果的に高めることができる。なお、第1~第3の形成面積S1~S3は、
図1および
図11(a)に示すように、ガスセンサ10を上方が平面視した場合における第1ダミー材料部80a、第2ダミー材料部80bおよび検知材料部80cの面積により規定される。
【0074】
また、
図1に示すように、検知用素子16と第1補償用素子12との間の距離である第1の距離L1と、検知用素子16と第2補償用素子14との間の距離である第2の距離L2とは、略等しいことが、第1補償用素子12と第2補償用素子14との間の位置的な条件の差を小さくする観点から好ましい。また、同様の理由により、検知用素子16の中心位置と、第1補償用素子12の中心位置と、第2補償用素子14の中心位置とを結ぶ線は、略正三角形を形成することも好ましい。
【0075】
検知材料部80cに含まれるガス検知材料としては、酸化アルミニウム(γアルミナ等)や、酸化シリコンや、酸化ビスマスや、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化チタンのような遷移金属酸化物や、複数種類の遷移金属元素を含む金属複合酸化物等の酸化物材料の担体に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、金(Au)、銀(Ag)等の貴金属粒子や、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等の非貴金属粒子が担持された材料が挙げられる。第1ダミー材料部80aおよび第2ダミー材料部80bに含まれるダミー材料としては、酸化アルミニウム(γアルミナ等)や、酸化シリコンや、酸化ビスマスや、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化チタンのような遷移金属酸化物や、複数種類の遷移金属元素を含む金属複合酸化物などが挙げられる。なお、ダミー材料と、ガス検知材料の担体の材料は同じでもよい。
【0076】
(1.7.端子電極膜)
図10(a)は、端子電極膜90と基材20の平面図であり、
図10(b)は、端子電極膜90と基材20の断面図である。
図10に示すように、端子電極膜90は、基材20のキャビティ周縁部24に形成される。端子電極膜90は、キャビティ周縁部24において、ヒーター膜50に重ねて形成される部分であるヒーター端子95a、95bと、検出電極膜70に重ねて形成される部分である電極端子97a~97eとを有する。
【0077】
図10(a)に示すように端子電極膜90は、基材20のキャビティ周縁部24において、ヒーター膜50および検出電極膜70の上に重ねて、ヒーター膜50および検出電極膜70に対して接触するように設けられる。
図1に示すように、端子電極膜90の各部分であるヒーター端子95a、95bおよび電極端子97a~97eは、ガスセンサ10の上側に露出しており、ヒーター端子95a、95bおよび電極端子97a~97eに対して外部配線が接続される。
【0078】
端子電極膜90の材質は、良導体であれば特に限定されないが、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)などが挙げられ、外部配線に対する接合性などの観点から、金(Au)が好ましい。また、端子電極膜90は、他の膜との密着性を得るために、チタン(Ti)、クロム(Cr)などの下地膜を有してもよい。
【0079】
(1.8.製造方法)
以下、ガスセンサ10の製造方法の一例を説明する。ただし、ガスセンサ10の製造方法は、下記に示す製造方法のみには限定されない。まず、ガスセンサ10の製造では、まず基材20の原料となる基材材料を準備する。基材材料は、キャビティ22が形成されていない平板状である。次に、準備した基材材料の一方の主面(キャビティ22形成後にキャビティ周縁部24となる面)に、第1の絶縁膜31(
図5)を形成する。第1の絶縁膜31を形成する方法としては、熱酸化法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等の公知の成膜法を用いればよい。
【0080】
形成した第1の絶縁膜31上に、ヒーター膜50(
図6)を形成する。ヒーター第1部分52a、ヒーター第2部分52bおよびヒーター第3部分52cの形状は、たとえば、リフトオフ工法により形成される。リフトオフ工程では、まず、所定のパターンを形成する面全体にレジストを塗布して、所定のパターン形状となるように露光し現像する。現像により、所定のパターン形状に対応するレジストが溶解し、所定のパターン形状がパターニングされる。レジスト溶解後に、スパッタリング、蒸着等の成膜法によりパターンを構成する材料を成膜する。成膜後、残存しているレジストを剥離液により除去することにより、レジスト上に成膜された材料も除去され、パターニングした領域のみに成膜した材料が残り、所定のパターンが形成される。
【0081】
ヒーター膜50を形成した後、ヒーター端子95a、95b(
図10)が形成される部分を除きヒーター膜50が覆われるように、第1の絶縁膜31の形成と同様にして、第2の絶縁膜32を、公知の成膜法により形成する。
【0082】
次に、第2の絶縁膜32の上に、第1補償検出部13、第2補償検出部15、反応検出部17を形成する。第1補償検出部13、第2補償検出部15、反応検出部17の形成工程では、まず、サーミスタ膜60(
図9)を絶縁膜30の上に形成し、さらに、サーミスタ膜60の上に検出電極膜70(
図8)を形成する。サーミスタ膜60や検出電極膜70の成膜方法は、スパッタリング法や蒸着法などを用いることができ、検出電極膜70のパターニングには、ヒーター膜50と同様のリフトオフ工法などを用いることができる。
【0083】
次に、検出電極膜70等が形成されたキャビティ周縁部24に、端子電極膜90(
図10)を形成する。検出電極膜70の成膜方法としては、スパッタリング法や蒸着法などを用いることができる。
【0084】
次に、基材材料の主面のうち、第1の絶縁膜31等が形成されていない主面において、所定の領域にエッチングマスクを施し、反対側の主面に形成された第1の絶縁膜31が露出するまで基材材料をエッチングし、キャビティ22を形成する。キャビティ22が形成された領域に対応する第1の絶縁膜31および第2の絶縁膜32が、
図1に示すメンブレン18となる。
【0085】
さらに、キャビティ22において第1補償検出部13、第2補償検出部15、反応検出部17を形成した第1の位置22a、第2の位置22b、第3の位置22cに、第1ダミー材料部80a、第2ダミー材料部80bおよび検知材料部80cを形成し、ガスセンサ10を得る。第1ダミー材料部80a、第2ダミー材料部80bおよび検知材料部80cの形成工程では、ダミー材料またはガス検知材料を含むペーストを用いて塗布体を形成し、これを所定の温度で熱処理することにより、第1ダミー材料部80a、第2ダミー材料部80bおよび検知材料部80cを形成する。
【0086】
ダミー材料またはガス検知材料を含むペーストは、ダミー材料またはガス検知材料として上述した原料材料と、溶剤、バインダおよび添加剤とを混合することにより得られる。
【0087】
(1.9.動作)
ガスセンサ10において、ヒーター膜50に電流が流れることにより、ヒーター第1部分52a、ヒーター第2部分52bおよびヒーター第3部分52cが発熱し、メンブレン18上の第1補償用素子12、第2補償用素子14、検知用素子16が所定の温度に加熱される。
【0088】
図1に示すように、検知用素子16において反応検出部17が接触する検知材料部80cでは、ガスセンサ10が配置された空間に検知対象ガスが含まれている場合、ガス検知材料の触媒作用により検知材料部80cの表面で、検知対象ガスが酸素と結合して燃焼する。
図3(b)に示すように、反応検出部17のサーミスタ膜第3部分60cは、検知材料部80cと熱的に結合している。したがって、反応検出部17の検出電極第3部分70cは、検知材料部80cにおいて生じたガスの燃焼による温度変化を、サーミスタ膜第3部分60cの抵抗変化により検出する。
【0089】
また、第1補償用素子12および第2補償用素子14では、第1および第2補償検出部13、15の検出電極第1部分70aおよび検出電極第2部分70bが、第1ダミー材料部80aに接触するサーミスタ膜第1部分60aおよび第2ダミー材料部80bに接触するサーミスタ膜第2部分60bの抵抗変化を検出する。第1ダミー材料部80aおよび第2ダミー材料部80bが有するダミー材料は、所定のガスに反応しないため、第1補償用素子12および第2補償用素子14での検出値は、検知対象となる所定のガスの濃度変化以外の環境変化を反映している。
【0090】
また、
図11(a)から明らかなように、第1ダミー材料部80aと第2ダミー材料部80bとは形成面積が異なるため、ガスセンサ10では、第1補償用素子12の検出値と第2補償用素子14の検出値との比較から、ダミー材料部の形成面積と検出値の関係を表す関数(検量線)を算出できる。ガスセンサ10は、ダミー材料部の形成面積と検出値の関係を表す関数により、任意の塗布面積のダミー材料部を有する仮想的な補償用素子の検出値を算出することができる。
【0091】
すなわち、ガスセンサ10は、第1補償用素子12の検出値と、第1の形成面積S1と、第2補償用素子14の検出値と、第2の形成面積S2とから、反応検出部17同じ第3の形成面積S3で形成されダミー材料を有する仮想的な第3補償用素子の検出値と、を算出する。次に検知用素子16の検出値と第3補償用素子の検出値との差分を求める。この場合、検知用素子16と第3補償用素子とでは形成面積が一致しているため、算出される検出値の差分には、形成面積の差による誤差が含まれず、算出される検出鋳の差分は、検知材料部80cにおいて生じたガスの燃焼による検出値の変化を正確に反映する。ガスセンサ10は、このように算出された値に基づき、所定のガスの濃度を算出することにより、検知材料部80cまたは第1および第2ダミー材料部80a、80bの形成面積の製造ばらつきによる補正誤差を小さくすることができる。
【0092】
(2.第2実施形態)
図12は、第2実施形態に係るガスセンサ210の平面図であり、
図13は、ガスセンサ210のYZ平面による断面図であり、
図14は、ガスセンサ210のXY平面による断面図である。ガスセンサ210は、第1補償用素子212、第2補償用素子214および検知用素子216が、それぞれ独立に形成された第1キャビティ222a、第2キャビティ222bおよび第3キャビティ222cに配置されている点で、
図1に示すガスセンサ10とは異なる。しかし、ガスセンサ210は、キャビティやメンブレンの形状等が異なることを除き、第1補償用素子212、第2補償用素子214および検知用素子216などの各部分の基本的な構造については、ガスセンサ10と同様である。ガスセンサ210については、ガスセンサ10との相違点を中心に説明を行い、ガスセンサ10との共通点については、説明を省略する。
【0093】
ガスセンサ210は、ガスセンサ10と同様に、第1補償用素子212、第2補償用素子214および検知用素子216で構成される少なくとも3つの検出部分を有する。
図12に示すように、第1補償用素子212、第2補償用素子214および検知用素子216は、平面視においてそれぞれの中心位置が1つの三角形の頂点を形成するように配置されている。ただし、
図1に示すガスセンサ10では、すべての素子が一体のメンブレン18に配置されているのに対して、
図12に示すガスセンサ210では、第1補償用素子212、第2補償用素子214および検知用素子216が、互いに独立する第1メンブレン218a、第2メンブレン218bおよび第3メンブレン218cに、それぞれ個別に配置される。
【0094】
図12~
図14に示すように、基材220には、3つのキャビティである第1キャビティ222a、第2キャビティ222bおよび第3キャビティ222cが形成されている。第1キャビティ222a、第2キャビティ222bおよび第3キャビティ222cは平面視略矩形であり、互いにキャビティ周縁部224により隔てられている。
【0095】
図13および
図14に示すように、ガスセンサ210の第1の絶縁膜231および第2の絶縁膜232は、
図1に示す第1の絶縁膜31および第2の絶縁膜32と同様に、第1~第3キャビティ222a~222cの上側および基材220の上側表面を構成するキャビティ周縁部224の上側に形成されている。ガスセンサ210においても、ガスセンサ10と同様に、第1の絶縁膜231と第2の絶縁膜232との平面形状は、ヒーター端子95a、95bが形成される部分を除き、略一致する。
【0096】
図12および
図13に示すように、第1の絶縁膜231および第2の絶縁膜232で構成される絶縁膜30は、第1キャビティ222a、第2キャビティ222bおよび第3キャビティ222cの上側にそれぞれ保持される第1メンブレン218a、第2メンブレン218bおよび第3メンブレン218cを有する。第1~第3メンブレン218a~218cの周りには、周縁孔部234と梁部233とが、各第1~第3メンブレン218a~218cを囲うように交互に配置されている。周縁孔部234は、第1~第3キャビティ222a~222cおよび第1~第3メンブレン218a~218cの辺に対応して配置されており、梁部233は、第1~第3キャビティ222a~222cおよび第1~第3メンブレン218a~218cのコーナーに対応して配置されている。
【0097】
第1~第3メンブレン218a~218cの平面形状は、第1~第3キャビティ222a~222cよりやや小さい矩形形状を有する。第1~第3メンブレン218a~218cは、コーナーに接続する梁部233を介してキャビティ周縁部224上の絶縁膜30の他の部分に接続しており、第1~第3キャビティ222a~222c上に保持される。
【0098】
図14(b)および
図14(c)に示すように、ガスセンサ210のヒーター膜250は、ガスセンサ10のヒーター膜50同様に、第1の絶縁膜231と第2の絶縁膜232との間に形成される。
図12、
図13(b)および
図13(c)に示すように、ヒーター膜250は、ミアンダパターンを有しておりヒーター部を構成するヒーター第1部分252a、ヒーター第2部分252bおよびヒーター第3部分252cを有する。ヒーター第1部分252aは第1メンブレン218aに形成されており、ヒーター第2部分252bは第2メンブレン218bに形成されており、ヒーター第3部分252cは第3メンブレン218cに形成されている。
図12に示すように、ヒーター第1部分252a、ヒーター第2部分252bおよびヒーター第3部分252cは、ヒーター膜250の他の一部であるヒーター膜配線部253を介して、キャビティ周縁部224まで配線されている。
【0099】
ガスセンサ210のサーミスタ膜260と検出電極膜270は、ガスセンサ10のサーミスタ膜60および検出電極膜70と同様に、第2の絶縁膜32の上に形成されている。サーミスタ膜260と検出電極膜270は、互いに分離している3つの部分を有しており、各部分は、
図12に示す第1補償検出部213、第2補償検出部215、反応検出部217を構成する。
【0100】
サーミスタ膜260は、第1キャビティ222aおよび第1メンブレン218a上にあるサーミスタ膜第1部分260aと、第2キャビティ222bおよび第2メンブレン218b上にあるサーミスタ膜第2部分260bと、第3キャビティ222cおよび第3メンブレン218c上にあるサーミスタ膜第3部分260cとを有する。また、検出電極膜270は、第1キャビティ222aおよび第1メンブレン218a上にある検出電極第1部分270aと、第2キャビティ222bおよび第2メンブレン218b上にある検出電極第2部分270bと、第3キャビティ222cおよび第3メンブレン218c上にある検出電極第3部分270cとを有する。
【0101】
検出電極第1部分270a、検出電極第2部分270bおよび検出電極第3部分270cは、検出電極膜270の他の一部である検出電極膜配線部を介して、キャビティ周縁部224まで配線されている。検出電極第1部分270a、検出電極第2部分270b、検出電極第3部分270cは、それぞれが接触するサーミスタ膜第1部分260a、サーミスタ膜第2部分260b、サーミスタ膜第3部分260cの抵抗変化(主として温度変化による)を検出する。このように、検出電極第1部分270aとサーミスタ膜第1部分260aが第1補償検出部213を構成し、検出電極第2部分270bとサーミスタ膜第2部分260bが第2補償検出部215を構成し、検出電極第3部分270cとサーミスタ膜第3部分260cが反応検出部217を構成する。
【0102】
図12、
図13(b)、
図14(b)に示すように、検知材料部80cは、第3キャビティ222cおよび第3メンブレン218c上に配置される反応検出部217に重ねて、反応検出部217の上に形成される。第3キャビティ222c上において、第3メンブレン218cの上に配置される反応検出部217および検知材料部80cが、検知用素子216を構成する。
【0103】
また、
図12、
図13(a)、
図14(c)に示すように、第1ダミー材料部80aは、第1キャビティ222aおよび第1メンブレン218a上に配置される第1補償検出部213に重ねて、第1補償検出部213の上に形成される。第1キャビティ222a上において、第1メンブレン218aの上に配置される第1補償検出部213および第1ダミー材料部80aが、第1補償用素子212を構成する。
【0104】
また、
図12、
図13(c)、
図14(c)に示すように、第2ダミー材料部80bは、第2キャビティ222bおよび第2メンブレン218b上に配置される第2補償検出部215に重ねて、第2補償検出部215の上に形成される。第2キャビティ222b上において、第2メンブレン218bの上に配置される第2補償検出部215および第2ダミー材料部80bが、第2補償用素子214を構成する。
【0105】
ガスセンサ210において、第1ダミー材料部80aが第1の形成面積S1を有し、第2ダミー材料部80bが第2の形成面積S2を有し、検知材料部80cが第3の形成面積S3を有する点は、ガスセンサ10と同様である。
【0106】
ガスセンサ210を構成する基材220、絶縁膜230、ヒーター膜250、検出電極膜270、サーミスタ膜260、検知材料部80c、第1ダミー材料部80aおよび第2ダミー材料部80b等の材質や製法については、ガスセンサ10を構成する基材20、絶縁膜30、ヒーター膜50、検出電極膜70、サーミスタ膜60、検知材料部80c、第1ダミー材料部80aおよび第2ダミー材料部80b等と同様である。
【0107】
図12~
図14に示すガスセンサ210は、検知用素子216、第1補償用素子212および第2補償用素子214が、別々のメンブレン218a~218cおよびキャビティ222a~222cに配置されている。このようなガスセンサ210は、ガスセンサ10と比較して、検知用素子216でのガスの燃焼による影響を、第1補償用素子212および第2補償用素子214が受けにくいという利点がある。また、素子毎にキャビティを分けることで、1つ当たりのメンブレン部分が小さくなるため、応力や物理的衝撃に対して破壊され難くなる。その一方で、各キャビティ222a~222c間の放熱バラツキ等による測定誤差が生じやすい傾向にある。
【0108】
ただし、ガスセンサ210は、ガスセンサ10と同様に、検知用素子216、第1補償用素子212および第2補償用素子214の各素子間の距離を等しくし、各素子を1つの基材220の中で近づけて配置することで、各キャビティ222a~222cの測定誤差を可能な限り小さくすることができる。その他、ガスセンサ210は、ガスセンサ10との共通点については、ガスセンサ10と同様の効果を奏する。
【0109】
(第3実施形態)
図15は、第3実施形態に係るガスセンサ310の平面図であり、
図16は、ガスセンサ310のYZ平面による断面図であり、
図17は、ガスセンサ310のXY平面による断面図である。ガスセンサ310は、第1補償用素子312、検知用素子316および第2補償用素子314が直線的に配置されている点で、第1補償用素子212、検知用素子216および第2補償用素子214が三角形に配置されているガスセンサ210とは異なる。しかし、ガスセンサ310は、各素子の配列が異なることを除き、ガスセンサ210と同様である。ガスセンサ310については、ガスセンサ210との相違点を中心に説明を行い、ガスセンサ210との共通点については、説明を省略する。
【0110】
ガスセンサ310は、ガスセンサ210と同様に、第1補償用素子312、第2補償用素子314および検知用素子316で構成される少なくとも3つの検出部分を有する。
図15に示すように、第1補償用素子312、検知用素子316、第2補償用素子214は、平面視においてそれぞれの中心位置が直線状に並ぶように配置されている。また、
図15に示すガスセンサ310では、
図12に示すガスセンサ210と同様に、第1補償用素子312、第2補償用素子314および検知用素子316が、互いに独立する第1メンブレン318a、第2メンブレン318bおよび第3メンブレン318cに、それぞれ個別に配置される。
【0111】
図15~
図17に示すように、基材320には、3つのキャビティである第1キャビティ322a、第3キャビティ322cおよび第2キャビティ322bが、Y軸方向に沿って形成されている。第1キャビティ322a、第2キャビティ322bおよび第3キャビティ322cは平面視略矩形であり、互いにキャビティ周縁部324により隔てられている。
【0112】
ガスセンサ310の第1の絶縁膜331および第2の絶縁膜332は、
図13および
図14に示す第1の絶縁膜231および第2の絶縁膜232と同様に、第1~第3キャビティ322a~322cの上側および基材320の上側表面を構成するキャビティ周縁部324の上側に形成されている。ガスセンサ310においても、ガスセンサ210と同様に、第1の絶縁膜331と第2の絶縁膜332との平面形状は、ヒーター端子395a、395bが形成される部分を除き、略一致する。
【0113】
図15および
図16に示すように、第1の絶縁膜331および第2の絶縁膜332で構成される絶縁膜30は、第1キャビティ322a、第2キャビティ322bおよび第3キャビティ322cの上側にそれぞれ保持される第1メンブレン318a、第2メンブレン318bおよび第3メンブレン318cを有する。第1~第3メンブレン318a~318cの周りには、周縁孔部334と梁部333とが、各第1~第3メンブレン318a~318cを囲うように交互に配置されている。周縁孔部334は、第1~第3キャビティ322a~322cおよび第1~第3メンブレン318a~318cの辺に対応して配置されており、梁部333は、第1~第3キャビティ322a~322cおよび第1~第3メンブレン318a~318cのコーナーに対応して配置されている。
【0114】
第1~第3メンブレン318a~318cの平面形状は、第1~第3キャビティ322a~322cよりやや小さい矩形形状を有する。第1~第3メンブレン318a~318cは、コーナーに接続する梁部333を介してキャビティ周縁部324上の絶縁膜30の他の部分に接続しており、第1~第3キャビティ322a~322c上に保持される。
【0115】
図16および
図17(a)に示すように、ガスセンサ310のヒーター膜350は、ガスセンサ210のヒーター膜250同様に、第1の絶縁膜331と第2の絶縁膜332との間に形成される。
図15に示すように、ヒーター膜250は、ミアンダパターンを有しておりヒーター部を構成するヒーター第1部分352a、ヒーター第2部分352bおよびヒーター第3部分352cを有する。ヒーター第1部分352aは第1メンブレン318aに形成されており、ヒーター第2部分352bは第2メンブレン318bに形成されており、ヒーター第3部分352cは第3メンブレン318cに形成されている。
図15に示すように、ヒーター第1部分352a、ヒーター第2部分352bおよびヒーター第3部分352cは、ヒーター膜250の他の一部であるヒーター膜配線部353を介して、キャビティ周縁部324まで配線されている。
【0116】
ガスセンサ310のサーミスタ膜360と検出電極膜370は、ガスセンサ210のサーミスタ膜260および検出電極膜270と同様に、第2の絶縁膜232の上に形成されている。サーミスタ膜360と検出電極膜370は、互いに分離している3つの部分を有しており、各部分は、
図16に示す第1補償検出部313、第2補償検出部315、反応検出部317を構成する。
【0117】
サーミスタ膜360は、第1キャビティ322aおよび第1メンブレン318a上にあるサーミスタ膜第1部分360aと、第2キャビティ322bおよび第2メンブレン318b上にあるサーミスタ膜第2部分360bと、第3キャビティ322cおよび第3メンブレン318c上にあるサーミスタ膜第3部分360cとを有する。また、検出電極膜370は、第1キャビティ322aおよび第1メンブレン318a上にある検出電極第1部分370aと、第2キャビティ322bおよび第2メンブレン318b上にある検出電極第2部分370bと、第3キャビティ322cおよび第3メンブレン318c上にある検出電極第3部分370cとを有する。
【0118】
検出電極第1部分370a、検出電極第2部分370bおよび検出電極第3部分370cは、検出電極膜370の他の一部である検出電極膜配線部を介して、キャビティ周縁部324まで配線されている。検出電極第1部分370a、検出電極第2部分370b、検出電極第3部分370cは、それぞれが接触するサーミスタ膜第1部分360a、サーミスタ膜第2部分360b、サーミスタ膜第3部分360cの抵抗変化(主として温度変化による)を検出する。このように、検出電極第1部分370aとサーミスタ膜第1部分360aが第1補償検出部313を構成し、検出電極第2部分370bとサーミスタ膜第2部分360bが第2補償検出部315を構成し、検出電極第3部分370cとサーミスタ膜第3部分360cが反応検出部317を構成する。
【0119】
図15、
図16、
図17(a)に示すように、検知材料部80cは、第3キャビティ322cおよび第3メンブレン318c上に配置される反応検出部317に重ねて、反応検出部317の上に形成される。第3キャビティ322c上において、第3メンブレン318cの上に配置される反応検出部317および検知材料部80cが、検知用素子316を構成する。
【0120】
また、第1ダミー材料部80aは、第1キャビティ322aおよび第1メンブレン318a上に配置される第1補償検出部313に重ねて、第1補償検出部313の上に形成される。第1キャビティ322a上において、第1メンブレン318aの上に配置される第1補償検出部313および第1ダミー材料部80aが、第1補償用素子312を構成する。
【0121】
また、第2ダミー材料部80bは、第2キャビティ322bおよび第2メンブレン318b上に配置される第2補償検出部315に重ねて、第2補償検出部315の上に形成される。第2キャビティ322b上において、第2メンブレン318aの上に配置される第2補償検出部315および第2ダミー材料部80bが、第2補償用素子314を構成する。
【0122】
ガスセンサ310において、第1ダミー材料部80aが第1の形成面積S1を有し、第2ダミー材料部80bが第2の形成面積S2を有し、検知材料部80cが第3の形成面積S3を有する点は、ガスセンサ210と同様である。
図15および
図17(b)に示すように、端子電極膜390のヒーター端子395a、395bおよび電極端子397a~397eは、直線状に配置される第1補償用素子312、検知用素子316、第2補償用素子314のY軸方向両側に形成される。
【0123】
ガスセンサ310を構成する基材320、絶縁膜330、ヒーター膜350、検出電極膜370、サーミスタ膜360、検知材料部80c、端子電極膜390、第1ダミー材料部80aおよび第2ダミー材料部80b等の材質や製法については、ガスセンサ10を構成する基材20、絶縁膜30、ヒーター膜50、検出電極膜70、サーミスタ膜60、端子電極膜90、検知材料部80c、第1ダミー材料部80aおよび第2ダミー材料部80b等と同様である。
【0124】
図15~
図17に示すガスセンサ310は、第1補償用素子312、検知用素子316および第2補償用素子314が、直線状に配置された別々のメンブレン318a~318cおよびキャビティ322a~322cに設けられている。このようなガスセンサ310は、連続する1つの基材320の中央部分に配置される第3キャビティ322cと、基材320の端部に近い第1キャビティ322aおよび第2キャビティ322bとの間で、温度差が生じやすい傾向にある。
【0125】
ただし、ガスセンサ310は、ガスセンサ210と同様に、検知用素子316と第1補償用素子312との間の距離と、検知用素子316と第2補償用素子314との間の距離とを等しくすることで、第1補償用素子312と第2補償用素子314との間の環境を揃えることができる。その他、ガスセンサ310は、ガスセンサ210との共通点については、ガスセンサ210と同様の効果を奏する。
【0126】
以下、実施例を示して本開示に係るガスセンサについてさらに詳細な説明を行うが、本開示に係るガスセンサは、これらの実施例のみには、何ら限定されるものではない。
【0127】
(4.第1実施例)
第1実施例では、
図1に示すガスセンサ10を、1つのMEMSチップとして以下の条件で作製し、ガス濃度を変化させた場合の検知用素子16、第1補償用素子12および第2補償用素子14からの検出値を取得した。
<ガスセンサの製造条件>
基材20:Si
第1の絶縁膜31:SiN/SiО
2
第2の絶縁膜32:SiN
ヒーター膜50:Pt
検出電極膜70、端子電極膜90:Au
サーミスタ膜:NiMnCoFeO
x
第1ダミー材料部80a:Al
2O
3(ダミー材料)
第1の形成面積S1:φ140μm円形
第2ダミー材料部80b:Al
2O
3(ダミー材料)
第2の形成面積S2:φ158μm円形
検知材料部80c:Pt担持Al
2O
3(ガス検知材料)
第3の形成面積S3:φ151μm円形
【0128】
図18は、第1実施例に係るガスセンサ10の検知用素子16、第1補償用素子12、第2補償用素子14の検出値と、ガスセンサ10を設置する空間のガス濃度設定の時間推移を示すグラフである。
図18において、初期状態(時間0sec)において最もグラフの下側から始まるプロットが、ガス濃度設定を表している。ガス濃度は、300~600secにおいて100ppm、900~1200secにおいて300ppm、1500~1800secにおいて500ppmとし、その他の時間で0ppmとした。検出対象のガスは、CO、H
2、CH
4、C
2H
5OHである。測定中における環境温度および湿度は一定(25℃、30%)とした。
【0129】
図18において、初期状態(時間0sec)において最もグラフの上側から始まるプロットが第2補償用素子14の検出値、グラフの上側から2番目から始まるプロットが検知用素子16の検出値、グラフの上側から3番目から始まるプロットが第1補償用素子12の検出値である。
図18に示すように、検知用素子16の検出値については、ガス濃度設定に対応する検出値の変化が見られたが、第1補償用素子12および第2補償用素子14の検出値は、ガス濃度設定に対応する検出値の変化は見られなかった。
【0130】
図19(a)~
図19(c)は、
図18の検出結果から得られたガス濃度(100ppm(
図19(a))、300ppm(
図19(b)、500ppm(
図19(c))における各素子12、14、16の検出値と、第1および第2ダミー材料部80a、80bおよび検知材料部80cの形成面積(第1~第3の形成面積S1~S3)の関係をプロットしたグラフである。
図19(a)~
図19(c)において、横軸の形成面積がS1である位置にプロットされた白丸が第1補償用素子12の検出値であり、横軸の形成面積がS2である位置にプロットされた白丸が第2補償用素子14の検出値である。
【0131】
また、横軸の形成面積がS3である位置にプロットされた黒丸が検知用素子16の検出値である。
図19(a)~
図19(c)に示すように、ガスセンサ10は、第1補償用素子12の検出値と、第1の形成面積S1と、第2補償用素子14の検出値と、第2の形成面積S2とから、反応検出部80cと同じ第3の形成面積S3で形成されダミー材料を有する仮想的な第3補償用素子の検出値とを算出する。
図19(a)~
図19(c)において、横軸の形成面積がS3である位置にプロットされた白丸が、算出された仮想的な第3補償用素子の検出値(計算値)である。
【0132】
図19(d)は、
図19(a)~
図19(c)に示される検知用素子16の検出値(横軸S3の位置の黒丸)と第3補償用素子の検出値(計算値)(横軸S3の位置の白丸)との差分(抵抗差(Ω))を、ガス濃度(横軸)に対してプロットしたグラフである。
図19(d)に示すように、検知用素子16の検出値と第3補償用素子の検出値との差分は、ガス濃度の比例関数に回帰し、標本値と関数との残差が小さいことを確認した。
【0133】
図20は、参考例に係るガスセンサを用いて
図18および
図19に示す第1実施例と同様の検出を行った結果を、
図19(d)に示す第1実施例の結果と併せて表示したグラフである。参考例に係るガスセンサは、1つの補償用素子と1つの検知用素子の2つの素子(形成面積の狙い値は同じ)で構成した。
図20に示すように、第1実施例に係るガスセンサは、参考例に係るガスセンサに比べて標本値と関数との残差が小さく、ガス濃度を精度よく検出できることが確認できた。
【0134】
(第2実施例)
第2実施例では、第1実施例と同様のガスセンサ10を用いて、湿度とガス濃度とを変化させ、同様に検知用素子16、第1補償用素子12、第2補償用素子14の検出値を取得した。ガス濃度は、0ppmと100ppmとの間で変化させ、湿度は30%、50%、70%の3条件とした。環境温度は一定(25℃)とした。
【0135】
図21(a)~
図21(c)は、第2実施例により得られた各湿度(30%(
図21(a))、50%(
図21(b)、70%(
図121(c))における各素子12、14、16の検出値と、第1および第2ダミー材料部80a、80bおよび検知材料部80cの形成面積(第1~第3の形成面積S1~S3)の関係を、
図19(a)~
図19(c)と同様にプロットしたグラフである。
【0136】
第2実施例でも、第1実施例と同様に、第1補償用素子12の検出値と、第1の形成面積S1と、第2補償用素子14の検出値と、第2の形成面積S2とから、反応検出部80cと同じ第3の形成面積S3で形成されダミー材料を有する仮想的な第3補償用素子の検出値とを算出する。
図21(a)~
図21(c)において、横軸の形成面積がS3である位置にプロットされた白丸が、算出された仮想的な第3補償用素子の検出値(計算値)である。
【0137】
図21(d)は、
図21(a)~
図21(c)に示される検知用素子16の検出値(横軸S3の位置の黒丸)と第3補償用素子の検出値(計算値)(横軸S3の位置の白丸)との差分(抵抗差(Ω))を、湿度(横軸)に対してプロットしたグラフである。
図21(d)に示すように、検知用素子16の検出値と第3補償用素子の検出値との差分は、湿度に関わらず略一定であった。
図1に示すガスセンサ10の湿度補正部11は、各素子の検出値を用いて、精度よく湿度補正ができることを確認できた。
【0138】
図22は、参考例に係るガスセンサを用いて
図21に示す第2実施例と同様の検出を行った結果を、
図21(d)に示す第2実施例の結果と併せて表示したグラフである。参考例に係るガスセンサは、
図20に示す参考例と同様に、1つの補償用素子と1つの検知用素子の2つの素子(形成面積の狙い値は同じ)で構成した。
図22に示すように、第2実施例に係るガスセンサは、湿度により検出値のばらつきが小さく、湿度が変化する環境においても、ガス濃度を精度よく検出できることが確認できた。
【符号の説明】
【0139】
10、210、310…ガスセンサ
11…湿度補正部
12、212、312…第1補償用素子
13、213、313…第1補償検出部
14、214、314…第2補償用素子
15、215、315…第2補償検出部
16、216、316…検知用素子
17、217、317…反応検出部
18…メンブレン
218a、318a…第1メンブレン
218b、318b…第2メンブレン
218c、318c…第3メンブレン
20、220、320…基材
22…キャビティ
222a、322a…第1キャビティ
222b、322b…第2キャビティ
222c、322c…第3キャビティ
22a…第1の位置
22b…第2の位置
22c…第3の位置
24、224、324…キャビティ周縁部
30、230、330…絶縁膜
30a…絶縁膜第1部分
30b…絶縁膜第2部分
30c…絶縁膜第3部分
31、231、331…第1の絶縁膜
32、232、332…第2の絶縁膜
33a~33i、233、333…梁部
34a~34i、234、334…周縁孔部
35…中央孔部
36…絶縁膜周縁部
50、250、350…ヒーター膜
52a、252a、352a…ヒーター第1部分
52b、252b、352b…ヒーター第2部分
52c、252c、352c…ヒーター第3部分
53、253、353…ヒーター膜配線部
60、260、360…サーミスタ膜
60a、260a、360a…サーミスタ膜第1部分
60b、260b、360b…サーミスタ膜第2部分
60c、260c、360c…サーミスタ膜第3部分
65…サーミスタ中央孔部
70、270、370…検出電極膜
70a、270a、370a…検出電極第1部分
70b、270b、370b…検出電極第2部分
70c、270c、370c…検出電極第3部分
80a…第1ダミー材料部
S1…第1の形成面積
80b…第2ダミー材料部
S2…第2の形成面積
80c…検知材料部
S3…第3の形成面積
90、390…端子電極膜
95a、95b、395a、395b…ヒーター端子
97a~97e、397a~397e…電極端子