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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139695
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】化粧シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20241002BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241002BHJP
   B32B 3/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B7/023
B32B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020170
(22)【出願日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2023050113
(32)【優先日】2023-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】小川 哲
(72)【発明者】
【氏名】清水 洋平
(72)【発明者】
【氏名】河西 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】川村 純平
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK25C
4F100AK25E
4F100AK51C
4F100AK51E
4F100AL07B
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100CB00E
4F100DD01C
4F100DD04C
4F100EC18E
4F100EH17B
4F100EH46C
4F100EJ17C
4F100EJ53C
4F100EJ54C
4F100EJ55B
4F100EJ65E
4F100GB07
4F100GB41
4F100GB48
4F100GB81
4F100HB00
4F100HB31B
4F100JB13E
4F100JB14C
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JC00
4F100JC00C
4F100JK14
4F100JL10
4F100JL10A
4F100JL11E
4F100JN01B
4F100JN21
(57)【要約】
【課題】木質基材の表面の凹凸に起因する意匠欠点を改善することができる化粧シートを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂を含む基材シートの一方の面側に、熱可塑性樹脂を含む透明性樹脂層と、表面保護層とを少なくともこの順に備える化粧シートであって、上記化粧シートの表面の任意の方向と、上記任意の方向に対して直交する方向とのJIS Z 8741:1997に準拠した測定方法による85度鏡面光沢度Gの差が-15%を超え、かつ、15%未満であり、JIS Z 8741:1997に準拠する方法で測定方法による85度鏡面光沢度の最大値G’と、JIS Z 8781-4:2013に準拠した明度Lの関係が下記式(1)を満足する化粧シート。
L>G’-5G’-10 (1)
(ただし、上記式(1)中では、G’≧0、15≦L≦95を満足する)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含む基材シートの一方の面側に、熱可塑性樹脂を含む透明性樹脂層と、表面保護層とを少なくともこの順に備える化粧シートであって、
前記化粧シートの表面の任意の方向と、前記任意の方向に対して直交する方向とのJIS Z 8741:1997に準拠した測定方法による85度鏡面光沢度Gの差が-15%を超え、かつ、15%未満であり、
JIS Z 8741:1997に準拠した測定方法による85度鏡面光沢度の最大値G’と、JIS Z 8781-4:2013に準拠した明度Lの関係が下記式(1)を満足する化粧シート。
L>G’-5G’-10 (1)
(ただし、前記式(1)中では、G’≧0、15≦L≦95を満足する)
【請求項2】
前記表面保護層が、電離放射線硬化型樹脂を含む請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記表面保護層を備える側の面に凹凸形状を備える請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記凹凸形状が、畝状に突出した畝状部である請求項3に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記凹凸形状が、エンボスにより形成されたものである請求項3に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記基材シートの前記表面保護層が積層される側と反対側に、バッカー層を備える請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記表面保護層は、抗菌剤、抗ウイルス剤、及び、抗アレルゲン剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
建材、家具、家電製品等において、使用する部材を加飾したい場合には、意匠が施された化粧シートを貼着した化粧板が一般的に用いられている。
【0003】
化粧板は、薄膜の化粧シートを木質基材(下地材)に直接貼り合わせるため、木質基材の表面(被覆面)に凹凸が存在する場合や、埃や塵や木粉等が入り込んで凹凸が形成されてしまう場合、その凹凸が化粧材表面に浮かび上がり映出等の意匠欠点となる。
【0004】
特許文献1では、凹凸面としての表面を有した化粧シートであって、化粧シートの法線方向に対して82°傾斜した方向から前記表面に光を投射した場合、化粧シートの法線方向からの観察において長さdが3mm以上且つ幅wが3mm以上の影が形成される、化粧シートが開示されている。
【0005】
特許文献1では、化粧シートの表面の凹凸に光が当たった時に生じる影を調整する(薄くする)ことにより、下地材の被覆面に形成されている凹凸を目立たなくする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-100502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、化粧シートを木質基材にラミネートした時に化粧シートの表面に凹凸の影ができるような比較的大きな(高い)凹凸が下地材に存在する場合には有効である。
【0008】
しかしながら、人間は、影の濃淡だけでなく、平坦部と凹凸部で反射する光量の差(艶差)でも凹凸を認識してしまう。
そのため、化粧シートを木質基材にラミネートした時に化粧シートの表面に凹凸の影ができないような凹凸が木質基材に存在する場合であっても、艶差で凹凸を認識することがあり、そのような凹凸に起因する意匠欠点を改善する方法が求められていた。
【0009】
本発明は、上述する課題を解決するものであり、木質基材の表面の凹凸に起因する意匠欠点を改善することができる化粧シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、化粧シート表面の艶値、及び、明度を所定の範囲に調整することにより、木質基材に化粧シートを木質基材にラミネートした時に化粧シートの表面に凹凸の影ができないような凹凸が木質基材に存在する場合であっても、意匠欠点を改善することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂を含む基材シートの一方の面側に、熱可塑性樹脂を含む透明性樹脂層と、表面保護層とを少なくともこの順に備える化粧シートであって、上記化粧シートの表面の任意の方向と、上記任意の方向に対して直交する方向とのJIS Z 8741:1997に準拠した測定方法による85度鏡面光沢度Gの差が-15%を超え、かつ、15%未満であり、JIS Z 8741:1997に準拠する方法で測定方法による85度鏡面光沢度の最大値G’と、JIS Z 8781-4:2013に準拠した明度Lの関係が下記式(1)を満足する化粧シート。
L>G’-5G’-10 (1)
(ただし、上記式(1)中では、G’≧0、15≦L≦95を満足する)
【0012】
本発明の化粧シートは、上記表面保護層が、電離放射線硬化型樹脂を含むことが好ましい。
また、上記表面保護層を備える側の面に凹凸形状を備えることが好ましい。
また、上記凹凸形状が、畝状に突出した畝状部であることが好ましい。
また、上記凹凸形状が、エンボスにより形成されたものであることが好ましい。
また、上記基材シートの上記表面保護層が積層される側と反対側に、バッカー層を備えることが好ましい。
また、上記表面保護層は、抗菌剤、抗ウイルス剤、及び、抗アレルゲン剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、木質基材の表面の凹凸に起因する意匠欠点を改善することができる化粧シートを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の化粧シートの一例を模式的に説明する断面図である。
図2図2は、意匠欠点評価の試験方法を説明する説明図である。
図3図3は、式(1)のグラフと、実施例及び比較例の化粧シートについて測定した85度鏡面光沢度の最大値G’、明度Lを表した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の化粧シートについて説明する。
なお、以下の記載において、「~」で表される数値範囲の下限上限は「以上以下」を意味する(例えば、α~βならば、α以上β以下である)。
【0016】
本発明の化粧シートは、熱可塑性樹脂を含む基材シートの一方の面側に、熱可塑性樹脂を含む透明性樹脂層と、表面保護層とを少なくともこの順に備える化粧シートであって、上記化粧シートの表面の任意の方向と、上記任意の方向に対して直交する方向とのJIS Z 8741:1997に準拠した測定方法による85度鏡面光沢度Gの差が-15%を超え、かつ、15%未満であり、JIS Z 8741:1997に準拠する方法で測定方法による85度鏡面光沢度の最大値G’と、JIS Z 8781-4:2013に準拠した明度Lの関係が下記式(1)を満足する。
L>G’-5G’-10 (1)
(ただし、上記式(1)中では、G’≧0、15≦L≦95を満足する)
【0017】
図1は、本発明の化粧シートの一例を模式的に説明する断面図である。
図1に示すように、化粧シート10は、基材シート1の一方の面側に、絵柄層2、透明性樹脂層3及び表面保護層4がこの順に積層されている。
以下、本発明の化粧シートの各構成について詳述する。
【0018】
(化粧シートの光学特性)
本発明の化粧シートは、化粧シートの表面の任意の方向と、上記任意の方向に対して直交する方向とのJIS Z 8741:1997に準拠した測定方法による85度鏡面光沢度Gの差が-15%を超え、かつ、15%未満である。
なお、本明細書において、上記85度鏡面光沢度は、JIS Z 8741:1997に準拠する方法1により測定した3点の平均値である。
また、「85度鏡面光沢度Gの差」は、{(2方向の測定値の大きい数値)/(2方向の測定値の差)}×100により算出することができる。
【0019】
本発明の化粧シートは、JIS Z 8741:1997に準拠した測定方法による85度鏡面光沢度の最大値G’と、JIS Z 8781-4:2013に準拠した明度Lの関係が下記式(1)を満足する。
L>G’-5G’-10 (1)
(ただし、前記式(1)中では、G’≧0、15≦L≦95を満足する)
【0020】
上記85度鏡面光沢度Gの差の数値範囲と、式(1)を充足することにより、木質基材の表面の凹凸に起因する意匠欠点を改善することができる。
【0021】
上記85度鏡面光沢度の最大値G’は、0以上である。
また、上記85度鏡面光沢度の最大値G’は、12.5以下であることが好ましく、10.5以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましく、9以下であることが特に好ましい。
上記85度鏡面光沢度の最大値G’が上記範囲であることにより、木質基材の表面の凹凸に起因する意匠欠点をより好適に改善することができる。
なお、上記85度鏡面光沢度の最大値G’とは、上記任意の方向と、上記任意の方向に直交する方向のそれぞれ5点、計10点測定した際の最大値を意味する。
【0022】
上記明度Lは、15以上95以下である。
上記明度Lは、40以上であることが好ましく、70以上であることがより好ましい。
上記明度Lが上記範囲であることにより、木質基材の表面の凹凸に起因する意匠欠点をより好適に改善することができる。
【0023】
(基材シート)
本発明の化粧シートは、熱可塑性樹脂を含む基材シートを備える。
【0024】
上記熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン(線状低密度ポリエチレンを含む)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ホモポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、又は、これらの混合物等のオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート等の熱可塑性エステル系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系熱可塑性樹脂、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド系熱可塑性樹脂、又は、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、塩化ビニル等が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
なかでも、絵柄層の印刷適性に優れ、安価である点で、オレフィン系熱可塑性樹脂が好ましい。
【0025】
上記基材シートは、着色されていてもよい。
この場合は、上記熱可塑性樹脂に着色剤を添加すればよい。上記着色剤としては、後述する絵柄層で用いる顔料又は染料が使用できる。
【0026】
上記基材シートは、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
【0027】
上記基材シートの厚みは、優れた耐傷性と曲げ加工性の観点から、厚みが30μm以上120μm以下であることが好ましく、40μm以上110μm以下であることがより好ましく、50μm以上100μm以下であることが更に好ましく、55μm以上95μm以下であることが特に好ましい。
【0028】
(絵柄層)
本発明の化粧シートは、絵柄層を備えてもよい。
【0029】
上記絵柄層は、化粧シートに意匠性を付与する層である。
上記絵柄層としては、例えば、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される絵柄模様層であってもよいし、隠蔽層と絵柄模様層とを組み合わせた層であってもよい。
【0030】
上記絵柄層に用いられるインキとしては、バインダーに顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を適宜混合したものが使用される。
【0031】
上記バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体(ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端、側鎖に2個以上の水酸基を有する重合体(ポリカーボネートポリオール)由来のウレタン-アクリル共重合体)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が好ましく挙げられる。これらのバインダーは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0032】
上記着色剤としては、後述する基材の地色を着色隠蔽し、かつ意匠性を向上させる観点から、例えば、白色顔料、鉄黒、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等の着色剤を用いることもできる。
【0033】
上記絵柄層に形成される絵柄模様としては、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等が挙げられる。
【0034】
上記絵柄層の厚みとしては、上記基材シートの地色を隠蔽し、かつ、意匠性を向上させる観点から、0.5~20μmが好ましく、1~10μmがより好ましい。
【0035】
上記絵柄層を形成する方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、隠蔽層を形成する場合には、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法等も挙げられる。
【0036】
(透明性樹脂層)
本発明の化粧シートは、熱可塑性樹脂を含む透明性樹脂層を備える。
上記透明性樹脂層は、上記絵柄層を可視できれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。
【0037】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナレフタレート、エチレングリコール-テレフタル酸-イソフタール酸共重合体樹脂、テレフタル酸-エチレングリコール-1,4シクロヘキサンジメタノール共重合体樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート-ブチル(メタ)アクリレート共重合体樹脂、メチル(メタ)アクリレート-スチレン共重合体樹脂等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アイオノマー等が挙げられる。
なかでも、引張強度が高く、耐薬品性に優れ、生産工程面で優れていることからポリエチレン又はポリプロピレンがより好ましい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0038】
上記ポリエチレンは、エチレンの単独重合体であってもよいし、エチレンと、エチレンと共重合可能な他のコモノマー(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン、酢酸ビニル、ビニルアルコール等)との共重合体であってもよい。
ポリエチレン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、架橋ポリエチレン(PEX)等が挙げられる。
これらのポリエチレンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
上記ポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体であってもよいし、プロピレンと、プロピレンと共重合可能な他のコモノマー(例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン;酢酸ビニル、ビニルアルコール等)との共重合体であってもよい。
これらのポリプロピレンは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記ポリプロピレンは、曲げ加工性の観点から、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)であることが好ましい。
【0040】
上記透明性樹脂層は、1層により構成されていてもよいし、2層以上の層により構成されてもよい。
上記透明性樹脂層が2層以上の層により構成されている場合、接着性の観点から上記絵柄層を有する側が、マレイン酸変性ポリエチレン又はマレイン酸変性ポリプロピレンにより形成された層であることが好ましい。
【0041】
上記透明性樹脂層は、更に必要に応じて各種添加剤を含有しても良い。
上記添加剤としては、例えば、シリコーン樹脂、ワックス、フッ素樹脂等の滑剤や、染料、顔料等の着色剤等や、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤等が挙げられる。
上記添加剤の含有量としては、上記透明性樹脂層の質量を基準として、例えば、0.1質量%以上10質量%以下である。
【0042】
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられ、なかでもトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
上記紫外線吸収剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0043】
上記光安定剤としては、芳香族系化合物、アミン系化合物、有機酸系化合物、カテキン系化合物及びヒンダードアミン系化合物が挙げられ、なかでもヒンダードアミン系化合物が好ましい。
上記ヒンダードアミン系化合物とは、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格を分子内に含む構造を有するものである。
上記光安定剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0044】
上記透明性樹脂層の厚みは、優れた耐傷性と曲げ加工性とを得る観点から、30μm以上150μm以下が好ましく、40μm以上120μm以下がより好ましい。
なお、上記透明性樹脂層が2層以上の層により構成される場合、透明性樹脂層の総厚みが上記範囲内にある。
【0045】
上記透明性樹脂層が複数の層から構成される場合、形成する樹脂の種類は同じであっても異なっていてもよく、また厚みは同じであっても異なっていてもよい。
上記透明性樹脂層を2層以上に積層する方法としては、一般的な方法であれば限定されず、ドライラミネート法や押出し熱ラミネート等が挙げられる。
【0046】
上記透明性樹脂層は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線(UV)処理、及び火炎処理等の表面処理を行ってもよい。
【0047】
(表面保護層)
本発明の化粧シートは、表面保護層を備える。
【0048】
上記表面保護層は、化粧シートに耐久性(耐傷性、耐汚染性、耐候性等)を付与する層であり、上記表面保護層を有することにより、上記絵柄層をより好適に保護することが可能となり、傷付きによる意匠性の低下を好適に防止できる。
【0049】
上記表面保護層は、例えば、熱硬化性樹脂や電離放射線硬化型樹脂を主成分として含有してもよい。硬化物は、透明性であることが好ましい。
【0050】
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エステル系ウレタンやアクリル系ウレタンを挙げることができる。
【0051】
上記表面保護層は、化粧シートに耐久性を好適に付与する観点から、電離放射線硬化型樹脂を含むことが好ましい。
【0052】
上記電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基又はカチオン重合性官能基を有するオリゴマー及び/又はモノマーの硬化物を挙げることができる。
上記電離放射線とは、分子を重合或いは架橋させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子を意味し、電子線(EB)又は紫外線(UV)が一般的である。上記表面保護層を形成する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0053】
上記分子中にラジカル重合性不飽和基を有するオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等のオリゴマーが好ましく使用でき、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが更に好ましい。分子量としては、通常250以上10万以下程度のものが用いられる。
【0054】
上記分子中にラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、多官能モノマーが好ましく、多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート{5官能(メタ)アクリレート}、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート{6官能(メタ)アクリレート}等が挙げられる。なお、単官能モノマーを適宜使用しても良い。
【0055】
上記電離放射線硬化型樹脂が、ウレタンアクリレートオリゴマー及び多官能モノマーを、ウレタンアクリレートオリゴマー/多官能モノマーの質量比6/4以上9/1以下の範囲で含むことが好ましい。
【0056】
電離放射線硬化型樹脂を紫外線にて架橋させる場合、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤の添加量は、例えば、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して0.1以上10以下質量部である。
【0057】
上記表面保護層は、光沢調整剤を含有してもよい。
上記光学調整剤を含有することにより、化粧シートの85度鏡面光沢度Gの値や、明度Lの値を調整することができる。
上記光沢調整剤としては、シリカ、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、タルク、セリサイト等が挙げられる。
【0058】
上記光沢調整剤の含有量としては、上記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して2質量部以上45質量部以下とすることが好ましい。
【0059】
上記表面保護層の厚みは、特に限定されないが、例えば、1μm以上50μmである。表面保護層の厚みが1μm未満であると、十分に耐久性を付与することができないことがあり、50μmを超えると、透過率が低下し絵柄層の絵柄の視認性が低下してしまうことがある。
上記表面保護層の厚みは、3μm以上40μmであってもよく、5μm以上35μmであってもよい。
【0060】
上記表面保護層は、必要に応じて上記無機充填剤以外の添加剤を含有していてもよい。
上記添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消臭剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗アレルゲン剤、防カビ剤等が挙げられる。
上記添加剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
上記表面保護層は、抗菌剤、抗ウイルス剤、及び、抗アレルゲン剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0062】
上記抗菌剤としては、無機系抗菌剤、及び、有機系抗菌剤がある。特に無機系抗菌剤は有機系抗菌剤に比べ一般に安全性が高く、耐久性、及び耐熱性にも優れているため好ましい。
上記無機系抗菌剤とは、銀をはじめとする銅、亜鉛等の抗菌性金属を各種の無機物担体に担持したものである。
【0063】
上記抗菌剤の添加量としては、上記表面保護層の樹脂成分100質量部に対して0.1~10質量部が好ましいが、上記抗菌剤の種類に応じて適宜調整することができる。
【0064】
上記抗ウイルス剤としては、一般的に有機系と無機系とに大別することができる。
上記有機系の抗ウイルス剤としては、第4級アンモニウム塩系、第4級ホスホニウム塩系、ピリジン系、ピリチオン系、ベンゾイミダゾール系、有機ヨード系、イソチアゾリン系、アニオン系等の抗ウイルス剤が挙げられる。
上記無機系の抗ウイルス剤としては、銀、銅、亜鉛等の金属イオンをゼオライト、アパタイト、ジルコニア、ガラス、酸化モリブデン等に担持させたものが挙げられる。
上記抗ウイルス剤の添加量としては、上記表面保護層の樹脂成分100質量部に対して0.1~10質量部が好ましいが、上記抗ウイルス剤の種類に応じて適宜調整することができる。
【0065】
上記有機系の抗ウイルス剤のうち、特に粒子形状を保つベンゾイミダゾール系の抗ウイルス剤又はアニオン系の抗ウイルス剤が好適に用いられる。
上述した粒子形状を保つとは、上記表面保護層の硬化型樹脂となる組成物(硬化前のインキ)内で溶解することなく、粒子の状態で存在することを意味する。このため、上記表面保護層を形成する過程において、ベンゾイミダゾール系化合物の粒子又はアニオン系化合物の粒子が浮かび上がりやすくなり、上記表面保護層の最表面側にベンゾイミダゾール系化合物の粒子またはアニオン系化合物の粒子を偏在させやすくすることができる。
そして、上記表面保護層の最表面側にベンゾイミダゾール系化合物の粒子又はアニオン系化合物の粒子を偏在させることにより、所定の抗ウイルス性を得るために必要な抗ウイルス剤の添加量を抑制することができるため、表面保護層の耐擦傷性の低下を抑制しやすくできる。
【0066】
上記アニオン系の抗ウイルス剤としては、例えば、スチレンポリマー誘導体化合物及び不飽和カルボン酸誘導体化合物を含むものが好ましい。
また、上記スチレンポリマー誘導体化合物及び不飽和カルボン酸誘導体化合物は、スチレン、スルホン酸Na、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸の構造のうち少なくとも一種の構造を含むことが好ましく、全ての構造を含むことが更に好ましい。
これは、ウイルスにはエンベロープ有無の2種類が存在し、それぞれに対し効果的に活性阻害しうる抗ウイルス剤の構造は異なると考えられるためである。
【0067】
上記無機系の抗ウイルス剤としては、生体毒性が無く安全性に優れる観点から銀系の抗ウイルス剤が好ましく、なかでも、リン酸系ガラス銀担持化合物、銀ゼオライト化合物、及び、酸化モリブデン銀複塩化合物は、少量でも抗ウイルス性能を発現することから添加量を抑制することができるため、より好ましい。
【0068】
上記銀系の抗ウイルス剤を上記表面保護層に添加する場合、表面保護層によっては変色する(添加したインキの状態で熱・光により変色する場合や、表面保護層を形成後に熱・光により変色する場合がある)が、この場合は紫外線防止剤や光安定剤等を適時添加することにより改善することが可能である。
例えば、上記酸化モリブデン銀複塩化合物に対しては、ベンゾトリアゾール化合物を用いると変色改善効果が期待できる。
【0069】
上記抗アレルゲン剤は、無機化合物又は有機化合物のいずれか一方を含むものであり、各々単体で用いても良いし、異なる2種以上を混合させても良い。
上記無機化合物としては、金属を担持してなる材料であることが好ましい。
上記抗アレルゲン剤の添加量は、表面保護層の樹脂成分100質量部に対して0.1~40質量部が好ましいが、上記抗アレルゲン剤の種類に応じて適宜調整することができる。
【0070】
上記無機化合物の無機材料としては、例えば、酸化チタン、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、ゼオライト、シリカアルミナ、珪酸マグネシウム及びリン酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、このなかでも酸化チタン、リン酸ジルコニウム等がより好ましい。
【0071】
上記無機材料に担持される金属としては、例えば、銀以外の金、白金、亜鉛及び銅からなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、このなかでも亜鉛がより好ましい。
市販品として例えば、日揮触媒社製「アトミーボールTZ-R:酸化チタンに亜鉛担持」等を好適に用いることができ、これらの抗アレルゲン剤は、ダニや花粉などの種々のアレルゲンに対して有効に作用するものである。
【0072】
上記有機化合物としては、フェノール性水酸基を含有する非水溶性高分子又はポリフェノール化合物が無機固体酸に担持されたもの、スチレンスルホン酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の単量体成分を含む重合体であることが好ましい。
【0073】
上記フェノール性水酸基を含有する非水溶性高分子としては、市販品として例えば積水化学工業社製「アレルバスター(商品名)」、丸善石油社製「マルカリンカーM(商品名)」等を使用することができる。
また、上記ポリフェノール化合物とジルコニウム化合物とを組み合わせたものとしては、東亜合成社製「アレリムーブ(商品名)」などが挙げられる。これらの抗アレルゲン剤は、ダニや花粉等、種々のアレルゲンに対して有効に作用するものである。
【0074】
(バッカー層)
本発明の化粧シートは、耐傷性、耐衝撃性を付与する観点から、上記基材シートの上記表面保護層が積層される側と反対側に、バッカー層を備えることが好ましい。
【0075】
上記バッカー層としては、特開2014-188941号公報等に開示された公知のバッカー層を適宜選択して用いることができる。
【0076】
上記バッカー層の厚みとしては、耐傷性、耐衝撃性を好適に付与する観点から、50μm~500μmであることが好ましい。
【0077】
(その他の層)
本発明の化粧シートは、例えば、上記絵柄層と、上記透明性樹脂層との間に接着剤層を備えても良い。
【0078】
上記接着剤層としては、特に限定されず、公知の接着剤を用いればよい。
例えば、ポリウレタン系、アクリル系、ポリオレフィン系、ポリ酢酸ビニル系、ポリ塩化ビニル系、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマー等のほか、ブタジエン-アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等が挙げられる。
これら接着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いる。
【0079】
上記接着剤層は、乾燥後の厚みが0.1~30μm程度が好ましく、1~5μm程度がより好ましい。
【0080】
本発明の化粧シートは、必要に応じて、プライマー層を有してもよい。
【0081】
上記プライマー層としては、公知のプライマー剤を塗布することにより形成できる。
上記プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂(アクリルウレタン系樹脂)等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン-セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。プライマー剤には、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
【0082】
上記プライマー層は、必要に応じて紫外線吸収剤を含有してもよい。
上記紫外線吸収剤としては、公知の紫外線吸収剤を適宜選択して用いることができる。
【0083】
上記プライマー層は、例えば、上記透明性樹脂層の片面又は両面、上記基材シートの片面又は両面、等に設けることができる。
【0084】
上記プライマー層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.01~10μmが好ましく、0.1~1μmがより好ましい。
【0085】
(凹凸形状)
本発明の化粧シートは、意匠性を好適に付与する観点から、上記表面保護層を備える側の面に凹凸形状を有することが好ましい。
上記凹凸形状は、透明性樹脂層に達するものであってもよい。
【0086】
上記凹凸形状の最大高さRzは、10μm以上60μm以下であることが好ましい。
上記凹凸形状を有することにより、視覚だけでなく触覚(手触り)的にも立体感を感じられるような優れた意匠性を好適に付与することができる。
なお、「最大高さRz」とは、JIS B 0601(2001)に規定される最大高さRzを意味する。
【0087】
上記凹凸形状としては、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目形状、布目や布状の模様を模した布地形状、タイル貼形状、煉瓦積形状等であって方向性を有さない(絵柄模様に規則性を有さないものや、絵柄模様が対象的であって方向を決められない)ものが挙げられる。
具体的には、上記85度鏡面光沢度Gの差が、-15%を超え、かつ、15%未満を満たすような凹凸形状(或いは、形状無し)であればよい。
【0088】
上記凹凸形状は、畝状に突出した畝状部であってもよい。
【0089】
上記畝状に突出した畝状部は、例えば、上記表面保護層を構成する電離放射線硬化型樹脂に対してUV照射装置により予備硬化を行う。次いで、予備硬化を行った電離放射線硬化型樹脂の表面に対して、高分子鎖を切断可能なエネルギーを有するエキシマ光を照射して上記電離放射線硬化型樹脂の表面を収縮させて、上記表面保護層の表面に畝状に突出した畝状部を形成する。その後、収縮させた電離放射線硬化型樹脂に対して電離放射線硬化型樹脂を硬化させる電離放射線を照射して該電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより形成することができる。
【0090】
上記予備硬化におけるUV照射装置としては、LEDが好ましい。
上記エキシマ光としては、光の波長が120~230nm程度であることが好ましい。
上記電離放射線硬化型樹脂を硬化させる電離放射線は、分子を重合或いは架橋させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子を意味し、電子線(EB)又は紫外線(UV)が一般的である。
【0091】
上記凹凸形状が、エンボスにより形成されたものであってもよい。
【0092】
上記凹凸形状を形成する方法としては、例えば、熱によるエンボス加工を用いることができる。
上記熱によるエンボス加工としては、例えば、周知の枚葉、又は、輪転式のエンボス機によるエンボス加工を施す方法が挙げられる。
また、エンボスの柄模様としては、例えば、上記絵柄層の絵柄模様に応じて形成すればよい。
【0093】
(化粧シートの製造方法)
本発明の化粧シートの製造方法においては、上述した各層を形成する順番等は特に問わない。
例えば、基材シートの一方の面側にプライマー層、絵柄層、接着剤層、透明性樹脂層、プライマー層、及び、表面保護層をこの順番で形成してもよい。
また、各層を形成する工程は連続して進行する必要はなく、これらの工程どうしの間に、他の工程や処理を行ってもよい。
【0094】
本発明の化粧シートの表面の任意の方向と、前記任意の方向に対して直交する方向とのJIS Z 8741:1997に準拠した測定方法による85度鏡面光沢度Gの差、JIS Z 8741:1997に準拠した測定方法による85度鏡面光沢度の最大値G’、並びに、JIS Z 8781-4:2013に準拠した明度Lの関係が上記式(1)を充足させる方法としては、上記絵柄層の絵柄模様の色調の濃淡によるL値の調整、上記表面保護層の電離放射線硬化樹脂に配合される光沢調整剤の含有量、エキシマ光の照射による凹凸形状、エンボス加工による凹凸形状でのG’値の調整が挙げられる。
特に、絵柄模様の色調を淡色にすることでL値を大きくする。光沢調整剤の含有量を増やす、LED-UV照射量を下げる、エキシマ照射による紫外線出力密度を上げる、エンボス版深を深くすることでG’値を小さくすることが効果的である。
【0095】
<化粧板>
本発明の化粧シートは、上記基材シートの絵柄層を有する側と反対側に被着材を積層させることにより、化粧板とすることができる。
【0096】
被着材として、例えば、木質板、石膏系板、セメント板、セラミックス板、金属板、樹脂板、繊維強化プラスチック板が挙げられる。被着材の積層方法としては例えば、本開示の基材シートの絵柄層を有する側と反対側に、上述した接着剤層を形成する接着剤等を使用して被着材を積層すればよい。
【0097】
本明細書では、以下の事項が開示されている。
【0098】
本開示(1)は、熱可塑性樹脂を含む基材シートの一方の面側に、熱可塑性樹脂を含む透明性樹脂層と、表面保護層とを少なくともこの順に備える化粧シートであって、上記化粧シートの表面の任意の方向と、上記任意の方向に対して直交する方向とのJIS Z 8741:1997に準拠した測定方法による85度鏡面光沢度Gの差が-15%を超え、かつ、15%未満であり、JIS Z 8741:1997に準拠する方法で測定方法による85度鏡面光沢度の最大値G’と、JIS Z 8781-4:2013に準拠した明度Lの関係が下記式(1)を満足する化粧シートである。
L>G’-5G’-10 (1)
(ただし、上記式(1)中では、G’≧0、15≦L≦85を満足する)
本開示(2)は、上記表面保護層が、電離放射線硬化型樹脂を含む本開示(1)に記載の化粧シートである。
本開示(3)は、上記表面保護層を備える側の面に凹凸形状を備える本開示(1)又は(2)に記載の化粧シートである。
本開示(4)は、上記凹凸形状が、畝状に突出した畝状部である本開示(3)に記載の化粧シートである。
本開示(5)は、上記凹凸形状が、エンボスにより形成されたものである本開示(3)に記載の化粧シートである。
本開示(6)は、上記基材シートの前記表面保護層が積層される側と反対側に、バッカー層を備える本開示(1)~(5)の何れかに記載の化粧シートである。
本開示(7)は、上記表面保護層が、抗菌剤、抗ウイルス剤、及び、抗アレルゲン剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む、本開示(1)~(6)の何れかに記載の化粧シートである。
【実施例0099】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、この例によって限定されるものではない。
【0100】
(実施例1)
60μm厚の着色ポリプロピレンフィルムからなる基材シートを準備した。
上記基材シートの一方の面上に厚み2μmの濃色調の絵柄層を印刷により形成し、さらに、絵柄層上に、2液硬化型ウレタン系ドライラミネート用接着剤(ポリエステルポリオール1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)との混合)を用いて厚み3μmの接着剤層を形成した。
次いで、上記接着剤層の上に透明性樹脂層(透明性接着剤層側がマレイン酸変性PP10μ、表面保護層側はランダムPP50μmで、合計の厚み60μm)となるように押出ラミネート法で積層した。
上記透明性樹脂層にコロナ放電処理を施し、その処理面にアクリルウレタン系樹脂(主剤としてアクリルポリオールとウレタンポリオールとを含み、硬化剤として1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を含む2液硬化型ポリウレタン樹脂)をグラビア塗工法により塗工してプライマー層を形成した。
上記プライマー層上に表面保護層として、ウレタンアクリレート系電離線硬化型樹脂(光沢調整剤(製品名ACEMATT(登録商標)3300、EVONIK社製)を40質量部含有)をグラビア塗工法で塗工し、乾燥した後、未硬化の表面保護層に酸素濃度200ppm以下の環境下で電子線(加速電圧175KeV、照射量5Mrad)を照射して硬化させて形成した。
次いで、上記表面保護層側からエンボス版でエンボス加工を施して最大高さRzが30μmとなる凹凸模様を形成した。
その後、基材シートの裏面(表面保護層を有する側と反対側面)に、120μm厚のオレフィン系フィルムを貼り合わせてバッカー層を形成して、化粧シートを作製した。
本明細書に記載の方法に基づいて、化粧シートの表面の任意の方向と、上記任意の方向に対して直交する方向とのJIS Z 8741:1997に準拠した測定方法による85度鏡面光沢度Gの差(表1又は2中では、「85度鏡面光沢度Gの差」と略記した)、85度鏡面光沢度の最大値G’、及び、明度Lを測定した。これらを表1に示した。
なお、表1~3中では、エンボスにより凹凸形状を形成したものを「エンボス+」とし、畝状に突出した畝状部を有するものを「エキシマ+」とし、エンボスにより凹凸形状を形成し、かつ、畝状に突出した畝状部を有するものを「エンボス+」、「エキシマ+」とした。一方で、エンボスにより凹凸形状を形成していないものを「エンボス-」、畝状に突出した畝状部を有さないものを「エキシマ-」とした。
【0101】
(実施例2~12、比較例1~5)
絵柄層の絵柄模様の色調、表面保護層を構成する電離放射線硬化型樹脂の光沢調整剤の含有量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして化粧シートを作製した。
本明細書に記載の方法に基づいて、化粧シートの表面の任意の方向と、上記任意の方向に対して直交する方向とのJIS Z 8741:1997に準拠した測定方法による85度鏡面光沢度Gの差、85度鏡面光沢度の最大値G’、及び、明度Lを測定した。これらを表1又は2に示した。
【0102】
(実施例13)
60μm厚の着色ポリプロピレンフィルムからなる基材シートを準備した。
上記基材シートの一方の面上に厚み2μmの絵柄層を印刷により形成し、さらに、絵柄層上に、2液硬化型ウレタン系ドライラミネート用接着剤(ポリエステルポリオール1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)との混合)を用いて厚み3μmの接着剤層を形成した。
次いで、上記接着剤層の上に透明性樹脂層(透明性接着剤層側がマレイン酸変性PP10μ、表面保護層側はランダムPP50μmで、合計の厚み60μm)となるように押出ラミネート法で積層した。
上記透明性樹脂層にコロナ放電処理を施し、その処理面にアクリルウレタン系樹脂(主剤としてアクリルポリオールとウレタンポリオールとを含み、硬化剤として1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を含む2液硬化型ポリウレタン樹脂)をグラビア塗工法により塗工してプライマー層を形成した。
上記プライマー層上に表面保護層として、光沢調整剤を含有しないウレタンアクリレート系電離線硬化型樹脂をグラビア塗工法で塗工し、LEDから構成されるUV照射装置を用いて紫外線を照射して(LED-UV照射、波長395nm、最大照射0.6W/cm、積算光量30mJ/cm)、予備硬化を行った。次いで、エキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射した(エキシマ照射、波長172nm(Xe)、紫外線出力密度30mW/cm、積算光量30mJ/cm窒素雰囲気下)。さらに酸素濃度200ppm以下の環境下で電子線(加速電圧175KeV、照射量5Mrad)を照射して硬化させて表面保護層を形成した。
その後、表面保護上層側からエンボス版でエンボス加工を施して最大高さRzが30μmとなる凹凸模様を形成した。
最後に、基材シートの裏面(絵柄層を有する側と反対側面)に、120μm厚のオレフィン系フィルムを貼り合わせてバッカー層を形成し、化粧シートを作製した。
本明細書に記載の方法に基づいて、化粧シートの表面の任意の方向と、上記任意の方向に対して直交する方向とのJIS Z 8741:1997に準拠した測定方法による85度鏡面光沢度Gの差、85度鏡面光沢度の最大値G’、及び、明度Lを測定した。これらを表3に示した。
【0103】
(実施例14~16)
絵柄層の絵柄模様の色調、表面保護層を形成する際のLED-UV照射条件、エキシマ照射条件を変更したこと以外は、実施例13と同様にして化粧シートを作製した。
JIS Z 8741:1997に準拠した測定方法により、上記絵柄層の絵柄模様の方向と、本明細書に記載の方法に基づいて、化粧シートの表面の任意の方向と、上記任意の方向に対して直交する方向とのJIS Z 8741:1997に準拠した測定方法による85度鏡面光沢度Gの差、85度鏡面光沢度の最大値G’、及び、明度Lを測定した。これらを表3に示した。
【0104】
(実施例17)
60μm厚の着色ポリプロピレンフィルムからなる基材シートを準備した。
上記基材シートの一方の面上に厚み2μmの絵柄層を印刷により形成し、さらに、絵柄層上に、2液硬化型ウレタン系ドライラミネート用接着剤(ポリエステルポリオール1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)との混合)を用いて厚み3μmの接着剤層を形成した。
次いで、上記接着剤層の上に透明性樹脂層(透明性接着剤層側がマレイン酸変性PP10μ、表面保護層側はランダムPP50μmで、合計の厚み60μm)となるように押出ラミネート法で積層した。
上記透明性樹脂層にコロナ放電処理を施し、その処理面にアクリルウレタン系樹脂(主剤としてアクリルポリオールとウレタンポリオールとを含み、硬化剤として1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を含む2液硬化型ポリウレタン樹脂)をグラビア塗工法により塗工してプライマー層を形成した。
上記プライマー層上に表面保護層として、光沢調整剤を含有しないウレタンアクリレート系電離線硬化型樹脂をグラビア塗工法で塗工し、LEDから構成されるUV照射装置を用いて紫外線を照射して(LED-UV照射、波長395nm、最大照射0.6W/cm、積算光量30mJ/cm)、予備硬化を行った。
次いで、エキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射した(エキシマ照射、波長172nm(Xe)、紫外線出力密度30mW/cm、積算光量30mJ/cm窒素雰囲気下)。さらに酸素濃度200ppm以下の環境下で電子線(加速電圧175KeV、照射量5Mrad)を照射して硬化させて表面保護層を形成した。
その後、基材シートの裏面(絵柄層を有する側と反対側面)に、120μm厚のオレフィン系フィルムを貼り合わせてバッカー層を形成し、化粧シートを作製した。
本明細書に記載の方法に基づいて、化粧シートの表面の任意の方向と、上記任意の方向に対して直交する方向とのJIS Z 8741:1997に準拠した測定方法による85度鏡面光沢度Gの差、85度鏡面光沢度の最大値G’、及び、明度Lを測定した。これらを表3に示した。
【0105】
(実施例18~20)
絵柄層の絵柄模様の色調、表面保護層を形成する際のLED-UV照射条件、エキシマ照射条件を変更したこと以外は、実施例17と同様にして化粧シートを作製した。
本明細書に記載の方法に基づいて、化粧シートの表面の任意の方向と、上記任意の方向に対して直交する方向とのJIS Z 8741:1997に準拠した測定方法による85度鏡面光沢度Gの差、85度鏡面光沢度の最大値G’、及び、明度Lを測定した。これらを表3に示した。
【0106】
(実施例21)
表面保護層として用いるウレタンアクリレート系電離線硬化型樹脂100質量部に対し、抗ウイルス剤としてリン酸系ガラス銀担持化合物(興亜硝子社製 PG-711)を3質量部添加した以外は、実施例1と同様にして化粧シートを作製した。
【0107】
(実施例22)
表面保護層として用いるウレタンアクリレート系電離線硬化型樹脂100質量部に対し、アニオン性フェノール系材料(抗アレルゲン剤、DIC社製 EXP20530A)及び亜鉛系材料(抗アレルゲン剤、DIC社製 EXP20530B)をそれぞれ16質量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして化粧シートを作製した。
【0108】
<評価方法>
(評価用化粧板の作製)
木質基材(MDF)の表面に50μm厚、25mm×25mmサイズのセロハン粘着テープを貼り凹凸を形成した。
その後、実施例及び比較例で作製した化粧シートの基材シートの裏面に形成されたプライマー層と、上記木質基材(MDF)とを2液硬化型水性系接着剤を介して接着して評価用化粧板を作製した。
【0109】
(意匠欠点評価)
明るい室内(JIS C 7612に準拠する照度が500ルクス)に、作製した評価用化粧板を平面に静置した。
セロハン粘着テープの凹凸部分を観察角度20度、60度、85度の各々について、距離50cmの位置で目視観察した。
図2は、意匠欠点評価の試験方法を説明する説明図である。
図2に示すように、セロハン粘着テープの凹凸部分に対する法線方向と、セロハン粘着テープの凹凸部分と目視する方向とのなす角度を観察角度とした。
評価基準は以下の通りである。
++:観察角度85度でも凹凸を認識できない。
+:観察角度20度、若しくは、観察角度60度で凹凸を認識できないが、観察角度85度で凹凸を認識できる。
-:観察角度20度、若しくは、観察角度60度で凹凸を確認できる。
【0110】
(抗ウイルス性能)
実施例1及び実施例21で作製した化粧シートについて、抗ウイルス試験方法(ISO21702)に準拠した方法で抗ウイルス性能試験を行い、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性値を下記評価基準に基づいて評価した。その結果を表4に示した。
なお、表4中の抗ウイルス剤(質量部)とは、表面保護層(ウレタンアクリレート系電離線硬化型樹脂)100質量部に対する抗ウイルス剤の使用量(質量部)を意味する。
+:抗ウイルス活性値2.0以上であった
-:抗ウイルス活性値2.0未満であった
なお、「+」を合格、「-」を不合格と判断した。
【0111】
(抗アレルゲン性能)
実施例1及び実施例22で作製した化粧シートについて、抗アレルゲン性能を評価した。
具体的には、実施例1及び実施例18で作製した化粧シート(10cm×10cm)を細かく切断し、20~30ng/mlのコナヒョウヒダニ由来アレルゲン水溶液60mL中に1日間浸した後のアレルゲン量を水平展開クロマト法(マイティチェッカー)で目視にて確認し、下記評価基準に従って評価した。その結果を表5に示した。
なお、表5中に記載のアニオン性フェノール系材料(質量部)及び亜鉛系材料(質量部)は、コート剤(ウレタンアクリレート系電離放射線硬化性樹脂組成物)100質量部に対するアニオン性フェノール系材料及び亜鉛系材料の使用量(質量部)を意味する。
+:アレルゲン量の減少が確認できた(ダニアレルゲンレベル判定が+判定以下(すなわち100匹程度/m以下)
-:アレルゲン量の減少が確認できなかった(ダニアレルゲンレベル判定が+判定超過)
なお、「+」を合格、「-」を不合格と判断した。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
【表3】
【0115】
【表4】
【0116】
【表5】
【0117】
図3は、式(1)のグラフと、実施例及び比較例の化粧シートについて測定した85度鏡面光沢度の最大値G’、明度Lを表した図面である。
図3では、実施例の化粧シートは全て式(1)を充足する一方で、比較例の化粧シートは、式(1)を充足しないことが示されている。
表1~3、及び、図3より、化粧シートの表面の任意の方向と、上記任意の方向と直交する方向との85度鏡面光沢度Gの差が所定の範囲であり、85度鏡面光沢度の最大値G’と、明度Lの関係が上記式(1)を満足する化粧シートでは、木質基材の表面の凹凸に起因する意匠欠点を改善することができることが確認された。
また、表4より、表面保護層が抗ウイルス剤を含むことにより、抗ウイルス性能を付与できることが確認された。また、表5より、表面保護層が抗アレルゲン剤を含むことにより、抗アレルゲン性能を付与できることが確認された。
【符号の説明】
【0118】
1 基材シート
2 絵柄層
3 透明性樹脂層
4 表面保護層
10 化粧シート
20 評価用化粧板
図1
図2
図3