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特開2024-139699ブラックスワンイベントへの対処を含む支援方法、運転者支援システム、および車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139699
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ブラックスワンイベントへの対処を含む支援方法、運転者支援システム、および車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/095 20120101AFI20241002BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241002BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20241002BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20241002BHJP
   G05D 1/617 20240101ALN20241002BHJP
【FI】
B60W30/095
G08G1/16 C
B60W40/04
B62D6/00
G05D1/617
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024024540
(22)【出願日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】18/190,143
(32)【優先日】2023-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503113186
【氏名又は名称】ホンダ リサーチ インスティテュート ヨーロッパ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Honda Research Institute Europe GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プファル,ティム
(72)【発明者】
【氏名】プロプスト,マルテ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンツェル,ラファエル
【テーマコード(参考)】
3D232
3D241
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232DA77
3D232DA78
3D232DA88
3D232DC38
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(57)【要約】
【課題】自車両の環境内で他エージェントの挙動によって生じるブラックスワンイベントによって発生する衝突を回避する、または衝突の重大度を低減することに関して、支援システムを改良すること。
【解決手段】自エージェントの動作を支援するためにブラックスワンイベントを検出するためのコンピュータ実装方法は、少なくとも1つの他エージェントを含む、自エージェントの環境を感知することと、感知された環境に基づいて少なくとも1つの他エージェントの挙動を予測することと、を含む。方法は、算出された状況確率が第1の閾値よりも小さく、算出された衝突確率が第2の閾値を超え、判定された衝突重大度が第3の閾値を超える、少なくとも1つの他エージェントの少なくとも1つの予測されるあり得る挙動を判定することにより、自エージェントの環境内で少なくとも1つの潜在的なブラックスワンイベントを検出することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自エージェントを動作させるために支援システム内でブラックスワンイベントを検出するためのコンピュータ実装方法であって、
少なくとも1つの他エージェントを含む、前記自エージェントの環境を感知することと、
前記感知された環境に基づいて前記少なくとも1つの他エージェントのあり得る挙動を予測することと、
各予測されるあり得る挙動について、状況確率および前記自エージェントとの衝突の衝突確率を算出することと、
各予測されるあり得る挙動について、前記自エージェントとの前記衝突の重大度を判定することと、
前記算出された状況確率が第1の閾値よりも小さく、前記算出された衝突確率が第2の閾値を超え、前記判定された衝突重大度が第3の閾値を超える、前記少なくとも1つの他エージェントの予測される各あり得る挙動について、前記自エージェントの前記環境内で潜在的なブラックスワンイベントを検出することと、
前記検出された少なくとも1つのブラックスワンイベントを含む検出信号を生成し、前記自エージェントの挙動計画システムまたは警告システムに出力することと、
を含む、ブラックスワンイベントを検出するためのコンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの検出されたブラックスワンイベントの前記算出された状況確率を監視することと、
前記検出されたブラックスワンイベントの前記算出された状況確率が検出閾値を超える場合、前記挙動計画システム内で異なる計画戦略に従って前記自エージェントを動作させるために計画戦略を変更することと、
を含む、請求項1に記載のブラックスワンイベントを検出するためのコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記自エージェントを動作させるために前記異なる計画戦略を適用することが、前記自エージェントの予め設定された速度を低下させることを含む、請求項2に記載のブラックスワンイベントを検出するためのコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの他エージェントの前記予測されるあり得る挙動と、前記予測されるあり得る挙動の前記算出された状況確率、前記算出された衝突確率、および前記判定された衝突重大度とに基づいて、第1の挙動計画モジュールで前記自エージェントの挙動を計画することと、
前記計画された挙動に基づいて前記自エージェントの動作を支援することと、
前記検出された潜在的なブラックスワンイベントの前記算出された状況確率が前記検出閾値を超えるかどうかを第2の挙動計画モジュールで監視することと、
前記検出されたブラックスワンイベントの前記算出された状況確率が前記検出閾値を超える場合、前記検出されたブラックスワンイベントの影響を軽減するために、前記自エージェントの動作の支援を、前記自エージェントの動作を支援する前記第1の計画モジュールの前記計画された挙動から、前記第2の挙動計画モジュールによって決定された第2の計画された挙動に切り替えることと、
をさらに含む、請求項1に記載のブラックスワンイベントを検出するためのコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記算出された状況確率が第5の閾値よりも小さく、前記算出された衝突確率が第6の閾値を下回る、前記少なくとも1つの他エージェントの予測される挙動を、前記支援システムにおけるさらなる考慮から除外することを含む、請求項1に記載のブラックスワンイベントを検出するためのコンピュータ実装方法。
【請求項6】
自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法であって、
少なくとも1つの他エージェントを含む、前記自エージェントの環境を感知することと、
前記感知された環境に基づいて前記少なくとも1つの他エージェントの挙動を予測することと、
第1の計画モジュールにより、前記少なくとも1つの他エージェントの前記予測される挙動に基づいて前記自エージェントの少なくとも1つの第1の挙動を計画することと、
前記計画された少なくとも1つの第1の挙動に基づいて前記自エージェントの動作を支援するために、少なくとも1つのアクチュエータへの制御信号を生成することと、
前記少なくとも1つの他エージェントの前記予測される挙動に基づいて、前記自エージェントの前記環境内で少なくとも1つのブラックスワンイベントを検出することと、
前記第1の計画モジュールと異なる第2の計画モジュールにより、前記少なくとも1つの他エージェントの前記予測される挙動と、前記自エージェントの前記環境内の前記検出された少なくとも1つのブラックスワンイベントとに基づいて、前記自エージェントの第2の挙動を計画することと、
前記感知された環境に基づいて、前記検出されたブラックスワンイベントの算出された状況確率が検出閾値を超えるかどうかを監視することと、
前記検出された少なくとも1つのブラックスワンイベントの前記算出された状況確率が前記検出閾値を超える場合、前記計画された第2の挙動に基づいて前記自エージェントの動作を支援するために前記少なくとも1つのアクチュエータに対する前記制御信号を生成することと、
を含む、自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記第2の計画モジュールが前記第1の計画モジュールと並列に実行される、請求項6に記載の自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記第2の計画モジュールが、前記第1の計画モジュールによって使用される第1のリスクモデルと比べて複雑でない第2のリスクモデルを使用する、請求項6に記載の自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記第2の計画モジュールが、不確定性の考慮を伴わない最接近余裕時間リスクモデルを使用する、請求項6に記載の自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記第1の計画モジュールが、不確定性の考慮を含む生存分析リスクモデルを使用する、請求項6に記載の自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法。
【請求項11】
前記第2の計画モジュールの第2の計画期間が、前記第1の計画モジュールの第1の計画期間よりも短い、または
前記第2の計画モジュールの前記第2の計画期間が、将来に向かって前記第1の計画モジュールの前記第1の計画期間の何分の一かの長さである、または
前記第2の計画モジュールの前記第2の計画期間が将来に向かって最大4秒の長さであり、前記第1の計画モジュールの前記第1の計画期間が最大12秒の長さである、
請求項6に記載の自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法。
【請求項12】
前記第1の計画モジュールによって決定された前記少なくとも1つの第1の計画された挙動の対応する減速度または操舵角変化を超える減速度および操舵角変化の少なくとも一方を含む、自車両の前記第2の計画された挙動を、前記第2の計画モジュールによって決定する、請求項6に記載の自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法。
【請求項13】
前記第2の計画モジュールが、前記第1の計画モジュールによって使用される長期計画アルゴリズムよりも高い周期で実行される短期計画アルゴリズムを使用する、請求項6に記載の自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法。
【請求項14】
前記検出されたブラックスワンイベントの前記算出された状況確率が前記検出閾値を超える場合、前記感知された環境に基づいて前記少なくとも1つの他エージェントの前記挙動を予測するために予測モジュールに追加的な処理リソースを割り当てることを含む、請求項6に記載の自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法。
【請求項15】
前記第2の計画モジュールが、前記第1の計画モジュールによって使用される第1の計画戦略と異なる第2の計画戦略を使用すること、または
前記第2の計画モジュールが、前記第1の計画戦略と異なる前記第2の計画戦略を使用し、前記第2の計画戦略は、前記第1の計画戦略と比べて前記自エージェント向けに低い走行速度を有すること、
を含む、請求項6に記載の自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法。
【請求項16】
前記第2の計画モジュールが、複数の他エージェントの予測される挙動を含む予測される各状況について、起こる見込みの低い予測される挙動を有する1つの他エージェントを使用し、前記1つの他エージェントと異なるすべての他エージェントには起こる見込みが最も高い挙動を使用する、請求項6に記載の自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法。
【請求項17】
前記自エージェントの前記環境内で複数のブラックスワンイベントを検出することと、
前記感知された環境に基づいて、前記検出された複数のブラックスワンイベントの各算出された状況確率が、対応する検出閾値を超えるかどうかを監視することと、
前記検出された潜在的なブラックスワンイベントの前記算出された状況確率が、複数の検出されたブラックスワンイベントについて前記対応する検出閾値を超える場合、現在の時間から最も近いときに発生すると予測される、前記複数のブラックスワンイベントのうちの1つのブラックスワンイベントの計画された第2の挙動に切り替えることと、
を含む、請求項6に記載の自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法。
【請求項18】
前記計画された第2の挙動に基づいて前記制御信号を生成する間に、
前記感知された環境に基づいて、前記検出されたブラックスワンイベントの前記算出された状況確率が検出閾値未満に低下するかどうかを監視することと、
前記検出された潜在的なブラックスワンイベントの前記算出された状況確率が前記検出閾値未満に低下した場合、前記計画された少なくとも1つの第1の挙動に基づく、前記少なくとも1つのアクチュエータに対する前記制御信号の生成に切り替えることと、を含む、
請求項6に記載の自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法。
【請求項19】
前記自エージェントを動作させることが、前記自エージェントを自律的に動作させること、または人間の運転者が前記自エージェントを操作するのを支援することを含み、
前記自エージェントが、陸上車両、船舶、空中車両、および宇宙船の少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法を実行するように構成された処理装置を備えた、高度運転者支援システム。
【請求項21】
請求項20に記載の高度運転者支援システムを備えた、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動的な環境内でエージェントを動作させるための支援システムの分野に関する。詳細には、ブラックスワンイベントに関して挙動計画を行う向上した能力を備える、自動車運転者支援システムのための方法が提案される。
【背景技術】
【0002】
技術分野としての車両自動化は、メカトロニクスやマルチエージェントシステムなどの技術を利用して、車両(自車両)の操作者が、少なくとも1つ、一般的には複数の他エージェントを含む非常に動的な環境内で車両を操作するのを支援する。自エージェントおよびエージェントという語は一般に、今日では増えつつある高度な運転支援システムを具備した道路車両を含む車両、高度な自動操縦装置を備えた航空機もしくは無人空中車両(UAV、ドローン)、自律的に動作する惑星探査車、または水面上もしくは水面上方を移動する船舶、ならびに潜水艇を包含する。特に他エージェントを指す場合、エージェントという語は、歩行者、自転車に乗っている人、さらには動物を含んでよい。
【0003】
人間の入力を支援することを可能にするが、人間の入力を完全に操作者に置き換えるのではない、環境内のナビゲーションを含むタスクに対処するための自動化を使用するエージェントは、半自律エージェントと呼ばれることがある。環境内で動作するために自動化だけに依拠するエージェントは、ロボットエージェントまたは自律エージェントと呼ばれる。自動化からの同様の技術がロボット工学の分野に存在し、そこではロボット装置が一連の行動を自動的に実行する。後に、総称語としてのエージェントが使用されるが、これは、自身の環境を知覚し、環境内で知覚された状況に適すると考えられる挙動を計画し、タスクを行うために、計画された挙動に基づいて自律的に行動を決定して実行することが可能な移動装置、例えば車両およびロボットを含む。
【0004】
陸上車両の支援システムによって対処されるタスクの特有な例には、道路交通環境における車両周辺の死角の監視、車線変更の支援、または道路交差点における支援が含まれる。車両をリアルタイムで動作させる支援システムの能力は、車両の環境を知覚するための利用可能なセンサと、処理のために必要とされる演算能力との可用性に依存し、これらはいずれも近年大幅に向上している。道路交通環境は特定の応用領域であり、そこでは、現在の支援システムの向上した能力が、都市間の道路上でのそれほど複雑でない交通シナリオにおける支援から、混雑し、非常に動的である都市部の交通シナリオに対処するために移行することを可能にする。
【0005】
支援システムの設計は、自エージェントと他エージェントの共有環境における安全問題の対処と、他エージェントとの潜在的な衝突の回避とに対応しなければならない。支援システムで将来の行動を計画することの一側面は、自エージェントの行動に関連するリスクの管理と、安全マージンへの順守の保証である。現在の支援システムは、リスクモデルを適用するリスクマップを使用して、自エージェントの将来の行動の計画を行うことがある。支援システムは、環境内の知覚されたシナリオの将来の進展を予測するという領域、自エージェントによって行われる潜在的な行動または一連の行動を計画するという領域、および支援を受ける操作者または自エージェントに対して知覚されたリスクを警告するという領域に、分析リスクモデルを適用することがある。支援システムで分析リスクモデルを適用することは、決定された行動を自エージェントによって自律的に行わせることを可能にし得る。運転リスクモデルは、経路に沿った軌跡上の車両の動きを予測し、また、いくつかのリスクタイプ、例えば、環境内の他エージェントとの衝突、静止している物体との衝突、急カーブが原因で生じるリスク、または規制リスクを含むことがある。リスクは、あるイベントが発生する確率、およびそのイベントの帰結、例えばイベントの重大度、を含む。自エージェントの挙動計画の際にリスクを考慮に入れることは、自エージェントの挙動選択および行動選択を向上させる。
【0006】
道路交通シナリオにおける運転リスクモデルの具体例は、エージェント間衝突について確率的リスクモデルを使用し得る。運転リスクモデルは、環境内の経路上で予測される軌跡を移動するエージェントを仮定し得る。エージェントの予測軌跡は、一般的な正規分布およびポアソン分布型の不確定性を含み得る。汎用的なリスクモデルは、さらなるリスク、例えばカーブリスクまたは規制リスク、を取り込むように、衝突リスクのモデル化を超えて拡張されてよい。挙動計画の目的で、自エージェントは、リスクモデルに基づくコスト評価を行うことがある。特定の例は、衝突リスクであり、衝突リスクを軽減するために、自エージェントが、環境内の1つの他エージェントと相互作用しながら自エージェントのどの速度で自車両の経路を進行するかを決定する自エージェントのタスクに対処する。
【0007】
自エージェントは、複数の軌跡を用いて協働的な計画を行い、複数の他エージェントの経路を考慮に入れるために、リスクモデルを用いることができる。都市交通環境では、他エージェントは、自動車と比較したときに敏捷性が高いが低速度の歩行者も含み得る。他エージェントの将来の挙動を予測することは、自エージェントの将来の挙動を間に合うように決定し、交通シナリオの安全な進展への順守を保証するために、他エージェント各々の様々な潜在的な将来の挙動を考慮に入れなければならない場合がある。他エージェントの予測される潜在的な将来の挙動は、通例、他エージェントがそれに応じて行動する確率が高い、予測される潜在的な将来の挙動に着目する(可能性の高いイベント、起こる見込みが高い挙動)。他方で、支援システムは、他エージェントがそれに応じて行動する確率が低い、潜在的な将来の挙動を無視する(稀なイベント、起こる見込みが低い挙動)。
【0008】
米国特許出願公開第2017/0090480(A1)号は、ルートの一部をなす主軌跡に追従するように動作可能な自律車両を開示している。この自律車両は、主軌跡に沿って移動しつつ、予め決められたタイプのイベントに応答して、安全を保証する軌跡を計算する。
【0009】
それでも、他エージェントがそれに応じて行動する確率の低い、潜在的な将来の挙動および稀なイベントであっても、そのイベントの発生が重大な結果をもたらすことになる場合には、自エージェントの動作に対して高いリスクを表し得る。重大な結果は、関与する両エージェントが高い速度にあるときの自エージェントと少なくとも1つの他エージェントとの衝突から生じる可能性がある。一般に、「ブラックスワンイベント」という語は、破滅的な結果を伴うイベントを表す。ブラックスワンイベントとは、環境に対して極端なパラダイムシフト的影響を与える、予測不可能で稀なイベントであり、環境は特に自エージェントを含む。
【0010】
本文脈におけるブラックスワンイベントは、発生した場合に重大性の高い衝突を誘発する、起こる見込みが低い他の挙動を含む。
【0011】
一般に、ブラックスワン理論とは、大きな規模および帰結の予期されないイベントと、歴史上のその主要的な役割とを指す。ブラックスワン理論およびタレブの基準に基づくと、
- ブラックスワンイベントは、観察者にとって、本文脈では自エージェントにとって、驚きであり、
- ブラックスワンイベントは、そのブラックスワンイベントが発生した場合に、自エージェントおよび自エージェントの将来の行動の計画に対して大きな影響を与える。
一般に、記録されたブラックスワンイベントの事例の後、そのブラックスワンイベントの発生は、予測可能であったかのように、すなわち、そのイベントを指し示す関連データが環境から入手可能であったのにリスク査定で考慮に入れられなかったと、後から振り返って合理化される。対応する査定が、個々の操作者による個人的な知覚に当てはまる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
よって、自エージェントの環境内の動的なシナリオについて自エージェントの動作を支援する行動計画アルゴリズムを改良するという側面は、ますます重要になりつつある課題である。詳細には、自車両の環境内で他エージェントの挙動によって生じるブラックスワンイベントによって発生する衝突を回避する、または衝突の重大度を低減することに関して、支援システムを改良することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様に係る方法および第2の態様に係る方法は、この課題の好都合な解決を提供する。
【0014】
第1の態様に係る、自エージェントを動作させるために支援システム内でブラックスワンイベントを検出するためのコンピュータ実装方法は、少なくとも1つの他エージェントを含む、自エージェントの環境を感知することを含む。方法は続いて、感知された環境に基づいて少なくとも1つの他エージェントのあり得る挙動を予測し、各予測されるあり得る挙動について、状況確率および自エージェントとの衝突の衝突確率を算出する。予測される挙動は、結果として、現在遭遇されている状況から進展する可能性のある様々な将来の状況をもたらす。方法は次いで、各予測されるあり得る挙動について、自エージェントとの衝突の重大度を判定する。方法は、算出された状況確率が第1の閾値よりも小さく、算出された衝突確率が第2の閾値を超え、判定された衝突重大度が第3の閾値を超える、少なくとも1つの他エージェントの予期されるあり得る挙動を判定できる場合、自エージェントの環境内で潜在的なブラックスワンイベントを特定し、検出された少なくとも1つのブラックスワンイベントを含む検出信号を生成し、自エージェントの挙動計画システムまたは警告システムに出力する。
【0015】
状況確率は、少なくとも1つの他エージェントの状況または挙動が、現在の時間から先の予測期間(時間期間)内に発生すると予測されることの発生の確率であってよい。
【0016】
第2の態様に係る、自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法は、少なくとも1つの他エージェントを含む、自エージェントの環境を感知することと、感知された環境に基づいて少なくとも1つの他エージェントの挙動を予測することと、を含む。方法は、第1の計画モジュールにより、少なくとも1つの他エージェントの予測される挙動に基づいて自エージェントの少なくとも1つの第1の挙動を計画することと、計画された少なくとも1つの第1の挙動に基づいて自エージェントの動作を支援するために、少なくとも1つのアクチュエータへの制御信号を生成することと、を含む。方法は続いて、少なくとも1つの他エージェントの予測される挙動に基づいて、自エージェントの環境内で少なくとも1つのブラックスワンイベントを検出し、第1の計画モジュールと異なる第2の計画モジュールにより、少なくとも1つの他エージェントの予測される挙動と、自エージェントの環境内の検出された少なくとも1つのブラックスワンイベントとに基づいて、自エージェントの第2の挙動を計画する。方法は、感知された環境に基づいて、検出されたブラックスワンイベントの算出された状況確率が検出閾値を超えるかどうかの監視を行い、検出された少なくとも1つのブラックスワンイベントの算出された状況確率が検出閾値を超える場合、計画された第2の挙動に基づいて自エージェントの動作を支援するために少なくとも1つのアクチュエータへの制御信号を生成する。
【0017】
従属請求項は、本発明のさらに有利な実施形態を定義する。
【0018】
実施形態およびその有利な効果の説明は、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態に係る、ブラックスワンイベントを検出するための方法の簡略フローチャートである。
図2】一実施形態に係る、ブラックスワンイベントを検出するための工程の簡略フローチャートをより詳細に示す図である。
図3】道路交通シナリオにおけるブラックスワンイベントの発生の第1の例を示す図である。
図4】道路交通シナリオにおけるブラックスワンイベントの発生のさらなる例を示す図である。
図5】様々な挙動オプションと、状況確率、衝突確率、および衝突重大度の例示的な出力値とを含む道路交通シーンの例の図である。
図6】様々な挙動オプションと、それらのブラックスワン検出出力とを含む道路交通シーンの同じ例の図である。
図7】道路交通シーンの例における様々な挙動オプションについてのブラックスワン検出工程の説明図である。
図8】ブラックスワンイベントを取り込む2つの計画モジュールを用いて計画するための方法の簡略フローチャートである。
図9】一実施形態に係る、ブラックスワンイベントを取り込む2つの計画モジュールを用いて計画するための方法を詳細に示す図である。
図10】都市環境における複数のエージェントを含む複雑な例示的交通状況を示す図である。
図11】一実施形態に係る車両の概要を示す図である。
図12】一実施形態に係る、運転者支援システムの概略構造図である。
図13】環境内の複雑な状況に対処するために自エージェント1の複雑な挙動を計画するための簡略処理フローである。
図14】挙動計画システムで自エージェントの挙動を計画するためのリスクモデル評価工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面中、対応する要素は同じ参照符号を有する。説明では、簡潔性のために、理解性に負の影響を与えることなく可能であるとみなされる場合には、異なる図面にある同じ参照符号の説明を省略する。
【0021】
第1の態様および第2の態様に係るコンピュータ実装方法は、自律的に動作する自エージェントの動作のロバスト性を向上させ、操作者が自エージェントを操作するのを支援する運転支援システムに等しく適用可能である。第1の態様に係る方法は、自エージェントの環境内の他エージェントについていくつかのあり得る状況を予測し、第1、第2、および第3の閾値に従って、低い状況確率、高い衝突確率および衝突重大度を有する、各他エージェントの潜在的な挙動または意図を識別することを可能にする。他エージェントの識別された挙動は、自エージェントの環境内で現在の状況がさらに進展した際にブラックスワンイベントにつながる可能性がある。第2の態様に係る方法は、通常は自エージェントの将来の挙動を誘導する自エージェントの事前対策的な長期挙動プランナと並列して実行される短期挙動プランナで、検出されたブラックスワンイベントを考慮することを可能にする。万一、自エージェントに関与する環境内でブラックスワンイベントが実際に発生した場合、自エージェントは、ブラックスワン型のイベントに対処するために特に適合・最適化された計画を提供する能力を有する短期挙動プランナによって計画された挙動の実行に切り替えることにより、より早期にブラックスワンイベントに反応し得る。追加としてまたは代替として、自エージェントは、第2の、短期志向のプランナで異なる計画戦略を適用してよく、例えば、特に環境内の現在の運転状況において複数のブラックスワンイベントが起こりそうな場合、低下させた速度で運転する。提案される各方法を単独でまたは組み合わせて適用することは、ブラックスワンイベントの考慮を動きの計画に組み込むことを可能にする。密で動的な環境内で自エージェントを動作させるのを支援する能力が大幅に向上する。
【0022】
支援システム内でブラックスワンイベントを検出することは、独自の利点を提供する。ブラックスワンイベントを検出し、衝突重大度が高いにもかかわらず、状況確率と衝突確率の両方が低い予測される挙動から、ブラックスワンイベントにつながる他エージェントの予測される挙動を判別することは、後者の予測される挙動を、計画モジュールによるさらなる検討から完全に除外することを可能にする。よって、支援システムにとって計画工程の複雑性が低減する。必要とされる演算力およびそれに伴うコストも低減する。
【0023】
ブラックスワンイベントを検出し、潜在的なブラックスワンイベントのある状況につながる予測される挙動を判別することは、高い状況確率をもつ予測される挙動のために最適化された長期の事前対策的な計画工程とは異なる形で、別途、それらのブラックスワンイベントを考慮する別個の最適化された能力を、計画モジュールにおいて提供することを可能にする。計画工程の状況認識と、幅広い状況において適切に反応するその能力とが増大する。
【0024】
ブラックスワンイベントを伴う状況に進展する可能性のある予測される挙動を、長期プランナと並列に同時に実行される別個のプランナで扱うことができるため、ブラックスワンイベントの検出は有用である。よって、ブラックスワンイベントに伴う状況確率が動作中に急に増大した場合に、長期の挙動計画から短期の計画への迅速な変更が可能となる。
【0025】
例えば、支援システムは、自エージェントに相当する自車両の運転者に、検出されたブラックスワンイベントに関係する別のエージェントについて警告してよい。代替としてまたは追加として、支援システムは、検出されたブラックスワンイベントに関連する他エージェントに関する精緻化された予測を得るために、予測モジュールのためのリソースを増加してよい。これは、処理リソースの管理を向上させると共に、自エージェントの動作の安全性を向上させる。
【0026】
支援システムの主要要素としての挙動計画が、検出されたブラックスワンイベントに基づいて代替の異なる戦略を使用し得るため、自エージェントを動作させるのを支援するためにブラックスワンイベントを検出することは好都合である。例えば道路交通シナリオおよび自車両の動作を考えると、代替の戦略は、より低い走行速度で運転し、それにより、道路脇に駐車されている車両間を通って道路上に移動する歩行者に対する破滅的な結果を回避することを含んでよい。検出されたブラックスワンイベントを考慮に入れる別の戦略は、車線上の故障車両(予期されない(低い状況確率)イベントが自エージェントと他エージェントとに同様に起こる可能性がある)を回避するために、並行した車線に変更し、その車線で運転することを含んでよい。
【0027】
検出されたブラックスワンイベントを並列の短期プランナで考慮することは好都合である。これは、短期プランナは、より短い計画期間と、より複雑でないリスクモデルを計画に使用することの両方に起因して、長期プランナよりも演算的に高効率であるため、挙動計画のための演算時間がより少ないからである。短期プランナは、特に事後対抗的な計画の最適化と予期されないイベントとのためにパラメータ化されてもよい。長期プランナと並列に実行される短期プランナは、近づきつつあるブラックスワンイベントに対して時間ステップ1つ早く反応することを可能にする。例えばリスクマップなど、リスクに基づく計画ツールの特定の実装において、これは、例えば0.25秒早く反応することに相当し得る。追加として、短期プランナは、近づきつつあるブラックスワンイベントに反応して、自エージェントの計画された挙動が早期に利用可能となることを保証するために、増大した周期で動作してよい。
【0028】
ブラックスワンイベントおよび潜在的なブラックスワンイベントに関連する他エージェントの予測される挙動を別個のプランナで考慮することは、計画戦略を異なるように決定するために、状況確率の検出閾値を設定することを可能にし、すなわち、検出閾値を低く設定することは、結果として、状況確率がまだ低いときであっても反応を生じさせ得る。代替として、検出閾値は、ブラックスワンイベントがほぼ確実に発生しつつある場合、挙動の計画が、検出されたブラックスワンイベントだけに反応するように、高く設定されてよい。
【0029】
一実施形態に係るブラックスワンイベントを検出するためのコンピュータ実装方法は、少なくとも1つの検出されたブラックスワンイベントの算出された状況確率を監視することと、検出されたブラックスワンイベントの算出された状況確率が検出閾値を超える場合、挙動計画システム内で異なる計画戦略に従って自エージェントを動作させるために計画戦略を変更することと、を含む。
【0030】
ブラックスワンイベントを検出するためのコンピュータ実装方法の一実施形態によると、自エージェントを動作させるために異なる計画戦略を適用するステップは、自エージェントの予め設定された速度を低下させることを含む。
【0031】
一実施形態に係るブラックスワンイベントを検出するためのコンピュータ実装方法は、少なくとも1つの他エージェントの予測されるあり得る挙動と、予測されるあり得る挙動の算出された状況確率、算出された衝突確率、および判定された衝突重大度とに基づいて、第1の挙動計画モジュールで自エージェントの挙動を計画することと、計画された挙動に基づいて自エージェントの動作を支援することと、検出された潜在的なブラックスワンイベントの算出された状況確率が検出閾値を超えるかどうかを第2の挙動計画モジュールで監視することと、を含む。検出されたブラックスワンイベントの算出された状況確率が検出閾値を超える場合、方法は、検出されたブラックスワンイベントの影響を軽減するために、自エージェントの動作の支援を、自エージェントの動作を支援する第1の計画モジュールの計画された挙動から、第2の挙動計画モジュールによって決定された第2の予測される挙動に切り替えることを行う。
【0032】
ブラックスワンイベントを検出するためのコンピュータ実装方法の一実施形態によると、方法は、算出された状況確率が第5の閾値よりも小さく、算出された衝突確率が第6の閾値を下回る、少なくとも1つの他エージェントの予測される挙動を、支援システムにおけるさらなる考慮から除外することを含む。
【0033】
第2の態様の一実施形態に係る、自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法は、第2の計画モジュールが第1の計画モジュールと並列に実行されることを含んでよい。
【0034】
自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法の一実施形態によると、第2の計画モジュールは、第1の計画モジュールによって使用される第1のリスクモデルと比べて複雑でない第2のリスクモデルを使用する。
【0035】
自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法の一実施形態の第2の計画モジュールには、不確定性の考慮を伴わない最接近余裕時間リスクモデルが使用される。
【0036】
第1の計画モジュールは、不確定性の考慮を含む生存分析リスクモデルを実行してよい。
【0037】
一実施形態に係る、自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法は、第1の計画モジュールの第1の計画期間よりも短い第2の計画モジュールの第2の計画期間を含むか、または、第2の計画モジュールの第2の計画期間が、将来に向かって第1の計画モジュールの第1の計画期間の何分の一かの長さである。一例として、第2の計画モジュールの第2の計画期間は、将来に向かって最大4秒の長さであり、第1の計画モジュールの第1の計画期間は最大12秒の長さである。
【0038】
自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法の一実施形態によると、方法は、第1の計画モジュールによって決定された少なくとも1つの第1の計画された挙動の対応する減速度または操舵角変化を超える減速度および操舵角変化の少なくとも一方を含む、自車両の第2の計画された挙動を、第2の計画モジュールによって決定することを含む。
【0039】
自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法は、第2の計画モジュールが、第1の計画モジュールによって使用される長期計画アルゴリズムよりも高い周期で実行される短期計画アルゴリズムを使用することを含んでよい。アルゴリズムは、その繰り返し率が別のアルゴリズムの繰り返し率を超えるとき、より高い周期で動作する。この結果、モデルへの新たな入力を考慮する必要があるときに、より短い応答時間となる。
【0040】
自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法の一実施形態によると、方法は、検出されたブラックスワンイベントの算出された状況確率が検出閾値を超える場合、感知された環境に基づいて少なくとも1つの他エージェントの挙動を予測するために予測モジュールに追加的な処理リソースを割り当てることを含む。
【0041】
自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法は、第2の計画モジュールが、第1の計画モジュールによって使用される第1の計画戦略と異なる第2の計画戦略を使用すること、または第2の計画モジュールが、第1の計画戦略と異なる第2の計画戦略を使用し、第2の計画戦略が、第1の計画戦略と比べて自エージェント向けに低い走行速度を有すること、を含んでよい。
【0042】
一実施形態に係る、自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法は、多くの他エージェントの予測される挙動を含む予測される各状況について、起こる見込みの低い予測される挙動を有する1つの他エージェントを使用し、1つの他エージェントと異なるすべての他エージェントには起こる見込みが最も高い挙動を使用して、第2の計画モジュールを表す。
【0043】
この実施形態は、特に、第2のプランナによって提供される計画された挙動を実行することが、他エージェントとの衝突を回避する結果となることを実現する。
【0044】
自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法は、自エージェントの環境内で複数のブラックスワンイベントを検出することと、感知された環境に基づいて、検出された複数のブラックスワンイベントの各算出された状況確率が、対応する検出閾値を超えるかどうかを監視することと、検出された潜在的なブラックスワンイベントの算出された状況確率が、複数の検出されたブラックスワンイベントについて対応する検出閾値を超える場合、現在の時間から最も近いときに発生すると予測される、複数のブラックスワンイベントのうちの1つのブラックスワンイベントの計画された第2の挙動に切り替えることと、を含んでよい。
【0045】
自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法の一実施形態によると、方法は、計画された第2の挙動に基づいて制御信号を生成する間に、感知された環境に基づいて、検出されたブラックスワンイベントの算出された状況確率が検出閾値未満に低下するかどうかを監視することと、検出された潜在的なブラックスワンイベントの算出された状況確率が検出閾値未満に低下した場合、計画された少なくとも1つの第1の挙動に基づく、少なくとも1つのアクチュエータへの制御信号の生成に切り替えることと、を含む。
【0046】
一実施形態に係る、自エージェントの動作を支援するためのコンピュータ実装方法は、自エージェントを自律的に動作させること、または人間の運転者が自エージェントを操作するのを支援することを含む、自エージェントを動作させることを含み、自エージェントは、陸上車両、船舶、空中車両、および宇宙船の少なくとも1つを含む。
【0047】
以下の実施形態の説明は主として、自エージェントの具体例である自車両の環境内にある、他エージェントの具体例である車両、自転車および歩行者を含む道路交通シナリオを指す。道路交通シナリオは、特に商業的関心が持たれ、本発明の実施形態を説明するのに有用な応用例の1つに過ぎないとだけ述べておく。添付の特許請求の範囲に定められる各方法の応用は、決して、説明される道路交通シナリオに制約されるものではない。
【0048】
図1は、一実施形態に係るブラックスワンイベントを検出するための方法の簡略フローチャートを示す。
【0049】
ステップS1で、方法は、自エージェントの環境を感知中である。
【0050】
ステップS2で、方法は続いて、感知されたセンサ信号に基づいて、自エージェントの環境内で検出される他エージェントのあり得る挙動を予測する。
【0051】
ステップS3で、方法は、他エージェントの予測される挙動と、さらに自エージェントの計画された挙動とに基づいて、状況確率を算出する。別のエージェントの各予測される挙動は、他エージェントの予測される軌跡を含む。自エージェントの各計画された挙動は、自エージェントの計画された軌跡を含む。
【0052】
さらに、ステップS3で、方法は、自エージェントと検出された他エージェントとに関与する、あり得る衝突イベントを判定する。詳細には、方法は、他エージェントの予測される挙動と、さらに自エージェントの計画された挙動とに基づいて、あり得る衝突イベントを判定し、判定された各衝突イベントの衝突確率を算出する。
【0053】
ステップS4で、方法は続いて、予測される潜在的な衝突各々の衝突重大度を判定する。
【0054】
続くステップS5で、方法は続いて、ブラックスワンイベントを検出する。ブラックスワンイベントを検出する工程については、図2を参照して詳細に説明する。
【0055】
ブラックスワンイベントを検出するステップS5は、自エージェントの環境内で現在の状況にブラックスワンイベントが存在するかどうか、および、現在のシナリオのどの潜在的な進展が、検出された潜在的なブラックスワンイベントであるかを判定することを含む。
【0056】
方法がステップS5でブラックスワンイベントを検出した場合、方法はステップS6に進み、自エージェントの環境内で検出されたブラックスワンイベントに基づいて適切な行動を続けるために、検出されたブラックスワンイベントを、例えば自エージェントの挙動プランナに出力する。
【0057】
図2は、図1のステップS5によるブラックスワンイベントを検出する工程の簡略フローチャートをより詳細に示す。
【0058】
ブラックスワンイベントを検出する工程はステップS51で開始し、ここで、他エージェントの各予測される挙動および自エージェントの各計画された挙動について、算出された状況確率および算出された衝突確率を取得する。
【0059】
ステップS52で、方法は、各判定された衝突の算出された衝突重大度を取得する。
【0060】
方法は、ステップS51およびS52を少なくとも部分的に並行してまたは順次行ってよい。
【0061】
ステップS53で、方法は続いて、得られた各衝突イベントの状況確率を第1の閾値と比較する。
【0062】
ステップS54で、方法は続いて、得られた衝突確率を第2の閾値と比較する。
【0063】
ステップS55で、方法は続いて、取得した衝突重大度を第3の閾値と比較する。
【0064】
方法は、ステップS53、S54、およびS55を少なくとも部分的に並行してまたは順次行ってよい。
【0065】
ステップS56で、工程は、得られた各衝突イベントの状況確率と第1の閾値との比較、得られた衝突確率と第2の閾値との比較、および得られた衝突重大度と第3の閾値との比較に基づいて、自エージェントの環境にブラックスワンイベントが存在するかどうかを判定する。詳細には、方法は、
【0066】
- 状況確率が第1の閾値よりも小さく、
【0067】
- 衝突確率が第2の閾値よりも大きく、
【0068】
- 衝突重大度が第3の閾値を超える、
衝突イベントに、ブラックスワンイベントが存在するものと検出する。
【0069】
ブラックスワンイベントを検出する工程は次いで、検出されたブラックスワンイベントをステップS5に戻し、図1のステップS6を続ける。
【0070】
図3は、道路交通シナリオにおけるブラックスワンイベントの発生の第1の例を示す。
【0071】
描かれた交通シナリオは、自エージェント1を含み、これは例えば、一方の運転方向用の二車線の道路の左車線に沿って第1の速度(自速度)で走行している自車両である。1つの他エージェント2(他車両)が、自車両と同じ運転方向に運転する。他車両2は、第2の速度を有し、現在道路の右車線にあり、運転方向において自車両の前方に位置している。自車両の第1の速度は、他車両の第2の速度を超えると仮定する。
【0072】
自エージェント1の支援システムは、図3の運転シナリオにおいて、他エージェントの2つのあり得る挙動を予測する。第1の挙動Iは、他車両が、他車両の第1の挙動Iの予測される軌跡5上で、自車両のすぐ前方で右車線から左車線に変更することを含む。第2の挙動IIは、他車両が、右車線で他車両の第2の挙動IIの予測される軌跡4上を運転し続けることを含む。
【0073】
第1の挙動Iは、低い確率、特に図3のシナリオを考えるとき、第2の挙動IIよりも低い確率を有する。他車両は、恐らくは、左車線の接近してくる自車両を認識し、右車線上の自身の現在の進路を維持する。第2の挙動IIは、他車両の予期される意図を含む。第1の挙動Iは、他車両の予期されない意図を表す。自車両の計画された軌跡3と他車両の予測される軌跡4とは、計画期間内で交差しない。よって、他車両の予測される挙動IIと自車両の計画された挙動は、衝突イベントを生じる結果とならない。
【0074】
他車両の第1の挙動Iは、支援システムの計画期間内で左車線の自車両の計画された軌跡3と交差する、予測される軌跡5を含む。よって、自車両の予測される第1の挙動Iと自車両の計画された挙動とは、組み合わさって予測される衝突イベントとなる。この予測される衝突イベントは、他車両の予測される第1の挙動Iが低い確率とされるため、低い発生確率(状況確率)を有すると考えられる。それでも、予測される衝突イベントは、衝突イベントの高い予測重大度を有するとされ得、すなわち、衝突する車両が双方とも高速度で運転しており、他車両は自車両の右側に当たると想定され、可能性としては、自車両が道路から横滑りするか、またはさらには対向する交通の流れの中に突入する結果となる。他車両の予測される第1の挙動と自車両の計画された挙動とから生じる予測される衝突イベントは、図3の左側部分の交通シナリオにおいて、低い発生確率、高い衝突確率、および高い衝突重大度を有するブラックスワンイベントの例に相当する。
一般に、支援システムは、自エージェント1の環境における他エージェント2のすべてのあり得る妥当な意図を考慮して、安全で事前対応的な挙動を計画するために考案される。支援システムが、自エージェント1の環境内での他エージェント2のすべてのあり得る意図を、それらの妥当性と無関係に考慮した場合、支援システムは、過度に防御的に計画するか、またはさらには完全に停止することがあり得る。よって、他エージェント2のすべてのあり得る意図が考慮されるのではなく、すなわち、一定レベルのリスクを伴わない行動は環境内に存在しない。交通環境の例を見ると、他車両が自車両との衝突の形態の事故を起こしたい場合、それは、予期されない挙動を行うことによってそのようにすることができる。提示される手法は、そのようなブラックスワンイベントを検出し、具体的に検出されたブラックスワンイベントに、支援システムの計画工程において対処することを可能にする。
【0075】
図4は、道路交通シナリオにおけるブラックスワンイベントの発生のさらなる例を示す。
【0076】
図4の道路交通シナリオは、ある道路区間を直進し、道路の右側で互いの前後に位置している2つの静止している他エージェント11、12を追い越す自エージェント1(自車両)を示している。他エージェント11、12は、道路の脇に停車している他車両であり得る。さらに他エージェント8(歩行者)が、道路とは反対側の駐車している車両の側の歩道に示され、第1の駐車車両と第2の駐車車両との間の隙間に向かって移動している。大半の状況下では図示の状況において自車両が優先権を有するため、自車両の支援システムは、2台の駐車車両の間を通り、道路上に移動するという歩行者の挙動は可能性が低いと査定し得る。よって、支援システムは、歩行者が予測される軌跡9上をたどるという挙動を、低い状況確率で予測する。さらに、歩行者は、駐車している車両の間に出て、自車両と歩行者に関与する衝突イベント10が発生するまで、自車両の計画された軌跡3と交差する予測される軌跡9を進んで行く場合、重大な被害を被る可能性がある。ただし、歩行者が予測される軌跡9上を移動し続ける場合、軌跡同士が支援システムの計画期間内で実際に交差するため、衝突確率は高くなる。歩行者と自車両に関与する衝突イベント10が発生した場合、特に自車両の車体によって提供される保護がない歩行者の側では、その衝突の潜在的な帰結も重大となる。
【0077】
よって、図4に示される衝突イベント10は、第1の態様に係る方法によって設定される基準に従い、ブラックスワンイベントに該当する。方法は、図2のステップS56で、予測される軌跡9を進んで行くという歩行者の予期されない意図の状況確率は小さい、例えば第1の閾値未満である、と判定する。自車両および歩行者を含む衝突イベント10の衝突確率は、歩行者が予測される軌跡9を進む場合には高く、例えば衝突イベント10の衝突確率は第2の閾値を超える。自車両および歩行者を含む衝突イベント10の衝突重大度も、歩行者が予測される軌跡9を進み、衝突が実際に発生する場合には高く、例えば衝突イベント10の衝突重大度は第3の閾値を超える。
【0078】
したがって、自エージェント1の支援システムは、方法のステップS1~S6を適用することにより、自エージェント1の環境内の図示されるシナリオでブラックスワンイベントを検出する。他エージェント8である歩行者の予期されない意図は、図4においてそのようなブラックスワンイベントを表す。自エージェント1のためにブラックスワンイベントを検出する能力は、支援システムにより、例えば支援システムの計画モジュールで、検出されたブラックスワンイベントを適切な形で考慮するための具体的な措置を導入するのを可能にする。
【0079】
図5は、自エージェント1の挙動を計画するための異なる挙動オプションがある道路交通シナリオのさらなる例を示す。
【0080】
図5の交通シナリオは、支援システムの計画期間内に直角に交差する直線の各移動経路上を移動している、自エージェント1、例えば図1による方法の実装を含む支援システムによって支援される自車両と、1つの他エージェント2、例えば別の車両、とを含む。描かれた道路交通シナリオは、道路交通環境内の交差点を示す可能性がある。
【0081】
自車両は、計画された軌跡3に沿って移動する。自車両のセンサは、計画期間内に自軌跡3と交差する、予測される軌跡4に沿って移動している他車両2を検出する。自車両の支援システムは、他車両2を含む感知された環境に基づいて、この交通状況の3つの潜在的な進展を判定する。他車両2のそれぞれの予測される挙動を各々含む、3つの潜在的な進展。現在の交通状況の予測される潜在的な進展と、他車両のそれぞれ予測される軌跡は、図5の破線の円内に示されている。
【0082】
他車両の第1の予測される挙動は、他車両が、直線に沿って、自軌跡3と他車両の第1の予測される軌跡4.1との交差地点の方へ移動し続け、交差地点を越えることを含む。よって、第1の予測される挙動は、第1の予測される軌跡4.1を含む。
【0083】
他車両の第2の予測される挙動は、他車両が、自軌跡3と他車両の予測される軌跡4との交差地点で左に曲がり、左に曲がった後、続いて自軌跡3と同じ方向に直進することを含む。よって、第2の予測される挙動は第2の予測される軌跡4.2を含む。
【0084】
他車両の第3の予測される挙動は、他車両が、他車両と自車両との潜在的な衝突点の前で右に曲がることを含む。第3の予測される挙動は、第3の予測される軌跡4.3を含む。
【0085】
支援システムは、各自の予測される軌跡4.1、4.2、および4.3を含む、決定された他車両の各予測挙動選択肢に伴うリスクを評価する。一般に、他車両の予測される挙動および自車両の計画される挙動に伴うリスクは、以下のように定義される。
リスク=(状況確率)×(衝突確率)×(衝突重大度); (1)
支援システムは、自車両の環境内の現在の状況に固有のブラックスワンイベントを検出するために、計画工程時に、(1)のリスク定義の状況確率、衝突確率、および衝突重大度、という各成分を別々に判定してよい。
【0086】
図5は、図5の道路交通シナリオの例において挙動のリスクを推定するための成分(変数)である、状況確率13、衝突確率14、および衝突重大度15の例示的な値を示す。
【0087】
自エージェント1の支援システムは、現在のシナリオと他エージェント2の特定の予測される挙動とに所定の予測モデルを適用することに基づいて、可変の状況確率13を判定してよい。
【0088】
自エージェント1の支援システムは、現在のシナリオと他エージェント2の特定の予測される挙動とに対して生存分析を行うことにより、可変の衝突確率14を判定してよい。
【0089】
自エージェント1の支援システムは、予測される状況および予測される衝突が実際に起こるという仮定の下で、現在のシナリオと他エージェント2の特定の予測される挙動とに運動学的衝突モデルを適用することにより、可変の衝突重大度15を判定してよい。
【0090】
図5は、判定された可変の状況確率13、衝突確率14および衝突重大度15の各々を示し、判定された値は図5の左下部分にある。状況確率13、衝突確率14および衝突重大度15の判定された可変値は各々、図2の工程ステップS51~S56、特にステップS53、S54、およびS55に基づいて、このシナリオでブラックスワンイベントを検出するために個々に考慮される。
【0091】
図6は、支援システムでさらなる計画の際に考慮するための個々の予測される挙動選択肢の評価およびブラックスワン検出の結果に関して、図5の道路交通シナリオの例を、様々な挙動選択肢と共に、より詳細に示す。図7は、図6の道路交通シナリオに関連しており、図5および図6の特定の道路交通シナリオの状況確率13、衝突確率14、および衝突重大度15の判定されたパラメータ値の模式例を示す。
【0092】
図6は、計画された軌跡3に沿って移動する自車両を示している。自車両のセンサは、計画期間内に自軌跡3と交差する、予測される軌跡4に沿って移動する他車両2を検出する。自車両の支援システムは、図6の交通状況の3つの潜在的な進展を判定する。図6の破線の円は、現在の交通状況の3つの予測される潜在的な進展と、他車両のそれぞれ予測される軌跡とを含む。他車両の第1の予測される挙動は、他車両が、直線に沿って、自軌跡3と他車両の第1の予測される軌跡4.1との交差地点の方へ移動し続け、交差地点を越えることを含む。他車両の第2の予測される挙動は、他車両が、自軌跡3と他車両の予測される軌跡4との交差地点で左に曲がり、その後、計画された自軌跡3と同じ方向に向かって予測される軌跡4.2上を移動することを含む。他車両の第3の予測される挙動は、他車両が、他車両と自車両との潜在的な衝突地点で右に曲がった後、予測される軌跡4.3上を計画された自軌跡と反対方向に向かって進むことを含む。
【0093】
支援システムは、各自の予測される軌跡4.1、4.2、および4.3を含む、決定された他車両の予測挙動選択肢の各々に関連するリスクを評価する。詳細には、支援システムは、図7の道路交通シナリオで第1の挙動、第2の挙動、および第3の挙動の各々に伴うリスクを定義する変数を判定する。
【0094】
図7の上部は、図5および図6の道路交通シナリオの例における正常なイベントとブラックスワンイベントとについての状況確率13、衝突確率14、および衝突重大度15の値の模式例を示している。
【0095】
第1の予測される挙動および第1の予測される挙動の予測される軌跡4.1は、図7の左側部分にある。第1の予測される挙動のリスク評価の成分は、状況確率13に高い値、衝突確率14に高い値、および衝突重大度15に低い値を明らかにする。図7の左上部分のリスク成分の値分布に基づくと、第1の予測される挙動は、方法ステップ5、それぞれ、図2のステップS51~S56に従いブラックスワンイベントを検出する工程で、ブラックスワンイベントに該当しないことになる。これは、図2のステップS53、S54、およびS55における第1、第2および第3の閾値の実際の設定に依存している。詳細には、ステップS56における第1の閾値を超える状況確率14の高い値、および第3の閾値よりも小さい衝突重大度15の低い値は、結果として、第1の予測される挙動がブラックスワンイベントを含まないとの判定を生じさせる。
【0096】
予測される第1の挙動については状況確率13の値が高く、これは第2の挙動および第3の挙動それぞれの状況確率13の値を超えるため、第1の挙動は、正常なイベントを表すと考えられる。
【0097】
詳細には、第1の予測される挙動は、図8および9を参照してさらに詳細に説明されるように、例えばリスクマップに基づいて、長期プランナでさらに考慮するための自エージェント1の挙動計画の基礎をなしてよい。
【0098】
第2の予測される挙動および第2の予測される挙動の予測される軌跡4.2は、図7の中央部分にある。第2の予測される挙動のリスク評価の成分は、状況確率13に低い値、衝突確率14に中程度の値、および衝突重大度15に高い値を明らかにする。図7の中央上部分のリスク成分の値分布に基づくと、第2の予測される挙動は、方法ステップ5、それぞれ、図2のステップS51~S56に従いブラックスワンイベントを検出する工程で、ブラックスワンイベントに該当することになる。これは、図2のステップS53、S54、およびS55における第1、第2および第3の閾値の実際の設定に依存する。詳細には、衝突確率15の中程度の値がステップS54で第2の閾値を超え、高い衝突重大度がステップS55で第3の閾値を超える場合、結果として、図2の工程のステップS56で、第2の予測される挙動がブラックスワンイベントを含むと判定される。
【0099】
詳細には、第2の予測される挙動が結果として自エージェント1に対して潜在的なブラックスワンイベントを生じさせると判定すると、支援システムは、図8および図9を参照してさらに詳細に説明されるように、例えば短期プランナでさらに考慮するために、別の計画モジュール内で第2の予測される挙動に別途対処してよい。
【0100】
代替としてまたは追加として、支援システムは、第2の予測される挙動を、支援システムの専用の警告システムまたは警告モジュールにおいて考慮してよい。
【0101】
第3の予測される挙動および第3の予測される挙動の予測される軌跡4.3は、図7の右側部分にある。第3の予測される挙動のリスク評価の成分は、状況確率13に低い値、衝突確率14に低い値、および衝突重大度15に高い値を明らかにする。図7の右上部分のリスク成分の値分布に基づくと、第3の予測される挙動は、方法ステップ5、それぞれ、図2のステップS51~S56に従いブラックスワンイベントを検出する工程で、ブラックスワンイベントに該当し得る。これは、図2のステップS53、S54、およびS55における第1、第2および第3の閾値の実際の設定に依存する。それでも、ステップS55で衝突確率14の低い値が第3の閾値よりも小さい場合は、ステップS55で第3の閾値を超える高い衝突重大度がブラックスワンイベントを示唆する可能性があるにもかかわらず、恐らく、S56で図2に従うブラックスワン検出において第3の予測される挙動を非該当と判定する可能性がある。支援システムは、状況確率13の決定された値と衝突確率14の決定された値が共に低い、例えばそれぞれの第1および第2の閾値よりも小さいために、第3の予測される挙動を除外する、特にさらなる検討から無視することを決定してよい。
【0102】
図8は、様々な挙動オプションおよび検出されたブラックスワンイベントを処理し、2つの計画モジュールを用いて計画を行うための処理フローを説明するフローチャートを提供する。
【0103】
検出されたブラックスワンイベントの対処を取り込んだ挙動計画の工程は、ステップS7で開始し、ここで、自エージェント1の環境を感知し、感知された環境に基づくセンサ信号を生成する。センサ信号は、自エージェント1の環境の現在の表現を含む。自エージェント1の環境には、少なくとも1つの他エージェントが存在する。
【0104】
方法は、ステップS8に進み、自エージェント1の環境に存在する少なくとも1つの他エージェント2の挙動選択肢を予測する。
【0105】
ステップS8で、方法は、第1の計画モジュールにより、環境表現と、少なくとも1つの他エージェント2の予測されるあり得る挙動(挙動選択肢)とに基づいて自エージェント1の第1の挙動を計画する。
【0106】
第1の計画モジュールは、ステップS10で、制御信号を生成する。生成された制御信号は、計画された第1の挙動に基づく。第1の計画モジュールは、計画された第1の挙動を行うように自エージェント1を制御するために少なくとも1つのアクチュエータを制御するために、生成された制御信号を制御モジュールに提供する。
【0107】
ステップS11で、方法は、ステップS7の感知された環境内でブラックスワンイベントを検出するための検出工程を行う。ブラックスワンイベントの検出は、図1および図2の工程ステップS1~S6に基づいてよい。ただし、1つまたはさらには複数のブラックスワンイベントを、そのブラックスワンイベントの関連する状況確率と共に提供する別の方法が、ステップS11で用いられてよいことに留意されたい。
【0108】
ステップS11に続くステップS12で、方法は、検出されたブラックスワンイベントに基づいて第2の挙動を計画する。詳細には、第2の計画モジュールは、検出されたブラックスワンイベントが発生するという仮定の下で、環境表現と、少なくとも1つの他エージェント2の予測されるあり得る挙動とに基づいて自エージェント1の第2の挙動を計画する。
【0109】
ステップS13で、方法は、センサ信号に基づいて、詳細には、環境表現と、少なくとも1つの検出されたブラックスワンイベントの状況確率とに基づいて、環境の進展を監視する。
【0110】
ステップS13で、方法が、少なくとも1つのブラックスワンイベントの実際の状況確率が検出閾値を超えると判定する場合、方法はステップS14に進む。ステップS14で、方法は、ステップS12で第2の計画モジュールによって計画された、計画された第2の挙動の実行に切り替える。第2の計画モジュールは、ステップS14で制御信号を生成し、生成された制御信号は計画された第2の挙動に基づき、第2の計画モジュールは、計画された第2の挙動を行うように自エージェント1を制御するために少なくとも1つのアクチュエータを制御するために、生成された制御信号を制御モジュールに提供する。
【0111】
図9は、図6および図7の道路交通シナリオの例における正常なイベントとブラックスワンイベントとについての状況確率13、衝突確率14、および衝突重大度15の値の模式例に基づく。
【0112】
図7および図8を参照して説明したように、支援システムは、図1および図2に従ってブラックスワンイベントを検出するための方法の実装を含む。図8の処理に従い、支援システムは、2つの別個のプランナを含む計画モジュール16で自エージェント1の挙動を計画するための計画工程を行う。
【0113】
計画モジュール16は、長期プランナである第1のプランナ16.1を備える。長期プランナは、複雑なリスクモデルを使用し、第1の計画期間にわたって計画する。第1のプランナ16.1は、高い発生確率、例えば高い状況確率、を有する他エージェント2の挙動に対する自エージェント1の計画される挙動を決定するための、事前対策的な計画を行う。第1の計画期間は、第2の計画期間よりも長い。特定の実装において、第2の計画期間は、将来に向かって12秒間の長さである。
【0114】
第1のプランナ16.1は、例えば図7の予測される軌跡4.1を有する第1の予測される挙動を含む状況に対して、挙動計画を行う。計画モジュール16は、ブラックスワンイベントが検出されず、存在する場合にブラックスワンイベントの状況確率が所定の検出閾値よりも小さい場合、デフォルトとして、第1のプランナ16.1の計画された挙動を、計画セレクタ19を介して支援システム1の作動コントローラに提供する。
【0115】
第1のプランナ16.1は、自エージェント1が実行するための長期の事前対策的行動を重視する運転戦略を実装するように特に適合される。道路交通および交通関係者、例えば自車両、である自エージェント1の例を考えると、第1のプランナは、現在の交通状況の予測される進展を予期して、快適で前向きな行動を好むように適合される。それでも、状況の進展の予測は、大抵の場合は誤っていることが判明し、その結果、計画された挙動は、大抵の場合は変化し得る。
【0116】
計画モジュール16は、短期プランナである第2のプランナ16.2を備える。短期プランナは、単純なリスクモデルを使用し、第2の計画期間にわたって計画する。第2の計画期間は、第1の計画期間よりも短い。例えば、第2の計画期間は、将来に向かって第1の計画期間の何分の一だけの長さであってよい。特定の実装では、第2の計画期間は、将来に向かって4秒間の長さである。
【0117】
第2のプランナ16.2は、例えばブラックスワンイベントと関連付けられている、図7の予測される軌跡4.2を有する第2の予測される挙動を含む状況に対して挙動計画を行う。計画モジュール16は、ブラックスワンイベントが検出され、検出されたブラックスワンイベントの実際の状況確率が所定の検出閾値を超える場合、第2のプランナ16.2の計画された挙動を、計画セレクタ19を介して支援システム1の作動コントローラに提供する。詳細には、検出されたブラックスワンイベントの実際に判定された状況確率が増しつつあり、所定の検出閾値を超える場合。
【0118】
第2のプランナ16.2は、自エージェント1が実行するための短期の事後対応的行動を重視する運転戦略を実装するように特に適合される。道路交通および交通関係者、例えば自車両、である自エージェント1の例を考えると、第2のプランナは、有用性に着目した、確定的な運転行動を好むように適合され、これは、強いブレーキ行動および急な方向転換行動を含んでよいが、計画に用いられる短い計画期間と単純なリスクモデルに起因して低い演算コストだけで済む。第2のプランナ16.2は、その短い計画期間、高速な応答時間、および計画に使用される単純なリスクモデルに関する制限に起因して、常に事前対策的な自エージェントの挙動および行動を計画できる訳ではない。
【0119】
図9の計画モジュール16は、計画選択コントローラ17を含み、これは、得られた環境表現および検出されたブラックスワンイベントに基づいて自エージェント1の環境内の現在の状況を監視する。計画選択コントローラ17は、ブラックスワンイベントが検出されず、存在する場合にブラックスワンイベントの状況確率が所定の検出閾値よりも小さい場合、計画選択信号18を提供して、第1のプランナ16.1の計画された挙動を支援システム1の作動コントローラに提供するように計画セレクタ19を制御する。計画選択コントローラ18は、ブラックスワンイベントが検出され、検出されたブラックスワンイベントの実際の状況確率が所定の検出閾値を超える場合、計画選択信号18を提供して、第2のプランナ16.2の計画された挙動を作動コントローラに提供するように計画セレクタ19を制御する。
【0120】
このように、計画モジュール16は、起こる見込みが低い、例えば検出された起こる見込みが低い意図に関連する他エージェント2の予測される挙動の状況確率が低いが、著しい衝突確率および著しい衝突重大度を有する、他エージェント2の検出された意図に関する入力を受け取る。計画モジュール16は、検出されたブラックスワンイベントに関連する予測される挙動、例えば第2の挙動4.2を、第2の短期プランナ16.2で考慮する。計画モジュールは、起こる見込みが低いが重大となり得るブラックスワンイベントが発生しようとしていることに反応して、計画される挙動を、第2の短期プランナの計画される挙動に基づかせることにより、ブラックスワンイベントに関連する予測される挙動が発生しようとしていると判定すると直ちに反応する。
【0121】
それぞれに最適化された計画戦略を用いる並列の第1および第2のプランナ16.1、16.2を、第1のプランナ16.1と第2のプランナ16.2とを切り替える切り替え能力と組み合わせて使用することで、環境内の検出された状況の種類に応じて戦略を切り替えることが可能となり、また、実行のために短期志向の確定的な計画された挙動に切り替えることにより、自エージェントが、特に検出されたブラックスワンイベントに対して、適切に動作することが可能となる。
【0122】
図10は、都市環境における複数のエージェントを含む複雑な例示的交通状況を示す。
【0123】
図10の一番上の図は、都市交通環境に特徴的である、自エージェント1および複数の他エージェント2を含む交差点における複雑な例示的交通状況を示す。
【0124】
図10の一番上の部分に描かれた複雑な交通状況は、その結果生じる、自エージェント1にとって適切な操作シーケンスを決定するという目的の複雑性を示している。自エージェント1の挙動についての適切な操作シーケンスを計画することは、複数の挙動候補の中から自エージェント1が実行する特定の挙動を選択することを含み、挙動候補は各々、実行されると自エージェント1のそれぞれの軌跡4、5(自軌跡)を生じさせる。
【0125】
交通状況は、様々なリスク源、例えば衝突リスクおよび湾曲リスクを含む。潜在的な自軌跡4は、図の右下の他エージェント2との衝突リスクと、自車両1が現在走行している車線から右車線への車線変更に起因する湾曲リスクとの両方を考慮に入れなければならない。さらに、同じ車線上で自エージェント1のすぐ前にいる他エージェント2には、複数の挙動選択肢が存在する。複数の挙動選択肢は結果として、自エージェント1に対して複数の計画された軌跡3.1、3.2を生じ、これらは各々、各計画された軌跡4、5に伴う、潜在的な異なる結果および異なるリスクを生じさせる。
【0126】
さらに、描かれた交通状況は、複数の規制項目、例えば2つの道路の交差点における優先権を含んでおり、交差点は明らかに交通信号灯も標識も含んでいない。よって、交通信号灯、道路標識、および適用可能な交通規則を含む規制項目はすべて、査定される交通状況に強く影響し、支援システムによって解決される必要がある。これは特に、関連する要素としての複数のエージェント、各種の規制項目、および複数のリスク源を同時に含むのが通例である、密な都市交通環境に当てはまる。自エージェント1の挙動を計画することのさらなる困難が、交通状況の進展に起因して存在し、交通状況は、都市環境では特に急速であり、例えば陸路で遭遇される低速の場面進展とは対照的である。交通状況の進展は、状況を認識した計画の常時の更新を必要とし、特に、図10の上部の非常に動的な交通シナリオに固有のブラックスワンイベントを検出することによって得られる利点から利益を得る。
【0127】
図10の複雑な交通シナリオは、都市環境ではさらに複雑化する可能性があり、それは、自エージェントに搭載されたセンサに対して自エージェント1の環境の一部を隠し、それによってセンサの視野を制約する障害物を含むことがある。米国特許第10,627,812(B2)号は、支援システムの状況の知覚が不確実であるかまたは全く知覚しないエリアに仮想の他エージェント2(交通エンティティ)を含めて、自エージェント1の計画された挙動に影響し得る仮想の他エージェント2の少なくとも1つの挙動を予測することを提案している。仮想の他エージェント2の少なくとも1つの予測される挙動と、自エージェント1の予測される挙動との各組み合わせに関するリスク指標が推定・評価され、その後、自エージェント1のための制御行動は、その評価されたリスク指標に基づく。米国特許第10,627,812(B2)号の手法は、仮想の他エージェント2による予測される挙動を含み得るブラックスワンイベントを検出し、それに対処するための提案される本方法と組み合わされてよい。
【0128】
図10の真ん中部分および下部分は、複数のエージェントを含む2つのさらなる例示的交通状況を示す。
【0129】
図10の一番上の部分は、複雑な交通状況によって呈されるシナリオに対処する自エージェント1のための挙動を見つけるという目的を説明する交通状況を示すのに対し、図10の真ん中部分および下部分の交通状況は、順序付け問題によって呈される困難を示している。図10の真ん中部分および下部分は、それぞれの道路交通シナリオを示し、ここでは、自エージェント1および他エージェント2の予測される挙動が、結果として、自エージェント1の計画された軌跡3と他エージェント2の予測される軌跡4とをそれぞれ生じさせ、これらは環境内のエリア30、31で著しい衝突リスクを有する挙動をもたらす。
【0130】
図10の中央部分の場合、自エージェント1が他車両の意図を誤判定することから生じるブラックスワンイベントを監視することが、好都合であると判明する可能性がある。ブラックスワンの監視は特に有用であり得る。この理由は、交通規則は、描かれた交通状況に固有の順序付け問題および潜在的な正面状況に対する解決を明瞭に支援することができないからであり、また、車両同士の大きな差の速度に起因する著しい衝撃エネルギーを伴う正面衝突は、衝突の場合に重大な帰結をもたらし得るためである。さらに、自エージェント1と他車両2が狭いエリア30に入る場合、自エージェント1と他エージェントとの衝突は、エリア30内の制約された道路幅のために高い衝突確率を有する可能性がある。
【0131】
同様の事例が、図10の下部分のシナリオであり、自エージェント1が他車両の意図を誤判定することから生じるブラックスワンイベントを監視することが、好都合であると判明する可能性がある。自エージェント1および他エージェント2の高速度に起因する著しい衝撃エネルギーを伴う、潜在的な衝突は、衝突の場合に著しい衝突重大度をもたらし得る。さらに、自エージェント1と他車両2の両方がエリア31に同時に入る場合、自エージェント1と他エージェントとの衝突は、2台の車両に対する十分な空間がないエリア30内の単車線に起因して、高い衝突確率を有する可能性がある。
【0132】
図11は、一実施形態に係る方法を適用するように構成された自エージェント1を表す車両の概要を提供する。図11の自エージェント1は、その特徴が、米国特許出願公開第2020/231149(A1)号に開示される自車両に対応する。
【0133】
詳細には、図11は、自エージェント1の1つの特定の実施形態である道路車両(自車両)を側面図で示している。自車両は、運転者である人が自車両1を操作するのを支援するためのシステムを具備している。支援システムは、他エージェント、例えば他の交通関係者、に関する状況で、情報、例えば警告信号または行動に関する推奨、を被支援者に出力することによって支援を提供してよく、自律的または少なくとも部分的に自律的なシステムが、自エージェント1を操作することによって支援を提供してよい。
【0134】
自エージェント1は、これらに限定されないが、車、トラック、オートバイ、バスを含む、任意種類の道路車両であってよく、これらに限定されないが、歩行者、自転車、オートバイ、および自動車を含む他の交通関係者である他エージェント2に反応する。
【0135】
図11に示す自エージェント1は、複数のセンサを含み、それらは、自エージェント1周囲の環境を感知するための前方RADARセンサ40、後方RADARセンサ41および複数のカメラセンサ42、43、44、45を含む。複数のセンサは、自エージェント1の前面、自エージェント1の後面および自エージェント1の屋根にそれぞれ取り付けられる。カメラセンサ42、..、45は、好ましくは、自エージェント1の周囲360°の監視エリアが可能となるように配置される。よって、自エージェント1は、自エージェント1の環境を監視することが可能である。
【0136】
代替としてまたは追加として、さらなるセンサシステム、例えば立体カメラシステムまたはLIDARセンサが、自エージェント1に設けられてよい。
【0137】
自エージェント1は、自エージェント1の位置を含む位置データを少なくとも提供する、自エージェント1に搭載された位置センサ46、例えば全地球航法衛星システム(GNSS)ナビゲーション装置、をさらに備える。位置センサ46は、自エージェント1の空間的向きを含む向きデータをさらに提供してよい。
【0138】
複数のセンサ40、41、42、43、44、45、46は少なくとも部分的に、自エージェントの環境を感知し、感知された環境またはさらなる評価に基づいてセンサ信号を生成するセンサシステムとしてプールされてよい。
【0139】
自エージェント1の運転者支援システムは、少なくとも1つの電子制御装置(ECU)48およびコンピュータ47をさらに備える。コンピュータ47は、少なくとも1つのプロセッサ、例えば複数のプロセッサ、マイクロコントローラ、信号プロセッサ、ならびにメモリおよびバスシステムを含むプロセッサの周辺機器を含んでよい。コンピュータ47は、前方RADARセンサ40、後方RADARセンサ41、カメラセンサ42、..、45、位置センサ46からの信号と、少なくとも1つのECU48によって提供される自エージェント1のステータスデータとを受信または取得する。ステータスデータは、自エージェント1の車両速度、操舵角、エンジントルク、エンジン回転速度、またはブレーキ作動に関するデータを含んでよい。
【0140】
図12は、一実施形態に係る運転者支援システムのコンピュータ9の機能要素を示す概略構造図を示す。図12の自エージェント1のコンピュータ47の機能の説明は、その特徴が、米国特許出願公開第2020/231149(A1)号に開示される自車両に対応している。
【0141】
既存のコンピュータ47が、処理装置として、自エージェント1の支援システム、例えばアダプティブ・クルーズ・コントロール、の信号を処理するために使用される少なくとも1つのプロセッサまたは信号プロセッサを含む。コンピュータ47は、下記で説明、解説される機能構成要素を実装するように構成されてよい。描かれたコンピュータ47は、画像処理モジュール49、オブジェクト分類モジュール50、オブジェクトデータベース51、優先度判定モジュール52、地図データベース53、計画モジュール16、および挙動決定モジュール54を備えている。コンピュータ47は、図には具体的に示されない予測モジュールを実装するかまたは備えてよく、これは、1つのセンサ信号、複数のセンサ信号、または特に前処理されたセンサ信号に基づいて生成される環境表現に基づいて、別のエージェント2の挙動を予測するように特に適合される。
【0142】
各モジュールは、少なくとも1つのプロセッサで実行されているソフトウェア、または、少なくとも部分的に、電子回路を含む専用ハードウェアとして実装される。
【0143】
画像処理モジュール49は、カメラセンサ42、..、45からの信号を受信し、これらに制限されないが、自車両の車線(自車線)、自車両の環境内の他エージェントを含む物体、道路の進路、および自車両の環境内の交通標識を含む、環境内の関連する要素を識別する。
【0144】
分類モジュール50は、識別された関連する要素を分類し、分類結果を計画モジュール16に送信し、ここで、画像処理モジュール49によって識別され、計画モジュール16によって関連すると査定された、別のエージェント2の技術的に実現可能な最大速度および加速度が少なくとも、オブジェクトデータベース51に基づいて判定される。
【0145】
オブジェクトデータベース51は、複数の車両部類、例えばトラック、車、オートバイ、自転車、歩行者、の各々の最大速度(スピード)および加速度を記憶し、ならびに/または、複数の既存車両の識別情報(種類、ブランド、モデル等)を、対応する最大速度および加速度と組み合わせて記憶する。
【0146】
優先度判定モジュール53は、自車両と、画像処理モジュール49によって識別され、計画モジュール16による評価の下で現在の交通状況に関与している各他エージェント2(交通関係者)との間の優先関係を個々に判定する。交通状況は、優先度判定モジュール52により、次の少なくとも2つのカテゴリに分類されてよい。
【0147】
縦方向の場合、自エージェント1と他エージェント2は、同じ経路または車線上を同じ方向に移動し、例えば一方の車両が他方の車両の後に続く。横方向の場合、現在の時点において、自エージェント1と他エージェント2は同じ経路を移動せず、自エージェント1の経路と他エージェント2の経路とが、支援システムの予測期間内で交差または合流する。よって、現在、自エージェント1の移動方向とそれぞれの他エージェント2の移動方向とが異なっている。道路交通環境における例示的シナリオは、道路交差点、合流車線、その他であり得る。
【0148】
横方向の場合には、優先度判定モジュール52が、車線、他エージェント2の位置、道路の進路、および/または画像処理モジュール49によって識別された交通標識に基づいて、自エージェント1が他エージェント2に対して優先権を有するか、それとも他エージェント2が自エージェント1に対して優先権を有するかを判定する。代替としてまたは追加として、優先度判定モジュール52は、位置センサ46の位置信号、および道路網に関する適用可能な優先規則に関する情報を含む地図データベース53からの地図データに基づいて、この判定を行う。
【0149】
計画モジュール16は、ECU48から受け取られるステータスデータ、画像処理モジュール49から受け取られる情報、前方RADARセンサ40および後方RADARセンサ41から受け取られる信号、ならびに、自エージェント1が自律走行する場合は、運転タスクによって定義される運転ルートに関する情報に基づいて、自エージェント1の少なくとも1つの仮定的な将来の軌跡を計算する。計算された軌跡、例えば自エージェント1の計画された軌跡4、5は、自エージェント1の一連の将来の位置を示す。
【0150】
本発明によれば、計画モジュール16は、優先度判定モジュール52によって判定された優先関係に応じて、他の交通関係者のための予測モデルを選択する。さらに、最大速度および加速度が分類モジュール50によって判定されてよく、ここで、自車両1と他エージェント2が同じ経路をたどる場合、選択された予測モデルは、予測期間にわたって一定した速度を定義してよい。これは、現在の状況に基づいて行われる予測では、他エージェント2は、予測期間に対応する時間間隔にわたって一定した速度でより遠くまで移動すると仮定されることを意味する。
【0151】
一方、自エージェント1の軌跡と他エージェント2の軌跡とが交差または合流するときは、遅らせた速度変更を定義する予測モデルが選択される。詳細には、自エージェント1が他エージェント2に対して優先権を有する場合、遅らせた速度変更としての遅らせた速度低下が設定される。他エージェント2が自エージェント1に対して優先権を有する場合に選択される予測モデルでは、遅らせた速度変更として、遅らせた速度上昇が定義される。
【0152】
自エージェント1にとって適切なまたは最良の挙動を決定するために、計画モジュール16は、米国特許第9,463,797(B2)号に開示されるように、自エージェント1について複数の軌跡(自軌跡)を計算して、最良の挙動関連スコアをもたらす自軌跡を選択するか、または、挙動関連スコアを最適化するように自軌跡速度プロファイルの少なくとも1つを反復的に変更してよい。
【0153】
計画モジュール16は、例えば米国特許第9,878,710(B2)号に開示されるように、他エージェント2を含む、交通環境内の物体の将来のステータスを演算予測する改良されたプロセスに基づいて、自エージェント1の挙動の計画を行ってよい。
【0154】
計画モジュール16は、最終的に決定された自軌跡(速度プロファイル)に関する情報を挙動決定モジュール54に出力する。挙動決定モジュール54は、計画モジュール16によって提供された情報に基づいて自車両1の挙動を決定し、自エージェント1の加速度、減速度、および操舵の少なくとも1つを制御することによって、決定された挙動を実行するための対応する運転制御信号を生成し、生成された制御信号をECU48に出力する。
【0155】
代替としてまたは追加として、挙動決定モジュール54は、警告信号または自エージェント1を操作する人物に行動を推奨する情報の少なくとも1つを生成し、出力してよい。自エージェント1は、例えば、自エージェント1の操作者に対する音響出力のためのラウドスピーカ、または視覚的出力のための表示画面もしくはヘッドアップディスプレイを含む、適切な出力手段を含んでよい。
【0156】
支援システムは、記載される工程およびステップを繰り返し実行し、選択された予測モデルのパラメータが、環境の変化と、自エージェント1および他エージェント2の挙動の変化とに合わせて適合される。
【0157】
図13は、環境内の複雑な状況に対処する自エージェント1の複雑な挙動を計画するための簡略化された処理フローを示す。
【0158】
この簡略化された処理フローは、特に、協働挙動計画モジュール35(CoRiMaエージェント)への入力として、自エージェント1の環境内の知覚された状況の表現を使用する挙動を計画するための処理を示している。協働挙動計画モジュール35は、自エージェント1および少なくとも1つの他エージェント2を含む知覚された環境の表現に基づいて挙動計画を行う。詳細には、協働挙動計画モジュール35は、さらなる評価のために、知覚された状況に対処するための自エージェント1の適切な挙動オプションを生成するコンピュータ実装システムである。協働挙動計画モジュール35は、包括的な環境表現に対して適切な軌跡を生成する。協働挙動計画モジュール35は、効率的な分析のために、一般化可能な概念を提供する。協働挙動計画モジュール35は、挙動オプションならびに予測される軌跡および計画された軌跡からの選択を行う。
【0159】
軌跡を評価するために、協働挙動計画モジュール35は、リスクマッピングモジュール36(リスク・マップ・コア)を利用してよい。リスクマッピングモジュール36は、軌跡リスク、例えば衝突リスク、行われた場合の軌跡の有用性および軌跡の快適性、の少なくとも1つの評価に基づいて、入力された軌跡に値を割り当てる。これにより、リスクマッピングモジュール36は、評価された軌跡に対応する挙動の評価を提供する。提案される挙動計画モジュール35とリスクマッピングモジュール36とは、軌跡および挙動計画のための既存の他の評価方法よりも、リスクマップに基づくリスク分析の証明されている利点から利益を得る、挙動選択肢および予測される軌跡を分析する、分析的で、解釈可能、一般化可能で、全体的な手法に取り込まれてよい。
【0160】
協働挙動計画モジュール35およびリスクマッピングモジュール36は、図12の自エージェント1のコンピュータ47の計画モジュール16および挙動決定モジュール54の実装の一部をなしてよい。
【0161】
協働挙動計画モジュール35は、現在の状況で、自エージェント1のための選択された挙動および適切な軌跡3を決定する。挙動決定モジュール54は、自エージェント1の加速度、減速度、および操舵の少なくとも1つを制御することによって、決定された挙動を実行するための対応する運転制御信号を生成してよく、決定された挙動を実行するために、生成された制御信号を図12の自エージェント1のECU48に出力する。
【0162】
図14は、図11による協働挙動計画モジュール35およびリスクマッピングモジュール36の実装に基づく、挙動計画システム内での自エージェント1のための複数の挙動オプションの例を示す。
【0163】
環境を知覚して表現を生成し、自車両1の環境内の現在の状況に対して挙動選択肢を予測することは、リスクマッピングモジュール36で評価するための複数の挙動オプション37、38、39(自挙動オプション)を提供する。
【0164】
各挙動オプション37、38、39は、自エージェント1の軌跡に対応し、これは、その一部がより詳細に説明された複数の具体的なリスクタイプを含む、関連するリスクに関して分析される。
【0165】
複数の他エージェント2のうちの1つの他エージェント2との自エージェント1の衝突リスクを分析することは、2つの正規分布の積に比例する衝突確率と、自エージェント1と衝突に関与する他エージェント2との間の衝突のモデル化された重大度とを算出することを含んでよい。
【0166】
考慮に入れられる他の種類のリスクには、規制リスク、例えば速度制限、または静止物体の側方リスクが含まれ得る。
【0167】
考慮に入れられてよい各挙動オプション37、38、39のさらなる態様は、挙動オプション37、38、39の有用性および快適性の少なくとも一方を含む。挙動オプション37、38、39の有用性は、挙動オプション37、38、39の軌跡に沿って移動しながら自エージェント1によって被覆される地面を査定することによって決定されてよい。挙動オプション37、38、39の快適性は、挙動オプション37、38、39の軌跡に沿って移動する間に自エージェント1に及ぼされる加速度に基づいて算出されてよい。代替としてまたは追加として、挙動オプション37、38、39の快適性は、挙動オプション37、38、39のそれぞれの軌跡3に沿って移動する間に自エージェント1に及ぼされるジャーク(jerk)に基づいて算出されてよい。
【0168】
分析に基づいて、リスクマッピングモジュール36は、各自挙動オプション37、38、39に目的値を割り当てる。目的値は、生存分析に基づいて算出される合計累積スコアに基づいて決定されてよい。図14は、合計累積スコアに寄与する3つの例示的な種類のリスクである、湾曲リスク、衝突リスク、および規制リスクを示す。
【0169】
自挙動オプション37、38、39は、各自挙動オプション37、38、39の目的値に対応するコスト関数に基づいて最適化される。
【0170】
最適化された自挙動オプション37、38、39は、続く選択ステップに提供され、選択ステップは、最も適する最適化された自挙動オプション37、38、39を選択する。選択は、条件付き選択であってよく、例えば、選択された自挙動オプション37、38、39は、知覚された状況における所定のイベントが発生すると判定されることを前提条件として選択される。条件付き選択の場合、最も適する最適化された自挙動が、最適化された自挙動オプション37、38、39から選択されてよい。
【0171】
最後に、選択された自挙動37、38、39が、ECU48に対して自エージェント1による実行のためにECU48に出力される。
【符号の説明】
【0172】
1 自エージェント、支援システム
2、8、11、12 他エージェント
3、3.1、3.2、4、4.1、4.2、4.3、5、9 軌跡
9、47 コンピュータ
10 衝突イベント
13 状況確率
14 衝突確率
15 衝突重大度
16 計画モジュール
16.1 第1のプランナ
16.2 第2のプランナ
17 計画選択コントローラ
18 計画選択信号
19 計画セレクタ
30、31 エリア
35 協働挙動計画モジュール
36 リスクマッピングモジュール
37、38、39 挙動オプション
40 前方RADARセンサ
41 後方RADARセンサ
42、43、44、45 カメラセンサ
46 位置センサ
48 電子制御装置(ECU)
49 画像処理モジュール
50 オブジェクト分類モジュール
51 オブジェクトデータベース
52 優先度判定モジュール
53 地図データベース
54 挙動決定モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【外国語明細書】