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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139700
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】把持判定システム
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/04 20060101AFI20241002BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20241002BHJP
   B60W 50/02 20120101ALI20241002BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20241002BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20241002BHJP
   H01H 36/00 20060101ALI20241002BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B62D1/04
B60W40/08
B60W50/02
B62D5/04
B62D6/00
H01H36/00 E
G08G1/16 C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024024887
(22)【出願日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】202310307952.7
(32)【優先日】2023-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 高太郎
【テーマコード(参考)】
3D030
3D232
3D241
3D333
5G046
5H181
【Fターム(参考)】
3D030DA11
3D030DB13
3D232CC20
3D232CC30
3D232DA15
3D232DA98
3D232DC33
3D232DC34
3D232DC36
3D232EA01
3D232EB04
3D232EB12
3D232EC34
3D232GG01
3D241BA01
3D241BA11
3D241BA31
3D241CA00
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD12
3D241CE01
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA00
3D241DA58
3D241DB02
3D241DB09
3D241DC00
3D241DD02
3D333CB02
3D333CB15
3D333CB16
3D333CC30
3D333CE55
5G046AA02
5G046AB02
5G046AC04
5G046AC24
5G046AD02
5G046AE05
5H181AA01
5H181BB17
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC23
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL07
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】運転者が操舵操作子を把持しているか否かを正確に判定する。
【解決手段】把持判定システム3は、操舵操作子22に対する運転者の接触位置に応じて異なる静電容量が生じる接触センサ35と、操舵トルクに応じた出力値を出力する操舵トルクセンサ32と、接触センサ35の静電容量と操舵トルクセンサ32の出力値とに基づいて、運転者が操舵操作子22を把持しているか否かを判定する制御装置15と、を備え、制御装置15は、接触センサ35の静電容量に基づいて、操舵操作子22に対する運転者の接触位置を推定し、運転者の接触位置に応じた閾値を設定し、操舵トルクセンサ32の出力値が閾値以上である場合に、運転者が操舵操作子22を把持していると判定する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵操作子に設けられ、前記操舵操作子に対する運転者の接触位置に応じて異なる静電容量が生じるように構成された接触センサと、
前記操舵操作子に対する運転者の操舵操作によって発生する操舵トルクに応じた出力値を出力するように構成された操舵トルクセンサと、
前記接触センサの静電容量と前記操舵トルクセンサの出力値とに基づいて、運転者が前記操舵操作子を把持しているか否かを判定する制御装置と、を備えた把持判定システムであって、
前記制御装置は、
前記接触センサの静電容量に基づいて、前記操舵操作子に対する運転者の接触位置を推定し、
推定した運転者の接触位置に応じた閾値を設定し、
前記操舵トルクセンサの出力値が前記閾値以上である場合に、運転者が前記操舵操作子を把持していると判定する把持判定システム。
【請求項2】
前記操舵トルクセンサは、運転者が前記操舵操作子の第1の部分を把持している場合に、運転者が前記操舵操作子の第2の部分を把持している場合よりも、出力値が大きくなるように構成され、
前記制御装置は、前記操舵操作子に対する運転者の接触位置が前記操舵操作子の前記第1の部分であると推定した場合に、前記操舵操作子に対する運転者の接触位置が前記操舵操作子の前記第2の部分であると推定した場合よりも、前記閾値を大きな値に設定する請求項1に記載の把持判定システム。
【請求項3】
前記操舵トルクセンサは、運転者が前記操舵操作子の前記第1の部分としての上部を把持している場合に、運転者が前記操舵操作子の前記第2の部分としての下部を把持している場合よりも、出力値が大きくなるように構成され、
前記制御装置は、前記操舵操作子に対する運転者の接触位置が前記操舵操作子の上部であると推定した場合に、前記操舵操作子に対する運転者の接触位置が前記操舵操作子の下部であると推定した場合よりも、前記閾値を大きな値に設定する請求項2に記載の把持判定システム。
【請求項4】
前記車両は、車輪を転舵するステアリング装置を有し、
前記操舵トルクセンサは、
前記操舵操作子に接続され、回転軸線を中心に回転するロータと、
前記ステアリング装置に接続され、前記ロータの外周に配置されるスリーブと、
前記ロータと前記スリーブを連結するトーションバーと、を有し、
運転者が前記操舵操作子の上部を把持している場合に、運転者が前記操舵操作子の下部を把持している場合よりも、前記ロータが前記スリーブに対して前記回転軸線と直交する方向に大きくオフセットすることで、前記操舵トルクセンサの出力値が大きくなる請求項3に記載の把持判定システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記操舵操作子に対する運転者の接触位置が前記操舵操作子の前記第1の部分であると推定した場合に、前記閾値を第1の値に設定し、
前記操舵操作子に対する運転者の接触位置が前記操舵操作子の前記第2の部分であると推定した場合に、前記閾値を前記第1の値よりも小さい第2の値に設定し、
前記操舵操作子に対する運転者の接触位置が前記操舵操作子の前記第1の部分と前記第2の部分の間の第3の部分であると推定した場合に、前記閾値を前記第1の値よりも小さく前記第2の値よりも大きい第3の値に設定する請求項2に記載の把持判定システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記車両の自動運転制御を実行可能に設けられ、
前記自動運転制御の実行中に前記自動運転制御を停止すべき停止条件が成立した場合に、運転者の接触位置に応じた前記閾値を設定し、
前記操舵トルクセンサの出力値が前記閾値以上である場合に、運転者が前記操舵操作子を把持していると判定し、前記車両の運転権限を運転者に移行する請求項1~5のいずれか1項に記載の把持判定システム。
【請求項7】
前記接触センサは、複数の静電容量センサを含み、
前記制御装置は、
前記複数の静電容量センサが正常な静電容量センサと故障した静電容量センサとを含む場合に、前記正常な静電容量センサの静電容量に基づいて、前記操舵操作子に対する運転者の接触位置を推定し、
推定した運転者の接触位置に応じた前記閾値を設定し、
前記操舵トルクセンサの出力値が前記閾値以上である場合に、運転者が前記操舵操作子を把持していると判定する請求項1~5のいずれか1項に記載の把持判定システム。
【請求項8】
前記接触センサは、複数の静電容量センサを含み、
前記制御装置は、
前記複数の静電容量センサが正常な静電容量センサと故障した静電容量センサとを含み、且つ、前記正常な静電容量センサの静電容量に基づいて前記操舵操作子に対する運転者の接触位置を推定できない場合に、前記操舵操作子に対する運転者の接触位置が前記操舵操作子のうちの前記故障した静電容量センサに対応する部分であると推定し、
推定した運転者の接触位置に応じた前記閾値を設定し、
前記操舵トルクセンサの出力値が前記閾値以上である場合に、運転者が前記操舵操作子を把持していると判定する請求項1~5のいずれか1項に記載の把持判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者が操舵操作子を把持しているか否かを判定するための把持判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中の脆弱な立場にある人々に配慮し、このような人々に持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。その実現に向けて、予防安全技術に関する開発を通して、交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発が注目されている。
【0003】
特に、予防安全技術に関する開発として、車両の運転者が操舵操作子(例えば、ステアリングホイール)を把持しているか否かを判定するための把持判定システムの開発が注目されている。例えば、操舵トルクセンサの出力値が閾値以上である場合に、運転者が操舵操作子を把持していると判定する把持判定システムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-82821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
操舵トルクセンサの出力値は、操舵操作子に対する運転者の接触位置によって異なる。上記の従来技術では、運転者が操舵操作子に接触しているか否かに応じて上記の閾値が設定されているが、操舵操作子に対する運転者の接触位置を考慮して上記の閾値が設定されていない。そのため、上記の閾値が比較的小さい値に設定された場合には、操舵操作子のうちの操舵トルクセンサの出力値が出やすい部分において、運転者が操舵操作子を把持していないにも関わらず運転者が操舵操作子を把持していると判定されやすくなる。一方で、上記の閾値が比較的大きい値に設定された場合には、操舵操作子のうちの操舵トルクセンサの出力値が出にくい部分において、運転者が操舵操作子を把持しているにも関わらず運転者が操舵操作子を把持していないと判定されやすくなる。このように、上記の従来技術では、操舵操作子に対する運転者の接触位置に応じて、運転者が操舵操作子を把持しているか否かを正確に判定することが困難であった。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑み、操舵操作子に対する運転者の接触位置に応じて、運転者が操舵操作子を把持しているか否かを正確に判定することを課題とし、延いては、持続可能な輸送システムの発展に寄与することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、車両(1)の操舵操作子(22)に設けられ、前記操舵操作子に対する運転者の接触位置に応じて異なる静電容量が生じるように構成された接触センサ(35)と、前記操舵操作子に対する運転者の操舵操作によって発生する操舵トルクに応じた出力値を出力するように構成された操舵トルクセンサ(32)と、前記接触センサの静電容量と前記操舵トルクセンサの出力値とに基づいて、運転者が前記操舵操作子を把持しているか否かを判定する制御装置(15)と、を備えた把持判定システム(3)であって、前記制御装置は、前記接触センサの静電容量に基づいて、前記操舵操作子に対する運転者の接触位置を推定し、推定した運転者の接触位置に応じた閾値を設定し、前記操舵トルクセンサの出力値が前記閾値以上である場合に、運転者が前記操舵操作子を把持していると判定する。
【0008】
この態様によれば、操舵操作子に対する運転者の接触位置に応じて、閾値を適切な値に設定することができる。そのため、運転者が操舵操作子を把持しているか否かを正確に判定することができる。延いては、持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【0009】
上記の態様において、前記操舵トルクセンサは、運転者が前記操舵操作子の第1の部分を把持している場合に、運転者が前記操舵操作子の第2の部分を把持している場合よりも、出力値が大きくなるように構成され、前記制御装置は、前記操舵操作子に対する運転者の接触位置が前記操舵操作子の前記第1の部分であると推定した場合に、前記操舵操作子に対する運転者の接触位置が前記操舵操作子の前記第2の部分であると推定した場合よりも、前記閾値を大きな値に設定しても良い。
【0010】
この態様によれば、操舵操作子に対する運転者の接触位置が第1の部分(操舵トルクセンサの出力値が出やすい部分)であるか第2の部分(操舵トルクセンサの出力値が出にくい部分)であるかに応じて、閾値を適切な値に設定することができる。
【0011】
上記の態様において、前記操舵トルクセンサは、運転者が前記操舵操作子の前記第1の部分としての上部を把持している場合に、運転者が前記操舵操作子の前記第2の部分としての下部を把持している場合よりも、出力値が大きくなるように構成され、前記制御装置は、前記操舵操作子に対する運転者の接触位置が前記操舵操作子の上部であると推定した場合に、前記操舵操作子に対する運転者の接触位置が前記操舵操作子の下部であると推定した場合よりも、前記閾値を大きな値に設定しても良い。
【0012】
この態様によれば、操舵操作子に対する運転者の接触位置が操舵操作子の上部(操舵トルクセンサの出力値が出やすい部分)であるか操舵操作子の下部(操舵トルクセンサの出力値が出にくい部分)であるかに応じて、閾値を適切な値に設定することができる。
【0013】
上記の態様において、前記車両は、車輪(17)を転舵するステアリング装置(7)を有し、前記操舵トルクセンサは、前記操舵操作子に接続され、回転軸線を中心に回転するロータ(71)と、前記ステアリング装置に接続され、前記ロータの外周に配置されるスリーブ(72)と、前記ロータと前記スリーブを連結するトーションバー(73)と、を有し、運転者が前記操舵操作子の上部を把持している場合に、運転者が前記操舵操作子の下部を把持している場合よりも、前記ロータが前記スリーブに対して前記回転軸線と直交する方向に大きくオフセットすることで、前記操舵トルクセンサの出力値が大きくなっても良い。
【0014】
この態様によれば、操舵トルクセンサの構造上の特性に応じて、閾値を適切な値に設定することができる。
【0015】
上記の態様において、前記制御装置は、前記操舵操作子に対する運転者の接触位置が前記操舵操作子の前記第1の部分であると推定した場合に、前記閾値を第1の値に設定し、前記操舵操作子に対する運転者の接触位置が前記操舵操作子の前記第2の部分であると推定した場合に、前記閾値を前記第1の値よりも小さい第2の値に設定し、前記操舵操作子に対する運転者の接触位置が前記操舵操作子の前記第1の部分と前記第2の部分の間の第3の部分であると推定した場合に、前記閾値を前記第1の値よりも小さく前記第2の値よりも大きい第3の値に設定しても良い。
【0016】
この態様によれば、操舵操作子に対する運転者の接触位置に応じて、閾値をより細かく設定することができる。そのため、運転者が操舵操作子を把持しているか否かをより正確に判定することができる。
【0017】
上記の態様において、前記制御装置は、前記車両の自動運転制御を実行可能に設けられ、前記自動運転制御の実行中に前記自動運転制御を停止すべき停止条件が成立した場合に、運転者の接触位置に応じた前記閾値を設定し、前記操舵トルクセンサの出力値が前記閾値以上である場合に、運転者が前記操舵操作子を把持していると判定し、前記車両の運転権限を運転者に移行しても良い。
【0018】
この態様によれば、運転者が操舵操作子を把持していることを正確に判定した上で、車両の運転権限を運転者に移行することができる。そのため、運転者の操舵操作子に対する把持が不十分な状態(例えば、濡れたタオル等の運転者の手以外の物体が操舵操作子に置かれている状態や運転者の数本の指だけが操舵操作子に掛かっている状態)で車両の運転権限が運転者に移行されるのを抑制することができる。
【0019】
上記の態様において、前記接触センサは、複数の静電容量センサ(53~58)を含み、前記制御装置は、前記複数の静電容量センサが正常な静電容量センサと故障した静電容量センサとを含む場合に、前記正常な静電容量センサの静電容量に基づいて、前記操舵操作子に対する運転者の接触位置を推定し、推定した運転者の接触位置に応じた前記閾値を設定し、前記操舵トルクセンサの出力値が前記閾値以上である場合に、運転者が前記操舵操作子を把持していると判定しても良い。
【0020】
この態様によれば、複数の静電容量センサの一部が故障している場合であっても、正常な静電容量センサの静電容量と操舵トルクセンサの出力値とを併用することで、運転者が操舵操作子を把持しているか否かを判定することができる。
【0021】
上記の態様において、前記接触センサは、複数の静電容量センサ(53~58)を含み、前記制御装置は、前記複数の静電容量センサが正常な静電容量センサと故障した静電容量センサとを含み、且つ、前記正常な静電容量センサの静電容量に基づいて前記操舵操作子に対する運転者の接触位置を推定できない場合に、前記操舵操作子に対する運転者の接触位置が前記操舵操作子のうちの前記故障した静電容量センサに対応する部分であると推定し、推定した運転者の接触位置に応じた前記閾値を設定し、前記操舵トルクセンサの出力値が前記閾値以上である場合に、運転者が前記操舵操作子を把持していると判定しても良い。
【0022】
この態様によれば、複数の静電容量センサの一部が故障し、且つ、正常な静電容量センサの静電容量に基づいて操舵操作子に対する運転者の接触位置を推定できない場合であっても、操舵トルクセンサの出力値を利用して、運転者が操舵操作子を把持しているか否かを判定することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上の態様によれば、操舵操作子に対する運転者の接触位置に応じて、運転者が操舵操作子を把持しているか否かを正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係る把持判定システムが適用された車両を示す機能構成図
図2】本発明の第1実施形態に係るステアリングホイールを示す正面図
図3】本発明の第1実施形態に係る操舵トルクセンサを示す斜視図
図4】本発明の第1実施形態に係る操舵トルクセンサを示す平面図
図5】本発明の第1実施形態に係る把持判定制御を示すフローチャート
図6】本発明の第1実施形態に係る閾値設定制御を示すフローチャート
図7】本発明の第2実施形態に係る把持判定制御を示すフローチャート
図8】本発明の第2実施形態に係る第1閾値設定制御を示すフローチャート
図9】本発明の第2実施形態に係る第2閾値設定制御を示すフローチャート
図10】本発明の第2実施形態に係る第3閾値設定制御を示すフローチャート
図11】本発明の第2実施形態に係る第4閾値設定制御を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、図1図6を参照しつつ、本発明の第1実施形態について説明する。
【0026】
<車両1>
まず、図1を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る把持判定システム3が適用された車両1について説明する。例えば、車両1は、自動車である。他の実施形態では、車両1は、自動車以外の車両(例えば、2輪車)であっても良い。
【0027】
車両1は、駆動装置5と、ブレーキ装置6と、ステアリング装置7と、HMI8(Human Machine Interface)と、運転操作子9と、ナビゲーション装置10と、外界センサ11と、車両センサ12と、運転者センサ13と、制御装置15と、を有する。以下、車両1の構成要素について順番に説明する。
【0028】
駆動装置5は、車両1に駆動力を付与する装置である。駆動装置5は、車両1を走行させるための駆動力を発生させる駆動源を含む。例えば、駆動源は、内燃機関及び/又は電動モータによって構成されている。
【0029】
ブレーキ装置6は、車両1に制動力を付与する装置である。例えば、ブレーキ装置6は、ブレーキロータにパッドを押し付けるブレーキキャリパと、ブレーキキャリパに油圧を供給する電動シリンダと、を含む。
【0030】
ステアリング装置7は、車輪17を転舵することで、車輪17の舵角を変える装置である。例えば、ステアリング装置7は、車輪17に接続されたラックアンドピニオン機構と、ラックアンドピニオン機構を駆動する電動モータと、を含む。
【0031】
HMI8は、車両1の乗員(例えば、運転者)に対して情報を提示すると共に、乗員による情報の入力を受け付ける装置である。HMI8は、タッチパネル19と、音声出力装置20と、を含む。タッチパネル19は、乗員に対して各種画面を表示すると共に、乗員による各種画面に対する入力操作を受け付ける。音声出力装置20は、音声ガイダンスや警告音等を出力する。
【0032】
運転操作子9は、運転者による運転操作を受け付ける装置である。運転操作子9は、運転者による車両1の操舵操作を受け付けるステアリングホイール22(操舵操作子の一例)と、運転者による車両1の加速操作を受け付けるアクセルペダル23と、運転者による車両1の制動操作を受け付けるブレーキペダル24と、を含む。なお、ステアリングホイール22の詳細は、後述する。
【0033】
ナビゲーション装置10は、車両1の目的地への経路案内等を行う装置である。ナビゲーション装置10は、人工衛星から受信したGNSS信号に基づいて、車両1の現在位置を特定する。ナビゲーション装置10は、車両1の現在位置と乗員がタッチパネル19に入力した車両1の目的地とに基づいて、車両1の目的地までの経路を設定する。
【0034】
外界センサ11は、車両1の外界の状態を検出する装置である。外界センサ11は、複数のカメラ26と、複数のレーダ27と、複数のライダ28(LiDAR)と、を含む。各カメラ26は、車両1の周囲に存在する物標(前走車等の周辺車両、歩行者、道路上の構造物、区画線等)の画像を撮影する。各レーダ27は、ミリ波等の電波を車両1の周囲に発射し、その反射波を捉えることにより、車両1の周囲に存在する物標の位置を検出する。各ライダ28は、赤外線等の光を車両1の周囲に照射し、その反射光を捉えることにより、車両1の周囲に存在する物標の位置を検出する。
【0035】
車両センサ12は、各種の車両状態を検出するセンサである。車両センサ12は、車両1の車速を検出する車速センサ30と、車両1の左右方向の加速度(横加速度)を検出する加速度センサ31と、運転者による車両1の操舵操作に応じて発生する操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ32と、を含む。
【0036】
運転者センサ13は、運転者の状態を検出する装置である。運転者センサ13は、ドライバモニタカメラ34と、接触センサ35と、を含む。ドライバモニタカメラ34は、運転者の画像を撮影する。接触センサ35は、ステアリングホイール22に設けられ、静電容量に基づいてステアリングホイール22に対する運転者の接触位置を検出する。なお、接触センサ35の詳細は、後述する。
【0037】
制御装置15は、車両センサ12(特に、操舵トルクセンサ32)及び運転者センサ13(特に、接触センサ35)と共に、把持判定システム3を構成している。
【0038】
制御装置15は、各種処理を実行するように構成されたコンピュータからなる電子制御装置(ECU)である。制御装置15は、演算処理装置(CPU、MPU等のプロセッサ)と、記憶装置(ROM、RAM等のメモリ)と、を含む。演算処理装置は、記憶装置から必要なソフトウェアを読み取り、読み取ったソフトウェアに従って所定の演算処理を実行する。制御装置15は、1つのハードウェアとして構成されていてもよく、複数のハードウェアからなるユニットとして構成されていてもよい。制御装置15は、CAN(Controller Area Network)等の通信ネットワークによって車両1の各構成要素に接続されており、車両1の各構成要素を制御する。
【0039】
制御装置15は、機能的な構成要素として、外界認識部37と、走行制御部38と、運転支援制御部39と、自動運転制御部40と、把持判定部41と、を含む。制御装置15の機能的な構成要素の少なくとも一部は、LSI、ASIC、FPGA等のハードウェアによって実現されてもよく、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0040】
外界認識部37は、外界センサ11の検出結果に基づいて、車両1の外界の状態を認識する。例えば、外界認識部37は、外界センサ11の検出結果に基づいて、車両1の周囲に存在する物標(前走車等の周辺車両、歩行者、道路上の構造物、区画線等)を認識する。
【0041】
走行制御部38は、運転者による運転操作子9に対する運転操作に応じて、車両1の走行を制御する。例えば、走行制御部38は、運転者によるステアリングホイール22に対する車両1の操舵操作に応じてステアリング装置7を制御し、車両1を旋回させる。走行制御部38は、運転者によるアクセルペダル23に対する車両1の加速操作に応じて駆動装置5を制御し、車両1を加速させる。走行制御部38は、運転者によるブレーキペダル24に対する車両1の制動操作に応じてブレーキ装置6を制御し、車両1を減速させる。
【0042】
運転支援制御部39は、外界認識部37の認識結果に基づいて、車両1の先進運転支援制御(ADAS:Advanced Driver Assistance Systems)を実行する。先進運転支援制御は、SAEの自動運転レベル1~2に相当する制御である。先進運転支援制御の実行時には、運転者が車両1の運転主体となり、車両1の運転権限を有する。以下、先進運転支援制御のことを、「運転支援制御」と略称する。
【0043】
運転支援制御部39は、運転支援制御として、追従走行制御(ACC:Adaptive Cruise Control)を実行可能に設けられている。運転支援制御部39は、ACCの実行時に、車両1を前走車に所定の車間距離を保って追従走行させるべく、駆動装置5及びブレーキ装置6を制御する。
【0044】
運転支援制御部39は、運転支援制御として、車線維持支援制御(LKAS;Lane Keeping Assistance System)を実行可能に設けられている。運転支援制御部39は、LKASの実行時に、車両1が車線内の走行位置を維持するように運転者による車両1の操舵操作を支援すべく、ステアリングホイール22及びステアリング装置7を制御する。
【0045】
運転支援制御部39は、運転支援制御として、衝突軽減ブレーキ制御(CMBS:Collision Mitigation Brake System)を実行可能に設けられている。運転支援制御部39は、CMBSの実行時に、車両1と車外の物体との衝突を軽減すべく、ブレーキ装置6を制御する。
【0046】
自動運転制御部40は、車両1の自動運転制御(AD:Autonomous Driving)を実行する。自動運転制御は、SAEの自動運転レベル3以上に相当する制御である。自動運転制御の実行時には、自動運転制御部40が車両1の運転主体となり、車両1の運転権限を有する。自動運転制御の実行時に、自動運転制御部40は、駆動装置5、ブレーキ装置6、及び、ステアリング装置7を自動的に制御し、車両1を自動的に走行させる。
【0047】
把持判定部41は、接触センサ35の静電容量と操舵トルクセンサ32の出力値(出力電圧)とに基づいて、運転者がステアリングホイール22を把持しているか否かを判定する。その判定方法の詳細は、後述する。
【0048】
以下、説明の便宜上、制御装置15の機能的な構成要素を区別せずに、単に「制御装置15」と記載する。
【0049】
<ステアリングホイール22の構成>
次に、図2を参照しつつ、ステアリングホイール22の構成について説明する。以下、単に「径方向」と記載する場合には、ステアリングホイール22の径方向を示し、単に「周方向」と記載する場合には、ステアリングホイール22の周方向を示す。
【0050】
ステアリングホイール22は、ステアリングホイール22の回転軸線A上に設けられる円柱状のハブ43と、径方向においてハブ43の外側に設けられる環状のリム44と、径方向に延びてハブ43とリム44を連結する複数のスポーク45~47と、を備えている。
【0051】
ハブ43は、ステアリング装置7に接続されたステアリングシャフト(図示せず)に一体回転可能に連結されている。これにより、ステアリングホイール22がステアリングシャフトに回転可能に支持されている。
【0052】
リム44は、ハブ43に対して径方向に間隔をおいて設けられている。他の実施形態では、リム44がハブ43に直接接続されることで、複数のスポーク45~47が省略されても良い。
【0053】
複数のスポーク45~47は、周方向に間隔をおいて設けられている。複数のスポーク45~47は、ハブ43から右方に延びる右側スポーク45と、ハブ43から左方に延びる左側スポーク46と、ハブ43から下方に延びる下側スポーク47と、を含む。右側スポーク45の後面(運転者側の面)には、矩形状の右側スイッチユニット49が設けられている。例えば、右側スイッチユニット49は、運転支援制御を開始/終了するためのスイッチや、運転支援制御の状態(例えば、ACCの設定車速)を変更するためのスイッチ等を含む。左側スポーク46の後面(運転者側の面)には、矩形状の左側スイッチユニット50が設けられている。例えば、左側スイッチユニット50は、空調装置(図示せず)を操作するためのスイッチや、ナビゲーション装置10を操作するためのスイッチ等を含む。
【0054】
<接触センサ35の構成及び作用>
次に、図2を参照しつつ、接触センサ35の構成及び作用について説明する。
【0055】
接触センサ35は、第1右側静電容量センサ53と、第2右側静電容量センサ54と、第3右側静電容量センサ55と、第1左側静電容量センサ56と、第2左側静電容量センサ57と、第3左側静電容量センサ58と、を含む。以下、これらを区別しない場合には、「静電容量センサ53~58」と記載する。
【0056】
静電容量センサ53~58は、それぞれ、ステアリングホイール22に接触した物体と容量結合可能な電極によって構成されている。運転者の手がステアリングホイール22に接触するのに応じて、運転者の手と静電容量センサ53~58を構成する電極との距離が短くなると、静電容量センサ53~58の静電容量が上昇する。静電容量センサ53~58は、ステアリングホイール22に対する運転者の接触位置に応じて、異なる静電容量が生じるように構成されている。
【0057】
第1右側静電容量センサ53は、右側スポーク45に配置されている。第1右側静電容量センサ53は、右側スイッチユニット49の上縁に沿って左右方向に延びる第1延出部61と、第1延出部61の左端部(径方向における内側の端部)から上方に向けて屈曲され、ハブ43の上部外周に沿って延びる第2延出部62と、を有する。
【0058】
第2右側静電容量センサ54は、第1右側静電容量センサ53の下方において、右側スポーク45とハブ43とに跨って配置されている。第2右側静電容量センサ54は、右側スイッチユニット49の下縁に沿って左右方向に延びる上側延出部65と、上側延出部65の左端部(径方向における内側の端部)から下方に向けて屈曲され、ハブ43の下部外周に沿って延びる下側延出部66と、を含む。
【0059】
第3右側静電容量センサ55は、右側スポーク45に配置されている。第3右側静電容量センサ55は、右側スイッチユニット49の右縁(外縁)に沿って延びている。
【0060】
第1左側静電容量センサ56は、左側スポーク46に配置されている。第1左側静電容量センサ56は、第1右側静電容量センサ53と同様に、第1延出部61及び第2延出部62を含む。
【0061】
第2左側静電容量センサ57は、第1左側静電容量センサ56の下方において、左側スポーク46とハブ43とに跨って配置されている。第2左側静電容量センサ57は、第2右側静電容量センサ54と同様に、上側延出部65及び下側延出部66を含む。
【0062】
第3左側静電容量センサ58は、左側スポーク46に配置されている。第3左側静電容量センサ58は、左側スイッチユニット50の左縁(外縁)に沿って延びている。
【0063】
運転者がリム44の右上部44R1及び/又は左上部44L1に接触すると、第1右側静電容量センサ53及び/又は第1左側静電容量センサ56の静電容量が基準値以上に上昇する。この場合、制御装置15は、ステアリングホイール22に対する運転者の接触位置がステアリングホイール22の上部であると推定する。
【0064】
運転者がリム44の右下部44R2及び/又は左下部44L2に接触すると、第2右側静電容量センサ54及び/又は第2左側静電容量センサ57の静電容量が基準値以上に上昇する。この場合、制御装置15は、ステアリングホイール22に対する運転者の接触位置がステアリングホイール22の下部であると推定する。
【0065】
運転者がリム44の右中央部44R3及び/又は左中央部44L3に接触すると、第3右側静電容量センサ55及び/又は第3左側静電容量センサ58の静電容量が基準値以上に上昇する。この場合、制御装置15は、ステアリングホイール22に対する運転者の接触位置がステアリングホイール22の上下中央部であると推定する。
【0066】
<操舵トルクセンサ32の構成及び作用>
次に、図3図4を参照しつつ、操舵トルクセンサ32の構成及び作用について説明する。
【0067】
操舵トルクセンサ32は、ロータ71と、ロータ71の外周に配置されるスリーブ72と、ロータ71とスリーブ72を連結するトーションバー73と、を有する。なお、トーションバー73は、図4において図示が省略されている。
【0068】
ロータ71は、回転軸線Xを中心に回転可能に設けられている。以下、「軸方向」と記載する場合には、ロータ71の回転軸線Xに沿った方向を示し、「周方向」と記載する場合には、ロータ71の回転軸線Xを中心とする周方向を示す。
【0069】
ロータ71は、ステアリングホイール22に接続されている。例えば、ロータ71は、ステアリングホイール22を回転可能に支持するステアリングシャフト(図示せず)の中間部に設けられている。ロータ71は、軸方向に延びる円筒状を成している。ロータ71の外周面には、複数の突起75が周方向に間隔をおいて設けられている。
【0070】
スリーブ72は、ステアリング装置7に接続されている。スリーブ72は、軸方向に延びる円筒状を成している。スリーブ72の外周には、円環状のコイル保持部77(図3において半分のみ表示)が設けられている。コイル保持部77には、複数のコイル78が軸方向に間隔をおいて保持されている。スリーブ72には、複数の検出窓79が軸方向及び周方向に間隔をおいて設けられている。複数の検出窓79の軸方向の位置は、複数のコイル78の軸方向の位置と対応している。
【0071】
トーションバー73は、ロータ71に挿入されている。トーションバー73の上端部(軸方向一端部)は、ロータ71に結合されている。トーションバー73の下端部(軸方向他端部)は、スリーブ72に結合されている。
【0072】
運転者の操舵操作に応じてステアリングホイール22が回転すると、ステアリングホイール22に接続されたロータ71が回転する。これに応じて、ロータ71の回転がトーションバー73を介してスリーブ72に伝達され、スリーブ72が回転する。これに応じて、スリーブ72に接続されたステアリング装置7が車輪17を転舵し、車輪17の舵角を変更する。
【0073】
上記のようにロータ71の回転がトーションバー73を介してスリーブ72に伝達されると、操舵トルク(操舵操作によってステアリングホイール22に発生するトルク)に応じたねじれがトーションバー73に発生する。これにより、ロータ71の複数の突起75とスリーブ72の複数の検出窓79の位置関係が変化し、複数のコイル78の磁束密度が変化するため、操舵トルクセンサ32の出力値(出力電圧)が変化する。このように、操舵トルクセンサ32は、操舵トルクに応じた出力値を生じさせるように構成されている。
【0074】
図4に実線で示されるように、運転者がステアリングホイール22を把持していない状態では、ロータ71の中心がスリーブ72の中心と一致している。これに対して、運転者がステアリングホイール22を把持すると、運転者の腕からステアリングホイール22に荷重が掛かる。この荷重がステアリングホイール22からロータ71に伝達されると、図4に二点鎖線で示されるように、荷重の向きに応じてロータ71がスリーブ72に対して回転軸線Xと直交する方向にオフセットされ、ロータ71がスリーブ72に対して偏心する。これに応じて、ロータ71の複数の突起75とスリーブ72の複数の検出窓79の位置関係が変化し、複数のコイル78の磁束密度が変化する。そのため、操舵トルクが発生していない状態であっても、操舵トルクセンサ32の出力値が上昇する。
【0075】
このとき、運転者の腕からステアリングホイール22に掛かる荷重が大きい程、スリーブ72に対するロータ71のオフセット幅Yが大きくなり、操舵トルクセンサ32の出力値も大きくなる。運転者がステアリングホイール22の上部を把持している場合には、運転者の手が上側からステアリングホイール22を保持することになるため、運転者の腕全体の荷重がステアリングホイール22に乗りやすい。一方で、運転者がステアリングホイール22の下部を把持している場合には、運転者の手が折り畳まれた状態で下側からステアリングホイール22に掛かるため、運転者の腕全体の荷重がステアリングホイール22に乗りにくい。そのため、運転者がステアリングホイール22の上部を把持している場合には、運転者がステアリングホイール22の下部を把持している場合よりも、ロータ71がスリーブ72に対して回転軸線Xと直交する方向に大きくオフセットし(スリーブ72に対するロータ71のオフセット幅Yが大きくなり)、操舵トルクセンサ32の出力値も大きくなる。
【0076】
<把持判定制御>
次に、図5を参照しつつ、運転者がステアリングホイール22を把持しているか否かを判定するための把持判定制御について説明する。なお、本実施形態では、把持判定制御の開始時において、制御装置15が自動運転制御を実行しているものとする。
【0077】
把持判定制御が開始されると、制御装置15は、自動運転制御を停止すべき停止条件が成立したか否かを判定する(ステップST1)。言い換えると、制御装置15は、自動運転レベルを3以上から2以下に移行すべきか否かを判定する。例えば、停止条件は、運転者がHMI8に対して自動運転制御の停止操作を行ったという条件や、センサ等の故障により自動運転制御を継続できなくなったという条件を含む。停止条件が成立していないと判定した場合(ステップST1:No)、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を把持しているか否かを判定することなく、把持判定制御を終了する。
【0078】
停止条件が成立していると判定した場合(ステップST1:Yes)、制御装置15は、操舵トルクセンサ32の出力値に関する閾値Tを設定するための閾値設定制御を実行する(ステップST2)。なお、閾値設定制御の詳細は、後述する。
【0079】
閾値設定制御(ステップST2)によって閾値Tを設定すると、制御装置15は、操舵トルクセンサ32の出力値を取得し(ステップST3)、取得した操舵トルクセンサ32の出力値と閾値Tとに基づいて、運転者がステアリングホイール22を把持しているか否かを判定する(ステップST4)。より詳細には、操舵トルクセンサ32の出力値が閾値T以上である場合に、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を把持していると判定する。一方で、操舵トルクセンサ32の出力値が閾値T未満である場合に、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を把持していないと判定する。
【0080】
運転者がステアリングホイール22を把持していると判定した場合(ステップST4:Yes)、制御装置15は、自動運転制御を停止し、車両1の運転権限を運転者に移行する(ステップST5)。これにより、車両1の運転主体が制御装置15から運転者に移行する。
【0081】
運転者がステアリングホイール22を把持していないと判定した場合(ステップST4:No)、制御装置15は、把持促進処理を実行する(ステップST6)。把持促進処理において、制御装置15は、HMI8を介して、ステアリングホイール22を把持することを運転者に促す。
【0082】
<閾値設定制御>
次に、図6を参照しつつ、上述の閾値設定制御(ステップST2)について説明する。
【0083】
閾値設定制御が開始されると、制御装置15は、静電容量センサ53~58の静電容量を取得し(ステップST11)、取得した静電容量に基づいて、ステアリングホイール22に対する運転者の接触位置(以下、単に「接触位置」と称する)を推定する(ステップST12)。
【0084】
次に、制御装置15は、ステップST12の推定結果に基づいて、接触位置がステアリングホイール22の上部(第1の部分の一例)であるか否かを判定する(ステップST13)。接触位置がステアリングホイール22の上部であると判定した場合(ステップST13:Yes)、制御装置15は、閾値Tを第1の値T1に設定する(ステップST14)。
【0085】
接触位置がステアリングホイール22の上部でないと判定した場合(ステップST13:No)、制御装置15は、ステップST12の推定結果に基づいて、接触位置がステアリングホイール22の下部(第2の部分の一例)であるか否かを判定する(ステップST15)。接触位置がステアリングホイール22の下部であると判定した場合(ステップST15:Yes)、制御装置15は、閾値Tを第2の値T2に設定する(ステップST16)。第2の値T2は、第1の値T1よりも小さい。
【0086】
接触位置がステアリングホイール22の下部でないと判定した場合(ステップST15:No)、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22の上下中央部(第3の部分の一例)に接触していると推定し(ステップST17)、閾値Tを第3の値T3に設定する(ステップST18)。第3の値T3は、第1の値T1よりも小さく、第2の値T2よりも大きい。
【0087】
<第1実施形態の効果>
制御装置15は、静電容量センサ53~58の静電容量に基づいて接触位置を推定し、推定した接触位置に応じた閾値Tを設定している。これにより、接触位置に応じて閾値Tを適切な値に設定することができるため、運転者がステアリングホイール22を把持しているか否かを正確に判定することができる。
【0088】
また、制御装置15は、操舵トルクセンサ32の出力値が閾値T以上である場合に、運転者がステアリングホイール22を把持していると判定し、車両1の運転権限を運転者に移行している。これにより、運転者がステアリングホイール22を把持していることを正確に判定した上で、車両1の運転権限を運転者に移行することができる。
【0089】
(第2実施形態)
以下、図7図11を参照しつつ、本発明の第2実施形態について説明する。なお、制御装置15が実行する把持判定制御以外の内容は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0090】
以下、ステアリングホイール22の右側部に配置された3つの静電容量センサ53~55を右側静電容量センサ53~55と称し、ステアリングホイール22の左側部に配置された3つの静電容量センサ56~58を左側静電容量センサ56~58と称する。また、ステアリングホイール22の左右両側部の上部に配置された2つの静電容量センサ53、56を上側静電容量センサ53、56と称し、ステアリングホイール22の左右両側部の下部に配置された2つの静電容量センサ54、57を下側静電容量センサ54、57と称し、ステアリングホイール22の左右両側部の上下中央部に配置された2つの静電容量センサ55、58を中央静電容量センサ55、58と称する。
【0091】
<把持判定制御>
把持判定制御が開始されると、制御装置15は、静電容量センサ53~58の一部が故障しているか否かを判定する(ステップST21)。静電容量センサ53~58の一部が故障していないと判定した場合(ステップST21:No)、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を把持しているか否かを判定することなく、把持判定制御を終了する。
【0092】
静電容量センサ53~58の一部が故障していると判定した場合(ステップST21:Yes)、制御装置15は、右側静電容量センサ53~55又は左側静電容量センサ56~58のいずれか一方が正常であるか否かを判定する(ステップST22)。
【0093】
右側静電容量センサ53~55又は左側静電容量センサ56~58のいずれか一方が正常であると判定した場合(ステップST22:Yes)、制御装置15は、第1閾値設定制御を実行する(ステップST23)。なお、第1閾値設定制御の詳細は、後述する。
【0094】
右側静電容量センサ53~55又は左側静電容量センサ56~58のどちらも正常でないと判定した場合(ステップST22:No)、制御装置15は、下側静電容量センサ54、57及び中央静電容量センサ55、58が正常であるか否かを判定する(ステップST24)。
【0095】
下側静電容量センサ54、57及び中央静電容量センサ55、58が正常であると判定した場合(ステップST24:Yes)、制御装置15は、第2閾値設定制御を実行する(ステップST25)。なお、第2閾値設定制御の詳細は、後述する。
【0096】
下側静電容量センサ54、57又は中央静電容量センサ55、58の少なくとも一方が正常でないと判定した場合(ステップST24:No)、制御装置15は、上側静電容量センサ53、56及び下側静電容量センサ54、57が正常であるか否かを判定する(ステップST26)。
【0097】
上側静電容量センサ53、56及び下側静電容量センサ54、57が正常であると判定した場合(ステップST26:Yes)、制御装置15は、第3閾値設定制御を実行する(ステップST27)。なお、第3閾値設定制御の詳細は、後述する。
【0098】
上側静電容量センサ53、56又は下側静電容量センサ54、57の少なくとも一方が正常でないと判定した場合(ステップST26:No)、制御装置15は、上側静電容量センサ53、56及び中央静電容量センサ55、58が正常であるか否かを判定する(ステップST28)。
【0099】
上側静電容量センサ53、56及び中央静電容量センサ55、58が正常であると判定した場合(ステップST28:Yes)、制御装置15は、第4閾値設定制御を実行する(ステップST29)。なお、第4閾値設定制御の詳細は後述する。
【0100】
上側静電容量センサ53、56又は中央静電容量センサ55、58の少なくとも一方が正常でないと判定した場合(ステップST28:No)、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を把持しているか否かを判定することなく、把持判定制御を終了する。
【0101】
第1閾値設定制御(ステップST23)、第2閾値設定制御(ステップST25)、第3閾値設定制御(ステップST27)、又は、第4閾値設定制御(ステップST29)によって閾値Tを設定すると、制御装置15は、操舵トルクセンサ32の出力値を取得する(ステップST30)。
【0102】
次に、制御装置15は、把持判定処理(ステップST31)を実行する。把持判定処理において、制御装置15は、操舵トルクセンサ32の出力値と閾値Tとに基づいて、運転者がステアリングホイール22を把持しているか否かを判定する。より詳細には、操舵トルクセンサ32の出力値が閾値T以上である場合に、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を把持していると判定する。一方で、操舵トルクセンサ32の出力値が閾値T未満である場合に、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を把持していないと判定する。
【0103】
<第1閾値設定制御>
次に、図8を参照しつつ、上述の第1閾値設定制御(ステップST23)について説明する。なお、第1閾値設定制御のステップST43~ST48は、第1実施形態における閾値設定制御のステップST13~ST18と同様であるため、説明を省略する。
【0104】
第1閾値設定制御が開始されると、制御装置15は、正常な静電容量センサ53~58(ここでは、右側静電容量センサ53~55又は左側静電容量センサ56~58のいずれか一方)の静電容量を取得する(ステップST41)。次に、制御装置15は、ステップST41で取得した正常な静電容量センサ53~58の静電容量に基づいて、ステアリングホイール22に対する運転者の接触位置(以下、単に「接触位置」と称する)を推定する(ステップST42)。
【0105】
<第2閾値設定制御>
次に、図9を参照しつつ、上述の第2閾値設定制御(ステップST25)について説明する。なお、第2閾値設定制御のステップST55~ST58は、第1実施形態における閾値設定制御のステップST15~ST18と同様であるため、説明を省略する。
【0106】
第2閾値設定制御が開始されると、制御装置15は、正常な静電容量センサ53~58(ここでは、下側静電容量センサ54、57及び中央静電容量センサ55、58)の静電容量を取得する(ステップST51)。次に、制御装置15は、ステップST51で取得した正常な静電容量センサ53~58の静電容量に基づいて、接触位置を推定する(ステップST52)。
【0107】
次に、制御装置15は、正常な静電容量センサ53~58の静電容量に基づいて接触位置を推定できたか否かを判定する(ステップST53)。正常な静電容量センサ53~58の静電容量に基づいて接触位置を推定できなかったと判定した場合(ステップST53:No)、制御装置15は、接触位置がステアリングホイール22の上部であると推定し、閾値Tを第1の値T1に設定する(ステップST54)。このように、制御装置15は、接触位置が故障した静電容量センサ53~58(ここでは、上側静電容量センサ53、56)に対応する部分であると推定し、推定した接触位置に応じた閾値Tを設定する。
【0108】
<第3閾値設定制御>
次に、図10を参照しつつ、上述の第3閾値設定制御(ステップST27)について説明する。なお、第3閾値設定制御のステップST63~ST66は、第1実施形態における閾値設定制御のステップST13~ST16と同様であるため、説明を省略する。
【0109】
第3閾値設定制御が開始されると、制御装置15は、正常な静電容量センサ53~58(ここでは、上側静電容量センサ53、56及び下側静電容量センサ54、57)の静電容量を取得する(ステップST61)。次に、制御装置15は、ステップST61で取得した正常な静電容量センサ53~58の静電容量に基づいて接触位置を推定する(ステップST62)。
【0110】
ステップST67において、制御装置15は、正常な静電容量センサ53~58の静電容量に基づいて接触位置を推定できなかったと判定する。この場合、制御装置15は、接触位置がステアリングホイール22の上下中央部であると推定し、閾値Tを第3の値T3に設定する(ステップST68)。このように、制御装置15は、接触位置が故障した静電容量センサ53~58(ここでは、中央静電容量センサ55、58)に対応する部分であると推定し、推定した接触位置に応じた閾値Tを設定する。
【0111】
<第4閾値設定制御>
次に、図11を参照しつつ、上述の第4閾値設定制御(ステップST29)について説明する。なお、第4閾値設定制御のステップST73~ST74、ST77~ST78は、第1実施形態における閾値設定制御のステップST13~ST14、ST17~ST18と同様であるため、説明を省略する。
【0112】
第4閾値設定制御が開始されると、制御装置15は、正常な静電容量センサ53~58(ここでは、上側静電容量センサ53、56及び中央静電容量センサ55、58)の静電容量を取得する(ステップST71)。次に、制御装置15は、ステップST71で取得した正常な静電容量センサ53~58の静電容量に基づいて接触位置を推定する(ステップST72)。
【0113】
ステップST75において、制御装置15は、正常な静電容量センサ53~58の静電容量に基づいて接触位置を推定できたか否かを判定する。正常な静電容量センサ53~58の静電容量に基づいて接触位置を推定できなかったと判定した場合(ステップST75:No)、制御装置15は、接触位置がステアリングホイール22の下部であると推定し、閾値Tを第2の値T2に設定する(ステップST76)。このように、制御装置15は、接触位置が故障した静電容量センサ53~58(ここでは、下側静電容量センサ54、57)に対応する部分であると推定し、推定した接触位置に応じた閾値Tを設定する。
【0114】
<第2実施形態の効果>
上述の第1閾値設定制御において、制御装置15は、正常な静電容量センサ53~58の静電容量に基づいて接触位置を推定し、推定した接触位置に応じた閾値Tを設定している。これにより、静電容量センサ53~58の一部が故障している場合であっても、正常な静電容量センサ53~58の静電容量と操舵トルクセンサ32の出力値とを併用することで、運転者がステアリングホイール22を把持しているか否かを判定することができる。
【0115】
また、第2~第4閾値設定制御において、制御装置15は、正常な静電容量センサ53~58の静電容量に基づいて接触位置を推定できない場合に、接触位置がステアリングホイール22のうちの故障した静電容量センサ53~58に対応する部分であると推定し、推定した接触位置に応じた閾値Tを設定している。これにより、静電容量センサ53~58の一部が故障し、且つ、正常な静電容量センサ53~58の静電容量に基づいてステアリングホイール22に対する運転者の接触位置を推定できない場合であっても、操舵トルクセンサ32の出力値を利用して、運転者がステアリングホイール22を把持しているか否かを判定することができる。
【0116】
<変形例>
上記実施形態では、ステアリングホイール22の上部がステアリングホイール22の第1の部分の一例であり、ステアリングホイール22の下部がステアリングホイール22の第2の部分の一例である。一方で、他の実施形態において、操舵トルクセンサ32の構成が本実施形態と異なる場合には、ステアリングホイール22の上部以外の部分がステアリングホイール22の第1の部分であっても良いし、ステアリングホイール22の下部以外の部分がステアリングホイール22の第2の部分であっても良い。
【0117】
上記実施形態では、接触センサ35は、ステアリングホイール22の右側部と左側部に静電容量センサ53~58を3個ずつ備えている。他の実施形態では、接触センサ35は、ステアリングホイール22の右側部と左側部に静電容量センサを1~2個ずつ備えていても良いし、4個以上ずつ備えていても良い。例えば、第1右側静電容量センサ53と第3右側静電容量センサ55とが一体化され、第1左側静電容量センサ56と第3左側静電容量センサ58とが一体化されることで、接触センサ35がステアリングホイール22の右側部と左側部に静電容量センサを2個ずつ備えていても良い。
【0118】
上記実施形態では、接触センサ35は、ステアリングホイール22のハブ43、右側スポーク45、及び、左側スポーク46に静電容量センサ53~58を備えている。他の実施形態では、接触センサ35は、ステアリングホイール22のリム44に静電容量センサを備えていても良い。
【0119】
上記実施形態では、環状のリム44を有するステアリングホイール22が操舵操作子として用いられている。他の実施形態では、環状のリム44を有しない操作子(例えば、操縦桿)が操舵操作子として用いられても良い。
【0120】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。
【符号の説明】
【0121】
1 :車両
3 :把持判定システム
7 :ステアリング装置
15 :制御装置
17 :車輪
22 :ステアリングホイール(操舵操作子の一例)
32 :操舵トルクセンサ
35 :接触センサ
53 :第1右側静電容量センサ
54 :第2右側静電容量センサ
55 :第3右側静電容量センサ
56 :第1左側静電容量センサ
57 :第2左側静電容量センサ
58 :第3左側静電容量センサ
71 :ロータ
72 :スリーブ
73 :トーションバー
T :閾値
T1 :第1の値
T2 :第2の値
T3 :第3の値
X :回転軸線
図1
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