(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139724
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】吸放湿剤
(51)【国際特許分類】
B01D 53/28 20060101AFI20241002BHJP
C07F 9/54 20060101ALI20241002BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20241002BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B01D53/28
C07F9/54
C09K3/00 N
B01D53/26 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024037114
(22)【出願日】2024-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2023050087
(32)【優先日】2023-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉矢 正
(72)【発明者】
【氏名】古井 恵里
【テーマコード(参考)】
4D052
4H050
【Fターム(参考)】
4D052AA08
4D052CF00
4D052DA00
4D052HA09
4D052HA49
4D052HB01
4H050AA03
4H050AB80
(57)【要約】
【課題】優れた水蒸気の吸収性を有すると共に、水蒸気の放出性にも優れた吸放湿剤を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物を含有する吸放湿剤である。
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~15の直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基又は環状アルキル基を表し、A
-は、アミノ基を有するカルボキシラートアニオン又は窒素含有複素環を有するカルボキシラートアニオンを表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を含有する吸放湿剤。
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基又は環状アルキル基を表し、A
-は、アミノ基を有するカルボキシラートアニオン又は窒素含有複素環を有するカルボキシラートアニオンを表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)中のR1、R2、R3及びR4が、それぞれ独立に、炭素数1~15の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である請求項1に記載の吸放湿剤。
【請求項3】
一般式(1)で表される化合物が、テトラブチルホスホニウム・DL-アラニネート、テトラブチルホスホニウム・β-アラニネート、テトラブチルホスホニウム・D-アラニネート、テトラエチルホスホニウム・L-アラニネート、テトラブチルホスホニウム・グリシネート、テトラブチルホスホニウム・L-プロリネート、又はテトラブチルホスホニウム・DL-セリネートである請求項1に記載の吸放湿剤。
【請求項4】
空気を調湿材に接触させて空気の湿度を調節する調湿空調機であって、調湿材が請求項1~3のいずれか1項に記載の吸放湿剤を含む調湿空調機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸放湿剤に関するものである。特に調湿空調機等の調湿材に用いられる吸放湿剤に関する。
【背景技術】
【0002】
デシカント式の空調機においては、空気中の水蒸気を吸収する特性を持つ吸湿剤(デシカント)が使用される。このような吸湿剤としてイオン液体が提案されており、例えば、特許文献1には、ホスホニウム系カチオンとリン酸エステル系のアニオンとを含む吸湿剤が開示されている。このイオン液体は、優れた吸湿性を有すると共に、臭気や金属溶解性を有しないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているイオン液体は優れた水蒸気の吸収性を有するが、調湿材として用いるために必要な水蒸気の放出性は十分ではなかった。
したがって、本発明の目的は、優れた水蒸気の吸収性を有すると共に、水蒸気の放出性にも優れた吸放湿剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記実情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、ホスホニウム系イオン液体において、ホスホニウムカチオンと、アミノ基を有するカルボキシラートアニオン又は窒素含有複素環を有するカルボキシラートアニオンとから構成されるイオン液体が優れた水蒸気の吸収性と放出性を有していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、下記一般式(1)で表される化合物を含有する吸放湿剤である。
【0007】
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基又は環状アルキル基を表し、A
-は、アミノ基を有するカルボキシラートアニオン又は窒素含有複素環を有するカルボキシラートアニオンを表す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた水蒸気の吸収性を有すると共に、水蒸気の放出性にも優れた吸放湿剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の吸放湿剤は、下記一般式(1)で表される化合物を含有する。
【0010】
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基又は環状アルキル基を表し、A
-は、アミノ基を有するカルボキシラートアニオン又は窒素含有複素環を有するカルボキシラートアニオンを表す。)
【0011】
前記R1、R2、R3及びR4で表される炭素数1~20の直鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基及びn-イコシル基等が挙げられる。
【0012】
前記R1、R2、R3及びR4で表される炭素数1~20の分岐鎖状のアルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、t-ペンチル基、イソヘキシル基、s-ヘキシル基、t-ヘキシル基及びエチルヘキシル基等が挙げられる。
【0013】
前記R1、R2、R3及びR4で表される炭素数1~20の環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロペンチル基、シクロヘプチル基、2-メチルシクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基、2-メチルシクロヘプチル基、3-メチルシクロヘプチル基、4-メチルシクロヘプチル基及び5-メチルシクロヘプチル基等が挙げられる。
【0014】
前記R1、R2、R3及びR4は、炭素数1~15の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることが、吸放湿性に優れるため好ましく、炭素数1~10の直鎖状のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~6の直鎖状のアルキル基であることが特に好ましい。R1、R2、R3及びR4は、それぞれ同一でもよく、異なってもよいが、合成上の観点から同一であることが好ましい。
【0015】
前記A-で表される、アミノ基を有するカルボキシラートアニオンとしては、天然のアミノ酸のアニオンが挙げられ、具体的には、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、DL-アラニン、β-アラニン、D-アラニン、L-アラニン、L-アルギニン、L-イソロイシン、グリシン、L-グルタミン、L-グルタミン酸、L-システイン、DL-セリン、L-セリン、L-チロシン、L-トリプトファン、L-トレオニン、L-バリン、L-ヒスチジン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-メチオニン、L-リジン及びL-ロイシン等のアニオンが挙げられる。
【0016】
前記A-で表される、窒素含有複素環を有するカルボキシラートアニオンとしては、L-プロリン、L-ピログルタミン酸、α-メチルプロリン及びシス-4-ヒドロキシ-L-プロリン等のアニオンが挙げられる。
【0017】
前記A-は、DL-アラニン、β-アラニン、D-アラニン、L-アラニン、L-プロリン、DL-セリン及びグリシンから選ばれるアミノ酸のアニオンであることが、吸放湿性に優れるため好ましい。
【0018】
本発明の一般式(1)で表される化合物として、具体的には、テトラエチルホスホニウム・DL-アラニネート、テトラエチルホスホニウム・β-アラニネート、テトラエチルホスホニウム・D-アラニネート、テトラエチルホスホニウム・L-アラニネート、テトラエチルホスホニウム・グリシネート、テトラエチルホスホニウム・L-プロリネート、テトラエチルホスホニウム・DL-セリネート、テトラ-n-ブチルホスホニウム・アラニネート、テトラ-n-ブチルホスホニウム・β-アラニネート、テトラ-n-ブチルホスホニウム・グリシネート、テトラ-n-ブチルホスホニウム・L-プロリネート、テトラ-n-ブチルホスホニウム・DL-セリネート、テトラ-n-オクチルホスホニウム・アラニネート、テトラ-n-オクチルホスホニウム・β-アラニネート、テトラ-n-オクチルホスホニウム・グリシネート、テトラ-n-オクチルホスホニウム・L-プロリネート、テトラ-n-オクチルホスホニウム・DL-セリネート、メチルトリブチルホスホニウム・アラニネート、メチルトリブチルホスホニウム・β-アラニネート、メチルトリブチルホスホニウム・グリシネート、メチルトリブチルホスホニウム・L-プロリネート、メチルトリブチルホスホニウム・DL-セリネート、ドデシルトリブチルホスホニウム・アラニネート、ドデシルトリブチルホスホニウム・β-アラニネート、ドデシルトリブチルホスホニウム・グリシネート、ドデシルトリブチルホスホニウム・L-プロリネート、ドデシルトリブチルホスホニウム・DL-セリネート、エチルトリオクチルホスホニウム・アラニネート、エチルトリオクチルホスホニウム・β-アラニネート、エチルトリオクチルホスホニウム・グリシネート、エチルトリオクチルホスホニウム・L-プロリネート、エチルトリオクチルホスホニウム・DL-セリネート、ヘキサデシルトリブチルホスホニウム・アラニネート、ヘキサデシルトリブチルホスホニウム・β-アラニネート、ヘキサデシルトリブチルホスホニウム・グリシネート、ヘキサデシルトリブチルホスホニウム・L-プロリネート、ヘキサデシルトリブチルホスホニウム・DL-セリネート等が挙げられる。これらの中でも、吸放湿性の観点から、テトラブチルホスホニウム・DL-アラニネート、テトラブチルホスホニウム・β-アラニネート、テトラブチルホスホニウム・D-アラニネート、テトラエチルホスホニウム・L-アラニネート、テトラブチルホスホニウム・グリシネート、テトラブチルホスホニウム・L-プロリネート、及びテトラブチルホスホニウム・DL-セリネートが好ましい。
【0019】
前記一般式(1)で表される化合物は、ホスホニウムカチオンとカルボキシラートアニオンからなるものであるが、2種以上のホスホニウムカチオンを含有するものであってもよく、2種以上のカルボキシラートアニオンをするものであってもよい。
【0020】
前記一般式(1)で表される化合物は、例えば、トリアルキルホスフィンとハロゲン化アルキルを不活性ガス雰囲気下で反応させ、アニオンがハロゲンであるホスホニウム塩を得た後、所望により中和・酸化処理を行い、次いで得られたホスホニウム塩に所望のアニオン成分を滴下して混合し、アニオン交換することで製造できる。
【0021】
前記一般式(1)で表される化合物を含む本発明の吸放湿剤は、優れた水蒸気の吸収性及び放出性を有しているため、特に調湿空調機等の調湿材として好適に使用することができる。
【実施例0022】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
[実施例1]
イオン交換樹脂(オルガノ社製、アンバーライトIRA400(OH)HG)を直径5cmのガラスカラムに400ml充填し、純水200mlをSV=1.0の速度で上方からチューブポンプを用いて流した。次いで、テトラブチルホスホニウム・ブロマイド(日本化学工業製、ヒシコーリンPX-4B)33.9g(0.1モル)を純水400mlに溶解した水溶液を、カラムの上方からSV=1.0の速度で流し、さらに純水300mlを流して、テトラブチホスホニウム・ヒドロキシドの水溶液690.5gを得た。0.1規定塩酸水溶液で中和滴定して、濃度3.7%(粗収率92.4%)であった。また、0.1規定硝酸銀滴定により、残留ブロマイド濃度は540ppmであった。
0.1モル/L水酸化ナトリウム水溶液400mlをSV=1.0の速度で上方からチューブポンプを用いて流し、更に純水300mlを流して、イオン交換樹脂を再生した。同様にテトラブチルホスホニウム・ブロマイド(日本化学工業製、ヒシコーリンPX-4B)33.9g(0.1モル)を純水400mlに溶解した水溶液を、カラムの上方からSV=1.0の速度で流し、さらに純水300mlを流す操作を合計で10回繰り返すことで、平均濃度3.6%のテトラブチホスホニウム・ヒドロキシドの水溶液7150g(粗収率93.1%)を得た。0.1規定硝酸銀滴定により、残留ブロマイド濃度は500ppmであった。
【0024】
得られたテトラブチルホスホニウム・ヒドロキシドの水溶液614g(0.08モル)と、DL-アラニン7.1g(0.08モル)を純水100mlに溶解した水溶液を、室温で撹拌混合した。得られた混合水溶液を、エバポレーターで減圧濃縮後、濃縮液をメタノールと混合したメタノール溶液を無水硫酸マグネシウムで一昼夜脱水し、脱水したメタノール溶液をエバポレーターで減圧濃縮することで、無色透明粘性液体の化合物1を27.2g(粗収率98.0%)得た。カールフィッシャー法で測定した水分は、4947ppmであった。得られた化合物1のNMR同定データは以下の通りである。
(同定データ)
31P-NMR;33.37ppm
1H-NMR;0.98ppm(t,12H,-CH3),1.51~1.58ppm(m,16H,-CH2-),1.29ppm(d,3H,-CH3),2.39~2.40(m,8H,P-CH2-),3.25(q,1H,-CH-NH2),3.35(s,2H,-NH2)
この結果、化合物1はテトラブチルホスホニウム・DL-アラニネートであることが確認された。
得られた化合物1について、後述する手順で吸湿試験及び放湿試験を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0025】
[実施例2]
実施例1と同様にして得られたテトラブチルホスホニウム・ヒドロキシドの水溶液614g(0.08モル)と、β-アラニン7.1g(0.08モル)を純水100mlに溶解した水溶液を、室温で撹拌混合した。得られた混合水溶液を、エバポレーターで減圧濃縮後、濃縮液をメタノールと混合したメタノール溶液を無水硫酸マグネシウムで一昼夜脱水し、脱水したメタノール溶液をエバポレーターで減圧濃縮することで、無色透明粘性液体の化合物2を27.5g(粗収率99.0%)得た。カールフィッシャー法で測定した水分は、5702ppmであった。得られた化合物2のNMR同定データは以下の通りである。
(同定データ)
31P-NMR;33.10ppm
1H-NMR;0.98ppm(t,12H,-CH3),1.51~1.58ppm(m,16H,-CH2-),2.29ppm(t,2H,-C(=O)―CH2-),2.39~2.44(m,8H,P-CH2-),2.87(t,2H,-CH2-NH2),3.35(s,2H,-NH2)
この結果、化合物2はテトラブチルホスホニウム・β-アラニネートであることが確認された。
得られた化合物2について、後述する手順で吸湿試験及び放湿試験を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0026】
[実施例3]
実施例1と同様にして得られたテトラブチルホスホニウム・ヒドロキシドの水溶液614g(0.08モル)と、グリシン6.0g(0.08モル)を純水100mlに溶解した水溶液を、室温で撹拌混合した。得られた混合水溶液を、エバポレーターで減圧濃縮後、濃縮液をメタノールと混合したメタノール溶液を無水硫酸マグネシウムで一昼夜脱水し、脱水したメタノール溶液をエバポレーターで減圧濃縮することで、無色透明粘性液体の化合物3を26.5g(粗収率99.0%)得た。カールフィッシャー法で測定した水分は、5092ppmであった。得られた化合物3のNMR同定データは以下の通りである。
(同定データ)
31P-NMR;33.37ppm
1H-NMR;0.98ppm(t,12H,-CH3),1.51~1.58ppm(m,16H,-CH2-),2.36~2.42ppm(m,8H,P-CH2-),3.12ppm(s,2H,-CH2-NH2),3.35ppm(s,2H,-NH2)
この結果、化合物3はテトラブチルホスホニウム・グリシネートであることが確認された。
得られた化合物3について、後述する手順で吸湿試験及び放湿試験を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0027】
[実施例4]
実施例1と同様にして得られたテトラブチルホスホニウム・ヒドロキシドの水溶液614g(0.08モル)と、L-プロリン9.2g(0.08モル)を純水100mlに溶解した水溶液を、室温で撹拌混合した。得られた混合水溶液を、エバポレーターで減圧濃縮後、濃縮液をメタノールと混合したメタノール溶液を無水硫酸マグネシウムで一昼夜脱水し、脱水したメタノール溶液をエバポレーターで減圧濃縮することで、無色透明粘性液体の化合物4を29.3g(粗収率98.0%)得た。カールフィッシャー法で測定した水分は、2233ppmであった。得られた化合物4のNMR同定データは以下の通りである。
(同定データ)
31P-NMR;33.37ppm
1H-NMR;0.98ppm(t,12H,-CH3),1.51~1.58ppm(m,16H,-CH2-),2.36~2.42ppm(m,8H,P-CH2-),1.61~1.72ppm(m,1H),1.87~1.93ppm(m,1H),2.03~2.10ppm(m,1H),2.76~2.81ppm(m,1H),3.07~3.11ppm(m,1H),3.51~3,54ppm(m,1H),3.35ppm(s,1H,-NH-)
この結果、化合物4はテトラブチルホスホニウム・L-プロリネートであることが確認された。
得られた化合物4について、後述する手順で吸湿試験及び放湿試験を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0028】
[比較例1]
比較化合物1として、市販のメチルトリブチルホスホニウム・ジメチルホスフェート(PX-4MP:日本化学工業(株)製)を用い、後述する手順で吸湿試験及び放湿試験を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0029】
<吸湿試験>
縦170mm、横220mm、高さ80mmのステンレス製かごをチャック付きポリエチレン袋に入れ、相対湿度を約50%に調整したアクリル製試験箱内に置いた。70mmφガラス製シャーレに化合物1~4又は比較化合物1を約1g入れて0.1mg感量まで正確に秤量した。このシャーレ及び温湿度計(T&D社製データロガーおんどとりTR72nw)をかご内に入れて袋を密封し、袋内の相対湿度の経時変化を測定した。
初期相対湿度が半減するまでの時間を湿度半減時間とし、また、相対湿度が半減するまでの各化合物のモルあたりの吸湿速度を計算してモル吸湿速度として、各化合物の吸湿性能を比較した。
なお、モル吸湿速度(%/mol・min)は以下の式により計算した。
(初期湿度の1/2)/[(サンプル重量/分子量)×(初期湿度が1/2となる時間)]
【0030】
<放湿試験>
75mmφガラス製シャーレに、イオン交換水を添加して水分量が2%前後になるように調整した化合物1~4又は比較化合物1を約3g入れて0.1mg感量まで正確に秤量した。このシャーレを所定の温度に加熱した恒温器に大気雰囲気下で入れた。30分後にシャーレを取り出して、各化合物の含水量をカールフィッシャー水分計で測定し、初期の水分量からの減少率(%)を求め、各化合物の放湿性能を比較した。また、加熱後の外観を観察した。
【0031】
【0032】
【0033】
表1及び表2に示した結果から、化合物1~4は、比較化合物1と同等な吸湿性能を有しており、比較化合物1より吸収した水分をより少ないエネルギー量で、すなわち低い加熱温度で放出できることが判る。そのため、吸湿と放湿を繰り返す場合であっても、高い加熱温度を必要としないため劣化を抑制することができる。
【0034】
<再吸湿試験>
上述の放湿試験で、100℃、30分の加熱を行った各化合物を用いて、上述した吸湿試験と同様の方法で各化合物の吸湿性能を比較した。結果を表3に示す。
【0035】
【0036】
表3に示した結果から、100℃、30分の加熱により、化合物1~4は十分に吸湿性能を回復できているが、比較化合物1は吸湿性能の回復が不十分であることが判る。