(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139727
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】アウターシース付きステント、ステントデリバリー装置及びアウターシース付きステント製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/844 20130101AFI20241002BHJP
A61F 2/95 20130101ALI20241002BHJP
【FI】
A61F2/844
A61F2/95
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043072
(22)【出願日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2023050555
(32)【優先日】2023-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】玉井 裕介
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA50
4C267AA53
4C267AA56
4C267BB51
4C267CC10
(57)【要約】
【課題】生体管腔にスムーズに進行させることが可能なアウターシース付きステント、ステントデリバリー装置及びアウターシース付きステント製造方法を提供する。
【解決手段】アウターシース付きステント1は、ステント10と、ステント10に対してステント10の周方向に巻かれた帯状のアウターシース11と、周方向におけるアウターシース11の両縁部11aの少なくとも一方を縫合するストリング12と、を備える。アウターシース11の両縁部11aは、ステント10の軸方向に延在している。アウターシース11の両縁部11aの少なくとも一方に、複数の穴11dが形成されている。ストリング12は、複数の穴11dに対してステント10の径方向に挿通されて、アウターシース11を縫合している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントと、
前記ステントに対して前記ステントの周方向に巻かれた帯状のアウターシースと、
前記周方向における前記アウターシースの両縁部の少なくとも一方を縫合するストリングと、
を備え、
前記アウターシースの前記両縁部は、前記ステントの軸方向に延在しており、
前記アウターシースの前記両縁部の少なくとも一方に、複数の穴が形成されており、
前記ストリングは、前記複数の穴に対して前記ステントの径方向に挿通されて、前記アウターシースを縫合していることを特徴とするアウターシース付きステント。
【請求項2】
前記複数の穴は、前記アウターシースにおける前記周方向の両縁部のそれぞれに形成されており、
前記ストリングは、前記ストリングの一部分ずつが折り曲げられることにより形成された複数のループを有しており、
前記複数のループの少なくとも一部のループは、当該ループ内に隣のループが通されて、前記アウターシースの一方の縁部と他方の縁部とに跨って配設されたクロスループを形成している請求項1に記載のアウターシース付きステント。
【請求項3】
前記クロスループは、前記ステントの軸方向成分を含む斜め方向に延在している請求項2に記載のアウターシース付きステント。
【請求項4】
前記ストリングは、前記斜め方向に延在している前記クロスループを複数有し、
前記アウターシースにおける前記一方の縁部に形成された前記穴から前記他方の縁部に形成された前記穴に亘って配設された、前記斜め方向に延在している前記クロスループと、
前記他方の縁部に形成された前記穴から前記一方の縁部に形成された前記穴に亘って配設された、前記斜め方向に延在している前記クロスループと、
が交互にジグザグに連なっている請求項3に記載のアウターシース付きステント。
【請求項5】
前記複数の穴は、前記ステントの軸方向に沿って複数配列されており、
前記複数のループの一部のループは、前記ステントの軸方向に沿って延在するように配設された軸方向延在部を形成している請求項2に記載のアウターシース付きステント。
【請求項6】
前記アウターシースの周方向において、前記アウターシースの前記両縁部の端部は、前記両縁部のうち一方の縁部に形成された穴と、前記両縁部のうち他方の縁部に形成された穴と、の間に配置されている請求項1に記載のアウターシース付きステント。
【請求項7】
前記アウターシースは、一方の縁部が内部に入り込み、他方の縁部が外部に露出するように、周方向に巻かれており、
前記複数の穴は、前記他方の縁部に形成されており、
前記ストリングは、前記複数の穴に通されて前記アウターシースに対して周回するように螺旋状に配設されている請求項1に記載のアウターシース付きステント。
【請求項8】
前記ストリングは、前記ストリングの一部分ずつが折り曲げられることにより形成された複数のループを有しており、
前記複数のループのうち少なくとも一部のループ内に、前記複数の穴の一部の穴に通された隣のループが通されている請求項7に記載のアウターシース付きステント。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のアウターシース付きステントと、
該アウターシース付きステントをデリバリーするデリバリー部と、を備えることを特徴とするステントデリバリー装置。
【請求項10】
ステントと、
該ステントに対して前記ステントの周方向に巻かれる帯状のアウターシースと、
前記ステントの周囲を前記アウターシースで覆うために、前記周方向における前記アウターシースの両縁部の少なくとも一方に通されて前記アウターシースを縫合するストリングと、
を用意する工程と、
前記ストリングにより前記アウターシースをその一端側から他端側に向けて縫合する縫合工程と、を備え、
前記縫合工程は、前記ストリングを、前記ステントの径方向に前記アウターシースに挿通させる通し工程を有し、
前記アウターシースの前記両縁部の少なくとも一方には、複数の穴が形成されており、
前記通し工程において、前記複数の穴に対して前記ステントの前記径方向に前記ストリングを挿通させて、前記アウターシースを縫合することを特徴とするアウターシース付きステント製造方法。
【請求項11】
前記複数の穴には、前記周方向における前記アウターシースの一方の縁部に形成された第1穴と、前記周方向における前記アウターシースの他方の縁部に形成された第2穴と、前記一方の縁部における前記第1穴よりも前記他端側の部位に形成された第3穴と、前記他方の縁部における前記第2穴よりも前記他端側の部位に形成された第4穴と、が含まれ、
前記通し工程において、
前記ストリングの一部を折り曲げて第1ループを形成し、該第1ループを前記第1穴及び前記第2穴にこの順に通し、前記ストリングにおける前記第1ループよりも前記他端側の部位を折り曲げて第2ループを形成し、該第2ループを前記第4穴及び前記第3穴にこの順に通したうえで、該第2ループを前記第1ループに通して、前記一方の縁部と前記他方の縁部とに跨って配設されたクロスループを形成する請求項10に記載のアウターシース付きステント製造方法。
【請求項12】
前記複数の穴には、前記一方の縁部における前記第3穴よりも前記他端側の部位に形成された第5穴と、前記他方の縁部における前記第4穴よりも前記他端側の部位に形成された第6穴と、が含まれ、
前記通し工程において、
前記クロスループを形成した後に、
前記ストリングにおける前記第2ループよりも前記他端側の部位に第3ループを形成し、
前記第3ループを前記第6穴及び前記第5穴にこの順に通したうえで、該第3ループを前記第2ループに通して、前記第2ループの一部分を前記ステントの軸方向に沿って配設された軸方向延在部とする請求項11に記載のアウターシース付きステント製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウターシース付きステント、アウターシース付きステントを体内に搬送するステントデリバリー装置、及びアウターシース付きステント製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、生体管腔(血管、消化器管等)内に生じた病変部位(例えば、血管で瘤が生じている部位)等に留置して用いられる。ステントは一般に拡張可能な網目状の小さな金属製の筒として形成されている。ステントとしては、超弾性金属で作製された自己拡張型のステントがある。そのようなステントは、当該ステントの外周を覆うアウターシースがストリングにより縫合されていることによって縮径された状態で病変部位等に搬送された後に、ストリングによるアウターシースの縫合が解かれてアウターシースによるステントの拘束が解除されることによって、拡張する。
【0003】
例えば、特許文献1には、拡張可能なステント(同文献にはインプラントと記載。)と、当該ステントを取り囲むアウターシース(同文献にはスリーブと記載。)と、を備えるステントデリバリー装置(同文献にはカテーテルアッセンブリと記載。)が記載されている。
そして、ステントを拘束するために、アウターシースにストリング(同文献にはカップリング部材と記載。)を縫い込むことが記載されている。
【0004】
このステントデリバリー装置は、体内の目的位置に搬送されたステントの周囲のアウターシースからストリングが解かれることで、ステントの拘束を解除して、ステントを拡張させ、留置させるというものである。特許文献1に開示されたステントデリバリー装置においては、ステントの周方向におけるアウターシースの両縁部(両端部)の各々は、アウターシースにおける他の部位よりも径方向外側に突出しており、その両縁部同士がストリングにより縫合されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、特許文献1のステントデリバリー装置においては、ストリングの縫合のために、ステントの周方向におけるアウターシースの両縁部が他の部位よりも径方向外側に突出していた。つまり、径方向外側に突出したアウターシースの周方向の両縁部の内面同士が向かい合わされた状態で、それら両縁部がステントの周方向に通されたストリングによって縫合されていた。このように、アウターシースの周方向の両縁部が突出していることで、生体管腔にスムーズに進行させて搬送させることが困難であった。
【0007】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、生体管腔にスムーズに進行させることが可能なアウターシース付きステント、ステントデリバリー装置及びアウターシース付きステント製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアウターシース付きステントは、ステントと、前記ステントに対して前記ステントの周方向に巻かれた帯状のアウターシースと、前記周方向における前記アウターシースの両縁部の少なくとも一方を縫合するストリングと、を備え、前記アウターシースの前記両縁部は、前記ステントの軸方向に延在しており、前記アウターシースの前記両縁部の少なくとも一方に、複数の穴が形成されており、前記ストリングは、前記複数の穴に対して前記ステントの径方向に挿通されて、前記アウターシースを縫合していることを特徴とする。
【0009】
本発明のステントデリバリー装置は、アウターシース付きステントと、該アウターシース付きステントをデリバリーするデリバリー部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のアウターシース付きステント製造方法は、ステントと、該ステントに対して前記ステントの周方向に巻かれる帯状のアウターシースと、前記ステントの周囲を前記アウターシースで覆うために、前記周方向における前記アウターシースの両縁部の少なくとも一方に通されて前記アウターシースを縫合するストリングと、を用意する工程と、前記ストリングにより前記アウターシースをその一端側から他端側に向けて縫合する縫合工程と、を備え、前記縫合工程は、前記ストリングを、前記ステントの径方向に前記アウターシースに挿通させる通し工程を有し、前記アウターシースの前記両縁部の少なくとも一方には、複数の穴が形成されており、前記通し工程において、前記複数の穴に対して前記ステントの前記径方向に前記ストリングを挿通させて、前記アウターシースを縫合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアウターシース付きステント、ステントデリバリー装置及びアウターシース付きステント製造方法によれば、生体管腔にスムーズに進行させることが可能なアウターシース付きステント、ステントデリバリー装置及びアウターシース付きステント製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係るステントデリバリー装置を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る縫合方法によってストリングにより縛られたアウターシース付きステントを示す模式図である。
【
図3】ストリングの第1ループをアウターシースに設けられた第1穴及び第2穴に通した状態を示す模式図である。
【
図4】ストリングの第2ループをアウターシースに設けられた第4穴、第3穴及び第1ループに通した状態を示す模式図である。
【
図5】アウターシースの一端側から他端側まで、第1ループ及び第2ループを交互に通し終え、仮止め部を形成する前の状態を示す模式図である。
【
図6】第1変形例に係る縫合方法によってストリングにより縛られたアウターシース付きステントを示す模式図である。
【
図7】
図4に示す状態の後に、ストリングの第3ループをアウターシースに設けられた第6穴、第5穴及び第2ループに通した状態を示す模式図である。
【
図8】第2変形例に係るアウターシース付きステントを示す模式図である。
【
図9】第2実施形態に係る縫合方法によってストリングにより縛られたアウターシース付きステントを示す模式図である。
【
図10】アウターシース付きステントを軸方向視した模式図である。
【
図11】予備工程を示す図であり、ストリングでアウターシースの周方向の端部を縫合している図である。
【
図12】予備工程後に、インナーシースに取り付けられたステントの外周を覆うアウターシースを巻いている状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0014】
なお、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が単一の構成要素として構成されていること、一つの構成要素が複数の構成要素に分割されて形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0015】
本願の図面に記載の各部位の太さや大きさについて、説明を容易にするための変更が適宜加えられており、実物の縮尺と合わせたものに限定されるものではない。
また、ステントデリバリー装置Dを使用する術者に近い側を近位側、遠い側を遠位側というものとする。
【0016】
なお、後述のステント10は、複数のワイヤが網状に交差して形成されているもの、又は網状のワイヤ及び樹脂製のグラフト部を含むものであるが、図示の明確化のため、網状に見える部分を省略し、全体としての外形のみを示している。
【0017】
<概要>
はじめに、本実施形態に係るアウターシース付きステント1の概要を、
図1及び
図2を主に参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係るステントデリバリー装置Dを示す斜視図、
図2は、第1実施形態に係る縫合方法によってストリング12により縛られたアウターシース付きステント1を示す模式図である。なお、
図2において、ステント10を二点鎖線で示している。
【0018】
図2に示されているように、アウターシース付きステント1は、ステント10と、ステント10に対してステント10の周方向に巻かれた帯状のアウターシース11と、ステント10の周方向におけるアウターシース11の両縁部11aの少なくとも一方(第1実施形態においては両方)を縫合するストリング12と、を備える。
アウターシース11の両縁部11aは、ステント10の軸方向に延在している。
アウターシース11の両縁部11aの少なくとも一方(第1実施形態においては両方)に、複数の穴11dが形成されている。
ストリング12は、複数の穴11dに対してステント10の径方向に挿通されて、アウターシース11を縫合している。
【0019】
ステント10は、筒状(例えば円筒状)に形成されている。
ステント10は、径方向に拡縮可能である。すなわち、ステント10は、径方向内側に収縮した収縮状態から、径方向外側に拡張した拡張状態へと自己拡張するように変形可能に構成されている。
ステント10のワイヤの材料としては、例えば、Ni-Ti合金(ニチノール)、コバルト-クロム合金、チタン合金、及びステンレス鋼等に代表される公知の金属又は金属合金が挙げられる。ワイヤの材料としてNi-Ti合金を用いる場合、ステント10を拡張状態の形状に整えた後に所定の熱処理を施すことにより、拡張状態の形状をステント10に記憶させることができる。
そのようなステント10の収縮状態にて当該ステント10の周囲にアウターシース11を巻き、その状態でストリング12によりアウターシース11を縫合することによって、ステント10はアウターシース11により収縮状態(縮径状態)に拘束されている。
ステント10は、金属ワイヤの網体のみで形成されるベアステントであっても、金属ワイヤの網体と樹脂膜であるグラフト部とを備えるステントグラフトであってもよい。そして、本実施形態に係るステント10は、実際には、網体状に形成されるもの、又は、網体とグラフト部とを備えるものであるが、各図においては筒状に簡略して示されている。
【0020】
なお、ステント10の「径方向」については、径方向成分を有するという意味である。つまり、アウターシース11に対するストリング12の挿通方向は、必ずしもその延長上にステント10の中心があるものに限定されない。
「帯状のアウターシース」については、少なくともステントを覆う部位が帯状であればよい。すなわち、アウターシース11(において少なくともステント10を覆う部分)は、予め筒状に形成されているのではなく、例えば平面視四角形状などの膜状のアウターシース11がステント10の外周囲に巻かれることによって、当該アウターシース11が筒状になっている。
アウターシースは、ストリングを解いたときにステントから分離して体内に留置される平面視四角形状のものの他に、インナーシース(プッシャー)等の他の部位とともに体外に引き出し可能なように、インナーシース等に接続されたもの(この場合、例えば、平面視四角形状とは異なる形状になる)も含む。
【0021】
上記構成によれば、ストリング12がアウターシース11に対してステント10の径方向に挿通されていることで、従来の構造(上述のように、周方向におけるアウターシースの両縁部が径方向外側に突出していて、それら両縁部に対してストリングが周方向に挿通されることで、アウターシースの両縁部が縫合された構造)と比較して、径方向外方へのアウターシース11の張り出しを抑制することができる。このため、アウターシース11を含むシース2bを体管内にスムーズに通しやすくなる。
【0022】
<第1実施形態>
次に、第1実施形態に係るステントデリバリー装置D及びアウターシース付きステント1について、
図1及び
図2に加え、
図3から
図5を主に参照して説明する。
図3は、ストリング12の第1ループ(ループ12a)をアウターシース11に設けられた第1穴11da及び第2穴11dbにこの順に通した状態を示す模式図である。
図4は、ストリング12の第2ループ(ループ12b)をアウターシース11に設けられた第4穴11dd、第3穴11dc及び第1ループ(ループ12a)にこの順に通した状態を示す模式図である。
図5は、ステント10の軸方向におけるアウターシース11の一端側11eから他端側11fまで、第1ループ(ループ12a)及び第2ループ(ループ12b)を交互に通し終え、
図2に示す仮止め部12gを形成する前の状態を示す模式図である。
【0023】
[全体構成]
図1に示されているように、本実施形態に係るステントデリバリー装置Dは、アウターシース付きステント1と、アウターシース付きステント1をデリバリーするデリバリー部2と、を備えることを特徴とする。
デリバリー部2は、本体部2aと、本体部2a内に一部が固定され、アウターシース付きステント1が取り付けられるシース2bと、アウターシース付きステント1の近位側への移動を制限するガイドロッド2cと、シース2bの先端に設けられた先端チップ3と、を含んで構成されている。
なお、本体部2aは、ストリング12を牽引可能なように、ストリング12の後述する他端側12nが引き出される構成となっている。
【0024】
[縫合部]
次に、アウターシース付きステント1のアウターシース11の両縁部11aをストリング12によって縫合している縫合部について説明する。
図2に示されているように、アウターシース11には、ストリング12が通される複数の穴11dが形成されている。
【0025】
図2に示されているように、アウターシース11における周方向の両縁部11a(縁部11b、11c)のそれぞれに、複数の穴11dが形成されている。
一方の縁部11bに複数の穴11dが形成されており、これら複数の穴11dがステント10の軸方向に沿って配列されている。同様に、他方の縁部11cにも複数の穴11dが形成されており、これら複数の穴11dがステント10の軸方向に沿って配列されている。ここで、複数の穴11dの配列の方向は、必ずしも厳密にステント10の軸方向と同一とは限らず、ステント10の軸方向成分を含む方向である。
ストリング12は、ストリング12の一部分ずつが折り曲げられることにより形成された複数のループ12a、12bを有している。複数のループ12a、12bの少なくとも一部のループは、当該ループ12a内に隣のループ12bが通されて、アウターシース11の一方の縁部11bと他方の縁部11cとに跨って配設されたクロスループを形成している。
上記構成によれば、クロスループにより、両縁部11aを強固に縛ることが可能となる。
【0026】
ここで、各ループは、一端側が開放端(閉じていない端部)となっており、他端側が閉じた端部である折り返し部となっている。ストリングにおいて各ループを形成している部位は、当該ループの一端側から折り返し部に向かう往路部分と、折り返し部から当該ループの一端側に戻る復路部分と、を含む。
クロスループは、個々のループの全体により形成されていてもよいし、個々のループの一部分により形成されていてもよい。
また、個々のループは、クロスループを1つのみ含んでいてもよいし、複数のクロスループを含んでいてもよい。
例えば
図4に示されるループ12aは、一方の縁部11bに形成された穴11daから他方の縁部11cに形成された穴11dbに亘って周方向に延在している部分と、他方の縁部11cに形成された穴11dbから一方の縁部11bに形成された穴11dc(の近傍)に亘って斜めに延在している部分と、を含む。つまり、ループ12aは、一方の縁部11bと他方の縁部11cとの間を往復している。ループ12aにおいて、穴11daから穴11dbに亘って延在している部分は、一方の縁部11bと他方の縁部11cとに跨って配設されており、クロスループとなっている。また、穴11dbから穴11dcに亘って延在している部分は、他方の縁部11cと一方の縁部11bとに跨がって配設されており、こちらもクロスループとなっている。つまり、
図4に示されるループ12aは、2つのクロスループを含んでいる。しかも、
図4に示されるループ12aの全体が(単一のクロスループではないが)クロスループとなっている。
図2等に示されるループ12bは、ループ12aと同形状である。このため、ループ12bも、2つのクロスループを含んでいるとともに、その全体がクロスループとなっている。なお、
図2等に示されるループ12bは、ステント10の軸方向においてループ12aとはずれた位置(軸方向において隣り合う穴11d間の距離だけずれた位置)に配置されているとともに、ステント10の周方向においてループ12aとは反転した姿勢で配置されている。
一方、第1変形例で説明するループ12b(
図7)は、当該ループ12bの一部分のみがクロスループとなっているとともに、クロスループを1つのみ含んでいる。
【0027】
図2に示されているように、ループ12a、12bの各々の一部分を構成しているクロスループは、ステント10の軸方向成分(及び周回方向成分)を含む斜め方向に(より詳細には、例えば、ステント10の外周面に沿った螺線状に)延在している。
【0028】
例えば、ループ12aにおいて、斜め方向に延在するクロスループを形成している部分は、当該部分における一端側11eの部位が穴11dbに通され、当該部分における他端側11fの部位には、穴11dcに通されたループ12bが通されていることによって、当該クロスループを形成している部分の両端の位置がそれぞれ規制されて、斜めに延在している。つまり、ループ12aにおいて、ストリング12の2つの部位が互いに並列に束ねられている部位が穴11dbに通され、ループ12aの折り返し部(ループ12aの先端部)が穴11dcに通されたループ12bによって穴11dc(の近傍)に留められることで、ループ12aの一部分が斜め方向に延在するクロスループを形成している。
上記構成によれば、ループ12a、12bの一部分が斜め方向に延在するクロスループとなっていることで、ストリング12の長さを短くすることができる。
【0029】
図2に示されているように、ストリング12は、斜め方向に延在しているクロスループを複数有する。
そして、アウターシース11における一方の縁部11bに形成された穴11dから他方の縁部11cに形成された穴11dに亘って配設された、斜め方向に延在しているクロスループ(
図2におけるループ12bの一部分)と、他方の縁部11cに形成された穴11dから一方の縁部11bに形成された穴11dに亘って配設された、斜め方向に延在しているクロスループ(
図2におけるループ12aの一部分)と、が交互にジグザグに連なっている。
すなわち、ループ12aについては、ストリング12の2つの部位が互いに並列に束ねられている部位が、他方の縁部11cに形成された穴11d(
図4に示される穴11db)に通されている。そして、他方の縁部11cに形成された穴11d(穴11db)に通されている部位よりも、ループ12aにおける折り返し部の側(つまりループ12aの先端側)に位置する部位が、他方の縁部11cに形成された穴11d(穴11db)から一方の縁部11bに形成された穴11d(
図4に示される穴11dc)に亘って配設されて、斜め方向に延在するクロスループを形成している。
同様に、ループ12bについては、ストリング12の2つの部位が互いに並列に束ねられている部位が、一方の縁部11bに形成された穴11dに通されている。そして、一方の縁部11bに形成された穴11dに通されている部位よりも、ループ12bにおける折り返し部の側(つまりループ12bの先端側)に位置する部位が、一方の縁部11bに形成された穴11dから他方の縁部11cに形成された穴11dに亘って配設されて、斜め方向に延在するクロスループを形成している。
換言すると、ループ12aにループ12bが通って、ループ12bにループ12aが通って、ループ12a、ループ12bが交互に配設されており、ループ12aにおいて斜め方向に延在するクロスループを形成している部分と、ループ12bにおいて斜め方向に延在するクロスループを形成している部分と、が交互にジグザグに連なっている。
上記構成によれば、クロスループ(ループ12a、ループ12bの一部分)が連続していることにより、縫合力を高めることができる。
【0030】
[製造方法]
アウターシース付きステント製造方法は、ステント10と、ステント10に対してステント10の周方向に巻かれる帯状のアウターシース11と、ステント10の周囲をアウターシース11で覆うために、ステント10の周方向におけるアウターシース11の両縁部11aの少なくとも一方に通されてアウターシース11を縫合するストリング12と、を用意する工程と、ストリング12によりアウターシース11をその一端側11eから他端側11fに向けて縫合する縫合工程と、を備える。
縫合工程は、ストリング12を、ステント10の径方向にアウターシース11に挿通させる通し工程を有する。
アウターシース11の両縁部11aの少なくとも一方(本実施形態においては両方)には、複数の穴11dが形成されている。
通し工程において、複数の穴11dに対してステント10の径方向にストリング12を挿通させて、アウターシース11を縫合する。
【0031】
このアウターシース付きステント製造方法では、ステント10の径方向にストリング12をアウターシース11に挿通させている。この構成によれば、上述した従来の構造と比較して、アウターシース11の外方への張り出しが抑制されたアウターシース付きステント1を製造できる。
【0032】
図3から
図5に示されているように、複数の穴11dには、ステント10の周方向におけるアウターシース11の両縁部のうち一方の縁部11bに形成された第1穴11daと、アウターシース11の周方向における両縁部のうち他方の縁部11cに形成された第2穴11dbと、一方の縁部11bにける第1穴11daよりも他端側11fの部位に(第1穴11daの隣に)形成された第3穴11dcと、他方の縁部11cにおける第2穴11dbよりも他端側11fの部位に(第2穴11dbの隣に)形成された第4穴11ddと、が含まれる。
なお、ステント10の軸方向において、例えば、第1穴11daと第2穴11dbとは、互いに同じ位置(同等の位置)に配置されており、第3穴11dcと第4穴11ddとは、互いに同じ位置(同等の位置)に配置されている。
【0033】
通し工程において、ストリング12の一部分を折り曲げて第1ループ(ループ12a)を形成し、
図3に示すように、ループ12aを第1穴11da及び第2穴11dbにこの順に通す。
次に、
図4に示すように、ストリング12におけるループ12aよりも他端側12nの部位を折り曲げて第2ループ(ループ12b)を形成し、ループ12bを第4穴11dd及び第3穴11dcにこの順に通したうえで、該ループ12bをループ12aに通して、一方の縁部11bと他方の縁部11cとに跨って配設されたクロスループを形成する。
【0034】
このように形成されたクロスループをアウターシース11の一端側11eから他端側11fに向けて順次に複数形成して、アウターシース11の両縁部11aをその延在方向(軸方向)に亘って万遍なく縫合する。
上記構成によれば、クロスループ(ループ12a、ループ12b)により、両縁部11aを強固に縛ることが可能となる。
【0035】
図5に示すように、アウターシース11における最も他端側11fに配設された、ストリング12における他端側12nの部位を折り曲げ、ループ12eを形成する。形成したループ12eをアウターシース11の穴11dに通さずにループ12dに通す。ここで、ループ12dは、ループ12eよりも1つ前の順番で形成されたループであり、ループ12eに対して隣接(ループ12eに対して一端側12mに隣接)するループである。ループ12dは、他方の縁部11cに形成された穴11dと、一方の縁部11bに形成された穴11dと、にこの順に通されている。よって、ループ12dの一部分はクロスループとなっている。ループ12eをループ12dに通した先で、ループ12eの一部を一端側12mから他端側12nに牽引することで、直前に形成されたループ12dの寸法を小さくして、
図2に示すように、仮止め部12gを形成する。
こうして、ストリング12で縛られた(縫合された)アウターシース11を備えるアウターシース付きステント1が得られる。
ステント10の周囲に巻かれたアウターシース11がストリング12により縫合されていることによって、ステント10はアウターシース11により拘束されて、縮径状態に維持されている。
【0036】
このようにしてストリング12によって縫合されたアウターシース11は、ステント10を留置する際には、ストリング12の他端側12nが牽引されることによって、仮止め部12gが解かれる。そして、各ループが順次引き延ばされて、各ループそれぞれの縫い目が他端側12nから順次(ループ12e、12d、12a、12bの順に)解かれることになる。このため、ストリング12で縫合されたアウターシース11によるステント10の拘束が解除されて、ステント10が拡張することになる。
【0037】
アウターシース11の内面に加わるステント10の弾性復元力は、仮止め部12gを構成するループ12dが小さくなる方向に加わる力として伝播する。このため、ループ12dからループ12eが抜けてしまうことが抑制されるので、仮止め部12gは、術者が他端側12nを故意に引っ張ること以外に意図せず解かれにくい。
【0038】
なお、本実施形態では、アウターシース11の最も一端側11eに位置するクロスループ(ループ12aにおいて、穴11daと穴11dbとの間に延在する部分)と、アウターシース11の最も他端側11fに位置するクロスループ(ループ12dにおいて、他方の縁部11cに形成された穴11dと一方の縁部11bに形成された穴11dとの間に延在する部分)とは、いずれも、斜め方向に延在するクロスループとはなっておらず、周方向に延在するクロスループとなっている。周方向に延在するクロスループは、斜め方向に延在するクロスループと比べて、軸方向における単位長さ当りの拘束力が強い。このため、アウターシース11における一端側11eの部分と他端側11fの部分とを、それぞれクロスループ(周方向に延在するクロスループ)によってより強固に縛ることができている。
ただし、本発明は、この例に限らず、アウターシース11の最も一端側11eに位置するクロスループ、又は、アウターシース11の最も他端側11fに位置するクロスループの、いずれか一方又は両方が、斜め方向に延在するクロスループとなっていてもよい。この場合は、より短いストリング12によって、軸方向におけるアウターシース11の全域を網羅的に縛ることができる。
【0039】
アウターシース11の周方向において、アウターシース11の両縁部11aの端部は、一方の縁部11bに形成された穴11dと、他方の縁部11cに形成された穴11dの間に配置されている。
このような構成によれば、一方の縁部11bに形成された穴11dに他方の縁部11cが重なり合うことを防ぎ、両縁部11aの一方に形成された穴11dに通されるストリング12が、他方の縁部11cからの摩擦によって劣化することを防ぐことができる。
【0040】
<第1変形例>
次に、第1変形例に係るアウターシース付きステント1Xについて、
図6及び
図7を参照して説明する。
図6は、第1変形例に係る縫合方法によってストリング12で縛られたアウターシース付きステント1Xを示す模式図、
図7は、
図4に示す状態の後に、ストリング12の第3ループ(ループ12c)をアウターシース11に設けられた第6穴11df、第5穴11de及び第2ループ(ループ12b)にこの順に通した状態を示す模式図である。
【0041】
[縫合部]
図6に示されているように、本例に係る複数の穴11dも、ステント10の軸方向に沿って複数配列されている。すなわち、一方の縁部11bと他方の縁部11cとのそれぞれにおいて、複数の穴11dがステント10の軸方向に配列されている。複数のループのうちの一部のループ(本例においては2つ目に形成されるループ12b)は、複数の穴11dの少なくとも一部に通されており、ステント10の軸方向に沿って延在する軸方向延在部を形成している。
ここで、「ステント10の軸方向に沿って延在する」とは、一方の縁部11bに形成された穴11dから一方の縁部11bに形成された別の穴11dに亘って延在すること、又は、他方の縁部11cに形成された穴11dから他方の縁部11cに形成された別の穴11dに亘って延在することである。つまり、一方の縁部11bと他方の縁部11cとのうち、同一の方に形成された複数の穴11d間に亘って延在することである。
したがって、軸方向延在部が延在する方向は、必ずしも厳密にステント10の軸方向と同一とは限らず、ステント10の軸方向成分を含む方向である。
【0042】
具体的には、
図7に示すように、ループ12bの軸方向延在部は、ループ12bにおける穴11dcと穴11deとの間の部分である。ループ12bの軸方向延在部は、当該軸方向延在部における一端側11eの部位が穴11dcに通され、当該軸方向延在部における他端側11fの部位には、穴11deに通されたループ12cが通されていることによって、当該軸方向延在部の両端の位置がそれぞれ規制されて、ステント10の軸方向に沿って延在するように配設されている。つまり、軸方向延在部において、ストリング12の2つの部位が互いに並列に束ねられている部位が穴11dcに通され、ループ12bの折り返し部(ループ12bの先端部)が穴11deに通されたループ12cによって穴11de(の近傍)に留められることで、ループ12bの一部分である軸方向延在部がステント10の軸方向に沿って延在している。
上記の「軸方向に沿って」とは、軸方向成分を含む方向上の意味であり、軸方向に直交する方向を除外する意味である。つまり、複数の穴11dは、軸方向に平行に配置されているものに限定されず、アウターシース11の周方向に若干ずれて配置されていてもよい。
【0043】
本例に係るアウターシース付きステント1Xは、ループ12bが軸方向延在部を有することにより、第1実施形態に係るアウターシース付きステント1と比較して、両縁部11aの間においてストリング12の重なりを少なくすることができる。
つまり、アウターシース付きステント1全体としてのストリング12の厚みを薄くすることができる。また、ループ12bにより軸方向に沿う張力がアウターシース11に加わることになるため、両縁部11aの間のずれを抑制することができる。
【0044】
[縫合方法]
複数の穴11dには、上述した第1穴11da、第2穴11db、第3穴11dc及び第4穴11ddの他に、一方の縁部11bにおける第3穴11dcよりも他端側11fの部位に(第3穴11dcの隣に)形成された第5穴11deと、他方の縁部11cにおける第4穴11ddよりも他端側11fの部位に(第4穴11ddの隣に)形成された第6穴11dfと、が含まれる。
通し工程において、クロスループ(ループ12b)を形成した後に、ストリング12における第2ループ(ループ12b)よりも他端側12nの部位に第3ループ(ループ12c)を形成し、ループ12cを第6穴11df及び第5穴11deにこの順に通したうえで、該ループ12cを第2ループ(ループ12b)に通して、ループ12bの一部分をステント10の軸方向に沿って配設された軸方向延在部とする。
【0045】
つまり、ループ12bが最後に通る第3穴11dcと、ループ12bを通るループ12cが最後に通る第5穴11deは同じ縁部11b側に設けられている。このため、第3穴11dc及びループ12cによって位置を規制されるループ12bの軸方向延在部は、軸方向に沿って延在することになる。
【0046】
上記構成によれば、軸方向に沿って延在するループ12bにより、両縁部11aの間において、ストリング12の重なりを少なくすることができ、全体としてのストリング12の厚みを薄くすることができる。また、ループ12bにより軸方向に沿う張力がアウターシース11に加わることになるため、両縁部11aのずれを抑制することもできる。
【0047】
<第2変形例>
上記実施形態においては、アウターシース11を構成する縁部11bと縁部11cが離れて形成されるものであった。このように、縁部11bと縁部11cとが重なっていなければ、縁部11b、11cの厚み分、アウターシース付きステント1、1Xを薄くすることができるため好適である。しかし、本発明は、このような構成に限定されない。
【0048】
次に、縁部21bと縁部21cが重なって形成されたアウターシース21を備える第2変形例に係るアウターシース付きステント1Yについて、
図8を参照して説明する。
図8は、第2変形例に係るアウターシース付きステント1Yを示す模式図である。
【0049】
図8に示すように、本例に係るアウターシース付きステント1Yが備えるアウターシース21の周方向において、アウターシース21の両縁部21aの端部21dは、一方の縁部21bに形成された穴11dと、他方の縁部21cに形成された穴11dの間に配置されている。
このような構成によれば、一方の縁部21bに形成された穴11dに他方の縁部21cが重なり合うことを防ぎ、両縁部21aの一方に形成された穴11dに通されるストリング12が、他方の縁部21cからの摩擦によって劣化することを防ぐことができる。
【0050】
より詳細には、
図8に示すように、縁部21bの一部分と縁部21cの一部分とが重ねられて(オーバーラップして)おり、互いに離れて配置されていない。このように構成されていることで、ステント10がアウターシース21から露出することを防ぐことができる。
すなわち、アウターシース21の周方向において、アウターシース21の一方の縁部21bの端部21dは、アウターシース21の他方の縁部21cの端部21dよりも、他方の縁部21cに形成された穴11dの側に位置しているとともに、アウターシース21の他方の縁部21cの端部21dは、アウターシース21の一方の縁部21bの端部21dよりも、一方の縁部21bに形成された穴11dの側に位置している。これにより、縁部21bの一部分と縁部21cの一部分とが互いにオーバーラップしている。
【0051】
<第2実施形態>
上記実施形態及び変形例においては、ストリング12は、アウターシース11の両縁部11a、アウターシース21の両縁部21aを縫合するものとして説明した。
しかしながら、本発明はこのような構成に限定されず、アウターシース31の片側の縁部のみを縫合するものであってもよい。
【0052】
このような構成を備える第2実施形態に係るアウターシース付きステント1Zについて、
図9から
図12を主に参照して説明する。
図9は、第2実施形態に係る縫合方法によってストリング32に縛られたアウターシース付きステント1Zを示す模式図、
図10は、アウターシース付きステント1Zを軸方向視した模式図である。
図11は、予備工程を示す図であり、ストリング32でアウターシース31の周方向の端部を縫合している図、
図12は、予備工程後に、インナーシース33に取り付けられたステント10の外周を覆うアウターシース31を巻いている状態を示す説明図である。
【0053】
また、
図11は、アウターシース31の端部を立ち上げた状態でストリング32によって縫合している状態を示す図である。
図11のアウターシース31においては、ストリング32が通される穴の図示は省略している。
図11に示す予備工程でストリング32が通される穴は、メイン工程においてストリング32が通される穴と共通であっても別個に設けられるものであってもよい。
【0054】
[縫合部]
第2実施形態に係るアウターシース31は、
図10に示されているように、一方の縁部31bが内部(径方向内側)に入り込み、他方の縁部31cが外部に露出するように、周方向に渦巻き状に巻かれている。
図9に示されているように、複数の穴31dは、他方の縁部31cに形成されている。ストリング32は、複数の穴31dに通されてアウターシース31に対して周回するように螺旋状に配設されている。
上記構成によれば、ストリング32が螺旋状に配設されていることで、アウターシース31に対するストリング32による縛りを強固にすることができる。
【0055】
ストリング32は、ストリング32の一部分ずつが折り曲げられて形成された複数のループ32a、32bを有しており、複数のループ32a、32bのうち少なくとも一部のループ32a内に、複数の穴31dの一部の穴31dに通された隣のループ32aが通されている。
具体的には、アウターシース31の外周を周回した1つのループ32aに対し、アウターシース31の内部でストリング32の一部分に形成した他のループ32aを穴31dから引き出した後で通すことによって、複数のループ32aが順次に螺線状に連続するように配設されている。
上記構成によれば、一部のループ32aに隣のループ32aが通されていることで、ストリング32を牽引することで、ステント10を一部分ずつ展開することができる。
【0056】
[縫合方法]
第1実施形態同様に、アウターシース付きステント製造方法は、ステント10(
図10参照。)と、ステント10に対してステント10の周方向に巻かれる帯状のアウターシース31と、ステント10の周囲をアウターシース31で覆うために、ステント10の周方向におけるアウターシース31の両縁部の少なくとも一方(
図9においては他方の縁部31c)に通されて縫合するストリング32と、を用意する工程と、ストリング32の一端側32mから他端側32nを、アウターシース31の一端側31eから他端側31fに向けて縫合する縫合工程と、を備える。
【0057】
縫合工程は、ストリング32を、ステント10の径方向にアウターシース31に挿通させる通し工程を有する。
アウターシース31の両縁部の少なくとも一方(
図9においては縁部31c)には、ストリング32が通される複数の穴31dが形成されている。
通し工程において、複数の穴31dに対してステント10の径方向にストリング32を挿通させて、アウターシース31を縫合する。
【0058】
このアウターシース付きステント製造方法では、ステント10の径方向にストリング32をアウターシース31に挿通させている。この構成によれば、上述した従来の構造と比較して、アウターシース31の外方への張り出しが抑制されたアウターシース付きステント1Zを製造できる。
【0059】
縫合工程は、
図11に示すように、ステント10の周方向におけるアウターシース31の端部において、軸方向中央側から端(一端側31e)に向かって、ストリング32を縫合する予備工程を備える。
より具体的には、予備工程において、ストリング32の一部分を折り曲げて形成したループをアウターシース31の内面側から外面側に挿通させ、ストリング32において当該ループよりも他端側32nの部位を折り曲げて隣のループを形成して、当該隣のループをアウターシース31の内面側から外面側に挿通させたうえで、先に形成したループに通す。これを複数回行う。本実施形態においては、
図11に示すように4つのループを形成している。
【0060】
そして、
図12に示すように、インナーシース33に取り付けられたステント10の外周囲にアウターシース31を渦巻き状に巻き付けて、アウターシース31によってステント10を覆う。
次に、
図11に示す予備工程において最後に形成したループ32aを、
図9に示すように、他端側31fから見て時計回りに、渦巻き状に巻き付けられたアウターシース31の外周囲に周回させつつ、他端側31f側に進行させる。
【0061】
そして、穴31dから、アウターシース31の内面側に配設されたストリング32に他のループ32aを形成して、当該他のループ32aをアウターシース31の内面側から外面側に穴31dに挿通させて引き出し、先ほど周回させたループ32aに通す。このように通した他のループ32aについても同様に、他端側31fから見て時計回りに、アウターシース31の外周を周回させる。同様に、アウターシース31の内面側に配設されたストリング32に次のループ32aを形成して当該次のループ32aを穴31dに挿通させて引き出し、先ほど周回させたループ32aに通す。これを繰り返し、全体として螺旋状に周回されたストリング32によって、アウターシース31を緊縛する。
【0062】
最後のループ32aについては穴31dから出した後に、周回させずに、当該最後のループ32aよりも他端側32nにループ32bを形成し、当該ループ32bをループ32aに通す。ループ32aに通されたループ32bの一部分を一端側32mから他端側32nを牽引することで、ループ32aの寸法を小さくして仮止め部を形成して縫合工程が終了する。
このようにして縫合されたアウターシース31は、ストリング32の他端側32nが牽引されることで、仮止め部が解かれる。そして、各ループ(ループ32a)が順次引き延ばされて、各ループそれぞれの縫い目が順次解かれることになる。このため、アウターシース31へのストリング32の拘束が解除されて、ステント10が拡張することになる。
【0063】
なお、ループ32aは、アウターシース31を一周するごとに、次のループ32aに通されている構成であると、ストリング32の縫合の緩みを防止できるため好適であるが、このような構成に限定されない。例えば、ループ32aをアウターシース31に対して複数周回させた後に、次のループ32aを先に形成されたループ32aに通すようにしてもよい。
【0064】
なお、上記の予備工程によって縫合されたストリング32であれば、ステント10を拡張させる際に、ストリング32を牽引すれば、アウターシース31からストリング32が完全に分離できる。このため、アウターシース31を体内に留置する場合には好適に処置が可能となる。
しかしながらこのような構成に限定されず、単にアウターシース31にストリング32の一端側32mを固定できればよいということであれば、上記の予備工程は必須ではない。例えば、ストリング32の一端側32mをアウターシース31に一体成型したり、一部に係合させたり、接着剤等でアウターシース31に接着したりしてもよい。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
例えば、上記実施形態では、ストリング12は、アウターシース11に対してその他端側11fから一端側11eに縫合が解けるように取り付けられているが、一例であってこれに限られるものではなく、アウターシース11の一端側11eから他端側11fに縫合が解けるように取り付けられていてもよい。
【0066】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)
ステントと、
前記ステントに対して前記ステントの周方向に巻かれた帯状のアウターシースと、
前記周方向における前記アウターシースの両縁部の少なくとも一方を縫合するストリングと、
を備え、
前記アウターシースの前記両縁部は、前記ステントの軸方向に延在しており、
前記アウターシースの前記両縁部の少なくとも一方に、複数の穴が形成されており、
前記ストリングは、前記複数の穴に対して前記ステントの径方向に挿通されて、前記アウターシースを縫合していることを特徴とするアウターシース付きステント。
(2)
前記複数の穴は、前記アウターシースにおける前記周方向の両縁部のそれぞれに形成されており、
前記ストリングは、前記ストリングの一部分ずつが折り曲げられることにより形成された複数のループを有しており、
前記複数のループの少なくとも一部のループは、当該ループ内に隣のループが通されて、前記アウターシースの一方の縁部と他方の縁部とに跨って配設されたクロスループを形成している(1)に記載のアウターシース付きステント。
(3)
前記クロスループは、前記ステントの軸方向成分を含む斜め方向に延在している(2)に記載のアウターシース付きステント。
(4)
前記ストリングは、前記斜め方向に延在している前記クロスループを複数有し、
前記アウターシースにおける前記一方の縁部に形成された前記穴から前記他方の縁部に形成された前記穴に亘って配設された、前記斜め方向に延在している前記クロスループと、
前記他方の縁部に形成された前記穴から前記一方の縁部に形成された前記穴に亘って配設された、前記斜め方向に延在している前記クロスループと、
が交互にジグザグに連なっている(3)に記載のアウターシース付きステント。
(5)
前記複数の穴は、前記ステントの軸方向に沿って複数配列されており、
前記複数のループの一部のループは、前記ステントの軸方向に沿って延在するように配設された軸方向延在部を形成している(2)から(4)のいずれか一項に記載のアウターシース付きステント。
(6)
前記アウターシースの周方向において、前記アウターシースの前記両縁部の端部は、前記両縁部のうち一方の縁部に形成された穴と、前記両縁部のうち他方の縁部に形成された穴と、の間に配置されている(1)から(5)のいずれか一項に記載のアウターシース付きステント。
(7)
前記アウターシースは、一方の縁部が内部に入り込み、他方の縁部が外部に露出するように、周方向に巻かれており、
前記複数の穴は、前記他方の縁部に形成されており、
前記ストリングは、前記複数の穴に通されて前記アウターシースに対して周回するように螺旋状に配設されている(1)に記載のアウターシース付きステント。
(8)
前記ストリングは、前記ストリングの一部分ずつが折り曲げられることにより形成された複数のループを有しており、
前記複数のループのうち少なくとも一部のループ内に、前記複数の穴の一部の穴に通された隣のループが通されている(7)に記載のアウターシース付きステント。
(9)
(1)から(8)のいずれか一項に記載のアウターシース付きステントと、
該アウターシース付きステントをデリバリーするデリバリー部と、を備えることを特徴とするステントデリバリー装置。
(10)
ステントと、
該ステントに対して前記ステントの周方向に巻かれる帯状のアウターシースと、
前記ステントの周囲を前記アウターシースで覆うために、前記周方向における前記アウターシースの両縁部の少なくとも一方に通されて前記アウターシースを縫合するストリングと、
を用意する工程と、
前記ストリングにより前記アウターシースをその一端側から他端側に向けて縫合する縫合工程と、を備え、
前記縫合工程は、前記ストリングを、前記ステントの径方向に前記アウターシースに挿通させる通し工程を有し、
前記アウターシースの前記両縁部の少なくとも一方には、複数の穴が形成されており、
前記通し工程において、前記複数の穴に対して前記ステントの前記径方向に前記ストリングを挿通させて、前記アウターシースを縫合することを特徴とするアウターシース付きステント製造方法。
(11)
前記複数の穴には、前記周方向における前記アウターシースの一方の縁部に形成された第1穴と、前記周方向における前記アウターシースの他方の縁部に形成された第2穴と、前記一方の縁部における前記第1穴よりも前記他端側の部位に形成された第3穴と、前記他方の縁部における前記第2穴よりも前記他端側の部位に形成された第4穴と、が含まれ、
前記通し工程において、
前記ストリングの一部を折り曲げて第1ループを形成し、該第1ループを前記第1穴及び前記第2穴にこの順に通し、前記ストリングにおける前記第1ループよりも前記他端側の部位を折り曲げて第2ループを形成し、該第2ループを前記第4穴及び前記第3穴にこの順に通したうえで、該第2ループを前記第1ループに通して、前記一方の縁部と前記他方の縁部とに跨って配設されたクロスループを形成する(10)に記載のアウターシース付きステント製造方法。
(12)
前記複数の穴には、前記一方の縁部における前記第3穴よりも前記他端側の部位に形成された第5穴と、前記他方の縁部における前記第4穴よりも前記他端側の部位に形成された第6穴と、が含まれ、
前記通し工程において、
前記クロスループを形成した後に、
前記ストリングにおける前記第2ループよりも前記他端側の部位に第3ループを形成し、
前記第3ループを前記第6穴及び前記第5穴にこの順に通したうえで、該第3ループを前記第2ループに通して、前記第2ループの一部分を前記ステントの軸方向に沿って配設された軸方向延在部とする(11)に記載のアウターシース付きステント製造方法。
【符号の説明】
【0067】
D ステントデリバリー装置
1、1X、1Y、1Z アウターシース付きステント
2 デリバリー部
2a 本体部
2b シース
2c ガイドロッド
3 先端チップ
10 ステント
11 アウターシース
11a 両縁部
11b 一方の縁部
11c 他方の縁部
11d 穴
11da 第1穴
11db 第2穴
11dc 第3穴
11dd 第4穴
11de 第5穴
11df 第6穴
11e 一端側
11f 他端側
12 ストリング
12a ループ(第1ループ、クロスループ)
12b ループ(第2ループ、クロスループ)
12c ループ(第3ループ)
12d、12e ループ
12g 仮止め部
12m 一端側
12n 他端側
21 アウターシース
21a 両縁部
21b 一方の縁部
21c 他方の縁部
21d 端部
31 アウターシース
31b 一方の縁部
31c 他方の縁部
31d 穴
31e 一端側
31f 他端側
32 ストリング
32a、32b ループ
32m 一端側
32n 他端側
33 インナーシース