(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139728
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】アウターシース付きステント、ステントデリバリー装置及びアウターシース付きステント製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/844 20130101AFI20241002BHJP
A61F 2/95 20130101ALI20241002BHJP
【FI】
A61F2/844
A61F2/95
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043100
(22)【出願日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2023050579
(32)【優先日】2023-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】玉井 裕介
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA50
4C267AA53
4C267AA56
4C267CC10
4C267FF05
4C267GG04
4C267GG24
4C267GG32
4C267GG43
(57)【要約】
【課題】ステントがシースで覆われた状態の外径を細径化することが可能なアウターシース付きステント、ステントデリバリー装置及びアウターシース付きステント製造方法を提供する。
【解決手段】アウターシース付きステント1は、径方向に拡縮可能なステント10と、ステント10の収縮状態にて当該ステント10の周囲に巻かれた帯状のアウターシース11と、アウターシース11の周囲を緊縛するストリング12と、を備える。ストリング12の一部分は、アウターシース11の外面上を緊縛するようにアウターシース11の周方向に巻回されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に拡縮可能なステントと、
前記ステントの収縮状態にて当該ステントの周囲に巻かれた帯状のアウターシースと、
前記アウターシースの周囲を緊縛するストリングと、を備え、
前記ストリングの一部分は、前記アウターシースの外面上を緊縛するように前記アウターシースの周方向に巻回されていることを特徴とするアウターシース付きステント。
【請求項2】
前記ストリングは、前記ストリングの一部分ずつが折り曲げられて形成された複数のループと、複数の縫い目と、
を備え、
前記縫い目は、前記複数のループのうちの1つのループと、前記1つのループよりも前記ストリングの他端側にあって、前記アウターシースの周方向における両縁部を貫通して前記1つのループに通された他のループと、によって形成されている請求項1に記載のアウターシース付きステント。
【請求項3】
前記ストリングは、前記アウターシースの周方向に巻回されている複数の周回部を備え、
前記両縁部は、互いの内面どうしが突き合された対向状態で前記ストリングによって縫合されており、前記ストリングの前記周回部によって、前記アウターシースにおける前記両縁部とは別の外面に押し当てられるように前記別の外面側に倒されている請求項2に記載のアウターシース付きステント。
【請求項4】
前記他のループは、
倒された前記両縁部を貫通した先で前記1つのループに通され、前記両縁部の上を通るように当該両縁部の倒された方向に折り返されて、前記アウターシースの外面に沿って配設されている請求項3に記載のアウターシース付きステント。
【請求項5】
前記両縁部は、前記アウターシースの径方向外側に向かって起立しており、
前記ストリングは、前記両縁部を周方向に貫通している請求項2に記載のアウターシース付きステント。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のアウターシース付きステントと、
該アウターシース付きステントをデリバリーするデリバリー部と、を備えることを特徴とするステントデリバリー装置。
【請求項7】
径方向に拡縮可能なステントと、
前記ステントの収縮状態にて当該ステントの周囲に巻かれる帯状のアウターシースと、
前記アウターシースの周囲を緊縛するストリングと、
を用意する工程と、
前記ストリングを前記アウターシースに縫合する縫合工程と、を備え、
前記縫合工程において、前記アウターシースの外面上を緊縛するように前記アウターシースの周方向に前記ストリングの一部分を巻回することを特徴とするアウターシース付きステント製造方法。
【請求項8】
前記ストリングは、前記アウターシースの先端側から基端側に解けるように前記アウターシースに取り付けられており、
前記縫合工程は、
前記ストリングによって、前記アウターシースの中央側から基端側に向けて前記アウターシースの周方向における両縁部を縫合する予備工程と、
該予備工程後に、前記ストリングによって、前記両縁部を前記基端側から前記先端側に向けて縫合するメイン工程と、を備え、
該メイン工程において、前記アウターシースの外面に沿い、且つ、前記予備工程において配置された前記ストリングの一部分に交差するように、前記アウターシースの周方向に前記ストリングの他の一部分を巻回する請求項7に記載のアウターシース付きステント製造方法。
【請求項9】
前記ストリングは、前記ストリングの一部分ずつが折り曲げられて形成された複数のループと、該ループに通される部位と、によって、前記アウターシースの前記両縁部を縫合するものであり、
前記予備工程において、前記複数のループのうち少なくとも1つを前記アウターシースの軸方向に延在させて縫合していく請求項8に記載のアウターシース付きステント製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウターシース付きステント、アウターシース付きステントを体内に搬送するステントデリバリー装置、及びアウターシース付きステント製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、生体管腔(血管、消化器管等)内に生じた病変部位(例えば、血管で瘤が生じている部位)等に留置して用いられる。ステントは一般に拡張可能な網目状の小さな金属製の筒として形成されている。ステントとしては、超弾性金属で作製された自己拡張型のステントがある。そのようなステントは、当該ステントの外周を覆うアウターシースがストリングにより縫合されていることによって縮径された状態で病変部位等に搬送された後に、ストリングによるアウターシースの縫合が解かれてアウターシースによるステントの拘束が解除されることによって、拡張する。
【0003】
例えば、特許文献1には、拡張可能なステント(同文献にはインプラントと記載。)と、当該ステントを取り囲むアウターシース(同文献にはスリーブと記載。)と、を備えるステントデリバリー装置(同文献にはカテーテルアッセンブリと記載。)が記載されている。
そして、ステントを拘束するために、アウターシースにストリング(同文献にはカップリング部材と記載。)を縫い込むことが記載されている。
【0004】
このステントデリバリー装置は、体内の目的位置に搬送されたステントの周囲のアウターシースからストリングが解かれることで、ステントの拘束を解除して、ステントを拡張させ、留置させるというものである。特許文献1に開示されたステントデリバリー装置においては、ステントの周方向におけるアウターシースの両縁部(両端部)の各々は、アウターシースにおける他の部位よりも径方向外側に突出しており、その両縁部同士がストリングにより縫合されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ステントデリバリー装置のアウターシース等のシースは、細い生体管腔を通すこともできるように、細径であることが望まれている。
特許文献1に記載のステントデリバリー装置においては、アウターシースの両縁部(エッジ)に対するストリングの縫合によって、アウターシースを介してステントを緊縛している。このような構成によると、ステントの弾性復元力により縫合が解除されないように、アウターシースを肉厚にする必要があり、アウターシースで覆われたデリバリー状態での外径を細径化することは困難であった。
【0007】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、ステントがシースで覆われた状態の外径を細径化することが可能なアウターシース付きステント、ステントデリバリー装置及びアウターシース付きステント製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアウターシース付きステントは、径方向に拡縮可能なステントと、前記ステントの収縮状態にて当該ステントの周囲に巻かれた帯状のアウターシースと、前記アウターシースの周囲を緊縛するストリングと、を備え、前記ストリングの一部分は、前記アウターシースの外面上を緊縛するように前記アウターシースの周方向に巻回されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のステントデリバリー装置は、前記アウターシース付きステントと、該アウターシース付きステントをデリバリーするデリバリー部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
アウターシース付きステント製造方法は、径方向に拡縮可能なステントと、前記ステントの収縮状態にて当該ステントの周囲に巻かれる帯状のアウターシースと、前記アウターシースの周囲を緊縛するストリングと、を用意する工程と、前記ストリングを前記アウターシースに縫合する縫合工程と、を備え、前記縫合工程において、前記アウターシースの外面上を緊縛するように前記アウターシースの周方向に前記ストリングの一部分を巻回することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアウターシース付きステント、ステントデリバリー装置及びアウターシース付きステント製造方法によれば、ステントがシースで覆われた状態の外径を細径化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係るステントデリバリー装置を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るアウターシース付きステントを示す模式図である。
【
図3】予備工程を示す図であり、ストリングでアウターシースの周方向の両縁部を直線的に縫合する工程を示す説明図である。
【
図4】予備工程後のメイン工程を示す図であり、ループをアウターシースに周回させた後に、両縁部に通した状態を示す説明図である。
【
図5】
図4に示す状態の後に、次のループを先に形成されたループに通し、アウターシースに周回させた後に、両縁部に通した状態を示す説明図である。
【
図6】第2及び第3実施形態に係るアウターシース付きステントを示す模式図である。
【
図7】第2実施形態に係る縫合方法の予備工程を示す図であり、ストリングでアウターシースの周方向の両縁部を直線的に縫合する工程を示す図である。
【
図8】第3実施形態に係るアウターシース付きステントを軸方向に視た模式図である。
【
図9】第3実施形態に係る縫合方法の予備工程を示す図であり、ストリングでアウターシースの周方向の端部を縫合している説明図である。
【
図10】予備工程後に、インナーシースに取り付けられたステントの外周を覆うアウターシースを巻いている状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0014】
なお、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が単一の構成要素として構成されていること、一つの構成要素が複数の構成要素に分割されて形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0015】
本願の図面に記載の各部位の太さや大きさについて、説明を容易にするための変更が適宜加えられており、実物の縮尺と合わせたものに限定されるものではない。
また、ステントデリバリー装置Dを使用する術者に近い側を近位側、遠い側を遠位側というものとする。
【0016】
なお、後述のステント10は、複数のワイヤが網状に交差して形成されているもの、又は網状のワイヤ及び樹脂製のグラフト部を含むものであるが、図示の明確化のため、網状に見える部分を省略し、全体としての外形のみを示している。
【0017】
<概要>
はじめに、本実施形態に係るアウターシース付きステント1の概要を、
図1及び
図2を主に参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るステントデリバリー装置Dを示す斜視図、
図2は、第1実施形態に係るアウターシース付きステント1を示す模式図である。
なお、
図2において、ステント10を二点鎖線で示している。また、メイン工程において形成されるストリング12の部位を明瞭に区別可能とするため、
図2においては、予備工程において形成される
図3に示すループ12cが細く伸びた状態を示している。
【0018】
詳細については後述するように、
図1に示すステントデリバリー装置Dは、アウターシース付きステント1と、アウターシース付きステント1をデリバリーするデリバリー部2と、を備える。
【0019】
図2に示されているように、アウターシース付きステント1は、径方向に拡縮可能なステント10と、ステント10の収縮状態にて当該ステント10の周囲に巻かれた帯状のアウターシース11と、アウターシース11の周囲を緊縛するストリング12と、を備える。
【0020】
ステント10は、筒状(例えば円筒状)に形成されている。
ステント10は、径方向内側に収縮した収縮状態から、径方向外側に拡張した拡張状態へと自己拡張するように変形可能に構成されている。
ステント10のワイヤの材料としては、例えば、Ni-Ti合金(ニチノール)、コバルト-クロム合金、チタン合金、及びステンレス鋼等に代表される公知の金属又は金属合金が挙げられる。ワイヤの材料としてNi-Ti合金を用いる場合、ステント10を拡張状態の形状に整えた後に所定の熱処理を施すことにより、拡張状態の形状をステント10に記憶させることができる。
ストリング12の一部分は、アウターシース11の外面上を緊縛するようにアウターシース11の周方向に巻回されていることを特徴とする。
【0021】
また、同様に、アウターシース付きステント製造方法は、径方向に拡縮可能なステント10と、ステント10の収縮状態にて当該ステント10の周囲に巻かれる帯状のアウターシース11と、アウターシース11の周囲を緊縛するストリング12と、を用意する工程と、ストリング12をアウターシース11に縫合する縫合工程と、を備える。
縫合工程において、アウターシース11の外面上を緊縛するようにアウターシース11の周方向にストリング12の一部分を巻回することを特徴とする。
【0022】
ステント10は、金属ワイヤの網体のみで形成されるベアステントであっても、金属ワイヤの網体と樹脂膜であるグラフト部とを備えるステントグラフトであってもよい。そして、本実施形態に係るステント10は、実際には、網体状に形成されるもの、又は、網体とグラフト部とを備えるものであるが、各図においては筒状に簡略して示されている。
【0023】
上記の「アウターシース11の外面上を緊縛する」とは、ステント10からアウターシース11に対して径方向外側向きの反力が生じるように、すなわちアウターシース11によってステント1が径方向内側に圧縮されるように、アウターシース11を外側から内側に縛ることをいう。
なお、本実施形態においては、ストリング12は、アウターシース11の少なくとも一部分を貫通して縫合する構成を説明する。このような構成によれば、アウターシース11を筒状に形成する縫合と、ステント10を縮径させつつ収容するための強度を上げることと、がストリング12のみで行えるために好適である。
【0024】
しかし、ストリング12は、アウターシース11を貫通して縫合する構成ではなく、アウターシース11の外周に巻かれるだけのものであってもよい。
つまり、アウターシース11の両縁部11aを結合する部位(縫合する縫合部)は別個のストリングによって形成されるものであってもよい。さらには、断裂しやすい不図示の膜材によりアウターシース11の両縁部11aを結合しておいて、ステント10を展開する際には、破断強度の高いストリングによりこの膜材を断裂させるようにしてもよい。
【0025】
上記の「帯状のアウターシース11」については、少なくともステント10を覆う部位が帯状であればよい。すなわち、アウターシース11(において少なくともステント10を覆う部分)は、予め筒状に形成されているのではなく、例えば平面視四角形状などの膜状のアウターシース11がステント10の外周囲に巻かれることによって、当該アウターシース11が筒状になっている。
アウターシース11は、ストリング12を解いた展開状態において、平面視四角形状のものの他に、インナーシース(プッシャー)等、他の部位に接続されたもの(この場合、例えば、平面視四角形状とは異なる形状になる)も含む。
【0026】
上記構成によれば、ストリング12の一部分がアウターシース11の周方向に巻回されていることで、アウターシース11を薄くしてもステント10の拡張を好適に抑制でき、ステント10がアウターシース11により覆われた状態のアウターシース付きステント1の外径を細径化することができる。
【0027】
[全体構成]
図1に示されているように、本実施形態に係るステントデリバリー装置Dは、上記のアウターシース付きステント1と、アウターシース付きステント1をデリバリーするデリバリー部2と、を備える。
デリバリー部2は、本体部2aと、本体部2a内に一部が固定され、アウターシース付きステント1を含むシース2bと、アウターシース付きステント1の近位側への移動を制限するガイドロッド2cと、シース2bの先端に設けられた先端チップ3と、を含んで構成されている。
なお、本体部2aは、ストリング12を牽引可能なように、ストリング12の後述する他端側12nが引き出される構成となっている。
【0028】
<第1実施形態>
次に、第1実施形態に係るアウターシース付きステント1、ステントデリバリー装置D及びアウターシース付きステント製造方法について、
図1及び
図2に加え、
図3から
図5を主に参照して説明する。
図3は、予備工程を示す図であり、ストリング12でアウターシース11の周方向の両縁部11aを直線的に縫合する工程を示す説明図である。
図4は、予備工程後のメイン工程を示す図であり、ループ12aをアウターシース11に周回させた後で、該ループ12aを両縁部11aに通した状態を示す説明図である。
図5は、
図4に示す状態の後に、次のループ12bを先に形成されたループ12aに通し、該ループ12bをアウターシース11に周回させた後に、該ループ12bを両縁部11aに通した状態を示す説明図である。
【0029】
図2から
図5のアウターシース11においては、ストリング12が通される穴の図示は省略している。
周方向におけるアウターシース11の両縁部11aのうち、一方の縁部11aに、複数の穴が形成されており、これら複数の穴がステント10の軸方向に沿って配列されている。同様に、周方向におけるアウターシース11の両縁部11aのうち、他方の縁部11aにも複数の穴が形成されており、これら複数の穴がステント10の軸方向に沿って配列されている。ここで、複数の穴の配列の方向は、必ずしも厳密にステント10の軸方向と同一とは限らず、ステント10の軸方向成分を含む方向である。
例えば、一方の縁部11aの個々の穴と他方の縁部11aの個々の穴とは1対1で対応しており、互いに対応する穴は、ステント10の軸方向において互いに同じ位置(同等の位置)に配置されている。
図3に示す予備工程でストリング12が通される穴は、
図2及び
図4から
図5に示すメイン工程においてストリング12が通される穴と共通であっても別個に設けられるものであってもよい。
【0030】
図2に示されているようにストリング12は、ストリング12の一部分ずつが折り曲げられて形成された複数のループ(ループ12a、12b、12d)と、複数の縫い目12jと、を備える。
縫い目12jは、複数のループ12a、12bのうちの1つのループ12aと、1つのループ12aよりもストリング12の他端側12nにあって、アウターシース11の周方向における両縁部11aを貫通して1つのループ12aに通された他のループ12bと、によって形成されている。すなわち、縫い目12jは、ループに他のループが挿通された箇所であり、「ループ挿通部」と称することもできる。
複数の縫い目12jがステント10の軸方向に並んで配置されている。
【0031】
本実施形態に係るアウターシース11は、ポリテトラフルオロエチレンによって形成されているが、体内に留置する場合には、生分解性プラスチックであると好適である。
ストリング12は、アラミド繊維で形成されるものであると好適である。その他、ストリング12は、天然繊維、合成繊維の他、金属繊維によって構成されるものであってもよい。
なお、ストリング12において、一端側12mは、術者に操作されない端部側であり、他端側12nは、アウターシース11に対する縫合を解除する際に、術者に牽引操作される端部側である。
本書において、ループ12a、12b(、ストリング12)が両縁部11aを貫通していることについて換言すると、ループ12a、12b(、ストリング12)が両縁部11aに形成された穴(図面においては不図示)に通されていることである。
【0032】
ここで、各ループは、一端側が開放端(閉じていない端部)となっており、他端側が閉じた端部である折り返し部となっている。ストリングにおいて各ループを形成している部位は、当該ループの一端側から折り返し部に向かう往路部分と、折り返し部から当該ループの一端側に戻る復路部分と、を含む。
1つのループ12aに他のループ12bを通した先で、1つのループ12aの一部分を一端側12mから他端側12nに牽引することで、ループ12aの幅(往路部分と復路部分との距離)は、
図2等に示された幅よりも狭くなり、縫い目12jを形成することとなる。
【0033】
上記構成によれば、1つループ12aと他のループ12bとによって縫い目12jが形成されていることで、ストリング12を解く際に、断続的にストリング12を解放することができる。
【0034】
本実施形態の場合、ステント10の周囲に巻かれたアウターシース11の両縁部11aは、アウターシース11の径方向外側に向かって起立している。つまり、アウターシース11の両縁部11aは、アウターシース11における両縁部11a以外の部位と比べて、アウターシース11の径方向外側に向けて(ステント10の径方向外側に向けて)起立している。ストリング12(を構成するループ12a、12b)は、両縁部11aを周方向に貫通している。
上記構成によれば、両縁部11aが起立していることで、アウターシース11における両縁部11aの外面ではない別の外面11hに対して両縁部11aが接触することを抑制できる。このため、ストリング12を解く際に、アウターシース11の外面11hからの摩擦がかかりにくく、スムーズにストリング12を解くことができる。
【0035】
[縫合方法]
次に、アウターシース11に対するストリング12の縫合方法について説明する。
図2に示されているようにストリング12は、ストリング12の一部分ずつが折り曲げられて形成された複数のループ12a、12b、12cと、ループ12aに通される部位(ループ12b)と、によって、複数の縫い目12jを形成してアウターシース11の両縁部11aを縫合するものである。
【0036】
図2に示されているようにストリング12は、アウターシース11の先端側11fから基端側11eに向けて解けるようにアウターシース11に取り付けられている。
縫合工程は、ストリング12によって、アウターシース11の中央側から基端側11eに向けてアウターシース11の周方向における両縁部11aを縫合する予備工程(
図3参照)と、予備工程後に、ストリング12によって、アウターシースの両縁部11aを基端側11eから先端側11fに向けて縫合するメイン工程(
図2、
図4及び
図5参照)と、を備える。
【0037】
メイン工程において、アウターシース11の外面11hに沿い、且つ、後述する予備工程において配置されたストリング12の一部分12h(縫合部12q)に交差するように、アウターシース11の周方向にストリング12の他の一部分12iを巻回する。
【0038】
具体的には、
図3に示して後述する予備工程で直線的に延在する縫合部12qの長さよりも、周回方向に巻き付けられたループ12aの軸方向長さは短く形成されている。このように構成されていることで、ストリング12の一部分12hである縫合部12qにストリング12の他の一部分12iであるループ12aが交差することになる。
【0039】
上記構成によれば、縫合工程が予備工程とメイン工程とを備えて、予備工程によって配置されたストリング12の一部分12hに対して、メイン工程で巻回するストリング12の他の一部分12iが交差することで、ストリング22が意図せず解かれにくくすることができる。
【0040】
また、ループ12aが、直線的に延在する縫合部12qの少なくとも一部分よりも径方向外側において両縁部11aに通されていると好適である。このような構成によれば、予備工程で形成した縫合部12qをループ12aにより径方向外側から内側に押さえつけることにより、縫合部12qが解かれるのを抑制できる。
【0041】
[予備工程]
アウターシース11に対するストリング12による縫合のうち、アウターシース11の両縁部11aに対してストリング12によって直線的に縫合する予備工程について
図3を参照して説明する。
予備工程において、複数のループ12cのうち少なくとも1つ(ループ12c)をアウターシース11の軸方向に延在させて縫合していく。
【0042】
具体的には、予備工程において、アウターシース11の両縁部11aに形成された不図示の穴にループ12cを通す。すなわち両縁部11aが径方向外側に起立した状態で、一方の縁部11aの穴と他方の縁部11aの穴とに続けて同方向にループ12cを通す。
次に、ストリング12において、先のループ12cよりも他端側12nにある部位を折り曲げて次のループ12cを形成し、両縁部11aに形成された不図示の穴に当該次のループ12cを通し、更に、当該次のループ12cを先のループ12c(次のループ12cの1つ前に形成したループ12c)に通す。これを繰り返す。
そして、複数のループ12cのうち最も基端側11eに位置するループ12cを形成した後に、ストリング12におけるループ12cよりも他端側12nの部位を折り曲げてループ12aを形成する。形成したループ12aを両縁部11aに通した後にループ12cに通して、予備工程が終了する(
図3の状態)。
ここで、次のループ12cを通す穴は、先のループ12c(次のループ12cの1つ前に形成したループ12c)を通した穴よりも、基端側11eの位置に配置されている。このため、先のループ12cの一部分は、両縁部11aに沿う方向に延在する(ステント10の軸方向に延在する)。また、ループ12aを通す穴は、最も基端側11eに位置するループ12cを通した穴よりも、基端側11eの位置に配置されている。このため、最も基端側11eに位置するループ12cの一部分も、両縁部11aに沿う方向に延在する(ステント10の軸方向に延在する)。すなわち、各ループ12cの各々の一部分が両縁部11aに沿って延在する。
また、各ループ12cを両縁部11aに通す方向(
図3ではいずれも上から下)は、互いに同方向である。また、ループ12aを両縁部11aに通す方向(
図3では上から下)は、各ループ12cを両縁部11aに通す方向(
図3ではいずれも上から下)と同方向である。このため、各ループ12cにおいて、両縁部11aに沿う方向に延在している部分は、ステント10の周方向において、両縁部11aを基準として同じ側に隣接する位置(
図3ではいずれも両縁部11aの下側に隣接する位置)に配置されている。
【0043】
本実施形態においては、予備工程において、3つのループ12cを形成して直線的に縫合部12qを形成している。すなわち、ステント10の軸方向に直線状に延在する縫合部12qを形成している。このように複数のループ12cにより縫合部12qが形成されていれば、縫合部12qの一部分が切断されたとしてもストリングが解かれにくく好適である。
しかしながら、このような構成に限定されず、縫合部12qを構成するループ12cは1つであってもよい。
【0044】
上記構成によれば、予備工程においてループ12cを軸方向に延在させて縫合することで、メイン工程で周方向に巻回するストリング12がループ12cに干渉することを抑制して、周方向に巻回されたストリング12を好適に解くことができる。
【0045】
[メイン工程]
予備工程後、
図4、
図5及び
図2に示すメイン工程に移る。
予備工程で形成したループ12aを、
図4に示すように、先端側11fから軸方向に見たときに、時計回りにアウターシース11に対して(アウターシース11の外周囲に)周回させる(巻き付ける)。つまり、ループ12aを巻き付ける方向は、ループ12aを両縁部11aの穴に通す方向と同じ方向である。そして、周回させた(巻き付けた)先で、ループ12aを両縁部11aの不図示の穴に通して、穴に通した部分(ループ12aにおける折り返し部側の部分)を当該穴から先端側11f側に向けて延在するように両縁部11aに沿わせて配置する。
ここで、ループ12aを周回させた先で両縁部11aに通す穴は、当該ループ12aを予備工程においてループ12cに通す前に両縁部11aに通した穴よりも、先端側11fの位置に配置されている。このため、当該ループ12aにおいてアウターシース11の外周囲に巻き付けられた部分は、アウターシース11の外周面に沿って螺線状に延在している。
また、ループ12aを周回させた先で両縁部11aに通す方向(
図4では上から下)は、当該ループ12aを予備工程においてループ12cに通す前に通した方向と同方向である。
【0046】
図5に示すように、ストリング12において、ループ12aよりも他端側12nにある部位を折り曲げて次のループ12bを形成し、両縁部11aに形成された不図示の穴に当該次のループ12bを通し、穴に通したループ12bをループ12aにおける折り返し部側の部分(両縁部11aに沿って延在している部分)に通し、ループ12aに通したループ12bを同じく時計回りにアウターシース11に対して周回させ、周回させた先で、ループ12bを両縁部11aの不図示の穴に通して、穴に通した部分(ループ12bにおける折り返し部側の部分)を当該穴から先端側11f側に向けて延在するように両縁部11aに沿わせて配置する。
【0047】
これら(
図4の工程と
図5の工程)を繰り返して、
図2に示されているように、アウターシース11の周囲に複数のループ12a、12b、・・・を巻回しながら複数のループ12a、12b、・・・によって両縁部11aを縫合する。
【0048】
図2に示すように、先端側11fにある最後のループ12bについては、両縁部11aに通した後に、アウターシース11の周囲に巻き付ける工程及びそれ以降の工程は行わない。
そして、ストリング12における最後のループ12bよりも他端側12nの部位を折り曲げてループ12dを形成する。形成したループ12dをアウターシース11の両縁部11aに通さずに、最後のループ12bに通す。最後のループ12bに通した先で、ループ12dの一部分を一端側12mから他端側12nに牽引することで、直前に形成されたループ12bの寸法を小さくして、仮止め部12gを形成する。
このようにして縫合工程が終了する。
【0049】
このように形成された仮止め部12gによれば、ストリング12を一端側12mに牽引することで解くことが可能である。このため、ステント10とともにアウターシース11を体内に留置する場合には、ストリング12をアウターシース11から完全に分離して体外に回収できるために好適である。
【0050】
このようにして縫合された両縁部11aにおいて、アウターシース11の内面に加わるステント10の弾性復元力は、仮止め部12gを構成するループ12bが小さくなる方向に加わる力として伝播する。このため、仮止め部12gは、術者が他端側12nを故意に引っ張ること以外に不意に解かれにくい。
【0051】
<第2実施形態>
上記の第1実施形態に係るアウターシース付きステント1においては、両縁部11aがアウターシース11における両縁部11a以外の部位から径方向外側に向けて立設している。
これに対して、第2実施形態では、第1実施形態に係るアウターシース付きステント1と比較してよりシース2bを細径化可能なように両縁部21aが立設していないアウターシース付きステント1Aについて、
図6及び
図7を参照して説明する。
【0052】
図6は、第2実施形態及び後述する第3実施形態に係るアウターシース付きステント1A、1Bを示す模式図である。
図7は、第2実施形態に係る縫合方法の予備工程を示す図であり、ストリング22でアウターシース21の周方向の両縁部21aを直線的に縫合する工程を示す図である。
【0053】
図7のアウターシース21においては、ストリング22が通される穴の図示は省略している。
図7に示す予備工程でストリング22が通される穴は、メイン工程においてストリング22が通される穴21d(
図6参照)と共通であっても別個に設けられるものであってもよい。
【0054】
図6に示されているように、本実施形態に係るストリング22は、アウターシース21の周方向に巻回されている複数の周回部22kを備える。
両縁部21aは、互いの内面どうしが突き合された対向状態でストリング22によって縫合されており、ストリング22の周回部22kによって(周回部22kが両縁部21aの上からアウターシース21に巻き付けられることによって)、アウターシース21における両縁部21aとは別の外面11hに両縁部21aが押し当てられるように別の外面11h側に両縁部21aが倒されている。
【0055】
「両縁部21aとは別の外面11h」とは、具体的にはアウターシース21において、両縁部21aを構成する外面とは別の外面11hの意味である。
上記構成によれば、両縁部21a(リブ)がストリング22によってアウターシース21の別の外面11hに押し当てられて、外面11hに沿って当接するように配設されていることで、アウターシース21の径方向外側への張り出しを抑制できる。
【0056】
図6に示されているように、他のループ22a(次のループ22a)は、倒された両縁部21aを貫通した先で1つのループ22a(先のループ22a)に通され、両縁部21aの上を通るように両縁部21aの倒された方向に折り返されて、アウターシース21の外面(別の外面11h)に沿って配設されている。
上記構成によれば、各ループ22aによってアウターシース21の両縁部21aを押し倒すことで、アウターシース21の径方向外側への張り出しを抑制できる。
【0057】
[縫合方法]
本実施形態に係る縫合工程も、ストリング22によって、アウターシース21の中央側から基端側11eにアウターシース21の周方向における両縁部21aを縫合する予備工程(
図7参照)と、予備工程後に、ストリング22によって、基端側11eから先端側11fに縫合するメイン工程(
図6参照)と、を備える。
【0058】
メイン工程において、アウターシース21の外面11hに沿い、且つ、後述する予備工程において配置されたストリング22の一部分22h(縫合部22q)に交差するように、アウターシース21の周方向にストリング22の他の一部分(周回部22k)を巻回する。
【0059】
具体的には、
図7に示して後述する予備工程で直線的に延在する縫合部22qの長さよりも、周回方向に巻き付けられたループ22aの軸方向長さは短く形成されている。このように構成されていることで、ストリング22の一部分22hである縫合部22qにストリング22の他の一部分であるループ22a(周回部22k)が交差することになる。
【0060】
上記構成によれば、縫合工程が予備工程とメイン工程とを備えて、予備工程によって配置されたストリング22の一部分22hをメイン工程で巻回するストリング22の他の一部分(周回部22k)が交差することで、ストリング22が意図せず解かれにくくすることができる。
【0061】
[予備工程]
本実施形態でも、第1実施形態と同様に予備工程を行う。ただし、便宜上、
図7は、
図3とは上下反転して示している。
【0062】
予備工程において、アウターシース21の両縁部21aに形成された不図示の穴にループ22cを通す。すなわち両縁部21aが径方向外側に起立した状態で、一方の縁部21aの穴と他方の縁部21aの穴とに続けて同方向にループ22cを通す。
次に、ストリング22において、通したループ22cよりも他端側22nにある部位を折り曲げて次のループ22cを形成し、両縁部21aに形成された不図示の穴に当該次のループ22cを通し、更に、当該次のループ22cを先のループ22c(次のループ22cの1つ前に形成したループ22c)に通す。これを繰り返す。
そして、複数のループ22cのうち最も基端側21eに位置するループ22cを形成した後に、ストリング22におけるループ22cよりも他端側22nの部位を折り曲げてループ22aを形成する。形成したループ22aを両縁部11aに通した後にループ22cに通して、予備工程が終了する(
図7の状態)。
本実施形態の場合も、各ループ22cの各々の一部分が両縁部21aに沿う方向に延在する(ステント10の軸方向に延在する)。
また、各ループ22cにおいて、両縁部21aに沿う方向に延在している部分は、ステント10の周方向において、両縁部21aを基準として同じ側に隣接する位置(
図7ではいずれも両縁部21aの上側に隣接する位置)に配置されている。
このとき、ストリング22において、予備工程において最後に形成したループ22aよりも他端側22nを、両縁部21aに沿わせて配置する。
【0063】
[メイン工程]
予備工程後、
図6に示すメイン工程に移る。
予備工程で形成したループ22aを、
図6に示すように、先端側11fから軸方向に見たときに、時計回りにアウターシース21に対して周回させる(巻き付ける)。つまり、第1実施形態とは逆方向に周回させる。換言すれば、本実施形態の場合、メイン工程でループ22aを巻き付ける方向は、ループ22aを両縁部21aの穴に通す方向とは逆方向である。
このため、本実施形態では、周回するループ22aによって、両縁部21aの少なくとも一部分が他の外面11hに接触(あるいは近接)するように押し倒される。
そして、ストリング22において、周回させたループ22aよりも他端側22nにある部位に次のループ22aを形成し、次のループ22aを両縁部21aに形成された穴21dに通して、アウターシース21の外側(倒された両縁部21aの表面側(径方向外側))に引き出し、引き出した次のループ22aを先のループ22aにおける折り返し部側の部分に通し、先のループ22aに通した次のループ22aも同様に、両縁部21aの少なくとも一部を押し倒すように、時計回りにアウターシース21に対して周回させる。
このようにして、複数のループ22aを基端側11eから先端側11fに巻回及び縫合することを繰り返す。
ここで、各ループ22aの周回部22kは、アウターシース21を1周している。
各ループ22aにおける折り返し部側の端部は、次のループ22aが通されることにより、当該次のループ22aが通された両縁部21aの穴の(近傍の)位置に留められる。
【0064】
図6に示すように、先端側11fにあり両縁部の穴21dから引き出される最後のループ22aを両縁部の穴21dから引き出した後、アウターシース11の周囲に巻き付ける工程は行わない。
そして、ストリング22における最後のループ22aよりも他端側12nの部位を折り曲げてループ22dを形成する。形成したループ22dをアウターシース21の両縁部21aの穴21dに通さずに、最後のループ22aに通す。最後のループ22aに通した先で、ループ22dの一部分を一端側22m(
図7参照)から他端側22nに牽引することで、直前に形成されたループ22a(最後のループ22a)の寸法を小さくして、仮止め部22gを形成する。
このようにして縫合工程が終了する。
【0065】
なお、第2実施形態では、ループ22aの周回部22kは、アウターシース21を1周している例を説明したが、ループ22aの周回部22kがアウターシース21を複数周回した先で次のループ22aが通されることによって、周回部22kの先端部(折り返し部側の端部)の位置が規制されていてもよい。
【0066】
<第3実施形態>
上記実施形態においては、ストリング12は、アウターシース11の両縁部11a、アウターシース21の両縁部21aを縫合するものとして説明した。
しかしながら、本発明はこのような構成に限定されず、アウターシース31の片側の縁部のみを縫合するものであってもよい。
【0067】
このような構成を備える第3実施形態に係るアウターシース付きステント1Bについて、
図6に加えて、
図8から
図10を主に参照して説明する。
図8は、第3実施形態に係るアウターシース付きステント1Bを軸方向に視た模式図である。
図9は、第3実施形態に係る縫合方法の予備工程を示す図であり、ストリング32でアウターシース31の周方向の縁部を縫合している説明図、
図10は、予備工程後に、インナーシース33に取り付けられたステント10の外周を覆うアウターシース31を巻いている状態を示す説明図である。
【0068】
また、
図9は、アウターシース31の縁部を立ち上げた状態でストリング32によって縫合している状態を示す図である。
図9のアウターシース31においては、ストリング32が通される穴の図示は省略している。
図9に示す予備工程でストリング32が通される穴は、メイン工程においてストリング32が通される穴31d(
図6参照)と共通であっても別個に設けられるものであってもよい。
【0069】
[縫合部]
第3実施形態に係るアウターシース31は、
図8に示されているように、一方の縁部31bが内部(径方向内側)に入り込み、他方の縁部31cが外部に露出するように、周方向に渦巻き状に巻かれている。
図6に示されているように、複数の穴31dは、他方の縁部31cに形成されている。ストリング32は、複数の穴31dに通されてアウターシース31に対して周回するように螺旋状に配設されている。
上記構成によれば、ストリング32が螺旋状に配設されていることで、アウターシース31に対するストリング32による縛りを強固にすることができる。
【0070】
ストリング32は、ストリング32の一部分ずつが折り曲げられて形成された複数のループ32aを有しており、複数のループ32aのうち少なくとも一部のループ32a内に、複数の穴31dの一部の穴31dに通された隣のループ32a(先のループ32a)が通されている。
具体的には、アウターシース31の内部(径方向内側)にあるストリング32の一部分に形成された他のループ32a(次のループ32a)が穴31dから径方向外側に引き出され、アウターシース31の外周を周回した1つのループ32a(先のループ32a)に通されることによって、複数のループ32aが連続して螺旋状に配設されている。
【0071】
上記構成によれば、ストリング32がアウターシース31を周回して、他方の縁部31cのみに縫合していることで、縁部31cが径方向外側に突出せず、周回方向に寝かせることができるため、アウターシース付きステント1Bを細径にすることができる。
また、一部のループ32aに隣のループ32aが通されていることで、ストリング32を牽引することで、ステント10を一部分ずつ展開することができる。
【0072】
[縫合方法]
第1実施形態同様に、アウターシース付きステント製造方法は、ステント10(
図8参照。)と、ステント10に対してステント10の周方向に巻かれる帯状のアウターシース31と、ステント10の周囲をアウターシース31で覆うために、アウターシース31の周方向の両縁部の少なくとも一方(
図8においては縁部31c)に通されて縫合するストリング32と、を用意する工程と、ストリング32の一端側32m(
図9参照)から他端側32nを、
図6に示すように、アウターシース31の基端側11eから先端側11fに縫合する縫合工程と、を備える。
【0073】
縫合工程は、ストリング32を、ステント10の径方向にアウターシース31に挿通させる通し工程を有する。
アウターシース31の両縁部の少なくとも一方(
図6においては縁部31c)には、ストリング32が通される複数の穴31dが形成されている。
通し工程において、複数の穴31dに対してステント10の径方向にストリング32を挿通させて、アウターシース31を縫合する。
【0074】
このアウターシース付きステント製造方法では、ステント10の径方向にストリング32をアウターシース31に挿通させている。この構成によれば、アウターシースの縁部が径方向外側に向けて起立した状態となる従来の構造と比較して、アウターシース31の外方への張り出しが抑制されたアウターシース付きステント1Bを製造できる。
【0075】
予備工程では、
図9に示すように、アウターシース31の周方向の縁部において、軸方向中央側から端(基端側11e)に向かって、ストリング32を縫合する。
より具体的には、予備工程において、アウターシース31の内面側から外面側に貫通するように、ストリング32を折り曲げたループ32aを通す。
ここで、アウターシース31の内面側及び外面側は、
図8に示すように、渦巻き状に巻かれた状態における、内面側(径方向内側)及び外面側(径方向外側)を意味する。
【0076】
そして、当該ループ32aよりも他端側32nにある部位を折り曲げて隣のループ32aを形成して、アウターシース31の内面側から外面側に貫通するように、隣のループ32aをアウターシース31に通し、通した隣のループ32aを先のループ32aに通す。これを複数回行う(
図9の状態)。本実施形態においては、
図9に示すように4つのループを形成している。
【0077】
そして、
図10に示すように、インナーシース33に取り付けられたステント10の外周にアウターシース31を渦巻き状に巻き付けて、アウターシース31によってステント10を覆う。
次に、
図9に示す予備工程において最後に形成したループ32aを、
図6及び
図8に示すように、先端側11fから見て時計回りに、渦巻き状に巻き込まれたアウターシース31の外周を周回させつつ先端側11fに進行させて(つまり、螺進させて)、アウターシース31の外周囲に巻回する。
【0078】
そして、ストリング32における先のループ32a(予備工程において最後に形成したループ32a)よりも他端側32nの部位を折り曲げて次のループ32aを形成し、当該次のループ32aをアウターシース31の内面側から穴31dに通して外面側に引き出し、引き出した次のループ32aを先のループ32aに通す。
このように通した次のループ32aについても同様に、先端側11fから見て時計回りにアウターシース31の外周囲に巻き付ける。
以後同様に、ストリング32における他端側32nにループ32aを形成して、形成したアウターシース31の内面側から穴31dに通して外面側に引き出し、引き出したループ32aを先のループ32aに通すことを繰り返す。
これにより、全体として螺旋状に周回されたストリング32によって、アウターシース31を緊縛する。
【0079】
最後のループ32aについては、穴31dから出した後、アウターシース31の周囲に巻き付ける工程は行わない。
そして、ストリング32における最後のループ32aよりも他端側32nの部位を折り曲げてループ22dを形成し、該ループ22dを最後のループ32aに通す。最後のループ32aに通した先で、ループ22dの一部分を一端側32mから他端側32nを牽引することで、最後のループ32aの寸法を小さくして仮止め部22gを形成して縫合工程が終了する。
【0080】
このようにして縫合されたアウターシース31は、ストリング32の他端側32nが牽引されることで、仮止め部22gが解かれる。そして、各ループ(ループ32a)が順次引き延ばされて、各ループそれぞれの縫い目が順次解かれることになる。このため、アウターシース31へのストリング32の拘束が解除されて、ステント10が拡張することになる。
【0081】
なお、ループ32aは、アウターシース31を一周するごとに、次のループ32aに通されている構成であると、ストリング32の縫合の緩みを防止できるため好適であるが、このような構成にされない。例えば、ループ32aをアウターシース31に対して複数周回させた後に、次のループ32aを先に形成されたループ32aに通すようにしてもよい。
【0082】
なお、上記の予備工程によって縫合されたストリング12、22、32であれば、ステント10を拡張させる際に、ストリング12、22、32を牽引すれば、アウターシース11、21、31からストリング12、22、32が完全に分離できる。このため、アウターシース11、21、31を体内に留置する場合には好適に処置が可能となる。
しかしながらこのような構成に限定されず、単にアウターシース11、21、31にストリング12、22、32の一端側12m、22m、32mを固定できればよいということであれば、上記の予備工程は必須ではない。例えば、ストリング12、22、32の一端側12m、22m、32mを、アウターシース11、21、31に一体成型したり、アウターシース11、21、31の一部分に係合させたり、接着剤等でアウターシース11、21、31に接着したりしてもよい。
【0083】
上記実施形態において、ストリングの周回方向は、軸方向視において、時計回り、反時計回りいずれであってもよい。そして、このストリングの周回方向に合わせて、予備工程において、両縁部に対して周回方向のどちら側にループを配置するかを決定すればよい。
【0084】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
上記実施形態では、メイン工程にて、ストリング12は、アウターシース11に対してその基端側11eから先端側11fに縫合され、ストリング12が牽引されることでアウターシース11の先端側11fから基端側11eに縫合が解けるように構成されているが、一例であってこれに限られるものではない。例えば、ストリング12は、アウターシース11に対してその先端側11fから基端側11eに縫合され、ストリング12が牽引されることでアウターシース11の基端側11eから先端側11fに縫合が解けるように構成されていてもよい。
【0085】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)
径方向に拡縮可能なステントと、
前記ステントの収縮状態にて当該ステントの周囲に巻かれた帯状のアウターシースと、
前記アウターシースの周囲を緊縛するストリングと、を備え、
前記ストリングの一部分は、前記アウターシースの外面上を緊縛するように前記アウターシースの周方向に巻回されていることを特徴とするアウターシース付きステント。
(2)
前記ストリングは、前記ストリングの一部分ずつが折り曲げられて形成された複数のループと、複数の縫い目と、
を備え、
前記縫い目は、前記複数のループのうちの1つのループと、前記1つのループよりも前記ストリングの他端側にあって、前記アウターシースの周方向における両縁部を貫通して前記1つのループに通された他のループと、によって形成されている(1)に記載のアウターシース付きステント。
(3)
前記ストリングは、前記アウターシースの周方向に巻回されている複数の周回部を備え、
前記両縁部は、互いの内面どうしが突き合された対向状態で前記ストリングによって縫合されており、前記ストリングの前記周回部によって、前記アウターシースにおける前記両縁部とは別の外面に押し当てられるように前記別の外面側に倒されている(1)又は(2)に記載のアウターシース付きステント。
(4)
前記他のループは、
倒された前記両縁部を貫通した先で前記1つのループに通され、前記両縁部の上を通るように当該両縁部の倒された方向に折り返されて、前記アウターシースの外面に沿って配設されている(2)を引用する(3)に記載のアウターシース付きステント。
(5)
前記両縁部は、前記アウターシースの径方向外側に向かって起立しており、
前記ストリングは、前記両縁部を周方向に貫通している(2)、(2)を引用する(3)又は(4)に記載のアウターシース付きステント。
(6)
(1)から(5)のいずれか一項に記載のアウターシース付きステントと、
該アウターシース付きステントをデリバリーするデリバリー部と、を備えることを特徴とするステントデリバリー装置。
(7)
径方向に拡縮可能なステントと、
前記ステントの収縮状態にて当該ステントの周囲に巻かれる帯状のアウターシースと、
前記アウターシースの周囲を緊縛するストリングと、
を用意する工程と、
前記ストリングを前記アウターシースに縫合する縫合工程と、を備え、
前記縫合工程において、前記アウターシースの外面上を緊縛するように前記アウターシースの周方向に前記ストリングの一部分を巻回することを特徴とするアウターシース付きステント製造方法。
(8)
前記ストリングは、前記アウターシースの先端側から基端側に解けるように前記アウターシースに取り付けられており、
前記縫合工程は、
前記ストリングによって、前記アウターシースの中央側から基端側に向けて前記アウターシースの周方向における両縁部を縫合する予備工程と、
該予備工程後に、前記ストリングによって、前記両縁部を前記基端側から前記先端側に向けて縫合するメイン工程と、を備え、
該メイン工程において、前記アウターシースの外面に沿い、且つ、前記予備工程において配置された前記ストリングの一部分に交差するように、前記アウターシースの周方向に前記ストリングの他の一部分を巻回する(7)に記載のアウターシース付きステント製造方法。
(9)
前記ストリングは、前記ストリングの一部分ずつが折り曲げられて形成された複数のループと、該ループに通される部位と、によって、前記アウターシースの前記両縁部を縫合するものであり、
前記予備工程において、前記複数のループのうち少なくとも1つを前記アウターシースの軸方向に延在させて縫合していく(8)に記載のアウターシース付きステント製造方法。
【符号の説明】
【0086】
D ステントデリバリー装置
1、1A、1B アウターシース付きステント
2 デリバリー部
2a 本体部
2b シース
2c ガイドロッド
3 先端チップ
10 ステント
11 アウターシース
11a 両縁部
11e 基端側
11f 先端側
11h 外面(別の外面)
12 ストリング
12a ループ(1つのループ)
12b ループ(他のループ)
12c ループ
12d ループ
12g 仮止め部
12h 一部分
12i 他の一部分
12j 縫い目
12m 一端側
12n 他端側
12q 縫合部
21 アウターシース
21a 両縁部
21d 穴
22 ストリング
22a ループ(1つのループ、他のループ)
22c ループ
22d ループ
22h 一部分
22g 仮止め部
22k 周回部
22m 一端側
22n 他端側
22h 一部分
22q 縫合部
31 アウターシース
31b 縁部
31c 縁部
31d 穴
32 ストリング
32a ループ
32m 一端側
32n 他端側
32q 縫合部
33 インナーシース