(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139729
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ロータ、モータ、モータを備える圧縮機、および、冷凍装置
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20241002BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043268
(22)【出願日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2023050155
(32)【優先日】2023-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】松田 直也
(72)【発明者】
【氏名】平野 正樹
(72)【発明者】
【氏名】日比野 寛
(72)【発明者】
【氏名】中 祥司郎
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA03
5H622CB04
5H622DD01
5H622DD02
5H622DD03
(57)【要約】
【課題】モータのエネルギー効率の向上に寄与できる、ロータ、モータ、モータを備える圧縮機、および、冷凍装置を提供する。
【解決手段】モータのロータ3は、収容部20を有するロータコア15と、収容部20に配置される磁石40と、を備える。ロータコア15は、ロータコア15の外周面3Aに切欠部30を有する。収容部20は、磁石40の磁極面Sのうちロータ3の磁極に面する側の第1磁極面S1と向かい合って、直線または変曲点のない曲線となる第1端面21を有する。収容部20において、第1端面21を含む部位の第1方向D1の幅は、第1幅W1と定義される。収容部20において、第1磁極面S1と向かい合って、第1端面21と接続され、第1端面21よりもロータコア15の外周面3Aに近い接続面21Aを含む部位の第1方向D1の幅は、第2幅W2と定義される。第2幅W2は、第1幅W1よりも小さい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ(1)のロータ(3)であって、
前記ロータ(3)の回転軸心(C)の軸方向(DA)に延びる収容部(20)を有するロータコア(15)と、前記収容部(20)に配置される磁石(40)と、を備え、
前記ロータコア(15)は、前記ロータコア(15)の外周面(3A)に切欠部(30)を有し、
前記収容部(20)は、前記軸方向(DA)から見て、前記収容部(20)に配置される前記磁石(40)の磁極面(S)のうち前記ロータ(3)の磁極(P)に面する側の第1磁極面(S1)と向かい合って、直線または変曲点のない曲線となる第1端面(21)を有し、
前記軸方向(DA)から見て、前記収容部(20)に配置される前記磁石(40)の磁極面(S)から前記第1端面(21)に向かう方向を第1方向(D1)とし、前記第1方向(D1)と直交する方向を第2方向(D2)としたとき、
前記収容部(20)において、前記第1端面(21)を含む部位の前記第1方向(D1)の幅は、第1幅(W1)と定義され、
前記収容部(20)において、前記第1磁極面(S1)と向かい合って、前記第1端面(21)と接続され、前記第1端面(21)よりも前記ロータコア(15)の外周面(3A)に近い接続面(21A)を含む部位の前記第1方向(D1)の幅は、第2幅(W2)と定義され、
前記第2幅(W2)は、前記第1幅(W1)よりも小さい、
ロータ。
【請求項2】
前記軸方向(DA)から見て、
前記ロータコア(15)の外周面(3A)と前記収容部(20)における端面(22X)との距離の最小値を所定距離(t)とし、
前記収容部(20)の前記第1端面(21)から、前記収容部(20)から遠ざかる方向に所定距離(t)だけ離れ、前記ロータコア(15)の外周面(3A)に向かって延伸した第1の線(L1)を仮想的に引いた時に、前記切欠部(30)は、前記切欠部(30)の一部または全部が前記第1の線(L1)に対して前記回転軸心(C)の周方向(DC)で前記収容部(20)側に位置するように構成される、
請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記切欠部(30)は、前記軸方向(DA)から見て、前記切欠部(30)の一部または全部が、前記第1端面(21)に重なる線を前記ロータコア(15)の外周面(3A)に向かって延伸した第2の線(L2)を仮想的に引いた時に、前記第2の線(L2)に対して前記回転軸心(C)の周方向(DC)で前記収容部(20)側に位置するように構成される、
請求項1に記載のロータ。
【請求項4】
前記切欠部(30)は、前記軸方向(DA)から見て、前記切欠部(30)の一部が前記第1の線(L1)に対して前記回転軸心(C)の前記周方向(DC)で前記ロータ(3)の磁極中心(PC)側に位置するように構成される、
請求項2に記載のロータ。
【請求項5】
前記磁石(40)において、前記収容部(20)の前記第1端面(21)と向かい合う部位の前記第1方向(D1)の幅は、第3幅(W3)と定義され、
前記磁石(40)において、前記収容部(20)の前記接続面(21A)と向かい合う部位の前記第1方向(D1)の幅は、第4幅(W4)と定義され、
前記第4幅(W4)は、前記第3幅(W3)よりも小さい、
請求項1に記載のロータ。
【請求項6】
前記磁石(40)は、前記ロータコア(15)の外周面(3A)に近い前記第2方向(D2)の端面から、前記第2方向(D2)に離れるに従って、前記第1方向(D1)の幅が増加する傾斜面(45)を有し、
前記収容部(20)は、前記磁石(40)の前記傾斜面(45)に沿う収容部傾斜面(29)を有する、
請求項1に記載のロータ。
【請求項7】
前記磁石(40)の前記傾斜面(45)は、前記軸方向(DA)から見て、前記磁石(40)から前記磁石(40)を配置する前記収容部(20)に向かって凸となる曲面(45A)を有し、
前記収容部(20)は、前記磁石(40)の前記曲面(45A)に沿う収容部曲面(29R)を有する
請求項6に記載のロータ。
【請求項8】
前記切欠部(30)は、前記ロータ(3)の磁極(P)において、前記磁極(P)の磁極中心(PC)に対して前記回転軸心(C)の周方向(DC)の一方に設けられる、
請求項1に記載のロータ。
【請求項9】
前記切欠部(30)として、第1切欠部(30A)と、第2切欠部(30B)とを有し、
前記第1切欠部(30A)は、前記ロータ(3)の磁極(P)において、前記磁極(P)の磁極中心(PC)に対して前記回転軸心(C)の周方向(DC)の一方に設けられ、
前記第2切欠部(30B)は、前記磁極(P)において、前記磁極(P)の前記磁極中心(PC)に対して前記周方向(DC)の他方に設けられる、
請求項1に記載のロータ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のロータ(3)を備える、モータ。
【請求項11】
請求項10に記載のモータ(1)を備える、圧縮機。
【請求項12】
請求項10に記載のモータ(1)を備える、冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータのロータ、モータ、モータを備える圧縮機、および、冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータのロータとして、磁石埋込型のロータが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の技術では、磁石埋込型モータのロータは、シャフトと、シャフトに装着されたロータコアとを有する。ロータコアは、電磁鋼板積層体によって構成される。ロータコアは、シャフトの軸方向に貫通する貫通孔を有する。貫通孔には、樹脂鉄心と永久磁石とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
省エネルギーの観点から、モータのロータ、モータ、モータを備える圧縮機、および、冷凍装置について、エネルギー効率の改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決する第1観点のモータのロータは、モータのロータであって、前記ロータの回転軸心の軸方向に延びる収容部を有するロータコアと、前記収容部に配置される磁石と、を備え、前記ロータコアは、前記ロータコアの外周面に切欠部を有し、前記収容部は、前記軸方向から見て、前記収容部に配置される前記磁石の磁極面のうち前記ロータの磁極に面する側の第1磁極面と向かい合って、直線または変曲点のない曲線となる第1端面を有し、前記軸方向から見て、前記収容部に配置される前記磁石の磁極面から前記第1端面に向かう方向を第1方向とし、前記第1方向と直交する方向を第2方向としたとき、前記収容部において、前記第1端面を含む部位の前記第1方向の幅は、第1幅と定義され、前記収容部において、前記第1磁極面と向かい合って、前記第1端面と接続され、前記第1端面よりも前記ロータコアの外周面に近い接続面を含む部位の前記第1方向の幅は、第2幅と定義され、前記第2幅は、前記第1幅よりも小さい。
【0006】
この構成によれば、ロータの外周面における磁石付近に、ロータとステータとの間のギャップの幅が拡大する部分が設けられる。これによって、磁束密度の高調波成分を低減できるため、モータのエネルギー効率の向上に寄与できる。
【0007】
第2観点のモータのロータは、第1観点のロータであって、前記軸方向から見て、前記ロータコアの外周面と前記収容部における端面との距離の最小値を所定距離とし、前記収容部の前記第1端面から、前記収容部から遠ざかる方向に所定距離だけ離れ、前記ロータコアの外周面に向かって延伸した第1の線を仮想的に引いた時に、前記切欠部は、前記切欠部の一部または全部が前記第1の線に対して前記回転軸心の周方向で前記収容部側に位置するように構成される。
【0008】
この構成によれば、ロータの外周面における磁石付近に、ロータとステータとの間のギャップの幅が拡大する部分が設けられる。これによって、磁束密度の高調波成分を低減できるため、モータのエネルギー効率の向上に寄与できる。
【0009】
第3観点のモータのロータは、第1または第2観点のロータであって、前記切欠部は、前記軸方向から見て、前記切欠部の一部または全部が、前記第1端面に重なる線を前記ロータコアの外周面に向かって延伸した第2の線を仮想的に引いた時に、前記第2の線に対して前記回転軸心の周方向で前記収容部側に位置するように構成される。
【0010】
この構成によれば、第2の線に対して周方向で収容部側に位置しないように構成される切欠部に比べて、切欠部の設計自由度を向上できる。
【0011】
第4観点のモータのロータは、第2観点のロータであって、前記切欠部は、前記軸方向から見て、前記切欠部の一部が前記第1の線に対して前記回転軸心の前記周方向で前記ロータの磁極中心側に位置するように構成される。
【0012】
この構成によれば、切欠部が第1の線に対して回転軸心の周方向でロータの磁極中心側に位置しないように構成される場合に比べて、切欠部の設計自由度を向上できる。
【0013】
第5観点のモータのロータは、第1~第4観点のいずれか1つのロータであって、前記磁石において、前記収容部の前記第1端面と向かい合う部位の前記第1方向の幅は、第3幅と定義され、前記磁石において、前記収容部の接続面と向かい合う部位の前記第1方向の幅は、第4幅と定義され、前記第4幅は、前記第3幅よりも小さい。この構成によれば、磁石の径方向中間部位について第1方向における幅を第4幅よりも大きくできる。
【0014】
第6観点のモータのロータは、第1~第5観点のいずれか1つのロータであって、前記磁石は、前記ロータコアの外周面に近い前記第2方向の端面から、前記第2方向に離れるに従って、前記第1方向の幅が増加する傾斜面を有し、前記収容部は、前記磁石の前記傾斜面に沿う収容部傾斜面を有する。この構成によれば、磁石における径方向中間部位の第1方向における幅を大きくしながら、切欠部付近においてロータコアの厚みを確保できる。これによって、ロータコアの強度を維持できる。
【0015】
第7観点のモータのロータは、第6観点のロータであって、前記磁石の前記傾斜面は、前記軸方向から見て、前記磁石から前記磁石を配置する前記収容部に向かって凸となる曲面を有し、前記収容部は、前記磁石の前記曲面に沿う収容部曲面を有する。この構成によれば、磁石における径方向中間部位の第1方向における幅を大きくしながら、切欠部付近においてロータコアの厚みを確保できる。これによって、ロータコアの強度を維持できる。
【0016】
第8観点のモータのロータは、第1~第7観点のいずれか1つのロータであって、前記切欠部は、前記ロータの磁極において、前記磁極の磁極中心に対して前記回転軸心の周方向の一方に設けられる。この構成によれば、上記構成のロータが一方向のみに回転するモータに使用される場合、参考例のロータが使われる場合に比べて、そのモータのトルクを向上できる。参考例のロータは、周方向において、磁極中心に対して一方側に位置する磁石の付近および他方側に位置する磁石の付近それぞれに切欠部を有する。
【0017】
第9観点のモータのロータは、第1~第7観点のいずれか1つのロータであって、前記切欠部として、第1切欠部と、第2切欠部とを有し、前記第1切欠部は、前記ロータの磁極において、前記磁極の磁極中心に対して前記回転軸心の周方向の一方に設けられ、前記第2切欠部は、前記磁極において、前記磁極の前記磁極中心に対して前記周方向の他方に設けられる。この構成によれば、正逆方向に回転するモータにおいて、モータ効率の向上に貢献できる。
【0018】
この課題を解決する第10観点のモータは、第1観点~第9観点のいずれか1つのロータを備える。この構成によれば、モータ効率を向上できる。
【0019】
この課題を解決する第11観点の圧縮機は、第10観点のモータを備える。この構成によれば、圧縮機のエネルギー効率を向上できる。
【0020】
この課題を解決する第12観点の冷凍装置は、第10観点のモータを備える。この構成によれば、冷凍装置のエネルギー効率を向上できる。
【0021】
[関連技術]
以下、参考の関連技術を説明する。
第1観点のモータのロータは、前記ロータの回転軸心の軸方向に延びる収容部を有するロータコアと、前記収容部に配置される磁石と、を備え、前記ロータコアは、前記ロータコアの外周面に切欠部を有し、前記収容部は、前記軸方向から見て、前記収容部に配置される前記磁石の磁極面のうち前記ロータの磁極に面する側の面と向かい合って、直線または変曲点のない曲線となる第1端面を有し、前記切欠部は、前記軸方向から見て、前記切欠部の一部または全部が第1の線に対して前記回転軸心の周方向で前記収容部側に位置するように構成され、前記第1の線は、前記軸方向から見て、前記収容部の前記第1端面から前記収容部から遠ざかる方向に所定距離だけ離れた線を、前記ロータコアの外周面に向かって延伸した線であり、前記所定距離は、前記軸方向から見て、前記ロータコアの外周面と前記収容部における端面との距離の最小値である。
【0022】
この構成によれば、ロータの外周面における磁石付近に、ロータとステータとの間のギャップの幅が拡大する部分が設けられる。これによって、磁束密度の高調波成分を低減できるため、モータのエネルギー効率の向上に寄与できる。
【0023】
第2観点のモータのロータは、第1観点のロータであって、前記切欠部は、前記軸方向から見て、前記切欠部の一部または全部が前記第1端面を前記ロータコアの外周面に向かって延伸した第2の線に対して前記周方向で前記収容部側に位置するように構成される。この構成によれば、第2の線に対して周方向で収容部側に位置しないように構成される切欠部に比べて、切欠部の設計自由度を向上できる。
【0024】
第3観点のモータのロータは、第1観点または第2観点のロータであって、前記切欠部は、前記軸方向から見て、前記切欠部の一部が前記第1の線に対して前記回転軸心の前記周方向で前記ロータの磁極中心側に位置するように構成される。この構成によれば、切欠部が第1の線に対して回転軸心の周方向でロータの磁極中心側に位置しないように構成される場合に比べて、切欠部の設計自由度を向上できる。
【0025】
第4観点のモータのロータは、第1観点~第3観点のいずれか1つのロータであって、前記軸方向から見て、前記収容部に配置される前記磁石の磁極面から前記第1端面に向かう方向を第1方向とし、前記第1方向と直交する方向を第2方向としたとき、前記収容部において、前記第1端面を含む部位の前記第1方向の幅は、第1幅と定義され、前記収容部において、前記第1端面よりも前記ロータコアの外周面に近い第2端面を含む部位の前記第1方向の幅は、径方向最外の幅と定義され、前記径方向最外の幅は、前記第1幅よりも小さい。この構成によれば、収容部に収容できる磁石について、磁石の径方向中間部位の第1方向における幅を径方向最外の幅よりも大きくできる。
【0026】
第5観点のモータのロータは、第4観点のロータであって、前記磁石において、前記収容部の前記第1端面と向かい合う部位の前記第1方向の幅は、第3幅と定義され、前記磁石において、前記収容部の前記第2端面と向かい合う部位の前記第1方向の幅は、第4幅と定義され、前記第4幅は前記第3幅よりも小さい。この構成によれば、磁石の径方向中間部位について第1方向における幅を第4幅よりも大きくできる。
【0027】
第6観点のモータのロータは、第1観点~第5観点のいずれか1つのロータであって、前記磁石は、前記ロータコアの外周面に近い前記第2方向の端面から、前記第2方向に離れるに従って、前記第1方向の幅が増加する傾斜面を有し、前記収容部は、前記磁石の前記傾斜面に沿う収容部傾斜面を有する。この構成によれば、磁石における径方向中間部位の第1方向における幅を大きくしながら、切欠部付近においてロータコアの厚みを確保できる。これによって、ロータコアの強度を維持できる。
【0028】
第7観点のモータのロータは、第6観点のロータであって、前記磁石の前記傾斜面は、前記軸方向から見て、前記磁石から前記磁石を配置する前記収容部に向かって凸となる曲面を有し、前記収容部は、前記磁石の前記曲面に沿う収容部曲面を有する。この構成によれば、磁石における径方向中間部位の第1方向における幅を大きくしながら、切欠部付近においてロータコアの厚みを確保できる。これによってロータコアの強度を維持できる。
【0029】
第8観点のモータのロータは、第1観点~第7観点のいずれか1つのロータであって、前記切欠部は、前記ロータの磁極において、前記磁極の磁極中心に対して前記回転軸心の周方向の一方に設けられる。この構成によれば、上記構成のロータが一方向のみに回転するモータに使用される場合、参考例のロータが使われる場合に比べて、そのモータのトルクを向上できる。参考例のロータは、周方向において、磁極中心に対して一方側に位置する磁石の付近および他方側に位置する磁石の付近それぞれに切欠部を有する。
【0030】
第9観点のモータのロータは、第1観点~第7観点のいずれか1つのロータであって、前記切欠部として、第1切欠部と、第2切欠部とを有し、前記第1切欠部は、前記ロータの磁極において、前記磁極の磁極中心に対して前記回転軸心の周方向の一方に設けられ、前記第2切欠部は、前記磁極において、前記磁極の前記磁極中心に対して前記周方向の他方に設けられる。この構成によれば、正逆方向に回転するモータにおいて、モータ効率の向上に貢献できる。
【0031】
この課題を解決する第10観点のモータは、第1観点~第9観点のいずれか1つのロータを備える。この構成によれば、モータ効率を向上できる。
この課題を解決する第11観点の圧縮機は、第10観点のモータを備える。この構成によれば、圧縮機のエネルギー効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】回転軸心に直交する面における、モータの断面図である。
【
図3】
図2の矢印B付近のロータ構造を示す模式図である。
【
図4】
図2の矢印B付近のロータ構造の他の例を示す模式図である。
【
図8】12極15ティースのモータの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1を参照して、モータ1について説明する。
図1~
図8、および、
図11~
図13は、いずれもロータ3の回転軸心Cに沿う軸方向DAからみた図である。各図において軸方向DAは、円の中にXを入れた記号によって示される。軸方向DAは各図の紙面に直交する。
【0034】
モータ1は、ステータ2と、ロータ3と、シャフト4と、を備える。本実施形態のモータ1は、インナロータ型である。ステータ2は、ロータ3の回転軸心Cに沿う軸方向DAに延びる貫通部13を有する。ロータ3は、ステータ2の貫通部13に配置される。
【0035】
<ステータ>
図1に示されるように、ステータ2は、ステータコア10と、コイル14とを備える。ステータコア10は、ヨーク11と、複数のティース12と、を有する。ティース12は、ヨーク11の内周面から回転軸心Cに向かって径方向に延びる。複数のティース12は、回転軸心Cを中心とする周方向DCに等間隔に配置される。コイル14は、ステータコア10に巻かれる。
【0036】
<ロータ>
ロータ3は、ロータコア15と、磁石40とを備える。ロータコア15は、回転軸心Cに沿う軸方向DAに積層される電磁鋼板によって構成される。ロータ3は、ロータ3の外周面3Aとステータコア10のティース12の内面との間にエアギャップGが設けられるように、ステータコア10内に配置される。なお、ロータ3の外周面3Aは、ロータコア15の外周面3Aとは同一である。
【0037】
<ロータコア>
図2に示されるように、ロータコア15は、回転軸心Cに沿うシャフト孔16を有する。シャフト4は、シャフト孔16に挿入される。ロータコア15は、磁石40を収容する複数の収容部20を有する。収容部20は、ロータ3の回転軸心Cの軸方向DAに延びる。一例では、複数の収容部20は、回転軸心Cを中心とする周方向DCに等間隔に配置される。収容部20は、ロータコア15を軸方向DAに貫通するように構成される。
【0038】
<磁石>
磁石40は、永久磁石である。磁石40は、焼結磁石であってもよく、ボンド磁石であってもよい。本実施形態では、磁石40は、焼結磁石である。焼結磁石の例として、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウム-コバルト磁石、および、アルニコ磁石が挙げられる。磁石40は、ロータコア15の収容部20に配置される。
【0039】
ロータ3には、複数の磁石40によって偶数個の磁極Pが構成される。磁石40は、磁極Pがロータ3の周方向DCにおいて等間隔に配置されるように、構成される。一例では、ロータ3には、偶数個の区画Aが設けられる。軸方向DAから見て区画Aは周方向DCに等角度で配置される。複数の区画Aそれぞれには磁石40が設けられる。1つの区画Aには、1つの磁石40、または、2つ以上の磁石40が配置される。1つの区画Aは、第1径方向に延びる第1区画線LA1と、第2径方向に延びる第2区画線LA2とを有する。1つの区画Aに設けられる磁石40は、第1区画線LA1に沿う第1磁石41と、第2区画線LA2に沿う第2磁石42と、第1磁石41の径方向内側端部と第2磁石42の径方向内側端部との間に配置される第3磁石43とを有する。第3磁石43は、径方向においてロータ3の回転軸心Cに向かって凸となるように湾曲する。1つの区画Aに設けられる磁石40は、第1磁石41、第2磁石42、および、第3磁石43が一体成形された構造を有してもよい。1つの区画Aに設けられる磁石40は、第1磁石41と、第2磁石42とによって構成されてもよい。
【0040】
磁石40は、1つの区画Aにおいて、第1区画線LA1および第2区画線LA2から等距離の中間線ML上に磁極中心PCが形成するように、構成される。中間線ML上に、磁石40の磁極中心PCが位置する。第1磁石41、第2磁石42、および、第3磁石43は、極性が異なる2つの第1磁極面S1および第2磁極面S2を有する。一例では、第1磁極面S1はN極を構成する。第2磁極面S2はS極を構成する。1つの区画A内において第1磁石41の第1磁極面S1は、周方向DCにおいて同じ区画A内の第2磁石42に向く。同様に、1つの区画A内において第2磁石42の第1磁極面S1は周方向DCにおいて同じ区画A内の第1磁石41に向く。第3磁石43の第1磁極面S1は、径方向の外方に向く。すなわち、1つの区画A内の第1磁石41、第2磁石42、および第3磁石43それぞれにおいて、同区画A内の磁極Pに向かっている面は、同じ磁極Pを有する。1つの区画Aの磁極Pは、隣接する区画Aの磁極Pと反対の磁極Pを有する。したがって、ロータ3において各区画Aの磁極Pの極性は周方向DCに交互に異なる。
【0041】
<ロータの構造>
ロータコア15の収容部20は、第1端面21を有する。第1端面21は、区画A内において第1区画線LA1に沿うように延伸する。第1端面21は、軸方向DAから見て、収容部20に配置される磁石40の磁極面Sのうちロータ3の磁極Pに面する側の面(本実施形態では、第1磁極面S1)と向かい合っている。第1端面21は、軸方向DAから見て、直線または変曲点のない曲線となるように構成される。具体的には、軸方向DAにおける第1端面21が、軸方向DAから見て、直線または変曲点のない曲線となるように構成される。変曲点のない曲線の例として、円弧、楕円弧、放物線、インボリュート曲線、および、サイクロイド曲線が挙げられる。第1端面21は、他の面(以下では、接続面21Aともいう。)と接続される。他の面(すなわち、接続面21A)の一例は、後述の収容部傾斜面29である。軸方向DAから見て、第1端面21は、不連続に他の面に繋がる。または、軸方向DAから見て、第1端面21は、変曲点を介して他の面に繋がる。他の面(すなわち、接続面21A)は、第1磁極面S1と向かい合うように配置される。
【0042】
収容部20は、さらに、径方向外側に配置されて周方向DCに延伸する第2端面22と、径方向に沿うように延伸する第3端面23とを有する。第2端面22は、接続面21Aと接続される。換言すると、接続面21Aは、第1端面21と第2端面22とを接続する。第3端面23は、収容部20内の空間を介して第1端面21および接続面21Aと向かい合う。第3端面23は、軸方向DAから見て、直線または変曲点のない曲線となるように構成される。一例では、第3端面23は、第1端面21と平行である。区画A内において、第3端面23は、磁極中心PCから第1端面21よりも周方向DCに遠くに配置される。収容部20において第1端面21と第3端面23との間に、第1磁石41が配置される。
【0043】
収容部20は、さらに、磁極中心PCに対して第1端面21と対称の位置にある第4端面24を有する。第4端面24は、区画A内において第2区画線LA2に沿うように延伸する。第4端面24は、軸方向DAから見て、収容部20に配置される磁石40の磁極面Sのうちロータ3の磁極Pに面する側の面(本実施形態では、第1磁極面S1)と向かい合っている。第4端面24は、軸方向DAから見て、直線または変曲点のない曲線となるように構成される。
【0044】
収容部20は、さらに、径方向外側に配置されて周方向DCに延伸する第5端面25と、径方向に沿うように延伸する第6端面26とを有する。第6端面26は、収容部20内の空間を介して第4端面24と向かい合う。一例では、第6端面26は、第4端面24と平行である。区画A内において、第6端面26は、磁極中心PCから第4端面24よりも周方向DCに遠くに配置される。収容部20において第4端面24と第6端面26との間に、第2磁石42が配置される。
【0045】
収容部20は、さらに、第1湾曲面27および第2湾曲面28を有する。第1湾曲面27は、第1端面21の径方向内端と第4端面24の径方向内端とを繋ぐ。第2湾曲面28は、第3端面23の径方向内端と第6端面26の径方向内端とを繋ぐ。収容部20において第1湾曲面27と第2湾曲面28との間に、第3磁石43が配置される。
【0046】
図3を参照して、ロータ3の構造をさらに詳述する。
収容部20は、さらに、次のような構造を有する。ここで、軸方向DAから見て、収容部20に配置される磁石40の磁極面Sから第1端面21に向かう方向は第1方向D1と定義される。軸方向DAから見て、第1方向D1と直交する方向は第2方向D2と定義される。収容部20において、第1磁極面S1と向かい合う第1端面21を含む部位と第3端面23を含む部位との間の第1方向D1の幅は、第1幅W1と定義される。収容部20において、第1磁極面S1と向かい合う接続面21Aを含む部位と第3端面23を含む部位との間の第1方向D1の幅は、第2幅W2と定義される。収容部20において、第2幅W2は、第1幅W1よりも小さい。
【0047】
収容部20において、第1端面21よりもロータ3の外周面3Aに近い第2端面22を含む部位の第1方向D1の幅は、第2幅W2のうちの径方向最外の幅WX2である。収容部20において、第2幅W2のうちの径方向最外の幅WX2は、第1幅W1よりも小さい。
【0048】
本実施形態では、第1幅W1は、第1方向D1において第1端面21を含む複数の部位の平均値と定義される。他の例では、第1幅W1は、第1方向D1において第1端面21を含む部位のうちで最大値として定義される。他の例では、第1幅W1は、第1方向D1において第1端面21を含む部位のうちで最小値として定義されてもよい。他の例では、第1幅W1は、第1方向D1において第1端面21を含む部位のうちの特定の部位における幅として定義されてもよい。例えば、第1方向D1において第1端面21を含む部位のうちで収容部傾斜面29に接続する部分における幅として定義されてもよい。
【0049】
さらに、収容部20は、磁石40の傾斜面45(後述参照)に沿う収容部傾斜面29(接続面21A)を有する。収容部傾斜面29は、接続面21Aの一例である。収容部傾斜面29(接続面21A)は、ロータコア15の外周面3Aに近い第2方向D2の外側の第2端面22の磁極P側から、第2方向D2の内方に離れるように延伸するに従って、収容部20の第1方向D1の幅が増加するように構成される。すなわち、収容部傾斜面29の構造は、次のように換言される。収容部20の収容部傾斜面29(接続面21A)は、収容部20の第1端面21において径方向外側から、径方向の外方へかつ周方向DCにおいて磁極Pから遠ざかるように延伸する。収容部傾斜面29(接続面21A)は、平面でもよいし、凸状の曲面でもよく、凹状の曲面でもよい。例えば、収容部傾斜面29は、軸方向DAから見たときの収容部傾斜面29の端縁が、直線、円弧、楕円弧、放物線、インボリュート曲線、および、サイクロイド曲線となるように構成される。収容部傾斜面29とロータ3の外周面3Aとの間において両者が最も近づいた部分の距離txは、電磁鋼板の厚さと等しい、または、電磁鋼板の厚さよりも大きい。収容部20は、収容部傾斜面29として、第1収容部傾斜面29Aと、第2収容部傾斜面29Bとを有する。第1収容部傾斜面29Aは、第1端面21と第2端面22とを接続する。第2収容部傾斜面29Bは、第4端面24と第5端面25とを接続する。
【0050】
<切欠部>
ロータコア15は、外周面3Aに切欠部30を有する。切欠部30は、回転軸心Cと同軸の仮想円筒に対して、仮想円筒から回転軸心Cに向かって切り欠くように構成される。仮想円筒は所定半径を有する。所定半径は、ロータコア15において回転軸心Cから外周面3Aまでの距離のうちで最も大きい距離と等しい大きさを有する。
【0051】
第1の線L1を、次のように引くとする。すなわち、軸方向DAから見て、収容部20の第1端面21から、周方向DCに収容部20から遠ざかる方向に所定距離tだけ離れた位置で、かつ、ロータコア15の外周面3Aに向かって延伸するように、第1の線L1を仮想的に引くとする。より具体的には、軸方向DAから見て、収容部20の第1端面21から、収容部20が配置される区画Aの磁極P側に向かって周方向DCに所定距離tだけ移動した位置に、外周面3Aに向かって延伸しかつ外周面3Aと交差するように、第1の線L1を仮想的に引くとする。切欠部30は、軸方向DAから見て、切欠部30の一部または全部が第1の線L1に対して回転軸心Cの周方向DCで収容部20側に位置するように構成される。第1の線L1は、軸方向DAから見て第1端面21が直線である場合、直線に延伸される線である。第1の線L1は、軸方向DAから見て第1端面21が変曲点のない曲線である場合、その曲線に応じて延伸される線である。一例では、軸方向DAから見て第1端面21が円弧である場合、第1の線L1は、その円弧の延長線、または接線として構成される。所定距離tは、軸方向DAから見て、ロータコア15の外周面3Aと、収容部20における端面22Xとの距離の最小値と等しい値を有する。本実施形態では、端面22Xは、収容部20において、第2端面22と収容部傾斜面29とを含む。
【0052】
切欠部30は、軸方向DAから見て、切欠部30の一部が第1の線L1に対して回転軸心Cの周方向DCでロータ3の磁極中心PC側に位置するように構成される。
【0053】
ロータ3は、1つの区画Aに、切欠部30として、第1切欠部30Aと、第2切欠部30Bとを有する。第1切欠部30Aは、ロータ3の磁極Pにおいて、磁極Pの磁極中心PCに対して周方向DCの一方に設けられる。第2切欠部30Bは、磁極Pにおいて、磁極Pの磁極中心PCに対して周方向DCの他方に設けられる。
【0054】
図4を参照して、他の形態の切欠部30を説明する。
第2の線L2を、軸方向DAから見て、第1端面21に重なる線をロータコア15の外周面3Aに向かって延伸するように仮想的に引くとする。切欠部30は、軸方向DAから見て、第2の線L2に対して周方向DCで収容部20側に位置するように構成される。
【0055】
<磁石>
磁石40は、磁石40が収容部20に配置された状態において、磁極中心PC側の径方向外端が磁極中心PC側の磁極面S(本実施形態では、第1磁極面S1のうちで磁極P側で径方向に延伸する延伸面45X)よりも磁極中心PCから遠ざかる方向に切り欠かれた構造を有する。
【0056】
具体的には、磁石40において、収容部20の第1端面21と向かい合う部位の第1方向D1の幅は、第3幅W3と定義される。磁石40において、収容部20の接続面21Aと向かい合う部位の第1方向D1の幅は、第4幅W4と定義される。そして、第4幅W4は第3幅W3よりも小さい。なお、ロータコア15の外周面3Aに近い部位の第4幅W4は、磁石40において、収容部20の第2端面22と向かい合う部位の第1方向D1の幅と換言できる。
【0057】
磁石40は、傾斜面45を有する。第1磁極面S1は、傾斜面45と、径方向に延伸する延伸面45Xとを含む。傾斜面45は、第1磁石41において、ロータコア15の外周面3Aに近い第2方向D2の外側端面41Sの磁極側端41Eから、第2方向D2の内方に離れるように延伸するに従って、磁石40の第1方向D1の幅が増加するように構成される。すなわち、傾斜面45の構造は、次のように換言される。磁石40の傾斜面45は、磁石40の磁極面Sのうちロータ3の磁極Pに面する側の面(本実施形態では、第1磁極面S1のうちで磁極P側で径方向に延伸する延伸面45X)の径方向外端から、径方向の外方へかつ周方向DCにおいて磁極Pから遠ざかるように延伸する。傾斜面45は、平面でもよいし、凸状の曲面でもよく、凹状の曲面でもよい。例えば、傾斜面45は、軸方向DAから見たときの傾斜面45の端縁が、直線、円弧、楕円弧、放物線、インボリュート曲線、および、サイクロイド曲線となるように構成される。
【0058】
具体的には、磁石40の傾斜面45は、磁石40が収容部20に配置された状態において、収容部傾斜面29に沿うように構成される。
【0059】
<作用>
本実施形態の作用を説明する。
図5~
図8は、各種のロータ3の断面図である。
図5は、4極6ティースのモータ1の模式断面図である。
図6は、6極9ティースのモータ1の模式断面図である。
図7は、8極12ティースのモータ1の模式断面図である。
図8は、12極15ティースのモータ1の模式断面図である。
【0060】
図5~
図8に示されるように、所定の磁極Pと所定のティース12とが互いに向かい合う状態において、磁石40の外周面付近端部と所定のティース12に隣接するティース12との関係は、モータ1の構造によって異なる。このため、モータ1における磁束密度の高調波成分を低減するための、切欠部30の最適な位置および大きさは、モータ1の構造によって異なる。
【0061】
参考例のロータ3では、切欠部30の全部は、所定の磁極Pの第1端面21に関する第1の線L1に対して回転軸心Cの周方向DCで所定の磁極P側に位置する。本実施形態では、切欠部30の一部または全部は、所定の磁極Pの第1端面21に関する第1の線L1に対して回転軸心Cの周方向DCで収容部20側に位置する。このような構造によって、ロータ3の構造によってモータ1のエアギャップGの設計の自由度が高くなる。そして、モータ1に応じて切欠部30を適切に構成できる。
【0062】
このような切欠部30の構造によって、各モータ1において、ロータ3を次のように構成し易くなる。
図5に示される4極6ティースのモータ1では、モータ1の回転軸心Cと切欠部30の周方向端部30Eとを結ぶ線LXと、回転軸心Cと磁極中心PCとを結ぶ線LYとの間の角度AGは、28度以上32度以下に設定できる。
図6に示される6極9ティースのモータ1では、モータ1の回転軸心Cと切欠部30の周方向端部30Eとを結ぶ線LXと、回転軸心Cと磁極中心PCとを結ぶ線LYとの間の角度AGは、18度以上22度以下に設定できる。
図7に示される8極12ティースのモータ1では、モータ1の回転軸心Cと切欠部30の周方向端部30Eとを結ぶ線LXと、回転軸心Cと磁極中心PCとを結ぶ線LYとの間の角度AGは、13度以上17度以下に設定できる。
図8に示される12極15ティースのモータ1では、モータ1の回転軸心Cと切欠部30の周方向端部30Eとを結ぶ線LXと、回転軸心Cと磁極中心PCとを結ぶ線LYとの間の角度AGは、10度以上14度以下に設定できる。切欠部30の周方向端部30Eは、周方向DCにおいて切欠部30の両端のうちで磁極中心PCから遠い端部を示す(
図2参照)。
【0063】
さらに、本実施形態では、所定の磁石40が収容される収容部20には、収容部傾斜面29が設けられる。このため、切欠部30において、所定の磁極Pの第1端面21に関する第1の線L1に対して回転軸心Cの周方向DCで収容部20側に位置する部分を大きくできる。このような構成によって、所定の磁極Pと所定のティース12とが互いに向かい合う状態において、所定の磁極Pに関する磁石40において磁極中心PC側の径方向外端と所定のティース12に隣接するティース12との間のエアギャップGを大きくできる。この結果、エアギャップGを介するティース12とロータ3の磁石40間におけるギャップ間磁束密度について高調波成分を低減できる。そして、モータ1の鉄損の低減に貢献できる。
【0064】
図9および
図10を参照して、上述のモータ1の使用例を挙げる。モータ1は、例えば圧縮機7の構成要素とされる(
図9参照)。圧縮機7はモータ1を備える。さらに、圧縮機7は、モータ1の動力によって、気体を圧縮する圧縮部8を有する。圧縮部8は、レシプロ構造を有してもよく、スクリュー構造を有してもよく、また、ロータリ構造を有してもよい。圧縮機7の一例として、冷凍サイクルの冷媒を圧縮する圧縮機7が挙げられる。
【0065】
上述のモータ1は、冷凍装置9に使用される。冷凍装置9の例として、空気調和機9X(
図10参照)、給湯器、チラーユニット、庫内の空気を冷却する冷却装置が挙げられる。庫内の空気は、冷蔵庫、冷凍庫、コンテナなどの内部の空気を示す。これら冷凍装置9は圧縮機7を備える。モータ1は、冷凍装置9の圧縮機用モータとして使用される。空気調和機9Xにおいて、モータ1は、室外機9Aまたは室内機9Bのファン用モータとして使用されてもよい。
【0066】
<効果>
本実施形態の効果を説明する。
(1)ロータ3において、ロータコア15は、ロータコア15の外周面3Aに切欠部30を有する。ロータ3の収容部20において、第2幅W2は第1幅W1よりも小さい。この構成によれば、ロータ3の外周面3Aにおける磁石40付近に、ロータ3とステータ2との間のギャップの幅が拡大する部分が設けられる。これによって、磁束密度の高調波成分を低減できるため、モータ1のエネルギー効率の向上に寄与できる。また、収容部20に収容できる磁石40について、磁石40の径方向中間部位40Aの第1方向D1における幅を第2幅W2よりも大きくできる。例えば、第1磁石41の径方向中間部位40Aの第1方向D1における幅を大きくできる。
【0067】
(2)軸方向DAから見て、ロータコア15の外周面3Aと収容部20における端面22Xとの距離の最小値を所定距離tと定義する。収容部20の第1端面21から、周方向DCに収容部20から遠ざかる方向に所定距離tだけ離れ、ロータコア15の外周面3Aに向かって延伸した第1の線L1を仮想的に引くとする。この場合、切欠部30は、切欠部30の一部または全部が第1の線L1に対して回転軸心Cの周方向DCで収容部20側に位置するように構成される。
【0068】
この構成によれば、ロータ3の外周面3Aにおける磁石40付近に、ロータ3とステータ2との間のギャップの幅が拡大する部分が設けられる。これによって、磁束密度の高調波成分を低減できるため、モータ1のエネルギー効率の向上に寄与できる。
【0069】
(3)第1端面21に重なる線をロータコア15の外周面3Aに向かって延伸した第2の線L2を仮想的に引くとする。この場合、切欠部30の一部または全部は、軸方向DAから見て、第2の線L2に対して周方向DCで収容部20側に位置するように構成される。この構成によれば、第2の線L2に対して周方向DCで収容部20側に位置しないように構成される切欠部30に比べて、切欠部30の設計自由度を向上できる。
【0070】
(4)切欠部30は、軸方向DAから見て、切欠部30の一部が第1の線L1に対して回転軸心Cの周方向DCでロータ3の磁極中心PC側に位置するように構成される。この構成によれば、切欠部30が第1の線L1に対して回転軸心Cの周方向DCでロータ3の磁極中心PC側に位置しないように構成される場合に比べて、切欠部30の設計自由度を向上できる。
【0071】
(5)磁石40において、第4幅W4は第3幅W3よりも小さい。この構成によれば、磁石40の径方向中間部位40Aについて第1方向D1における幅を第4幅W4よりも大きくできる。
【0072】
(6)磁石40は、傾斜面45を有する。傾斜面45は、ロータコア15の外周面3Aに近い第2方向D2の端面(外側端面41S)から、第2方向D2に離れるに従って、第1方向D1の幅が増加するように構成される。収容部20は、磁石40の傾斜面45に沿う収容部傾斜面29を有する。この構成によれば、磁石40における径方向中間部位40Aの第1方向D1における幅を大きくしながら、切欠部30付近においてロータコア15の厚みを確保できる。これによって、ロータコア15の強度を維持できる。
【0073】
また、このような傾斜面45によって、磁石40の欠けを抑制できる。特に、磁石40が焼結成形の場合、磁石40の欠けの抑制効果が大きい。
【0074】
また、このような傾斜面45によって、次の効果もある。磁石40の第1端面21と第2端面22とが直交する矩形の磁石40の場合に比べて、径方向においてロータコア15に接触する面の面積を大きくできる。このため、参考例の矩形の磁石40に比べて、ロータ3が回転するとき、ロータコア15が磁石40の遠心力を受ける面積を大きくできるため、ロータコア15の形状劣化(遠心力にともなう形状の変化)を抑制できる。
【0075】
切欠部30は、磁石40の傾斜面45に沿わないように構成することもできる。例えば、磁石40の傾斜面45から切欠部30までのロータコア15の厚みが大きくなるように、切欠部30を構成できる。しかし、この場合、磁石40から上述の隣接のティース12への磁束漏れが増大する虞がある。この点、上記構成によれば、磁石40の傾斜面45から切欠部30までのロータコア15の厚みが大きくなり過ぎないため、磁束漏れを小さくできる。
【0076】
(7)ロータ3は、切欠部30として、第1切欠部30Aと、第2切欠部30Bとを有する。第1切欠部30Aは、ロータ3の磁極Pにおいて、磁極Pの磁極中心PCに対して周方向DCの一方に設けられ、第2切欠部30Bは、磁極Pにおいて、磁極Pの磁極中心PCに対して周方向DCの他方に設けられる。この構成によれば、正逆方向に回転するモータ1において、モータ効率の向上に貢献できる。
【0077】
(8)モータ1はロータ3を備える。この構成によれば、モータ効率を向上できる。
【0078】
(9)圧縮機7は、上述の構造のモータ1を備える。この構成によれば、圧縮機7のエネルギー効率を向上できる。
【0079】
(10)冷凍装置9は、上述の構造のモータ1を備える。この構成によれば、冷凍装置9のエネルギー効率を向上できる。
【0080】
(変形例)
本開示のロータ3、モータ1、モータ1を備える圧縮機7、および、冷凍装置9は、上記各実施の形態以外に、例えば以下に示される変形例、及び相互に矛盾しない少なくとも二つの変形例を組み合わせた形態としてもよい。
【0081】
・上記実施形態では、ロータ3は、切欠部30として1つの区画Aに第1切欠部30Aと第2切欠部30Bとを有する。これに対して、ロータ3において、切欠部30は、ロータ3の磁極Pにおいて、磁極Pの磁極中心PCに対して周方向DCの一方に設けられてもよい。具体的には、ロータ3は、1つの区画Aにおいて第1切欠部30Aおよび第2切欠部30Bのうち一方を有する。この構成によれば、上記構成のロータ3が一方向のみに回転するモータ1に使用される場合、参考例のロータ3が使われる場合に比べて、そのモータ1のトルクを向上できる。参考例のロータ3は、周方向DCにおいて、磁極中心PCに対して一方側に位置する磁石の付近および他方側に位置する磁石の付近それぞれに切欠部30(第1切欠部30Aおよび第2切欠部30B)を有する。
【0082】
・
図11を参照して、ロータ3の変形例を説明する。
第1磁石41は、4隅に傾斜面45を有してもよい。この構成によって、磁石40の欠けを抑制できる。第2磁石42は、第1磁石41と同様に、4隅に傾斜面45を有してもよい。
【0083】
・
図12を参照して、ロータ3の変形例を説明する。
磁石40の傾斜面45は、第1磁石41において、ロータコア15の外周面3Aに近い第2方向D2の外側端面41Sの磁極側端41Eから、第2方向D2の内方に離れるように延伸するに従って、磁石40の第1方向D1の幅が増加するように構成される。そして、磁石40の傾斜面45は、軸方向DAから見て、磁石40から磁石40を配置する収容部20に向かって凸となる曲面45Aを有する。収容部20は、磁石40の曲面45Aに沿う収容部曲面29Rを有する。収容部曲面29Rは、接続面21Aの一例である。この構成によれば、上記(6)に準じた効果を奏する。この場合、ロータ3の切欠部30において、収容部20の第1端面21に関する第1の線L1に対して周方向DCで収容部20側に位置する部分は、磁石40の曲面45Aまたは収容部20の収容部曲面29R(接続面21A)に沿うように構成されてもよい。
【0084】
・
図13を参照して、ロータ3の変形例を説明する。
磁石40は、磁石切欠部49を有してもよい。この場合、ロータ3の切欠部30を、切欠部30の一部が第1の線L1に対して周方向DCで収容部20側に位置するように構成し易い。磁石切欠部49は、磁石40の磁極面Sのうちロータ3の磁極Pに面する側の面(本実施形態では、第1磁極面S1)において、ロータ3の外周面3Aに近い部分に設けられる。軸方向DAからみて、磁石切欠部49は、矩形に切り欠かれてもよく、円弧上に切り欠かれてもよい。この構成によれば、磁石40における径方向中間部位40Aの第1方向D1における幅を大きくしながら、磁石切欠部49付近においてロータコア15の厚みを確保できる。これによって、ロータコア15の強度を維持できる。
【0085】
この場合、収容部20において、磁石切欠部49に向く面は、磁石40の磁石切欠部49から所定距離tまたは所定距離t以上の距離を隔てるようにして磁石切欠部49に沿うように構成されてもよい。磁石切欠部49に向く面は、接続面21Aの一例である。さらに、ロータ3の切欠部30において、収容部20の第1端面21に関する第1の線L1に対して周方向DCで収容部20側に位置する部分は、磁石切欠部49または収容部20において磁石切欠部49に向く面(接続面21A)に沿うように構成されてもよい。
【0086】
・以上、モータ1のロータ3、モータ1、および、モータ1について実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載されたモータ1のロータ3、モータ1、および、モータ1の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0087】
C…回転軸心、D1…第1方向、D2…第2方向、DA…軸方向、DC…周方向、L1…第1の線、L2…第2の線、P…磁極、PC…磁極中心、S…磁極面、t…所定距離、W1…第1幅、W2…第2幅、W3…第3幅、W4…第4幅、1…モータ、3…ロータ、3A…外周面、7…圧縮機、15…ロータコア、20…収容部、21…第1端面、21A…接続面、22…第2端面、29…収容部傾斜面、29R…収容部曲面、30…切欠部、30A…第1切欠部、30B…第2切欠部、40…磁石、45…傾斜面、45A…曲面。