(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139736
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】積層体および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 7/023 20190101AFI20241002BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20241002BHJP
H01L 33/48 20100101ALI20241002BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B32B7/023
B32B27/34
H01L33/48
G09F9/00 338
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024045518
(22)【出願日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2023050536
(32)【優先日】2023-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 里沙乃
(72)【発明者】
【氏名】青島 健太
(72)【発明者】
【氏名】有本 由香里
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 大地
【テーマコード(参考)】
4F100
5F142
5G435
【Fターム(参考)】
4F100AG00A
4F100AK01B
4F100AK49B
4F100BA02
4F100CA07B
4F100EJ61
4F100GB41
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4F100JL11
4F100JN01A
4F100YY00B
5F142AA54
5F142BA32
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5F142CD02
5F142CD13
5F142CD16
5F142CD17
5F142FA32
5F142GA02
5G435AA17
5G435BB04
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】微細かつ高密度に搭載された半導体素子を、デブリの発生なく、かつ、半導体素子の高さの2倍以上の距離を半導体素子が飛翔しても高い位置精度で転写可能な積層体、および当該積層体を用いた半導体素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、光透過性を有する第一の基板と、樹脂膜が順に積層された積層体であって、該樹脂膜の、200~1100nmのいずれかの波長における膜厚1.0μm換算時の吸光度が0.4以上、5.0以下であり、さらに、該樹脂膜の、前記第一の基板と接する面とは反対側の表面から深さ500~1000nmにおける、25℃での平均弾性率が0.06GPa以上、1.0GPa以下である、積層体に関する。
【選択図】
図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する第一の基板と、樹脂膜が順に積層された積層体であって、
該樹脂膜の、200~1100nmのいずれかの波長における膜厚1.0μm換算時の吸光度が0.4以上、5.0以下であり、
さらに、該樹脂膜の、前記第一の基板と接する面とは反対側の表面から深さ500~1000nmにおける、25℃での平均弾性率が0.06GPa以上、1.0GPa以下である、積層体。
【請求項2】
光透過性を有する第一の基板と、樹脂膜と半導体素子がこの順に積層された積層体であって、
該樹脂膜の、200~1100nmのいずれかの波長における膜厚1.0μm換算時の吸光度が0.4以上、5.0以下であり、
さらに、該樹脂膜の、前記第一の基板と接する面とは反対側の表面から深さ500~1000nmにおける、25℃での平均弾性率が0.06GPa以上、1.0GPa以下である、積層体。
【請求項3】
前記樹脂膜の、248nm、266nm、308nm、355nm、532nmおよび1064nmのいずれかの波長における膜厚1.0μm換算時の吸光度が0.4以上、5.0以下である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記樹脂膜の、248nm、266nmおよび355nmのいずれかの波長における膜厚1.0μm換算時の吸光度が0.4以上、5.0以下である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項5】
前記樹脂膜の膜厚が8.0μm以上、23.0μm以下である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項6】
前記樹脂膜の、前記第一の基板と接する面とは反対側の表面の接着強度が0.02N/cm以上、0.3N/cm以下である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項7】
前記半導体素子の、前記樹脂膜への埋まりこみ深さが0.1μm以上、2.0μm以下である、請求項2に記載の積層体。
【請求項8】
前記樹脂膜の、前記第一の基板と接する面とは反対側の表面から深さ20~40nmにおける、25℃での平均弾性率が1.0GPa以上、7.0GPa以下である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項9】
前記樹脂膜が、下記式(1)の繰り返し構造単位を有するポリイミド、下記式(2)の繰り返し構造単位を有するポリイミド前駆体、下記式(3)の繰り返し構造単位を有するポリベンゾオキサゾール、下記式(4)の繰り返し構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体、および、それらの共重合体からなる群より選択される1種類以上の樹脂を含有する、請求項1または2に記載の積層体。
【化1】
(式(1)~式(4)中、R
1、R
3、R
7およびR
9はそれぞれ独立に炭素数6~40の4価の有機基を表し、R
2、R
4、R
6およびR
8はそれぞれ独立に炭素数2~40の2価の有機基を表す。R
5は水素原子または炭素数1~20の1価の有機基を表す。)
【請求項10】
前記樹脂が、下記式(5)で表されるジメチルシロキサン構造および下記式(6)で表されるジフェニルシロキサン構造の少なくとも一方を有する、請求項9に記載の積層体。
【化2】
(式(5)および式(6)中、lおよびmはそれぞれ独立に4~40の整数を表す。)
【請求項11】
前記樹脂が、前記式(1)の繰り返し構造単位を有するポリイミドを含み、
前記式(1)の繰り返し構造単位を有するポリイミドが、前記式(1)の繰り返し構造単位を有するポリイミドの全酸二無水物残基100モル%中、下記式(7)で表される酸二無水物残基を20モル%以上100モル%以下で含み、かつ、
前記式(1)の繰り返し構造単位を有するポリイミドの全ジアミン残基100モル%中、下記式(8)で表されるジアミン残基を60モル%以上100モル%以下で含む、請求項9に記載の積層体。
【化3】
(式(7)中、*は結合手を表し、Xは単結合、-CH
2-、-SO
2-又は-CO-を表す。式(8)中、*は結合手を表し、nは4~40の整数を表し、R
10およびR
11は、それぞれ独立に炭素数1~30のアルキレン基またはフェニレン基を示す。)
【請求項12】
前記樹脂膜の1%重量減少温度が300℃以上である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項13】
前記樹脂膜が、紫外線吸収剤および色素の少なくとも一方を含有する、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項14】
請求項2に記載の積層体を用いる半導体装置の製造方法であって、
前記積層体の、前記半導体素子が積層されている面に対向させて第二の基板を配置する工程と、
前記積層体に対し、前記第一の基板側からレーザー光を照射して、前記半導体素子を前記第二の基板へ転写する工程を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記レーザー光が、248nm、266nm、308nm、355nm、532nmおよび1064nmのいずれかの波長のレーザー光を有する、請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記第二の基板が回路基板である、請求項14または15に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体および半導体装置の製造方法に関する。より詳しくは、半導体素子をレーザー転写により実装する際に好適に用いられる積層体、および当該積層体を使用した半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に半導体装置に組み込まれる素子は、回路基板などにフリップチップボンダーなどを使用したピックアンドプレース法で移載・実装される。近年では半導体装置の高性能化、小型化が進んでおり、それに伴い、半導体装置内に組み込まれる素子も、小型化、薄型化され、また、半導体装置内に実装される素子の個数も増えてきている。近年、半導体素子の一種である発光ダイオード(LED)、中でも特に1辺が十数~数μmほどの小さいLEDであるマイクロLEDを各画素に配列したディスプレイが、高輝度、低消費電力、高画質であるため注目されている。このマイクロLEDディスプレイを製造するにあたり、上記の実装方式では時間がかかりすぎるため、新たな手法が検討されている。
【0003】
小型半導体素子を多数実装する手法として、支持基板上に粘着層を有する積層体に、粘着層の支持基板側とは反対の面に半導体素子を搭載して積層体を準備したのち、該積層体の支持基板側からレーザーを照射することで、積層体から一定の距離をもって離れた下方に位置する回路基板等の対向基板に、半導体素子を目的の半導体素子間隔となるように選択的に転写・実装するレーザー転写技術が提案されている。この手法は、積層体および/または対向基板のステージを高速に移動させながらレーザーを照射することで、半導体素子を高速かつ広範囲に転写できる利点を持つ。なお、「転写」とは、半導体素子が、元の基板から別の基板に移載されることを表す。
【0004】
該レーザー転写技術として、膜厚が0.1μm以上、0.5μm以下の薄膜の粘着層を適用した積層体を用い、レーザー照射により支持基板と半導体素子の間に存在する粘着層をすべてアブレーションさせ、消失させることで、半導体素子上の粘着層残渣もすべて除去しながら対向基板への半導体素子の転写を可能とする転写技術が挙げられる(例えば、特許文献1)。また、レーザー照射により、支持基板と粘着層の界面に位置する粘着層をアブレーションさせ、それによって発生したガスが粘着層と支持基板の界面に溜まって空隙(ブリスター)を形成し、粘着層の形状変化により、素子が剥がれ落ちて分離することで、半導体素子を対向基板に転写する技術も挙げられる(例えば、特許文献2)。さらに、吸光度と接着強度を制御した粘着層を適用することで、粘着層の残膜なく、半導体素子を転写する技術も挙げられる(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-188037号公報
【特許文献2】国際公開第2022/153745号
【特許文献3】国際公開第2022/210155号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、粘着層の半導体素子表面の残渣を回避するため、過剰なレーザー光を照射し、粘着層をすべてアブレーションで除去する必要があり、粘着層の飛散による対向基板の汚損や、半導体素子が破損するなどのダメージが課題であった(以降、半導体素子表面の粘着層の残渣を糊残り、飛散した粘着層の残渣をデブリと呼ぶことがある)。特許文献2および3では、残渣やデブリの発生を抑制しながら半導体素子を転写できる一方、マイクロLEDといった微細かつ高密度に搭載された半導体素子を、精度高く転写するには不十分であった。さらに、レーザー転写時のスループット性向上には、積層体および/または対向基板のステージを高速に移動させながらレーザーを照射する必要があり、積層体と対向基板が接触することなく移動可能となるように間隔をあけることが求められる。この時、マイクロLEDといった微細な半導体素子の場合、半導体素子自体の高さの2倍以上の距離を半導体素子が飛翔しても、高い位置精度で転写される必要がある。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みて、微細かつ高密度に搭載された半導体素子を、デブリの発生なく、かつ、半導体素子の高さの2倍以上の距離を半導体素子が飛翔しても高い位置精度で転写可能な積層体、および当該積層体を用いた半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を達成するため、本発明は、以下の1~16に関する。
1.光透過性を有する第一の基板と、樹脂膜が順に積層された積層体であって、
該樹脂膜の、200~1100nmのいずれかの波長における膜厚1.0μm換算時の吸光度が0.4以上、5.0以下であり、
さらに、該樹脂膜の、前記第一の基板と接する面とは反対側の表面から深さ500~1000nmにおける、25℃での平均弾性率が0.06GPa以上、1.0GPa以下である、積層体。
2.光透過性を有する第一の基板と、樹脂膜と半導体素子がこの順に積層された積層体であって、
該樹脂膜の、200~1100nmのいずれかの波長における膜厚1.0μm換算時の吸光度が0.4以上、5.0以下であり、
さらに、該樹脂膜の、前記第一の基板と接する面とは反対側の表面から深さ500~1000nmにおける、25℃での平均弾性率が0.06GPa以上、1.0GPa以下である、積層体。
3.前記樹脂膜の、248nm、266nm、308nm、355nm、532nmおよび1064nmのいずれかの波長における膜厚1.0μm換算時の吸光度が0.4以上、5.0以下である、前記1または2に記載の積層体。
4.前記樹脂膜の、248nm、266nmおよび355nmのいずれかの波長における膜厚1.0μm換算時の吸光度が0.4以上、5.0以下である、前記1~3のいずれか1に記載の積層体。
5.前記樹脂膜の膜厚が8.0μm以上、23.0μm以下である、前記1~4のいずれか1に記載の積層体。
6.前記樹脂膜の、前記第一の基板と接する面とは反対側の表面の接着強度が0.02N/cm以上、0.3N/cm以下である、前記1~5のいずれか1に記載の積層体。
7.前記半導体素子の、前記樹脂膜への埋まりこみ深さが0.1μm以上、2.0μm以下である、前記2~6のいずれか1に記載の積層体。
8.前記樹脂膜の、前記第一の基板と接する面とは反対側の表面から深さ20~40nmにおける、25℃での平均弾性率が1.0GPa以上、7.0GPa以下である、前記1~7のいずれか1に記載の積層体。
9.前記樹脂膜が、下記式(1)の繰り返し構造単位を有するポリイミド、下記式(2)の繰り返し構造単位を有するポリイミド前駆体、下記式(3)の繰り返し構造単位を有するポリベンゾオキサゾール、下記式(4)の繰り返し構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体、および、それらの共重合体からなる群より選択される1種類以上の樹脂を含有する、前記1~8のいずれか1に記載の積層体。
【0009】
【0010】
(式(1)~式(4)中、R1、R3、R7およびR9はそれぞれ独立に炭素数6~40の4価の有機基を表し、R2、R4、R6およびR8はそれぞれ独立に炭素数2~40の2価の有機基を表す。R5は水素原子または炭素数1~20の1価の有機基を表す。)
10.前記樹脂が、下記式(5)で表されるジメチルシロキサン構造および下記式(6)で表されるジフェニルシロキサン構造の少なくとも一方を有する、前記9に記載の積層体。
【0011】
【0012】
(式(5)および式(6)中、lおよびmはそれぞれ独立に4~40の整数を表す。)
11.前記樹脂が、前記式(1)の繰り返し構造単位を有するポリイミドを含み、
前記式(1)の繰り返し構造単位を有するポリイミドが、前記式(1)の繰り返し構造単位を有するポリイミドの全酸二無水物残基100モル%中、下記式(7)で表される酸二無水物残基を20モル%以上100モル%以下で含み、かつ、
前記式(1)の繰り返し構造単位を有するポリイミドの全ジアミン残基100モル%中、下記式(8)で表されるジアミン残基を60モル%以上100モル%以下で含む、前記9または10に記載の積層体。
【0013】
【0014】
(式(7)中、*は結合手を表し、Xは単結合、-CH2-、-SO2-又は-CO-を表す。式(8)中、*は結合手を表し、nは4~40の整数を表し、R10およびR11は、それぞれ独立に炭素数1~30のアルキレン基またはフェニレン基を示す。)
12.前記樹脂膜の1%重量減少温度が300℃以上である、前記1~11のいずれか1に記載の積層体。
13.前記樹脂膜が、紫外線吸収剤および色素の少なくとも一方を含有する、前記1~12のいずれか1に記載の積層体。
14.前記2~13のいずれか1に記載の積層体を用いる半導体装置の製造方法であって、
前記積層体の、前記半導体素子が積層されている面に対向させて第二の基板を配置する工程と、
前記積層体に対し、前記第一の基板側からレーザー光を照射して、前記半導体素子を前記第二の基板へ転写する工程を有する、半導体装置の製造方法。
15.前記レーザー光が、248nm、266nm、308nm、355nm、532nmおよび1064nmのいずれかの波長のレーザー光を有する、前記14に記載の半導体装置の製造方法。
16.前記第二の基板が回路基板である、前記14または15に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の積層体によれば、微細かつ高密度に搭載された半導体素子を、デブリの発生なく、かつ、半導体素子の高さの2倍以上の距離を半導体素子が飛翔しても高い位置精度で転写できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第二の積層体の作製方法を例示する図である。
【
図2】
図2は、仮接着剤を利用した、第二の積層体の作製方法を例示する図である。
【
図3】
図3は、レーザーリフトオフを利用した第二の積層体の作製方法を例示する図である。
【
図4】
図4は、半導体素子の樹脂膜への埋まりこみ深さを例示する図である。
【
図5】
図5は、半導体基板を利用した、第二の積層体の別の作製方法を例示する図である。
【
図6】
図6は、半導体装置の製法方法における、第二の積層体の半導体素子面と第二の基板を対向させる工程を例示する図である。
【
図7A】
図7Aは、レーザー光を照射して、半導体素子を第二の基板へ転写する工程を例示する図である。
【
図7B】
図7Bは、レーザー光を照射して、半導体素子を第二の基板へ転写する工程を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る積層体は、光透過性を有する第一の基板と、樹脂膜が順に積層された積層体であって、該樹脂膜の、200~1100nmのいずれかの波長における膜厚1.0μm換算時の吸光度が0.4以上、5.0以下であり、さらに、該樹脂膜の、前記第一の基板と接する面とは反対側の表面から深さ500~1000nmの領域における、25℃での平均弾性率が0.06GPa以上、1.0GPa以下である、積層体である。本態様の積層体を以降、第一の積層体と呼ぶ。本発明の実施形態に係る第一の積層体、および、後述の本発明の実施形態に係る第二の積層体を総称して、単に本発明の実施形態に係る積層体と呼ぶことがある。
【0018】
以下に本発明の実施形態に係る第一の積層体の構成について説明する。
光透過性を有する第一の基板とは、少なくとも200~1100nmのいずれかの波長における吸光度が0.1以下である基板のことをいう。200~1100nmのいずれかの波長において吸光度が特定範囲内にあるとは、例えば、波長200~1100nmの範囲で吸光度を測定した際に、波長が整数値である場合の吸光度について、少なくとも1つの値の波長における吸光度が特定範囲内にあればよい。このような吸光度を有する基板としては、石英、サファイア、アルカリガラス、無アルカリガラス、ほうケイ酸ガラス等の無機基板が挙げられる。基板の厚みは上記の吸光度を損なわない範囲で選択することができ、例えば0.1mm~5.0mmが好ましい。すなわち、基板の取り扱いやすさの観点から基板の厚みは0.3mm以上がより好ましい。一方、入手しやすさや汎用性の観点から基板の厚みは2.0mm以下がより好ましい。なお、第一の基板は、後述する第一の基板の側からのレーザー光の照射に用いるレーザー光が透過する基板であることが望ましい。
【0019】
光透過性を有する第一の基板には、PETやアラミド、ポリエステル、ポリプロピレン、シクロオレフィンなどの有機基板を用いることも可能である。有機基板を用いる場合の基板の厚みは、上記の吸光度を損なわない範囲で選択することができ、例えば0.05mm~3.0mmが好ましい。基板の取り扱いやすさの観点から、基板の厚みは0.1mm以上がより好ましい。一方、レーザー照射時の光散乱を抑制できることから基板の厚みは1.0mm以下がより好ましい。
【0020】
次に樹脂膜について説明する。
樹脂膜は少なくとも樹脂を含有する膜であり、200~1100nmのいずれかの波長における膜厚1.0μm換算時の吸光度が0.4以上、5.0以下である。前記吸光度が0.4以上であることで、光透過性を有する第一の基板側から樹脂膜側にレーザー光を照射して半導体素子を対向基板に転写する際に、照射したレーザー光を第一の基板との界面に位置する樹脂膜が集中的に吸収し、アブレーションが効率よく発生し、それに伴い第一の基板と樹脂膜の界面に樹脂膜の分解ガスが急激に発生し、第一の基板と樹脂膜の界面に空隙が生じる。この空隙の内圧が瞬間的に高くなることで発生した樹脂膜の運動エネルギーが効率よく半導体素子まで伝搬し、精度高く転写することができる。樹脂膜の、より第一の基板との界面側でレーザー光を集中的に吸収できるようになり、樹脂膜の運動エネルギーが大きくなりやすいために、低エネルギー密度のレーザー光での転写も可能となって加工マージンが広がるため、前記吸光度は0.6以上がさらに好ましい。また、材料設計の観点から前記吸光度が4.5以下であることが好ましく、汎用性のある樹脂を使用できることから、さらに好ましくは4.0以下である。
【0021】
樹脂膜に含有される樹脂としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ウレタン樹脂、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アラミド樹脂、ポリシロキサン、ポリイミドシロキサンなど、200~1100nmのいずれかの波長に吸収がある樹脂が挙げられるが、この限りではない。
【0022】
これらの樹脂は構造中に共役構造を有していることが好ましい。前記樹脂が共役構造を有することで、200~1100nmの膜厚1.0μm換算時の吸光度を0.4以上、5.0以下の範囲に調整することができる。共役構造を有する構造としては、芳香族構造が挙げられ、中でも、ビフェニル、イミド、ベンゾオキサゾール、ベンゾフェノンなどの構造を有していることが好ましい。上記の吸光度は、樹脂を構成する全てのモノマー残基を100モル%としたとき、モノマー残基の60モル%以上を、共役構造を有するモノマー残基とすることで達成できる。これらの樹脂は、樹脂膜中に単独で含有されてもよいし、複数含有されてもよい。
【0023】
上記の吸光度は、樹脂膜中に紫外線吸収剤や色素、染料、顔料などの添加剤を含有させることでも達成することが可能である。樹脂膜の吸光度を上げることができ、効率よくアブレーションすることができることから、前記樹脂膜が、紫外線吸収剤および色素の少なくとも一方を含有することが好ましい。樹脂膜に含有される紫外線吸収剤や色素の例としては、TinuvinPS、Tinuvin99-2、Tinuvin326、Tinuvin328、Tinuvin384-2、Tinuvin400、Tinuvin405、Tinuvin460、Tinuvin477、Tinuvin479、Tinuvin900、Tinuvin928、Tinuvin1130(以上商品名、BASF社製)、DAINSORB T-0、DAINSORB T-7、DAINSORB T-31、DAINSORB T-52、DAINSORB T-53、DAINSORB T-84、DAINSORB P-6、DAINSORB P-7(以上商品名、大和化学工業株式会社製)などの紫外線吸収剤、Solvent Yellow93、Solvent Yellow33、Solvent Orange60、Solvent Red111、Solvent Red135、Solvent Red168、Solvent Red207、Solvent Red52、Solvent Red179、Solvent Blue36、Solvent Blue94、Solvent Blue63、Solvent Blue104、Solvent Blue97、Solvent Green20、Solvent Violet13、Solvent Violet36(以上商品名、東京化成工業株式会社製)、カーボンブラック、ペリレンブラック、シアニンブラック、アニリンブラックなどの色素、染料および顔料などが挙げられる。これらは、樹脂膜中に単独で含有されていてもよく、複数種含有されてもよい。
【0024】
なかでも、樹脂膜はベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、および、ベンゾエート系化合物からなる群より選択される一種類以上を含有することが好ましい。これらの化合物は耐熱性が高いことから、樹脂膜の加熱硬化時に分解しにくい。また、200~400nmの範囲の波長に対して吸収を持つため、200~400nmの範囲の波長のレーザー光を用いてレーザー転写する際に、効率よくレーザー光を吸収でき、比較的エネルギー密度が小さいレーザー光でも精度高く転写することができる。
【0025】
吸光度を上記範囲にするための前記添加剤の含有量は、樹脂膜100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、また、積層体を形成する前のワニスの状態における安定性の観点から、50質量部以下が好ましい。
【0026】
本発明の実施形態における樹脂膜が上記吸光度を満たす波長は、好ましくは、248nm、266nm、308nm、355nm、532nmおよび1064nmのいずれか1以上の波長である。該樹脂膜が上記吸光度を満たす波長は、さらに好ましくは248nm、266nmおよび355nmのいずれか1以上である。
【0027】
該樹脂膜の、248nm、266nm、308nm、532nmおよび1064nmのいずれか1以上の波長における膜厚1.0μm換算時の吸光度が0.4以上、5.0以下であることが好ましく、さらに該樹脂膜の、248nm、266nmおよび355nmのいずれかの波長における膜厚1.0μm換算時の吸光度が0.4以上、5.0以下であることが好ましい。これらの波長において該樹脂膜の吸光度が上述の範囲で満たすことによって、レーザー光を効率よく吸収するため、本積層体を用いたレーザー転写の際に、比較的エネルギー密度の低いレーザー光を適用した場合でも、精度高く転写することができる。
【0028】
本発明の実施形態に係る積層体は、該樹脂膜の、前記第一の基板と接する面とは反対側の表面から深さ500~1000nmの領域における、25℃での平均弾性率(以下、樹脂膜のバルク弾性率と呼ぶ。)が0.06GPa以上、1.0GPa以下である。バルク弾性率は、本積層体を用いたレーザー転写の際に、樹脂膜のアブレーションにより発生した樹脂膜の運動エネルギーが転写方向に効率的に伝達されるかの指標となる物性である。バルク弾性率が0.06GPa以上であることによって、本積層体を用いたレーザー転写の際に、樹脂膜のアブレーションにより発生した樹脂膜の運動エネルギーが樹脂膜内に拡散して発散されることを抑制し、半導体素子の転写方向にエネルギーが効率よく伝達され、特に、半導体素子と対向基板の間の距離が半導体素子の高さの2倍以上開いている状態でも精度高くレーザー転写することができる。より効率よくエネルギーを伝達し、位置精度を上げることができることから、バルク弾性率は0.10GPa以上がより好ましく、0.20GPa以上がさらに好ましい。また、前記弾性率が1.0GPa以下であることによって、本積層体を用いたレーザー転写の際に、エネルギー密度の低いレーザー光を適用した場合でも、樹脂膜のアブレーションにより発生したエネルギーが十分に伝達され、高い位置精度で転写することができる。より位置精度を上げることができることから、バルク弾性率は0.80GPa以下がより好ましく、0.60GPa以下がさらに好ましい。
【0029】
バルク弾性率の測定は、ナノインデンテーション測定により実施できる。第二の積層体の場合は、弾性率測定に必要な範囲の半導体素子を物理的に取り除き、樹脂膜表面を露出させることで測定できる。半導体素子の除去方法は、直接ピンセットなどで取り除く方法、ダイシングテープなどの接着強度の強い基板やフィルムを半導体素子上面に重ね合わせ剥がしとる方法などが挙げられる。バルク弾性率の測定は、Berkovich圧子(三角錐ダイヤモンド圧子)を用い、25℃±2℃、大気下において、樹脂膜の表面から光透過性を有する第一の基板側へ垂直に押し込んだのち、除荷をする押し込み負荷/除荷試験で実施する。この際、連続剛性測定法を用いて、測定周波数100Hzで測定する。得られる荷重―押し込み深さ線図より、樹脂膜表面から深さ500~1000nmの値の平均値から弾性率を算出する。
【0030】
樹脂膜のバルク弾性率を上記の範囲とするには、樹脂膜に架橋剤が含有されることが好ましい。架橋剤の添加によって、樹脂膜中の構造を一部架橋させて、バルク弾性率を調整することができる。
【0031】
架橋剤の種類としては、100℃以上、300℃以下で加熱して架橋反応が起きる化合物であれば種類は問わないが、エポキシ基、オキセタニル基、アルコキシメチル基またはメチロール基などの官能基を有する化合物が例示される。該官能基を1分子当たり2つ以上有する化合物が好ましく、3つ以上有することがより好ましく、5つ以上有することがさらに好ましい。該官能基を1分子当たり2つ以上有することで架橋密度をあげ、樹脂膜のバルク弾性率を上記の範囲に調整しやすい。さらに、該官能基当量が、50g/eq.以上、150g/eq.以下であることで、架橋密度を向上させ、樹脂膜のバルク弾性率を上記の範囲に調整しやすいため、好ましい。また、1分子当たり芳香環を1つ以上有する前記化合物が好ましい。1分子当たり1つ以上芳香環を有することで、架橋点が剛直化し、樹脂膜のバルク弾性率を上記の範囲に調整しやすいため、好ましい。上記効果を得る観点から、1分子当たり芳香環を2つ以上有する前記化合物がより好ましい。
【0032】
架橋剤の例としては、アルコキシメチル基またはメチロール基を有する化合物として、DML-PC、DML-PEP、DML-OC、DML-OEP、DML-34X、DML-PTBP、DML-PCHP、DML-OCHP、DML-PFP、DML-PSBP、DML-POP、DML-MBOC、DML-MBPC、DML-MTrisPC、DML-BisOC-Z、DMLBisOCHP-Z、DML-BPC、DML-BisOC-P、DMOM-PC、DMOM-PTBP、DMOM-MBPC、TriML-P、TriML-35XL、TML-HQ、TML-BP、TML-pp-BPF、TML-BPE、TML-BPA、TML-BPAF、TML-BPAP、TMOM-BP、TMOM-BPE、TMOM-BPA、TMOM-BPAF、TMOM-BPAP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP、HMOM-TPPHBA、HMOM-TPHAP(以上、商品名、本州化学工業株式会社製)、“NIKALAC(登録商標)”MX-290、NIKALAC MX-280、NIKALAC MX-270、NIKALAC MX-279、NIKALAC MW-100LM、NIKALAC MX-750LM(以上商品名、株式会社三和ケミカル製)が挙げられる。
【0033】
また、架橋剤として、エポキシ基を有する化合物を含むことも好ましい。エポキシ基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、などを挙げることができるが、これらに限定されない。具体的には、エピクロン850-S、エピクロンHP-4032、エピクロンHP-7200、エピクロンHP-820、エピクロンHP-4700、エピクロンEXA-4710、エピクロンHP-4770、エピクロンEXA-859CRP、エピクロンEXA-1514、エピクロンEXA-4880、エピクロンEXA-4850-150、エピクロンEXA-4850-1000、エピクロンEXA-4816、エピクロンEXA-4822(以上商品名、DIC株式会社製)、リカレジン BEO-60E(以下商品名、新日本理化株式会社製)、EP-4003S、EP-4000S(以上商品名、株式会社アデカ製)、JER871、JER872、YX-4000、YX-4000H(以上商品名、三菱ケミカル株式会社製)、セロキサイド2021P(以上商品名、ダイセル株式会社製)、ショウフリーBATG(以上商品名、株式会社レゾナック製)、デナコールEX-201―IM(以上商品名、ナガセケムテックス株式会社製)、TEPIC-VL(以上商品名、日産化学株式会社製)などが挙げられる。
【0034】
また、オキセタニル基を有する架橋剤を有することも好ましく、具体例としては、OXT-121、OXT-221、OX-SQ-H、OXT-191、PNOX-1009、RSOX(以上商品名、東亞合成株式会社製)、“エタナコール(登録商標)”OXBP、“エタナコール”OXTP(以上商品名、UBE株式会社製)などが挙げられる。
【0035】
架橋剤は、樹脂膜中に2種以上含有されてもよく、樹脂膜100質量部中に、好ましくは0.1質量部以上含有されることで、バルク弾性率を好ましい範囲に調整することができる。また、架橋剤は、樹脂膜100質量部中に、好ましくは30質量部以下含有される。この範囲であれば樹脂膜に一定の柔軟性が保たれ、レーザー照射時の樹脂膜のアブレーションに起因する樹脂膜の運動エネルギーが半導体素子に十分に伝達されつつ、半導体素子の転写時に樹脂膜が破けることがない。また、積層体を形成する前のワニスの状態における保存安定性の観点より、架橋剤の含有量はより好ましくは20質量部以下である。
【0036】
また、架橋剤による硬化を促進させる目的で、硬化促進剤を含有することもできる。硬化促進剤としては、イミダゾール類、第3級アミン類またはその塩、有機ボロン塩化合物などが挙げられ、なかでもイミダゾール類が好ましい。イミダゾール類の具体例としては、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-n-プロピルイミダゾール、2-ウンデシル-1H-イミダゾール、2-ヘプタデシル-1H-イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-1H-イミダゾール、4-メチル-2-フェニル-1H-イミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2′-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-4,5-ジ(2-シアノエトキシ)メチルイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール塩酸塩、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイトなどが挙げられる。また、好ましいイミダゾール類の市販品を例示すると、キュアゾールC17Z、キュアゾール2MZ、キュアゾール1B2MZ、キュアゾール2E4MZ、キュアゾール2E4MZ-CN、キュアゾール2MZ-AZINE、キュアゾール2MZ-OK(以上商品名、四国化成工業株式会社製)などが挙げられる。
【0037】
樹脂膜中の硬化促進剤の好ましい含有量は、樹脂膜100質量部に対して、0.1質量部以上、5.0質量部以下である。この範囲にあることで、十分な架橋促進効果を得やすい。また、積層体を形成する前のワニスの状態における安定性を保持できる観点から、樹脂膜中の硬化促進剤の含有量はさらに好ましくは0.5~2.0質量部である。
【0038】
本発明の一実施形態に係る積層体は、光透過性を有する第一の基板と、樹脂膜と半導体素子がこの順に積層された積層体であって、該樹脂膜の、200~1100nmのいずれかの波長における膜厚1.0μm換算時の吸光度が0.4以上、5.0以下であり、さらに、該樹脂膜の、前記第一の基板と接する面とは反対側の表面から深さ500~1000nmの領域における、25℃での平均弾性率が0.06GPa以上、1.0GPa以下である、積層体である。本態様の積層体を第二の積層体と呼ぶ。
【0039】
第二の積層体における光透過性を有する第一の基板および、樹脂膜の説明は、第一の積層体における説明と同様である。
【0040】
次に、本発明の実施形態における半導体素子について説明する。
本発明の実施形態における半導体素子とは、GaN、AlN、InN、InP、GaAs、Si、SiCなどの半導体を素子化したものが挙げられる。これらの半導体素子は、さらに異なる種類の半導体が積層されているものや、電極材料、サファイア基板やガラス基板、配線などが積層されているものも含まれる。半導体素子の大きさは一辺が5μm以上、5.0mm以下であることが好ましい。さらに好ましくは3.0mm以下である。これにより、レーザーを集光し、スポット径を小さくして照射できるために、位置精度よく転写が可能となる。例えば、中でも特に微細なマイクロLEDの大きさは、一辺が0.2μm以上、100μm以下の大きさが例示される。
【0041】
本発明の実施形態に係る第二の積層体に搭載される半導体素子の数は、単位面積当たり、5個/cm2以上が好ましく、さらに好ましくは50個/cm2以上である。半導体素子の数をこれ以上にすることで、レーザー転写を利用することによるスループット向上の効果が大きくなる。またレーザーを半導体素子ひとつひとつに、正確に照射できることから、50万個/cm2以下が好ましく、さらに好ましくは10万個/cm2以下である。
【0042】
本発明の実施形態に係る第二の積層体の積層順は、光透過性を有する第一の基板、樹脂膜、半導体素子の順であれば間に別の層を有していても構わない。ただし、半導体素子は樹脂膜に接して形成され、光透過性を有する第一の基板および半導体素子は第二の積層体における最表面に位置する。すなわち、第一の基板は第二の積層体の一方の最表面に位置し、半導体素子は第二の積層体の他方の最表面に位置する。
【0043】
本発明の実施形態に係る積層体は、樹脂膜の膜厚が8.0μm以上、23.0μm以下であることが好ましい。8.0μm以上であることで、レーザー光を照射した際に発生する樹脂膜と第一の基板界面の空隙によって変形した樹脂膜表面の曲率が小さくなり、半導体素子の射出される角度が傾くことを抑制し、位置精度がより優れたものとなる。また、23.0μm以下であれば、光透過性を有する第一の基板側からのレーザー光照射によって樹脂膜がアブレーションされることによって生じる樹脂膜の運動エネルギーが半導体素子に効率よく伝達し、結果としてより精度高く半導体素子を転写できる。樹脂膜の膜厚は、上記効果を得る観点から9.0μm以上、21.0μm以下がより好ましく、10.0μm以上、18.0μm以下がさらに好ましい。
【0044】
本発明の実施形態に係る積層体における樹脂膜は、第一の基板と該樹脂膜が接する面とは反対側の該樹脂膜表面の接着強度が0.02N/cm以上、0.3N/cm以下であることが好ましい。ここで挙げる接着強度とは、樹脂膜表面に貼り合わせたカプトンフィルムの90°ピール試験から得られる値を示す。なお、第二の積層体の場合は、具体的な測定方法として、第二の積層体から硬度測定に必要な範囲の半導体素子を物理的に取り除き、樹脂膜表面を露出させることで測定できる。樹脂膜の表面に、1cm×9cmにカットしたカプトンフィルムを真空ラミネーターにて0.6MPa、35℃の条件で圧着し、圧着したカプトンテープを、25℃において引張試験機で樹脂膜に対して垂直方向に2mm/秒の一定速度で引きはがし試験を行うものである。
【0045】
前記接着強度が0.02N/cm以上であることで、半導体素子を樹脂膜上に積層した際に安定して保持することができる。また、前記接着強度が0.3N/cm以下であることで、半導体チップが樹脂膜表面から分離する際に、半導体素子にかかる、転写方向とは逆向きの樹脂膜側へ引き戻そうとする力が低減され、半導体素子が樹脂膜から分離する際の半導体素子の傾きが小さくなるため、位置精度が向上する。前記接着強度は0.2N/cm以下がより好ましい。
樹脂膜の接着強度を上記の範囲とするには、樹脂膜に柔軟な成分や屈曲した成分が含有されることが好ましい。柔軟成分や屈曲成分を導入することで樹脂に柔軟性を付与し、接着力をもたせることができる。柔軟性や屈曲性を付与する成分としては、アルキレン基、シロキサンなどの脂肪族やシランに由来する柔軟構造、アルキレングリコールや、ビフェニルエーテルなどのエーテル基に由来する柔軟構造、脂環式構造、オレフィンなどの屈曲構造などが挙げられる。樹脂膜に含有される樹脂を構成する全てのモノマー残基を100モル%としたとき、これらの柔軟性を付与する構造を有するモノマー残基を20モル%以上含有していることで接着強度を0.02N/cm以上とすることができる。また、モノマー残基含有量を70モル%以下とすることで接着強度を0.3N/cm以下とすることができる。
【0046】
本発明の実施形態に係る積層体は、該樹脂膜の、前記第一の基板と接する面とは反対側の表面から深さ20~40nmの領域における、25℃での平均弾性率(以下、樹脂膜の表面弾性率と呼ぶ。)が1.0GPa以上、7.0GPa以下であることが好ましい。表面弾性率は、本積層体における、半導体素子の樹脂膜への埋まりこみ深さの指標となる物性である。表面弾性率が1.0GPa以上であることにより、半導体素子の樹脂膜への埋まりこみ深さを低減することができ、レーザー転写時に半導体素子が樹脂膜から剥離しやすくなることで、特に半導体素子と対向基板の間の距離が半導体素子の高さの2倍以上開いている状態でも精度高くレーザー転写することができる。また、表面弾性率が7.0GPa以下であることで、該樹脂膜上に半導体素子が保持されやすく、ハンドリング性が向上する。
【0047】
表面弾性率の測定は、前述のバルク弾性率と同様にナノインデンテーション測定により実施できる。第二の積層体の場合は、弾性率測定に必要な範囲の半導体素子を物理的に取り除き、樹脂膜表面を露出させることで測定できる。半導体素子の除去方法は、直接ピンセットなどで取り除く方法、ダイシングテープなどの接着強度の強い基板やフィルムを半導体素子上面に重ね合わせ剥がしとる方法などが挙げられる。表面弾性率の測定は、Berkovich圧子(三角錐ダイヤモンド圧子)を用い、25℃±2℃、大気下において、樹脂膜の表面から光透過性を有する第一の基板側へ垂直に押し込んだのち、除荷をする押し込み負荷/除荷試験で実施する。この際、連続剛性測定法を用いて、測定周波数100Hzで測定する。得られる荷重―押し込み深さ線図より、樹脂膜表面から深さ20~40nmの値の平均値から弾性率を算出する。
【0048】
本発明の実施形態に係る積層体において、半導体素子の樹脂膜への埋まりこみ深さは0.1μm以上、2.0μm以下が好ましい。埋まりこみ深さが0.1μm以上であることで、樹脂膜と半導体素子の接着状態が安定しやすく、ハンドリング性が向上する。埋まりこみ深さが2.0μm以下であることでレーザー転写時に半導体素子が樹脂膜から容易に剥離でき、レーザー転写の位置精度が向上する。埋まりこみ深さはより好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。半導体素子の樹脂膜への埋まりこみ深さは、半導体素子と樹脂膜が接している側を下、半導体素子と樹脂膜との接触面とは反対側を上としたとき、半導体素子と樹脂膜の接触面の最上部と最下部の間の高さに相当する。樹脂膜への埋まり込み深さは、より詳しくは、
図4に示すように、半導体素子と樹脂膜が接している最上部(H
a)と最下部(H
b)の間の高さ(H
ab)に相当する。なお、一つの半導体素子について、樹脂膜との接触面が複数ある場合、各接触面における最上部と最下部の間の高さを測定し、最も大きい値を採用する。埋まりこみ深さについては、積層体の断面を集束イオンビーム(FIB)加工で切り出し、走査電子顕微鏡(SEM)による観察で得られた像から測定することができる。
【0049】
半導体素子の樹脂膜への埋まりこみ深さを上記好ましい範囲とするために、樹脂膜の表面弾性率は1.0GPa以上、7.0GPa以下であることが好ましい。樹脂膜の表面弾性率が1.0GPa以上であることで、半導体素子を樹脂膜に積層する際の、半導体素子側から樹脂膜側に向かってかけられる外力に対する反作用の力、および/または、半導体素子を樹脂膜に積層した後の、樹脂膜表面が半導体素子積層前の状態に戻ろうとする弾性力が大きくかかり、推奨の積層条件において半導体素子が樹脂膜へ深く埋まりこむことを防ぐことができる。一方、樹脂膜の表面弾性率が7.0GPa以下であることで、積層した半導体素子が樹脂膜表面から外れにくく、ハンドリング性が向上する。
なお、埋まりこみ深さを上記好ましい範囲とするには、後述する、半導体素子を樹脂膜に積層する際の積層条件を調整することも挙げられる。
【0050】
本発明の実施形態に係る積層体は、前記樹脂膜が、式(1)の繰り返し構造単位を有するポリイミド、式(2)の繰り返し構造単位を有するポリイミド前駆体、式(3)の繰り返し構造単位を有するポリベンゾオキサゾール、式(4)の繰り返し構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体、および、それらの共重合体からなる群より選択される1種類以上の樹脂を含有することが好ましい。なお、式(1)の繰り返し構造単位について、式(1)の構造とも呼ぶ。式(2)以降についても同様である。
【0051】
【0052】
式(1)~式(4)中、R1、R3、R7およびR9はそれぞれ独立に炭素数6~40の4価の有機基を表し、R2、R4、R6およびR8はそれぞれ独立に炭素数2~40の2価の有機基を表す。R5は水素原子または炭素数1~20の1価の有機基を表す。
【0053】
ポリイミドおよびポリベンゾオキサゾールは、主鎖構造内にイミド環またはオキサゾール環の環状構造を有する樹脂である。またそれらの前駆体であるポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体は、脱水閉環することでイミド環またはベンゾオキサゾール環構造を形成する樹脂である。式(1)~式(4)に示される繰り返し構造単位が樹脂中に10~100,000個含まれることが好ましい。この範囲であれば、樹脂膜を好ましい膜厚で塗布することができる。
【0054】
ポリイミドは、テトラカルボン酸や対応するテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドなどと、ジアミンや対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンなどを反応させることにより得ることができ、テトラカルボン酸残基とジアミン残基を有する。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させて得られるポリイミド前駆体の1つであるポリアミド酸を、加熱処理により脱水閉環することで得ることができる。この加熱処理時には、m-キシレンなどの水と共沸する溶媒を加えることもできる。あるいは、カルボン酸無水物やジシクロヘキシルカルボジイミドなどの脱水縮合剤やトリエチルアミンなどの塩基などの閉環触媒を加えて、化学熱処理により脱水閉環することで得ることもできる。または、弱酸性のカルボン酸化合物を加えて、100℃以下の低温で加熱処理により脱水閉環することによっても得られる。
【0055】
ポリベンゾオキサゾールは、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸や対応するジカルボン酸クロリド、ジカルボン酸活性エステルなどを反応させて得ることができ、ジカルボン酸残基とビスアミノフェノール残基を有する。例えば、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸を反応させて得られるポリベンゾオキサゾール前駆体の1つであるポリヒドロキシアミドを、加熱処理により脱水閉環することで得ることができる。あるいは、無水リン酸、塩基、カルボジイミド化合物などを加えて、化学処理により脱水閉環することで得ることができる。
【0056】
式(1)および式(2)中、R1およびR3(COOR5)2は好ましくはテトラカルボン酸残基を表す。R1またはR3(COOR5)2を構成するテトラカルボン酸残基の例としては、ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸などから誘導される芳香族テトラカルボン酸残基や、ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸などから誘導される脂肪族テトラカルボン酸残基などを挙げることができる。また、これら2種以上のテトラカルボン酸残基を含有していてもよい。テトラカルボン酸残基としては、吸光度を好適なものとする観点から芳香族を有するものが好ましい。
【0057】
式(1)および式(2)中、R2およびR4は好ましくはジアミン残基を表す。R2およびR4を構成するジアミン残基の例としては、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、3,3’-ジアミノ-4,4’-ビフェノール、9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどから誘導されるヒドロキシル基含有ジアミン残基、3-スルホン酸-4,4’-ジアミノジフェニルエーテルなどから誘導されるスルホン酸基含有ジアミン残基、ジメルカプトフェニレンジアミンなどから誘導されるチオール基含有ジアミン残基、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルなどから誘導される芳香族ジアミン残基や、これらの芳香族環の水素原子の一部を、炭素数1~10のアルキル基やフルオロアルキル基、ハロゲン原子などで置換した化合物、シクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミンなどから誘導される脂環式ジアミン残基などを挙げることができる。また、これら2種以上のジアミン残基を組み合わせて含有させてもよい。
【0058】
式(2)中、R5は水素原子または炭素数1~20の1価の有機基を表す。炭素数1~20の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、フェニル基などが挙げられる。重合用の原料の入手のしやすさから、R5はメチル基、エチル基が好ましい。
【0059】
式(3)および式(4)中、R6およびR8は好ましくはジカルボン酸残基、トリカルボン酸残基またはテトラカルボン酸残基を表す。
【0060】
ジカルボン酸残基の例としてはテレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、トリフェニルジカルボン酸などから誘導される残基、トリカルボン酸残基の例としてはトリメリット酸、トリメシン酸、ジフェニルエーテルトリカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸などから誘導される残基が挙げられる。テトラカルボン酸残基の例としてはR1およびR3の例としてあげた残基と同様である。これらを2種以上用いてもよい。
【0061】
式(3)および式(4)中、R7およびR9(OH)2は好ましくはビスアミノフェノール誘導体残基を表す。ビスアミノフェノール誘導体残基の具体的な例としては、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンなどから誘導される残基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて含有させてもよい。
【0062】
また、式(1)~式(4)で表される樹脂の末端を、酸性基を有するモノアミン、酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸により封止することは、樹脂の安定性を向上させることができるため、好ましい。
【0063】
このようなモノアミンの好ましい例としては、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0064】
また、このような酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸の好ましい例としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、ナジック酸無水物などの公知のものが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0065】
前述の樹脂は、式(5)で表されるジメチルシロキサン構造および式(6)で表されるジフェニルシロキサン構造の少なくとも一方を有することが好ましい。
【0066】
【0067】
式(5)および式(6)中、lおよびmはそれぞれ独立に4~40の整数を表す。
【0068】
式(5)に示される構造および式(6)に示される構造の少なくとも一方を樹脂の構造中に有することにより、樹脂膜に適切な範囲の柔軟性、弾性率と接着強度を付与することができるため、好ましい。
このような構造として具体的には、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジエチルシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジプロピルシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジブチルシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジフェノキシシロキサン、α,ω-ビス(2-アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(2-アミノエチル)ポリジフェノキシシロキサン、α,ω-ビス(4-アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(4-アミノブチル)ポリジフェノキシシロキサン、α,ω-ビス(5-アミノペンチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(5-アミノペンチル)ポリジフェノキシシロキサン、α,ω-ビス(4-アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(4-アミノフェニル)ポリジフェノキシシロキサンなどから誘導される残基が挙げられる。上記シロキサンジアミンの残基は単独でもよく、2種以上を含有してもよい。
【0069】
さらに、前記樹脂が、式(1)の構造を有するポリイミドを含み、該式(1)の構造を有するポリイミドが、式(1)の構造を有するポリイミドの全酸二無水物残基100モル%中、式(7)で表される酸二無水物残基を20モル%以上100モル%以下で含み、かつ式(1)の構造を有するポリイミドの全ジアミン残基100モル%中、式(8)で表されるジアミン残基を60モル%以上100モル%以下で含むことが好ましい。前記樹脂がこのような構造を含むことで、樹脂膜の形状がレーザー転写時に第一の基板と樹脂膜の界面における樹脂膜のアブレーションにより発生する空隙に追随可能とする柔軟性を保ちながらも、樹脂膜の運動エネルギーを半導体素子に効率よく伝達するための好ましいバルク弾性率を有する樹脂膜とすることができる。さらに、前記樹脂がこのような構造を含むことで、半導体素子の樹脂膜への埋まりこみ深さが低減され、レーザー転写時に半導体素子が樹脂膜から剥離しやすくなり、特に半導体素子と対向基板の間の距離が半導体素子の高さの2倍以上開いている状態でも精度高くレーザー転写するための好ましい表面弾性率を有する樹脂膜とすることができる。バルク弾性率をより高く調整することができるため、全酸二無水物残基100モル%中、式(7)で表される酸二無水物残基を30モル%以上100モル%以下で含むことがより好ましい。さらに、表面弾性率をより高く調整することができるため、全酸二無水物残基100モル%中、式(7)で表される酸二無水物残基を50モル%以上100モル%以下で含むことがより好ましい。また、半導体素子を保持するのに十分な粘着性を有する樹脂膜とすることができるため、全ジアミン残基100モル%中、式(8)で表されるジアミン残基を70モル%以上100モル%以下で含むことがより好ましい。
【0070】
【0071】
式(7)中、*は結合手を表し、Xは単結合、-CH2-、-SO2-又は-CO-を表す。
式(8)中、*は結合手を表し、nは4~40の整数を表し、R10およびR11は、それぞれ独立に、炭素数1~30のアルキレン基またはフェニレン基を示す。
【0072】
本発明の実施形態に係る積層体は、前記樹脂膜の1%重量減少温度が、300℃以上であることが好ましい。ここで、樹脂膜の1%重量減少温度とは、樹脂膜を250℃で30分加熱処理したものをサンプルとして用いて行う測定から求められる値を表す。樹脂膜がすでに熱処理(樹脂膜を硬化させるための熱処理)を経ている場合でも、さらに250℃で30分間熱処理をしたものをサンプルとして、同様に樹脂膜の1%重量減少温度を測定することができる。1%重量減少温度が300℃以上であることによって、レーザー光照射時に第一の基板との界面に位置する樹脂膜のアブレーションにより発生する熱で、周囲のレーザー未照射領域の樹脂膜がダメージを受け、空隙が発生する範囲が拡散するのを防ぐことができ、結果として隣接する半導体素子をレーザー転写する際に該空隙による位置精度の低下を防ぐことができる。
【0073】
1%重量減少温度を300℃以上にするには、樹脂膜に熱安定性の高い成分を有することが好ましい。具体的な熱安定性の高い成分は、芳香環などの剛直な成分、柔軟構造の中でも比較的熱安定性の高いシロキサン、またはそれらの組み合わせたものなどをいう。樹脂を構成する全てのモノマー残基を100モル%としたとき、モノマー残基の50%以上が上述の熱安定性の高いモノマー残基であることで、1%重量減少温度を300℃以上とすることができる。レーザー転写時にレーザー吸収による熱発生で効率よく樹脂膜が分解することで半導体素子に伝わるエネルギーが増加するため、1%重量減少温度は600℃以下であることが好ましい。
【0074】
また、樹脂膜は必要に応じてさらに他の添加剤を含有してもよい。例えば、樹脂膜はシラン化合物を含有することができる。シラン化合物を含有することにより、樹脂膜と光透過性を有する第一の基板の密着性を調整することができる。これにより、レーザー光未照射部分の樹脂膜が、光透過性を有する第一の基板から剥離することを防ぐことができる。シラン化合物の具体例としては、国際公開第2022/210155号に記載のシラン化合物などが挙げられる。
さらに、樹脂膜は、必要に応じて、成膜時の光透過性を有する第一の基板との塗工性を向上させ、均一な膜厚の樹脂膜を形成する目的で界面活性剤を含有してもよい。
【0075】
次に本発明の実施形態に係る積層体の製造方法について説明する。
第一の積層体は、光透過性を有する第一の基板の上に、樹脂膜を形成することで作製できる。第一の積層体の作製方法の一例を説明する。光透過性を有する第一の基板上に、樹脂膜の成分を溶媒に溶解させたワニスを塗布し、加熱硬化することで樹脂膜を作製する。樹脂膜を塗布法で作製する場合は、任意の塗布方法を選択することができ、スピンナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スリットダイコーティングなどの方法が挙げられる。塗布後の樹脂膜は、ホットプレート、乾燥オーブン、赤外線などを使用し、50℃~150℃の範囲で1分間~数10分間乾燥させることが好ましい。さらにその後、100℃~500℃の範囲で数分から数時間加熱硬化させることが好ましい。
【0076】
次に半導体素子を積層し、第二の積層体を作製する方法の一例を、図面を用いて説明する。
図1に第二の積層体120を作製する方法を例示する。
図1の方法で第二の積層体を作製する場合、半導体素子14を、光透過性を有する第一の基板11上に樹脂膜12が積層された第一の積層体110の樹脂膜12上に直接並べて、真空ラミネーターやウエハボンダー、プレス機といった圧着装置41で圧着することで積層する。もしくは、
図2に示すように、別の支持体15上に仮接着剤16を介して半導体素子14が仮接着された半導体素子仮接着基板130を準備し、仮接着剤16上の半導体素子14と第一の積層体110の樹脂膜12面を重ね合わせ、上述の圧着装置41にて圧着する。その後、半導体素子14から仮接着剤16と支持体15を除去し、第二の積層体120を作製することができる。さらに
図3に示すように、サファイアなどの結晶成長用基板17に半導体素子14が直接形成された半導体素子付き基板140を、半導体素子14面と樹脂膜12面を対向させて重ね合わせ、上述の装置41にて圧着する。その後、結晶成長用基板17側からレーザー光31を照射し、結晶成長用基板17から半導体素子14を第一の積層体110側にレーザーリフトオフする手法などにより、第二の積層体120を作製できる。半導体素子を積層する際の圧力は、樹脂膜の接着強度によって最適な値を選択することでき、0.05MPa~5.0MPaの範囲で選択される。半導体素子の樹脂膜への埋没を抑制することで、レーザー転写時に半導体素子が樹脂膜から容易に剥離でき、レーザー転写の位置精度が向上することから、圧力は2.0MPa以下がより好ましい。また、半導体素子を積層する際は、必要に応じて加熱しながら圧力をかけることも可能である。加熱をすることで、樹脂膜の柔軟性が上がり、より半導体素子と樹脂膜の接着強度が上がり、樹脂膜への半導体素子の搭載収率が向上する。半導体素子を積層する際の温度は、好ましくは15℃~200℃の範囲で選択される。積層体の熱膨張を低減するため、120℃以下がより好ましい。
【0077】
また、半導体素子の樹脂膜への埋まりこみ深さを上記の好ましい範囲にすることができる観点からは、半導体素子を樹脂膜に積層する際の温度は15℃以上、80℃以下が好ましく、圧力は0.05MPa以上、1.0MPa以下が好ましい。
【0078】
さらに、第二の積層体を作製する別の方法について
図5を用いて説明する。別の支持体15上に仮接着剤16を介して、個片化する前の状態の半導体基板18を貼り合わせる。さらにこの個片化される前の半導体基板18の上にワニスを塗布し、加熱硬化させて樹脂膜12を形成し、樹脂膜付き半導体基板仮接着基板150を作製する。この状態で、光透過性を有する第一の基板11と樹脂膜付き半導体基板仮接着基板150を向かい合わせて接着する。支持体15と、支持体15に隣接する仮接着剤16を剥離、除去し、その後半導体基板18を個片化し、半導体素子14とすることで第二の積層体120を作製することができる。
【0079】
次に半導体装置の製造方法について説明する。
本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第二の積層体を用いる半導体装置の製造方法であって、前記第二の積層体の、前記半導体素子が積層されている面に対向させて第二の基板を配置する工程と、前記第二の積層体に対し、前記第一の基板側からレーザー光を照射して、前記半導体素子を前記第二の基板へ転写する工程を有する。
【0080】
前記第二の積層体の半導体素子面と、第二の基板を対向させる工程について図面を用いて説明する。
図6に半導体装置の製造方法を例示する。
半導体素子面とは、第二の積層体120の表面のうち、半導体素子14を備える面(半導体素子が積層されている面)のことをいう。
【0081】
前述の方法で作製した第二の積層体120と第二の基板21について、第二の積層体120の半導体素子14が保持されている面と第二の基板21を向かい合わせ、第二の積層体120と第二の基板21が平行になるように基板を固定する。転写時の半導体素子14の自重による位置ずれを防ぐため、向かい合わせた第二の積層体120と第二の基板21は第二の積層体120が上になるように配置する。第二の積層体120と第二の基板21は一定の間隔をもって配置される。半導体素子面と、第二の基板の間隔は半導体素子の大きさ、厚みによって選択することができ、例えば数μmから数100μmの範囲で選択される。スループット性を向上させるため、第二の積層体と第二の基板の接触懸念が無いよう、第二の積層体の半導体素子表面と第二の基板の表面の間の距離は、30μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。レーザー転写時の位置精度の低下を防ぐため、第二の積層体の半導体素子表面と第二の基板の表面との間の距離は500μm以下であることが好ましい。
第二の基板には、ガラス基板や樹脂基板、金属基板、すでに配線が形成されている回路基板など任意の基板を使用することができる。また転写後の半導体素子を保持するために、粘着層を有していてもよい。粘着層には、ポリシロキサン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、本発明の実施形態に係る積層体における樹脂膜と同様の樹脂膜など、粘着性を有する材料を選択することができる。粘着層の厚みは、例えば0.5μm~100μmの範囲で、半導体素子の大きさや半導体素子と第二の基板の間隔によって選択される。
第二の基板に回路基板を使用する場合、配線上に異方性導電膜(ACF)や導電性銀ペースト、はんだ等の導電性接合材が形成されていてもよい。
また、転写位置合わせのために、第二の基板側にもアライメントマークがあってもよい。
【0082】
次に、続いて第二の積層体の光透過性を有する第一の基板側からレーザー光を照射して、半導体素子を第二の基板へ転写する工程について図面を用いて説明する。
図7Aに転写工程の一例を示す。
【0083】
前述の方法で配置した、第二の積層体120と第二の基板21において、第二の積層体120の光透過性を有する第一の基板11側から光透過性を有する第一の基板11を介して、半導体素子にレーザー光31を照射する。レーザー光の種類としては、YAGレーザー、YVO4レーザー、ファイバーレーザー、半導体レーザーといった固体レーザー、炭酸レーザー、エキシマレーザー、アルゴンレーザーといったガスレーザーなどが挙げられ、使用する波長によって選択することができる。照射するレーザー光のビーム形状は限定されず、またレーザースポットサイズは半導体素子の大きさより小さくても構わない。ただし、転写する半導体素子に隣接する半導体素子にレーザー光が当たらない大きさとする。転写する半導体素子全体に、レーザー転写時の樹脂膜のアブレーションにより発生する運動エネルギーが伝達され、位置精度が向上することから、照射するレーザー光のビーム形状は矩形であることが好ましく、レーザースポットサイズは半導体素子の大きさや隣接する半導体素子との間隔にもよるが、半導体素子と同等の大きさを基準として短軸方向、長軸方向ともに±10μmの範囲で調整されるサイズであることが好ましい。また、レーザースポットの中心は半導体素子の中心に位置することが好ましい。
【0084】
また、レーザー光のスポットサイズが、隣接する半導体素子にも当たる大きさである場合、
図7Bに示すよう、フォトマスク51を通して、レーザー光のスポットが隣接する半導体素子に当たらないようにレーザー光31を照射することも可能である。レーザー光は任意のエネルギー密度で選択できる。レーザー光のエネルギー密度は、レーザー光のエネルギー密度の安定性の観点から、10mJ/cm
2以上が好ましく、半導体素子へのダメージを防止できることから1000mJ/cm
2以下が好ましい。さらに好ましくは、レーザー光のエネルギー密度は、100mJ/cm
2以上、700mJ/cm
2以下である。
【0085】
本発明の実施形態に係る第二の積層体を用いることで、低いエネルギー密度のレーザー光でもレーザー転写が可能であり、さらに、レーザー光のエネルギー密度を変えた場合も、位置精度やデブリ、糊残りへの影響が少なくできる。照射するレーザー光のエネルギー密度には、1パルスごとに出力のムラがある場合があり、出力ムラによる位置精度への影響を少なくするために、第二の積層体には、幅広いエネルギー密度のレーザー光で同程度の位置精度を発現できることが好ましい。同程度の位置精度を発現できるレーザー光のエネルギー密度の範囲としては、30mJ/cm2以上のマージンがあることがより好ましく、実用性の観点から50mJ/cm2以上がより好ましく、100mJ/cm2以上が特に好ましい。
【0086】
また、半導体素子をレーザー転写する際、第二の基板を加熱することも可能である。特に、第二の基板に粘着層が形成されている場合、転写した半導体素子の保持性が上がるため好ましい。第二の基板を加熱する場合は、第二の基板の熱による反りを防ぎ、位置精度よく転写できることから、加熱温度は120℃以下であることが好ましい。
【0087】
半導体素子の転写は、作製する半導体装置における半導体素子の実際の実装箇所に合わせて位置を調整しながら行う。例えば、LEDディスプレイを作製する場合は、ディスプレイの画素サイズおよび、RGBの配置に合わせて、LED素子のピッチをずらしながら転写を行う。次に、LED素子を転写した第二の基板と、回路に併せて導電性接合材が搭載された回路基板を向かい合わせて圧着することでLED素子を実装した回路基板を作製することができる。本発明の実施形態に係る積層体を用いてレーザー転写を行う場合は、高い位置精度で転写できるため、最終的に実装する基板の回路からのずれがなく半導体素子を転写でき、位置ずれに起因する実装不良を低減することができる。
【0088】
前記レーザー光が、248nm、266nm、308nm、355nm、532nm、1064nmのいずれかの波長のレーザー光を有することが好ましく、特に樹脂膜における吸光度が0.4以上である波長を使用することが好ましい。これらのレーザー光を用いることで精度良く転写することができる。
【0089】
本発明の半導体装置の製造方法において、前記レーザー光は、248nm、266nm、355nmのいずれかの波長のレーザー光を有することがより好ましい。248nm、266nm、355nmのレーザー光としては、エキシマレーザー、YAGレーザーが特に好ましい。
【0090】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、前記第二の基板が回路基板であることが好ましい。第二の基板が回路基板であれば、上記の方法で転写した基板を、そのまま半導体装置とすることができる。また、転写後の基板の取り扱いによる半導体素子の位置ずれ懸念がなくなり、位置精度をさらに高くすることができる。回路基板としてはTFT基板やプリント配線基板など公知のものを使用することができる。
【実施例0091】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。まず、各実施例および比較例における評価方法について説明する。
【0092】
(1)積層体の作製方法
厚み0.6mmの4インチ石英ガラス基板(株式会社大興製作所製、厚み0.6mmでの波長248nm、266nmおよび355nmにおける吸光度が0.01)に、後述の方法で作製した樹脂膜用ワニスを、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレートで120℃、3分間プリベークし、さらに続けて所定の温度と時間で加熱硬化させ、ガラス基板上に樹脂膜を作製し、第一の積層体を作製した。樹脂膜の膜厚は、光学式膜厚計(大日本スクリーン社製、ラムダエース、屈折率=1.543)にて測定した。なお、用いる屈折率は、測定の正確性を高める目的で樹脂種にあわせて選択できる。
別途、4インチLED基板(EPILEDS社製、アライメントマークあり、サファイア基板上に半導体素子としてLEDが形成された基板)を準備し、ダイサーで20×15mm角にカットした。搭載されているLEDは下記の通りである。なお、半導体素子のサイズ、突起状電極部のサイズおよび隣接素子との間の距離は、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテク製、S-4800)を用いて測定した。
結晶成長用基板:サファイア(厚み0.8mm)
半導体素子の種類:GaN
半導体素子のサイズ:19.2μm×37.5μm×7.6μm(電極部含む)
電極部の数:一つの面に2つ
電極部のサイズ:14.9μm×10.7μm×2.2μm
電極部の種類:Au
隣接する素子との間の距離:幅方向、長さ方向のそれぞれ13.8μm
【0093】
第一の積層体の樹脂膜面とカット済みのLED基板の半導体素子面が接触するように重ね合わせ、フリップチップボンダー(東レエンジニアリング株式会社製、FC-3000WS)にて、表4~6に記載の条件で貼り合わせた。その後、第一の基板側から、266nm波長のレーザー装置(HOYA株式会社製、HSL-5500IIISUV、パルス幅5~7nsec、エネルギー密度600mJ/cm2)でレーザーをLED基板全面に照射し、LED基板におけるサファイア基板と半導体素子の界面でサファイア基板を分離し、第二の積層体を作製した。
【0094】
(2)樹脂膜の吸光度の測定
リファレンスとして(1)で第一の積層体に使用した石英ガラス基板と同じ基板を用意し、紫外可視分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、U-2910)を用いて200nmから1100nmまでの吸光度を連続測定した。次に、(1)の方法と同様の方法で、樹脂膜が0.5~1.5μmの厚みになるように塗布された、吸光度測定用の第一の積層体を準備し、作製した吸光度測定用の第一の積層体の樹脂膜の膜厚を、光学式膜厚計(大日本スクリーン製、ラムダエース、屈折率=1.543)で測定した。該吸光度測定用の第一の基板の吸光度を前述と同じ方法で測定し、リファレンスの吸光度を差し引いた。その中から、248nm、266nmおよび355nmにおける値を読み取り、下記式より、膜厚1.0μm当たりの吸光度をそれぞれ算出した。前述の(1)の方法で作製した第二の積層体については、半導体素子面にダイシングテープ(デンカ株式会社製、UDT-1025MC)を貼り付け、引きはがすことで、樹脂膜から半導体素子を剥がしとり、前述と同じ方法で吸光度を算出した。
膜厚1.0μm当たりの吸光度=吸光度(-)/樹脂膜の膜厚(μm)
【0095】
(3)樹脂膜の接着強度の測定
(3)-1 第一の積層体の樹脂膜の表面の接着強度の測定
(1)で作製した第一の積層体について、樹脂膜の表面に、1cm×9cmの短冊状にカットした、カプトンフィルムを、真空ラミネーターを使用して0.6MPa、35℃で圧着した。引張試験機(日本電産シンポ株式会社製、FGS-VC)にサンプルをセットし、圧着したカプトンフィルムを50mm/分の一定速度で、垂直方向に剥離した。この時のピール強度をデジタルフォースゲージ(日本電産シンポ株式会社製、FGJN-5)にて測定した。測定はサンプルを変えて3回行い、その平均値を接着強度とした。
(3)-2 第二の積層体の樹脂膜と半導体素子とが接する面の接着強度の測定
(1)で作製した第二の積層体において、半導体素子面にダイシングテープ(デンカ株式会社製、UDT-1025MC)を貼り付け、引きはがすことで、樹脂膜から半導体素子を剥がし取った。半導体素子を剥離した樹脂膜の表面に、(3)-1と同様の方法でカプトンフィルムを圧着し、(3)-1と同様の手法で、接着強度を測定した。
【0096】
(4)樹脂膜のバルク弾性率測定
弾性率はナノインデンター(Hysitron社製、Triboindenter TI950)を用いて測定した。
第一の積層体、または第二の積層体の半導体素子面にダイシングテープ(デンカ株式会社製、UDT-1025MC)を貼り付け、引きはがすことで、第二の積層体から半導体素子を剥がし取り、樹脂膜を露出させたサンプルを作製し、さらに約10mm×10mmの大きさにカットした。
作製したサンプルを、接着剤(東亞合成株式会社製、アロンアルファ(登録商標) 速効多用途)を介して専用のサンプル固定台に固定し、Berkovich圧子(三角錐ダイヤモンド圧子)を用いて、樹脂膜の表面から第一の基板側に押し込んだのち、除荷をする押し込み負荷/除荷試験でバルク弾性率を測定した。測定箇所は、半導体素子が剥がし取られ、残った樹脂膜の中で最も膜厚が厚い部分とした。樹脂膜の膜厚については、レーザー顕微鏡や段差計により測定した。弾性率の測定条件を以下に示す。
[測定条件]
測定時の環境:25±2℃、大気
測定周波数:100Hz
測定方法:連続剛性測定法
得られた荷重-押し込み深さ線図から、樹脂膜表面から深さ500~1000nmでの値の平均値から弾性率を算出した。
【0097】
(5)樹脂膜の表面弾性率測定
表面弾性率はナノインデンター(Hysitron社製、Triboindenter TI950)を用いて測定した。
第一の積層体、または第二の積層体の半導体素子面にダイシングテープ(デンカ株式会社製、UDT-1025MC)を貼り付け、引きはがすことで、第二の積層体から半導体素子を剥がし取り、樹脂膜を露出させたサンプルを作製し、さらに約10mm×10mmの大きさにカットした。
作製したサンプルを、接着剤(東亞合成株式会社製、アロンアルファ(登録商標) 速効多用途)を介して専用のサンプル固定台に固定し、Berkovich圧子(三角錐ダイヤモンド圧子)を用いて、樹脂膜の表面から第一の基板側に押し込んだのち、除荷をする押し込み負荷/除荷試験で表面弾性率を測定した。測定箇所は、半導体素子が剥がし取られ、残った樹脂膜の中で最も膜厚が厚い部分とした。樹脂膜の膜厚については、レーザー顕微鏡や段差計により測定した。弾性率の測定条件を以下に示す。
[測定条件]
測定時の環境:25±2℃、大気
測定周波数:100Hz
測定方法:連続剛性測定法
得られた荷重-押し込み深さ線図から、樹脂膜表面から深さ20~40nmでの値の平均値から弾性率を算出した。
【0098】
(6)樹脂膜の熱分解温度の測定
第一の積層体、または半導体素子を剥がし取った第二の積層体から樹脂膜のみを削り取り、250℃、30分間、窒素雰囲気下で処理したのち、約15mgをアルミ製標準容器に詰め、熱重量分析装置(株式会社島津製作所製、TGA-50)を用いて測定した。測定条件は、120℃で30分保持した後、昇温速度5℃/分で500℃まで昇温した。得られた重量減少曲線から重量が1%減少する温度を読み出し、この温度を1%重量減少温度とした。
【0099】
(7)半導体素子の搭載収率の評価
第二の積層体上に搭載された半導体素子の搭載収率は、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHS-6000)で第二の積層体の半導体素子が搭載された面において、半導体素子の大きさおよび間隔から算出される半導体素子が5000個含まれるべき領域を観察、撮像し、そのうち実際に半導体素子が搭載されている数をカウントして、5000個に対する比率を計算することで求めた。
【0100】
(8)半導体素子の樹脂膜への埋まりこみ深さの測定
集束イオンビーム(FIB)加工で、第二の積層体の半導体素子搭載部分の断面を切り出し、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM、FEI製、Helios G4-CX)を用いて得られた観察像から、半導体素子の樹脂膜への埋まりこみ深さを測定した。
【0101】
(9)半導体素子のレーザー転写試験
(9)-1 対向基板(第二の基板)の作製
厚み0.5mmの4インチ無アルカリガラス基板(コーニング社製、イーグルXG)に、ポリジメチルシロキサンをトルエンで希釈して、ポリジメチルシロキサンとトルエンの質量比が1:3になるように調整した希釈液を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレートで120℃、3分間加熱硬化させ、ガラス基板上に粘着層を形成した。熱硬化後の粘着層の膜厚は光学式膜厚計(大日本スクリーン社製、ラムダエース、屈折率=1.543)にて測定し、粘着層の膜厚が5.0μmの対向基板として第二の基板を作製した。
【0102】
(9)-2 半導体素子のレーザー転写
レーザー光源、前述の方法で作製した第二の積層体、第二の基板をこの順に上下方向に配置した。この際、第二の積層体の半導体素子が保持されている面と、第二の基板の粘着層が形成させている面を、半導体素子表面と粘着層表面の間隔が約42.0μm(半導体素子高さの約5倍)になるよう向かい合わせて保持した。レーザー光のスポットサイズは18μm×36μmの矩形であり、レーザー光のスポットの中央に半導体素子1個が配置されるようにレーザー光源と積層体の位置を調整し、隣接する半導体素子にはレーザー光が当たらないようにした。レーザー光源には、波長248nmのエキシマレーザー(OptoSystems社製、CL-7700)、波長266nmのYAGレーザー(HOYA株式会社製、HSL-5500IIISUV)または、波長355nmのYAGレーザー(HOYA株式会社製、HSL-5500IIIST)を用いた。
レーザー光照射位置に配置された半導体素子に対して波長248nm、266nmもしくは355nmのレーザー光を、250mJ/cm2~400mJ/cm2の間で、50mJ/cm2ずつエネルギー密度を変えながら照射を行った。各エネルギー密度において、10個の半導体素子のレーザー転写試験を実施した。
【0103】
(9)-3 転写性能の評価
レーザー光照射後の第二の基板を観察し、転写した10個の半導体素子のうち、第二の基板に実際に転写できた半導体の素子の個数と、反転や横転なく、かつ破損なく転写できた半導体素子の個数を計測した。
【0104】
(9)-4 位置精度の評価
レーザー光源と同軸に設置されたレンズから投影したCCDカメラを用いて、レーザー転写前の第二の積層体上の半導体素子の画像と、レーザー転写後の第二の基板上の半導体素子の画像を取得し、各取得画像における半導体素子の中心座標から、転写前後での半導体素子の中心の位置ずれ量を算出し、その平均値から位置精度を以下のように判断した。反転や横転なく第二の基板に転写できた半導体素子についてのみ位置ずれ量を算出し、その平均値が0μm以上、2μm未満は「5」、2μm以上、3μm未満は「4」、3μm以上、4μm未満は「3」、4μm以上、5μm未満は「2」、5μm以上は「1」、すべて横転している場合は「0」とした。
【0105】
(9)-5 糊残りの評価
レーザー光照射後の第二の基板を洗浄せずに、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)により転写後の半導体素子における電極部表面を測定し、Au由来のイオンが検出された場合は糊残り「なし」。Au由来のイオンが検出されなかった場合は糊残り「あり」とした。TOF-SIMSの測定条件を以下に示す。
[測定条件]
装置:TOF.SIMS 5(ION-TOF社製)
一次イオン:Bi3
++
二次イオン極性:負
【0106】
(9)-6 デブリの評価
レーザー光照射後の対向基板を洗浄せずに電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM、FEI製、Helios G4-CX)で観察し、転写された半導体素子周辺の粘着層表面に1μm以上の異物が存在した場合はデブリ「あり」、異物が見られなかった場合はデブリ「なし」とした。
【0107】
(10)樹脂溶液の固形分の測定方法
後述の方法で製造した、樹脂溶液をアルミカップに約1gをはかり取り、120℃のホットプレートに載せて3分加熱し、続いて250℃まで昇温し、250℃に到達してから30分加熱した。加熱後に残った樹脂の質量を測定し、以下の式から固形分を算出した。
固形分(質量%)=加熱後の樹脂の質量(g)/加熱前の樹脂溶液の質量(g)×100。
以下の製造例に示してある酸二無水物、ジアミン、添加剤および溶媒の略記号の名称は下記の通りである。
PMDA:ピロメリット酸無水物(ダイセル株式会社製)
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物(三菱ケミカル株式会社製)
BTDA:3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物(富士フイルム和光純薬株式会社製)
DSDA:3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物(東京化成工業株式会社製)
PA:無水フタル酸(東京化成工業株式会社製)
PDA:p-フェニレンジアミン(東京化成工業株式会社製)
BAHF:4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(メルク社製)
APPS1:α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(平均分子量:860、q=9(平均値))(信越化学工業株式会社製)
APPS2:α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(平均分子量:1600、q=19(平均値))(信越化学工業株式会社製)
SiDA:1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学工業株式会社製)
NMP:2-メチル-1-ピロリドン(三菱ケミカル株式会社製)
CHN:シクロヘキサノン(東洋合成工業株式会社製)
Tinuvin477:ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を81.0質量%含有するプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(BASF社製)
TG-129:下記式(9)の構造であらわされるアルコキシメチル基を有する架橋剤を19.9質量%含有するγ-ブチロラクトン溶液(株式会社三和ケミカル製)。
【0108】
【0109】
製造例1(樹脂溶液:P-1)
温度計、乾燥窒素導入口、温水・冷却水による加熱・冷却装置、および、撹拌装置を付した反応釜に、APPS1 233.92g(0.27mol)、APPS2 26.35g(0.017mol)、BAHF 18.68g(0.051mol)をCHN 192.63gと共に仕込み、50℃で15分撹拌して溶解させた後、PA 10.07g(0.068mol)とCHN 23.69gを添加し、60℃で15分撹拌した。続いて、PMDA 49.76g(0.23mol)、BPDA 22.41g(0.076mоl)とCHN 24.08gを添加し、95℃で1時間撹拌し、続いて150℃に昇温して4時間反応させて、固形分62.0質量%のポリイミドシロキサンP-1溶液を得た。
【0110】
製造例2(樹脂溶液:P-2)
温度計、乾燥窒素導入口、温水・冷却水による加熱・冷却装置、および、撹拌装置を付した反応釜に、APPS1 204.68g(0.24mol)、APPS2 26.35g(0.017mol)、BAHF 31.13g(0.085mol)をCHN 195.37gと共に仕込み、50℃で15分撹拌して溶解させた後、PA 2.01g(0.014mol)とCHN 24.42gを添加し、60℃で15分撹拌した。続いて、BTDA 53.14g(0.17mol)、BPDA 49.01g(0.17mоl)とCHN 24.42gを添加し、95℃で1時間撹拌し、続いて150℃に昇温して4時間反応させて、固形分64.0質量%のポリイミドシロキサンP-2溶液を得た。
【0111】
製造例3(樹脂溶液:P-3)
温度計、乾燥窒素導入口、温水・冷却水による加熱・冷却装置、および、撹拌装置を付した反応釜に、APPS1 233.92g(0.27mol)、APPS2 26.35g(0.017mol)、BAHF 18.68g(0.051mol)をCHN 193.77gと共に仕込み、50℃で15分撹拌して溶解させた後、PA 10.07g(0.068mol)とCHN 24.22gを添加し、60℃で15分撹拌した。続いて、PMDA 49.76g(0.23mol)、BTDA 24.54g(0.076mоl)とCHN 24.08gを添加し、95℃で1時間撹拌し、続いて150℃に昇温して4時間反応させて、固形分62.0質量%のポリイミドシロキサンP-3溶液を得た。
【0112】
製造例4(樹脂溶液:P-4)
温度計、乾燥窒素導入口、温水・冷却水による加熱・冷却装置、および、撹拌装置を付した反応釜に、APPS1 233.92g(0.27mol)、APPS2 26.35g(0.017mol)、BAHF 18.68g(0.051mol)をCHN 195.24gと共に仕込み、50℃で15分撹拌して溶解させた後、PA 10.07g(0.068mol)とCHN 24.40gを添加し、60℃で15分撹拌した。続いて、PMDA 49.76g(0.23mol)、DSDA 27.29g(0.076mоl)とCHN 24.40gを添加し、95℃で1時間撹拌し、続いて150℃に昇温して4時間反応させて、固形分65.0質量%のポリイミドシロキサンP-4溶液を得た。
【0113】
製造例5(樹脂溶液:P-5)
温度計、乾燥窒素導入口、温水・冷却水による加熱・冷却装置、および、撹拌装置を付した反応釜に、APPS1 233.92g(0.27mol)、APPS2 26.35g(0.017mol)、BAHF 18.68g(0.051mol)をCHN 195.72gと共に仕込み、50℃で15分撹拌して溶解させた後、PA 10.07g(0.068mol)とCHN 23.69gを添加し、60℃で15分撹拌した。続いて、PMDA 33.19g(0.15mol)、BPDA 44.75g(0.15mоl)とCHN 24.46gを添加し、95℃で1時間撹拌し、続いて150℃に昇温して4時間反応させて、固形分65.0質量%のポリイミドシロキサンP-5溶液を得た。
【0114】
製造例6(樹脂溶液:P-6)
温度計、乾燥窒素導入口、温水・冷却水による加熱・冷却装置、および、撹拌装置を付した反応釜に、APPS1 233.92g(0.27mol)、APPS2 26.35g(0.017mol)、BAHF 18.68g(0.051mol)をCHN 204.15gと共に仕込み、50℃で15分撹拌して溶解させた後、PA 10.07g(0.068mol)とCHN 25.52gを添加し、60℃で15分撹拌した。続いて、BTDA 48.75g(0.15mol)、BPDA 45.01g(0.15mol)とCHN 25.52gを添加し、95℃で1時間撹拌し、続いて150℃に昇温して4時間反応させて、固形分61.9質量%のポリイミドシロキサンP-6溶液を得た。
【0115】
製造例7(樹脂溶液:P-7)
温度計、乾燥窒素導入口、温水・冷却水による加熱・冷却装置、および、撹拌装置を付した反応釜に、APPS1 233.92g(0.27mol)、APPS2 26.35g(0.017mol)、BAHF 18.68g(0.051mol)をCHN 204.33gと共に仕込み、50℃で15分撹拌して溶解させた後、PA 2.01g(0.014mol)とCHN 25.54gを添加し、60℃で15分撹拌した。続いて、BTDA 53.14g(0.17mol)、BPDA 49.01gと(0.17mol)とCHN 25.54gを添加し、95℃で1時間撹拌し、続いて150℃に昇温して4時間反応させて、固形分62.9質量%のポリイミドシロキサンP-7溶液を得た。
【0116】
製造例8(樹脂溶液:P-8)
温度計、乾燥窒素導入口、温水・冷却水による加熱・冷却装置、および、撹拌装置を付した反応釜に、APPS1 204.68g(0.24mоl)、 APPS2 26.35g(0.017mol)、SiDA 8.43g(0.034mоl)、BAHF 18.68g(0.051mol)をCHN 193.23gと共に仕込み、50℃で15分撹拌して溶解させた後、PA 2.01g(0.014mol)とCHN 24.15gを添加し、60℃で15分撹拌した。続いて、BTDA 53.14g(0.17mol)、BPDA 49.01gと(0.17mol)とCHN 24.15gを添加し、95℃で1時間撹拌し、続いて150℃に昇温して4時間反応させて、固形分62.1質量%のポリイミドシロキサンP-8溶液を得た。
【0117】
製造例9(樹脂溶液:P-9)
温度計、乾燥窒素導入口、温水・冷却水による加熱・冷却装置、および、撹拌装置を付した反応釜に、APPS1 233.92g(0.27mol)、APPS2 26.35g(0.017mol)、BAHF 18.68g(0.051mol)をCHN 189.54gと共に仕込み、50℃で15分撹拌して溶解させた後、PA 10.07g(0.068mol)とCHN 23.69gを添加し、60℃で15分撹拌した。続いて、PMDA 66.37g(0.30mol)とCHN 23.69gを添加し、95℃で1時間撹拌し、続いて150℃に昇温して4時間反応させて、固形分62.5質量%のポリイミドシロキサンP-9溶液を得た。
【0118】
製造例10(樹脂溶液:P-10)
温度計、乾燥窒素導入口、温水・冷却水による加熱・冷却装置、および、撹拌装置を付した反応釜に、40℃で APPS1 33.54g(0.039mol)、NMP 154.99gをともに仕込み、溶解させた。ここに、PDA 9.84g(0.091mol)とNMP 19.37gを加えて溶解させた。次にBPDA 19.12g(0.065mol)と、BTDA 20.53g(0.064mol)をNMP 19.37gとともに加えた。60℃で4時間反応させて、固形分30質量%のポリイミド前駆体P-10溶液を得た。
【0119】
製造例1~10で得られた樹脂溶液に、表1~表3の内容に従って添加剤および溶剤を混合・撹拌し、樹脂膜用のワニスを作製した。ワニスは孔径0.1μmのPTFEフィルターでろ過を行った。これらのワニスを用い、前述の方法で第一の積層体および第二の積層体を作製した(実施例1~22、比較例1~4)。作製した積層体の詳細と各種評価結果について、表4~9にまとめた。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
表4~9の結果から、実施例1~22の積層体では、樹脂膜のバルク弾性率が特定の範囲内にあることにより、幅広いエネルギー密度のレーザーで第二の積層体から優れた位置精度で半導体素子を転写できた。さらに、バルク弾性率に加え、膜厚および接着強度の少なくとも一方が特定の好ましい範囲内であることで、より優れた位置精度で半導体素子を転写することができた。また、バルク弾性率、膜厚、接着強度および表面弾性率が特定の好ましい範囲内であることで、幅広いエネルギー密度のレーザー光でより優れた位置精度で半導体素子を転写することができた。一方、比較例1~4の積層体では、半導体素子を転写する際の位置精度に劣る結果となった。