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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139752
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】衝撃吸収保護シート
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/03 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
B65D81/03 100Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024048634
(22)【出願日】2024-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2023050605
(32)【優先日】2023-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】523109817
【氏名又は名称】石塚 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100124257
【弁理士】
【氏名又は名称】生井 和平
(72)【発明者】
【氏名】石塚 正夫
【テーマコード(参考)】
3E066
【Fターム(参考)】
3E066AA21
3E066BA02
3E066CA01
3E066CB03
3E066DA01
3E066DA05
3E066HA01
3E066JA23
3E066KA20
3E066LA01
3E066NA22
3E066NA60
(57)【要約】
【課題】外部から受ける衝撃に対しても長期にわたり十分な保護機能を有する衝撃吸収保護シートを提供する。
【解決手段】衝撃吸収保護シートは、発泡シート層10と、衝撃吸収セル20とからなる。発泡シート層10は、ガスバリア性を有し、柔軟性のあるものである。複数の衝撃吸収セル20は、発泡シート層10内に設けられ、外部から受ける衝撃を吸収可能な程度の容積のガスが内部に密閉されるものである。衝撃吸収セル20は、例えば発泡シート層10を貫通する貫通孔により提供され、第1表面保護シート層11により貫通孔の表の開口を密閉し、第2表面保護シート層12により貫通孔の裏の開口を密閉する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側から受ける衝撃を吸収し保護対象物を保護するための衝撃吸収保護シートであって、該衝撃吸収保護シートは、
ガスバリア性を有し、柔軟性のある発泡シート層と、
発泡シート層内に設けられ、外部から受ける衝撃を吸収可能な程度の容積のガスが内部に密閉される複数の衝撃吸収セルと、
を具備することを特徴とする衝撃吸収保護シート。
【請求項2】
請求項1に記載の衝撃吸収保護シートにおいて、前記衝撃吸収セルは、発泡シート層を貫通する貫通孔により提供され、
さらに、衝撃吸収保護シートは、
貫通孔の表の開口を密閉するガスバリア性を有する第1表面保護シート層と、
貫通孔の裏の開口を密閉するガスバリア性を有する第2表面保護シート層と、
を有することを特徴とする衝撃吸収保護シート。
【請求項3】
請求項2に記載の衝撃吸収保護シートにおいて、前記貫通孔は、六角柱状の貫通孔であることを特徴とする衝撃吸収保護シート。
【請求項4】
請求項2に記載の衝撃吸収保護シートにおいて、
前記第1表面保護シート層は、想定される外側から受ける衝撃に応じてその硬度が選択され、
前記第2表面保護シート層は、保護対象物に擦り傷を付けないような軟性材料からなる、
ことを特徴とする衝撃吸収保護シート。
【請求項5】
請求項1に記載の衝撃吸収保護シートにおいて、前記衝撃吸収セルは、発泡シート層に開けられる有底凹部により提供され、
さらに、衝撃吸収保護シートは、有底凹部の開口を密閉するガスバリア性を有する表面保護シート層を有する、
ことを特徴とする衝撃吸収保護シート。
【請求項6】
請求項1に記載の衝撃吸収保護シートにおいて、前記衝撃吸収セルは、深さ方向に向かってテーパー状に設けられることを特徴とする衝撃吸収保護シート。
【請求項7】
請求項1に記載の衝撃吸収保護シートにおいて、前記衝撃吸収セルは、発泡シート層内に設けられる独立気泡構造により提供されることを特徴とする衝撃吸収保護シート。
【請求項8】
請求項1に記載の衝撃吸収保護シートは、耐候性カバーに覆われる、又は耐候性カバー内側に装着される、ことを特徴とする衝撃吸収保護シート。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れかに記載の衝撃吸収保護シートは、所定の大きさで折り畳み可能となるように構成される折り曲げ部を有する、ことを特徴とする衝撃吸収保護シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衝撃吸収保護シートに関し、特に、外側から受ける衝撃を吸収し保護対象物を保護するための衝撃吸収保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化や気象変動等の影響か、雹(ヘイル)による被害が全世界的に深刻化している。特に西欧や南米では、野球ボール大かそれ以上の大きさの雹が確認されている。このような雹が自動車やオートバイ、航空機、家屋の屋根等に降り落ちると、その衝撃は凄まじく、深刻なダメージや事故に繋がるケースも報告されている。例えば自動車の場合、所謂モータープールには新車の自動車が大量に置かれている。このようなモータープールに雹が降り落ちると、大量の自動車の屋根やボンネットがボコボコに凹んだり、フロント・リアガラスが割れたりといった甚大な被害になる。このような被害は、自動車製造販売会社だけでなく、損害保険会社としても損失は大きい。
【0003】
このような雹被害対策として、気泡緩衝材や風船状のエアカバー、傘タイプのカバー等、種々のものが存在する。また、例えば発泡シートを用いるものも存在する。発泡シートは、物品の梱包材、気体又は液体から保護が必要な部品等の周縁部分を密封するシール材、振動及び衝撃を緩衝する緩衝材、粘着シートの基材等の様々な用途に使用されている。
【0004】
このような発泡シートを自動車の保護用部材として用いるものに、例えば特許文献1がある。特許文献1には、厚みや曲げ剛性、衝撃吸収率を一定範囲に調整することで、高い衝撃吸収性を有し、曲面形状への追従性に優れる架橋樹脂発泡シートが開示されている。具体的には、厚みが3~15mmであり、1000mm四方サイズの曲げ剛性が10,000~40,000,000MPa・mmであり、287gの鉄球を落下させたときの衝撃吸収率が40~95%である保護用部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-150737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の保護用部材は、例えばより大きい雹による衝撃に対して適用させようとした場合には、より厚みを厚くする必要がある。そうすると、曲げ剛性が低下し、追従性が悪くなる可能性がある。また、架橋樹脂発泡シートは、使用していくうちに所謂ヘタリが生じ、厚みが薄くなってくる場合もある。そうすると、衝撃吸収率が悪くなり、十分な保護機能を発揮できなくなる可能性もある。
【0007】
したがって、より大きい雹の衝撃といった強い衝撃に対しても長期にわたり十分に適用可能な衝撃吸収保護シートの開発が望まれていた。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、外部から受ける衝撃に対しても長期にわたり十分な保護機能を有する衝撃吸収保護シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明による衝撃吸収保護シートは、ガスバリア性を有し、柔軟性のある発泡シート層と、発泡シート層内に設けられ、外部から受ける衝撃を吸収可能な程度の容積のガスが内部に密閉される複数の衝撃吸収セルと、を具備するものである。
【0010】
ここで、衝撃吸収セルは、発泡シート層を貫通する貫通孔により提供され、さらに、衝撃吸収保護シートは、貫通孔の表の開口を密閉するガスバリア性を有する第1表面保護シート層と、貫通孔の裏の開口を密閉するガスバリア性を有する第2表面保護シート層と、を有するものであれば良い。
【0011】
また、貫通孔は、六角柱状の貫通孔であれば良い。
【0012】
また、第1表面保護シート層は、想定される外側から受ける衝撃に応じてその硬度が選択され、第2表面保護シート層は、保護対象物に擦り傷を付けないような軟性材料からなるものであれば良い。
【0013】
また、衝撃吸収セルは、発泡シート層に開けられる有底凹部により提供され、さらに、衝撃吸収保護シートは、有底凹部の開口を密閉するガスバリア性を有する表面保護シート層を有するものであっても良い。
【0014】
また、衝撃吸収セルは、深さ方向に向かってテーパー状に設けられるものであっても良い。
【0015】
また、衝撃吸収セルは、発泡シート層内に設けられる独立気泡構造により提供されるものであっても良い。
【0016】
また、衝撃吸収保護シートは、耐候性カバーに覆われる、又は耐候性カバー内側に装着されるものであっても良い。
【0017】
また、衝撃吸収保護シートは、所定の大きさで折り畳み可能となるように構成される折り曲げ部を有するものであっても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明の衝撃吸収保護シートには、外部から受ける衝撃に対しても長期にわたり十分な保護機能を有するという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の衝撃吸収保護シートを説明するための概略図である。
図2図2は、本発明の衝撃吸収保護シートの他の例を説明するための概略側断面図である。
図3図3は、本発明の衝撃吸収保護シートのさらに他の例を説明するための概略側断面図である。
図4図4は、本発明の衝撃吸収保護シートを保護対象物に対して利用する際の使用例を説明するための概略側断面図である。
図5図5は、本発明の衝撃吸収保護シートを保護対象物に対して利用する際の他の使用例を説明するための概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を図示例と共に説明する。本発明の衝撃吸収保護シートは、外部から受ける衝撃を吸収し保護対象物を保護するためのものである。具体的には、本発明の衝撃吸収保護シートは、例えば雹等が降り落ちることにより受ける衝撃を吸収し、自動車やオートバイ、航空機、家屋の屋根等の保護対象物を保護するために用いられる。
【0021】
図1は、本発明の衝撃吸収保護シートを説明するための概略図であり、図1(a)が上面図であり、図1(b)がb-b側断面図である。図示の通り、本発明の衝撃吸収保護シート1は、発泡シート層10と、衝撃吸収セル20とから主に構成されるものである。なお、衝撃吸収保護シート1は図示例のような縦横比のものには特に限定されず、例えばロール状に巻かれるようなより長尺なものであっても良い。
【0022】
発泡シート層10は、ガスバリア性を有するものである。即ち、発泡シート層10は、空気を通さないものであれば良い。また、発泡シート層10は、柔軟性を有するものである。発砲シート層10は、衝撃吸収保護シート1の基材となるものであり、柔軟性を持たせることで保護対象物の形状に沿ってこれを覆うことが可能なものとなる。具体的には、発泡シート層10は、独立気泡体を有する無架橋樹脂発砲シートであれば良い。発泡シート層10の材料としては、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレンといった合成樹脂により成形可能である。一例を挙げると、発泡シート層10の厚みは3mmから15mm程度、好ましくは10mm程度のものであれば良い。発泡シート層10の厚みは、想定される外部から受ける衝撃に応じて適宜選択すれば良く、特定の厚みのものには限定されない。
【0023】
衝撃吸収セル20は、発泡シート層10内に複数設けられ、外部から受ける衝撃を吸収可能な程度の容積のガスが内部に密閉されるものである。なお、衝撃吸収セル20の数や大きさは図示例のものには限定されない。衝撃吸収セル20の大きさについては、外部から受ける衝撃を吸収可能な程度の容積のガスが内部に密閉されるものであれば良い。即ち、想定される外部から受ける衝撃に応じて衝撃吸収セル20の大きさを適宜選択すれば良い。図示の通り、衝撃吸収セル20は、発泡シート層10内に均等に配置されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、衝撃吸収セル20がランダムに配置されていたとしても、全体として均一に配置されるように構成されていれば良い。衝撃吸収セル20の部分の衝撃吸収効果が最も高いため、複数の衝撃吸収セル20の間は広くないほうが好ましい。
【0024】
具体的には、衝撃吸収セル20は、例えば空気がその内部に密閉される。図1に示される例では、衝撃吸収セル20は、発泡シート層10を貫通する貫通孔により提供されている。そして、図示例では、貫通孔の表裏開口を密閉するために、第1表面保護シート層11と、第2表面保護シート層12とを用いている。第1表面保護シート層11は、衝撃吸収セル20である貫通孔の表の開口を密閉するガスバリア性を有するものである。第2表面保護シート層12は、衝撃吸収セル20である貫通孔の裏の開口を密閉するガスバリア性を有するものである。第1表面保護シート層11及び第2表面保護シート層12もガスバリア性を有するので、衝撃吸収セル20の内部のガスは密閉された状態となる。なお、第1表面保護シート層11や第2表面保護シート層12は、発泡シート層10に対して合成樹脂用接着剤や熱溶着等により気密に固定されれば良い。
【0025】
ここで、第1表面保護シート層11は、想定される外部から受ける衝撃に応じてその硬度が選択されれば良い。例えば第1表面保護シート層11を発泡シート層10よりも硬質な素材とすることで、雹の衝突時の点衝撃を面方向に分散させることも可能となる。発泡シート層10では、第1表面保護シート層11により面方向に分散された衝撃を吸収することになる。具体的には、第1表面保護シート層11は、独立気泡体を有する無架橋樹脂発砲シートであれば良い。第1表面保護シート層11の材料としては、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレンといった合成樹脂により成形可能である。また、第1表面保護シート層11は、例えばクッションフロア材やプラスチック板といったものを用いることも可能である。衝撃吸収保護シート1にはある程度柔軟性が必要なため、第1表面保護シート層11は硬質な分、発泡シート層10に比べて薄いものを用いれば良い。一例を挙げると、第1表面保護シート層11の厚みは、0.1mmから3mm程度であれば良い。但し、雹の直接的な衝突により破断しない程度の硬度を有している必要がある。また、第1表面保護シート層11は、適宜耐候性を有するような機能性材料により構成されても良い。
【0026】
そして、第2表面保護シート層12は、発泡シート層10で吸収された衝撃をさらに均等に吸収する効果を有するものであれば良い。また、第2表面保護シート層12は、例えば保護対象物に擦り傷を付けないような軟性材料からなるものを用いても良い。具体的には、第2表面保護シート層12は、独立気泡体を有する無架橋樹脂発砲シートであれば良い。第2表面保護シート層12の材料としては、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレンといった合成樹脂により成形可能である。第2表面保護シート層12は、発泡シート層10で大幅に吸収された衝撃をさらに均等に吸収する効果を有するものであるため、発泡シート層10に比べて薄いものを用いることが可能である。一例を挙げると、第2表面保護シート層12の厚みは、1mmから10mm程度であれば良い。また、雹が直接的に衝突することはないため、硬度は低いものであっても良い。さらに、第2表面保護シート層12の保護対象物に接する側に、例えば固定用の磁石シートを配置しても良い。さらにまた、磁石シートがガスバリア性を有するものであれば、磁石シート自体を第2表面保護シート層として用いても良い。
【0027】
図1(a)に示される例では、衝撃吸収セル20は、六角柱状の貫通孔により提供されている。即ち、発泡シート層10は、所謂ハニカム構造を有するように構成されている。このように発泡シート層10をハニカム構造とすることで、衝撃吸収効果を高めることが可能である。したがって、第1表面保護シート層11において雹の点衝撃が分散された面方向の衝撃を発泡シート層10により確実に受け止めることが可能となる。しかしながら、本発明はこれに限定されず、衝撃吸収セルは、円柱状や多角柱状の貫通孔により提供されても良い。
【0028】
このように構成される本発明の衝撃吸収保護シート1は、衝撃吸収セル20が気密状態となり、外部から受ける衝撃を吸収することが可能となる。従来の一般的なドーム状の突起の中に空気を閉じ込めた気泡緩衝材では、雹による衝撃により破裂しその後の衝撃には何ら吸収効果を発揮できない。しかしながら、本発明の衝撃吸収保護シート1では、雹による衝撃を受けても衝撃吸収セル20が破裂するおそれはないため、繰り返し衝撃を受けても常に衝撃を吸収し続けることが可能となる。衝撃吸収効果としては、衝撃吸収セル20に密閉された空気の効果が最も高いため、衝撃吸収セル20が破裂しない限り、密閉された空気の逃げ場もないので、所謂ヘタリも生じ得ない。したがって、本発明の衝撃吸収保護シート1は、外部から受ける衝撃に対しても長期にわたり十分な保護機能を有する。
【0029】
以下、落錘式衝撃試験機により本発明の衝撃吸収保護シートの衝撃試験を行った結果を具体的に記す。錘の落下高さは70mm、落下質量は0.59kg、最大荷重容量は2kN、衝突時の運動エネルギは0.41Jという条件で半球状直径20mmのストライカを鉛直方向から落錘し、鋼板上に配置した衝撃吸収保護シートに衝撃を与えた。鋼板が凹む衝撃力はおよそ300Nである。即ち、衝撃吸収後の衝撃力が300N以上だと鋼板が凹むことになる。本発明の衝撃吸収保護シートを4種類試した。具体的には、
A:第1表面保護シート層が1.7mm厚のクッションフロア材、発泡シート層が10mm厚のポリエチレン材、第2表面保護シート層が5mmのポリエチレン材
B:第1表面保護シート層が0.2mm厚のアクリル板、発泡シート層が10mm厚のポリエチレン材、第2表面保護シート層が4mmのポリエチレン材
C:第1表面保護シート層が2mm厚のポリエチレン材、発泡シート層が10mm厚のポリエチレン材、第2表面保護シート層が5mmのポリエチレン材
D:第1表面保護シート層が1mm厚のポリエチレン材、発泡シート層が10mm厚のポリエチレン材、第2表面保護シート層が5mmのポリエチレン材
といった衝撃吸収保護シートに対して試験を行った。何れも六角柱状の貫通孔の幅は10mm程度、間隔は3mm程度の衝撃吸収セルとした。その結果、何れの条件であっても、3回連続試験では平均値で97N-165N、10回連続試験でも平均値で88N-194Nの衝撃力であり、最高値でも300未満であった。即ち、何れの衝撃吸収保護シートであっても、鋼板が凹むことはなかった。また、衝撃吸収保護シートの厚みに対する衝撃力は低く、衝撃吸収率は非常に高いことも分かった。即ち、他の従来技術の衝撃吸収保護シートと比べて、本発明の衝撃吸収保護シートでは、同じ衝撃吸収率を得るためにはより薄いシートとすることが可能である。
【0030】
さらに、本発明の衝撃吸収保護シートでは、点衝撃が加わると、第1表面保護シート層11を介して下層の発泡シート層10へ衝撃が伝わる。このとき、発泡シート層10内に設けられる衝撃吸収セル20は、上層からの衝撃を吸収すると共に、面方向に膨張するため、隣同士の衝撃吸収セル20へもそれらの間の壁を通して衝撃が伝わることになる。このような構造により、発泡シート層10では、点衝撃を面方向に分散させることが可能となる。これにより、本発明の衝撃吸収保護シートでは、時間に対する衝撃力の変化が急峻な変化とはならず、遅くなだらかな変化となる。従来の一般的な発泡シートだと、衝撃力の変化が急峻な変化となり、衝撃を吸収しきれず自動車の屋根やボンネットが凹むおそれがある。しかしながら、本発明の衝撃吸収保護シートでは、衝撃力の変化がなだらかな変化となるため、自動車の屋根やボンネットを確実に保護可能となる。
【0031】
次に、本発明の衝撃吸収保護シートの他の例について図2を用いて説明する。図2は、本発明の衝撃吸収保護シートの他の例を説明するための概略側断面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図1では、衝撃吸収セル20が貫通孔により提供される例を示した。図2は、衝撃吸収セル20が、発泡シート層10に開けられる有底凹部21により提供される例である。即ち、有底凹部21が衝撃吸収セル20である。そして、有底凹部21の開口を密閉するために、表面保護シート層13を用いている。表面保護シート層13は、有底凹部21を密閉するガスバリア性を有するものである。表面保護シート層13により有底凹部21の内部のガスは密閉された状態となる。具体的には、表面保護シート層13は、独立気泡体を有する無架橋樹脂発砲シートであれば良い。表面保護シート層13の材料としては、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレンといった合成樹脂により成形可能である。表面保護シート層13は、発泡シート層10に対して合成樹脂用接着剤や熱溶着等により気密に固定されれば良い。なお、表面保護シート層13は、図1の第1表面保護シート層11に対応するものである。したがって、第1表面保護シート層11と同様に、表面保護シート層13も、想定される外部から受ける衝撃に応じてその硬度が選択されれば良い。
【0032】
ここで、図2に示される有底凹部21は、深さ方向に向かってテーパー状に設けられるものを示した。これにより、外部から受ける衝撃を最初に受ける表面保護シート層13に近い側のガスの容積をより増すことが可能となり、衝撃を最初に受ける側の衝撃吸収効果をより高めることが可能となる。また、例えば有底凹部21を金型により射出成形したり型押しによるプレス成形したりする場合に、垂直な側面の凹部よりもテーパー状の凹部のほうが型を抜き易いといった利点もある。しかしながら、本発明はこれに限定されず、有底凹部は垂直な側面の凹部であっても良い。なお、図1の貫通孔により提供される衝撃吸収セル20についても、同様に深さ方向に向かってテーパー状に設けられるように構成しても勿論良い。また、図2に示される有底凹部21も六角柱状に成形されれば良いが、円柱状や多角柱状のものであっても良い。
【0033】
本発明の衝撃吸収保護シートのさらに他の例について図3を用いて説明する。図3は、本発明の衝撃吸収保護シートのさらに他の例を説明するための概略側断面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図1図2では、衝撃吸収セルは表面保護シート層等で密閉する例を示した。図3は、衝撃吸収セル20が、発泡シート層10内に開けられる独立気泡構造22により提供される例である。即ち、独立気泡構造22が衝撃吸収セルである。発泡シート層10がガスバリア性を有するものであるため、独立気泡構造22内のガスは密閉されることになるので、上述の図示例と同様に、独立気泡構造22を衝撃吸収セルとして用いることが可能である。独立気泡構造22は、発泡シート層10を成形する材料の粘弾性特性や発泡材含浸量等、成形時の圧力や発泡温度、減圧速度等を適宜調整することで構成されれば良い。独立気泡構造22が、外部から受ける衝撃を吸収可能な程度の容積のガスが内部に密閉されるものであれば、これまで説明した例と同様に、外部から受ける衝撃に対しても長期にわたり十分な保護機能を有する。独立気泡構造22は、発泡シート層10内にランダムに配置されていたとしても、全体として均一に配置されるように構成されていれば良い。なお、発泡シート層10内には、衝撃吸収セルとなる独立気泡構造22以外に通常の小さい発泡体が構成されていても良い。即ち、独立気泡体を有する無架橋樹脂発砲シート内に、外部から受ける衝撃を吸収可能な程度の容積のガスが内部に密閉される独立気泡構造22が構成されるように成形されれば良い。なお、必要により表面に別途表面保護シート層を設けても勿論良い。
【0034】
ここで、衝撃吸収保護シート1は、そのまま保護対象物に対して利用しても良いが、以下に説明するように、適宜カバーを用いて保護対象物に対して利用するようにしても良い。図4は、本発明の衝撃吸収保護シートを保護対象物に対して利用する際の使用例を説明するための概略側断面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示の通り、衝撃吸収保護シート1は、耐候性カバー30により覆われている。耐候性カバー30は、紫外線や熱、雨水や海水等の屋外環境に対して衝撃吸収保護シート1が変形や変色、劣化等の変質を起こさないようにするためのものである。例えば図示例のように、耐候性カバー30が袋状に構成されており、衝撃吸収保護シート1はその内部に収納されれば良い。また、耐候性カバー30は、布状のものとし、内側に適宜面ファスナー等を用いて衝撃吸収保護シート1が装着されるように構成しても良い。このように耐候性カバー30により表面が保護された状態の衝撃吸収保護シート1を、自動車の車体形状に沿って配置すれば良い。
【0035】
また、衝撃吸収保護シート1は、一枚の一様なシートで用いられなくても良い。図5は、本発明の衝撃吸収保護シートを保護対象物に対して利用する際の他の使用例を説明するための概略上面図である。図中、図4と同一の符号を付した部分は同一物を表している。本発明の衝撃吸収保護シートは、所定の大きさで折り畳み可能となるように構成されても良い。即ち、例えば図示例のように、複数の衝撃吸収保護シート1を耐候性カバー30に収納し、複数の衝撃吸収保護シート1の間の部分の耐候性カバー30を縫い付けて袋状に構成すれば良い。この縫い付けた部分が折り曲げ部40となり、折り曲げ部40の部分で折り畳み可能となる。また、衝撃吸収保護シート1に肉薄部を設け、ここを折り曲げ部40として用いても良い。なお、折り曲げ部40のところは衝撃吸収効果が低くなるため、折り曲げ部40の幅は広くないほうが好ましい。
【0036】
本発明の衝撃吸収保護シートは、このように構成されることで、強い衝撃に対しても長期にわたり十分に適用可能な状態で、自動車の屋根やボンネット、フロント・リアガラスといった車体形状に沿って適宜柔軟に設置することが可能となる。また、折り畳み可能に構成できることから、使用しないときには小さく折り畳め収納も容易となる。なお、衝撃吸収保護シートはシート状であるため適宜丸めて収納しても良い。
【0037】
なお、本発明の衝撃吸収保護シートは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0038】
1 衝撃吸収保護シート
10 発泡シート層
11 第1表面保護シート層
12 第2表面保護シート層
13 表面保護シート層
20 衝撃吸収セル
21 有底凹部
22 独立気泡構造
30 耐候性カバー
40 折り曲げ部
図1
図2
図3
図4
図5