IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 五洋建設株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人京都大学の特許一覧

特開2024-13978塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法
<>
  • 特開-塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法 図1
  • 特開-塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法 図2
  • 特開-塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法 図3
  • 特開-塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法 図4
  • 特開-塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法 図5
  • 特開-塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法 図6
  • 特開-塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法 図7
  • 特開-塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法 図8
  • 特開-塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法 図9
  • 特開-塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法 図10
  • 特開-塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法 図11
  • 特開-塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法 図12
  • 特開-塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法 図13
  • 特開-塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法 図14
  • 特開-塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法 図15
  • 特開-塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013978
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/32 20060101AFI20240125BHJP
   E02D 27/16 20060101ALI20240125BHJP
   E02D 27/42 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
E02D27/32 Z
E02D27/16
E02D27/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116476
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】三好 俊康
(72)【発明者】
【氏名】吉田 誠
(72)【発明者】
【氏名】三浦 成久
(72)【発明者】
【氏名】久松 明史
(72)【発明者】
【氏名】白 可
(72)【発明者】
【氏名】木村 亮
(72)【発明者】
【氏名】肥後 陽介
(72)【発明者】
【氏名】音田 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】澤村 康生
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046CA08
2D046DA05
2D046DA31
(57)【要約】
【課題】洋上風力発電設備等の塔状構造物全体の制震性を高め、地震動等による洋上風力発電設備等のモノパイル式基礎等の基礎用筒状体への負担を軽減することができる塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法の提供。
【解決手段】塔状構造物3の制震構造8は、塔状構造物の周囲の水底地盤1に貫入された複数の杭状体10,10…と、隣り合う杭状体10,10間に架設される梁部11aを有する平面視多角形枠状の上部工11とを備え、塔状構造物3が上部工11の枠内に立設され、上部工11と塔状構造物とが複数の制震用連結体12,12…によって連結されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底地盤に貫入された状態で前記水底地盤に立設されてなる塔状構造物の制震構造において、
前記塔状構造物の周囲の前記水底地盤に貫入された状態で前記水底地盤に立設されてなる複数の杭状体と、前記杭状体間に架設される梁部を有する平面視多角形枠状の上部工とを備え、
前記塔状構造物が前記上部工の枠内に立設され、
前記上部工と前記塔状構造物とが複数の制震用連結体によって連結されていることを特徴とする塔状構造物の制震構造。
【請求項2】
上下方向に間隔をおいて配置された複数の前記制震用連結体が、周方向に複数組備えられている請求項1に記載の塔状構造物の制震構造。
【請求項3】
前記塔状構造物及び前記上部工には、前記制震用連結体の端部が着脱可能に連結される連結具が固定されている請求項1又は2に記載の塔状構造物の制震構造。
【請求項4】
前記制震用連結体は、ダンパーによって構成されている請求項1又は2に記載の塔状構造物の制震構造。
【請求項5】
前記制震用連結体は、ダンパーによって構成されている請求項3に記載の塔状構造物の制震構造。
【請求項6】
水底地盤に貫入された状態に塔状構造物又は該塔状構造物の一部を立設する塔状構造物立設工程と、
前記塔状構造物の周囲の前記水底地盤に貫入させた状態に複数の杭状体を打設する杭状体打設工程と、
前記杭状体間に架設される梁部を有する多角形枠状の上部工を設置する上部工設置工程と、
前記上部工と該上部工の枠内に立設された前記塔状構造物とを複数の制震用連結体によって連結する制震用連結体取付工程と、
を順次実施することを特徴とする制震構造付き塔状構造物の構築方法。
【請求項7】
後に構築する塔状構造物の周囲の水底地盤に貫入させた状態に複数の杭状体を打設する杭状体打設工程と、
前記杭状体間に架設される梁部を有する多角形枠状の上部工を設置する上部工設置工程と、
前記上部工の枠内を通して塔状構造物又はそれを構成する基礎用筒状体を前記水底地盤に貫入させ、前記塔状構造物又は前記基礎用筒状体を立設する塔状構造物立設工程と、
前記上部工と該上部工の枠内に立設された前記塔状構造物とを複数の制震用連結体によって連結する制震用連結体取付工程と、
を順次実施することを特徴とする制震構造付き塔状構造物の構築方法。
【請求項8】
前記上部工設置工程は、予め形成された一又は複数のプレキャストコンクリート部材を前記杭状体の杭頭部に接合させて前記上部工を設置する請求項6又は7に記載の制震構造付き塔状構造物の構築方法。
【請求項9】
前記塔状構造物及び前記上部工の所定の位置に予め前記制震用連結体の端部が着脱可能に連結される連結具を固定しておく請求項6又は7に記載の制震構造付き塔状構造物の構築方法。
【請求項10】
前記塔状構造物及び前記上部工の所定の位置に予め前記制震用連結体の端部が着脱可能に連結される連結具を固定しておく請求項8に記載の制震構造付き塔状構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上風力発電装置等の塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洋上風力発電設備の一態様には、水底地盤に貫入させた基礎用筒状体からなるモノパイル式基礎と、基礎用筒状体に下端が支持された塔本体部とを備え、塔本体部の上端部に風車(ナセル・ロータ)等からなる風力発電用装置を支持させたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
モノパイル式基礎は、一般的且つコストが安いことから着床式洋上風力発電装置の基礎として欧州等で広く用いられているが、地震が多発する日本においては、その基礎となるモノパイル式基礎への地震動の影響が大きく、特に大水深の水域に設置する場合、地震動によってモノパイル式基礎に大きな変形が生じるおそれがあることから、この種の塔状構造物の設計は厳格に行われている。
【0004】
即ち、この種の塔状構造物では、下部が地盤に貫入・支持されており、地震発生時等に大きな曲げモーメントやせん断力が作用することから、安全性を確保するため、当該曲げモーメントやせん断力に対抗できるように予め塔状構造物の基礎部分であるモノパイルの外径や肉厚を大きくする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-37397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、塔状構造物の基礎部分であるモノパイルの外径や肉厚が大きくなると、当該モノパイルの製造コスト及びその建設コストが増大するという問題がある。
【0007】
また、モノパイルが大型化すると、モノパイルの取り回しや打設に特殊な作業船を使用する必要があるとともに、モノパイルを打設する際に時間を要するため、モノパイル式基礎の施工におけるコストの増加、工期の長期化及び安全上のリスクが高まるという問題があった。
【0008】
特に、モノパイル式基礎は、1本杭の基礎であり、地盤によっては地盤との共振により過大な荷重が生じても、構造・形状が単純であるがゆえに、形状の修正などの設計的な工夫による地震荷重の低減が困難であり、過大な基礎形状となるリスクがあった。
【0009】
よって、モノパイルの大型化に伴うモノパイル式基礎の施工に要するコスト増加、工期の長期化及び安全上のリスクを軽減するためには、地震動等による塔状構造物への負担を軽減し、モノパイルの外径や肉厚を小さくすることが望まれる。
【0010】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、洋上風力発電設備等の塔状構造物全体の制震性を高め、地震動等による洋上風力発電設備等のモノパイル式基礎等の基礎用筒状体への負担を軽減することができる塔状構造物の制震構造及び制震構造付き塔状構造物の構築方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、水底地盤に貫入された状態で前記水底地盤に立設されてなる塔状構造物の制震構造において、前記塔状構造物の周囲の前記水底地盤に貫入された状態で前記水底地盤に立設されてなる複数の杭状体と、前記杭状体間に架設される梁部を有する平面視多角形枠状の上部工とを備え、前記塔状構造物が前記上部工の枠内に立設され、前記上部工と前記塔状構造物とが複数の制震用連結体によって連結されていることにある。
【0012】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、上下方向に間隔をおいて配置された複数の前記制震用連結体が、周方向に複数組備えられていることにある。
【0013】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記塔状構造物及び前記上部工には、前記制震用連結体の端部が着脱可能に連結される連結具が固定されていることにある。
【0014】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記制震用連結体は、ダンパーによって構成されていることにある。
【0015】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項3の構成に加え、前記制震用連結体は、ダンパーによって構成されていることにある。
【0016】
請求項6に記載の発明の特徴は、水底地盤に貫入された状態に塔状構造物又は該塔状構造物の一部を立設する塔状構造物立設工程と、前記塔状構造物の周囲の前記水底地盤に貫入させた状態に複数の杭状体を打設する杭状体打設工程と、前記杭状体間に架設される梁部を有する多角形枠状の上部工を設置する上部工設置工程と、前記上部工と該上部工の枠内に立設された前記塔状構造物とを複数の制震用連結体によって連結する制震用連結体取付工程と、を順次実施することにある。
【0017】
請求項7に記載の発明の特徴は、後に構築する塔状構造物の周囲の水底地盤に貫入させた状態に複数の杭状体を打設する杭状体打設工程と、前記杭状体間に架設される梁部を有する多角形枠状の上部工を設置する上部工設置工程と、前記上部工の枠内を通して塔状構造物又はそれを構成する基礎用筒状体を前記水底地盤に貫入させ、前記塔状構造物又は前記基礎用筒状体を立設する塔状構造物立設工程と、前記上部工と該上部工の枠内に立設された前記塔状構造物とを複数の制震用連結体によって連結する制震用連結体取付工程と、を順次実施することにある。
【0018】
請求項8に記載の発明の特徴は、請求項6又は7の構成に加え、前記上部工設置工程は、予め形成された一又は複数のプレキャストコンクリート部材を前記杭状体の杭頭部に接合させて前記上部工を設置することにある。
【0019】
請求項9に記載の発明の特徴は、請求項6又は7の構成に加え、前記塔状構造物及び前記上部工の所定の位置に予め前記制震用連結体の端部が着脱可能に連結される連結具を固定しておくことにある。
【0020】
請求項10に記載の発明の特徴は、請求項8の構成に加え、前記塔状構造物及び前記上部工の所定の位置に予め前記制震用連結体の端部が着脱可能に連結される連結具を固定しておくことにある。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る塔状構造物の制震構造は、請求項1に記載の構成を具備することによって、制震用連結体を介して連結された杭支持構造物に地震動によるエネルギを負担させ、塔状構造物全体への負担を軽減することができる。また、塔状構造物全体への負担が軽減されることによって、地震時の塔状構造物へ作用する断面力を軽減することができ、その分、モノパイル等の基礎用筒状体の外径や肉厚を小さくすることができる。
【0022】
さらに、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、構造的に安定して塔状構造物と杭支持構造物とを連結することができる。
【0023】
さらにまた、本発明において、請求項3に記載の構成を具備することによって、塔状構造物と杭支持構造物とを容易且つ効率的に連結することができる。
【0024】
また、本発明において、請求項4乃至5に記載の構成を具備することによって、ダンパーによって塔状構造物に作用する地震動等を吸収し、好適に制震することができる。
【0025】
本発明において、請求項6に記載の構成を具備することによって、立設された塔状構造物と杭支持構造物とを連結し、制震構造を構築することができる。
【0026】
また、本発明において、請求項7に記載の構成を具備することによって、区支持構造物を構築した後に、塔状構造物を立設し、塔状構造物と杭支持構造物とを連結し、制震構造を構築することができる。
【0027】
さらに、本発明において、請求項8に記載の構成を具備することによって、効率的に杭支持構造物の上部工を設置することができ、工期を短縮することができる。
【0028】
さらに、本発明において、請求項9乃至10に記載の構成を具備することによって、塔状構造物と杭支持構造物とを容易且つ効率的に連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る塔状構造物の制震構造の実施態様を示す正面図である。
図2】同上の制震構造部分を示す部分拡大平面図である。
図3図2中のA-A線矢視断面図である。
図4】本発明に係る制震構造付き塔状構造物の構築方法における塔状構造物立設工程の基礎用筒状体を打設した状態を示す部分拡大縦断面図である。
図5】同上の塔状構造物立設工程の接続用筒状体を基礎用筒状体に連結した状態を示す部分拡大縦断面図である。
図6】同上の杭状体打設工程の状態を示す部分拡大縦断面図である。
図7】同上の上部工設置工程の状態を示す部分拡大縦断面図である。
図8】同上の制震用連結体連結工程の状態を示す部分拡大縦断面図である。
図9】本発明に係る制震構造付き塔状構造物の構築方法の他の実施態様を示す図であって、杭状体打設工程の状態を示す部分拡大縦断面図である。
図10】同上の上部工設置工程の状態を示す部分拡大縦断面図である。
図11】同上の塔状構造物立設工程の基礎用筒状体を水底地盤に接地させた状態を示す部分拡大縦断面図である。
図12】同上の塔状構造物立設工程の接続用筒状体を基礎用筒状体に連結した状態を示す部分拡大縦断面図である。
図13】同上の制震用連結体連結工程の状態を示す部分拡大縦断面図である。
図14】本発明に係る塔状構造物の制震構造の他の実施態様を示す部分拡大平面図である。
図15】同上のB-B線矢視断面図である。
図16】本発明に係る塔状構造物の制震構造のさらに他の実施態様を示すB-B線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明に係る塔状構造物の制震構造の実施態様を図1図3に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は岩盤等の地盤、符号2は水面である。また、本実施例は、塔状構造物としてモノパイル式洋上風力発電設備3を例に説明する。
【0031】
洋上風力発電設備3は、図1に示すように、水底地盤1に貫入された状態で水底地盤1に立設されてなる基礎用筒状体4(モノパイル式基礎)と、基礎用筒状体4の上端に連結用筒状体5(トラジッションピース)を介して連結された中空筒状の塔本体部6と、塔本体部6の上端部に支持された風車設備7(ナセル・ロータ)とを備え、基礎用筒状体4、連結用筒状体5及び塔本体部6とで塔型を成している。
【0032】
基礎用筒状体4は、鋼管等によって構成され、上下端が開口した円筒状等の筒状の本体部4aと、本体部4aの上端部に一体に形成された上方が先細りとなる円錐台筒状の連結部4bとを備え、連結部4bの外側に連結用筒状体5のスカート部5aが嵌合されている。
【0033】
尚、基礎用筒状体4の態様は、円筒状に限定されず、例えば、多角形筒状等であってもよい。
【0034】
基礎用筒状体4は、図1図3に示すように、下側が所定の深さまで水底地盤1に貫入され、上側が所定の高さ分だけ水面2より突出した状態で打設され、水面上で連結用筒状体5が連結されている。尚、基礎用筒状体4の水底地盤1からの突出高さは、上述の実施例に限定されず、例えば、基礎用筒状体4の上端が水中に没した状態で連結用筒状体5と連結されていてもよい。
【0035】
また、この塔状構造物である洋上風力発電設備3(以下、塔状構造物3という)は、制震構造8を具備し、地震動等の外力による負担が軽減されるようになっている。
【0036】
この制震構造8は、塔状構造物3の周囲の水底地盤1に貫入された状態で水底地盤1に立設されてなる複数の杭状体10,10…と、杭状体10,10…に支持された平面視多角形枠状の上部工11とを備え、塔状構造物3が上部工11の枠内に立設され、上部工11と塔状構造物3とが複数の制震用連結体12,12…によって連結され、塔状構造物3に作用する地震動等による外力を杭状体10,10…と上部工11とからなる杭支持構造物13に負担させることによって制震するようになっている。
【0037】
杭状体10,10…は、鋼管等によって構成され、下側が所定の深さまで水底地盤1に貫入され、上側が所定の高さ分だけ水面2より突出し、且つ、上端が連結用筒状体5の上端と略同じ高さとなるように打設されている。
【0038】
尚、杭状体10,10…の水底地盤1への貫入深さは、少なくとも杭状体10が所定の高さで水底地盤1から突出した状態で自立できる長さとするが、地盤の状態、上部工11の形状及び重量、設置水域の海象条件等を考慮して設定する。例えば、本実施例では、杭状体10,10…を基礎用筒状体4と略同じ深さまで貫入させているが、杭状体10,10…の貫入深さを基礎用筒状体4よりも浅くしてもよいし、逆により深くしてもよい。
【0039】
上部工11は、予め形成されたプレキャストコンクリート部材によって構成され、隣り合う杭状体10,10間に架設される梁部11aを有する平面視多角形枠状(本実施例では、矩形枠状)に形成されている。尚、本実施例では、上部工11を一のプレキャストコンクリート部材で構成した場合について説明したが、上部工11を複数のプレキャストコンクリート部材によって構成するようにしてもよい。
【0040】
尚、本実施例では、上部工11を平面視矩形枠状とした場合について説明したが、上部工11の態様はこれに限定されず、平面視三角形枠状や五角形以上の多角形枠状であってもよい。
【0041】
上部工11を構成するプレキャストコンクリート部材は、隅部に厚み方向に貫通した杭接合孔14が形成され、この杭接合孔14に杭状体10,10…の杭頭部が挿入され、接合されるようになっている。
【0042】
尚、上部工11が三角形以上の平面視多角形枠状であって、隅部に杭状体10,10…が接合され、梁部11aが隣り合う杭状体10,10…間に架設されることから、杭状体10,10…は少なくとも3本以上となっている。
【0043】
尚、この各杭状体10,10…に上部工11が支持されてなる杭支持構造物13は、塔状構造物3とは異なる固有振動数を有するように設計されている。
【0044】
制震用連結体12,12…は、伸縮により衝撃を吸収するオイルダンパー、エアダンパー等のダンパーやバネ材等によって構成され、両端部がそれぞれ上部工11の枠内隅角部及び隅角部と対向する位置の塔状構造物3(本実施例で
は、連結用筒状体5)の外周面に連結されている。
【0045】
尚、本実施例では、以下の説明も含め、制震用連結体12の設置位置を両端部がそれぞれ上部工11の枠内隅角部及び隅角部と対向する位置の塔状構造物3(本実施例では、連結用筒状体5)の外周面としたが、制震用連結体12の設置位置は、これに限定されず、制震に適した配置であれば任意の配置とすることができ、例えば、上部工11の梁部11aの側面部と塔状構造物3(本実施例では、連結用筒状体5)の外周面とを連結するようにしてもよい。
【0046】
上部工11の枠内隅角部、及び隅角部と対向する位置の塔状構造物3(本実施例では、連結用筒状体5)の外周面には、連結具15,15…が固定され、制震用連結体12,12…の端部が連結具15,15…に着脱可能に連結されている。
【0047】
連結具15の態様は、特に限定されないが、例えば、互いに水平方向で対向する一対の軸受け板と、両軸受け板間に貫通される枢支軸部材とを備え、両軸受け板に制震用連結体の端部を枢支軸部材を介して上下方向に回動可能な状態に枢支させるようにすることが好ましい。
【0048】
また、上下方向に間隔をおいて配置された複数(本実施例では、上下一対)の制震用連結体12,12…が、周方向に複数組備えられ、安定した状態で塔状構造物3と上部工11とが連結されている。
【0049】
尚、上下方向に間隔をおいて配置された複数(本実施例では、上下一対)の制震用連結体12,12…の内、上側の制震用連結体12,12…は、水平方向に向けた状態で両端がそれぞれ上部工11の枠内隅角部及び隅角部と対向する位置の塔状構造物3の外周面に連結され、下側の制震用連結体12,12…は、塔状構造物3側の連結具15,15…よりも上部工11側の連結具15,15…が低い位置に配置され、傾いた配置に連結されており、トラス構造を成している。
【0050】
次に、本発明に係る制震構造付き塔状構造物3の構築方法について図4図8に基づいて説明する。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
先ず、既存の工法に基づいて基礎用筒状体4を地盤1に貫入させた状態で立設する。
【0052】
具体的には、特に図示しないが、先ず、陸上の工場や製作ヤードで製作されたモノパイル等の基礎用筒状体4を基地港に移送し、当該基地港において昇降式作業船(以下、SEP船という)のクレーンを用いてSEP船上に積込む。
【0053】
次に、基礎用筒状体4を積み込んだSEP船で設置海域まで海上輸送した後、設置海域にてSEP船のレグを降下して着底させ、レグに支持されたSEP船本体を水上に上昇させ、SEP船本体を波浪等に対し安定した状態とする。
【0054】
次に、SEP船のクレーンを用いてSEP船上に積載された基礎用筒状体4を吊り上げて起立させ、パイルグリッパー等で固定し、その状態で水底地盤1まで吊り下ろし着底させる。
【0055】
そして、水底地盤1に着底させた基礎用筒状体4の頭部をハンマ等で打ち込み、図4に示すように、基礎用筒状体4を水底地盤1に貫入させて設置する(基礎用筒状体立設工程)。
【0056】
次に、図5に示すように、基礎用筒状体4の連結部4bに連結用筒状体5のスカート部5aを嵌合させ、周方向の位置を調節した上で基礎用筒状体4の外周面と連結用筒状体5の内周面との間隙にグラウトを下部より注入する等して固定する。
【0057】
その際、連結用筒状体5の外周面には、予め所定の位置に連結具15,15…を固定しておく。
【0058】
次に、図6に示すように、塔状構造物3の基礎となる基礎用筒状体4の周囲の水底地盤1に複数の杭状体10,10…を打設する(杭状体打設工程)。
【0059】
具体的には、SEP船のクレーンを用いてSEP船や台船上に積載された杭状体10,10…を吊り上げて起立させ、その状態で水底地盤1まで吊り下ろし着底させ、その状態から水底地盤1に着底させた杭状体10,10…の頭部をハンマ等で打ち込む。
【0060】
そして、各杭状体10,10…について上記作業を実施し、図6に示すように、基礎用筒状体4からそれぞれ水平方向に所定の距離を隔てた位置に各杭状体10,10…を水底地盤1に貫入させて設置する。尚、各杭状体10,10…と基礎用筒状体4との間の距離は、略均等であることが望ましい。
【0061】
次に、上部工11を構成するプレキャストコンクリート部材をクレーン等で吊り上げて、基礎用筒状体4及び杭状体10,10…の上方に移動させ、上部工11の各杭接合孔14の位置を各杭状体10,10…の位置に調節し、その位置でプレキャストコンクリート部材を下降させ、杭接合孔14を杭頭部に嵌合させ、各杭状体10,10…に上部工11用のプレキャストコンクリート部材を仮支持させる。
【0062】
そして、図7に示すように、杭接合孔14及び杭状体10,10…の杭頭部にコンクリート又はモルタルからなる充填材16を打設し、杭接合孔14の内周面と杭頭部外周面との隙間を埋め、各杭状体10,10…の杭頭部に上部工11用のプレキャストコンクリート部材を接合させ、杭支持構造物13を構築する(上部工設置工程)。
【0063】
尚、上部工11用のプレキャストコンクリート部材の枠内隅角部には、それぞれ所定の位置に連結具15,15…を固定しておく。
【0064】
そして、図8に示すように、制震用連結体12,12…の両端部をそれぞれ上部工11の枠内隅角部及び隅角部と対向する位置の塔状構造物3(本実施例では、連結用筒状体5)の外周面に固定された連結具15,15…に連結し、各制震用連結体12,12…を介して塔状構造物3と杭支持構造物13とを連結する。
【0065】
次に、制震構造8の構築が完了したら、上端部に風車設備7(ナセル・ロータ)が固定された塔本体部6を施工水域に移送し、上端部に風車設備7(ナセル・ロータ)が固定された塔本体部6をSEP船や起重機船等によって吊り上げ、塔本体部6の下端を、連結用筒状体5を介して基礎用筒状体4に連結し、洋上風力発電設備3を構築する。
【0066】
このように構成された塔状構造物3の制震構造は、互いに固有振動数が異なる塔状構造物3と、杭状体10,10…にコンクリート製の上部工11が支持されてなる杭支持構造物13とが制震用連結体12,12…を介して連結されたことにより、塔状構造物3に対する地震動等による外力を塔状構造物3と杭支持構造物13とに分散し、互いに振動を制御(連結制震)し、塔状構造物3全体の負担を軽減することができる。
【0067】
さらに、制震用連結体12,12…にダンパーやゴム、バネ材等の弾性体を用いることにより、制震用連結体12,12…で地震動等による外力を吸収し、高い制振効果を発揮することができる。
【0068】
また、塔状構造物3への負担が軽減されることによって、地震時の塔状構造物3へ作用する断面力を軽減することができ、その分、塔状構造物3の外径や肉厚を小さくすることができる。
【0069】
尚、上述の実施例では、塔状構造物3を構成する基礎用筒状体4を先に立設する場合について説明したが、図9図13に示すように、先に杭支持構造物13を構築した後、基礎用筒状体4を立設してもよい。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0070】
即ち、図9図10に示すように、杭状体打設工程及び上部工設置工程を実施した後、図11に示すように、クレーンで吊り上げた基礎用筒状体4を上部工11の枠内を通して水底地盤1に着底させ、その状態からハンマ等によって基礎用筒状体4を打ち込んで所定の深さませ貫入させ、基礎用筒状体4を立設する(塔状構造物立設工程)。
【0071】
次に、図12に示すように、基礎用筒状体4の連結部4bに連結用筒状体5のスカート部5aを嵌合させ、周方向の位置を調節し、基礎用筒状体4の外周面と連結用筒状体5の内周面との間隙にグラウトを下部より注入する等して固定する。
【0072】
その際、連結用筒状体5の外周面には、予め所定の位置に連結具15,15…を固定しておく。
【0073】
そして、図13に示すように、上部工11と上部工11の枠内に立設された塔状構造物3とを複数の制震用連結体12,12…によって連結することで、各制震用連結体12,12…を介して塔状構造物3と杭支持構造物13とを連結する。
【0074】
制震構造8の構築が完了したら、上端部に風車設備7(ナセル・ロータ)が固定された塔本体部6を施工水域に移送し、上端部に風車設備7(ナセル・ロータ)が固定された塔本体部6を起重機船等によって吊り上げ、塔本体部6の下端を、連結用筒状体5を介して基礎用筒状体4に連結し、洋上風力発電設備3を構築する。
【0075】
また、本発明に係る塔状構造物3の制震構造8は、図14図16に示すように、隣り合う杭状体10,10…間の外面側に跨って支持される防波用壁体20を備えているものであってもよい。
【0076】
防波用壁体20は、杭状体10,10…の外周面に固定されるコンクリート製の壁体固定部材21,21と、それぞれ隣り合う杭状体10,10に固定された壁固定部材21,21に両端部を支持させた壁本体22とを備え、壁本体22が四方に配置された平面視矩形枠状を成している。
【0077】
尚、防波用壁体20は、全ての杭状体10,10…間(本実施例では、四方)に壁本体22を設ける必要はなく、例えば、沖側の一面だけに壁本体22を設けてもよいし、塔状構造物3の点検用海路として一面だけ設けないようにしてもよい。
【0078】
また、防波用壁体20は、図16に示すように、杭状体10,10…の上部工11及び水底地盤1からそれぞれ所定の間隔を置いた位置に固定されたものであってもよい。
【0079】
また、壁体固定部材21はコンクリートではなく、鋼製の固定部材を用いるようにしてもよく、防波用壁体20の上部を上部工11用のプレキャストコンクリート部材に支持させるようにしてもよい。
【0080】
その場合、壁体固定部材21,21と塔状構造物3(基礎用筒状体4)の外周面とを周方向に間隔をおいて配置された結合部材23,23によって剛的に連結し、塔状構造物3と杭支持構造物13とを強固に連結することによって、より安定した制震効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0081】
1 水底地盤
2 水面
3 洋上風力発電装置(塔状構造物)
4 基礎用筒状体
5 連結用筒状体
6 塔本体部
7 風車設備
8 制振構造
10 杭状体
11 上部工
12 制震用連結体
13 杭支持構造物
14 杭接合孔
15 連結具
16 充填材
20 防波用壁体
21 壁体固定部材
22 壁本体
23 結合部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16