(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139791
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】収穫装置
(51)【国際特許分類】
A01D 46/30 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A01D46/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050694
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】523113342
【氏名又は名称】株式会社たねまき
(74)【代理人】
【識別番号】100180758
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 利之
(72)【発明者】
【氏名】小泉 諒治
【テーマコード(参考)】
2B075
【Fターム(参考)】
2B075JD08
2B075JD21
2B075JF02
2B075JF05
2B075JF06
2B075JF07
2B075JF09
(57)【要約】
【課題】果実の商品性を担保して収穫する収穫装置を提供する。
【解決手段】収穫装置としてのエンドエフェクタ1は、果実2を保持して、当該果実2を保持した後に房から引き離す方向に移動する保持部と、保持部の果実2を略中心として回転可能に保持された円弧状の刃171を有し、果実2から伸びる茎21を切断する切断部とを有する。また、保持部は、果実2が撮影された画像に基づいて当該果実2の位置を特定するとともに、少なくとも当該果実のヘタが正面とならない方向から果実を保持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実を保持して、当該果実を保持した後に房から引き離す方向に移動する保持部と、
前記保持部の前記果実を略中心として両端が回転可能に保持され、前記両端間を任意の線で結んだ形状の刃を有し、前記果実から伸びる茎を切断する切断部とを有する収穫装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記果実が撮影された画像に基づいて前記果実の位置を特定するとともに、少なくとも前記果実のヘタが正面とならない方向から前記果実を保持する請求項1に記載の収穫装置。
【請求項3】
前記切断部は、前記保持部の前記果実を略中心として回転可能に保持されて、前記刃と対向する方向に回転して前記刃による切断前に前記茎を抑える茎抑えをさらに有する請求項1に記載の収穫装置。
【請求項4】
前記切断部は、前記刃と相対位置を保持したまま前記果実を略中心として回転可能な切創ガードをさらに有し、当該相対位置は前記刃の回転方向において前記刃が触れる前に前記切創ガードが触れる位置である請求項1に記載の収穫装置。
【請求項5】
前記保持部は、負圧により前記果実を吸着する吸着パッドであり、当該負圧に対する反力を付与する反力付与パッドを有する請求項1に記載の収穫装置。
【請求項6】
前記画像を撮影するカメラをさらに有する請求項2に記載の収穫装置。
【請求項7】
前記保持部を移動するアームをさらに有する請求項1に記載の収穫装置。
【請求項8】
前記果実のヘタが正面とならない方向は、前記果実を保持できない場合に当該果実を中心とする仮想球面上で予め定めた距離を移動して保持が成功する方向である請求項2に記載の収穫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の収穫装置として、吸着跡を残さずに果実を収穫するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この収穫装置は、植物になる複数の対象物の中の1つを引き込む引き込み機構と、引き込んだ前記対象物を収穫する収穫機構とを有し、対象物を、引き込み機構が植物から離間する方向に引き込む工程と、引き込んだ対象物の下方に収穫機構を振動させながら挿入する工程と、挿入した前記収穫機構が対象物を前記植物から切り離す工程とにより、対象物としての果実を収穫する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1の収穫装置によれば、対象物を、引き込み機構が植物から離間する方向に引き込む工程と、引き込んだ対象物の下方に収穫機構を振動させながら挿入する工程と、挿入した前記収穫機構が対象物を前記植物から切り離す工程によって、対象物としての果実に吸着跡を残さずに収穫するものの、引き込み動作により果実を切り離すため、ヘタを有する果実の場合、収穫時にヘタが取れて商品性が損なわれる可能性がある、という問題がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、果実の商品性を担保して収穫する収穫装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の収穫装置を提供する。
【0008】
[1]果実を保持して、当該果実を保持した後に房から引き離す方向に移動する保持部と、
前記保持部の前記果実を略中心として両端が回転可能に保持され、前記両端間を任意の線で結んだ形状の刃を有し、前記果実から伸びる茎を切断する切断部とを有する収穫装置。
[2]前記保持部は、前記果実が撮影された画像に基づいて前記果実の位置を特定するとともに、少なくとも前記果実のヘタが正面とならない方向から前記果実を保持する前記[1]に記載の収穫装置。
[3]前記切断部は、前記保持部の前記果実を略中心として回転可能に保持されて、前記刃と対向する方向に回転して前記刃による切断前に前記茎を抑える茎抑えをさらに有する前記[1]に記載の収穫装置。
[4]前記切断部は、前記刃と相対位置を保持したまま前記果実を略中心として回転可能な切創ガードをさらに有し、当該相対位置は前記刃の回転方向において前記刃が触れる前に前記切創ガードが触れる位置である前記[1]に記載の収穫装置。
[5]前記保持部は、負圧により前記果実を吸着する吸着パッドであり、当該負圧に対する反力を付与する反力付与パッドを有する前記[1]に記載の収穫装置。
[6]前記画像を撮影するカメラをさらに有する前記[2]に記載の収穫装置。
[7]前記保持部を移動するアームをさらに有する前記[1]に記載の収穫装置。
[8]前記果実のヘタが正面とならない方向は、前記果実を保持できない場合に当該果実を中心とする仮想球面上で予め定めた距離を移動して保持が成功する方向である前記[2]に記載の収穫装置。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載された発明によれば、果実の商品性を担保して収穫することができる。
請求項2に記載された発明によれば、果実が撮影された画像に基づいて当該果実の位置を特定するとともに、少なくとも当該果実のヘタが正面とならない方向から果実を保持することができる。
請求項3に記載された発明によれば、保持部の果実を略中心として回転可能に保持される茎抑えをさらに有することで、刃と対向する方向に回転して刃による切断前に前記茎を抑える
請求項4に記載された発明によれば、刃と相対位置を保持したまま果実を略中心として回転可能な切創ガードをさらに有することで、刃の回転方向において刃が触れる前に切創ガードが触れるようにすることができる。
請求項5に記載された発明によれば、吸着パッドにより、負圧により果実を吸着し、反力付与パッドにより、当該負圧に対する反力を付与することができる。
請求項6に記載された発明によれば、カメラにより画像を撮影することができる。
請求項7に記載された発明によれば、アームにより保持部を移動することができる。
請求項8に記載された発明によれば、実を保持できない場合に当該果実を中心とする仮想球面上で予め定めた距離を移動して保持が成功するようにすることで果実のヘタが正面とならない方向から果実を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る収穫装置の一例を示す構成図である。
【
図2】
図2(a)~(c)は、エンドエフェクタの構成の一例を示す正面図、側面図及び平面図である。
【
図3】
図3(a)及び(b)は、吸着パッドの構成の一例を示す正面図及び側面図である。
【
図4】
図4は、エンドエフェクタの構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5(a)~(c)は、エンドエフェクタと果実との位置関係を説明するための概略図である。
【
図6】
図6(a)及び(b)は、吸着パッドの吸着動作を説明するための図である。
【
図7】
図7(a)及び(b)は、エンドエフェクタの持ち上げ動作を説明するための図である。
【
図8】
図8(a)及び(b)は、エンドエフェクタの茎切断動作を説明するための図である。
【
図9】
図9は、収穫装置の収穫動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る収穫装置の一例を示す構成図である。
【0012】
収穫装置1000は、植物の果実2を茎20から切り離して収穫するエンドエフェクタ1と、果実2及び茎20を含む植物を撮影するカメラ12と、必要に応じて撮影対象に照明光を照射するLED13と、エンドエフェクタ1の位置を移動するロボットアーム14とを有する。ロボットアーム14は、5自由度(x、y、z軸の平行移動、x、y軸を中心とした回転)以上の動作が可能であるものが望ましいが、後述するヘタ避け動作が可能であれば5自由度未満でもよく、自由度が限定されるものではない。
【0013】
なお、収穫装置1000としてエンドエフェクタ1を含むが、カメラ12と、LED13と、ロボットアーム14の一部又は全部も含むように構成してもよいし、エンドエフェクタ1と別に構成してもよく、収穫装置1000として様々な製品形態が考えられる。例えば、収穫装置1000をエンドエフェクタ1のみとし、当該収穫装置1000を利用者が移動するような実施形態も含まれる。また、茎20に成る果実2は、一例として、ミニトマトを図示しているが、これに限らず様々な形状、大きさの野菜、果物を対象とし、対象の収穫形態に合わせて各部品の大きさ、形状等をカスタマイズ可能なものとする。
【0014】
図2(a)~(c)は、エンドエフェクタ1の構成の一例を示す正面図、側面図及び平面図である。
【0015】
エンドエフェクタ1は、果実2を保持するための保持部と、果実2から伸びる茎を切断する切断部とから構成され、保持部は、果実2を負圧で吸着する吸着パッド15を有し、切断部は、ベルト170bを介して茎抑え170を駆動するモータエンコーダ160と、ベルト171bを介して刃171を駆動するモータエンコーダ161と、植物の茎20を抑える茎抑え170と、茎20を切断する刃171と、刃171とばね173を介して接続される切創ガード172と、茎抑え170、刃171、切創ガード172を回転可能に支持する軸174と、軸174の両端を固定する軸受175とを有する。なお、軸174は、吸着した果実2の中心又は中心付近(略中心)を通るものとし、茎抑え170、刃171及び切創ガード172は果実2を略中心として回転可能に支持されている。
【0016】
茎抑え170は、一例として、軸174を中心として
図2(b)に示す0時の位置を始動位置として待機し、刃171及び切創ガード172は、軸174を中心として6時の位置を始動位置として待機する。また、茎抑え170は、茎20から予め定めた反力を受ける位置まで時計方向に回転して停止し、刃171及び切創ガード172は、当該茎抑え170の位置まで回転して切断するのに十分な力で茎抑え170と互いに茎20を挟み込む。
【0017】
なお、茎抑え170、刃171及び切創ガード172は、果実2の保持位置に関わらず果実2を中心として茎が伸びることから、真円に近い円弧形状を有するのが望ましいが、楕円の半分又は一部を切り取ったような形状であってもよいし、円弧に限らず多角形や折れ線形状であってもよく、果実2の形状、切断する茎20の伸び方に合わせてその他複雑な形状を有していてもよい。つまり、茎抑え170、刃171及び切創ガード172は、軸174を両端として任意の形状の線で結ばれた形状を有するものであってよい。
【0018】
また、茎抑え170、刃171及び切創ガード172は、果実2より大きい径であって、他の果実に干渉しづらい大きさであることが望ましく、ミニトマトの場合は直径が35~50mm程度のものを用いる。
【0019】
茎抑え170及び切創ガード172は、茎切断動作において変形しない強度を有するプラスチック又はアルミ、ステンレス鋼等の素材を用いることができる。
【0020】
また、刃171は、ステンレス鋼を用いるが、茎21の切断に耐える強度を有し、他の金属やセラミック等の素材を用いることができる。刃171は、切断力が刃厚と刃先角度、表面処理によって変化する一方、板厚と刃先角度は切断力と耐久性に反比例するため、カミソリ刃のような薄い刃を定期的に交換できる構造とすることが適当である。
【0021】
また、茎抑え170、刃171及び切創ガード172は、いずれも茎21からでる液体やアルコールに耐性がある素材、好ましくは錆びない素材を用いるものとする。また、茎抑え170と刃171とは、茎21を互いに挟み込むことから対になる形状である必要がある。なお、果実2からヘタが取れないように茎21を切断できるのであれば茎抑え170を省略してもよい。なお、茎抑え170を刃に変えて、刃171と対の刃によって茎を切断してもよい。また、切断に限らず、剪断により茎を挟み切ってもよい。剪断の場合、金属製の鋭利な刃を採用する必要はなく、鋭利でない断面形状を採用することもできるため、素材として鋭利な形状には採用できない樹脂等を用いることもできる。
【0022】
図3(a)及び(b)は、吸着パッド15の構成の一例を示す正面図及び側面図である。
【0023】
吸着パッド15は、果実2を吸着して保持する多段ベローズの吸着パッド150と、果実2に吸着跡が残ることを防止するために、吸着パッド150の吸着力に対する反力を付与する反力付与パッド151とを有する。吸着パッド150は、果実2を吸着する際にベローズを折りたたんで
図3(b)の横方向に収縮する。反力付与パッド151は、ばね等により付勢されており、吸着パッド150の多段ベローズの収縮量に比例した反力を付与する。
【0024】
なお、吸着パッド15は、果実2がミニトマトの場合はその収穫時の大きさに合わせて10~30mm程度に設定するが、ミニトマト以外の場合は果実2の大きさに合わせて直径や接触面の形状を変更する。また、吸着パッド15の材料は、吸着跡防止の観点でゴム、スポンジ等の果実2の表面硬度に対して柔らかい弾性材質を採用できる。また、ベローズ(蛇腹)の段数は任意であり、ベローズの無いものも選択可能である。また、吸着パッド15の吸着面には、吸着跡防止の観点で溝がない又は溝の面積が小さいことが望ましい。
【0025】
図4は、エンドエフェクタ1の構成の一例を示すブロック図である。
【0026】
エンドエフェクタ1は、CPU(Central Processing Unit)等から構成され、各部を制御するとともに、各種のプログラムを実行する制御部10と、フラッシュメモリ等の記憶媒体から構成され情報を記憶する記憶部11と、カメラ12と、LED13と、ロボットアーム14と、吸着パッド15と、茎抑え170、刃171、切創ガード172を動作させるためのモータエンコーダ16とを有する。
【0027】
制御部10は、後述する収穫プログラム110を実行することで、カメラ制御手段100、LED制御手段101、画像認識手段102、ロボットアーム制御手段103、吸着パッド制御手段104、モータエンコーダ制御手段105として機能する。
【0028】
カメラ制御手段100は、カメラ12の動作制御及びカメラ12から出力される映像信号を受信して処理することで映像情報とする。
【0029】
LED制御手段101は、カメラ12の撮影状況に関する情報(測光結果、焦点距離、絞り等)を受信し、撮影状況に応じてLED13の光量調整や照射方向調整等の動作制御を行う。
【0030】
画像認識手段102は、カメラ制御手段100の処理結果としての映像情報から予め用意された画像認識用情報111に基づいて果実2を認識し、位置情報として果実2の3次元座標を取得する。また、画像認識手段102は、果実2のヘタ22及び/又はヘタ22から伸びる茎21、20の位置及び長さ等を認識する。
【0031】
ロボットアーム制御手段103は、画像認識手段102が取得した座標に基づいてロボットアーム14の動作を制御し、エンドエフェクタ1の吸着パッド15が果実2を吸着できる位置まで移動させる。また、ロボットアーム制御手段103は、果実2のヘタ及び/又はヘタから伸びる茎が吸着パッド15の正面とならないよう果実2を中心とした仮想球面の表面に沿った方向(円周方向)にエンドエフェクタ1の位置を移動させる。
【0032】
吸着パッド制御手段104は、吸着パッド15に接続されたポンプ(図示せず)及び後述する反力付与パッド151の動作を制御し、果実2を吸着して保持する。
【0033】
モータエンコーダ制御手段105は、モータエンコーダ16の動作を制御し、茎抑え170、刃171、切創ガード172の動作を制御して果実2を茎20から切り離す。なお、モータエンコーダ16は、後述する茎切断動作において、茎抑え170が茎21にあたった時の反力を元に停止、停止した位置まで刃171を押し当てて、茎21を切断することから正確な位置・出力制御とセンシング性が求められるために採用される。また、茎以外に当たってしまった場合には、刃の押し当て動作を行わないようにするために、茎から得られる反力の特性等を認識情報として予め用意しておき、当該認識情報と比較して、茎と認識された場合にのみ刃の押し当て動作を実行するようにしても良い。なお、モータエンコーダ16以外に、空気圧、油圧により位置制御する機構が考えられるが、正確な位置制御を小型に実装することは技術難易度が高く、コストが高くなる可能性がある。
【0034】
記憶部11は、制御部10を上記各手段100~105として動作させるための収穫プログラム110、画像認識用情報111を格納する。画像認識用情報111は、果実2を認識するための画像処理アルゴリズム情報でもよいし、画像認識の機械学習結果情報であってもよい。
【0035】
(収穫装置の動作)
次に、本実施の形態の作用を、(1)果実保持動作、(2)持ち上げ動作、(3)茎切断動作に分けて説明する。
図9は、収穫装置の収穫動作を説明するためのフローチャートである。
【0036】
(1)果実保持動作
図5(a)~(c)は、エンドエフェクタ1と果実2との位置関係を説明するための概略図である。
【0037】
まず、エンドエフェクタ1の制御部10のカメラ制御手段100は、カメラ12を制御して果実2及び茎20、21を撮影する。カメラ12は撮影情報を出力し、カメラ制御手段100はカメラ12から撮影情報を取得する(S1)。
【0038】
次に、エンドエフェクタ1の制御部10の画像認識手段102は、果実2を認識し、座標を特定する(S2)。また、果実2が複数特定される場合、より上方、手前方向にあるもの、周辺の障害物との距離等の条件に基づいて複数のうち1つの果実2をターゲットとする。なお、果実2の特定方法としては、カメラやセンサーによる深度、色情報の取得および、画像処理、機械学習等の技術を用いることができる。
【0039】
次に、画像認識手段102は、果実2のヘタ22が吸着パッド15に対して正面にあるかどうかを確認し(S3)、正面にある場合(S3;Yes)、果実2を中心に果実2と吸着パッド15との距離を半径とした仮想球面の表面方向(円周)方向に移動する(S4)。ここで、「正面」とは、文字通りの真正面だけでなく、後述する果実2の吸着動作において、ヘタ22が吸着の妨げとなり吸着が失敗する可能性の高い範囲であり、又は茎切断動作において茎21が切断範囲に入らない範囲である。なお、正面でない範囲について、画像認識において学習するようにしてもよい。ただし、ヘタ22の形状には個体差があるため、上記した円周方向への移動を伴うトライアンドエラーがヘタ22の形状に左右されずに吸着を成功させる好適な方法である。
【0040】
画像認識手段102は、
図5(a)に示すように、ヘタ22がエンドエフェクタ1(吸着パッド15)の正面にあると判断される場合(S3;Yes)、果実2の中心を中心として果実2と吸着パッド15との距離を半径とした仮想球体の表面(円周)方向に移動する。移動した後、画像認識手段102は、
図5(b)に示すように、ヘタ22が依然として正面にあると判断される場合(S3;Yes)、
図5(c)に示すように、さらに果実2の中心を中心として円周方向に移動する。なお、円周の属する平面の選択方法としては、例えば、重力方向と果実2のヘタ22の向きとの傾向から学習して選択するようにしてもよいし、果実2の種類ごとに最適化された予め定めた平面を選択してもよい。また、ヘタ22が正面にあると判断する際のエンドエフェクタ1と果実2との距離は周辺の障害物までの距離、カメラやセンサーの性能等によって決定する。
【0041】
図6(a)及び(b)は、吸着パッド15の吸着動作を説明するための図である。
【0042】
次に、吸着パッド制御手段104は、ヘタが正面でなくなると(S3;No)、吸着パッド15を制御して果実2を吸着する(S5)。
図6(a)に示すように、吸着パッド15は多段ベローズが伸びた状態で果実2に接触し、吸着パッド15に接続されたポンプ(図示せず)の動作を制御して、
図6(b)に示すように、多段ベローズを収縮させて果実2を吸着する。
【0043】
吸着パッド制御手段104は、ポンプのラインに接続された圧力センサ(図示せず)が検知する負圧に基づいて吸着が成功したかどうかを判断し(S6)、吸着が成功した場合(S6;Yes)、ロボットアーム制御手段103がロボットアーム14を制御し、エンドエフェクタ1の位置を移動して、次に説明する持ち上げ動作を実行する(S7)。吸着に失敗した場合(S6;No)、ヘタ避け動作を改めて行う(S3~S6)。
【0044】
(2)持ち上げ動作
図7(a)及び(b)は、エンドエフェクタ1の持ち上げ動作を説明するための図である。
【0045】
エンドエフェクタ1は、
図7(a)に示すように果実2の吸着に成功した場合(S6;Yes)、一般的に果実2、茎20、茎21が重力方向に垂れ下がっている傾向があるため、複数の果実2の房から1つの果実2を引き離す方向として、房から遠ざかるとともに、重力の逆となる方向(図中矢印方向)に果実2を持ち上げ、
図7(b)に示す状態とする。
図7(b)の状態において、果実2は他の果実から引き離されて後述する茎切断動作において他の果実や他の茎20、21に対して茎抑え170、刃171及び切創ガード172等が干渉しづらくなる。
【0046】
なお、エンドエフェクタ1は、茎切断動作における干渉防止とともに、ヘタ22が取れないように、果実2を房から引き離し過ぎずに、持ち上げ動作を行う必要がある。ヘタ22が取れることを防ぐため、エンドエフェクタ1の画像認識手段102は、果実2と茎20との相対距離から茎21の長さを推定し、ロボットアーム制御手段103は、当該長さに応じて設定された距離で持ち上げ動作を行う。なお、茎21の長さを直接認識してもよい。また、収穫する果実2の茎21の長さが予めわかっている場合は固定値(房から遠ざかる方向に20~50mm、重力の逆となる方向に20~50mm)を用いてもよい。
【0047】
(3)茎切断動作
図8(a)及び(b)は、エンドエフェクタ1の茎切断動作を説明するための図である。
【0048】
次に、モータエンコーダ制御手段105は、
図8(a)に示すように、茎21の切断前にモータエンコーダ160を制御して、ベルト170bを介して茎21に当たるまで茎抑え170を回転させる(S8)。この際、茎抑え170を高速で勢いよく回転させて茎21に当てることでヘタ22が取れてしまうことを防ぐため、茎抑え170のうち茎21に接触する範囲に弾性体(スポンジ、バネ等)を設けてもよい。また、弾性体を設ける代わりに駆動するベルト170bに弾性のあるものを採用してもよいし、駆動機構に衝撃を吸収するバネ等を設けるようにしてもよい。なお、モータエンコーダ160からの接触検知が早く、茎21に大きな力をかけることなく茎抑え170を静止させることができる場合や、接触検知に対して十分ゆっくりと茎21に接触させる場合等は、弾性体は省略してもよい。
【0049】
次に、モータエンコーダ制御手段105は、
図8(b)に示すように、モータエンコーダ161を制御してベルト171bを介して刃171を回転させて茎21を切断する(S9)。この際、切創ガード172が先に茎21に当たるが、当たるまでは切創ガード172と刃171との相対位置がばね173によって保持され、当たった後、刃171がばね173の反力を超えた力で駆動されることで切創ガード172の回転角度を超えて回転することで茎21を切断する。なお、ばね173の反力としては、茎21を切断する力の6~8割程度とすることが望ましい。
【0050】
茎21の切断後、モータエンコーダ制御手段105は、モータエンコーダ160及び161を制御してベルト170b、171bを介して茎抑え170と刃171及び切創ガード172を初期位置まで回転させる(S10)。
【0051】
次に、ロボットアーム制御手段103は、ロボットアーム14を制御し、エンドエフェクタ1の位置を移動して、果実2を回収箱まで移動する(S11)。
【0052】
次に、吸着パッド制御手段104は、吸着パッド15の吸着を解除して果実2を回収箱へ入れる(S12)。
【0053】
(実施の形態の効果)
上記した実施の形態によれば、ヘタ22を避けて果実2を保持し、持ち上げ動作により果実2を房から引き離し、円弧状の茎抑え170及び刃171により茎21を切断するようにしたため、果実2が密集している場合も収穫可能とするとともに、ヘタ22が取れることを防止し、ヘタ22を残して果実2の商品性を担保して収穫することができる。
【0054】
また、吸着パッド15に反力付与パッド151を設けることで果実2の表面に吸着力が集中することを避けられ、果実2に吸着跡が残ることを防止することができる。
【0055】
また、切創ガード172を設けたため、果実2が密集している場合に刃171が収穫対象でない果実2に接触することを防止するため、収穫対象以外の果実2の商品性をも担保して収穫することができる。
【0056】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々に変形実施が可能である。
【0057】
茎抑え170、刃171、切創ガード172の駆動方法は、これらを回転制御できるものであればベルト170b、171bに限られずギアやリンク機構を用いてもよいし、他の方法を用いてもよい。また、刃171、切創ガード172はばね173を介して保持されず、上記で説明した動作が行えれば、それぞれを独立したモータエンコーダを用いて駆動してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 :エンドエフェクタ
2 :果実
10 :制御部
11 :記憶部
12 :カメラ
13 :LED
14 :ロボットアーム
15 :吸着パッド
16 :モータエンコーダ
20 :茎
21 :茎
22 :ヘタ
100 :カメラ制御手段
101 :LED制御手段
102 :画像認識手段
103 :ロボットアーム制御手段
104 :吸着パッド制御手段
105 :モータエンコーダ制御手段
110 :収穫プログラム
111 :画像認識用情報
150 :吸着パッド
151 :反力付与パッド
160 :モータエンコーダ
161 :モータエンコーダ
170b :ベルト
171 :刃
171b :ベルト
172 :切創ガード
173 :ばね
174 :軸
175 :軸受
1000 :収穫装置