(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139792
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ポリイミド樹脂組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08L 79/08 20060101AFI20241003BHJP
C08L 25/08 20060101ALI20241003BHJP
C08K 5/3415 20060101ALI20241003BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L79/08 Z
C08L25/08
C08K5/3415
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050695
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智江
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 憲幸
(72)【発明者】
【氏名】西村 謙吾
【テーマコード(参考)】
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
4J002BC04X
4J002CM04W
4J002EU026
4J002FD206
4J002GQ00
4J043PA05
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB58
4J043RA06
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA45
4J043SA46
4J043SA47
4J043SB03
4J043TA22
4J043TA71
4J043TB01
4J043UA031
4J043UA132
4J043UA141
4J043UA151
4J043UB121
4J043UB122
4J043XA03
4J043XA14
4J043ZA02
4J043ZA12
4J043ZA24
4J043ZB50
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、基材接着性、耐熱性に優れる樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】一分子中に二個のアミノ基を有する1種以上のジアミノ化合物(a-1)と、四塩基酸二無水物(a-2)との共重合物であるポリイミド樹脂(A)と、芳香族ビニル化合物由来の構造単位とオキサゾリン基由来の構造単位とを含有する共重合樹脂(B)を含む樹脂組成物が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一分子中に二個のアミノ基を有する1種以上のジアミノ化合物(a-1)と、四塩基酸二無水物(a-2)との共重合物であるポリイミド樹脂(A)と、芳香族ビニル化合物由来の構造単位とオキサゾリン基由来の構造単位とを含有する共重合樹脂(B)を含む樹脂組成物であり、
前記(B)成分の芳香族ビニル化合物由来の構造単位が下記式(b-1)、
【化1】
(式(b-1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表し、xはそれぞれ独立に1乃至5の整数で表す。)
また、オキサゾリン基由来の構造単位が下記式(b-2)、
【化2】
(式(b-2)中、R
3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表す。)
で表される構造単位である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記ジアミノ化合物(a-1)が、炭素数6乃至36の脂肪族ジアミノ化合物(a-3)を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(a-1)成分のうち、少なくとも1種は、下記式(1)、(2)
【化3】
(式(1)中、XはC(CH
3)
2、C(CF
3)
2、SO
2、CH
2、CH(CH
3)、CH(CF
3)を示す)
【化4】
で表される化合物又は9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンである、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
更に熱硬化性化合物(C)を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
熱硬化性化合物(C)が、下記式(3)乃至(5)
【化5】
(式(3)中、R
4は炭素数1乃至5のアルキル基又はフェニル基を表し、R
4が複数存在する場合、それらは互いに同じでも異なってもよい。kはそれぞれ独立に0乃至3の整数を表す。n
1は繰り返し数の平均値であって1以上10以下の実数を表す。)
【化6】
(式(4)中、R
5は炭素数1乃至5のアルキル基又はフェニル基を表し、R
5が複数存在する場合、それらは互いに同じでも異なってもよい。lはそれぞれ独立に0乃至3の整数を表す。n
2は繰り返し数の平均値であって1以上10以下の実数を表す。)
【化7】
(式(5)中、R
6及びR
7はそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表す。)
で表される化合物からなる群より選択される一種以上を含む請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
更に硬化促進剤(D)を含有する請求項4に記載の樹脂組成物
【請求項7】
請求項1に記載の樹脂組成物を有する樹脂付き銅箔。
【請求項8】
請求項7に記載の樹脂付き銅箔の有する樹脂組成物からなる樹脂層を硬化させて得られる銅張積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂を含有する樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット等のモバイル型通信機器や通信基地局装置、コンピュータやカーナビゲーション等の電子機器に不可欠な部材としてプリント配線板が挙げられる。プリント配線板には金属箔との密着性、耐熱性及び柔軟性等の特性に優れた各種の樹脂材料が用いられている。
また、近年では高速で大容量の次世代高周波無線用のプリント配線板の開発が行われており、上記の諸特性に加え、樹脂材料には低伝送損失であること、即ち低誘電率・低誘電正接であることが求められている。
【0003】
また、接着剤やカバーレイフィルムとして多層プリント配線板に用いられる接着フィルムには、優れた誘電特性を示すことに加え、銅箔や基板(ポリイミドフィルムやPPEプリプレグ)に対する優れた接着強度を有することや、はんだ実装に耐えられる耐熱性が求められている。
【0004】
特許文献1には、ダイマージアミン骨格を含むポリイミド樹脂及び架橋剤を含有する組成物の硬化物が誘電特性に優れる(誘電正接が低い)ことが記載されている。しかしながら、同文献の組成物は、基材に対する接着性が不充分であった。
特許文献2には、ポリイミド樹脂、変性エラストマー及びエポキシ樹脂を含む樹脂組成物の硬化物が、誘電特性、基材との接着性及びはんだ耐熱性に優れることが記載されている。しかしながら、同文献の樹脂組成物の硬化物は耐熱性が不充分でリフロー回数が増えると膨れが生じるため、より耐熱性の高いものが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-168369号公報
【特許文献2】WO2020/071154
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、プリント配線板に好適に用い得る樹脂組成物であって、その硬化物が基材接着性及び耐熱性に優れる樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、ポリイミド樹脂及び特定構造の共重合体を含有する樹脂組成物が上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
即ち本発明は、以下に関する。
[1] 一分子中に二個のアミノ基を有する1種以上のジアミノ化合物(a-1)と、四塩基酸二無水物(a-2)との共重合物であるポリイミド樹脂(A)と、芳香族ビニル化合物由来の構造単位とオキサゾリン基由来の構造単位とを含有する共重合樹脂(B)を含む樹脂組成物であり、
前記(B)成分の芳香族ビニル化合物由来の構造単位が下記式(b-1)、
【0008】
【0009】
(式(b-1)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表し、xはそれぞれ独立に1乃至5の整数で表す。)
また、オキサゾリン基由来の構造単位が下記式(b-2)、
【0010】
【0011】
(式(b-2)中、R3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表す。)
で表される構造単位である、樹脂組成物。
[2] 前記ジアミノ化合物(a-1)が、炭素数6乃至36の脂肪族ジアミノ化合物(a-3)を含む[1]に記載の樹脂組成物。
[3] (a-1)成分のうち、少なくとも1種は、下記式(1)、(2)
【0012】
【0013】
(式(1)中、XはC(CH3)2、C(CF3)2、SO2、CH2、CH(CH3)、CH(CF3)を示す)
【0014】
【0015】
で表される化合物、又は9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンである、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 更に熱硬化性化合物(C)を含む、[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[5] 熱硬化性化合物(C)が、下記式(3)乃至(5)
【0016】
【0017】
(式(3)中、R4は炭素数1乃至5のアルキル基又はフェニル基を表し、R4が複数存在する場合、それらは互いに同じでも異なってもよい。kはそれぞれ独立に0乃至3の整数を表す。n1は繰り返し数の平均値であって1以上10以下の実数を表す。)
【0018】
【0019】
(式(4)中、R5は炭素数1乃至5のアルキル基又はフェニル基を表し、R5が複数存在する場合、それらは互いに同じでも異なってもよい。lはそれぞれ独立に0乃至3の整数を表す。n2は繰り返し数の平均値であって1以上10以下の実数を表す。)
【0020】
【0021】
(式(5)中、R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表す。)
で表される化合物からなる群より選択される一種以上を含む[4]に記載の樹脂組成物。
[6] 更に硬化促進剤(D)を含有する[1]~[5]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[7] [1]~[6]のいずれか一項に記載の樹脂組成物を有する樹脂付き銅箔。
[8] [7]に記載の樹脂付き銅箔の有する樹脂組成物からなる樹脂層を硬化させて得られる銅張積層体。
【発明の効果】
【0022】
本発明の樹脂組成物を用いることにより、接着性及び耐熱性に優れたプリント配線板等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の樹脂組成物は、
一分子中に二個のアミノ基を有する1種以上のジアミノ化合物(a-1)と、四塩基酸二無水物(a-2)との共重合物であるポリイミド樹脂(A)と、芳香族ビニル化合物由来の構造単位とオキサゾリン基由来の構造単位とを含有する共重合樹脂(B)を含む樹脂組成物であり、前記(B)成分の芳香族ビニル化合物由来の構造単位が下記式(b-1)、
【0024】
【0025】
(式(b-1)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表し、xはそれぞれ独立に1乃至5の整数で表す。)
また、オキサゾリン基由来の構造単位が下記式(b-2)、
【0026】
【0027】
(式(b-2)中、R3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表す。)
で表される構造単位である共重合樹脂を含有する樹脂組成物である。
【0028】
本発明の樹脂組成物に用いられる(A)成分は、一分子中に二個のアミノ基を有する1種以上のジアミノ化合物(a-1)と四塩基酸二無水物成分(a-2)とのイミド化反応によって得られる可溶性ポリイミド樹脂であれば、脂肪族系の可溶性ポリイミド樹脂及び芳香族系の可溶性ポリイミド樹脂の何れにも限定されない。またこれら可溶性ポリイミド樹脂の末端や側鎖を変性した可溶性ポリイミド樹脂等も使用できる。可溶性ポリイミド樹脂は市販品を用いても合成したものを用いてもよく、また一種のみを用いても複数種を併用してもよい。
尚、本発明における可溶性ポリイミドとは、有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂であり、本明細書における可溶性とは、23℃で1.0質量%以上溶解することを意味する。ここでの有機溶剤とは、ケトン系溶剤のアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、エ-テル系溶剤の1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、グリコ-ルエ-テル系溶剤のメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコ-ルモノメチルエ-テル、プロピレングリコ-ルモノエチルエ-テル、プロピレングリコ-ルモノブチルエ-テル、ジエチレングリコ-ルメチルエチルエ-テル、その他ベンジルアルコ-ル、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、アニソ-ル等である。
【0029】
(A)成分の合成に用い得る一分子中に二個のアミノ基を有する1種以上のジアミノ化合物(a-1)の具体例としては、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-トリレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエ-テル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルエ-テル、3,4’-ジアミノジフェニルエ-テル、4,4’-ジアミノジフェニルチオエ-テル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルチオエ-テル、3,3’-ジエトキシ-4,4’-ジアミノジフェニルチオエ-テル、3,3’-ジアミノジフェニルチオエ-テル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノジフェニルチオエ-テル、2,2’-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォキサイド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフォンスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォンスルホン、ベンチジン、3,3’-ジメチルベンチジン、3,3’-ジメトキシベンチジン、3,3’-ジアミノビフェニル、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、o-キシリレンジアミン、2,2’-ビス(3-アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)ベンゼン、1,3’-ビス(3-アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジエチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-プロピルフェニル)メタン及びビス(4-アミノ-3,5-ジプロピルフェニル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシジフェニルエ-テル、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン及び9,9’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン及び炭素数6乃至36のジアミノポリシロキサン等が挙げられる。
【0030】
一分子中に二個のアミノ基を有する1種以上のジアミノ化合物(a-1)のうち、少なくとも1種は、下記式(1)、(2)
【0031】
【0032】
(式(1)中、XはC(CH3)2、C(CF3)2、SO2、CH2、CH(CH3)、CH(CF3)を示す)
【0033】
【0034】
で表される化合物又は9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンであることが好ましい。特に接着性の観点から、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンを用いることが好ましい。
これらのジアミン成分は1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
(A)成分の合成に用い得る四塩基酸二無水物成分の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエ-テルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’-パ-フルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルエ-テル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルメタン二無水物、および、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸二無水物等が挙げられる。なかでも、溶剤溶解性、基材への密着性及び感光性の面から、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物又は3,3’,4,4’-ジフェニルエ-テルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。これらは1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
本発明の樹脂組成物が含有する(A)成分は、炭素数6乃至36の脂肪鎖を骨格に導入した可溶性ポリイミド樹脂を含むことが好ましい。(A)成分の合成時に炭素数6乃至36の脂肪族ジアミノ化合物(a-3)を用いることが好ましい。例えば1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ノルボルナンジアミン、イソホロンジアミン、ダイマ-ジアミン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルアミン、ダイアミンH20(岡村製油製)、ダイマー-ジアミン又はトリマートリアミンなどをジアミン成分として用いることにより、これらのジアミン成分に由来する脂肪鎖を可溶性ポリイミド樹脂の骨格に導入することができる。特に、誘電特性と基材接着性が向上する観点から、ダイアミンH20やダイマージアミンに由来する脂肪族鎖を骨格に導入した可溶性ポリイミド樹脂を(A)成分に含むことが好ましい。
【0037】
ダイマージアミンとは、オレイン酸等の不飽和脂肪酸の二量体であるダイマー酸の有する二つのカルボキシル基を一級アミノ基に置換したものである(特開平9-12712号公報等参照)。ダイマージアミンの市販品の具体例としては、PRIAMINE1074並びにPRIAMINE1075(いずれもクローダジャパン株式会社製)、及びバーサミン551(コグニスジャパン株式会社製)等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。以下、ダイマージアミンの非限定的な一般式を示す(各式において、m+n=6乃至17が好ましく、p+q=8乃至19が好ましく、破線部は炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合を意味する)。
【0038】
【0039】
本発明の樹脂組成物における(A)成分の含有量は、(A)乃至(B)成分の合計に対して50乃至95質量%であることが好ましい。(A)成分の含有量を前記の範囲とすることにより、樹脂組成物の硬化物の誘電特性(低誘電性)及び基材接着性が向上する。
(A)成分の含有量は、(A)乃至(B)成分の合計に対して70乃至95質量%であることがより好ましい。
【0040】
(A)成分の重量平均分子量は、30,000以上であることが好ましい。重量平均分子量を前記の範囲とすることにより、はんだ耐熱性が良好となる。前記の観点から、より好ましい数平均分子量は30,000乃至120,000である。尚、本発明における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定結果に基づいて、ポリスチレン換算で算出した値である。
【0041】
(A)成分は、公知の方法で合成することができる。例えば、合成に用いるジアミンおよび四塩基酸二無水物を溶剤に溶解させた後、窒素等の不活性雰囲気下、10乃至140℃で加熱撹拌することによってジアミンと四塩基酸二無水物との共重合反応が起こり、ポリアミック酸樹脂溶液が得られる。また、前記で得られたポリアミック酸樹脂溶液に必要により脱水剤や触媒を加え、100乃至300℃で加熱撹拌することによってイミド化反応(脱水を伴う閉環反応)が起こり、(A)成分が得られる。脱水剤としてはトルエン及びキシレン等が、触媒としては3級アミン、及び脱水触媒を用いることができる。3級アミンとしては、複素環式の3級アミンが好ましく、例えば、ピリジン、ピコリン、キノリン、及びイソキノリンなどを挙げられる。脱水触媒としては、例えば、無水酢酸、プロピオン酸無水物、n-酪酸無水物、安息香酸無水物、及びトリフルオロ酢酸無水物等が挙げられる。尚、ポリアミック酸樹脂及びポリイミド樹脂を合成する際の反応時間は反応温度により大きく影響されるが、反応の進行に伴う粘度上昇が平衡に達し、最大の分子量が得られるまで反応を行うことが好ましく、通常数分間乃至20時間である。
上記の例はポリアミック酸を経由してポリイミド樹脂を合成する方法であるが、合成に用いるジアミンおよびテトラカルボン酸無水物を溶剤に溶解させた後、必要により脱水剤や触媒を加え、100乃至300℃で加熱撹拌することによって共重合反応とイミド化反応を一括で行い、(A)成分を得てもよい。
【0042】
(A)成分の合成時に用い得る溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセチルアセトン、γ-ブチロラクトン、ジアセトンアルコ-ル、シクロヘキセン-1-オン、ジプロピルエ-テル、ジイソプロピルエ-テル、ジブチルエ-テル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチルイソアミルエ-テル、エチル-t-ブチルエ-テル、エチルベンジルエ-テル、クレジルメチルエ-テル、アニソ-ル、フェネト-ル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ベンジル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ベンジル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソアミル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸イソアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、サリチル酸メチル、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。好ましい溶剤の使用量は、得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるべきものであるが、好ましくは固形分含有率60乃至10質量%、より好ましくは50乃至20質量%である。
【0043】
(A)成分の合成時に、脱水反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、該触媒の使用量は、(A)成分のモル数の2倍(脱水縮合により生じる水のモル数)の1乃至30%が好ましく、より好ましくは5乃至15%である。使用しうる触媒の具体例としては、トリエチルアミン、ピリジン等既知一般の塩基性触媒等が挙げられる。中でも、沸点が低く、残留しにくい点からトリエチルアミンが好ましい。
【0044】
本発明の組成物中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位とオキサゾリン基由来の構造単位とを含有する共重合樹脂(B)は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位が上記式(b-1)であり、オキサゾリン基由来の構造単位が上記式(b-2)で表される構造単位である共重合樹脂である。
【0045】
前記(B)成分は、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレンなどのα,β-不飽和芳香族炭化水素化合物と2-ビニル-2-オキサゾリン、2-(プロピル-1-エン2-イル)-2-オキサゾリン、2-(ブチル-1-エン2-イル)-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-エチル-2-オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンを重合させることにより得られる。オキサゾリン基含有ポリマ-の重合方法は、特に限定されず、公知の種々の重合方法を採用することができる。
【0046】
前記(B)成分の重量平均分子量は、耐熱性及び耐屈曲性の観点から、10,000~250,000が好ましく、より好ましくは30,000~250,000、さらに好ましくは50,000~230,000である。
【0047】
前記(B)成分の重量平均分子量は、以下の測定条件で測定することができる。
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)>
ポリスチレン標準液を用いてポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を算出。
装置:LC-20AD、DGU-20A3R、SIL-20AHT、CTO-20A、CBM-20A、RID-20A(いずれも島津製作所製)
カラム:Shodex製KF-601×1 + KF-602×1 + KF-602.5×1 + KF-603×1
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.5ml/min
カラム温度:40℃
検出:RI(示差屈折検出器)
【0048】
前記(B)成分としては市販されているものを使用してもよく、市販品としては、例えば、日本触媒製のエポクロスRPS-1005などが挙げられる。
【0049】
本発明の樹脂組成物における(B)成分の含有量は、(A)乃至(B)成分の合計に対して1.0乃至50質量%であることが好ましい。(A)成分の含有量を前記の範囲とすることにより、樹脂組成物の硬化物の基材接着性及び耐熱性が向上する。
(B)成分の含有量は、(A)乃至(B)成分の合計に対して5.0乃至30質量%であることがより好ましい。
【0050】
前記樹脂組成物には、更に熱硬化性化合物(C)(以下、(C)成分とも記載する)を含んでいても良い。 前記(C)成分は、マレイミド化合物、エチレン性不飽和基を有する化合物等が挙げられる。
【0051】
マレイミド化合物としては、一分子中にマレイミド基を一つ以上有するものであれば特に限定されない。その具体例としては、例えば、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、フェニルメタンマレイミド、o-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、p-フェニレンビスマレイミド、p-フェニレンビスシトラコンイミド、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、4,4-ジフェニルエ-テルビスマレイミド、4,4-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド、ノボラック型マレイミド化合物、ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,2-ビス(マレイミド)エタン、1,4-ビス(マレイミド)ブタン、1,6-ビス(マレイミド)ヘキサン、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N’-1,4-フェニレンジマレイミド、N-フェニルマレイミド、式(1)乃至(5)で表されるマレイミド化合物などが挙げられる。マレイミド化合物(C)は、マレイミド化合物を重合して得られるプレポリマ-、及びマレイミド化合物をアミン化合物等の他の化合物と重合して得られるプレポリマ-等の形で、本実施形態に係る樹脂組成物に含有させることもできる。また市販のものも使用でき、具体例としては、MIR-3000(日本化薬株式会社製)、MIR-5000(日本化薬株式会社製)、BMI-70(ケイ・アイ化成株式会社製)、BMI-80(ケイ・アイ化成株式会社製)、BMI-2300(大和化成株式会社製)、BMI-3000(Designer Molecules inc.製)、BMI-5000(Designer Molecules inc.製)、BMI-6000(Designer Molecules inc.製)、BMI-689(Designer Molecules inc.製)、BMI-1700(Designer Molecules inc.製)、BMI-1500(Designer Molecules inc.製)、BMI-TMH(大和化成株式会社製)、MAHD(Evonik社製)、BMI-1000P(ケイ・アイ化成株式会社製)、BMI-650P(ケイ・アイ化成株式会社製)、BMI-250P(ケイ・アイ化成株式会社製)、CUA-4(ケイ・アイ化成株式会社製)等が挙げられる。樹脂組成物の硬化物が機械強度や難燃性等の特性に優れることから、ベンゼン環、ビフェニル環及びナフタレン環等の芳香族環を有するマレイミド樹脂が好ましい。また(C)成分は1種類を用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0052】
エチレン性不飽和基を有する化合物としては、一分子中にエチレン性不飽和基を有するものであれば特に限定されない。エチレン性不飽和基を有する化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、フェニルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アジピン酸エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールエチレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペングリコールジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリト-ルヘキサ(メタ)アクリレ-ト、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0053】
また、この他にも、(メタ)アクリロイル基とウレタン結合を同一分子内に併せ持つウレタン(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロイル基とエステル結合を同一分子内に併せ持つポリエステル(メタ)アクリレート類;エポキシ樹脂から誘導され、(メタ)アクリロイル基を併せ持つエポキシ(メタ)アクリレート類;これらの結合が複合的に用いられている反応性オリゴマー等もエチレン性不飽和基を有する化合物の具体例として挙げられる。
【0054】
ウレタン(メタ)アクリレート類とは、水酸基含有(メタ)アクリレートとポリイソシアネート、必要に応じて用いられるその他アルコール類との反応物が挙げられる。例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等のグリセリン(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の糖アルコール(メタ)アクリレート類と、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、ジシクロヘキサンメチレンジイソシアネート、及びそれらのイソシアヌレート、ビュレット反応物等のポリイソシアネート等を反応させた、ウレタン(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0055】
ポリエステル(メタ)アクリレート類とは、例えば、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド変性フタル酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の単官能(ポリ)エステル(メタ)アクリレート類;ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート等のジ(ポリ)エステル(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパン又はグリセリン1モルに1モル以上のε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン等の環状ラクトン化合物を付加して得たトリオールのモノ、ジ又はトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0056】
また、ペンタエリスリトール、ジメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、又はテトラメチロールプロパン1モルに、1モル以上のεーカプロラクトン、γーブチロラクトン、δーバレロラクトン等の環状ラクトン化合物を付加して得たトリオールのモノ、ジ、トリ又はテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトール1モルに1モル以上のε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン等の環状ラクトン化合物を付加して得たトリオールのモノ、若しくはポリ(メタ)アクリレートのトリオール、テトラオール、ペンタオール又はヘキサオール等の多価アルコールのモノ(メタ)アクリレート又はポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0057】
更に、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、(ポリ)ブチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール等のジオール成分と、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ダイマ-酸、セバチン酸、アゼライン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸等の多塩基酸、及びこれらの無水物との反応物であるポリエステルポリオールの(メタ)アクリレート;ジオール成分と多塩基酸及びこれらの無水物とε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン等からなる環状ラクトン変性ポリエステルジオールの(メタ)アクリレート等の多官能(ポリ)エステル(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0058】
エポキシ(メタ)アクリレート類とは、エポキシ基を有する化合物と(メタ)アクリル酸とのカルボキシレート化合物である。例えば、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ビフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレート、グリオキサール型エポキシ(メタ)アクリレート、複素環式エポキシ(メタ)アクリレート等、及びこれらの酸無水物変性エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0059】
例えば、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル等のビニルエーテル類;スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン類やトリアリルイソシアヌレ-ト、トリメタアリルイソシアヌレート、及びビスアリルナジイミド等のビニル基を有する化合物も、エチレン性不飽和基を有する化合物の具体例として挙げられる。
【0060】
エチレン性不飽和基を有する化合物としては、市販品を利用することができ、例えば、KAYARADZCA(登録商標)-601H(商品名、日本化薬製)、TrisP-PAエポキシアクリレート化合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(日本化薬製KAYARAD(登録商標)ZCR-6007H(商品名)KAYARAD(登録商標)ZCR-6001H(商品名)、KAYARAD(登録商標)ZCR-6002H(商品名)、及びKAYARAD(登録商標)ZCR-6006H(商品名)、STR-2000-60T(日本化薬製)が挙げられる。これらのエチレン性不飽和基を有する化合物は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0061】
これらの中でも、相溶性の観点から、下記式(3)乃至(5)で表される熱硬化性化合物がより好ましい。
【0062】
【0063】
式(3)中、R4は炭素数1乃至5のアルキル基又はフェニル基を表し、R4が複数存在する場合、それらは互いに同じでも異なってもよい。炭素数1乃至5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、及びネオペンチル基が挙げられる。式(3)のR4が表す炭素数1乃至5のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
式(3)中、kはそれぞれ独立に0乃至3の整数を表し、それぞれ独立に0乃至2の整数が好ましく、0がより好ましい。
n1は繰り返し数の平均値であって1以上10以下の実数を表す。
kが3より大きい場合、またはR4が炭素数6以上のアルキル基である場合は、アルキル基が高周波にさらされた際の分子振動により、電気特性が低下するおそれがある。
【0064】
【0065】
式(4)中、R5は炭素数1乃至5のアルキル基又はフェニル基を表し、R5が複数存在する場合、それらは互いに同じでも異なってもよい。炭素数1乃至5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、及びネオペンチル基が挙げられる。
式(4)中、lはそれぞれ独立に0乃至3の整数を表す。
式(4)中、n2は繰り返し数の平均値であって1以上10以下の実数を表す。
【0066】
【0067】
式(6)中、R6及びR7はそれぞれに水素原子、メチル基又はエチル基を表す。
【0068】
本発明の樹脂組成物における(C)成分の含有量は、(A)乃至(C)成分の合計に対して5.0乃至40質量%であることが好ましい。(C)成分の含有量を前記の範囲とすることにより、樹脂組成物の硬化物の耐熱性、基材接着性、低吸水性及び誘電特性が向上する。
(C)成分の含有量は、(A)乃至(C)成分の合計に対して10乃至25質量%であることがより好ましい。
【0069】
本発明の樹脂組成物は、更に硬化促進剤(D)(以下、(D)成分とも記載する)を含んでいても良い。(D)成分を含むことにより樹脂組成物の硬化速度が調整可能であり、また、適度な成形性が樹脂組成物に付与される。
本発明の樹脂組成物が含有する(D)成分は、(C)成分及び任意成分である熱硬化性樹脂(後述する)の硬化を促進できる化合物であれば、特に限定されない。(D)成分は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0070】
本発明の樹脂組成物に用い得る(D)成分は特に限定されないが、例えば、熱ラジカル重合開始剤、イミダゾ-ル化合物、及びトリエチルアミン並びにトリブチルアミン等の第3級アミン等が挙げられる。これらの中でも、良好な硬化速度が得られる点から、熱ラジカル重合開始剤が好ましい。
熱ラジカル重合開始剤とは、(C)成分に含まれるマレイミド基及び後述する熱硬化性樹脂に含まれるラジカル重合性官能基を重合させることができる活性物質(ラジカル)を加熱により放出する化合物であれば特に限定されず、公知の熱ラジカル重合開始剤を用いることができる。熱ラジカル重合開始剤は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0071】
熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度は、100℃以上であることが好ましく、製造性の観点から、110℃以上であることがより好ましい。熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度を前記の好ましい範囲とすることにより、製造時の溶剤除去工程の高温化を図ることができる。
【0072】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ(2-tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキサイド、及びシクロヘキサノンパーオキサイドのケトンパーオキサイド;1,1-ジ(t-ブチルパ-オキシ)シクロヘキサン、及び2,2-ジ(4,4-ジ(t-ブチルパ-オキシ)シクロヘキシル)プロパンのパーオキシケタ-ル;tert-ブチルハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパ-オキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、及びt-ブチルハイドロパーオキサイドのハイドロパーオキサイド;ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-へキシルパ-オキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、及びジ-t-ブチルパーオキサイドのジアルキルパーオキサイド;ジベンゾイルパーオキサイド、及びジ(4-メチルベンゾイル)パ-オキサイドのジアシルパーオキサイド;ジ-n-プロピルパ-オキシジカ-ボネ-ト、及びジイソプロピルパ-オキシジカーボネ-トのパーオキシジカ-ボネ-ト;2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-へキシルパーオキシベンゾエ-ト、t-ブチルパーオキシベンゾエ-ト、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノネートのパーオキシエステル等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、及び2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物などが挙げられる。本発明の組成物においては、良好な硬化速度が得られる点から、有機過酸化物が好ましく、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、及びハイドロパーオキサイド骨格を有する有機過酸化物がより好ましく、ジクミルパーオキサイド、ジ(2-tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、及びtert-ブチルハイドロパーオキサイドが、製造性の観点から、更に好ましい。
【0073】
本発明の樹脂組成物における(D)成分の含有量は、良好な硬化速度が得られる点から、(C)成分及び後述する熱硬化性樹脂の合計100質量部に対して、0.05乃至10質量部が好ましく、0.05乃至8質量部がより好ましい。
【0074】
本発明の樹脂組成物には、硬化速度の調整が容易である点から、(C)成分以外の熱硬化性化合物(E)(以下、「(E)成分」とも記載する)を併用してもよい。
(E)成分としては、例えば、エポキシ樹脂、カルボジイミド樹脂、ベンゾオキサジン化合物等が挙げられる。これらの樹脂または化合物は、樹脂組成物の硬化物の物性および用途に応じて、1種類単独または2種類以上を適宜混合して使用することができる。
【0075】
(E)成分としてのエポキシ樹脂は、一分子中にエポキシ基を一つ以上有するものであれば特に限定されないが、樹脂組成物の硬化物が機械強度や難燃性等の特性に優れることから、ベンゼン環、ビフェニル環及びナフタレン環等の芳香族環を有するエポキシ樹脂が好ましく、その具体例としては、jER828(三菱ケミカル株式会社製)、NC-3000、XD-1000(いずれも日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
エポキシ樹脂は、(A)成分が酸無水物基を有する場合、この酸無水物基と反応させることも出来、これにより硬化物の架橋密度が増加し、極性溶剤への耐性が向上すると共に、基材への密着性や耐熱性が向上する。
エポキシ樹脂を含有する樹脂組成物の硬化温度は、150乃至250℃が好ましい。硬化時間は硬化温度に依存するが、概ね数分間乃至数時間程度である。
【0076】
エポキシ樹脂を含有する本発明の樹脂組成物には、エポキシ樹脂の硬化反応を促進する目的で、必要に応じて硬化剤を添加することが出来る。硬化剤としては、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール及び1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。
エポキシ樹脂を含有する本発明の樹脂組成物における硬化剤の添加量は、エポキシ樹脂に対して0.1乃至10質量%である。
【0077】
(E)成分としてのカルボジイミド樹脂(化合物)は、1分子中に1個以上のカルボジイミド構造を有するものであれば特に限定されない。
カルボジイミド樹脂(化合物)の具体例としては例えば、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサンビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の脂肪族ビスカルボジイミド;フェニレン-ビス(キシリルカルボジイミド)等の芳香族ビスカルボジイミド等のビスカルボジイミド;ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリトリメチルヘキサメチレンカルボジイミド、ポリシクロヘキシレンカルボジイミド、ポリ(メチレンビスシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド;ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(トリレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(キシリレンカルボジイミド)、ポリ(テトラメチルキシリレンカルボジイミド)、ポリ(メチレンジフェニレンカルボジイミド)、ポリ[メチレンビス(メチルフェニレン)カルボジイミド]等の芳香族ポリカルボジイミド等のポリカルボジイミドが挙げられる。
これらは二種以上を混合して用いてもよい。
【0078】
カルボジイミド樹脂(化合物)の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製の「カルボジライトV-02B」、「カルボジライトV-03」、「カルボジライトV-04K」、「カルボジライトV-07」及び「カルボジライトV-09」;ラインケミ-社製の「スタバクゾ-ルP」、「スタバクゾ-ルP400」、「ハイカジル510」等が挙げられる。
【0079】
カルボジイミド樹脂(化合物)を含有する本発明の樹脂組成物におけるカルボジイミド樹脂(化合物)の含有量は、(A)乃至(C)成分の合計に対して1.0乃至40質量%であることが好ましい。カルボジイミド樹脂(化合物)の含有量を前記の範囲とすることにより、樹脂組成物の硬化物の耐熱性、基材接着性、低吸水性及び誘電特性が向上する。
カルボジイミド樹脂(化合物)の含有量は、(A)乃至(C)成分の合計に対して10乃至25質量%であることがより好ましい。
【0080】
(E)成分としてのベンゾオキサジン樹脂(化合物)は、1分子中に1個以上のベンゾオキサジン構造を有するものであれば特に限定されない。
ベンゾオキサジン樹脂(化合物)の具体例としては、ビスフェノールA型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン樹脂、ジアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂、ジシクロペンタジエン型ベンゾオキサジン樹脂、及びビスフェノールフルオレン型ベンゾオキサジン樹脂が挙げられから選択されるいずれか一種又は二種以上の混合物を含んでもよく、好ましくは、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン樹脂、ジアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂、又は及びビスフェノールフルオレン型ベンゾオキサジン樹脂が好ましい。
これらは二種以上を混合して用いてもよいから選択されるいずれか一種又は二種以上の混合物を含む。
【0081】
ベンゾオキサジン樹脂(化合物)を含有する本発明の樹脂組成物におけるベンゾオキサジン樹脂(化合物)の含有量は、(A)乃至(C)成分の合計に対して1.0乃至40質量%であることが好ましい。ベンゾオキサジン樹脂(化合物)の含有量を前記の範囲とすることにより、樹脂組成物の硬化物の耐熱性、基材接着性、低吸水性及び誘電特性が向上する。
ベンゾオキサジン樹脂(化合物)の含有量は、(A)乃至(C)成分の合計に対して10乃至25質量%であることがより好ましい。
【0082】
本発明の樹脂組成物は有機溶剤に溶解したワニス状の組成物(以下、単にワニスという)とすることができる。
用い得る溶剤としては、例えばγ-ブチロラクトン類、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びN,N-ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、ジエチレングリコ-ルジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート及びプロピレングリコールモノブチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン及びキシレンなどの芳香族系溶剤等が挙げられる。
有機溶剤は、ワニス中の有機溶剤を除く固形分濃度が好ましくは10乃至80質量%、より好ましくは20乃至70質量%となる範囲で使用する。
【0083】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて公知の添加剤を併用してもよい。併用し得る添加剤の具体例としては、ポリブタジエン又はこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、フッ素樹脂、シアネートエステル系化合物、シリコーンゲル、シリコーンオイル、並びにシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、石英粉、アルミニウム粉末、グラファイト、タルク、クレー、酸化鉄、酸化チタン、窒化アルミニウム、アスベスト、マイカ、ガラス粉末等の無機充填材、シランカップリング剤のような充填材の表面処理剤、離型剤、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の着色剤、アエロジル等のチキソトロピー付与剤、シリコーン系、フッ素系のレベリング剤や消泡剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノール系重合禁止剤、安定剤、酸化防止剤、光重合開始剤、光塩基発生材、光酸発生剤等が挙げられる。これら添加剤の配合量は、樹脂組成物100質量部に対して好ましくは1,000質部以下、より好ましくは700質部以下の範囲である。添加剤としては特にアクリル基もしくはメタクリル基を有するシランカップリング剤が耐熱性の観点から好ましい。
【0084】
本発明の樹脂組成物の硬化温度及び硬化時間は、120乃至250℃が好ましく、硬化時間は概ね数十分間乃至数時間程度である。
【0085】
本発明の樹脂組成物を加熱溶融し、低粘度化してガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維などの強化繊維に含浸させることによりプリプレグを得ることができる。また、前記ワニスを、強化繊維に含浸させて加熱乾燥させることによりプリプレグを得ることもできる。
上記のプリプレグを所望の形に裁断、必要により銅箔などと積層後、積層物にプレス成形法やオートクレーブ成形法、シートワインディング成形法などで圧力をかけながら樹脂組成物を加熱硬化させることにより電気電子用積層板(プリント配線板)や炭素繊維強化材等の本発明の硬化物を備えた基材(物品)を得ることができる。
【0086】
また、ワニスを銅箔に塗工し溶剤媒を乾燥させた後、ポリイミドフィルムもしくはLCP(液晶ポリマー)を積層させ、熱プレス後、加熱硬化することにより本発明の硬化物を備えた基材を得ることもできる。場合によりポリイミドフィルムもしくはLCP側に塗工し、銅箔と積層することで本発明の硬化物を備えた基材を得ることもできる。
また、ワニスを銅箔に塗工し溶剤媒を乾燥させた後、樹脂をガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維などの強化繊維に含浸させたプリプレグを積層させ、熱プレス後、加熱硬化することにより本発明の硬化物を備えた基材を得ることもできる。
上記の樹脂組成物からなる薄膜を備えた基材は銅張積層板(CCL)、またはCCLの銅箔に回路パターンを有するプリント配線板や多層配線版に使用できる。
【実施例0087】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例における「部」は質量部を、「%」は質量%を意味する。尚、実施例におけるGPCの測定条件は以下の通りである。
機種:TOSOH ECOSEC Elite HLC-8420GPC
カラム:TSKgel Super AWM-H
溶離液:NMP(N-メチルピロリドン);0.5ml/分、40℃
検出器:UV(示差屈折計)
分子量標準:ポリスチレン
【0088】
合成例1(可溶性ポリイミドA-1の合成)
温度計、還流冷却器、ディーンスターク装置、原料導入口、窒素導入装置及び撹拌装置を取り付けた300mlの反応器に、BAPP(2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、和歌山精化工業株式会社製、分子量410.52g/mol)7.96部、PRIAMINE1075(C36ダイマージアミン、クローダジャパン株式会社製、分子量534.38g/mol)11.01部、ODPA(オキシジフタル酸無水物、マナック株式会社製、分子量310.22g/mol)13.03部、アニソール86.98部、トリエチルアミン0.85部及びトルエン20.11部を入れて、120℃まで加熱し原料を溶解させた。アミック酸の閉環に伴い生成した水をトルエンとの共沸で除去しながら135℃で4時間反応させた。次いで、IPDI(イソホロンジイソシアネート、試薬、分子量222.29g/mol)0.26部及びアニソール5.36部を加えて130℃で3時間加熱することにより可溶性ポリイミド樹脂(A-1)(分子量82400)溶液を得た。
【0089】
合成例2(可溶性ポリイミドA-2の合成)
温度計、還流冷却器、ディーンスターク装置、原料導入口、窒素導入装置及び撹拌装置を取り付けた300mlの反応器に、APB-N(1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、三井化学ファイン株式会社製、分子量292.33g/mol)6.20部、PRIAMINE1075(C36ダイマージアミン、クローダジャパン株式会社製、分子量534.38g/mol)13.14部、ODPA(オキシジフタル酸無水物、マナック株式会社製、分子量310.22g/mol)13.03部、アニソール83.09部、トリエチルアミン0.85部及びトルエン20.11部を入れて、120℃まで加熱し原料を溶解させた。アミック酸の閉環に伴い生成した水をトルエンとの共沸で除去しながら135℃で4時間反応させた。次いで、IPDI(イシホロンジイソシアネート、試薬、分子量222.29g/mol)0.26部及びアニソール5.15部を加えて130℃で3時間加熱することにより可溶性ポリイミド樹脂(A-2)(分子量65300)溶液を得た。
【0090】
合成例3(可溶性ポリイミドA-3の合成)
温度計、還流冷却器、ディーンスターク装置、原料導入口、窒素導入装置及び撹拌装置を取り付けた300mlの反応器に、BAFL(9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、JFEケミカル株式会社製、分子量348.45g/mol)7.95部、PRIAMINE1075(C36ダイマージアミン、クローダジャパン株式会社製、分子量534.38g/mol)11.86部、ODPA(オキシジフタル酸無水物、マナック株式会社製、分子量310.22g/mol)14.66部、アニソール93.48部、トリエチルアミン0.96部及びトルエン21.37部を入れて、120℃まで加熱し原料を溶解させた。アミック酸の閉環に伴い生成した水をトルエンとの共沸で除去しながら135℃で4時間反応させた。次いで、IPDI(イソホロンジイソシアネート、試薬、分子量222.29g/mol)0.29部及びアニソール5.79部を加えて130℃で3時間加熱することにより可溶性ポリイミド樹脂(A-3)(分子量62500)溶液を得た。
【0091】
実施例1乃至7(本発明の樹脂組成物の調製)
表1に示した配合量(単位は「部」、ポリイミド樹脂、マレイミド樹脂の部数は、溶剤を含まない固形分換算での部数である)で各成分を配合した後、固形分濃度が25質量%となる量のアニソールを溶剤として追加して均一に混合することにより、本発明の樹脂組成物をそれぞれ調整した。
【0092】
尚、表1における各成分は以下の通りである。
<(A)成分>
(A-1)乃至(A-3);合成例1乃至3で得られた可溶性ポリイミド樹脂(A-1)乃至(A-3)
<(B)成分>
RPS-1005;オキサゾリン基含有反応性ポリスチレン、(株)日本触媒製(重量平均分子量 203,068)
<(C)成分>
(C-1);MIR-3000-70MT;マレイミド樹脂、日本化薬(株)製(上記式(4)で表されるマレイミド樹脂(C))
(C-2);MIR-5000-60T;マレイミド樹脂、日本化薬(株)製(上記式(3)で表されるマレイミド樹脂(C))
(C-3);BMI-70;マレイミド樹脂、ケイ・アイ化成(株)製(上記式(5)で表されるマレイミド樹脂(C))
<硬化促進剤>
DCP;ジクミルパーオキシド、化薬ヌーリオン(株)製
【0093】
実施例1乃至7で得られた各樹脂組成物を用いて、下記の方法で樹脂組成物の相溶性、硬化物の銅箔に対する接着強度、熱特性、Tgを評価した。
【0094】
(接着強度の評価)
福田金属箔粉工業株式会社製の超低粗度無粗化処理電解銅箔CF-T49A-SV(以
下、「T49A」と記載する)の粗面に、オートマチックアプリケータを用いて樹脂組成
物をそれぞれ塗布し、120℃で10分間加熱乾燥した。乾燥後の塗膜の厚さは20μm
であった。前記で得られた銅箔上の塗膜にCF-T9FZ-THE-35を重ね合わせ、200℃で60分間、3MPaの条件で真空プレスした。得られた試験片を10mm幅に切り出し、オ-トグラフAGS-X-500N(株式会社島津製作所製)を用いて、90°引きはがし強さ(引き剥がし速度は50mm/min)を測定し、T49A銅箔の接着強度を評価した。結果を表1に示した。
【0095】
(熱特性の評価)
上記「接着強度の評価」と同じ方法で作製した試験片を、POT-200C(太洋電機
産業株式会社製)で288℃に熱したハンダ浴にフロートさせ、フクレが出るまでの時間
により熱特性を評価した。結果を表1に示した。
(評価基準)
〇・・・600秒以上膨れなし
△・・・600秒未満60秒以上膨れなし
×・・・60秒未満で膨れ発生
【0096】
(Tgの測定)
UBE製のポリイミドフィルムユーピレックスに、オートマチックアプリケータを用いて樹脂組成物をそれぞれ塗布し、120℃で10分間加熱乾燥した。乾燥後の塗膜の厚さは20μmであった。前記で得られた塗膜にユーピレックスを重ね合わせ、200℃で60分間、3MPaの条件で真空プレスした。得られた試験片を5mm幅、40mm長さに切り出し、DMA(EXSTAR DMS6100株式会社日立ハイテク製)を用いてTgを測定した。結果を表1に示した。
【0097】
【0098】
表1の結果より、本発明の樹脂組成物は、接着強度、耐熱性において優れていることが明らかである。